説明

ワイヤボンディング装置及びワイヤボンディング方法

【課題】 装置が複雑で高価になることがなく、インデックスが低下することがなく、ボンディング中に隣接するボール同士の接触が検出可能なワイヤボンディング装置及びそのワイヤボンディング方法を提供する。
【解決手段】 ワイヤ3を繰り出すスプール4と、前記スプール4から繰り出されたワイヤ3にテンションを与えるワイヤテンショナ12と、開閉可能な一対のワイヤクランパ6と、ワイヤ3を挿通するキャピラリ7を有するワイヤボンディング装置において、ボンディング中に互いに隣り合うボール8のショート状態を検出する検出回路1を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置のワイヤボンディング装置及びワイヤボンディング方法に関し、特に、ボンディング中に互いに隣り合うボールのショート状態を検出する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の配線方法として、導電性ワイヤの先端を溶融して形成したボールを利用して半導体チップの表面電極に配線を行う、所謂ボールボンディング法がその汎用性の高さから多用されている。そのボンディング装置及びボンディング方法を図4(a)及び(b)、図5(c)及び(d)、図6(e)及び(f)を用いて説明する。
【0003】
従来のワイヤボンディング装置は、図4(a)に示すように、ワイヤ3を繰り出すスプール4と、ワイヤ3をA方向にエアブローしワイヤ3の位置からワイヤ3の繰り出し量を検知する繰り出し量検知部13と、ワイヤ3を挿通しワイヤ3の繰り出し方向と反対のB方向にエアブローしワイヤ3にテンションを与えるワイヤテンショナ12と、ワイヤ3を挟持し移動することでワイヤ3をカットする開閉可能な一対のワイヤクランパ6と、ワイヤ3を挿通しボール8を圧着する際のツールとして機能するキャピラリ7を有する。図中、9は半導体チップを、10はリードフレームを、11はリードを、それぞれ示している。
【0004】
従来のワイヤボンディング方法は、図4(a)に示すように、まず、ワイヤテンショナ12にエアが供給されワイヤ3にバックテンションが与えられる。次に、キャピラリ7が半導体チップ9表面に形成された図示しない表面電極直上に移動し、キャピラリ7先端から突出したワイヤ3の先端を放電等で加熱溶融した後、ワイヤクランパ6が開く。これにより、ワイヤ先端にボール8が形成される。次に、キャピラリ7を下降させ、ボール8を加熱された表面電極に加圧又は加圧に超音波を併用し、図4(b)のように接続する(1stボンディング)。その後、キャピラリ7が上昇して、キャピラリ先端からワイヤ3を繰り出し、図5(c)に示すように、キャピラリ7がリード11の直上へ移動する。次に、キャピラリ7を下降させ、ワイヤ3を加熱されたリード11の表面に加圧又は加圧に超音波を併用し、図5(d)のように接続する。この後、所定の位置でワイヤクランパ6を閉じながらキャピラリ7を上昇させることで、図6(e)に示すように、キャピラリ先端から所定長さのワイヤ3が突出した状態で、リード11上の接続部分でワイヤ3がカットされる(2ndボンディング)。この後、キャピラリ先端から突出したワイヤ3の先端とトーチ14の間の放電等によりワイヤ3の先端を加熱溶融し、図6(f)に示すように、ボール8を形成する。その後、ワイヤクランパ6を開き、上記図4(a)〜図6(f)の動作を繰り返して、複数組みの表面電極とリード11を接続していく。
【0005】
しかし、上記従来のワイヤボンディング装置及びそのワイヤボンディング方法には、次のような問題点があった。すなわち、半導体チップの表面電極上の異物、汚れ等により、前記ボールと前記表面電極の接着強度が低くなり、最悪の場合剥がれを生ずるオープン系の不良が発生する場合があった。また、ボールの大きさやボンディング位置のばらつきにより、隣り合うボールが互いに接触する場合等のショート系の不良が発生する場合もあった。
【0006】
オープン系の不良に対しては、図7に示すように、定電流電源15を用いワイヤ3からボール8を経由して定電流を流し、定電流電源15の出力電圧と基準電圧発生回路16の電圧を比較回路17で比較することによって、オープン状態を検出する着不着検知方法が一般に行われている。この場合、図8に示すように、定電流電源15から定電流I1を流した時の定電流電源15の出力電圧が基準電圧発生回路16の基準電圧E1よりも小さい直線Gの場合には、ボールと表面電極が「着」と判定され、定電流電源15の出力電圧の方が大きい直線Oの場合には、ボールと表面電極が「不着」と判定される。また、特許第3385942号公報のように、ボールと半導体チップの不着だけでなく、測定タイミングを工夫することにより、ワイヤとリード(2ndボンディング)の不着を検知する方法も開示されている。
