説明

ワイヤロープの検査装置

【課題】ロープと検査装置との相対運動やロープの張力によるロープピッチの変動による影響を考慮し、据え付けられたロープの捩れ量を精度良く検出できるワイヤロープの検査装置を提供する。
【解決手段】この検査装置では、鋼線の束を撚り合わせて成るワイヤロープ1を磁化器2で長手方向に磁化し、ロープ1に近接して配備された磁気センサ8a〜8hでロープ1の漏洩磁束を検出し、各処理回路による演算手段がエンコーダ7からロープ1と装置自体との相対速度、並びに漏洩磁束からロープピッチを算出(ストランド凹凸検出器9、位相補正器10、ピーク検出器11)すると共に、算出したピッチから張力計測手段(歪みゲージ6、張力変換器13)で計測された張力によるロープ1の伸び量を補正(張力補正器12)した上でロープ1の捩れ量を算出(フィルタ14、捩れ量変換器15)した結果をロープ1の良否判別(捩れ量確認器16、表示器17)に供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばエレベータやクレーン等で使用されると共に、鋼線の束を撚り合わせて構成されるワイヤロープの検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のワイヤロープは、複数の細い鋼線(素線)の束を撚り合わせて構成されており、鋼線の束を撚り合わせることで鋼線同士が接触するため、懸架荷重に対して素線の軸力だけでなく、素線間の摩擦も寄与する構造となっている。一般に、各素線に加えられる力は、ロープの構造や撚り方で異なっており、目的に応じて多様なロープが存在する。また、ワイヤロープは疲労や摩耗により、構成部分の鋼線が順次破断する。この鋼線の破断数は経年的に増加するため、定期的に検査を行って鋼線の破断数を計測し、ワイヤロープを安全に使用できるか否かを評価しなければならない。
【0003】
そこで、近年では電磁気探傷法を用いた探傷装置(ワイヤロープテスタ)によりワイヤロープにおける鋼線の破断数を定量的に計測する装置が提案されている。係る周知技術としては、例えば1組の永久磁石を用いてワイヤロープを長手方向に磁化し、鋼線の破断部から漏洩する磁束を検出するためのプローブコイルを磁石間に配置することで鋼線の破断を検査する「ワイヤロープの損傷検出器」(特許文献1参照)が挙げられる。
【0004】
因みに、ワイヤロープは鋼線の破断数が所定の値を超えると寿命に至ったと判断されて交換が行われるが、ワイヤロープの交換作業中はエレベータを使用できなくなるため、ワイヤロープの交換頻度は少ないことが望ましい。ワイヤロープの鋼線が破断するのは、疲労や摩耗が原因であるため、ロープに加えられる負荷が小さくて屈曲が少ない方が寿命に至るまでの時間が長く、交換回数も少なくなる。また、+、−のキンク等のようにワイヤロープの形状が大きく変化する場合にはワイヤロープの寿命が短くなることが知られている。これは各鋼線に加えられる力が設計当初の想定値とは異なり、特定の鋼線に応力集中するためと考えられる。ワイヤロープのキンクはワイヤロープが大きく捩れた場合にも生じる可能性があるため、使用現場に納入されたワイヤロープを開梱するときには、ワイヤロープに捩れが生じないように注意して作業している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−198684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1の技術は、ワイヤロープにおける鋼線の破断数を定量的に計測するためには有効であるが、据え付けられたワイヤロープの捩れの定量的な評価には適用し難いという問題がある。
【0007】
一般に、ワイヤロープは複数のストランドが撚られているため、ワイヤロープが捩れた場合にはストランド撚り角が変化する。しかしながら、ストランド撚り角の変化は小さく、しかもワイヤロープの表面にはワイヤロープに含まれる油や埃が堆積しているため、外観上での計測によりストランド撚り角を計測することは困難である。また、ワイヤロープの捩れはロープピッチにも表われ、撚りを解くようにワイヤロープが捩れた場合にはロープピッチが伸びて長くなり、撚りが締まるようにワイヤロープが捩れた場合にはロープピッチが縮んで短くなるので、ロープピッチもワイヤロープの捩れに応じて変化する。これにより、ワイヤロープの捩じりはロープピッチを計測することによって検出できるが、外観上の計測によりロープピッチを計測しようとする場合にも、ワイヤロープ表面の油や埃によって計測が困難となっている。
【0008】
