説明

ワイヤーハーネス取付構造

【課題】少ない部品点数で、ワイヤーハーネスを抜け止めすると共に、ワイヤーハーネスの軸線方向のずれを抑制することができるワイヤーハーネス取付構造を得る。
【解決手段】クランプ16とクランプ18の間にはU字状リブ28が設けられており、クランプ16、18によって抜け止めされた状態で保持されたワイヤーハーネス14がU字状リブ28によって押圧され、U字状リブ28付近では、ワイヤーハーネス14の軸芯の位置が車両上方へずれるようになっている。つまり、ワイヤーハーネス14は軸線方向で蛇行することとなり、これにより、ワイヤーハーネス14の軸線方向の移動が抑制される。このように、クランプ16、18及びU字状リブ28によってワイヤーハーネス14をドアトリム10に取付けることで、少ない部品点数で、ワイヤーハーネス14を抜け止めすると共に、ワイヤーハーネス14の軸線方向のずれを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に用いられるワイヤーハーネス取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両のドア等に用いられる給電用のワイヤーハーネス取付構造においては、ドアトリムに一体成形され上方へ向かって延出し断面略L字状を成す上方突出片によってワイヤーハーネスを保持する技術が開示されている(例えば、特許文献1)。しかし、この先行技術では、ワイヤーハーネスの上方突出片への挿入方向に対してワイヤーハーネスの移動を規制することはできる(ワイヤーハーネスの抜け止めが可能である)が、ワイヤーハーネスの軸線方向に沿った移動を規制する構成にはなっていない。
【0003】
一方、装着後にワイヤーハーネスを蛇行させることで、ワイヤーハーネスの軸線方向への移動を抑制する技術が開示されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−048295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この場合、ワイヤーハーネスを抜け止めするため上蓋(アウタパネル)が必要となり、部品点数が増えてしまう。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、少ない部品点数で、ワイヤーハーネスを抜け止めすると共に、ワイヤーハーネスの軸線方向のずれを抑制することができるワイヤーハーネス取付構造を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の本発明のワイヤーハーネス取付構造は、ワイヤーハーネスが取付けられるベース部と、前記ベース部に一体的に延設され、当該ベース部におけるワイヤーハーネス取付面との間に前記ワイヤーハーネスが抜け止めされた状態で当該ワイヤーハーネスを保持する一対のクランプと、前記一対のクランプの間に配置され、当該クランプで保持されたワイヤーハーネスを押圧し当該ワイヤーハーネスの軸芯の位置をずらす突設部と、を有する。
【0008】
請求項1記載の本発明のワイヤーハーネス取付構造では、ワイヤーハーネスが取付けられるベース部には、一対のクランプが一体的に延設されている。ここでの「一体的」には、クランプがベース部と一体成形された場合以外に、クランプがベース部に固定されて当該ベース部と一体化される場合が含まれる。
【0009】
そして、このベース部におけるワイヤーハーネス取付面と一対のクランプとの間にワイヤーハーネスが抜け止めされた状態で保持される。さらに、一対のクランプの間には突設部が設けられ、当該突設部によって、クランプで保持されたワイヤーハーネスが押圧され、当該ワイヤーハーネスの軸芯の位置が(ベース部の内面に沿って又はベース部の内面と直交する垂直面に沿って)ずれるように設定される。これにより、ワイヤーハーネスの軸線方向の移動が抑制される。
【0010】
請求項2記載の本発明のワイヤーハーネス取付構造は、請求項1に記載のワイヤーハーネス取付構造において、前記突設部の前記ワイヤーハーネスとの接触部が曲面である。
【0011】
