説明

ワイヤボンディング装置及びキャピラリの振幅測定方法

【課題】ワイヤボンディング装置において、簡便な方法でキャピラリの振幅測定精度を向上させる。
【解決手段】静止中のキャピラリの画像の輪郭を取得する第1の輪郭取得手段と、キャピラリを無負荷状態で発振させ、発振中のキャピラリの画像を撮像素子で取得し、取得した画像の各ピクセルのグレーレベルを検出し、互いに隣接する予め設定された閾値よりも小さいグレーレベルの第1のピクセルと閾値よりも大きいグレーレベルの第2のピクセルとを選択し、第1のピクセルと第2のピクセルとのグレーレベルを補間してグレーレベルの閾値に対応する画像上の点の座標位置をサブピクセル単位で算出し、発振中のキャピラリの画像の輪郭を取得する第2の輪郭取得手段と、静止中のキャピラリの画像の輪郭と発振中のキャピラリの画像の輪郭との差からキャピラリの振幅を算出する振幅算出手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤボンディング装置の構造及びワイヤボンディング装置に用いられるキャピラリの振幅測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の製造においては、基板に取り付けられた半導体の電極と基板の電極との間を金ワイヤで接続するワイヤボンディング装置が用いられている。このワイヤボンディング装置は、超音波ホーンの先端に取り付けられたキャピラリを超音波振動させながら半導体チップと基板の電極とに押し付けて、キャピラリに挿通したワイヤを各電極に接合していくものである。
【0003】
しかし、キャピラリ先端の振幅は、キャピラリが取りけられている超音波ホーンの固有振動数の違いや、超音波振動子の個体差によって各ワイヤボンディング装置によって異なるものであるため、各ワイヤボンディング装置の接合特性がバラツキ、品質管理上の問題が生じることがあった。
【0004】
このため、レーザドップラ計によってキャピラリの振動を計測し、キャピラリの振動が所定の条件に合わない場合には、ボンディング動作を停止する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、超音波振動をしていない場合のキャピラリの画像と超音波振動をしている場合のキャピラリの画像をカメラによって取得し、その取得したキャピラリの幅の増加を計測することによってキャピラリの振幅を測定し、その振幅を制御装置にフィードバックする方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2007−142049号公報
【特許文献2】特許第3802403号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された、レーザドップラ計を用いる方法は、精度よくキャピラリの振幅を測ることができるものの、各ワイヤボンディング装置にキャピラリの振幅測定用のレーザドップラ計を取り付ける必要があることから、装置が大型となってしまうという問題があった。また、特許文献2に記載された、カメラによって取得した画像を処理する方法は、ワイヤボンディング装置に搭載しているカメラを兼用できることから装置は簡便になるものの、取得した画像の輪郭をはっきりと確定することが困難で、測定精度が低いという問題があった。
【0008】
本発明は、ワイヤボンディング装置において、簡便な方法でキャピラリの振幅測定精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のワイヤボンディング装置は、超音波ホーンと、超音波ホーン後端に取り付けられた超音波振動子と、超音波ホーン先端に取り付けられ、超音波振動子によって発振されるキャピラリと、キャピラリの画像を取得する撮像素子を含む画像取得ステーションと、撮像素子の取得した画像を処理する制御部と、を備えるワイヤボンディング装置であって、制御部は、画像取得ステーションでキャピラリを静止させ、キャピラリの画像を撮像素子で取得し、画像を処理して静止中のキャピラリの画像の輪郭を取得する第1の輪郭取得手段と、画像取得ステーションでキャピラリを無負荷状態で発振させ、発振中のキャピラリの画像を撮像素子で取得し、取得した画像の各ピクセルのグレーレベルを検出し、互いに隣接する予め設定された閾値よりも小さいグレーレベルの第1のピクセルと閾値よりも大きいグレーレベルの第2のピクセルとを選択し、第1のピクセルと第2のピクセルとのグレーレベルを補間してグレーレベルの閾値に対応する画像上の点の座標位置をサブピクセル単位で算出し、発振中のキャピラリの画像の輪郭を取得する第2の輪郭取得手段と、静止中のキャピラリの画像の輪郭と発振中のキャピラリの画像の輪郭との差からキャピラリの振幅を算出する振幅算出手段と、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明のワイヤボンディング装置において、第1の輪郭取得手段は、取得した画像の各ピクセルのグレーレベルを検出し、互いに隣接する予め設定された閾値よりも小さいグレーレベルの第3のピクセルと閾値よりも大きいグレーレベルの第4のピクセルとを選択し、第3のピクセルと第4のピクセルとのグレーレベルを補間してグレーレベルの閾値に対応する画像上の点の座標位置をサブピクセル単位で算出し、静止中のキャピラリの画像の輪郭を取得すること、としても好適であるし、制御部は、振幅算出工程で算出したキャピラリの振幅が所定の上限値と下限値との間に入るよう超音波振動子に印加する電圧を増減する印加電圧増減手段をそなえること、を特徴とする。
【0011】
本発明のキャピラリの振幅測定方法は、超音波ホーン後端に取り付けられた超音波振動子と、超音波ホーン先端に取り付けられ、超音波振動子によって発振されるキャピラリと、キャピラリの画像を取得する撮像素子を含む画像取得ステーションと、撮像素子の取得した画像を処理する制御部と、を備えるワイヤボンディング装置を用意し、画像取得ステーションでキャピラリを静止させ、キャピラリの画像を撮像素子で取得し、画像を処理して静止中のキャピラリの画像の輪郭を取得し、画像取得ステーションでキャピラリを無負荷状態で発振させ、発振中のキャピラリの画像を撮像素子で取得し、取得した画像の各ピクセルのグレーレベルを検出し、互いに隣接する予め設定された閾値よりも小さいグレーレベルの第1のピクセルと閾値よりも大きいグレーレベルの第2のピクセルとを選択し、第1のピクセルと第2のピクセルとのグレーレベルを補間してグレーレベルの閾値に対応する画像上の点の座標位置をサブピクセル単位で算出して発振中のキャピラリの画像の輪郭を取得し、静止中のキャピラリの画像の輪郭と発振中のキャピラリの画像の輪郭との差からキャピラリの振幅を算出すること、を特徴とする。
【0012】
本発明のキャピラリの振幅測定方法において、静止中のキャピラリの画像の輪郭を取得する画像処理は、取得した画像の各ピクセルのグレーレベルを検出し、互いに隣接する予め設定された閾値よりも小さいグレーレベルの第3のピクセルと閾値よりも大きいグレーレベルの第4のピクセルとを選択し、第3のピクセルと第4のピクセルとのグレーレベルを補間してグレーレベルの閾値に対応する画像上の点の座標位置をサブピクセル単位で算出して静止中のキャピラリの画像の輪郭を取得すること、としても好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、ワイヤボンディング装置において、簡便な方法でキャピラリの振幅測定精度を向上させることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1に示すように、本実施形態のワイヤボンディング装置10は、X軸モータ18とY軸モータ19とによってXY方向に自在に移動するXYテーブル11と、XYテーブル11によってXY方向に自在に移動するボンディングヘッド12と、キャピラリ13が先端に取り付けられた超音波ホーン15と、超音波ホーン15の後端に取り付けらた超音波振動子21と、ボンディングヘッド12に取り付けられ、超音波ホーン15をZ軸周りに回転させるZ軸モータ20と、ボンディングヘッド12に取り付けられたカメラ16と、キャピラリ13の先端部分の画像を取得するための画像取得ステーション30と、を備えている。図1において、リードフレーム22の送り方向がX方向、リードフレーム22の表面に沿ってX方向に直角方向がY方向、リードフレーム22の面に垂直な上下方向がZ方向である。
【0015】
