説明

ワイヤーハーネス

【課題】部品単位で簡単に分解できリサイクル性を向上させることができる電線の保護性に優れたワイヤーハーネスを提供する。
【解決手段】本ワイヤーハーネス1は、表面に複数の電線6を互いに略平行に配置してなる電線シート2と、電線シートの複数の電線が配置される表面と反対側の表面に剥離可能に積層される保護シート3と、を備える複合シート5を、複数の電線の配列方向Dに巻いて形成され、電線シートは、電線を被覆して保持し且つ切欠部7が形成された被覆部2aを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーハーネスに関し、さらに詳しくは、部品単位で簡単に分解できリサイクル性を向上させることができる電線の保護性に優れたワイヤーハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のワイヤーハーネスとして、表面に複数の芯線3を互いに略平行に配置してなるエラストマシート2を渦巻き状に巻き回して、その外周側に抑えテープ4を巻き付け、更に絶縁性の外被5で被覆してなるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、上記特許文献1の技術では、エラストマシート2に複数の芯線3が接合されているので、これらの部品2、3を簡単に分解できない。また、エラストマシート2の外周側に抑えテープ4が巻き付けられ、更に外被5で被覆されているため、これらの部品2、4、5を簡単に分解できない。そのため、粉砕分別として銅や銅合金などのメタル材料以外は埋め立て処分されていることが現状である。近年、部品単位で簡単に分解できリサイクル性を向上させたワイヤーハーネスの登場が望まれている。
【0004】
なお、従来のケーブル構造として、ケーブルの被覆2に導体1を挿脱可能とする溝3を形成してなり、被覆2に対する導体1の分別性を高めたものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、この技術では、平面シート状のケーブルを前提としており、導体1がケーブルの被覆2で被覆されているのみであるため、導体1の保護性が低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−97520号公報
【特許文献2】特開平6−162831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、部品単位で簡単に分解できリサイクル性を向上させることができる電線の保護性に優れたワイヤーハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ワイヤーハーネスであって、表面に複数の電線を互いに略平行に配置してなる電線シートと、該電線シートの該複数の電線が配置される表面と反対側の表面に剥離可能に積層される保護シートと、を備える複合シートを、前記複数の電線の配列方向に巻いて形成され、前記電線シートは、前記電線を被覆して保持し且つ切欠部が形成された被覆部を備えることを要旨とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1記載において、前記複合シートは、前記電線シート及び前記保護シートの間に介在され且つ両方の表面に接着層を有する接着シートを更に備えることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項2記載において、前記接着シートの一端側には、前記電線シートに対して延長された延長部が設けられ、該延長部の前記接着層は、前記複合シートの一端側と他端側とを接続するように前記保護シートの外表面に接着されていることを要旨とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1記載において、前記電線シート及び前記保護シートのうちの一方のシートに設けられた突部は、他方のシートに設けられた挿入孔に挿入されていることを要旨とする。
請求項5に記載の発明は、請求項4記載において、前記複合シートは、前記電線シート及び前記保護シートのそれぞれの一端側の間に介在される接着シートを更に備え、該接着シートの一端側には、前記電線シートに対して延長された延長部が設けられ、該延長部の表面に設けられた接着層は、前記複合シートの一端側と他端側とを接続するように前記保護シートの外表面に接着されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のワイヤーハーネスによると、電線シート及び保護シートを備える複合シートを電線の配列方向に巻いて形成され、電線シートは切欠部が形成された被覆部を備えるので、複合シートを巻き戻した状態で、電線シートと保護シートとを容易に剥離することができるとともに、切欠部を介して電線シートの被覆部から電線を容易に取り出すことができる。そのため、ワイヤーハーネスを部品単位で簡単に分解することが可能となり、リサイクル性を向上させることができる。また、複合シートを巻いた状態では、各電線は、被覆部に被覆保持されるとともに電線シート及び保護シートにより保護されるので、電線の保護性に優れる。
また、前記複合シートが接着シートを更に備える場合は、接着シートの接着により電線シートと保護シートとが剥離可能に積層される。そのため、電線シート及び保護シートに対する接着シートの接着を解除することにより、電線シート及び保護シートを容易に剥離することができる。
また、前記接着シートの一端側に延長部が設けられ、該延長部の前記接着層が前記保護シートの外表面に接着されている場合は、保護シートに対する接着シートの延長部の接着により、複合シートの一端側と他端側とが接続されて複合シートを巻いた状態に容易に固定することができる。また、保護シートに対する接着シートの延長部の接着を解除することにより、複合シートを容易に巻き戻すことができる。
また、前記電線シート及び前記保護シートのうちの一方のシートに設けられた突部が、他方のシートに設けられた挿入孔に挿入されている場合は、突部が挿入孔に挿入することにより、電線シートと保護シートとが剥離可能に積層される。そのため、挿入孔に対する突部の挿入を解除することにより、電線シートと保護シートとを容易に剥離することができる。