請求項2記載の本発明のワイヤーハーネス取付構造では、突設部のワイヤーハーネスとの接触部を曲面に形成することで、ワイヤーハーネスが軸線方向に沿って引張られた場合に当該ワイヤーハーネスの表面を傷付けずにワイヤーハーネスに抵抗を与えることができる。
【0012】
請求項3記載の本発明のワイヤーハーネス取付構造は、請求項2に記載のワイヤーハーネス取付構造において、前記突設部は前記ワイヤーハーネスの挿入方向と反対側に前記曲面が設けられ平面視で逆U字状に形成されたリブである。
【0013】
請求項3記載の本発明のワイヤーハーネス取付構造では、突設部が平面視で逆U字状に形成されたリブとすることで、突設部の内側を肉抜きすることができ、ヒケの発生を抑制又は防止することができる。また、このリブにおいて、ワイヤーハーネスの挿入方向と反対側に曲面が設けられることで、ワイヤーハーネスがクランプによって保持された状態で、ワイヤーハーネスは当該リブによって挿入方向と反対側へ押圧されることとなるが、ワイヤーハーネスはクランプによって抜け止めされるため、リブによって押圧されることで当該ワイヤーハーネスがクランプから抜けるということはない。
【0014】
請求項4記載の本発明のワイヤーハーネス取付構造は、請求項1〜3の何れか1項に記載のワイヤーハーネス取付構造において、前記クランプの基部側が自由端側よりも車両下方側に位置している。
【0015】
請求項4記載の本発明のワイヤーハーネス取付構造では、クランプの基部側を自由端側よりも車両下方側に配置することで、ワイヤーハーネスの自重はクランプの基部側(ワイヤーハーネスが抜けない方向)に掛かることとなり、ワイヤーハーネスがクランプによって保持された状態が安定的に維持される。
【0016】
請求項5記載の本発明のワイヤーハーネス取付構造は、請求項1〜4の何れか1項に記載のワイヤーハーネス取付構造において、前記クランプが、前記ベース部から延出し弾性変形可能な湾曲片と、前記湾曲片の自由端側に設けられ当該湾曲片が弾性変形して前記ワイヤーハーネスの挿入を許容する挿入部と、前記湾曲片の基部側に設けられ前記挿入部から挿入されたワイヤーハーネスを保持する保持部と、を含んで構成されている。
【0017】
請求項5記載の本発明のワイヤーハーネス取付構造では、クランプには、ベース部から延出する湾曲片が設けられており、当該湾曲片は弾性変形可能とされている。この湾曲片の自由端側には挿入部が設けられており、当該湾曲片が弾性変形することで、ワイヤーハーネスの挿入が許容される。つまり、ワイヤーハーネスが挿入された後、湾曲片が復元することで、ワイヤーハーネスの当該挿入部の通過が阻害され、ワイヤーハーネスは抜け止めされる。また、湾曲片の基部側には保持部が設けられており、当該保持部によってワイヤーハーネスが保持される。
【0018】
請求項6記載の本発明のワイヤーハーネス取付構造は、請求項5に記載のワイヤーハーネス取付構造において、前記突設部が側面視で前記保持部内に配置されている。
【0019】
請求項6記載の本発明のワイヤーハーネス取付構造では、突設部が側面視でクランプの保持部内に配置されることで、ワイヤーハーネスが挿入部から挿入され保持部で保持された状態で、ワイヤーハーネスが突設部に当接し当該ワイヤーハーネスの軸芯がずれるようにすることができる。つまり、ワイヤーハーネスの取付け方向を一方向にすることができ、ワイヤーハーネスの取付け作業性が向上する。また、ワイヤーハーネスの自重がクランプ及び突設部によって支持されることで、当該クランプ及び突設部に作用する荷重を分散させることができ、クランプ及び突設部の経時変化を低減させることができる。
【0020】
請求項7記載の本発明のワイヤーハーネス取付構造は、請求項6に記載のワイヤーハーネス取付構造において、前記保持部の外面に前記ベース部と繋がる背リブが形成されている。
【0021】
請求項7記載の本発明のワイヤーハーネス取付構造では、保持部の外面にベース部と繋がる背リブが形成されることで、当該背リブによって保持部を支持することができ、当該保持部の強度を向上させることができる。
【0022】