超音波ホーン15の先端に取り付けられたキャピラリ13は先端が細くなった円錐形又は円柱形であり、その中心にはワイヤが挿通される孔が設けられている。キャピラリ13の先端は、Z軸モータ20と超音波ホーン15によってリードフレーム22またはリードフレーム22に取り付けられた半導体チップ23に対して接離方向に動作する。また、キャピラリ13は超音波振動子21によってY方向に振動する。キャピラリ中心軸14は、キャピラリの先端が半導体チップ23又はリードフレーム22表面に対して垂直に接する様に配置されている。
【0016】
カメラ16はレンズなどによって構成される光学系と光学系によって結像した画像を電気信号に変換するCCD又はCMOS等の撮像素子とを含んでおり、光学系の中心軸であるカメラ光軸17は撮像素子の中心を通る線で、取得画像の中心位置を通る線である。カメラ光軸17は撮像する半導体チップ23あるいはリードフレーム22の表面に対して垂直になるように配置されている。
【0017】
キャピラリ中心軸14とカメラ光軸17とはいずれも半導体チップ23あるいはリードフレーム22の表面に垂直となるように配置されているので、キャピラリ中心軸14とカメラ光軸17とは略平行となっている。そして、図1に示すように、カメラ光軸17は、キャピラリ中心軸14からからX方向オフセット量Xw、Y方向オフセット量Ywだけ離れて配置されている。キャピラリ13は超音波ホーンを介してボンディングヘッド12に取り付けられており、カメラ16はボンディングヘッド12に固定されているので、キャピラリ中心軸14とカメラ光軸17とは常にX方向オフセット量Xw、Y方向オフセット量Ywを含むオフセット量Wだけ離れてXY方向に同時に移動する。
【0018】
ワイヤボンディング装置10のXYテーブル11を駆動するX軸モータ18、Y軸モータ19、超音波ホーン15を駆動するZ軸モータ20、カメラ16、超音波振動子21は制御部60に接続され、制御部60の指令によって駆動されるように構成されている。制御部60は、信号の処理及び演算などを行うCPU61と、制御用のデータが格納されるメモリ63と、CPU61からの指令をカメラ16、超音波振動子21、X軸モータ18、Y軸モータ19、Z軸モータ20への制御信号に変換して出力するカメラインターフェース64、超音波振動子インターフェース68、X軸モータインターフェース65、Y軸モータインターフェース66、Z軸モータインターフェース67を含んでいる。各インターフェース64,65,66,67,68とメモリ63とCPU61とはデータバス62によって接続され、相互に信号の授受が行えるように構成されている。制御部60は一つのコンピュータを構成している。また、ワイヤボンディング装置10はカメラ16から取得した画像を処理してキャピラリ13の振幅を算出し、表示部インターフェース69を介して表示部46にキャピラリ13の振幅を表示するように構成されている。
【0019】
画像取得ステーション30は、ワイヤボンディング装置10のボンディングステージの近傍に設けられ、支持板31の上に設けられた照明32と光路変換器33とを備えている。光路変換器33には筐体34の照明32と対向する位置に設けられた光入口孔37と、筐体34のZ方向上側の面に設けられた光出口孔38とを有している。キャピラリ13の画像を取得する際には、制御部60の指令によってキャピラリ13の先端を照明32と光路変換器33との間の画像取得位置に移動する。
【0020】
図2に示すように、光路変換器33の筐体34には光入口孔37から入った光を集光するレンズ35と、水平方向に延びるレンズ35を通る光路をZ方向上側に向かって直角に変換するミラー36が設けられている。ミラー36によって変換された光路はカメラ光軸17と同一となっている。カメラ16には、鏡筒41と、鏡筒41に取り付けられ、ミラー36によって反射された光を集光して画像を結像させるレンズ42と、撮像面44に結像した画像をピクセル毎に電気信号に変換して出力する撮像素子43とが設けられている。
【0021】
図2に示すように、キャピラリ13の画像を取得する場合には、キャピラリ13の画像取得側と反対側に設けられた照明32を用いることから、キャピラリ13の位置する部分では照明32からの光はキャピラリ13によって遮られ、周囲の光はそのまま撮像素子43に達する。このため、取得されるキャピラリ13の画像は黒い影となり、周囲の背景は白となる。
【0022】
以上のように構成されたワイヤボンディング装置10において、キャピラリ13の振幅を測定する手順について説明する。
【0023】
