説明

ワイヤーハーネスの被覆構造

【課題】本発明は、汎用性があり、電磁遮蔽性の高いワイヤーハーネスの被覆部材を提供する。
【解決手段】
本ワイヤーハーネスの被覆部材では、電磁遮蔽効果を有し可撓性の高いシールド部材と、ドレーン線と、をテープ状に一体的に形成し、片側面に粘着部を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車種等使用対象にとらわれず汎用性があり、携帯性も高いワイヤーハーネスの被覆構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤーハーネスは、例えば車両における複数の電線をチューブや粘着テープなどでまとめ、端部に複数の電線を一度に接続できるようにすることで電線の束が占める空間を小さくするものであるが、その中でも車両ハーネスの一部回路に使用される耐ノイズ用のシールド電線では、電線に銅箔やアルミ箔等のシールド部材を巻き付けてその周りをチューブ状の絶縁外皮で被覆する構成のものがある。例えば、国際公開公報第2004/015822号では、アルミ箔であるシールド部材とアース用のドレーン線と被覆電線とを一体で成型するワイヤーハーネスの構造が開示されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1のワイヤーハーネスの構造の場合、一般電線に比べて構造が複雑であり車両等使用対象ごとの専用品となり汎用性がないためコストが増大するという問題がある。一方、汎用的なワイヤーハーネスの構造としてシールドテープを電線に巻き付けることで複数の電線をまとめ耐ノイズ性を確保する方法も存在する。シールドテープはシールド部材と粘着部材とを積層させて形成したテープ状のものである。
【0004】
しかしながら、このワイヤーハーネスの構造の場合、アース目的のドレーン線が存在しておらず電磁遮蔽効果が必ずしも高いとは言い難いものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開公報第2004/015822号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の事情に鑑みて創作されたものであり、耐ノイズ性を確保しつつ車種等使用対象にとらわれずに汎用性を有し、さらには携帯性の高い電磁遮蔽効果を有するワイヤーハーネスの被覆部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明では、電磁遮蔽効果を有し可撓性の高いシールド部材と、ドレーン線と、をテープ状に一体的に形成し、片側面に粘着部を形成するワイヤーハーネスの被覆部材を提供する。
【0008】
本発明のワイヤーハーネスの被覆部材は、従来のシールドテープ(被覆テープ)に対応するものであり、シールドを電線に巻いてまとめる使い方をするものである。このワイヤーハーネスの被覆部材は、銅箔やアルミ箔のような電磁遮蔽効果の高く可撓性の高いシールド部材とアースの役割を有するドレーン線とを内含して一体形成したテープ状のものである。したがって、複数の電線に巻き付けるだけで耐ノイズ性が高く、アース取りが可能なワイヤーハーネスの被覆部材を作ることができる。
【0009】
また、本ワイヤーハーネスの被覆部材では、専用品を作ることを要さず必要な電線数を所望箇所だけ電磁遮蔽することができる。したがって、部品点数を削減することができ、コストも低減し得る。
【発明の効果】
【0010】
本発明のワイヤーハーネスの被覆部材は、耐ノイズ性を確保しながらも使用対象にとらわれず汎用性を有し、従来のシールドテープと同等なため携帯性も高い。さらに、本ワイヤーハーネスの被覆部材では、電磁遮蔽効果を有する構造を提供し得る。また、本ワイヤーハーネスの被覆部材では、専用品を作ることを要さず必要な電線数を所望箇所だけ電磁遮蔽することができる。したがって、部品点数を削減することができ、コストも低減し得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来のワイヤーハーネスの構造を示した略図である。
【図2】従来のワイヤーハーネスの被覆部材および関連部品を示しており、(a)はリールに巻き取られている段階での被覆部材、(b)はその被覆部材の断面、(c)は電線に被覆部材を巻き付けてワイヤーハーネスを示している。
【図3】本発明のワイヤーハーネスの被覆部材および関連部品を示しており、(a)はリールに巻き取られている段階での被覆部材、(b)はその被覆部材の断面、(c)は電線にシールドテープを巻き付けてワイヤーハーネスを示している。
【図4】図3に示すワイヤーハーネスの被覆部材の2つの構成例の断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
続いて、本発明の一実施形態に係るワイヤーハーネスの被覆部材について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本ワイヤーハーネスの被覆部材の説明に先立って、従来のワイヤーハーネスの構造および関連部品について概略を説明する。
【0013】
図1は従来のワイヤーハーネスの一例を示している。このワイヤーハーネス100では複数の電線102とドレーン線108とをシールド部材104で被覆し、その上から絶縁ケーブル106で被覆している。電線102は銅線等の導体102aを絶縁体102bで被覆して形成している。シールド部材104は電磁遮蔽効果を有する材質であり、金属箔やワイヤメッシュで形成される。このシールド部材104は外部からのノイズ信号を遮蔽するものである。また、最外側の絶縁ケーブル106は通常、樹脂材料で形成される。さらに、絶縁ケーブル106やシールド部材104は、電線102とともにアース用のドレーン線108も被覆するためノイズ信号が進入しても外部に放出することができる。
【0014】
