説明

ワイヤレスコントローラおよびワイヤレスコントロール方法

【課題】 画面上に表示されたGUIを操作してアプリケーションを選択して起動する動作と、専用ゲーム機のコントローラやジョイスティックのようにアプリケーションを操作する動作とをシームレスに実現することの可能なワイヤレスコントローラおよびワイヤレスコントロール方法を提供すること。
【解決手段】 ワイヤレスコントローラは、第1および第2のプロトコルにより所定のベアラで通信を行う通信部と、ユーザの入力を受け付ける操作部と、前記操作部の受け付けた入力に応じた信号を通信部から送信するように制御する制御部とを有し、前記制御部は、相手システムと第1のプロトコルにより接続している状態で、前記相手システムから第2のプロトコルにより接続する要求を受け取ると、第1のプロトコルによる接続を停止して第2のプロトコルによる接続を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ワイヤレスコントローラおよびワイヤレスコントロール方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、スマートフォン、タブレットコンピュータおよびPDA(Personal Digital Assistant)に代表されるように、大型のディスプレイを搭載したモバイル機器が広く利用されている。このようなモバイル機器は、WiFi(登録商標)、WiMAX(登録商標)、3G等の通信技術によりネットワークに接続してアプリケーションをダウンロードして実行することにより、出荷時には搭載していなかった機能を追加可能な構成となっている。
【0003】
また、一部のモバイル機器は、さらにキーボード、マウス、ヘッドセット、ヘッドフォン等の周辺機器と接続するために、例えばBluetooth(登録商標)のような小電力無線データ通信規格を採用した無線通信機能を搭載している。この種の無線通信機能を備えたモバイル機器向けに、ワイヤレスコントローラが提供されている。
【0004】
図10は、ワイヤレスコントローラをモバイル端末に接続して使用する態様を示す図面である。このワイヤレスコントローラ201は、ユーザが方向を入力するためのジョイスティックと、ユーザの操作に供するための各種ボタンとを有しており、モバイル端末210とBluetooth通信により接続する構成となっている。このような構成で、ワイヤレスコントローラ201を利用してモバイル端末210上で動作するゲームアプリケーションを操作することが可能である(例えば、特許文献1乃至3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2009−512073号公報
【特許文献2】特表2009−512074号公報
【特許文献3】特表2009−515239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、BluetoothやZigBee(登録商標)のような通信技術においては、様々な機器と機器との間で通信を簡単に実現するために、接続する機器に応じた通信プロトコル(通信方式)がプロファイルとして取りまとめられている。例えば、Bluetoothにおけるプロファイルとしては、機器の通信接続・認証・暗号化を行うためのGAP(Generic Access Profile)、マウスやキーボードなどの入力装置との通信を行うためのHID(Human Interface Device Profile)、ヘッドセットと通信するためのHSP(Headset Profile)、ハンズフリー通話を実現するためのHFP(Hands-Free Profile)、音声をヘッドフォンにステレオ高音質で伝送するためのA2DP(Advanced Audio Distribution Profile)等を挙げることができる。これらのプロファイルはソフトウェアとしてそれぞれの機器に実装され、機器と機器とは双方が共通して持っているプロファイルによって接続される。
【0007】
また、プロファイルが策定されていない種類の機器を接続する場合や、独自のプロトコルで通信を行いたい場合には、機器および用途に応じて専用プロファイルを策定し、双方の機器に当該専用プロファイルのソフトウェアを実装することにより、通信は実現される。
【0008】