特許文献1に示す損傷検出器によりワイヤロープを磁化するとワイヤロープから磁束が漏洩する。漏洩磁束は、磁性体中を磁束が通過するときに磁性体の形状が変化する等、磁束の通過経路上の磁気抵抗変化により経路が変更されることで生じる。特許文献1で適用している電磁探傷法では、ワイヤロープを磁化して破断部からの漏洩磁束を検出しているが、これは鋼線の破断によって破断部の磁気抵抗が周囲部分よりも高くなったことに起因する漏洩磁束を検出するものである。また、ワイヤロープの長手方向を見ると、鋼線自体や鋼線を撚って構成されるストランドは、ワイヤロープの長手方向と平行に延在していないので、ワイヤロープの表面には凹凸が生じている。これらの凹凸は磁束通過を乱す要因となり、凹凸部分では磁気抵抗が周囲部分よりも高くなっている。よって、これらの部分からも漏洩磁束は生じているため、この漏洩磁束を検出すればストランドの凹凸が分かるため、ロープピッチを計測することができる。
【0009】
ところが、特許文献1の技術のような漏洩磁束によりワイヤロープの捩れを計測する場合、計測器(損傷検出器)とワイヤロープとの相対運動が生じた場合には計測結果が乱れてしまい、しかもロープピッチがワイヤロープの張力によっても変化するため、精度良く検出を行うためにはこうした影響を考慮する必要があるため、実用的な適用が困難視されている。
【0010】
本発明は、このような問題点を解決すべくなされたもので、その技術的課題は、ワイヤロープと検査装置との相対運動やワイヤロープの張力によるロープピッチの変動による影響を充分に考慮し、据え付けられたワイヤロープの捩れ量を精度良く検出できるワイヤロープの検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記技術的課題を解決するため、本発明の第1の手段は、複数の鋼線の束を撚り合わせて構成されるワイヤロープを長手方向に磁化する磁化手段と、ワイヤロープに近接して配備されると共に、磁化手段により磁化された当該ワイヤロープにおける漏洩磁束を検出する磁気検出手段と、を備えたワイヤロープの検査装置において、装置内部に備えられた相対速度検出手段により検出されるか、或いは装置外部に備えられた相対速度検出手段により検出された検出結果として入力されるワイヤロープと装置自体との相対速度、並びに磁気検出手段により検出された漏洩磁束からロープピッチを算出すると共に、当該算出したロープピッチから当該ワイヤロープの捩れ量を算出する演算手段を備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明の第2の手段は、第1の手段において、磁気検出手段の検出領域は、ワイヤロープ表面で凹凸を成す鋼線の束における直径の外接円以内の領域であることを特徴とする。
【0013】
本発明の第3の手段は、第1の手段又は第2の手段において、ワイヤロープの張力を計測する張力計測手段を備え、演算手段は、張力計測手段で計測された張力によるワイヤロープの伸び量の影響を補正してワイヤロープの捩れ量を算出することを特徴とする。
【0014】
本発明の第4の手段は、第3の手段において、張力計測手段は、磁化手段における磁気検出手段が配備される側と反対側の所定箇所に設けられると共に、当該磁化手段における当該磁気検出手段を挟んだ両側位置の凸部に備えられた非磁性体の一対の押圧手段に対してワイヤロープを挟んだ反対側に備えられた非磁性体の押圧手段によって当該ワイヤロープを押圧して3点曲げ状態に変形させたときの当該磁化手段における歪みの変化量を計測することで当該ワイヤロープの張力を算出する歪みゲージを備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明の第5の手段は、第4の手段において、装置内部の相対速度検出手段は、張力計測手段における3点曲げ状態でのワイヤロープとの接触部分に設置された回転体を有し、当該回転体の回転量の計測結果に基づいて相対速度を算出するエンコーダであることを特徴とする。
【0016】
本発明の第6の手段は、第1の手段〜第5の手段の何れか1つの手段において、演算手段は、相対速度、並びにワイヤロープの撚りピッチの設計値を用いて当該ワイヤロープにおけるストランドの凹凸が変動する周波数を算出する周波数算出手段と、周波数算出手段で算出された周波数を中心とした一定幅の帯域を濾波して抽出する帯域濾波手段と、磁気検出手段からの漏洩磁束を示す出力信号の帯域濾波手段で濾波処理した波形を相対速度に基づいてワイヤロープの位置に対するデータに補正して出力する位相補正手段と、位相補正手段からの出力信号の波形に対してピーク周期を計測することでロープピッチを算出するロープピッチ算出手段と、相対速度、並びに装置内部に備えられた張力計測手段により計測されるか、或いは装置外部に備えられた張力計測手段により計測された計測結果として入力されるワイヤロープの張力を用いて当該ワイヤロープの位置に対する張力データに変換する張力変換手段と、ロープピッチ算出手段からのロープピッチに対する張力変換手段での張力データに基づいてワイヤロープの張力に対する伸びの量を算出すると共に、当該ワイヤロープの捩れがない場合の当該伸び量に対する比率を示す捩れ率を算出する張力補正手段と、張力補正手段で得られた捩れ率を予め得られたワイヤロープの初期の捩れ率又はワイヤロープの撚りピッチの設計値に基づいて1ピッチ毎に捩れ量に変換し、当該ワイヤロープの長手方向の各位置の捩れ量を算出する捩れ量変換手段と、位相補正手段からの出力信号の波形を捩れ量変換手段からの捩れ量を示す出力信号の波形が所定の閾値の範囲に収まっているか否かにより確認してワイヤロープの良否を判別する捩れ量確認手段と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
