説明

ワイヤリーリング設備のアンコイラ

【課題】高速でのリーリング及びワイヤの直径が太い場合のリーリングにおいても、安定したワイヤの巻き出しができるようにする。
【解決手段】ラン巻コイル2のワイヤ1を巻き出すアンコイラ16と、ワイヤ1を巻き取る巻取・巻出装置と、巻取・巻出装置で巻き取るワイヤに張力を付加する張力付与装置とを有するリーリング設備におけるアンコイラ16を、水平回転可能に備えた水平回転台53と、水平回転台53上に載置するラン巻コイル2の軸線が水平回転台53の回転中心に一致するように案内する案内部材61と、水平回転台53の回転を駆動する巻出駆動装置55とにより構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアスピニング工法により吊橋ケーブルを架設する際に、ラン巻コイルにラン巻きされたワイヤを予め整巻リールに整列して巻き取っておくためのワイヤリーリング設備のアンコイラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エアスピニング工法により吊橋ケーブルを架設するに当たっては、まず工場または架設現地等において吊橋ケーブル用のワイヤ(亜鉛メッキ鋼線の素線)がラン巻状態に筒状に巻かれたラン巻コイルからワイヤを巻き出して、整巻リールに整列状態でしかも所要の巻き絞め状態となるように巻き直すワイヤリーリングを実施している。前記ラン巻コイルは、鉛直な中心ガイドの回りに上部からワイヤを周回するように垂下させて下部から上方に向けて積層させることで筒状に形成しており、このようにラフな状態で巻かれていることからラン巻コイルと称されている。ラン巻コイルは上記したようにラフな状態に巻かれているために、ラン巻コイルからワイヤを巻き出してエアスピニング工法によって吊橋ケーブルを架設しようとしても、ワイヤの巻き出しが安定せず、引っ掛かる等の問題が生じるため、前記整巻リールに巻き直すワイヤリーリングが実施されている。
【0003】
図5及び図6は吊橋架設現場に設けられる従来のワイヤリーリング設備の一例を示したもので、前記したようにラン巻状態に巻かれたラン巻コイル2は、クレーンまたはレッカー等を用いてワイヤリーリング設備のアンコイラ3にセットする。アンコイラ3は鉛直軸を中心に回転が自在な回転台3aの上部中心にガイド3bを有しており、前記筒状のラン巻コイル2は中心穴が前記ガイド3bに嵌合するようにしてアンコイラ3にセットされる。次いで、アンコイラ3にセットしたラン巻コイル2からワイヤ1を繰り出して張力付与装置4を介し巻取・巻出装置5に2個備えられた整巻リール6a,6bの一方(図6では整巻リール6a)にワイヤ1の先端部をセットし、巻取・巻出装置5の整巻リール6aを巻取駆動装置15で駆動することで、張力付与装置4を介してアンコイラ3の回転を追随させ、ラン巻コイル2の側部から引き出されるワイヤ1を一方の整巻リール6aにより必要量整列状態に巻き取るようにしている。
【0004】
エアスピニング工法にて吊橋ケーブルを架設する際には、既にワイヤリーリング設備でワイヤ1の整列巻き取りが終了した他方の整巻リール6bから繰り出させたワイヤ1を、図7の素線緊張塔7のフローティングシーブ8、素線ガイドローラ9、スピニングホイール10、ストランド調整装置11に取付けられたストランドシュー12に順次掛けて、ワイヤ1の先端部をアンカー13に仮固定し、前記フローティングシーブ8の上下動を観察しながら巻取・巻出装置5の整巻リール6bの回転にブレーキング操作を加えることにより、曳索駆動装置14の駆動、即ちスピニングホイール10の架設速度に巻取・巻出装置5における整巻リール6bの送出速度を追従させて巻き出しを行い、続いて、この間にワイヤ1の整列巻き取りが終了した一方の整巻リール6aによる前記アンリーリング作業を行うようにして、整巻リール6a,6bから交互に巻き出すようにしていた。
【0005】
上記したワイヤリーリング設備の従来装置としては特許文献1に示されるものがある。
