説明

ワイヤハーネス

【課題】製造性及び取り扱い性の向上を図ることが可能なワイヤハーネスを提供する。
【解決手段】ワイヤハーネス11は、フロントインバータユニット5とバッテリー7とを電気的に接続するためのものであって、二本の高圧電線と、この二本の高圧電線を一括して覆いシールドするシールド部材20とを含んで構成されている。シールド部材20は、ワイヤハーネス11の配索方向に複数分割された構成のものとなっている。また、シールド部材20は、分割された一つ一つが独立したシールド機能を有するものとなっている。シールド部材20は、複数の編組シールド部材26〜32及び複数の導電性パイプシールド部材33〜38を有するように複数に分割されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の移動体に配索される高圧のワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車や電気自動車の機器、すなわちモータユニットやインバータユニット、バッテリーなどの機器を電気的に接続するためとして、高圧のワイヤハーネスが用いられている。
【0003】
下記特許文献1に開示されたワイヤハーネスは、機器間を電気的に接続する三本の電線と、三本の電線をこの全長の大半にわたって収容するメインシールド部と、メインシールド部の端部からのびる三本の電線を覆うサブシールド部とを備えて構成されている。ワイヤハーネスは、機器の搭載位置にもよるが、配索経路が非常に長いものになっている。
【0004】
三本の電線の各端末には、端子金具が設けられている。端子金具は、ワイヤハーネスの製造後、電線の端末と一緒に機器のシールドケース内に差し込まれ、機器本体の所定位置に配設された接続部に対し例えばボルト締め等で接続されるようになっている。
【0005】
メインシールド部は、導電性を有する一本の長い金属パイプが用いられている。メインシールド部は、この小径化を図るためとして、三本の電線だけを挿通することができる大きさに内径が形成されている。
【0006】
サブシールド部は、筒状に形成された編組と、この編組の一端に固定されるシールドシェルと、編組の他端に固定される接続パイプとを備えて構成されている。シールドシェルは、機器のシールドケースに接続固定する部分として備えられている。
【0007】
編組とシールドシェルは、これらを重ね合わせ、そして、重ね合わせ部分にシールドリングを配置し、この後にシールドリングに対して加締めを施すことにより固定されている。このような固定は、編組と接続パイプとの固定にも採用されている。すなわち、編組と接続パイプとを重ね合わせ、そして、重ね合わせ部分に加締めリングを配置し、この後に加締めリングに対し加締めを施すことにより固定されている。
【0008】
接続パイプは、メインシールド部と同じ材質及び同じ内径の金属パイプが用いられている。接続パイプは、メインシールド部よりも長さが格段に短くなるように形成されている。接続パイプは、この端部をメインシールド部の端部に一致させた後に、溶接により固定されている。
【0009】
上記構成及び構造において、上記の如く溶接にてサブシールド部がメインシールド部に一体化することから、ワイヤハーネスは非常に長いシールド部材を備えていることが分かる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−171952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上記従来のワイヤハーネスにあっては、シールド部材がメインシールド部にサブシールド部を溶接により一体化させてなる非常に長いものであることから、このような長いシールド部材を含んでのワイヤハーネスの製造に係り、製造性が悪くなってしまうという問題点を有している。
【0012】
この他、上記従来のワイヤハーネスにあっては、全長が非常に長い状態で製造しなければならないことから、製造に係る取り扱い性が悪くなってしまうという問題点を有している。また、上記従来のワイヤハーネスにあっては、シールド部材の大半を占めるメインシールド部が長くしかも堅いことから、製造に係る製造性や取り扱い性が悪くなってしまうという問題点を有している。
【0013】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、製造性及び取り扱い性の向上を図ることが可能なワイヤハーネスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の本発明のワイヤハーネスは、一又は複数本の導電路と、該一又は複数本の導電路を覆い且つ配索方向に複数に分割されたシールド部材とを含み、該複数に分割されたシールド部材の一つ一つは接地部を有することを特徴とする。