図10に示した従来例においては、ワイヤレスコントローラ201のファームウェアに専用プロファイルのソフトウェアを実装するとともに、モバイル端末210に当該専用プロファイルのソフトウェアをインストールし、まずワイヤレスコントローラ201およびモバイル端末210を当該プロファイルで接続する。その後、当該プロファイルに対応したゲームアプリケーションをモバイル端末210上で実行することにより、ユーザがゲームコントローラ201を操作した動作に応じた信号がモバイル端末210上のゲームアプリケーションへ送信され、ゲームコントローラ201で当該ゲームアプリケーションを操作することが可能となる。
【0009】
ところが、上記の動作では、ワイヤレスコントローラとモバイル端末とを予め専用プロファイルで接続し、対応したゲームアプリケーションを選択して起動するまでの操作は、例えばモバイル端末のタッチパネルやキーパッドのような標準入力手段を操作しなければならず、コンシューマーゲーム機のようにゲームアプリケーションを選択して起動するところからゲーム実行中までの操作をワイヤレスコントローラによってシームレスに実現することはできなかった。ここで、「シームレスに実現」とは、ユーザによる操作を途中に介在させることなく一連の操作を連続的に実現することをいう。
【0010】
標準的なモバイル端末のBluetooth通信機能はHIDプロファイルをサポートしており、HIDプロファイルに対応したBluetoothキーボードやマウスを接続して画面上に表示されたGUIを操作することができる。したがって、ワイヤレスコントローラにも同様にHIDプロファイルのソフトウェアを実装すれば、ワイヤレスコントローラとモバイル端末とをHIDプロファイルで接続してGUIを操作し、アプリケーションを選択して起動することは可能である。しかし、この場合にはゲームアプリケーションをHIDプロファイルで接続したワイヤレスコントローラで操作しなければならないので、キーボードやマウス相当の入力操作しかできず、コンシューマーゲーム機のコントローラやジョイスティックのような操作を実現することができない。
【0011】
この発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、画面上に表示されたGUIを操作してアプリケーションを選択して起動する動作と、コンシューマーゲーム機のコントローラやジョイスティックのようにアプリケーションを操作する動作とをシームレスに実現することの可能なワイヤレスコントローラおよびワイヤレスコントロール方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するためにこの発明の第1の観点は、第1および第2のプロトコルにより所定のベアラで通信を行う通信部と、ユーザの入力を受け付ける操作部と、前記操作部の受け付けた入力に応じた信号を通信部から送信するように制御する制御部とを有するワイヤレスコントローラにあって、前記制御部は、相手システムと第1のプロトコルにより接続している状態で、前記相手システムから第2のプロトコルにより接続する要求を受け取ると、第1のプロトコルによる接続を停止して第2のプロトコルによる接続を開始することを特徴とする。
【0013】
上記構成において、前記第2のプロトコルにより接続している状態で、さらに前記相手システムから第1のプロトコルにより接続する要求を受け取った場合、第2のプロトコルによる通信を停止して第1のプロトコルによる接続を再開すれば、相手システムからの要求に応じてプロトコル間の相互遷移を自動的に行うことが可能である。
【0014】
また、前記第2のプロトコルにより接続している状態で、さらに前記相手システムから第1のプロトコルにより接続する要求を受け取った場合、当該要求を無視して第2のプロトコルによる通信を継続する構成とすれば、相手システムが使用していない第1のプロトコルについて接続を継続しようとしても、第2のプロトコルによる接続を継続することが可能である。
【0015】
上記構成において、前記第1のプロトコルは前記相手システムを標準的に操作するためのプロトコルであり、前記第2のプロトコルは前記相手システム上で特定のアプリケーションを操作するためのプロトコルであることが好適である。例えば、前記所定の通信ベアラはBluetoothであり、前記第1のプロトコルはHIDプロファイルとして規定されたものであり、前記第2のプロトコルは前記特定のアプリケーションを操作するための専用プロファイルである構成とすることができる。
【0016】
