説明

ワイヤボンディング装置及びワイヤボンディング方法

【課題】光モジュールのパッケージを構成するステムに取付けられたリードピン、または、そのリードピンに取付けられた素子へのワイヤのボンディングを安定して行うことができるワイヤボンディング装置の提供。
【解決手段】ワイヤボンディング装置は、ステム2に取付けられた外部回路接続用のリードピン22、又は該リードピン22上に実装されたモニタ用PDに対して、ステム2をステムホルダで保持しておき、ワイヤが通されたキャピラリを駆動してワイヤを押し当てボンディングを行う。ステムホルダが、ステム2を位置決めして装着したときに、リードピン22の上方側部に当接する当て付け部材84fを有する。ボンディングの際は、ステムホルダを傾動させて、リードピン22をキャピラリの押圧力に抗して当て付け部材84fで支える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光モジュールのパッケージを構成するステムに取付けられたリードピン、または、そのリードピン上に取付けられた電子素子へのワイヤボンディング装置及びワイヤボンディング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
信号光を送信及び/又は受信する光モジュールには、光電変換素子等の素子が実装されるステムと、該ステムの上記素子の実装部分を被うキャップと、から成るCANパッケージを用いるものがある。この光モジュールにおいては、ステムに、CANパッケージ内部の電子素子と外部回路とを電気接続するリードピンが貫通して取付けられる。また、リードピンと電子素子等との電気接続にはワイヤが用いられ、リードピンや電子素子へのワイヤボンディングには、ワイヤが通されるキャピラリを駆動し、ワイヤをボンディング対象に押し付けてボンディングするボールボンディングが用いられる(例えば、特許文献1参照)。なお、低温でボールボンディングを行う方式として、熱と荷重に加えて、超音波を併用する方式が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−267674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
CANパッケージを用いた光モジュールとして、例えば、図7〜9に示すものが考えられる。図7は光モジュールの外観図であり、図8(A)は図7の光モジュールのパッケージ内の要部を示す斜視図であり、図8(B)は図8(A)の部分拡大図である。なお、図8(B)には、図8(A)で図示を省略したワイヤが図示されている。図9は、図7の光モジュールのパッケージ内の要部を側方から見た状態を示す図である。
図7の光モジュール1は、略円板状の金属製のステムベース21に後述の第1〜第3のリードピン22〜24が固定されて成るステム2と、集光レンズ31が取付けられたキャップ3と、を備える。ステム2とキャップ3とからCANパッケージが構成されている。
【0005】
光モジュール1では、図8(A)に示すように、端面発光型のレーザダイオード(LD:Laser Diode)6が、サブマウント5の上面5aに形成された金属パターン上に導電性接着材を用いて実装される。これにより、LD6はヒートシンク4及びサブマウント5を介してステムベース21上に実装される。このLD6は、ステムベース21の上面21aに平行な光軸を有する光をその一端面6a及び他端面から出力する。一端面6aからの光は、図示しない反射部材により反射され、図7の集光レンズ31を介して外部に出力される。また、光モジュール1では、LD6の他端面からの光を受光するモニタ用フォトダイオード(PD:Photo Diode)7が第1のリードピン22上に実装される。
【0006】
上記の光モジュールにおいて、LD6への電気信号の供給やモニタ用PD7からの電気信号の取り出しは、第1〜第3のリードピン22〜24により行われる。これらリードピン22〜24は、ステムベース21を貫通して取付けられる。
また、これらリードピン22〜24のうち、第1のリードピン22は、LD6の他端面からの光の出射方向に配されており、モニタ用PD7が実装されるPD実装面22aを有する。
【0007】