制御部60は、キャピラリ13の先端を画像取得ステーション30の画像取得位置に移動させる指令を出力する。この指令によってX軸モータインターフェース65とY軸モータインターフェース66からX軸モータ18及びY軸モータ19を駆動する信号が出力され、この信号によって各軸モータ18,19が始動し、ボンディングヘッド12をXY方向に移動させる。そして、キャピラリ13の先端が画像取得位置に達したら制御部60は各軸モータ18,19を停止する。図2に示すように、キャピラリ13の先端が画像取得位置に達すると、光路変換器33のミラー36の光出口孔38側の光軸はカメラ光軸17と一致する。
【0024】
制御部60は、照明32をオンとしてキャピラリ13を静止させ、キャピラリ13の画像を取得する指令を出力する。図3(a)に示すように、照明32がオンとなると、撮像素子43の撮像面44には、白い背景の中に黒い画像のキャピラリ13が映し出される。キャピラリ13が静止状態にある場合には、キャピラリ13の画像は図3(a)の実線13aで示す画像となる。
【0025】
制御部60は撮像面44の上のキャピラリ13の画像を横切る位置に測定線45を設定する。この測定線は、撮像面44に配置された1列のピクセルを指定することによって設定しても良いし、例えば数列のピクセルを一体として測定エリアとして設定しても良い。
【0026】
制御部60は、測定線45に沿って各ピクセルのグレーレベルを検出し、メモリ63に格納していく。従って、制御部60のメモリ63には、検出したピクセルと同数のデータが各ピクセルの位置データと共に格納される。グレーレベルはモノクロの場合の黒さの階調を示す数値で、例えば、256階調の場合、一番黒い場合は0、一番白い場合は最大の255となる。キャピラリ13が静止状態の場合には測定線45に沿ったグレーレベルは、図3(b)の実線Aに示すように、白い背景の部分では略最大値で、測定線45と画像の実線13aとの左側の交点51と測定線45と画像の実線13aとの右側の交点52との間のキャピラリ13の黒い画像の部分ではグレーレベルは略ゼロとなっている。キャピラリ13は静止しているので、キャピラリ13の側面を示す実線13aの位置は変化しないが、キャピラリ13は円錐面又は円筒面を持っているため、グレーレベルは側面を示す実線13aを境に略0から略最大値までステップ的に変化せず、図3(b)の実線Aに示すように、光学的解像度が1ピクセルのサイズよりも低いので側面を示す実線13aの近傍では急峻に最大のグレーレベルに変化していく。
【0027】
図4に図3(b)に示す実線Aの肩の部分Kを拡大して示す。グレーレベルの検出はピクセル毎に行われるので、図4に示す実線Aは、より詳細にはピクセル毎に階段状に変化する線となっている。従って、例えば、図3(b)に示すグレーレベルの閾値Lを超えたピクセルの位置を点51,52の位置とすると、点51,52の位置は、ピクセル単位にしか求めることができず、測定精度が落ちてしまう。
【0028】
そこで、図4に示すように、制御部60は、例えば、メモリ63に格納した各ピクセルのグレーレベルを順次読み出して、閾値Lを超えるまではそのピクセルの位置と検出したグレーレベルを第3のピクセル73の位置と第3のグレーレベルとして順次書き換えてメモリに格納し、閾値Lを超えるピクセルが現れたら、そのピクセルの位置と検出したグレーレベルを第4のピクセル74の位置と第4のグレーレベルとしてメモリに格納する。図4に示すように、第3のピクセル73と第4のピクセル74とは測定線45に沿って隣り合ったピクセルで、第3のピクセル73のグレーレベルは閾値Lよりも小さいLであり、第4のピクセル74のグレーレベルは閾値Lよりも大きいLである。第3のピクセル73の位置はそのピクセルの中央の点aの位置であり、第4のピクセル74の位置はそのピクセルの中央の点bの位置であり、また、各ピクセル73,74は一定のピッチPで図3(a)に示す撮像面44の上に配置されており、第3のピクセル73と第4のピクセル74とは隣接していることから、各中央の点aと点bとの測定線45に沿った距離はピッチPに等しくなる。
【0029】