また、本発明の第2の観点は、Bluetooth通信で接続されたワイヤレスコントローラによって所定の電子機器を操作するワイヤレスコントロール方法にあって、前記コントローラを前記所定の電子機器にHIDプロファイルで接続することにより、キーボードまたはマウスとして機能させるとともに、前記電子機器上で所定のプログラムが起動された際には、前記コントローラの前記HIDプロファイルによる接続を停止して、前記所定のプログラムが使用する専用プロファイルによる接続を開始して、前記プログラムの専用コントローラとして機能させることを特徴とする。
【0017】
上記構成においては、さらに、前記所定のプログラムを終了または中断する際に、前記専用プロファイルによる接続を停止して、前記HIDプロファイルによる接続を開始して前記ワイヤレスコントローラをキーボードまたはマウスとしての機能を再開すれば、相手システムからの要求に応じてプロトコル間の相互遷移を自動的に行うことが可能である。
【0018】
また、前記所定のプログラムは、前記専用プロファイルのライブラリを含む構成とすれば、前記所定のプログラムとともに前記専用プロファイルのライブラリをインストールすることができ、別途ライブラリをインストールする手順が省けるので好適である。
【発明の効果】
【0019】
すなわちこの発明のワイヤレスコントローラによれば、所定の通信ベアラで接続した相手システムと第1のプロトコルにより接続している状態で、通信相手から第2のプロトコルにより接続する要求を受け取ると、第1のプロトコルによる接続を停止して第2のプロトコルによる接続を開始するようにしているので、相手システム側から明示的に第1のプロトコルによる通信を終了して第2のプロトコルによる通信を開始する操作を行うことなく、プロトコルを切り替えることが可能であり、第1のプロトコルで通信している状態から第2のプロトルを使用している状態へシームレスに移行することが可能となる。
【0020】
またこの発明のワイヤレスコントロール方法によれば、コントローラを所定の電子機器にHIDプロファイルで接続することにより、キーボードまたはマウスとして機能させるとともに、電子機器上で所定のプログラムが起動された際には、コントローラのHIDプロファイルによる接続を停止して、所定のプログラムが使用する専用プロファイルによる接続を開始して、前記プログラムの専用コントローラとして機能させるようにしているので、相手システム側から明示的にHIDプロファイルによる通信を終了して専用プロトコルによる通信を開始する操作を行うことなく、プロトコルを切り替えることが可能であり、HIDプロトコルで通信している状態から専用プロトルを使用している状態へシームレスに移行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ワイヤレスコントローラの外観を示す図。
【図2】ワイヤレスコントローラのブロック図。
【図3】ワイヤレスコントローラの制御部の概要を示す図。
【図4】(a)は専用プロファイルにおけるキーコードアサインを示す図、(b)はHIDプロファイルにおけるキーコードアサインを示す図。
【図5】ワイヤレスコントローラの使用態様を示す図。
【図6】ワイヤレスコントローラの別の使用態様を示す図。
【図7】通信端末のハードウェアブロック図。
【図8】通信端末のソフトウェアブロック図。
【図9】ワイヤレスコントロール方法を実施する動作のシーケンス図。
【図10】従来例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照してこの発明に係わる実施形態を説明する。
図1はこの発明の一実施形態に係るワイヤレスコントローラ100の外観図、図2はハードウェアブロック図である。図1および2に示すように、ワイヤレスコントローラ100は、主として、筐体101から露出して設けられたAボタン102、Bボタン103、Cボタン104、Dボタン105および方向入力手段106と、通信部112と、バッテリ107と、これらの構成要素が接続されて所定の信号処理および制御を行う制御部111とから構成されている。
【0023】
筐体101はユーザが片手で握りやすい形状をなしており、Aボタン102、Bボタン103、Cボタン104、Dボタン105は、いずれも筐体101を手で握ったユーザが操作可能な位置に設けられている。各ボタンは制御部111に接続されており、ユーザが操作することによりボタンに応じた所定の信号が制御部111に通知される。
【0024】
方向入力手段106は、筐体101の上面に設けられており、ここでは親指で操作するスティック部を備えたジョイスティックである。方向入力手段106は、各ボタンと同様に制御部111に接続されており、スティックを傾けた方向と傾けた量に応じた所定の信号が制御部111に通知される。