【0007】
これに対し、ショート系の不良に対しては、例えば、特開平5−335390号公報のように、画像認識によって隣接する表面電極とボールの接触を検出する方法が採られているが、装置が複雑で高価になり、インデックスが低下するという問題があった。
【0008】
一方、ショート系不良の一つである2重ボンディング不良に関し、画像認識によらず前述の着不着検知方法とキャピラリ高さ検知を組み合わせ、キャピラリの高さが一定範囲にある場合に着不着検知が導通を検知すると、ボールが隣接するワイヤに接触したと判定し2重ボンディングを回避する技術が、開示されている。(特許文献1参照)
【特許文献1】特開平11−330168号公報(第2〜5頁、第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前述の着不着検知方法とキャピラリ高さ検知を組み合わせて検出する方法には、次のような残された問題があった。すなわち、キャピラリ高さが一定以下の時は2重ボンディングではなく、接地された表面電極との接触であると判断されるため、図9に示すような隣接するボール8同士の接触が検出できない。また、2重ボンディング以外のショート系不良検出のため、依然として画像認識による検出が必要であるため、装置が複雑で高価になり、インデックスが低下するという問題も残っていた。また、ボンディング中に隣接するボール同士の接触が検出できないため、連続して不良を作り込んでしまい、ボンディング完了後に外観チェックが必要となる場合もあった。
【0010】
本発明の課題は、装置が複雑で高価になることがなく、インデックスが低下することがなく、ボンディング中に、ボールと表面電極の着不着検出と同時に隣接するボール同士の接触が検出可能なワイヤボンディング装置及びそのワイヤボンディング方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1記載のワイヤボンディング装置は、ワイヤを繰り出すスプールと、前記スプールから繰り出されたワイヤにテンションを与えるワイヤテンショナと、開閉可能な一対のワイヤクランパと、ワイヤを挿通するキャピラリを有するワイヤボンディング装置において、ボンディング中に互いに隣り合うボールのショート状態を検出する検出回路を有する。
【0012】
本発明の請求項4記載のワイヤボンディング方法は、ワイヤ先端を加熱溶融して形成したボールと半導体チップの表面電極を、加熱、加圧又はそれらに超音波を併用して接続した後、さらに前記ボールと連続したワイヤとリード表面を同様に接続するワイヤボンディング方法において、1stボンディング後に互いに隣り合うボールとのショート状態を検出回路によって検出する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のワイヤボンディング装置及びワイヤボンディング方法によれば、画像認識装置によらず従来オープン系不良検知に用いられている検出回路を利用して、ショート系不良である隣接するボール同士の接触を検出するため、装置が複雑で高価になることが無く、インデックスが低下することもないという優れた産業上の効果を奏し得る。
【0014】
また、ボンディング中に隣接するボール同士の接触が検出できるため、連続して不良を作り込んでしまうことが無く、ボンディング完了後の外観チェックが不要となるという優れた産業上の効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照し、従来例と同一物には同一の符号を用いて説明する。
【0016】
本発明の第1の実施形態であるワイヤボンディング装置は、図1に示すように、ワイヤ3を繰り出すスプール4と、ワイヤ3を挿通しワイヤ3の繰り出し方向と反対のB方向にエアブローしワイヤ3にテンションを与えるワイヤテンショナ12と、開閉可能な一対のワイヤクランパ6と、ワイヤ3を挿通するキャピラリ7を有するワイヤボンディング装置において、ボンディング中に互いに隣り合うボールのショート状態を検出する検出回路1aを有する。
【0017】
検出回路1aは、定電流電源15と2つ以上の基準電圧を発生する基準電圧発生回路16aと比較回路17で構成されている。基準電圧発生回路16aが2つ以上の基準電圧を発生できる点が、本発明の特徴である。
【0018】