各リードピン22〜24とLD6やモニタ用PD7の各電極との電気接続は、図8(B)に示すように行われる。すなわち、第1のリードピン22とモニタ用PD7の裏面の第1の電極との電気接続は、PD実装面22a上にモニタ用PD7を導電性接着材等を用いて固定することにより行われる。第1のリードピン22とLDの上面6bの第3の電極との電気接続は、これらにそれぞれワイヤをボンディングすることにより行われる。また、第2のリードピン23と、モニタ用PD7の表面7aの第2の電極との電気接続は、これらにそれぞれワイヤをボンディングすることにより行われる。そして、第3のリードピン24とLD6の下面の第4の電極との電気接続は、LD6が実装されたサブマウント5の上面5a上の金属パターンと第3のリードピン24とにそれぞれワイヤをボンディングすることにより行われる。
【0008】
以上のような電気接続を行うことにより、光モジュール1では、第1及び第3のリードピン22,24を介して外部回路から入力された電気信号をLD6で光信号に変換し、LD6の一端面6aからの光信号を反射部材で反射させ、キャップ3の集光レンズ31を介して外部に送出する。その一方で、LD6の他端面からの光信号を、モニタ用PD7で受光し電気信号に変換して、モニタ信号として、第1及び第2のリードピン22,23を介して外部に取り出している。
【0009】
この光モジュールでは、上述のように、LDの後方光の出射方向に配した第1のリードピン上に直接モニタ用PDを実装しているため、モニタ用PD7を他の部分に実装していた場合に比べ、ヒートシンクやTECをモニタ用PDの分、大きくしたりできる。また、モニタ用PDを実装していた部分に他の素子を実装することもできる。
【0010】
また、図9に示すように、LD6の他端面6cからの光の光軸Pと交わる位置に形成されているPD実装面22aは、その法線Rが上記光軸Pと平行となっておらず、上記光軸Pに対する傾斜面となっている。傾斜面の角度は、例えば、法線Rと光軸Pとの為す角度が約20〜30°となる角度である。このように、PD実装面22aが傾斜面となっているため、モニタ用PD7の前面7aも上記光軸Pに対する傾斜面となっているので、LD6の他端面6cからの光がモニタ用PD7の前面7aで反射されてしまってLD6への戻り光となることがない。
【0011】
ところで、この光モジュール1の、第1のリードピン22上に実装されたモニタ用PD7にワイヤボンディングするときは、例えば、図10(A)に示すように、ボンディングのしやすさを考慮し、ワイヤWが通されたキャピラリCの軸CPとボンディング対象のモニタ用PD7の前面7aの電極とが垂直になるよう、キャピラリCに対してステム2を傾ける。そして、キャピラリCを駆動してワイヤWをモニタ用PD7の前面7aに押し当て、ボンディングを行う。
また、上述のモニタ用PD7へのワイヤボンディング後に第2のリードピン23にワイヤボンディングするときは、例えば、図10(B)に示すように、ステム2の傾きを図10(A)の状態で維持したまま、キャピラリCを駆動し、ワイヤWを第2のリードピン23の上部側面に押し当て、ボンディングを行う。
【0012】
しかし、図10(A),(B)のようにボンディングを行う場合、キャピラリCの軸CPと、第1(第2)のリードピン22(23)のステムベース21への取付軸P1(P2)とが平行でないので、ボンディングの際のキャピラリを介した荷重や超音波によるエネルギーが第1(第2)のリードピン22(23)の撓みによって逃げるため、安定したボンディングを行い難い。
【0013】
本発明は、上述のような実情を鑑み、光モジュールのパッケージを構成するステムに取付けられたリードピン、または、そのリードピンに取付けられた素子へのワイヤのボンディングを安定して行うことができるワイヤボンディング装置及びワイヤボンディング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明のワイヤボンディング装置は、ステムに取付けられた外部回路接続用のリードピン、又は該リードピン上に実装された電子部品に対して、ステムをステムホルダで保持し、ワイヤが通されたキャピラリを駆動してボンディングを行うものであって、ステムホルダが、ステムを位置決めして装着したときに、リードピンの上方側部に当接する当て付け部材を有し、ボンディングを行う際に、ステムホルダが、当て付け部材がキャピラリの押圧力に抗してリードピンを支える位置に傾動されることを特徴とする。
【0015】
また、ステムホルダが、リードピン毎に当て付け部材を有することが好ましく、当て付け部材が、リードピンに弾性的に当接することも好ましい。さらに、当て付け部材が板バネによる弾性力によりリードピンに弾性的に当接する形態でもよい。
【0016】