本発明の第7の手段は、第6の手段において、捩れ量変換手段による捩れ量の算出時にワイヤロープの初期の捩れ率を用いる場合とワイヤロープの撚りピッチの設計値を用いる場合との処理モードを任意に切り替えて使用可能であることを特徴とする。
【0018】
本発明の第8の手段は、第1の手段〜第7の手段の何れか1つの手段において、磁気検出手段は、ワイヤロープの長手方向に対して少なくとも3個以上が配置されると共に、互いの間隔が当該ワイヤロープ表面の凹凸の周期と一致していることを特徴とする。
【0019】
本発明の第9の手段は、第8の手段において、3個以上の磁気検出手段でそれぞれ検出された漏洩磁束の検出値についての中央値を抽出する抽出手段を備えたことを特徴とする。
【0020】
本発明の第10の手段は、第1の手段〜第9の手段の何れか1つの手段において、演算手段により算出されたワイヤロープの捩れ量、装置内部に備えられた張力計測手段により計測されるか、或いは装置外部に備えられた張力計測手段により計測された計測結果として入力される当該ワイヤロープの張力、並びにエレベータの使用履歴に応じて、当該ワイヤロープについての点検時期及び交換時期の少なくとも一方を出力する出力手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明のワイヤロープの検査装置によれば、ワイヤロープと装置自体との相対運動や、ワイヤロープの張力によるロープピッチの変動による影響を補正する演算機能を持つため、据え付けられたワイヤロープに対して後付けで装置を設置する場合でも、精度良くワイヤロープの捩れ量を検出してワイヤロープの状態の良否判別に供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例1に係るワイヤロープの検査装置の基本構成を示したブロック図である。
【図2】図1に示すワイヤロープの検査装置に備えられる磁気センサからの出力信号の波形を例示した概略図である。
【図3】図1に示すワイヤロープの検査装置に備えられる磁気センサの出力信号についてのワイヤロープと装置自体との相対速度の変化による影響を信号波形で対比して説明したもので、(a)は磁気センサの出力信号についての時刻に対する磁束密度との関係で示される信号波形図、(b)はワイヤロープと装置自体との相対速度についての時刻に対する相対速度との関係で示される信号波形図である。
【図4】図3(a)で説明した磁気センサの出力信号の波形をロープ位置に対する磁束密度との関係に置き換えて示した信号波形図である。
【図5】図1に示すワイヤロープの検査装置に備えられる磁気センサとワイヤロープとの時刻変化に伴う位置関係の推移を例示した図であり、(a)は時刻t1時点でのワイヤロープと磁気センサとの位置を例示した概略図、(b)は時刻t2時点でのワイヤロープと磁気センサとの位置を例示した概略図、(c)は時刻t3時点でのワイヤロープと磁気センサとの位置を例示した概略図である。
【図6】図5(a)〜(c)で説明した磁気センサの時刻変化に伴う出力信号の推移を例示した図であり、(a)は第1の磁気センサの出力信号を時刻に対する磁束密度との関係で示した信号波形図、(b)は第2の磁気センサの出力信号を時刻に対する磁束密度との関係で示した信号波形図、(c)は第3の磁気センサの出力信号を時刻に対する磁束密度との関係で示した信号波形図である。
【図7】図1に示すワイヤロープの検査装置に備えられる磁気センサのワイヤロープの状態別に応じた出力信号の変遷を対比して例示した信号波形図であり、(a)は正常状態での磁気センサの出力信号を時刻に対する磁束密度との関係で示した信号波形図、(b)は振幅異常状態での磁気センサの出力信号を時刻に対する磁束密度との関係で示した信号波形図、(c)は周期異常状態での磁気センサの出力信号を時刻に対する磁束密度との関係で示した信号波形図である。
【図8】本発明の実施例2に係るワイヤロープの検査装置の基本構成を示したブロック図である。
【図9】本発明の変形例1に係るワイヤロープの検査装置の基本構成を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明のワイヤロープの検査装置について、幾つかの実施例或いは変形例を挙げ、図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0024】
図1は、本発明の実施例1に係るワイヤロープ1の検査装置の基本構成を示したブロック図である。
【0025】