【0015】
このような特徴を有する本発明によれば、一又は複数本の導電路を覆ってシールドするシールド部材は、ワイヤハーネス配索方向に複数に分割される。また、複数に分割されたシールド部材の一つ一つは接地部を有する。ワイヤハーネスの製造においては、シールド部材が分割されて単に長い状態でないことから、製造し易くなる。また、シールド部材が分割されて単に長い状態でないことから、製造時の取り扱いもし易くなる。本発明によれば、複数に分割されたシールド部材の一つ一つは接地部を有することから、分割状態であっても独立してシールド機能を発揮させることができるようになる。
【0016】
請求項2に記載の本発明のワイヤハーネスは、請求項1に記載のワイヤハーネスに係り、前記複数に分割されたシールド部材は、編組又は金属箔からなるものと、導電性パイプからなるものとを含み、該導電性パイプからなるものは、これを導電性のワイヤハーネス配索対象へ固定する際の固定部材が前記接地部を兼用することを特徴とする。
【0017】
このような特徴を有する本発明によれば、編組又は金属箔からなるシールド部材の場合、編組又は金属箔は柔軟性を有するものであることから、これを配設するワイヤハーネスの部分に柔軟性を持たせることが可能になる。一方、導電性パイプからなるシールド部材の場合は、例えば導電性パイプを金属パイプにすると、これに曲げを施せば、ワイヤハーネスを所定の配索経路に沿った形状に形成することが可能になる。ワイヤハーネスは、導電性パイプからなるシールド部材をワイヤハーネス配索対象へ固定すると、この固定と同時に接地も完了する。
【0018】
請求項3に記載の本発明のワイヤハーネスは、請求項2に記載のワイヤハーネスに係り、前記編組又は金属箔からなるものと、前記導電性パイプからなるものは、これらの端部同士がラップした状態に配置されることを特徴とする。
【0019】
このような特徴を有する本発明によれば、編組又は金属箔からなるものの端部と、導電性パイプからなるものの端部とをラップさせて配置することから、一又は複数本の導電路をより確実にシールド部材により覆うことが可能になる。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載された本発明によれば、シールド部材を複数に分割し、且つ、一つ一つ独立してシールド機能を持たせていることから、従来のような単に長いだけのシールド部材でワイヤハーネスを製造する必要性はない。従って、本発明によれば、ワイヤハーネスの製造に係る製造性や、製造に係る取り扱い性を従来よりも向上させることができるという効果を奏する。
【0021】
請求項2に記載された本発明によれば、請求項1の効果に加え、次のような効果を更に奏する。すなわち、編組又は金属箔からなるシールド部材の場合では、ワイヤハーネスに柔軟性を持たせることができ、導電性パイプからなるシールド部材の場合では、ワイヤハーネス配索対象への固定と同時に接地も行うことができるという効果を奏する。
【0022】
請求項3に記載された本発明によれば、請求項2の効果に加え、次のような効果を更に奏する。すなわち、シールド性能を高めることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のワイヤハーネスに係る図であり、(a)は自動車の模式図、(b)はワイヤハーネスの模式図である(実施例1)。
【図2】図1のワイヤハーネスの第一端末部に係る構成図である。
【図3】図1のワイヤハーネスの中間部に係る構成図である。
【図4】図1のワイヤハーネスの第二端末部に係る構成図である。
【図5】本発明のワイヤハーネスの他の例に係る図であり、(a)は自動車の模式図、(b)はワイヤハーネスの模式図である(実施例2)。
【図6】接地部兼用として設けられるクランプの取り付け状態に係る斜視図である。
【図7】本発明のワイヤハーネスの他の例に係る図であり、(a)は自動車の模式図、(b)はワイヤハーネスの模式図である(実施例3)。
【発明を実施するための形態】
【0024】
ワイヤハーネスは、一又は複数本の導電路と、これを覆ってシールドするシールド部材とを含む。シールド部材は、ワイヤハーネス配索方向に複数に分割され、この複数に分割されたシールド部材の一つ一つは接地部を有する。
【実施例1】
【0025】
以下、図面を参照しながら実施例1を説明する。図1は本発明のワイヤハーネスに係る図であり、(a)は自動車の模式図、(b)はワイヤハーネスの模式図である。また、図2はワイヤハーネスの第一端末部に係る構成図、図3はワイヤハーネスの中間部に係る構成図、図4はワイヤハーネスの第二端末部に係る構成図である。