このような型式のワイヤーハーネス100の場合、複数の電線102をシールド部材104や絶縁ケーブル106でまとめる構成を有するが、一般電線に比べて構造が複雑であり絶縁ケーブル106の内径は製品ごとに決まってしまうため予め定められた電線の太さや本数に応じた専用品とならざるを得ない。したがって、図1のワイヤーハーネスでは汎用性がなくコストが増大する。
【0015】
一方、図2では、他の従来型のワイヤーハーネスの被覆部材201(以下、「シールドテープ201」と称する)および関連部品を示しており、(a)はリール207に巻き取られている段階でのシールド部材204、(b)は(a)のラインA−Aに沿ったシールドテープ201の断面、(c)は電線202にシールドテープ201を巻き付けたワイヤーハーネス200を示している。図2(a)に示すようにシールドテープ201は通常、リール207に巻き取られており、端側から剥がして使用する。また、図2(b)から判るようにシールドテープ201は、下から順に粘着部203、シールド部材204、絶縁部206を積層して形成している。粘着部203は、汎用の両面テープのような粘着材を塗布したテープ状のものであり、シールド部材204は図1の説明で既述したような電磁遮蔽効果を有するアルミ箔や銅箔等の金属箔で形成されている。また、絶縁部206は絶縁体であり、通常、樹脂材料で形成される。
【0016】
実際にはこのようなシールドテープ201を複数の電線202を束ねて巻き付けて使用する。これにより図2のワイヤーハーネス200の場合、図1のワイヤーハーネス100と同様に外部ノイズ信号や電気を遮断し得ることができるだけでなく、種々の太さ、本数の電線202に応じてその都度、シールドテープ201を巻くだけでワイヤーハーネスの被覆部材200を作成することができ、汎用性が高い。その反面、このワイヤーハーネス200ではアース用のドレーン線が存在していないため電磁遮蔽性が必ずしも高いとはいえない。なお、電線202は図1のワイヤーハーネス100と同様に銅線等の導体202aを絶縁体202bで被覆して形成している。
【0017】
《本発明のワイヤーハーネスの被覆部材の実施形態》
図3では、本発明のワイヤーハーネスの被覆部材11(以下、「シールドテープ11」と称する)および関連部品を示しており、図2同様、(a)はリール17に巻き取られている段階でのシールド部材14、(b)は(a)のラインA−Aに沿ったシールドテープ11の断面、(c)は電線12にシールドテープ11を巻き付けたワイヤーハーネス10を示している。図2(a)に示すようにシールドテープ11は通常、リール17に巻き取られており、端側から剥がして使用する。また、図2(b)から判るようにシールドテープ11は、絶縁部16の中に、シールド部材14とドレーン線18とを含んでいる。シールド部材14は図2同様、電磁遮蔽効果を有するアルミ箔や銅箔等の金属箔で形成されている。また、絶縁部16は絶縁体であり、通常、樹脂材料で形成される。
【0018】
図4を参照すれば、シールドテープ11の2つの具体例の断面図を示している。
図4(a)は、図3(b)のシールドテープ11の断面図であり、絶縁部16の間でシールド部材14とドレーン線18とを挟み込んでいる。絶縁部16は、別途分離した2枚の上部絶縁部16aと下部絶縁部16bとで構成されている。下部絶縁部16bには粘着部13が貼り付けられている。
【0019】
一方、図4(b)は、図4(a)のシールドテープ11の変形例であり、絶縁部16の間でシールド部材14とドレーン線18とを挟み込んでいる点では同様であるが、絶縁部16が、一体に形成され、幅方向に折り曲げられて形成されている点が図4(a)と相違する。また、絶縁部16の幅方向半分程度までの片面には粘着部13‘が貼り付けられている。
【0020】
なお、粘着部13、13’が、汎用の両面テープのような粘着材を塗布したテープ状のものである点は図1〜2の場合と同様である。また、、図4(a)(b)の電線12についても図1〜図2のワイヤーハーネス100、200と同様に銅線等の導体12aを絶縁体12bで被覆して形成している。
【0021】
実際にはこのようなシールドテープ11を複数の電線12を束ねて巻き付けて使用する。これによりワイヤーハーネス10は、種々の太さ、本数の電線12に応じてその都度、シールドテープ11を巻くだけでワイヤーハーネスの被覆部材10を作成することができ、汎用性が高い。さらに、このシールドテープ11の場合、図2の場合と相違し、アース用のドレーン線18が存在しているため内部にノイズ信号が進入しても外部に放出することができる。したがって、電磁遮蔽性も非常に高いものとなる。
【0022】
以上、本発明のワイヤーハーネスの被覆部材についての実施形態およびその概念について説明してきたが本発明はこれに限定されるものではなく特許請求の範囲および明細書等に記載の精神や教示を逸脱しない範囲で他の変形例、改良例が得られることは当業者は理解できるであろう。
【符号の説明】
【0023】
10 ワイヤーハーネス
11,11‘ 被覆部材(シールドテープ)
12 電線
13、13‘ 粘着部
14 シールド部材
16 絶縁部
18 ドレーン線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁遮蔽効果を有し可撓性の高いシールド部材と、ドレーン線と、をテープ状に一体的に形成し、
片側面に粘着部を形成することを特徴とするワイヤーハーネスの被覆部材。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−115248(P2013−115248A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260369(P2011−260369)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】