実施例1に係るワイヤロープ1の検査装置は、複数の鋼線の束を撚り合わせて構成されるワイヤロープ1を長手方向に磁化する磁化手段としての磁化器2と、ワイヤロープ1に近接して配備されると共に、磁化器2により磁化されたワイヤロープ1における漏洩磁束を検出する磁気検出手段としての複数の磁気センサ8a〜8hと、ワイヤロープ1と装置自体との相対速度、並びに磁気センサ8a〜8hにより検出された漏洩磁束からロープピッチを算出すると共に、算出したロープピッチから張力によるワイヤロープ1の伸び量を補正した上でワイヤロープ1の捩れ量を算出するその他の各処理回路から成る演算手段と、を備えている。
【0026】
具体的に云えば、この検査装置は、ワイヤロープ1を磁化器2により長手方向に磁化するもので、ワイヤロープ1は3個の非磁性体の押圧手段となるローラ3、4、5間で3点曲げ状態となるように変形させられて保持される。ここでは、磁化器2の内側であって、ワイヤロープ1の曲げの凸部付近に沿って互いの間隔がワイヤロープ1表面の凹凸の周期と一致するように磁気センサ8a〜8hが配設されている。歪みゲージ6は、磁化器2における磁気センサ8a〜8hが配備される側と反対側の所定箇所に設けられると共に、磁化器2における磁気センサ8a〜8hを挟んだ両側位置の凸部に備えられた非磁性体の一対の押圧手段となるローラ3、5に対して、ワイヤロープ1を挟んだ反対側に備えられた非磁性体の押圧手段であるローラ4によってワイヤロープ1を押圧して3点曲げ状態に変形させた状態でワイヤロープ1の反力に伴って生じる磁化器2における歪みの変化量を計測することにより、ワイヤロープ1の張力を算出する。それ故、磁気センサ8a〜8h並びに歪みゲージ6は、装置内部でワイヤロープ1の張力を計測する装置内部の張力計測手段として機能する。
【0027】
ローラ4には、装置内部の相対速度検出手段としてのエンコーダ7が付設されており、検査装置自体とワイヤロープ1との相対速度を計測する。エンコーダ7は、上述した張力計測手段における3点曲げ状態でのワイヤロープ1との接触部分に設置された回転体を有しており、回転体の回転量の計測結果に基づいて相対速度を算出する。
【0028】
磁気センサ8a〜8hは、ワイヤロープ1表面で凹凸を成す鋼線の束によるストランド凹凸からの漏洩磁束を検出するもので、磁束密度の検出領域(検出エリア)はストランド(鋼線の束)の直径d(後述する図2中に示す)の外接円以内の領域(鋼線の束が凹凸を成すために係る外接円ではそれらの凸部が円周に接することを示す)である。磁気センサ8a〜8hからの漏洩磁束を示す出力信号はストランド凹凸検出器9に入力される。
【0029】
ストランド凹凸検出器9では、磁気センサ8a〜8hからの漏洩磁束を示す出力信号について、エンコーダ7で算出されたワイヤロープ1と装置自体との相対速度、並びに記憶装置18に格納されたストランド凹凸距離の設計値(ワイヤロープ1の撚りピッチの設計値)からストランドの凹凸が変動する周波数を算出し、その周波数を中心とした一定幅の帯域を濾波して抽出するバンドパスフィルタ(帯域濾波手段)により信号処理して出力する。それ故、ストランド凹凸検出器9は、ストランドの凹凸が変動する周波数を算出する周波数算出手段、その周波数を中心とした一定幅の帯域を抽出する帯域濾波手段として機能する。
【0030】
ストランド凹凸検出器9からの一定幅の帯域を示す出力信号とエンコーダ7からの相対速度を示す信号とは位相補正器10に入力される。各磁気センサ8a〜8hはワイヤロープ1の長手方向に位置ずれされるように配設されているため、ワイヤロープ1の特定の位置がセンサに近接するタイミングは各磁気センサ8a〜8h毎で異なる。このタイミングのずれを補正するため、位相補正器10では磁気センサ8a〜8hからの漏洩磁束の検出値を示す出力信号について、同一のストランドの凹凸に対する信号となるように、エンコーダ7からの相対速度の信号に基づいて各磁気センサ8a〜8hからの出力信号に対する遅らせ時間を計算する。即ち、ここではワイヤロープ1の進行方向に対して手前側にある磁気センサ8aの信号を最も遅らせ、最も奧側にある磁気センサ8hに合わせて各磁気センサ8a〜8hからの出力信号を時刻歴データではなく、ワイヤロープ1の位置に対するデータに位相補正して出力する。それ故、位相補正器10は、磁気センサ8a〜8hからの漏洩磁束を示す出力信号のストランド凹凸検出器9の帯域濾波手段で濾波処理した波形を相対速度に基づいてワイヤロープ1の位置に対するデータに補正して出力する位相補正手段となる。
【0031】
位相補正器10からの位相補正された各磁気センサ8a〜8hに係る漏洩磁束の出力信号は、ピーク検出器11に入力される。一つのストランドに対して、各磁気センサ8a〜8hの個数(ここでは8個)分の出力があるが、これらの出力信号の中央値を各ストランドのピッチデータとしてピーク検出器11により抽出して出力する。それ故、ピーク検出器11は、各磁気センサ8a〜8hでそれぞれ検出された漏洩磁束の検出値についての中央値を抽出する抽出手段、位相補正器10からの出力信号の波形に対してピーク周期を計測することでロープピッチを算出するロープピッチ算出手段となる。ピーク検出器11から出力された各ストランドのピッチデータは、後述する張力補正器12に入力される。
【0032】