請求項8記載の本発明のワイヤーハーネス取付構造は、請求項7に記載のワイヤーハーネス取付構造において、前記背リブが前記湾曲片の延出方向に沿って前記挿入部の外面まで延びている。
【0023】
請求項8記載の本発明のワイヤーハーネス取付構造では、ベース部と繋がる背リブを湾曲片の延出方向に沿って挿入部の外面まで延ばすことで、湾曲片の弾性力を向上させ、ワイヤーハーネスへの保持力を強化させることができる。
【発明の効果】
【0024】
請求項1記載の本発明のワイヤーハーネス取付構造は、少ない部品点数で、ワイヤーハーネスを抜け止めすると共に、ワイヤーハーネスの軸線方向のずれを抑制することができるという優れた効果を有する。
【0025】
請求項2記載の本発明のワイヤーハーネス取付構造は、ワイヤーハーネスの被覆が破れないようにすることができ、ワイヤーハーネスの耐久性能が向上するという優れた効果を有する。
【0026】
請求項3記載の本発明のワイヤーハーネス取付構造は、ベースの意匠面にヒケが生じないようにすることができるという優れた効果を有する。
【0027】
請求項4記載の本発明のワイヤーハーネス取付構造は、走行時のワイヤーハーネスの振動が低減されるという優れた効果を有する。
【0028】
請求項5記載の本発明のワイヤーハーネス取付構造は、湾曲片の弾性力を調整することでワイヤーハーネスへの保持力を容易に調整することができるという優れた効果を有する。
【0029】
請求項6記載の本発明のワイヤーハーネス取付構造は、ワイヤーハーネスの取付け作業性が向上するという優れた効果を有する。
【0030】
請求項7記載の本発明のワイヤーハーネス取付構造は、保持部の支持力を向上させることができるという優れた効果を有する。
【0031】
請求項8記載の本発明のワイヤーハーネス取付構造は、ドアトリムに適用された場合、ドアの開閉時の衝撃に対してワイヤーハーネスの振動が低減されるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本実施形態に係るワイヤーハーネス取付構造を示す斜視図である。
【図2】本実施形態に係るワイヤーハーネス取付構造の作用を説明するための動作図であり、クランプにワイヤーハーネスを挿入する前の状態を示す、(A)は斜視図、(B)は側面図、(C)は平面断面図である。
【図3】本実施形態に係るワイヤーハーネス取付構造の作用を説明するための動作図であり、クランプにワイヤーハーネスを挿入している状態を示す、(A)は斜視図、(B)は側面図、(C)は平面断面図である。
【図4】本実施形態に係るワイヤーハーネス取付構造の作用を説明するための動作図であり、クランプにワイヤーハーネスが挿入された状態を示す、(A)は斜視図、(B)は側面図、(C)は平面断面図である。
【図5】本実施形態に係るワイヤーハーネス取付構造がドアトリムに適用された状態を示す側面図である。
【図6】本実施形態に係るワイヤーハーネス取付構造の第1変形例を示す斜視図である。
【図7】本実施形態に係るワイヤーハーネス取付構造の第2変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明におけるワイヤーハーネス取付構造の一実施形態を図1〜図5に従って説明する。なお、図中矢印UPは車体上方方向、図中矢印FRは車体前方方向を示し、図中矢印INは車幅内側方向を示している。
【0034】
図5には本実施形態に係るワイヤーハーネス取付構造15が適用されたドアトリム(ベース部)10が示されている。このドアトリム10には、スピーカ11、パワーウインド用スイッチ13、図示はしないが、フェンダーミラー用のモータ、ウインドレギュレータ用のモータ、ドアロック、ドアアウトサイドハンドルのスマートキースイッチ及びドア開放時のランプ等の電装品が取付け可能とされており、ドアトリム10のワイヤーハーネス取付面10A(以下、「取付面10A」という)側には、これらの電装品と電気的に接続されたコネクタ12がそれぞれ設けられている。これらのコネクタ12にはそれぞれワイヤーハーネス14が接続されており、当該ワイヤーハーネス14及びコネクタ12を介して、各電装品への給電が成される。
【0035】