【特許文献1】特開昭51−52636号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に示される従来のワイヤリーリング設備においては次のような種々の問題を有していた。
【0007】
即ち、ラン巻コイル2はその軸線が鉛直になるようにアンコイラ3にセットされており、アンコイラ3の側部から接線方向にワイヤ1を巻き出すようにしているため、比較的緩くラン巻きされているラン巻コイル2は、ワイヤ1の引き出しにより巻き絞めされてワイヤ1が引っ掛かる場合が発生し、このためにワイヤ1の巻き出しが不能になる問題が生じていた。このようにワイヤ1の巻き出しが不能になると、巻取・巻出装置5を停止し、ラン巻コイル2に締って引っ掛かったワイヤ1を弛めて再び巻き取りが行える状態にする必要があるが、このための復旧作業が非常に大変で時間が掛る問題を有していた。
【0008】
又、巻取・巻出装置5の一方の整巻リール6aでワイヤ1を巻き取っている状態から、急激に整巻リール6aの駆動が停止した場合には、追従して回転しているラン巻コイル2は重量が大きいために慣性によって回り続け、このためにラン巻コイル2からワイヤ1が乱雑に巻き出されることになり、この場合にも復旧作業が非常に大変で時間が掛る問題を有していた。
【0009】
本発明は、上記従来装置の問題点に鑑みてなしたもので、高速でのリーリング及びワイヤの直径が太い場合のリーリングにおいても、安定したワイヤの巻き出しができるようにしたワイヤリーリング設備のアンコイラを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、ラン巻コイルを装着してワイヤを巻き出すアンコイラと、該アンコイラから巻き出したワイヤを整巻リールに整列状態に巻き取り、且つ整巻リールのワイヤを吊橋ケーブルの架設のために巻き出す巻取・巻出装置と、該巻取・巻出装置で巻き取るワイヤに張力を付加する張力付与装置とを備えたワイヤリーリング設備のアンコイラであって、該アンコイラは、水平回転可能に備えた水平回転台と、該水平回転台上に載置するラン巻コイルに嵌合してラン巻コイルの軸線が水平回転台の回転中心に一致するように案内する調心装置と、前記水平回転台の回転を駆動する巻出駆動装置とからなることを特徴とするワイヤリーリング設備のアンコイラである。
【0011】
請求項2の発明は、ラン巻コイルの外径より大きい外径を有してラン巻コイルのワイヤが周方向外側に巻き出されるように案内するワイヤガイドを、ラン巻コイル上に着脱可能に備えたことを特徴とする請求項1に記載のワイヤリーリング設備のアンコイラである。
【0012】
請求項3の発明は、前記アンコイラと張力付与装置との間に配置してアンコイラのラン巻コイルからワイヤを上側に巻き出させて上部に設けた固定シーブと動シーブとの間に掛け回し、ワイヤの張力変動に伴う長さの変化を動シーブが上下することで吸収するようにしたアキュムレータ装置を設け、該アキュムレータ装置の動シーブの高さが所定高さ範囲に維持されるように前記巻出駆動装置によるワイヤの巻き出し速度を調節する巻出制御器を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のワイヤリーリング設備のアンコイラである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のワイヤリーリング設備のアンコイラによれば、ラン巻コイルを水平回転台上に同心に載置し、巻出駆動装置により水平回転台を介しラン巻コイルをワイヤの巻き出し方向に回転してワイヤの巻き出しを行うことにより、巻取・巻出装置によるワイヤの巻き取りによりラン巻コイルから巻き出されるワイヤに大きな張力が作用してラン巻コイルが巻き絞められるような問題を確実に防止することができ、よって、安定したリーリング作業が可能になるという優れた効果を奏し得る。
【0014】
ラン巻コイルをワイヤの巻き出し方向に回転駆動するので、ワイヤが捻れる問題を防止でき、よって直径が大きいワイヤにおいても歪んで曲ることによって引っ掛かるといった問題を防止して安定したリーリング作業を行える効果がある。