【0026】
本実施例においては、ハイブリッド自動車(電気自動車や一般的な自動車であってもよいものとする)に本発明のワイヤハーネスを採用する例を挙げて説明するものとする。
【0027】
図1(a)において、引用符号1はハイブリッド自動車を示している。ハイブリッド自動車1は、エンジン2及びモータユニット3の二つの動力をミックスして駆動する車両であって、モータユニット3にはインバータユニット4を介してバッテリー5(電池パック)からの電力が供給されるようになっている。エンジン2、モータユニット3、及びインバータユニット4は、本実施例において前輪等がある位置のエンジンルーム6に搭載されている。また、バッテリー5は、後輪等がある自動車後部7に搭載されている(エンジンルーム6の後方に存在する自動車室内に搭載してもよいものとする)。
【0028】
モータユニット3とインバータユニット4は、公知の高圧ワイヤハーネス8により接続されている。また、バッテリー5とインバータユニット4は、本発明のワイヤハーネス9により接続されている。ワイヤハーネス9は、高圧用のものとして構成されている。ワイヤハーネス9は、この中間部10が車体床下11の地面側に配索されている。また、車体床下11に沿って略平行に配索されている。車体床下11は、公知のボディであるとともに所謂パネル部材であって、所定位置には貫通孔(符号省略)が形成されている。この貫通孔には、ワイヤハーネス9が挿通されている。
【0029】
ワイヤハーネス9とバッテリー5は、このバッテリー5に設けられるジャンクションブロック(図示省略)を介して接続されている(一例であるものとする)。ジャンクションブロックには、ワイヤハーネス9の後端が公知の方法で電気的に接続されている。ワイヤハーネス9の前端側は、インバータユニット4に対し公知の方法で電気的に接続されている。
【0030】
モータユニット3は、モータ及びジェネレータを構成に含んでいるものとする。また、インバータユニット4は、インバータ及びコンバータを構成に含んでいるものとする。モータユニット3は、シールドケースを含むモータアッセンブリとして形成されるものとする。また、インバータユニット4もシールドケースを含むインバータアッセンブリとして形成されるものとする。バッテリー5は、Ni−MH系やLi−ion系のものであって、モジュール化してなるものとする。尚、例えばキャパシタのような蓄電装置を使用することも可能であるものとする。バッテリー5は、ハイブリッド自動車1や電気自動車に使用可能であれば特に限定されないものとする。
【0031】
以下、ワイヤハーネス9の構成及び構造について説明をする。
【0032】
図1において、ワイヤハーネス9は、インバータユニット4とバッテリー5とを電気的に接続するためのものであって、二本の高圧電線19(導電路)と、この二本の高圧電線19を一括して覆いシールドするシールド部材20とを含んで構成されている。シールド部材20は、本発明の特徴的な部材であって、ワイヤハーネス9の配索方向に複数分割された構成のものとなっている。また、シールド部材20は、分割された一つ一つが独立したシールド機能を有するものとなっている。
【0033】
以下での説明にあたり、インバータユニット4との接続部分を第一端末部21と定義するものとする。また、第一端末部21に連続する部分を中間部22と定義するものとする。さらに、中間部22に連続するとともにバッテリー5との接続部分を第二端末部23と定義するものとする。この他、インバータユニット4に近い側を一端又は一方と呼ぶものとする。また、バッテリー5に近い側を他端又は他方と呼ぶものとする。
【0034】
図2ないし図4において、高圧電線19は、導体及び絶縁体(被覆)24を含む高圧の導電路であって、電気的な接続に必要な長さを有するように形成されている。導体は、銅や銅合金、アルミニウムやアルミニウム合金により製造されている。導体に関しては、素線を撚り合わせてなる導体構造のものや、断面矩形又は丸形となる棒状の導体構造(例えば平角単心や丸単心となる導体構造であり、この場合、電線自体も棒状となる)のもののいずれであってもよいものとする。
【0035】
尚、本実施例においては高圧電線19を用いているが、この限りでないものとする。すなわち、公知のバスバーに絶縁体を設けて高圧の導電路としたものや、n系統の回路(n個の回路)を同軸で一本に構成することによりなる高圧同軸複合導電路等を用いてもよいものとする。
【0036】