各ワイヤーハーネス14は車両前方側で1つに束ねられた状態で被覆コーティングされており、後述するクランプ16、18を介してドアトリム10に取付けられている。ワイヤーハーネス14は、各コネクタ12に対応して所定の位置で分岐しており、ワイヤーハーネス14の外径寸法は徐々に小さくなっている。このため、ワイヤーハーネス14を保持するクランプ16、18の大きさも当該ワイヤーハーネス14の外径寸法によって異なっている。
【0036】
(ワイヤーハーネス取付構造)
ここで、ワイヤーハーネス取付構造を構成するクランプについて説明する。図1にはワイヤーハーネス取付構造15が示されているが、図1で示されるように、クランプ16とクランプ18の形状及び構造は同じであるため、ここでは代表して、クランプ16についての説明を行う。
【0037】
クランプ16はドアトリム10に一体成形され、当該クランプ16にはドアトリム10の取付面10Aから凸曲面を形成した後車両上方へ向かって延出する湾曲片20が設けられている。この湾曲片20の基部側には、ワイヤーハーネス14の外径寸法に合わせて湾曲し当該ワイヤーハーネス14の外周面を覆う保持部22が設けられており、ワイヤーハーネス14が保持される。
【0038】
保持部22の車両上方(湾曲片20の自由端側)には、湾曲片20の自由端部へ向かうにつれてドアトリム10の取付面10Aから離間する方向へ傾斜する挿入部24が設けられている。図2(B)に示されるように(図2(A)の側面図である)、挿入部24の保持部22側とドアトリム10の取付面10Aとの間は、ワイヤーハーネス14の外径寸法よりも小さい隙間となるように設定されている。
【0039】
ここで、図1に示されるように、湾曲片20の外面20Aの幅方向の中央部には、ドアトリム10の取付面10Aと繋がり湾曲片20の基部から自由端部に亘って、背リブ26が立設している。この背リブ26の高さは、湾曲片20の延出方向の位置によって異なっており、湾曲片20の基部側では、側面視でドアトリム10の取付面10A側を底辺とする略三角形状に形成されている。また、湾曲片20の保持部22から挿入部24までの間は、背リブ26は略一定の高さに設定されており、湾曲片20の挿入部24では、側面視で湾曲片20の先端部を頂部とする略三角形状に形成されている。
【0040】
ところで、本実施形態では、クランプ16とクランプ18の間に、平面視で逆U字状に形成されたU字状リブ(突設部)28が設けられている。このU字状リブ28の湾曲部(接触部)28Aは、側面視でクランプ16、18の保持部22内に配置されている(図2(B)参照)。つまり、クランプ16、18によってワイヤーハーネス14が保持された状態で、U字状リブ28によってワイヤーハーネス14が押圧され、U字状リブ28付近では、ワイヤーハーネス14の軸芯の位置が車両上方側へずれるようになっている。
【0041】
そして、ここでは、U字状リブ28の湾曲部28Aは、ワイヤーハーネス14を挿入方向と反対方向へ向かって押圧するように配置されている。ワイヤーハーネス14はクランプ16、18によって抜け止めされるため、U字状リブ28によってワイヤーハーネス14が挿入方向と反対方向へ向かって押圧されても当該ワイヤーハーネス14がクランプ16、18から抜けることはない。
【0042】
(ワイヤーハーネスの取付構造の作用・効果)
次に、本実施形態に係るワイヤーハーネスの取付構造の作用・効果について説明する。 図2(A)〜(C)に示されるように((A)は斜視図、(B)は側面図、(C)は平面断面図であり、図3及び図4も同様である)、クランプ16、18の湾曲片20の保持部22内へワイヤーハーネス14を挿入する。前述したように、湾曲片20の挿入部24とドアトリム10の取付面10Aとの間は、ワイヤーハーネス14の外径寸法よりも小さい隙間となるように設定されている。このため、ドアトリム10の取付面10Aに沿ってドアトリム10の車両上方側から車両下方側へワイヤーハーネス14をクランプ16、18へ向かって移動させると、当該ワイヤーハーネス14は湾曲片20の挿入部24に当接して(挿入部24と干渉して)保持部22への進入が規制される。
【0043】