また、本発明のワイヤボンディング方法は、ステムに取付けられた外部回路接続用のリードピン、又は該リードピン上に実装された電子部品に対して、ステムをステムホルダで保持しワイヤが通されたキャピラリを駆動してボンディングを行うものであって、ステムホルダにステムを位置決めして装着し、リードピンの上方側部に当て付け部材を当接させ、ボンディングを行う際に、ステムホルダを傾動させて当て付け部材がキャピラリの押圧力に抗して前記リードピンを支えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、キャピラリを駆動しリードピンまたはリードピン上の素子にワイヤを押し当てボンディングを行う際に、キャピラリの押圧力に抗してリードビンをステムホルダの当て付け部材で支えるため、リードピンが撓むことがないので、ワイヤボンディングを安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明によるワイヤボンディング装置の概要を説明する図である。
【図2】本発明のワイヤボンディング装置のステムホルダについて説明する図である。
【図3】図2のステムホルダに固定されたステムのリードピンまたは該リードピン上の素子にワイヤをボンディングするときの様子を示す図である。
【図4】図2のステムホルダに固定されたステムのリードピンにワイヤをボンディングするときの様子を示す図である。
【図5】図2のステムホルダに固定されたステムのリードピンにワイヤをボンディングするときの様子を示す図である。
【図6】ステムホルダの第2及び第3の当て付け部材の他の例を説明する図である。
【図7】本発明の課題を説明する光モジュールの一例の外観図である。
【図8】図7の光モジュールの要部を示す図である。
【図9】図7の光モジュールの要部を示す図である。
【図10】本発明の課題を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に示すようには、本発明のワイヤボンディング装置は、光モジュールのステムに固定されたリードピンや、該リードピンに実装された素子の電極、ステム上に実装された素子の電極に、ワイヤをボンディングするもので、ボンディングアーム81と、駆動装置82と、XYステージ83と、ボンディングステージ84とを備える。
【0020】
ボンディングアーム81は、その軸心にワイヤが通されるキャピラリ81aを先端に有し、その駆動装置82は、後述のようにボンディングステージ84上に配置される光モジュールのステムに対してキャピラリ81aを近づけたり遠ざけたりするため、ボンディングアーム81を鉛直方向(Z方向)に駆動する。XYステージ83は、ボンディングアーム81及び駆動装置82からなるボンディングヘッドを搭載して当該ヘッドを水平面内(XY平面内)で移動させ位置決めする。
【0021】
ボンディングステージ84は、ワイヤのボンディングが行われるステムを配置するもので、ステムを装着するステムホルダ84aが、XYステージを設置しているベース(基台)84bに取付けられて成る。また、ボンディングステージ84には、ステムホルダ84aに装着されたステム上のボンディング対象面に所望の角度でキャピラリ(ワイヤ)を押し当てることができるように、ステムホルダ84aをベース84bに対して傾動させる傾動機構(不図示)が設けられている。
【0022】
以上のような構成からなるワイヤボンディング装置8を用いて、ステム上の2点をワイヤにより接続する場合は、まず、XYステージ83及び上記傾動機構を動かすことで、キャピラリ81aに対するボンディング面の角度を調節し、第1ボンディング点上にキャピラリ81aを位置決めする。そして、駆動装置82によりボンディングアーム81を駆動してキャピラリ81aを下降させ、キャピラリ81aの先端のワイヤを第1ボンディング点(始点)に押し当てる。この状態で、不図示のヒータや超音波励起手段を用いて、荷重・熱・超音波をワイヤに加えて最初のボンディングが行われる。
【0023】
このボンディングが終わると、ボンディングアーム81の昇降動作、XYステージ83、傾動機構の動作が適宜行われ、所定のループコントロールにしたがってワイヤが引き出され、同様に第2ボンディング点(終点)へボンディングが行われる。また、その後、ボンディングアーム81を上昇させることで、ワイヤが切断され、これにより、ステム上の2点のワイヤ接続が完了する。
【0024】
続いて、図2を用い、前述の図8を参照し、本発明のワイヤボンディング装置の特徴部に関わるステムホルダについて説明する。図2(A)は、ステムホルダを鉛直方向上側から見た様子を示す図である。図2(B)は、図2(A)のステムホルダを当て付け部材の図示を省略して示す図、図2(C)は、PD等の電子素子が実装されたステムをステムホルダに装着させるときの様子を示す図、図2(D)は、ステムがステムホルダに装着され固定されたときの様子を示す図である。なお、図2(C),(D)では、ステム上のLDやサブマウント、ヒートシング等の図示を省略している。