高圧電線19の端部は、第一端末部21及び第二端末部23とも所定長さで絶縁体24が除去されている。この除去部分からは、導体(図示省略)が露出するようになっている。露出した導体には、端子金具25が接続されている。端子金具25は、インバータユニット4の図示しない接続部に対し接続される部分として、また、バッテリー5の図示しない接続部に対し接続される部分として設けられている。
【0037】
図1に戻り、シールド部材20は、上記の如く複数に分割されている。具体的には、複数の編組シールド部材26〜32及び複数の導電性パイプシールド部材33〜38を有するように複数に分割されている。尚、複数の編組シールド部材26〜32及び複数の導電性パイプシールド部材33〜38の図1(b)中における数は一例であるものとする。
【0038】
複数の編組シールド部材26〜32及び複数の導電性パイプシールド部材33〜38は、ワイヤハーネス9の配索方向に交互に配設されている。また、編組シールド部材26と編組シールド部材32は、ワイヤハーネス9の両端末に位置するように配設されている。
【0039】
複数の編組シールド部材26〜32は、複数の導電性パイプシールド部材33〜38よりも柔軟性を有するように構成されている。このような柔軟性を有する複数の編組シールド部材26〜32は、第一端末部21及び第二端末部23に対応する位置や、ワイヤハーネス9の曲げ部(配索経路が曲がる部分)に対応する位置に配設されている。尚、図1(b)中の真っ直ぐに図示されている複数の編組シールド部材27、29、30〜32に関しては、例えば紙面垂直方向に曲げられているものとする。
【0040】
シールド部材20は、複数の導電性パイプシールド部材33〜38と、複数の編組シールド部材26〜32とを有し、柔軟な部分が多いことから、このような場合、例えばワイヤハーネス9の製造後からハイブリッド自動車1へ配索するまでの間、ワイヤハーネス9を複数の編組シールド部材26〜32の部分で曲げておけば、保管や搬送等を省スペースで行うことができるという利点を有している。
【0041】
複数の編組シールド部材26〜32は、二本の高圧電線19(図2ないし図4参照)を一括して覆うシールド部材本体26a〜32aと、このシールド部材本体26a〜32aの一つ一つに設けられる導電性の接地部26b〜32bとを含んで構成されている。
【0042】
シールド部材本体26a〜32aとしては、本実施例において編組26c〜32cが用いられている。編組26c〜32cは、電磁シールド用の筒状の部材(電磁波対策用のシールド部材)に形成されている。また、編組26c〜32cは、二本の高圧電線19(図2ないし図4参照)の所定範囲を覆うことのできる大きさ(直径)及び長さに形成されている。編組26c〜32cは、導電性を有する極細の素線を多数用い、これを筒状に編んで形成されている。
【0043】
上記素線に関しては、軟銅等の金属素線、非金属繊維からなる極細の素線などが挙げられるものとする。非金属繊維は、炭素繊維、又は樹脂材料に導電性材料を混ぜた導電性樹脂繊維が挙げられるものとする。尚、これらの素線の他に、例えば耐摩耗性を持たせるための樹脂素線(PETの素線)を混在させるようにしてもよいものとする。
【0044】
接地部26b〜32bは、シールド部材本体26a〜32aの所定位置に電気的に接続固定されている(所定位置に関し、本実施例においては、シールド部材本体26a〜32aのそれぞれの一端側と他端側の二箇所が相当するものとする。尚、二箇所に限らないものとする)。このような接地部26b〜32bは、導電性を有するワイヤハーネス配索対象に対し電気的に接続されて、筐体アースやボディアースをすることができる部分として設けられている。
【0045】
接地部26b〜32bは、上記筐体アースやボディアースをすることができれば特に形状等は限定されないものとする。例えば、公知のアース線や、編組の一部をのばして接地させる構造でもよく、また、後述する導電性のクランプ54(図6参照)のような部材を用いてもよいものとする。この他、シールド部材本体26a〜32aを、隣り合う導電性パイプシールド部材33〜38に接触させて、この導電性パイプシールド部材33〜38の後述する接地部33b〜38bが接地部26b〜32bとなるように兼用してもよいものとする。
【0046】
本実施例において、複数の編組シールド部材26〜32は、これらのうち編組シールド部材26及び編組シールド部材32が基本的に同じになり、また、編組シールド部材27〜31が基本的に同じになるような構成及び構造になっている。
【0047】