【0015】
ラン巻コイル上に環状のワイヤガイドを着脱可能に備えているので、ラン巻コイルのワイヤが常に周方向外側に巻き出されるように案内され、よってアンコイラからのワイヤの巻き出しを更に安定させられる効果がある。
【0016】
又、アキュムレータ装置を備えて、ワイヤを周回するよう垂下させて下部から上方に向けてラン巻きしたラン巻コイルを、上部から上方にワイヤを引き出して巻き出すようにしたので、ワイヤが引っ掛かる問題が防止でき、更に、アキュムレータ装置の動シーブの高さが所定高さ範囲に維持されるように巻出駆動装置によるワイヤの巻き出し速度を調節しているので、ラン巻コイルから巻き出されるワイヤの張力を低い値に安定させることができ、よってアンコイラからのワイヤの巻き出しを更に安定させられる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0018】
図1は本発明のアンコイラの一例を示す側面図、図2は図1の平面図、図3は本発明を適用するワイヤリーリング設備の全体側面図、図4は図3の平面図、である。
【0019】
本発明を適用するワイヤリーリング設備は、図3及び図4に示す如く、ワイヤ1をラン巻きしたラン巻コイル2を装着してワイヤ1の巻き出しを行うアンコイラ16と、該アンコイラ16からのワイヤ1を上側に向かって巻き出させるように案内すると共に、ワイヤ1の張力変動に伴う長さの変化を吸収するようにしたアキュムレータ装置17と、該アキュムレータ装置17からのワイヤ1を2個の整巻リール6a,6bのうちの一方の整巻リール6aに巻き付けて巻取駆動装置15の駆動により整列状態に巻き取り、又、同時に他方の整巻リール6bに巻き取られているワイヤ1を吊橋ケーブルの架設のために巻き出すようにした従来と略同様に構成された巻取・巻出装置18と、巻取・巻出装置18の整巻リール6a,6bに巻き取られるワイヤ1に張力を付加する張力付与装置19とを備えている。図中、20は前記巻取・巻出装置18の整巻リール6a,6bに巻き取られるワイヤ1を案内して整巻リール6a,6bの幅方向にスライドすることにより整列状態での巻き取りを行わせるための案内装置であり、上記巻取・巻出装置18には整巻リール6a,6bの回転を制動するための図示しないブレーキ装置が備えられている。
【0020】
前記巻取・巻出装置18の整巻リール6a,6bに巻き取られるワイヤ1に張力を付加する張力付与装置19は、隔置した巻付シーブ23,24間にワイヤ1を少なくとも1回掛け回して摩擦力を高めるようにした摩擦力増加手段25と、前記巻付シーブ24に備えたブレーキディスク26の回転を制動アクチュエータ27aによって作動するブレーキシュー27の押圧力により制動して整巻リール6a,6bに巻き取られるワイヤ1の張力を調整する張力調整手段28とから構成されている。
【0021】
更に、前記アンコイラ16と張力付与装置19との間に備えるようにしたアキュムレータ装置17は、所要高さの塔本体29を備えており、該塔本体29の上部には前記アンコイラ16の上部まで延びる架台30が設けてあり、該架台30の先端部の下面には円錐状を有する篭形の案内コーン31の上端部に設けた導管32が固定されている。更に、前記架台30の先端部の上側には変向シーブ33が設けられ、更に、前記塔本体29の上部には複数の案内溝34aを備えて回転する固定シーブ34が固定されている。
【0022】
そして、前記アンコイラ16のラン巻コイル2から上側に巻き出させたワイヤ1の先端は、前記案内コーン31の内部を通して導管32から前記変向シーブ33に導いた後、前記固定シーブ34に導き、該固定シーブ34と、該固定シーブ34と同様に複数の案内溝35aを備えた動シーブ35との間に複数回掛け回すことにより、動シーブ35を塔本体29の図示しない空間に吊り下げるようにしている。この時、前記動シーブ35には必要に応じて重り37を取り付けるようにしている。前記固定シーブ34から導出したワイヤ1の先端は、下部に設けた変向シーブ38を介して前記張力付与装置19の巻付シーブ23,24間に少なくとも1回巻き付けた後、前記巻取・巻出装置18の整巻リール6a,6bの一方に巻付けるようにしている。