制御部60は、点aと点bとの間を線形補間し、点aと点bとの間の閾値Lとなる点cの位置を計算し、点aと点cとの間のサブピクセル数ΔP、例えば、0.3ピクセル等を計算する。そして、図4に示すように、基準となる基準点Sから、第3のピクセル73までのピクセル数と第3のピクセル73の端から中央のa点までの1/2ピクセルと点aと点cとの間のサブピクセル数ΔPを足した数値に撮像素子43のピクセルのピッチPを掛けて、基準点Sから点cまでの距離Dを算出し、静止中のキャピラリ13の基準点Sからの輪郭までの距離Dとしてメモリ63に格納する。
【0030】
次に制御部60は、超音波振動子21に印加電圧を加える指令を出力する。この指令によって超音波振動子インターフェース68から超音波振動子21に標準電圧を出力する信号が出力される。この信号によって超音波振動子が振動し、その振動によってキャピラリ13が図3(a)に示すY方向に発振する。この際、キャピラリ13の先端は何も接触していないので、キャピラリ13は無負荷状態で発振する。キャピラリ13が発振すると、キャピラリ13の側面は図3(a)の2点鎖線13bと13cとの間を往復移動する。
【0031】
制御部60は、発振状態のキャピラリ13の左右に振れた状態を複数回重ね合わせて取り込めるように、例えば、シャッタースピードを遅くして所定の時間だけ画像の取り込みを続ける。画像の取り込み時間は、キャピラリ13が左右に数百回程度振れる程度の時間でよい。このように多くの振動状態の画像を重ね合わせて取り込むことによって、取り込まれた画像はキャピラリ13の静止時の画像の左右にキャピラリ13の振幅を加えた幅の広い画像となる。
【0032】
制御部60は静止状態のキャピラリ13のグレーレベルの検出と同様、撮像面44の上のキャピラリ13の画像を横切る位置に測定線45を設定し、測定線45に沿って各ピクセルのグレーレベルを検出し、メモリ63に格納していく。従って、制御部60のメモリ63には、検出したピクセルと同数のデータが各ピクセルの位置データと共に格納される。
【0033】
キャピラリ13が発振している状態では、図3(a)に示す測定線45と2点鎖線13b,13cとの交点である点55と点54との間は、常に照明32からの光がキャピラリ13によって遮られるため、図3(b)に示すように、そのグレーレベルは略0となるが、点53と点55との間、点54と56との間はキャピラリ13が左右どちらかに振れている場合には照明32からの光がキャピラリ13によって遮られないので、この領域の測定線45に沿ったグレーレベルは、図3(b)の2点鎖線Bに示すように、キャピラリ13が照明32からの光を遮っている時間と遮っていない時間との比率で、略0から最大のグレーレベルまで徐々に変化していく。この変化の割合は、静止状態のキャピラリ13のグレーレベルを示す実線Aよりも穏やかなものとなっており、測定線45の上の点53,56の近傍では、連続的に最大のグレーレベルに近接していく。
【0034】
制御部60は、例えば、メモリ63に格納した各ピクセルのグレーレベルを順次読み出して、閾値Lを超えるまではそのピクセルの位置と検出したグレーレベルを第1のピクセル71の位置と第1のグレーレベルとして順次書き換えてメモリに格納し、閾値Lを超えるピクセルが現れたら、そのピクセルの位置と検出したグレーレベルを第2のピクセル72の位置と第2のグレーレベルとしてメモリに格納する。図4に示すように、第1のピクセル71と第2のピクセル72とは測定線45に沿って隣り合ったピクセルで、第1のピクセル71のグレーレベルは閾値Lよりも小さいL´であり、第2のピクセル72のグレーレベルは閾値Lよりも大きいL´である。第1のピクセル71の位置はそのピクセルの中央の点dの位置であり、第2のピクセル72の位置はそのピクセルの中央の点eの位置であり、また、各ピクセル71,72は一定のピッチPで図3(a)に示す撮像面44の上に配置されており、第1のピクセル71と第2のピクセル72とは隣接していることから、各中央の点dと点eとの測定線45に沿った距離はピッチPに等しくなる。
【0035】
制御部60は、点dと点eとの間を線形補間し、点dと点eとの間の閾値Lとなる点fの位置を計算し、点dと点eとの間のサブピクセル数ΔP´、例えば、0.7ピクセル等を計算する。そして、図4に示すように、基準となる基準点Sから、第1のピクセル71までのピクセル数と第1のピクセル71の端から中央のd点までの1/2ピクセルと点dと点eとの間のサブピクセル数ΔP´を足した数値に撮像素子43のピクセルのピッチPを掛けて、基準点Sから点fまでの距離Eを算出し、発振中のキャピラリ13の基準点Sからの輪郭までの距離Eとしてメモリ63に格納する。