【0025】
通信部112はBluetooth通信機能を備えた通信チップであり、制御部111によって制御されることにより、他のBluetooth機器と接続して通信を行うものである。バッテリ107は各部の電源として機能する。
【0026】
制御部111は、図3に示すように処理部121およびメモリ122を有するマイクロコントローラにより構成される。制御部121は入出力部およびCPUコアを含んでおり、メモリ122はファームウェア123を記憶している。ここで、ファームウェア123は制御部121のCPUコアで実行することにより、通信部112を制御して他のBluetooth機器と接続し、入出力部にてAボタン102、Bボタン103、Cボタン104、Dボタン105および方向入力手段106からの信号を受け付けつつ、通信部112により所定の通信を実現するプログラムである。
【0027】
ファームウェア123には、専用プロファイル131およびHIDプロファイル132が含まれている。このうち専用プロファイル131は、ワイヤレスコントローラ100を、後述するコントローラ対応アプリケーションのゲームコントローラとして使用するためのプログラムである。専用プロファイル131は、各ボタンの操作に応じて図4(a)に示すKeyCodeおよびGameAction信号を相手先に送信し、また、方向入力手段106の操作方向に応じた方向信号(x,y)および操作量に応じたレンジ信号(−127〜128)をそれぞれ送信する機能を実現する。
【0028】
一方、HIDプロファイル132は、ワイヤレスコントローラ100を標準入力装置のマウスとして使用するためのプログラムである。HIDプロファイル132は、各ボタンの操作に応じて図4(b)に示すHIDプロファイルに沿った信号を相手先に送信し、また方向入力手段106の操作方向に応じたマウス移動方向(x,y)信号および操作量に応じたマウス移動レンジ信号(−16〜16)信号を送信する機能を実現する。
【0029】
なお、HIDプロファイル132は、上記のようにワイヤレスコントローラ100をマウスとして使用するのではなく、キーボードに相当する入力手段として使用することも可能である。その場合には、各ボタンおよび方向入力手段106の操作に応じて所定のキーコードを送信するようにHIDプロファイル132を設定する。また、HIDプロファイル132に、ワイヤレスコントローラ100をマウスとして使用する第1のモードと、キーボードとして使用する第2のモードとを設け、これらを切り替え可能な構成としても構わない。
【0030】
図5は、ワイヤレスコントローラ100と通信端末200とをBluetoothにより接続して専用プロファイル131により通信することにより、通信端末200上で動いているゲームをコントロールしている状態を示す図である。ここでは専用プロファイル131を使用することにより、方向入力手段106はアナログジョイスティックとして利用され、また各ボタンがゲーム専用の機能に利用されている。
【0031】
一方、図6はワイヤレスコントローラ100と通信端末200とをHIDプロファイル132で通信させることにより、矢印カーソルを利用して通信端末200の画面上に表示されたGUIを操作している状態を示す図である。ここでは、HIDプロファイル132を使用することにより、ワイヤレスコントローラ100はポインティングデバイスとして機能している。
【0032】
本実施形態にかかるワイヤレスコントローラ100は、通信端末200等のBluetooth機器と接続することにより、図6に示したように画面上のGUIを操作することができる。さらにGUIを操作して専用プロファイルを利用するコントローラ対応アプリケーションを起動した場合には、他の操作を要求することなく、専用プロファイル131を利用してコントローラ対応アプリケーションの操作を行うことができる(図7を参照)。この一連の動作の詳細については後述する。
【0033】
次に、ワイヤレスコントローラ100と通信を行うBluetooth機器の代表例である通信端末200について説明する。図7は、通信端末200のハードウェア構成を示すブロック図である。なお、図7は標準的なハードウェア構成について示すものであり、一部に本発明とは関係のない構成も示されている。
【0034】