【0023】
前記張力付与装置19と巻取・巻出装置18との間には、ワイヤ1に加圧ローラ39を押し付けてその反力を計測することによって巻取・巻出装置18で巻き取るワイヤ1の張力を検出するようにした張力計40を設けており、該張力計40による検出張力が設定張力になるように前記張力付与装置19における張力調整手段28の制動アクチュエータ27aを制御するようにしている。
【0024】
上記したワイヤリーリング設備において、前記アンコイラ16は、図1、図2に示す如く、架台50に設けた環状のレール51上に、ローラ52を介して水平回転するようにした水平回転台53を設けており、該水平回転台53は中心下部に設けた回転軸54をモータ等の巻出駆動装置55により、ベルトとプーリ或いはチェーンとホイール又は歯車機構等の伝達部材56を介して回転駆動されるようになっている。この時、巻出駆動装置55は、ラン巻コイル2のワイヤ1を巻き出す方向(巻き取りと逆方向)に水平回転台53を回転駆動するようにしている。57は架台50に設けた固定軸であり、筒形に形成された前記回転軸54を固定軸57に軸受58を介して嵌合させることにより水平回転台53が回転中心で安定して回転するようにしている。更に、前記水平回転台53にはブレーキディスク59が設けてあり、該ブレーキディスク59の回転を制動するブレーキ装置60を設けている。
【0025】
前記水平回転台53の上部には、図2に示すように上部から降下して設置させるラン巻コイルの中心穴に嵌合してラン巻コイル2の軸線を水平回転台53の回転中心に略一致させるようにした例えは十字状部材からなる案内部材61を固定して調心装置を構成している。
【0026】
更に、案内部材61と同心になるように水平回転台53上に載置されるラン巻コイル2の上部には、ワイヤ1の巻き出しを案内するためのワイヤガイド62が着脱可能に備えられている。ワイヤガイド62は、ラン巻コイル2の外径より大きい外径を有してラン巻コイル2のワイヤ1が周方向外側に巻き出されるように案内するための環状の上段リング62aと、ラン巻コイル2の穴径と略同等の外径を有する下段リング62bと、前記上段リング62aに上端が固定され、下端62c’が下段リング62bよりも下側に突出して下部リング62bの外側に固定された複数のV字形の傾斜材62cとにより、ほぼ截頭逆円錐形状に形成されている。従って、上記ワイヤガイド62の傾斜材62cの下端62c’がラン巻コイル2の中心穴に入り込むようにしてラン巻コイル2上に載置されるようになっている。
【0027】
更に、図3に示すアキュムレータ装置17の動シーブ35にストライカ64を取り付けると共に、動シーブ35のストライカ64が所定高さの上部(上限位置A)に移動した時に作動する上限スイッチ65aと、動シーブ35のストライカ64が所定高さの下部(下限位置B)に移動した時に作動する下限スイッチ65bとを塔本体29に取り付け、前記動シーブ35が前記上限位置Aと下限位置Bとの間である所定高さ範囲に常に位置されるように、アンコイラ16の巻出駆動装置55による巻き出し速度を調節するようにした巻出制御器66を設けている。
【0028】
前記アンコイラ16の巻出駆動装置55を駆動してラン巻コイル2からワイヤ1を巻き出す操作は、巻取・巻出装置18の巻取駆動装置15を駆動して整巻リール6a,6bの一方によりワイヤ1を巻き取りる操作と同時に行うようにしている。
【0029】
次に、上記図示例の作動を説明する。
【0030】
工場または架設現地等において吊橋ケーブル用のワイヤ1(亜鉛メッキ鋼線の素線)をラン巻き状態に巻き取ってラン巻コイル2を形成し、このラン巻コイル2はクレーンまたはレッカー等により持ち上げ、吊橋架設現場に設けられたワイヤリーリング設備における図1、図2に示すアンコイラ16に備えている調心装置である案内部材61に中心穴を嵌合させて水平回転台53上にセットする。次に、ラン巻コイル2上に、ラン巻コイル2の中心穴に傾斜材62cの下端62c’が嵌合するようにワイヤガイド62を載置する。