この挿入部24は、湾曲片20の自由端部へ向かうにつれてドアトリム10の取付面10Aから離間する方向へ向かって傾斜している。このため、挿入部24にワイヤーハーネス14が当接した状態で、ワイヤーハーネス14を保持部22側へ押圧すると、当該挿入部24にはドアトリム10の取付面10Aから離間する方向へ作用する分力が発生する。これにより、挿入部24を介して湾曲片20がドアトリム10の取付面10Aから離間する方向へ向かって弾性変形する。このため、図3(A)〜(C)に示されるように、挿入部24とドアトリム10との隙間が広がり、挿入部24を経てワイヤーハーネス14を保持部22へ挿入させることができる。
【0044】
ワイヤーハーネス14が挿入された後、図4(A)〜(C)に示されるように湾曲片20は復元し、これによって、ワイヤーハーネス14の湾曲片20の挿入部24側への通過が阻害され、ワイヤーハーネス14は抜け止めされることとなる。そして、湾曲片20の基部側にはワイヤーハーネス14の外径寸法に合わせて湾曲する保持部22が設けられているため、当該保持部22によってワイヤーハーネス14は保持される。
【0045】
ここで、湾曲片20の外面20Aの幅方向の中央部には、ドアトリム10の取付面10Aと繋がり湾曲片20の基部から自由端部に亘って、背リブ26が立設している。湾曲片20に背リブ26を設けることで、湾曲片20の変形を抑制し湾曲片20の強度を増大させることができる。そして、湾曲片20の基部側にドアトリム10の取付面10Aと繋がる背リブ26を設けることで、当該背リブ26によって、ワイヤーハーネス14の自重方向に対して湾曲片20の保持部22が支持される。つまり、ここでは当該保持部22の強度を増大させ、保持部22の支持力を向上させることができる。
【0046】
また、湾曲片20の保持部22から挿入部24までの間に背リブ26を設けることで、当該背リブ26によって、湾曲片20を弾性変形させたときの復元力を増大させることができる。このため、ワイヤーハーネス14への保持力を増大させることができ、ドア(図示省略)の開閉時の衝撃に対してワイヤーハーネス14の振動を低減させることができる。
【0047】
さらに、湾曲片20の挿入部24まで背リブ26を延出させている。これにより、挿入部24が補強されるが、この挿入部24では、背リブ26が側面視で湾曲片20の先端部を頂部とする略三角形状に形成されている。つまり、背リブ26の高さは挿入部24の先端部へ向かうにつれて徐々に低くなるように設定されている。これにより、挿入部24において、湾曲片20の他の部分よりも柔軟性が得られ、ワイヤーハーネス14が挿入し易くなっている。
【0048】
一方、図4(B)に示されるように、クランプ16は車両上方へ向かって延出しているため、クランプ16、18の基部側が自由端側よりも車両下方側となるように配置されている。このため、ワイヤーハーネス14の自重はクランプ16、18の基部側(ワイヤーハーネスが抜けない方向)に掛かることとなり、ワイヤーハーネス14がクランプ16、18によって保持された状態が安定的に維持される。
【0049】
ところで、図4(A)〜(C)に示されるように、クランプ16とクランプ18の間にはU字状リブ28が設けられている。このU字状リブ28の湾曲部28Aは、側面視でクランプ16、18の保持部22の挿入部24側に配置されている。つまり、クランプ16、18によってワイヤーハーネス14が保持された状態で、ワイヤーハーネス14はU字状リブ28によって当該ワイヤーハーネス14の挿入方向と反対方向へ向かって押圧される。これにより、U字状リブ28付近では、ワイヤーハーネス14の軸芯の位置が車両上方へずれるようになっている。つまり、ワイヤーハーネス14は軸線方向で蛇行することとなり、これにより、ワイヤーハーネス14の軸線方向の移動が抑制される。
【0050】
このように、クランプ16、18及びU字状リブ28によってワイヤーハーネス14をドアトリム10に取付けることで、少ない部品点数で、ワイヤーハーネス14を抜け止めすると共に、ワイヤーハーネス14の軸線方向のずれを抑制することができる。
【0051】