一方、ワイヤロープ1の張力を歪みゲージ6からの磁化器2の歪みの変化量として計測した信号は、エンコーダ7からの相対速度を示す信号と合わせて張力変換器13に入力される。張力変換器13では、歪みゲージ6からの歪みの変化量を示す信号とエンコーダ7からの相対速度の信号とを用いて、ワイヤロープ1の位置に対する張力データに変換して張力補正器12へ出力する。それ故、張力変換器13は、エンコーダ7により計測された相対速度、並びに歪みゲージ6により計測された計測結果として入力されるワイヤロープ1の張力を用いてワイヤロープ1の位置に対する張力データに変換する張力変換手段となる。
【0033】
ところで、ワイヤロープ1のロープピッチは、ワイヤロープ1の張力によっても変化する。従って、ワイヤロープ1の捩れ量を精度良く検出する場合には、ワイヤロープ1におけるロープピッチと張力とを同時に評価し、ロープピッチの変動分のうちの張力による分を除く必要がある。そのため、張力補正器12では、各ストランドのピッチデータに対する各位置での張力に基づいてワイヤロープ1の張力に対する伸びの量を算出し、ワイヤロープ1の捩れがない場合の伸び量に対する比率で示される捩れ率を算出し、係る捩れ率をストランド毎に求める。ワイヤロープ1が8本のストランドで撚られている場合、全部で8個分の捩れ率を求めてフィルタ14へ出力する。それ故、張力補正器12は、ロープピッチ算出手段からのロープピッチに対する張力変換器13での張力データに基づいてワイヤロープ1の張力に対する伸びの量を算出すると共に、ワイヤロープ1の捩れがない場合の伸び量に対する比率を示す捩れ率を算出する張力補正手段となる。
【0034】
このストランドの本数分の捩れ率を入力したフィルタ14では、その中央値をワイヤロープ1の捩れ率として出力する。フィルタ14から出力された捩れ率は、捩れ量変換器15に入力される。捩れ量変換器15では、フィルタ14からの捩れ率を記憶装置19に格納されたワイヤロープ1の初期の捩れ率に基づいて1ピッチ毎に捩れ量に変換し、ワイヤロープ1の長手方向の各位置の捩れ量を算出して捩れ量確認器16へ出力する。それ故、捩れ量変換器15は、張力補正器12で得られた捩れ率を予め得られたワイヤロープ1の初期の捩れ率に基づいて1ピッチ毎に捩れ量に変換し、ワイヤロープ1の長手方向の各位置の捩れ量を算出する捩れ量変換手段となる。
【0035】
捩れ量確認器16には、捩れ量変換器15からの捩れ量を示す出力信号と共に位相補正器10からの位相補正された各磁気センサ8a〜8hからの出力信号が入力される。捩れ量確認器16では、位相補正器10からの出力信号の波形における振幅及び周期を捩れ量変換器15からの捩れ量を示す出力信号の波形が記憶装置20に格納された所定の閾値の範囲に収まっているか否かにより確認し、ワイヤロープ1の状態の良否を判別する。それ故、捩れ量確認器16は、位相補正器10からの出力信号の波形を捩れ量変換器15からの捩れ量を示す出力信号の波形が所定の閾値の範囲に収まっているか否かにより確認してワイヤロープ1の良否を判別する捩れ量確認手段となる。
【0036】
そこで、捩れ量確認器16では、捩れ量を示す出力信号の波形の振幅及び周期が所定の閾値の範囲に収まっている場合には、ワイヤロープ1の状態を合格としてその旨の結果を表示器17へ出力表示させ、収まっていない場合には、ワイヤロープ1の状態を不合格としてその旨の結果を表示器17へ出力表示させた後、それ以前に合格したデータのうちの最も新しい値を出力表示させる。また、捩れ量確認器16では、検査終了時にワイヤロープ1の全体での総捩れ量を表示器17へ出力表示させる。因みに、ここでの検査装置がエレベータ設備のワイヤロープ1を検査対象とすると共に、エレベータ設備での使用履歴を認識できる場合、捩れ量確認器16の演算機能を拡張させ、捩れ量変換器15からのワイヤロープ1の捩れ量を示す出力信号、歪みゲージ6で計測されたワイヤロープ1の張力、並びに取得されるエレベータ設備の使用履歴に応じて、ワイヤロープ1についての点検時期及び交換時期の少なくとも一方を他の機器等へ出力する出力手段として機能させることも可能である。
【0037】
図2は、実施例1に係る検査装置に備えられる磁気センサ8a〜8hからの出力信号の波形を例示した概略図である。ワイヤロープ1を磁化器2により長手方向に磁化すると、ワイヤロープ1から磁束が漏洩する。この漏洩磁束は、磁性体中を磁束が通過するときに、磁性体の形状が変化する等、磁束の通過経路上の磁気抵抗の変化により経路が変更されることで生じるものである。ワイヤロープ1の長手方向を見ると、鋼線を撚って構成されるストランドは、ワイヤロープ1の長手方向と平行になっていないので、ワイヤロープ1の表面には凹凸が生じている。これらの凹凸は磁束の通過を乱す要因となり、凹凸部分では磁気抵抗が周囲より高くなっている。これらの部分からは漏洩磁束が生じているため、この漏洩磁束を磁気センサ8a〜8hにより検出すれば、図2に示されるように時刻に対する磁束密度の変化によりストランドの凹凸が分かるため、ロープピッチを計測することができる。
【0038】