図2において、第一端末部21に対応する編組シールド部材26は、シールド部材本体26aと接地部26bとを備えて構成されている。シールド部材本体26aは、編組26cと、この編組26cの一端に設けられるシールドシェル26dとを含んで構成されており、シールドシェル26dが編組シールド部材26における一端側の接地部26bを兼ねるようになっている。シールドシェル26dは、公知のものが用いられており、インバータユニット4のシールドケース39に対し接続固定をすることができるように形成されている。尚、シールドシェル26dと編組26cとの接続固定は、公知のシールドリングを加締める工法が採用されているものとする(一例であるものとする)。
【0048】
編組26cの他端には、絶縁性を有するテープによりテープ巻きが施されている(具体的な図示は省略する)。編組26cの他端は、二本の高圧電線19に固定されている。本実施例においては、上記テープ巻き部分に対しラップするように導電性パイプシールド部材33の後述するシールド部材本体33aが配設されている。尚、本実施例においては、シールド部材本体33aが上記テープ巻き部分にラップするように配設されることから、編組26cに対し電気的に絶縁がなされるようになっている。
【0049】
絶縁に関しては、上記テープ巻きの他に絶縁性を有するリング状の部材を介在させるようにしてもよいものとする。この他、編組26cと、導電性パイプシールド部材33の後述するシールド部材本体33aとをラップさせない方法もあるが、この場合、高圧電線19の露出が生じないようにすることが好ましいものとする。尚、ラップするような配設は、高圧電線19の露出がなくなることから、シールド性能を高めることに有効である(以下で説明する他のラップ部分も同様であるものとする)。
【0050】
図1及び図3において、中間部22に対応する編組シールド部材27〜31(代表例を例えば編組シールド部材29として図3に示す)は、シールド部材本体27a〜31aと、接地部27b〜31bとを備えて構成されている。シールド部材本体27a〜31aは、編組27c〜31cを有している。編組27c〜31cの一端及び他端には、それぞれ絶縁性を有するテープによりテープ巻きが施されている(具体的な図示は省略する)。編組27c〜31cの一端及び他端は、二本の高圧電線19に固定されている。本実施例においては、一端及び他端の各上記テープ巻き部分に対しラップするように導電性パイプシールド部材33〜38の後述するシールド部材本体33a〜38aが配設されている(絶縁に関しては上記同様であるものとする)。
【0051】
図4において、第二端末部23に対応する編組シールド部材32は、シールド部材本体32aと接地部32bとを備えて構成されている。シールド部材本体32aは、編組32cと、この編組32cの他端に設けられるシールドシェル32dとを含んで構成されており、シールドシェル32dが編組シールド部材32における他端側の接地部32bを兼ねるようになっている。シールドシェル32dは、公知のものが用いられており、バッテリー5のシールドケース40に対し接続固定をすることができるように形成されている。尚、シールドシェル32dと編組32cとの接続固定は、公知のシールドリングを加締める工法が採用されているものとする(一例であるものとする)。
【0052】
編組32cの一端には、絶縁性を有するテープによりテープ巻きが施されている(具体的な図示は省略する)。編組32cの一端は、二本の高圧電線19に固定されている。本実施例においては、上記テープ巻き部分に対しラップするように導電性パイプシールド部材38の後述するシールド部材本体38aが配設されている。尚、本実施例においては、シールド部材本体38aが上記テープ巻き部分にラップするように配設されることから、編組32cに対し電気的に絶縁がなされるようになっている(絶縁に関しては上記同様であるものとする)。
【0053】
以上のような編組シールド部材27〜31の外側には、保護部材としての例えば公知のプロテクタが設けられている(図示省略。プロテクタは一例であるものとする。公知のコルゲートチューブ等であってもよいものとする)。
【0054】
図1に戻り、複数の導電性パイプシールド部材33〜38は、二本の高圧電線19(図2ないし図4参照)を一括して覆うシールド部材本体33a〜38aと、このシールド部材本体33a〜38aの一つ一つに設けられる導電性の接地部33b〜38bとを含んで構成されている。
【0055】
シールド部材本体33a〜38aとしては、本実施例において導電性パイプ33c〜38cが用いられている。導電性パイプ33c〜38cは、電磁シールド用の筒状の部材(電磁波対策用のシールド部材)に形成されている。また、導電性パイプ33c〜38cは、二本の高圧電線19(図2ないし図4参照)の所定範囲を覆うことのできる大きさ(直径)及び長さに形成されている。導電性パイプ33c〜38cは、導電性を有する金属パイプや、導電性を有する樹脂パイプにて形成されている。尚、ここでの樹脂パイプは、樹脂材料に導電性材料を混ぜた導電性樹脂組成物をパイプ状に押し出して成型されるものとする。