【0031】
ラン巻コイル2の外周から巻き出したワイヤ1の先端は、図3、図4に示すアキュムレータ装置17に設けた案内コーン31の内部を通して導管32から変向シーブ33に導いた後、固定シーブ34に導き、該固定シーブ34と動シーブ35との間に複数回掛け回すことにより動シーブ35を塔本体29に吊り下げ、固定シーブ34から導出したワイヤ1の先端は、下部に設けた変向シーブ38を介して前記張力付与装置19の巻付シーブ23,24間に少なくとも1回巻き付け、即ち、巻付シーブ24に180゜巻き付けた後巻付シーブ23に180゜巻き付け、続いて、前記巻取・巻出装置18の整巻リール6a,6bの一方、例えば整巻リール6aに巻付ける。この時、前記アキュムレータ装置17の固定シーブ34から吊り下げられた動シーブ35の位置が上限スイッチ65aと下限スイッチ65bとの間に位置されるように調整する。
【0032】
この状態から、アンコイラ16の巻出駆動装置55を駆動してラン巻コイル2からワイヤ1を巻き出し方向に回転する操作と、前記巻取・巻出装置18の巻取駆動装置15を駆動して整巻リール6aによりワイヤ1を巻き取りる操作とを同時に行うことでワイヤ1のリーリング作業を開始する。この時、巻取・巻出装置18の整巻リール6aに巻き取られるワイヤ1の張力が張力計40により検出され、その検出張力が設定張力になるように張力付与装置19の張力調整手段28が制御される。これにより、巻取・巻出装置18の整巻リール6aに巻き取られるワイヤ1の張力は一定に保持される。
【0033】
又、前記アキュムレータ装置17の動シーブ35が前記上限位置Aと下限位置Bとの間である所定高さ範囲に常に位置されるように、巻出制御器66はアンコイラ16の巻出駆動装置55による巻き出し速度を調節する。
【0034】
前記アンコイラ16は、ラン巻コイル2をワイヤ1の巻出しを助ける巻き出し方向に回転しているので、張力付与装置19によって巻取・巻出装置18で巻き取るワイヤ1に付加している張力に比して、ラン巻コイル2からは極めて小さな張力でワイヤ1が巻き出されることになる。このように、ラン巻コイル2から巻き出されるワイヤ1の張力が小さく、しかもラン巻コイル2のワイヤ1がワイヤガイド62により案内されてアキュムレータ装置17によって上側に導出されるので、ラン巻コイル2が巻き絞められることが防止され、よってワイヤ1が引っ掛かるといった問題の発生を確実に防止することができる。従って、巻取・巻出装置18による高速での巻き取り作業を行ってもワイヤ1が引っ掛かる問題を生じることなく安定した整巻作業を行えるようになる。
【0035】
上記において、前記ラン巻コイル2は、鉛直な中心ガイドの回りに上部からワイヤを周回するように垂下させて下部から上方に向けて積層させるように予めラン巻きされているため、アンコイラ16にセットしたラン巻コイル2からは、上部から順次ワイヤ1が巻き出されるようになる。このワイヤ1の巻き出しによってラン巻コイル2の高さは順次低くなるが、傾斜材62cの下端62c’がラン巻コイル2の中心穴に嵌合するように載置されたワイヤガイド62はワイヤ1の巻き出しに伴って徐々に沈下しながらワイヤ1をガイドするようになる。
【0036】
又、水平なラン巻コイル2から単に上側にワイヤ1を導出させた場合には、ワイヤ1が捻れてしまい、特に直径が大きいワイヤ1の場合にはワイヤ1が大きく歪んで曲ることにより引っ掛かるといった問題が生じるが、巻出駆動装置55よってラン巻コイル2をワイヤ1の巻出し方向に回転させているために、例えば直径が、5mm以上或いは7mm以上のような太いワイヤ1であっても、捻れによりワイヤ1が曲って引っ掛かるといった問題の発生を防止することができる。
【0037】