【0025】
ステムホルダ84aは、例えば、図2(A),(B)に示すように、ステム2が装着されるホルダ本体84c、及び、ホルダ本体84cとの間で当該ホルダ本体84cに装着されたステムをクランプし固定するステム押さえプレート84dを有する。
【0026】
ホルダ本体84cは、支持部84eと、例えば、第1〜第3の当て付け部材84f1〜3とを有する。
支持部84eは、ステム2を支持するもので、ステム2のステムベース21の底面21bを支持する支持壁84gと、ホルダ本体84cにステム2が装着されたときにそのステムベース21の側面21cと接するガイド壁84hとから成る。
支持壁84gには、ホルダ本体84cにステム2を装着するときに、ステム2の底面21bから突出する第1〜第3のリードピン22〜24と当該支持壁84gが干渉しないように切り欠き部84iが形成されている。また、ガイド壁84hの中央には、ステムベース21の側面21cに形成された位置決め凹所21dと係合する位置決め突起(位置決め部)84jが、切り欠き部84iに向けて突出するように形成されている。
【0027】
第1〜第3の当て付け部材84f1〜3はそれぞれ、ホルダ本体84cに装着されたステム2の第1〜第3のリードピン22〜24に当て付けられるものである。これら当て付け部材84f1〜3は、ホルダ本体84cの固定壁84kに対して、ステム2の装着方向に弾性部材84mにより移動可能に取付けられ、第1〜第3のリードピン22〜24の上端側面に当接する。このようにして、第1〜第3の当て付け部材84f1〜3は、ホルダ本体84cの一定の位置に設けられている。
また、第1〜第3の当て付け部材84f1〜3はそれぞれ、第1〜第3のリードピン22〜24の上端側面に対応した形状を有しており、第1のリードピン22の形状が他のリードピン23,24の形状と異なっているので、第1の当て付け部材84fの形状は、他の当接ヘッド84f,84fと異なった形状となっている。
【0028】
ステム押さえプレート84dは、ホルダ本体84cへのステム2の装着、装着されたステム2の取り外しが可能なように、ホルダ本体84cに対して近づけたり離間させたりできるようになっている。
【0029】
上述のステムホルダ84aにステム2を装着・固定(クランプ)するには、図2(C)のように、ステムベース21の位置決め凹所21dがホルダ本体84cの位置決め突起84jとが対向するようにステム2の向きを合わせ、ステム2を、ホルダ本体84cの支持壁84g上をスライドさせてゆく。そして、図2(D)のように、ステムベース21の位置決め凹所21dとホルダ本体84cの位置決め突起84jとが係合した状態で、ステム押さえプレート84dとホルダ本体84cでステム2を挟持する。これにより、ステム2は、第1〜第3のリードピン22〜24の上端側部にそれぞれ第1〜第3の当て付け部材84f1〜3が当接された状態で、ステムホルダ84aに固定される。
【0030】
以下では、図3〜図5を用いて、図7及び図8の光モジュールの作製のため図2のステムホルダに固定のステム上で行うワイヤボンディングについて説明する。
図7及び図8の光モジュールの作製のためには、(1)第1のリードピン22に実装されたモニタ用PD7と第2のリードピン23とのワイヤ接続、(2)LD6と第1のリードピン22とのワイヤ接続、(3)サブマウント5と第3のリードピン24とのワイヤ接続、が必要である。
【0031】
(1)第1のリードピン22上のモニタ用PD7と第2のリードピン23とのワイヤ接続
このワイヤ接続は、例えば、ワイヤボンディングの始点をモニタ用PD7の前面7aの電極とし、終点を第2のリードピン23の上端側面として行われる。
モニタPDの前面7aの電極へのワイヤのボンディングは、図2のステムホルダ84aを傾け、図3(A)のように、キャピラリCの軸CPとボンディング対象のモニタ用PD7の前面7aの電極とが垂直にされた状態で、キャピラリCを駆動してワイヤWをモニタ用PD7の前面7aに押し当てて行われる。このボンディングの際、第1の当て付け部材84fもステム2と共に傾けられる(傾斜される)。
【0032】
それによって、第1のリードピン22上のモニタ用PD7に対するキャピラリCの押圧力に抗して、第1のリードピン22を第1の当て付け部材84fで支えることができる。第1の当て付け部材84fは、第1のリードピン22のキャピラリC側と反対側であって、キャピラリCの軸CP上の位置を支えている。したがって、キャピラリCの軸CPと第1のリードピン22のステムベース21への取付軸P1とが一致していなくても、第1のリードピン22の撓みが発生しないので、モニタ用PD7の前面7aの電極にワイヤWを安定してボンディングすることができる。