【0056】
接地部33b〜38bは、シールド部材本体33a〜38aの所定位置に電気的に接続固定されている(所定位置に関し、本実施例においては、シールド部材本体33a〜38aのそれぞれの一端側と他端側の二箇所が相当するものとする。尚、二箇所に限らないものとする)。このような接地部33b〜38bは、導電性を有するワイヤハーネス配索対象に対し電気的に接続されて、例えばボディアースをすることができる部分として設けられている。
【0057】
接地部33b〜38bは、上記ボディアースをすることができれば特に形状等は限定されないものとする。例えば、公知のアース線や、後述する導電性のクランプ54(図6参照)のような部材を用いてもよいものとする。
【0058】
複数の導電性パイプシールド部材33〜38は、これらが基本的に同じになるような構成及び構造になっている。
【0059】
図2において、第一端末部21に一番近い導電性パイプシールド部材33は、シールド部材本体33aと接地部33bとを備えて構成されている。シールド部材本体33aは、導電性パイプ33cを有しており、このシールド部材本体33aの一端は、編組26cの他端の上記テープ巻き部分が挿通されてラップするような状態になっている(図示しないが、他端側も同様であるものとする)。
【0060】
図1及び図3において、中間部22に対応する導電性パイプシールド部材34〜37(代表例を例えば導電性パイプシールド部材35、36として図3に示す)は、シールド部材本体34a〜37aと、接地部34b〜37bとを備えて構成されている。シールド部材本体34a〜37aは、導電性パイプ34c〜37cを有しており、このシールド部材本体34a〜37a(導電性パイプ34c〜37c)の一端及び他端は、編組27c〜31cの一端及び他端の上記テープ巻き部分が挿通されてラップするような状態になっている。
【0061】
図4において、第二端末部23に一番近い導電性パイプシールド部材38は、シールド部材本体38aと接地部38bとを備えて構成されている。シールド部材本体38aは、導電性パイプ38cを有しており、このシールド部材本体38aの他端は、編組32cの一端の上記テープ巻き部分が挿通されてラップするような状態になっている(図示しないが、一端側も同様であるものとする)。
【0062】
以上、図1ないし図4を参照しながら説明してきたように、二本の高圧電線19を覆ってシールドするシールド部材20は、ワイヤハーネス9の配索方向に複数に分割されている。すなわち、複数の編組シールド部材26〜32及び複数の導電性パイプシールド部材33〜38を有するように複数に分割されている。また、シールド部材20は、複数に分割された編組シールド部材26〜32及び導電性パイプシールド部材33〜38の一つ一つに接地部26b〜32b及び接地部33b〜38bを有している。
【0063】
ワイヤハーネス9の製造においては、シールド部材20が分割されて単独で長い状態でないことから、従来に比べて製造し易くなっている。また、シールド部材20が分割されて単独で長い状態でないことから、製造時の取り扱いもし易くなっている。この他、複数に分割された編組シールド部材26〜32及び導電性パイプシールド部材33〜38の一つ一つに接地部26b〜32b及び接地部33b〜38bを有することから、分割状態であっても独立してシールド機能を発揮させることができるようになっている。
【0064】
従って、本発明によれば、ワイヤハーネス9の製造に係る製造性や、製造に係る取り扱い性を従来よりも向上させることができるという効果を奏する。
【実施例2】
【0065】
以下、図面を参照しながら実施例2を説明する。図5は本発明のワイヤハーネスの他の例に係る図であり、(a)は自動車の模式図、(b)はワイヤハーネスの模式図である。また、図6は接地部兼用として設けられるクランプの取り付け状態に係る斜視図である。尚、上記実施例1と同一の構成部材には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0066】
図5において、実施例2は、実施例1のワイヤハーネス9を以下で説明するワイヤハーネス51に変更した点以外は同じであるものとする。従って、ワイヤハーネス51について説明をする。
【0067】
ワイヤハーネス51は、インバータユニット4とバッテリー5とを電気的に接続するためのものであって、二本の高圧電線19(図2ないし図4参照)と、この二本の高圧電線19を一括して覆いシールドするシールド部材52とを含んで構成されている。シールド部材52は、本発明の特徴的な部材であって、ワイヤハーネス51の配索方向に複数分割された構成のものとなっている。また、シールド部材52は、分割された一つ一つが独立したシールド機能を有するものとなっている。