【0036】
制御部60は、メモリに格納した発振中のキャピラリ13の基準点Sからの輪郭までの距離Eから静止中のキャピラリ13の基準点Sからの輪郭までの距離Dを引いて、キャピラリ13の振幅αを算出する。そして、制御部60は、測定した振幅αを表示部46に表示する指令を出力する。この指令によって、表示部インターフェース69は振幅αの数値を出力する信号を表示部46に出力する。表示部46はこの信号によって振幅αを表示部46の表示窓に表示する。
【0037】
また、制御部60は、算出したキャピラリ13の振幅αと所定の上限値及び下限値とを比較し、振幅αが所定の上限値よりも大きい場合には、超音波振動子21に印加する電圧を低下させ、振幅αが所定の下限値よりも小さい場合には、超音波振動子21に印加する電圧を増加させ、キャピラリ13の振幅αが所定の上限値と下限値との間の入るよう調整することができる。この調整によって、キャピラリ13の振幅αを所定の値に揃えることができ、各ワイヤボンディング装置の接合特性のバラツキを抑制し、ボンディング品質を向上させることができるという効果を奏する。
【0038】
以上説明したように、本実施形態は、ワイヤボンディング装置10のカメラ16によって撮像した画像を処理してキャピラリ13の振幅の測定を行うという簡便な方法でキャピラリ13の振幅を測定することができる。また、本実施形態は、ピクセル間を補間して閾値Lに対応する点を求めるようにしていることから、サブピクセル単位で各画像の輪郭の位置を測定することができるので、キャピラリ13の振幅を精度よく測定することができるという効果を奏する。
【0039】
以上述べた実施形態では、キャピラリ13の静止状態の画像、発振状態の画像と共に各ピクセル間を補間して輪郭の位置を求めるようにして説明したが、より密度の大きい撮像素子43を使用する場合或いはキャピラリ13の画像を拡大して取得する場合などは、補間をせずにピクセル単位で振幅を求めるようにしてもよい。また、画像の輪郭位置は、例えば、二値処理などによって求めることとしてもよい。また、レンズの倍率を変えて拡大して振幅を求めてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態におけるワイヤボンディング装置の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態におけるワイヤボンディング装置においてキャピラリの画像取得を示す説明図である。
【図3】本発明の実施形態におけるワイヤボンディング装置において取得したキャピラリの画像とグレーレベルの変化を示す説明図である。
【図4】図3に示したKの部の拡大図である。
【符号の説明】
【0041】
10 ワイヤボンディング装置、11 XYテーブル、12 ボンディングヘッド、13 キャピラリ、14 キャピラリ中心軸、15 超音波ホーン、16 カメラ、17 カメラ光軸、18 X軸モータ、19 Y軸モータ、20 Z軸モータ、21 超音波振動子、22 リードフレーム、23 半導体チップ、30 画像取得ステーション、31 支持板、32 照明、33 光路変換器、34 筐体、35,42 レンズ、36 ミラー、37 光入口孔、38 光出口孔、41 鏡筒、43 撮像素子、44 撮像面、45 測定線、46 表示部、51〜56 点、60 制御部、61 CPU、62 データバス、63 メモリ、64 カメラインターフェース、65 X軸モータインターフェース、66 Y軸モータインターフェース、67 Z軸モータインターフェース、68 超音波振動子インターフェース、69 表示部インターフェース、71〜74 ピクセル、L 閾値、P ピッチ、S 基準点、α 振幅、ΔP,ΔP´ サブピクセル数。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波ホーンと、
超音波ホーン後端に取り付けられた超音波振動子と、
超音波ホーン先端に取り付けられ、超音波振動子によって発振されるキャピラリと、
キャピラリの画像を取得する撮像素子を含む画像取得ステーションと、
撮像素子の取得した画像を処理する制御部と、を備えるワイヤボンディング装置であって、
制御部は、
画像取得ステーションでキャピラリを静止させ、キャピラリの画像を撮像素子で取得し、画像を処理して静止中のキャピラリの画像の輪郭を取得する第1の輪郭取得手段と、