本発明の第1の実施形態であるワイヤボンディング方法は、従来技術で説明したボンディング工程のうち図5(c)で示す工程において、定電流電源15を用いワイヤ3からボール8を経由して定電流を流し、定電流電源15の出力電圧と基準電圧発生回路16aの電圧を比較回路17で比較する点は前述の従来技術と同様である。その際、図1及び図2に示すように、定電流電源15から定電流I1を流した時の定電流電源15の出力電圧と基準電圧発生回路16aの2つの基準電圧E1及びE2とを比較する。ここで、E1>E2である。E2よりも定電流電源15の出力電圧が小さい直線Sの場合には、図9で説明した、ボンディング中のボール−隣接するボンディング済みのボール−リードの順に電流が流れ、ボールと隣接するボールがショートしたと判定される。なお、E1よりも定電流電源15の出力電圧が大きい場合は、前述の従来技術と同様、ボールと表面電極が不着と判定される。その後、比較回路17からの出力によって、ボンディング工程の停止、アラーム等の必要な処理を行う。2つ以上の基準電圧を用い、前記ショート状態と、ボールと表面電極の着不着を同時に検出する点が本発明の特徴である。
【0019】
本実施形態では、電流を一定とした時の定電流電源15の出力電圧を比較したが、電源電圧を一定として電流を比較することもできる。また、交流電源を用いることにより、半導体チップの表面電極下の回路成分が整流成分を持っている場合であっても、前述の検出が可能となる。
【0020】
本発明の第2の実施形態であるワイヤボンディング装置は、図3に示すように、ワイヤ3を繰り出すスプール4と、ワイヤ3を挿通しワイヤ3の繰り出し方向と反対のB方向にエアブローしワイヤ3にテンションを与えるワイヤテンショナ12と、開閉可能な一対のワイヤクランパ6と、ワイヤ3を挿通するキャピラリ7を有するワイヤボンディング装置において、ボンディング中に互いに隣り合うボールのショート状態を検出する検出回路1aを有する。
【0021】
検出回路1aは、交流電源19とブリッジ回路18と不平衡状態を2つ以上の状態に区分できる平衡不平衡検出器20で構成されている。ブリッジの不平衡状態を2つ以上の状態に区分できる点が、本発明の特徴である。
【0022】
本発明の第2の実施形態であるワイヤボンディング方法は、図3において、あらかじめボールと半導体チップ9の表面電極をショートした状態で、交流電源19を用いブリッジ回路18に交流を印可し、ブリッジ回路18中のいずれかの抵抗値を可変しブリッジ回路18を平衡状態にしておく。次に、従来技術で説明したボンディング工程のうち図5(c)で示す工程において、交流電源19を用いブリッジ回路18に交流を印可し、その時の平衡状態からのずれを平衡不平衡検出器20で2つ以上の基準値と比較し、ボールと表面電極の着不着状態と、ボールと隣接するボールの接触状態を同時に検出する。ボールと表面電極が着状態の場合(第1の状態)と、ボールと表面電極が不着状態の場合(第2の状態)と、ボールと隣接するボールが接触した場合(第3の状態)とでは、不平衡電流の大きさが異なるため、判別が可能となる。
【0023】
すなわち、半導体チップを介して電流が流れる前記第1の状態の場合には、前述のあらかじめボールと半導体チップ9の表面電極をショートした状態で設定した平衡状態から、半導体チップ9の表面電極の違い(内部回路の違い)だけばらついた電流が流れるため、平衡不平衡検出器20では、各ボンディング毎にわずかな不平衡電流が検出される。これに対し、ボールと表面電極が不着状態の前記第2の状態の場合には、ボール8を介して半導体チップ9の表面電極に電流が流れないため、平衡不平衡検出器20では、不着のボンディングの時だけ抵抗2を通って流れる大きな不平衡電流が検出される。一方、ボンディング済みのワイヤからリードを介して電流が流れる第3の状態の場合には、ほとんどショート状態のため、抵抗2はほとんど電流が流れず、平衡不平衡検出器20では、第2の状態よりもさらに大きな不平衡電流が検出される。従って、平衡不平衡検出器20に2つ以上の基準値を設定しておくことにより、前述の3つの状態を区分することが可能となる。
【0024】
その後、平衡不平衡検出器20からの出力によって、ボンディング工程の停止、アラーム等の必要な処理を行う。不平衡状態を2つ以上に区分し、前記接触状態とボールと表面電極の着不着を同時に検出する点が本発明の特徴である。
【0025】
本発明のワイヤボンディング装置及びワイヤボンディング方法によれば、画像認識装置によらず従来オープン系不良検知に用いられている着不着検知方法を利用して、ショート系不良である隣接するボール同士の接触を検出するため、装置が複雑で高価になることが無く、インデックスが低下することもないという優れた産業上の効果を奏し得る。