また、クランプ16、18に保持されたワイヤーハーネス14の軸芯の位置がずれることによって、図示はしないが、例えば、ワイヤーハーネス14の外周面とクランプ16、18の保持部22の内面との間に隙間が設けられた場合、当該保持部22内でワイヤーハーネス14がワイヤーハーネス14の軸線に対して斜めに配置されることとなる。これにより、当該隙間は埋められ、クランプ16、18内のワイヤーハーネス14のガタツキが抑制され、車両走行時の振動を低減することができる。
【0052】
ここで、U字状リブ28のワイヤーハーネス14との接触部が湾曲部28Aであるため、ワイヤーハーネス14が軸線方向に沿って引張られた場合に当該ワイヤーハーネス14の表面を傷付けないようにすることができる。これにより、ワイヤーハーネス14の被覆が破れないようにすることができ、ワイヤーハーネス14の耐久性能が向上する。
【0053】
また、本実施形態では、U字状リブ28の湾曲部28Aが、側面視でクランプ16、18の保持部22内に配置され、ワイヤーハーネス14がクランプ16、18に保持された状態で、当該ワイヤーハーネス14がU字状リブ28に当接してワイヤーハーネス14の軸芯がずれるようにしている。つまり、ここでは、ワイヤーハーネス14を組付けながら容易に当該ワイヤーハーネス14をS字状に曲げることができる。
【0054】
このように、ワイヤーハーネス14の取付け方向を一方向にすることで、ワイヤーハーネス14の取付け作業性が向上する。また、ワイヤーハーネス14の自重をクランプ16、18及びU字状リブ28の湾曲部28Aで支持することで、当該クランプ16、18及びU字状リブ28の湾曲部28Aに作用する荷重を分散させることができ、クランプ16、18及びU字状リブ28の経時変化を低減させることができる。
【0055】
また、ワイヤーハーネス14の軸芯の位置をずらす突設部をU字状リブ28とすることで、突設部の内側を肉抜きすることができ、当該U字状リブ28においてヒケを防止することができる。このため、ドアトリム10の意匠面にヒケが生じないようにすることができる。
【0056】
(その他の変形例)
本実施形態では、図1に示されるように、突設部としてU字状リブ28を例に挙げて説明したが、クランプ16及びクランプ18に保持されたワイヤーハーネス14の軸芯をずらすことができれば良いため、必ずしもU字状リブ28である必要はない。例えば、U字状リブ28の湾曲部28Aのみが設けられても良い。また、ドアトリム10の意匠面側にヒケが生じる可能性が高いが、図6に示されるように、平面視で長円状の中実リブ(突設部)30を設けても良い(第1変形例)。なお、この中実リブ30の形状もこれに限るものではない。
【0057】
また、本実施形態では、図1に示されるように、U字状リブ28を設けて、クランプ16及びクランプ18に保持されたワイヤーハーネス14の軸芯をドアトリム10の取付面10Aに沿ってずらすようにしたが、ワイヤーハーネス14の軸芯をずらすことができれば良いため、これに限るものではない。例えば、ワイヤーハーネス14の軸芯をドアトリム10の取付面10Aと直交する垂直面に沿ってずらすようにしても良く、この場合、例えば、図7に示されるように、クランプ16とクランプ18の間に、台形状リブ(突設部)32が設けられる(第2変形例)。
【0058】
この台形状リブ32の車両上方側には傾斜部32Aが設けられており、当該傾斜部32Aは、台形状リブ32の上底部32Bへ向かうにつれてドアトリム10の取付面10Aから離間する方向へ傾斜している。この傾斜部32Aによって、ワイヤーハーネス14が台形状リブ32の上底部32Bへ案内される。この上底部32Bは、クランプ16の保持部22とクランプ18の保持部22の間に位置しており、ワイヤーハーネス14は台形状リブ32の上底部32Bに移動すると共に、クランプ16、18に保持されることとなる。そして、ワイヤーハーネス14が当該クランプ16、18によって保持された状態で、台形状リブ32付近では、ワイヤーハーネス14の軸芯の位置がドアトリム10の取付面10Aから離間する方向へ(ドアトリム10の取付面10Aと直交する垂直面に沿って)ずれることとなる。図1で示すU字状リブ28の場合、ワイヤーハーネス14を挿入方向と反対方向へ向かって押圧するが、ここでは、ワイヤーハーネス14をドアトリム10の取付面10Aから離間する方向へ押圧するため、クランプ16、18による保持力はU字状リブ28を設けた場合よりも低く設定することができる。