【0033】
続いて行われる第2のリードピンの上端側面へのワイヤのボンディングは、図3(A)の状態でステムホルダ84aの角度を維持したまま行われる。上記角度を維持していては、図3(B)のように、キャピラリCの軸CPと第2のリードピン23の取付け軸P2とが一致しないが、このままの状態で、キャピラリCを駆動してワイヤWを第2のリードピン23の上端側面に押し当てて、ボンディングが行われる。
【0034】
このボンディングの際、第2の当て付け部材84fもステム2と共に傾けられている。そのため、第2のリードピン23に対するキャピラリCの押圧力に抗して、第2のリードピン22を第2の当て付け部材84fで支えることができる。第2の当て付け部材84fは、第2のリードピン23のキャピラリC側と反対側であって、キャピラリCの軸CP上の位置を支えている。したがって、第2のリードピン23の撓みを防止し、当該リードピン23にワイヤを安定してボンディングできる。
【0035】
(2)LD6と第1のリードピン22とのワイヤ接続
このワイヤ接続は、例えば、ワイヤボンディングの始点をLD6の上面6bの電極とし、終点を第1のリードピン22の上面22bとして行われる。
図示は省略するが、LD6の上面6bの電極へのワイヤのボンディングは、キャピラリCの軸CPとLD6の上面6bの電極とが垂直にされた状態で、キャピラリCを駆動してワイヤWをLD6の上面6bに押し当てて行われる。
【0036】
続いて行われる第1のリードピン22の上面22bへのワイヤのボンディングは、ステムホルダ84aの角度を変えずに、図4のように、キャピラリCを駆動してワイヤWを第1のリードピン22の上面22bに押し当てて行われる。ステムホルダ84aの角度を変えない場合、ボンディングの際にキャピラリCの軸CPと第1のリードピン22の取付軸P1とが一致していないことにより、第1のリードピン22に撓みが発生する恐れがある。
【0037】
しかし、本発明のボンディング装置では、このボンディングの際、第1のリードピン22の上面22bに対するキャピラリCの押圧力に抗して、当該リードピン22を第1の当て付け部材84fで支えることができる。第1の当て付け部材84fは、第1のリードピン22のキャピラリC側と反対側であって、キャピラリCの軸CP上の位置を支えている。したがって、第1のリードピン22の撓みを防止し、当該リードピン22にワイヤを安定してボンディングできる。
【0038】
(3)サブマウント5と第3のリードピン24とのワイヤ接続
このワイヤ接続は、例えば、ワイヤボンディングの始点をサブマウント5の上面5aの電極とし、終点を第3のリードピン24の上面24aとして行われる。
【0039】
図示は省略するが、サブマウント5の上面5aの電極へのワイヤのボンディングは、キャピラリCの軸CPとサブマウント5の上面5aの電極とが垂直にされた状態で、キャピラリCを駆動してワイヤWをサブマウント5の上面5aに押し当てて行われる。
【0040】
続いて行われる第3のリードピン24の上面24aへのワイヤのボンディングは、ステムホルダ84aの角度を変えずに、図5のように、キャピラリCを駆動してワイヤWを第3のリードピン24の上面24aに押し当てて行われる。このボンディングの際、第3のリードピン24が長いため、当該リードピン24が揺れ、荷重と超音波が逃げてきちんとボンディングできないことが想定されるが、本発明のボンディング装置では、第3の当て付け部材84fで、第3のリードピン24の側面を支えているので、上述のようなことは生じない。
【0041】
なお、上記(1)〜(3)のワイヤボンディングを行う順番は任意であるが、(2),(3)は、ステムホルダ84aの基台84bに対する角度が同じであるので、続けて(または同時に)行うことが好ましい。また、(1)〜(3)におけるワイヤボンディングの始点と終点は入れ替えても良い。
【0042】
上述の例の第2及び第3の当て付け部材84f,84fは、それぞれ、直方体形状となっているが、図6の第2及び第3の当て付け部材84f’,84f’で示すように、第2及び第3のリードピン23,24に応じた形状、具体的にはこれらリードピン23,24を囲う形状となっていてもよい。この形状であれば、キャピラリC(ワイヤW)の押し当て方向のリードピンの撓みだけでなく、当該押し当て方向と垂直方向(左右)への撓みも防止できる。
【0043】