この通信端末装置200は、主として、処理装置であるアプリケーションプロセッサ201およびベースバンドプロセッサ202と、アプリケーションプロセッサ201に接続されたバッテリ203、揮発性メモリであるRAM204、書き込み可能な不揮発性メモリであるフラッシュメモリ205、メモリーカード端子206、GPSトランシーバ208、WiFi/Bluetoothトランシーバ209、キーパッド/ボタン210、LCD/タッチパネル211、マイク212、スピーカ213、USB端子214およびカメラ215と、ベースバンドプロセッサ202に接続されたトランシーバ/USIM207とから構成されている。以下、これらの構成について説明する。
【0035】
アプリケーションプロセッサ201はMPUまたはCPUであり、バッテリ203から電力の供給を受けて、後述するフラッシュメモリ205に格納されたプログラムを実行することにより種々の機能を実現するものである。ベースバンドプロセッサ202は、無線通信の基本的な機能を実現するための信号処理を行うプロセッサである。これらアプリケーションプロセッサ201およびベースバンドプロセッサ202は一つのチップセットとして構成してもよいし、両者の機能を一つのプロセッサに統合したものであっても構わない。
【0036】
バッテリ203は、各機能ブロックに電力を供給するもので、必要に応じてバッテリを制御するコントローラチップが併用される。
RAM104は、揮発性メモリでありSRAMやPSRAM、各種DRAM等の半導体記憶装置が採用される。フラッシュメモリ205は、書き換え可能な不揮発性メモリであって、NAND型であってもNOR型であってもよいし他の形式であっても構わない。RAM204とフラッシュメモリ205とを比較すると、その読み出し時間および書き込み時間はいずれもRAM204がより高速である。また、通信端末装置200にはメモリーカード端子206が設けられており、小型のフラッシュメモリモジュールを外部メモリとして接続することが可能である。
【0037】
フラッシュメモリ205には、アプリケーションプロセッサ201およびベースバンドプロセッサ202で実行することにより通信端末装置200で所定の機能を実現するための種々のプログラムおよびデータが格納されている。これらのプログラムおよび/またはデータは必要に応じてRAM204にロードされ、RAM204上に確保されたヒープメモリを利用して実行される。
【0038】
トランシーバ/USIM207はベースバンドプロセッサ202と接続されており、装着されたUSIM(Universal Subscriber Identity Module)すなわち汎用加入者識別モジュールの情報に基づいて、ベースバンドプロセッサ202の制御により所定電波帯域で電波を送受信して通信を行う回路である。本実施形態における通信端末装置200は、ベースバンドプロセッサ202とトランシーバ/USIM207により移動体通信網に接続して通信を行う構成となっている。
【0039】
GPS(Global Positioning System)トランシーバ208は、通信端末装置200の位置情報を取得するGPS信号を受信するための部であり、WiFi/Bluetoothトランシーバ209はIEEE802.11a、IEEE802,11b、IEEE802.11g、IEEE802.11n等で規定されたWiFi(無線LAN)技術を利用した通信およびIEEE802.15.1およびBluetooth規格で規定されたBluetooth技術を利用した通信を行う回路である。これらの回路は互いに独立したチップとして実装しても良いし、双方の回路を一つのチップに実装した構成であっても構わない。
【0040】
キーパッド/ボタン210は、通信端末装置200の筐体に設けられた入力装置であって、後述するLCD/タッチパネル211とともにユーザが通信端末装置200を操作するための入力を受け付ける。
【0041】
LCD/タッチパネル211は、タッチパネル機能を備えた液晶ディスプレイ装置であって、通信端末装置200はLCD/タッチパネル111の画面にアプリケーションの情報を表示するとともにGUI(Graphical User Interface)を表示してユーザの操作に供する。
【0042】
さらに、マイク212およびスピーカ213は通信端末装置200で音声の入出力を実現し、USB214は通信端末装置200を別の機器に接続してデータを送受信したり機能を制御したりするために使用される。また、カメラ215は、通信端末装置200で写真撮影する機能を提供する。
【0043】
次に、以上のように構成された通信端末装置200のフラッシュメモリ205に格納されたプログラムの構成について概略を説明する。図8は、通信端末装置200の全体的なプログラム構成を示す図である。
【0044】