即ち、図2では、図1に示したようにワイヤロープ1表面に近接して配置した磁気センサ8a〜8hで漏洩磁束を検出すると、漏洩磁束を示す信号波形のピーク間の距離がストランドの凹凸の距離となる様子を示している。
【0039】
しかしながら、ワイヤロープ1と装置自体との相対速度が変化した場合、検出するワイヤロープ1の漏洩磁束の周期も変化する。
【0040】
図3は、実施例1に係る検査装置に備えられる磁気センサ8a〜8hの出力信号についてのワイヤロープ1と装置自体との相対速度の変化による影響を信号波形で対比して説明したもので、同図(a)は磁気センサ8a〜8hの出力信号についての時刻に対する磁束密度との関係で示される信号波形図、同図(b)はワイヤロープ1と装置自体との相対速度についての時刻に対する相対速度との関係で示される信号波形図である。図4は、図3(a)で説明した磁気センサ8a〜8hの出力信号の波形をロープ位置に対する磁束密度との関係に置き換えて示した信号波形図である。
【0041】
ここでは、例えばワイヤロープ1と装置自体との相対速度が図3(b)のように変化して遅くなると、ワイヤロープ1表面の凹凸からの漏洩磁束が検査装置の磁気センサ8aを通過する周期もそれに対応して遅くなるので、図4に示されるようにロープ位置に対する磁束密度の関係では信号波形上での変動は発現しないが、図3(a)に示されるように周期が変化する。
【0042】
図5は、実施例1に係る検査装置に備えられる磁気センサ8a〜8cとワイヤロープ1との時刻変化に伴う位置関係の推移を例示した図であり、同図(a)は時刻t1時点でのワイヤロープ1と磁気センサ8a〜8cとの位置を例示した概略図、同図(b)は時刻t2時点でのワイヤロープ1と磁気センサ8a〜8cとの位置を例示した概略図、同図(c)は時刻t3時点でのワイヤロープ1と磁気センサ8a〜8cとの位置を例示した概略図である。また、図6は、図5(a)〜(c)で説明した磁気センサ8a〜8cの時刻変化に伴う出力信号の推移を例示した図であり、同図(a)は第1の磁気センサ8aの出力信号を時刻に対する磁束密度との関係で示した信号波形図、同図(b)は第2の磁気センサ8bの出力信号を時刻に対する磁束密度との関係で示した信号波形図、同図(c)は第3の磁気センサ8cの出力信号を時刻に対する磁束密度との関係で示した信号波形図である。
【0043】
各図を参照すれば、磁気センサ8a〜8h(ここでは磁気センサ8a〜8cを対象としている)は、ワイヤロープ1の長手方向に並んで配設されており、磁気センサ8a〜8cとワイヤロープ1の位置関係が図5(a)に示されるような場合のとき、図6(a)に示すように、時刻t1において磁気センサ8aでストランド(1)−(2)間の漏洩磁束に対するピークは、時刻t2、t3に至るとそれぞれ磁気センサ8b、8cに近接する。こうした場合、磁気センサ8b、8cで検出される漏洩磁束の信号波形は、それぞれ図6(b)、(c)のストランド(1)−(2)間の漏洩磁束に対するピークに示されるように位相がずれる。このように、同じストランドからの漏洩磁束であっても、磁気センサ8a〜8cの位置が異なるために検出するタイミングがずれてしまう。
【0044】
そこで、位相補正器10では、エンコーダ7からのワイヤロープ1の移動速度を示す相対速度、並びに予め認知している磁気センサ8a〜8hの間隔(距離)から磁気センサ8a〜8hの出力信号を位置情報に補正する処理を行うことにより、ロープ位置に対応する磁気センサ8a〜8hの出力信号を得ることができる。
【0045】
図7は、実施例1に係る検査装置に備えられる磁気センサ8a〜8hのワイヤロープ1の状態別に応じた出力信号の変遷を対比して例示した信号波形図であり、同図(a)は正常状態での磁気センサ8a〜8hの出力信号を時刻に対する磁束密度との関係で示した信号波形図、同図(b)は振幅異常状態での磁気センサ8a〜8hの出力信号を時刻に対する磁束密度との関係で示した信号波形図、同図(c)は周期異常状態での磁気センサ8a〜8hの出力信号を時刻に対する磁束密度との関係で示した信号波形図である。
【0046】
ここでは、ワイヤロープ1表面に損傷があったり、或いは鉄粉等の異物が付着していなければ、磁気センサ8a〜8hの出力信号の波形において、図7(a)に示されるように波形に乱れが生じないが、損傷や異物が付着していれば図7(b)に示されるように波形の振幅のピークが過大になったり、或いは図7(c)に示されるように波形の周期が乱れてしまうことを示している。
【0047】
このように、磁気センサ8a〜8hの出力信号の波形に乱れがあると、ストランド凹凸のピーク位置を正しく検出することができない。そこで、こうした磁気センサ8a〜8hの出力信号の波形が乱れる現象に対処するため、ストランド凹凸検出器9により磁気センサ8a〜8hで検出した漏洩磁束の出力信号に対して相対速度の影響を排除した中央値を抽出し、位相補正器10によりワイヤロープ1の位置に対するデータに補正した後にピーク検出器11によりストランド毎のピッチデータの中央値でロープピッチの周期を取得するようにした上、張力補正器12で張力によるワイヤロープ1の伸び量を補正してから漏洩磁束についての元の磁束密度の波形における振幅及び周期が所定の範囲内に収まっているか否かを捩れ量確認器16で確認することによって、波形変動の影響を排除したロープピッチを算出できるため、捩れ量の検出精度を向上させて適確に検査を行うことができる。