なお、上述の例では、各リードピンに当て付け部材が弾性的に当接する形態であったが、非弾性的に当接する形態であってもよい。ただし、弾性的に支持する形態であれば、各リードピンの取付け位置のバラツキを吸収することができるため、各リードピンを所定の範囲の力で当接することができるので、当て付ける力が強すぎリードピンのハーメチックシール部に応力が掛かりリークが起きたりすることを回避することができる。当て付け部材に用いる弾性部材は、ボンディングの際にリードピンが撓まず、かつ、上記リークが起きない範囲の力でリードピンに当接するよう設計する。弾性部材としては、ステムの外径がΦ5.6mmと小さく、リードピンも小さいため、板バネを用いるよい。なお、板バネを用いるのであれば、弾性部材と当て付け部材とを板金材料から一体的に作製することもできる。
【0044】
また、上述の例は、リードピン毎に一つの当て付け部材を有する形態であったが、一つの当て付け部材が複数のリードピンに当接しボンディングの際に上述のように支持する形態であってもよい。ただし、リードピン毎に一つの当接部材を有する形態であれば、各リードピンの取付け位置のバラツキを吸収できる。
【0045】
以上のように、本発明によれば、キャピラリを駆動しリードピンまたはリードピン上の素子にワイヤを押し当てボンディングを行う際に、キャピラリの押圧力に抗してリードビンをステムホルダの当て付け部材で支えるため、リードピンが撓むことがないので、ボンディングを安定して行うことができる。本発明は、図8の光モジュールのように、リードピンに素子を実装したりする結果リードピンが長くなっている形態の光モジュールの作製を目的とした、ワイヤボンディングに好適に用いられる。このようにリードピンが長いと、ボンディングの際のキャピラリの押圧力によりリードピンが撓みやすいためである。
【符号の説明】
【0046】
8…ワイヤボンディング装置、81…ボンディングアーム、81a…キャピラリ、82…駆動装置、83…XYステージ、84…ボンディングステージ、84a…ステムホルダ、84b…ベース(基台)、84c…ホルダ本体、84d…ステム押さえプレート、84e…支持部、84f1〜3…第1〜第3の当て付け部材、84g…支持壁、84h…ガイド壁、84i…切り欠き部、84j…位置決め突起、84k…固定壁、84m…弾性部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステムに取付けられた外部回路接続用のリードピン、又は該リードピン上に実装された電子部品に対して、前記ステムをステムホルダで保持し、ワイヤが通されたキャピラリを駆動してボンディングを行うワイヤボンディング装置であって、
前記ステムホルダは、前記ステムを位置決めして装着したときに、前記リードピンの上方側部に当接する当て付け部材を有し、
前記ボンディングを行う際に、前記ステムホルダは、前記当て付け部材が前記キャピラリの押圧力に抗して前記リードピンを支える位置に傾動されることを特徴とするワイヤボンディング装置。
【請求項2】
前記ステムホルダは、前記リードピン毎に前記当て付け部材を有することを特徴とする請求項1に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項3】
前記当て付け部材は、前記リードピンに弾性的に当接することを特徴とする請求項1または2に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項4】
前記当て付け部材は、板バネによる弾性力により、前記リードピンに弾性的に当接することを特徴とする請求項3に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項5】
ステムに取付けられた外部回路接続用のリードピン、又は該リードピン上に実装された電子部品に対して、前記ステムをステムホルダで保持し、ワイヤが通されたキャピラリを駆動してボンディングを行うワイヤボンディング方法であって、
前記ステムホルダに前記ステムを位置決めして装着し、前記リードピンの上方側部に当て付け部材を当接させ、
前記ボンディングを行う際に、前記ステムホルダを傾動させて前記当て付け部材が前記キャピラリの押圧力に抗して前記リードピンを支えることを特徴とするワイヤボンディング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−245264(P2010−245264A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92038(P2009−92038)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】