【0068】
シールド部材52は、上記の如く複数に分割されている。具体的には、二つの編組シールド部材26及び編組シールド部材32と、これらの間に配設される導電性パイプシールド部材53とを有するように複数に分割されている。二つの編組シールド部材26及び編組シールド部材32は、実施例1と同様に、第一端末部21及び第二端末部23に対応する位置に配設されている。二つの編組シールド部材26及び編組シールド部材32に関しては、実施例1と同様であるものとする。
【0069】
導電性パイプシールド部材53は、二本の高圧電線19(図2ないし図4参照)を一括して覆うシールド部材本体53aと、この一つのシールド部材本体53aに複数設けられる導電性の接地部53bとを含んで構成されている。
【0070】
シールド部材本体53aとしては、本実施例において導電性パイプ53cが用いられている。導電性パイプ53cは、電磁シールド用の筒状の部材(電磁波対策用のシールド部材)に形成されている。また、導電性パイプ53cは、二本の高圧電線19(図2ないし図4参照)の所定範囲を覆うことのできる大きさ(直径)及び長さに形成されている。導電性パイプ53cは、本実施例において、導電性を有する金属パイプにて形成されている(導電性を有する樹脂パイプであってもよいものとする)。
【0071】
複数の接地部53bは、シールド部材本体53aの所定位置に電気的に接続固定されている。上記所定位置に関しては、本実施例において、ワイヤハーネス51の固定位置に対応するように配設されている。接地部53bは、導電性を有するワイヤハーネス配索対象(例えば車体床下15)に対し電気的に接続されて例えばボディアースをすることができる部分として設けられている。本実施例において、接地部53bは、導電性のクランプ54(図6参照)と兼用するようになっている。
【0072】
図6において、クランプ54は、ワイヤハーネス51を固定する際に用いられる固定部材であって、上記の如く接地部53bと兼用することから、例えば車体床下15に固定されると、これと同時に接地も完了するようになっている。
【0073】
以上、図5及び図6を参照しながら説明してきたように、実施例2もシールド部材52がワイヤハーネス51の配索方向に複数分割された構成のものとなっている。また、シールド部材52の分割された一つ一つが独立したシールド機能を有するものとなっている。従って、実施例1と同様の効果を奏するのは勿論である。
【0074】
すなわち、ワイヤハーネス51の製造においては、シールド部材52が分割されて単独で長い状態でないことから、従来に比べて製造し易くなっている。また、シールド部材52が分割されて単独で長い状態でないことから、製造時の取り扱いもし易くなっている。この他、複数に分割された編組シールド部材26、32及び導電性パイプシールド部材53の一つ一つに接地部26b、32b及び接地部53bを有することから、分割状態であっても独立してシールド機能を発揮させることができるようになっている。
【0075】
従って、本発明によれば、ワイヤハーネス51の製造に係る製造性や、製造に係る取り扱い性を従来よりも向上させることができるという効果を奏する。
【実施例3】
【0076】
以下、図面を参照しながら実施例3を説明する。図7は本発明のワイヤハーネスの他の例に係る図であり、(a)は自動車の模式図、(b)はワイヤハーネスの模式図である。尚、上記実施例1、2と同一の構成部材には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0077】
図7において、実施例3は、実施例1のワイヤハーネス9を以下で説明するワイヤハーネス61に変更した点以外は同じであるものとする。従って、ワイヤハーネス61について説明をする。
【0078】
ワイヤハーネス61は、インバータユニット4とバッテリー5とを電気的に接続するためのものであって、二本の高圧電線19(図2ないし図4参照)と、この二本の高圧電線19を一括して覆いシールドするシールド部材62とを含んで構成されている。シールド部材62は、本発明の特徴的な部材であって、ワイヤハーネス61の配索方向に複数分割された構成のものとなっている。また、シールド部材62は、分割された一つ一つが独立したシールド機能を有するものとなっている。
【0079】