【実施例2】
【0048】
図8は、本発明の実施例2に係るワイヤロープ1の検査装置の基本構成を示したブロック図である。実施例2に係る検査装置は、図1に示した実施例1に係る検査装置において、捩れ量変換器15でフィルタ14からの捩れ率(計測した捩れ率)を記憶装置19に格納された初期のワイヤロープ1の捩れ率に基づいて1ピッチ毎に捩れ量に変換する機能を持たせたのに代え、記憶部19を用いずに記憶装置18に格納されたストランド凹凸距離の設計値に基づいて1ピッチ毎に捩れ量に変換する機能を持たせたもので、その他の各部は実施例1の場合と共通している。即ち、実施例2に係る検査装置では、捩れ量変換器15の捩れ量の算出法が実施例1の場合と比べて相違している。
【実施例3】
【0049】
本発明の実施例3に係るワイヤロープ1の検査装置は、図1に示した実施例1に係る検査装置に図8に示した実施例2に係る検査装置の構成を適用し、図1に示される構成で記憶装置18の出力を捩れ量変換器15に入力させるように接続したものである。こうした構成により、実施例3に係る検査装置では、捩れ量変換器15による捩れ量の算出時に記憶装置19のワイヤロープ1の初期の捩れ率を用いる場合と記憶装置18のワイヤロープ1の撚りピッチの設計値を用いる場合との処理モードを任意に切り替えて使用可能となる。
【0050】
[変形例1]
図9は、本発明の変形例1に係るワイヤロープ1の検査装置の基本構成を示したブロック図である。変形例1に係る検査装置は、図1に示した実施例1に係る検査装置において、捩れ量変換器15、捩れ量確認器16、表示器17、及び記憶装置20を持たず、記憶装置19に格納する初期の捩れ率をフィルタ14の出力で格納するように、構成を変形したものである。
【0051】
尚、上述した各実施例或いは変形例1では、装置内部の相対速度検出手段としてのエンコーダ7によって装置自体とワイヤロープ1との相対速度を計測していたが、検査装置を固定してエレベータを動かすような用途の場合には、装置外部の相対速度検出手段として、エレベータの制御盤から相対速度を取得するようにしても良い。また、上述した各実施例或いは変形例1では、押圧手段としてのローラ3、4、5による3点曲げ状態でワイヤロープ1の張力を歪みゲージ6(装置内部に備えられた張力計測手段)により計測する場合を説明したが、ワイヤロープ1の張力の大きさがワイヤロープ1の固定端のばね長(ワイヤロープ1のばね定数の設計値)やロープ端に設置したロードセル(装置外部に備えられた張力計測手段)によって取得できる場合は、歪みゲージ6に代えるか、或いはそれらの値を付け加えるように張力変換器13に入力して利用するようにしても良い。更に、ワイヤロープ1の張力の変動が小さい場合には、全区間均一と仮定し、その代表値をばね定数の設計値として張力変換器13に入力して利用するようにしても良い。このように、本発明のワイヤロープ1の検査装置は、様々な実施態様へと変更可能であるため、各実施例で説明した形態のものに限定されない。
【符号の説明】
【0052】
1 ワイヤロープ
2 磁化器
3〜5 ローラ
6 歪みゲージ
7 エンコーダ
8a〜8h 磁気センサ
9 ストランド凹凸検出器
10 位相補正器
11 ピーク検出器
12 張力補正器
13 張力変換器
14 フィルタ
15 捩れ量変換器
16 捩れ量確認器
17 表示器
18〜20 記憶装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鋼線の束を撚り合わせて構成されるワイヤロープを長手方向に磁化する磁化手段と、前記ワイヤロープに近接して配備されると共に、前記磁化手段により磁化された当該ワイヤロープにおける漏洩磁束を検出する磁気検出手段と、を備えたワイヤロープの検査装置において、
装置内部に備えられた相対速度検出手段により検出されるか、或いは装置外部に備えられた相対速度検出手段により検出された検出結果として入力される前記ワイヤロープと装置自体との相対速度、並びに前記磁気検出手段により検出された前記漏洩磁束からロープピッチを算出すると共に、当該算出したロープピッチから当該ワイヤロープの捩れ量を算出する演算手段を備えたことを特徴とするワイヤロープの検査装置。
【請求項2】
請求項1記載のワイヤロープの検査装置において、前記磁気検出手段の検出領域は、前記ワイヤロープ表面で凹凸を成す前記鋼線の束における直径の外接円以内の領域であることを特徴とするワイヤロープの検査装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のワイヤロープの検査装置において、前記ワイヤロープの張力を計測する張力計測手段を備え、前記演算手段は、前記張力計測手段で計測された張力による前記ワイヤロープの伸び量の影響を補正して前記ワイヤロープの捩れ量を算出することを特徴とするワイヤロープの検査装置。