図8に示すように通信端末装置200のプログラム構成は、主として、オペレーティングシステム251と、コントローラ対応アプリケーション255および標準アプリケーション260〜263とからなっている。これらのプログラムはフラッシュメモリ105に格納されており、アプリケーションプロセッサ201および/またはベースバンドプロセッサ202により実行されることにより各種機能を実現するものである。
【0045】
オペレーティングシステム200は、ハードウェアを制御するためのデバイスドライバ201と、Bluetoothによる基本的な通信機能を提供するBluetoothスタック253と、Bluetoothを利用したマウスやキーボードと通信を行うためのHIDプロファイル254とを有し、通信端末200の基本的な機能を実現するとともに、各種アプリケーションに入出力の制御、メモリ管理、プロセス管理等といったコンピュータシステムとしての基本的な機能を提供する。
【0046】
標準アプリケーション260〜263は、例えばブラウザ、メーラー、電話アプリケーションのような通信端末200で標準的に利用されるアプリケーションである。これに対してコントローラ対応アプリケーション255は、ワイヤレスコントローラ100を利用することを前提として作製されたアプリケーションプログラムであって、専用Bluetoothプロファイル256を含んでいる。コントローラ対応アプリケーション255は、この専用Bluetoothプロファイル256を利用してワイヤレスコントローラ100と専用プロトコルで通信することが可能である。
【0047】
以下、ワイヤレスコントローラ100と通信端末200とを接続して図6に示したように画面上のGUIを操作し、コントローラ対応アプリケーション255を起動して、図5に示したように専用プロファイル131を利用してコントローラ対応アプリケーションの操作を行う一連の動作について、図9のシーケンス図を参照しながら説明する。
【0048】
まず、ワイヤレスコントローラ100と通信端末200とをBluetooth通信可能な距離まで近接させ、通信端末200からBluetooth機器をサーチしてワイヤレスコントローラ100を見出し、オペレーティングシステム251を操作してワイヤレスコントローラ100にBluetooth接続を要求する(ST101)。Bluetooth接続の要求を受けたワイヤレスコントローラ100は、通信端末200とのBluetooth接続を確立する。この段階での動作はGAP(Generic ACCESS Profile)に従って実行される。
【0049】
Bluetooth接続を確立した後、オペレーティングシステム251はワイヤレスコントローラ100に対してHIDプロファイルによる接続要求を発行し、これを受けたワイヤレスコントローラ100にてHIDプロファイルを利用した通信が開始される(ステップST103)。これにより、図6に示したようにワイヤレスコントローラ100をマウスのように使用して通信端末200の画面上に表示されたGUIを操作することが可能となる。
【0050】
上記の状態でユーザがワイヤレスコントローラ100を使用してコントローラ対応アプリケーション255を起動すると(ステップST104)、コントローラ対応アプリケーション255は起動時に専用プロファイル256を使用した接続をワイヤレスコントローラ100に対して要求する(ステップST105)。
【0051】
この要求を受けたワイヤレスコントローラ100は、専用プロファイルによる接続を開始するとともに(ステップST106)、HIDプロファイルによる接続を停止する(ステップST107)。これにより通信端末200上で動作しているコントローラ対応アプリケーション255とワイヤレスコントローラ100は専用プロファイルによって接続され、専用プロファイルとして規定された方式によりコントローラ対応アプリケーション255をワイヤレスコントローラ100で操作することが可能となる。
【0052】
そして、このようなHIDプロファイルから専用プロファイルの切り替えに際して、ユーザが行う操作は通信端末200でコントローラ対応アプリケーション255を起動するだけであり、煩雑な操作は一切必要がない。また、切り替え動作はワイヤレスコントローラ100側でハンドルするため、通信端末200側ではコントローラ対応アプリケーション255をインストールするだけでよく、オペレーティングシステム251に修正を加えたり、別のアプリケーションをインストールしたりする必要もなく導入が容易である。
【0053】