【0026】
また、ボンディング中に隣接するボール同士の接触が検出できるため、連続して不良を作り込んでしまうことが無く、ボンディング完了後の外観チェックが不要となる。
【0027】
尚、本発明のワイヤボンディング装置及びワイヤボンディング方法は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えることができ、例えば、3つ以上の基準電圧との比較又は3つ以上の不平衡状態の検出により、異なる不良モードの層別や異なる対応処置が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施形態であるワイヤボンディング装置及びワイヤボンディング方法を示す側面図。
【図2】本発明の第1の実施形態であるワイヤボンディング装置及びワイヤボンディング方法の不良判定方法を説明する電流−電圧特性図。
【図3】本発明の第2の実施形態であるワイヤボンディング装置及びワイヤボンディング方法を示す側面図。
【図4】(a)及び(b)従来のワイヤボンディング装置及びワイヤボンディング方法を示す側面図。
【図5】(c)及び(d)従来のワイヤボンディング方法を示す側面図。
【図6】(e)及び(f)従来のワイヤボンディング方法を示す側面図。
【図7】従来のワイヤボンディング装置及びワイヤボンディング方法を示す側面図。
【図8】従来のワイヤボンディング装置及びワイヤボンディング方法の不良判定方法を説明する電流−電圧特性図。
【図9】従来のワイヤボンディング装置及びワイヤボンディング方法の課題を説明する平面図。
【符号の説明】
【0029】
1 検出回路
1a 検出回路
2 抵抗
3 ワイヤ
4 スプール
5 表面電極
6 ワイヤクランパ
7 キャピラリ
8 ボール
9 半導体チップ
10 リードフレーム
11 リード
12 ワイヤテンショナ
13 繰り出し量検知部
14 トーチ
15 定電流電源
16 基準電圧発生回路
16a 基準電圧発生回路
17 比較回路
18 ブリッジ回路
19 交流電源
20 平衡不平衡検出器
21 電流検出抵抗
A エアブロー
B エアブロー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤを繰り出すスプールと、前記スプールから繰り出されたワイヤにテンションを与えるワイヤテンショナと、開閉可能な一対のワイヤクランパと、ワイヤを挿通するキャピラリを有するワイヤボンディング装置において、ボンディング中に互いに隣り合うボールのショート状態を検出する検出回路を有することを特徴とするワイヤボンディング装置。
【請求項2】
請求項1記載のワイヤボンディング装置において、前記検出回路が定電流電源と2つ以上の基準電圧を発生する基準電圧発生回路と比較回路で構成されていることを特徴とするワイヤボンディング装置。
【請求項3】
請求項1記載のワイヤボンディング装置において、前記検出回路が交流電源とブリッジ回路と平衡不平衡検出器で構成されており、ブリッジの不平衡状態を2つ以上の状態に区分可能なことを特徴とするワイヤボンディング装置。
【請求項4】
ワイヤ先端を加熱溶融して形成したボールと半導体チップの表面電極を、加熱、加圧又はそれらに超音波を併用して接続した後、さらに前記ボールと連続したワイヤとリード表面を同様に接続するワイヤボンディング方法において、1stボンディング後に互いに隣り合うボールとのショート状態を検出回路によって検出することを特徴とするワイヤボンディング方法。
【請求項5】
請求項4記載のワイヤボンディング方法において、前記ワイヤからボールを経由して定電流を流し、定電流電源の出力電圧と基準電圧発生回路の2つ以上の基準電圧を比較することによって前記ショート状態と、ボールと表面電極の着不着を同時に検出することを特徴とするワイヤボンディング方法。
【請求項6】
請求項4記載のワイヤボンディング方法において、前記ワイヤからボールを経由して半導体チップ裏面に到る経路によってブリッジ回路の一部を構成し、前記ブリッジ回路に交流を印可した時の不平衡状態を2つ以上に区分して検出することによって前記ショート状態とボールと表面電極の着不着を同時に検出することを特徴とするワイヤボンディング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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