【請求項4】
請求項3記載のワイヤロープの検査装置において、前記張力計測手段は、前記磁化手段における前記磁気検出手段が配備される側と反対側の所定箇所に設けられると共に、当該磁化手段における当該磁気検出手段を挟んだ両側位置の凸部に備えられた非磁性体の一対の押圧手段に対して前記ワイヤロープを挟んだ反対側に備えられた非磁性体の押圧手段によって当該ワイヤロープを押圧して3点曲げ状態に変形させたときの当該磁化手段における歪みの変化量を計測することで当該ワイヤロープの張力を算出する歪みゲージを備えたことを特徴とするワイヤロープの検査装置。
【請求項5】
請求項4記載のワイヤロープの検査装置において、前記装置内部の相対速度検出手段は、前記張力計測手段における前記3点曲げ状態での前記ワイヤロープとの接触部分に設置された回転体を有し、当該回転体の回転量の計測結果に基づいて前記相対速度を算出するエンコーダであることを特徴とするワイヤロープの検査装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項記載のワイヤロープの検査装置において、前記演算手段は、前記相対速度、並びに前記ワイヤロープの撚りピッチの設計値を用いて当該ワイヤロープにおけるストランドの凹凸が変動する周波数を算出する周波数算出手段と、前記周波数算出手段で算出された前記周波数を中心とした一定幅の帯域を濾波して抽出する帯域濾波手段と、前記磁気検出手段からの前記漏洩磁束を示す出力信号の前記帯域濾波手段で濾波処理した波形を前記相対速度に基づいて前記ワイヤロープの位置に対するデータに補正して出力する位相補正手段と、前記位相補正手段からの出力信号の波形に対してピーク周期を計測することで前記ロープピッチを算出するロープピッチ算出手段と、前記相対速度、並びに装置内部に備えられた張力計測手段により計測されるか、或いは装置外部に備えられた張力計測手段により計測された計測結果として入力される前記ワイヤロープの張力を用いて当該ワイヤロープの位置に対する張力データに変換する張力変換手段と、前記ロープピッチ算出手段からの前記ロープピッチに対する前記張力変換手段での前記張力データに基づいて前記ワイヤロープの張力に対する伸びの量を算出すると共に、当該ワイヤロープの捩れがない場合の当該伸び量に対する比率を示す捩れ率を算出する張力補正手段と、前記張力補正手段で得られた前記捩れ率を予め得られた前記ワイヤロープの初期の捩れ率又は前記ワイヤロープの撚りピッチの設計値に基づいて1ピッチ毎に捩れ量に変換し、当該ワイヤロープの長手方向の各位置の捩れ量を算出する捩れ量変換手段と、前記位相補正手段からの出力信号の波形を前記捩れ量変換手段からの前記捩れ量を示す出力信号の波形が所定の閾値の範囲に収まっているか否かにより確認して前記ワイヤロープの良否を判別する捩れ量確認手段と、を備えたことを特徴とするワイヤロープの検査装置。
【請求項7】
請求項6記載のワイヤロープの検査装置において、前記捩れ量変換手段による前記捩れ量の算出時に前記ワイヤロープの初期の捩れ率を用いる場合と前記ワイヤロープの撚りピッチの設計値を用いる場合との処理モードを任意に切り替えて使用可能であることを特徴とするワイヤロープの検査装置。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項記載のワイヤロープの検査装置において、前記磁気検出手段は、前記ワイヤロープの長手方向に対して少なくとも3個以上が配置されると共に、互いの間隔が当該ワイヤロープ表面の凹凸の周期と一致していることを特徴とするワイヤロープの検査装置。
【請求項9】
請求項8記載のワイヤロープの検査装置において、前記3個以上の磁気検出手段でそれぞれ検出された前記漏洩磁束の検出値についての中央値を抽出する抽出手段を備えたことを特徴とするワイヤロープの検査装置。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか1項記載のワイヤロープの検査装置において、前記演算手段により算出された前記ワイヤロープの捩れ量、装置内部に備えられた張力計測手段により計測されるか、或いは装置外部に備えられた張力計測手段により計測された計測結果として入力される当該ワイヤロープの張力、並びにエレベータの使用履歴に応じて、当該ワイヤロープについての点検時期及び交換時期の少なくとも一方を出力する出力手段を備えたことを特徴とするワイヤロープの検査装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−96950(P2013−96950A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242519(P2011−242519)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【Fターム(参考)】