その後、コントローラ対応アプリケーション255の終了時には、まず専用プロファイル終了の要求がワイヤレスコントローラ100に対して発行される(ステップST108)。これに応じてワイヤレスコントローラ100は、専用プロファイルによる接続を停止し(ステップST109)、通信端末200とHIDプロファイルによる接続を開始する(ステップST110)。これによりコントローラ対応アプリケーション255を終了した時も煩雑な操作を行うことなく、ワイヤレスコントローラ100と通信端末200とを接続するプロファイルを切り替えることができ、コントローラ対応アプリケーション255の終了後はワイヤレスコントローラ100をマウスとして使用して通信端末200を操作することができる。
【0054】
最後に、Bluetooth接続を終了する際には、ユーザの操作に応じて通信端末200からワイヤレスコントローラ100にBluetooth接続停止の要求が発行される(ステップST112)。これに応じてワイヤレスコントローラ100はHIDプロファイルによる接続を停止し(ステップST113)、Bluetooth接続が停止される。
【0055】
以上説明した通り、本実施形態にかかるワイヤレスコントローラ100およびワイヤレスコントロール方法によれば、画面上に表示されたGUIを操作してアプリケーションを選択して起動する動作と、コンシューマーゲーム機のコントローラやジョイスティックのようにアプリケーションを操作する動作とをシームレスに実現することができる。また、コントローラ対応アプリケーション255を終了すれば、専用プロファイルによる接続が停止されてHIDプロファイルによる接続が再開されるので、コントローラ対応アプリケーション255の終了後も煩雑な操作を行うことなくワイヤレスコントローラ100をマウスとして使用することが可能である。
【0056】
なお、上記ではコントローラ対応アプリケーション255の起動および終了に応じてプロファイルを切り替える場合について示したが、通信端末200が対応している場合にはアプリケーションのサスペンドおよびレジュームに応じて切り替える構成とすることも有効であり、このような構成はコントローラ対応アプリケーション255に組み込む専用プロファイル256およびワイヤレスコントローラ100のファームウェア132により実装することができる。また、同じく通信端末200が対応している場合にはフォアグラウンド実行中であるかバックグラウンド実行中であるかに応じて切り替える構成としてもよく、この場合も専用プロファイル256およびファームウェア132により実装することができる。
【0057】
また、上述したプロファイル切り替えの動作は、使用中のプロファイルとは異なるプロファイルによる接続要求が発生した場合に、使用中のプロファイルを停止して要求されたプロファイルによる接続を開始するものであるが、状況によっては接続要求を無視する構成とした方が現実的な場合もある。
【0058】
例えば通信端末200の設定によってはHIDプロファイルの停止後もHIDプロファイル機器と接続しようとするものがあり、このような自動的な接続の回復によりプロファイルが切り替えられると、コントローラ対応アプリケーション255の実行中にユーザの意図に反してプロファイルの切り替えが生じてしまう。このようにHIDプロファイルを自動的に回復しようとする動作はオペレーティングシステム251によるものであるため停止することは難しい。したがって、このような設定の機器での使用性を確保観点からは、専用プロファイルの使用中にHIDプロファイルの接続要求がなされても、プロファイルの切り替えは行わない構成とすることが好適である。
【0059】
なお、この発明は上記実施形態に限られるものではなく、種々変形が可能である。例えば、ワイヤレスコントローラ100に使用する方向入力手段106はジョイスティック以外のトラックボールや方向入力パッドであっても構わないし、筐体101の形状およびボタンの数や配置についても所望の構成とすることが可能である。また、ワイヤレスコントローラ100が使用する通信として上記ではBluetoothを使用したが、接続する機器に応じたプロファイルを使用するものであればZigBee等を使用することもでき、標準的なプロトコルのみが仕様策定された通信方式であっても専用プロトコルを新たに導入することにより本発明を適用することが可能である。また、ワイヤレスコントローラ100と接続する通信端末200の構成についても上記には限定されるものではない。
【0060】