又、アキュムレータ装置17を備えて、ワイヤ1を周回するよう垂下させて下部から上方に向けてラン巻きされたラン巻コイル2を、上部から上方にワイヤ1を引き出して巻き出すようにしたので、ワイヤ1が引っ掛かる問題が防止でき、更に、アキュムレータ装置17の動シーブ35の高さが所定高さ範囲に維持されるように巻出駆動装置55によるワイヤ1の巻き出し速度を調節しているので、ラン巻コイル2から巻き出されるワイヤ1の張力を低い値に安定させることができ、よってアンコイラ16からのワイヤ1の巻き出しを更に安定させることができる。
【0038】
リーリング作業を停止する際は、前記巻取・巻出装置18の巻取駆動装置15の駆動を停止して図示しないブレーキ装置により整巻リール6a,6bの回転を停止する操作と、アンコイラ16の巻出駆動装置55の駆動を停止してブレーキ装置60により水平回転台53の回転を停止する操作を同時に行うことにより、ラン巻コイル2が慣性で回転することによってラン巻コイル2のワイヤ1が周囲に乱雑に巻き出されてしまうような問題を防止できる。
【0039】
なお、本発明のワイヤリーリング設備のアンコイラは、上記形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明のアンコイラの一例を示す側面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】本発明を適用するワイヤリーリング設備の全体側面図である。
【図4】図3の平面図である。
【図5】従来のワイヤリーリング設備の一例を示す側面図である。
【図6】図5の平面図である。
【図7】エアスピニング工法にて吊橋ケーブルを架設する方法の一例を示す概略側面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 ワイヤ
2 ラン巻コイル
16 アンコイラ
17 アキュムレータ装置
18 巻取・巻出装置
19 張力付与装置
34 固定シーブ
35 動シーブ
53 水平回転台
55 巻出駆動装置
61 案内部材(調心装置)
62 ワイヤガイド
66 巻出制御器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラン巻コイルを装着してワイヤを巻き出すアンコイラと、該アンコイラから巻き出したワイヤを整巻リールに整列状態に巻き取り、且つ整巻リールのワイヤを吊橋ケーブルの架設のために巻き出す巻取・巻出装置と、該巻取・巻出装置で巻き取るワイヤに張力を付加する張力付与装置とを備えたワイヤリーリング設備のアンコイラであって、該アンコイラは、水平回転可能に備えた水平回転台と、該水平回転台上に載置するラン巻コイルに嵌合してラン巻コイルの軸線が水平回転台の回転中心に一致するように案内する調心装置と、前記水平回転台の回転を駆動する巻出駆動装置とからなることを特徴とするワイヤリーリング設備のアンコイラ。
【請求項2】
ラン巻コイルの外径より大きい外径を有してラン巻コイルのワイヤが周方向外側に巻き出されるように案内するワイヤガイドを、ラン巻コイル上に着脱可能に備えたことを特徴とする請求項1に記載のワイヤリーリング設備のアンコイラ。
【請求項3】
前記アンコイラと張力付与装置との間に配置してアンコイラのラン巻コイルからワイヤを上側に巻き出させて上部に設けた固定シーブと動シーブとの間に掛け回し、ワイヤの張力変動に伴う長さの変化を動シーブが上下することで吸収するようにしたアキュムレータ装置を設け、該アキュムレータ装置の動シーブの高さが所定高さ範囲に維持されるように巻出駆動装置によるワイヤの巻き出し速度を調節する巻出制御器を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のワイヤリーリング設備のアンコイラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−137768(P2008−137768A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−325433(P2006−325433)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】