【0059】
(本実施形態の補足説明)
本実施形態以外にも、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない。例えば、本実施形態では、図5に示されるように、ベース部としてドアトリム10を例に挙げて説明したが、ワイヤーハーネス14を取付け可能な車両用内装部材であればドアトリム10に限るものではない。
【0060】
また、ここでは、クランプ16とドアトリム10とが一体成形された説明を行ったが、ドアトリム10にクランプ16を固定して当該クランプ16をドアトリム10に一体化させても良い。また、ワイヤーハーネス14との接触部には湾曲部28Aが設けられるようにしたが、当該接触部はフラット面であっても良い。さらに、ワイヤーハーネスの取付け作業性は悪くなるが、U字状リブ28の向きを上下逆にしても良い。この場合、ワイヤーハーネス14を挿入方向へ向かって押圧することとなる。
【0061】
さらに、背リブ26は必ずしも湾曲片20に形成される必要はない。また、当該背リブが湾曲片20に形成された場合でも、必ずしも湾曲片20の基部から先端部に亘って形成される必要はなく、湾曲片20の基部側のみに形成されていても良い。
【符号の説明】
【0062】
10 ドアトリム
10A 内面(ワイヤーハーネス取付面)
14 ワイヤーハーネス
16 クランプ
18 クランプ
20 湾曲片
22 保持部
24 挿入部
26 背リブ
28 U字状リブ(突設部)
28A 湾曲部(接触部)
30 中実リブ(突設部)
32 台形状リブ(突設部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーハーネスが取付けられるベース部と、
前記ベース部に一体的に延設され、当該ベース部におけるワイヤーハーネス取付面との間に前記ワイヤーハーネスが抜け止めされた状態で当該ワイヤーハーネスを保持する一対のクランプと、
前記一対のクランプの間に配置され、当該クランプで保持されたワイヤーハーネスを押圧し当該ワイヤーハーネスの軸芯の位置をずらす突設部と、
を有するワイヤーハーネス取付構造。
【請求項2】
前記突設部の前記ワイヤーハーネスとの接触部が曲面である請求項1に記載のワイヤーハーネス取付構造。
【請求項3】
前記突設部は前記ワイヤーハーネスの挿入方向と反対側に前記曲面が設けられ平面視で逆U字状に形成されたリブである請求項2に記載のワイヤーハーネス取付構造。
【請求項4】
前記クランプの基部側が自由端側よりも車両下方側に位置している請求項1〜3の何れか1項に記載のワイヤーハーネス取付構造。
【請求項5】
前記クランプが、前記ベース部から延出し弾性変形可能な湾曲片と、前記湾曲片の自由端側に設けられ当該湾曲片が弾性変形して前記ワイヤーハーネスの挿入を許容する挿入部と、前記湾曲片の基部側に設けられ前記挿入部から挿入されたワイヤーハーネスを保持する保持部と、を含んで構成された請求項1〜4の何れか1項に記載のワイヤーハーネス取付構造。
【請求項6】
前記突設部が側面視で前記保持部内に配置されている請求項5に記載のワイヤーハーネス取付構造。
【請求項7】
前記保持部の外面に前記ベース部と繋がる背リブが形成された請求項6に記載のワイヤーハーネス取付構造。
【請求項8】
前記背リブが前記湾曲片の延出方向に沿って前記挿入部の外面まで延びている請求項7に記載のワイヤーハーネス取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−95437(P2012−95437A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240090(P2010−240090)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】