また、上記ではワイヤレスコントローラ100を通信端末200に接続して使用する場合を示したが、ワイヤレスコントローラ100の通信相手は各種コンピュータ、ゲーム機、テレビジョン受信機、ハードディスクレコーダ等の各種電子機器のいずれでもよい。ただし、この発明はコントローラ対応アプリケーション255をインストールして使用することが前提になっているので、このようなアプリケーションがプリインストールされているか、何らかの方式で後発的にインストールすることが可能な構成となっている必要がある。
【0061】
要するにこの発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0062】
100…ワイヤレスコントローラ、101…筐体、102…ボタンA、103…ボタンB、104…ボタンC、105…ボタンD、106…方向入力手段、107…バッテリ、111…制御部、112…通信部、121…処理部、122…メモリ、123…ファームウェア、131…専用プロファイル、132…HIDプロファイル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2のプロトコルにより所定のベアラで通信を行う通信部と、ユーザの入力を受け付ける操作部と、前記操作部の受け付けた入力に応じた信号を通信部から送信するように制御する制御部とを有し、
前記制御部は、相手システムと第1のプロトコルにより接続している状態で、前記相手システムから第2のプロトコルにより接続する要求を受け取ると、第1のプロトコルによる接続を停止して第2のプロトコルによる接続を開始することを特徴とするワイヤレスコントローラ。
【請求項2】
前記制御部は、前記第2のプロトコルにより接続している状態で、さらに前記相手システムから第1のプロトコルにより接続する要求を受け取った場合、第2のプロトコルによる通信を停止して第1のプロトコルによる接続を再開することを特徴とする請求項1に記載のワイヤレスコントローラ。
【請求項3】
前記制御部は、前記第2のプロトコルにより接続している状態で、さらに前記相手システムから第1のプロトコルにより接続する要求を受け取った場合、当該要求を無視して第2のプロトコルによる通信を継続することを特徴とする請求項1に記載のワイヤレスコントローラ。
【請求項4】
前記第1のプロトコルは前記相手システムを標準的に操作するためのプロトコルであり、前記第2のプロトコルは前記相手システム上で特定のアプリケーションを操作するためのプロトコルであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のワイヤレスコントローラ。
【請求項5】
前記所定のベアラはBluetooth(登録商標)であり、前記第1のプロトコルはHIDプロファイルとして規定されたものであり、前記第2のプロトコルは前記特定のアプリケーションを操作するための専用プロファイルであることを特徴とする請求項4に記載のワイヤレスコントローラ。
【請求項6】
Bluetooth通信で接続されたワイヤレスコントローラによって所定の電子機器を操作するワイヤレスコントロール方法であって、
前記ワイヤレスコントローラを前記所定の電子機器にHIDプロファイルで接続することにより、キーボードまたはマウスとして機能させるとともに、
前記電子機器上で所定のプログラムが起動された際には、前記コントローラの前記HIDプロファイルによる接続を停止して、前記所定のプログラムが使用する専用プロファイルによる接続を開始して、前記プログラムの専用コントローラとして機能させることを特徴とするワイヤレスコントロール方法。
【請求項7】
さらに、前記所定のプログラムを終了または中断する際に、前記専用プロファイルによる接続を停止して、前記HIDプロファイルによる接続を開始して前記ワイヤレスコントローラをキーボードまたはマウスとして機能させることを特徴とする請求項6に記載のワイヤレスコントロール方法。
【請求項8】
前記所定のプログラムは、前記専用プロファイルのライブラリを含むことを特徴とする請求項6または請求項7に記載のワイヤレスコントロール方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−252575(P2012−252575A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125338(P2011−125338)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(394020376)ガイアホールディングス株式会社 (51)
【Fターム(参考)】