画像取得ステーションでキャピラリを無負荷状態で発振させ、発振中のキャピラリの画像を撮像素子で取得し、取得した画像の各ピクセルのグレーレベルを検出し、互いに隣接する予め設定された閾値よりも小さいグレーレベルの第1のピクセルと閾値よりも大きいグレーレベルの第2のピクセルとを選択し、第1のピクセルと第2のピクセルとのグレーレベルを補間してグレーレベルの閾値に対応する画像上の点の座標位置をサブピクセル単位で算出し、発振中のキャピラリの画像の輪郭を取得する第2の輪郭取得手段と、
静止中のキャピラリの画像の輪郭と発振中のキャピラリの画像の輪郭との差からキャピラリの振幅を算出する振幅算出手段と、
を有することを特徴とするワイヤボンディング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤボンディング装置であって、
第1の輪郭取得手段は、
取得した画像の各ピクセルのグレーレベルを検出し、互いに隣接する予め設定された閾値よりも小さいグレーレベルの第3のピクセルと閾値よりも大きいグレーレベルの第4のピクセルとを選択し、第3のピクセルと第4のピクセルとのグレーレベルを補間してグレーレベルの閾値に対応する画像上の点の座標位置をサブピクセル単位で算出し、静止中のキャピラリの画像の輪郭を取得すること、
を特徴とするワイヤボンディング装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のワイヤボンディング装置であって、
制御部は、
振幅算出工程で算出したキャピラリの振幅が所定の上限値と下限値との間に入るよう超音波振動子に印加する電圧を増減する印加電圧増減手段を有すること、
を特徴とするワイヤボンディング装置。
【請求項4】
キャピラリの振幅測定方法であって、
超音波ホーン後端に取り付けられた超音波振動子と、
超音波ホーン先端に取り付けられ、超音波振動子によって発振されるキャピラリと、
キャピラリの画像を取得する撮像素子を含む画像取得ステーションと、
撮像素子の取得した画像を処理する制御部と、を備えるワイヤボンディング装置を用意し、
画像取得ステーションでキャピラリを静止させ、キャピラリの画像を撮像素子で取得し、画像を処理して静止中のキャピラリの画像の輪郭を取得し、
画像取得ステーションでキャピラリを無負荷状態で発振させ、発振中のキャピラリの画像を撮像素子で取得し、取得した画像の各ピクセルのグレーレベルを検出し、互いに隣接する予め設定された閾値よりも小さいグレーレベルの第1のピクセルと閾値よりも大きいグレーレベルの第2のピクセルとを選択し、第1のピクセルと第2のピクセルとのグレーレベルを補間してグレーレベルの閾値に対応する画像上の点の座標位置をサブピクセル単位で算出して発振中のキャピラリの画像の輪郭を取得し、
静止中のキャピラリの画像の輪郭と発振中のキャピラリの画像の輪郭との差からキャピラリの振幅を算出すること、
を特徴とするキャピラリの振幅測定方法。
【請求項5】
請求項4に記載のキャピラリの振幅測定方法であって、
静止中のキャピラリの画像の輪郭を取得する画像処理は、
取得した画像の各ピクセルのグレーレベルを検出し、互いに隣接する予め設定された閾値よりも小さいグレーレベルの第3のピクセルと閾値よりも大きいグレーレベルの第4のピクセルとを選択し、第3のピクセルと第4のピクセルとのグレーレベルを補間してグレーレベルの閾値に対応する画像上の点の座標位置をサブピクセル単位で算出して静止中のキャピラリの画像の輪郭を取得すること、
を特徴とするキャピラリの振幅測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−50181(P2010−50181A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−211363(P2008−211363)
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【特許番号】特許第4343996号(P4343996)
【特許公報発行日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【出願人】(000146722)株式会社新川 (128)
【Fターム(参考)】