シールド部材62は、上記の如く複数に分割されている。具体的には、二つの編組シールド部材26及び編組シールド部材32と、複数の金属箔シールド部材63〜67と、複数の導電性パイプシールド部材33〜38とを有するように複数に分割されている。尚、複数の金属箔シールド部材63〜67及び複数の導電性パイプシールド部材33〜38の図7(b)中における数は一例であるものとする。
【0080】
二つの編組シールド部材26及び編組シールド部材32と、複数の導電性パイプシールド部材33〜38は、実施例1と同様に、第一端末部21及び第二端末部23に対応する位置と、中間部22に対応する位置に配設されている。二つの編組シールド部材26及び編組シールド部材32と、複数の導電性パイプシールド部材33〜38とに関しては、実施例1と同様であるものとする。
【0081】
複数の金属箔シールド部材63〜67は、実施例1の編組シールド部材27〜31(図1参照)を代替するものとして設けられている。複数の金属箔シールド部材63〜67は、二本の高圧電線19(図2ないし図4参照)を一括して覆うシールド部材本体63a〜67aと、このシールド部材本体63a〜67aの一つ一つに設けられる導電性の接地部63b〜67bとを含んで構成されている。
【0082】
シールド部材本体63a〜67aとしては、本実施例において金属箔63c〜67cが用いられている。金属箔63c〜67cは、公知の銅箔、アルミ箔、鉄箔等であって、金属箔単体、若しくはPET等の樹脂フィルムを一体化してなるものが採用されている。
【0083】
以上、図7を参照しながら説明してきたように、実施例3もシールド部材62がワイヤハーネス61の配索方向に複数分割された構成のものとなっている。また、シールド部材62の分割された一つ一つが独立したシールド機能を有するものとなっている。従って、実施例1と同様の効果を奏するのは勿論である。すなわち、ワイヤハーネス61の製造に係る製造性や、製造に係る取り扱い性を従来よりも向上させることができるという効果を奏する。
【0084】
この他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0085】
1…ハイブリッド自動車、 2…エンジン、 3…モータユニット、 4…インバータユニット、 5…バッテリー、 6…エンジンルーム、 7…自動車後部、 8…高圧ワイヤハーネス、 9…ワイヤハーネス、 10…中間部、 11…車体床下、 19…高圧電線(導電路)、 20…シールド部材、 21…第一端末部、 22…中間部、 23…第二端末部、 24…絶縁体、 25…端子金具、 26〜32…編組シールド部材、 26a〜32a…シールド部材本体、 26b〜32b…接地部、 26c〜32c…編組、 26d、32d…シールドシェル、 33〜38…導電性パイプシールド部材、 33a〜38a…シールド部材本体、 33b〜38b…接地部、 33c〜38c…導電性パイプ、 39、40…シールドケース、 51…ワイヤハーネス、 52…シールド部材、 53…導電性パイプシールド部材、 53a…シールド部材本体、 53b…接地部、 53c…導電性パイプ、 54…クランプ(固定部材)、 61…ワイヤハーネス、 62…シールド部材、 63〜67…金属箔シールド部材、 63a〜67a…シールド部材本体、 63b〜67b…接地部、 63c〜67c…金属箔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一又は複数本の導電路と、該一又は複数本の導電路を覆い且つ配索方向に複数に分割されたシールド部材とを含み、該複数に分割されたシールド部材の一つ一つは接地部を有する
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤハーネスにおいて、
前記複数に分割されたシールド部材は、編組又は金属箔からなるものと、導電性パイプからなるものとを含み、該導電性パイプからなるものは、これを導電性のワイヤハーネス配索対象へ固定する際の固定部材が前記接地部を兼用する
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項3】
請求項2に記載のワイヤハーネスにおいて、
前記編組又は金属箔からなるものと、前記導電性パイプからなるものは、これらの端部同士がラップした状態に配置される
ことを特徴とするワイヤハーネス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−99184(P2013−99184A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241945(P2011−241945)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】