さらに、前記複合シートが接着シートを更に備え、該接着シートの一端側に延長部が設けられ、該延長部の表面に設けられた接着層が前記保護シートの外表面に接着されている場合は、保護シートに対する接着シートの延長部の接着により、複合シートの一端側と他端側とが接続されて複合シートを巻いた状態に容易に固定することができる。また、保護シートに対する接着シートの延長部の接着を解除することにより、複合シートを容易に巻き戻すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【図1】実施例1に係るワイヤーハーネスの縦断面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】上記ワイヤーハーネスを巻き戻して平面シート状にした状態を示す縦断面図である。
【図4】図3の要部拡大図である。
【図5】上記ワイヤーハーネスの分解方法を説明するための説明図である。
【図6】上記ワイヤーハーネスの分解方法を説明するための説明図である。
【図7】図6のVII−VII線断面図である。
【図8】上記ワイヤーハーネスの分解方法を説明するための説明図である。
【図9】図8のIX−IX線断面図である。
【図10】上記ワイヤーハーネスの分解方法を説明するための説明図である。
【図11】実施例2に係るワイヤーハーネスの縦断面図である。
【図12】図11のXII−XII線断面図である。
【図13】上記ワイヤーハーネスを巻き戻して平面シート状にした状態を示す縦断面図である。
【図14】図13の要部拡大図である。
【図15】上記ワイヤーハーネスの分解方法を説明するための説明図である。
【図16】上記ワイヤーハーネスの分解方法を説明するための説明図である。
【図17】図16のXVII−XVII線断面図である。
【図18】その他の形態のワイヤーハーネスを説明するための説明図である。
【図19】更にその他の形態のワイヤーハーネスを説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0011】
1.ワイヤーハーネス
本実施形態1.に係るワイヤーハーネスは、表面に複数の電線(6,26)を互いに略平行に配置してなる電線シート(2,22)と、電線シートの複数の電線が配置される表面と反対側の表面に剥離可能に積層される保護シート(3,23)と、を備える複合シート(5,25)を、複数の電線の配列方向(D)に巻いて形成され、電線シートは、電線を被覆して保持し且つ切欠部(7,27)が形成された被覆部(2a,22a)を備えることを特徴とする(例えば、図1及び図11等参照)。
【0012】
上記複合シートは、通常、電線シートを内側とし且つ保護シートを外側として巻かれている。また、上記複合シートは、例えば、巻かれて筒状に形成されていることができる。また、上記切欠部は、例えば、上記被覆部から電線を取り外すための部位であり、被覆部の長手方向に沿って設けられていることができる。なお、上記「電線の配列方向に巻いて形成され」とは、複合シートを電線の長手方向と略平行な軸心を中心に巻いて形成されている状態を意図する。なお、以下の説明においては上記「電線の配列方向」を巻き方向とも記載する。
【0013】
上記実施形態1.に係るワイヤーハーネスとしては、例えば、〔A〕複合シートは、電線シート及び保護シートの間に介在され且つ両方の表面に接着層を有する接着シート(4)を更に備える形態(例えば、図3等参照)、〔B〕電線シート及び保護シートのうちの一方のシートに設けられた突部(33)は、他方のシートに設けられた挿入孔(32)に挿入されている形態(例えば、図13等参照)等を挙げることができる。
【0014】
上記〔A〕形態では、例えば、接着シートの巻き方向(D)の一端側には、電線シートに対して延長された延長部(9)が設けられ、延長部の接着層は、複合シートの巻き方向(D)の一端側と他端側とを接続するように保護シートの外表面に接着されていることができる(例えば、図1等参照)。
【0015】
上記〔A〕形態では、例えば、電線シート及び保護シートの巻き方向(D)の一端側のそれぞれには、接着シートにより接着されない非接着部(10)が設けられていることができる(例えば、図4等参照)。これにより、電線シート及び保護シートの各非接着部を掴んで接着シートから引き剥がすことにより、電線シート及び保護シートを更に容易に剥離できる。
【0016】
上記〔A〕形態では、例えば、接着シートに対する電線シート及び保護シートのそれぞれの接着面側の表面には、剥離剤からなる剥離層(8)が設けられていることができる(例えば、図3等参照)。これにより、電線シート及び保護シートの剥離性を更に高めることができる。
【0017】
上記〔B〕形態では、例えば、複合シートは、電線シート及び保護シートのそれぞれの巻き方向(D)の一端側の間に介在される接着シート(24)を更に備え、接着シートの一端側には、電線シートに対して延長された延長部(29)が設けられ、延長部の表面に設けられた接着層は、複合シートの巻き方向(D)の一端側と他端側とを接続するように保護シートの外表面に接着されていることができる(例えば、図11等参照)。この場合、例えば、接着シートには、一方のシートに設けられた突部が挿入して係止していることができる。これにより、電線シート及び保護シートのそれぞれの一端側の間に接着シートを確実に挟持できる。
【0018】
2.ワイヤーハーネスの分解方法
本実施形態2.に係るワイヤーハーネスの分解方法は、上記実施形態1.に係るワイヤーハーネスの分解方法であって、複合シートを巻き戻した状態で、電線シートと保護シートとを剥離する工程と、電線シートの被覆部から複数の電線を取り外す工程と、を備えることを特徴とする。これにより、ワイヤーハーネスを部品単位で簡単に分解することが可能となり、リサイクル性を向上させることができる。また、複合シートを巻いた状態では、被覆部に被覆保持された電線は、電線シート及び保護シートにより保護されるので、電線の保護性に優れる。
【実施例】
【0019】
以下、図面を用いて実施例1及び2により本発明を具体的に説明する。
【0020】
<実施例1>
(1)ワイヤーハーネスの構成
本実施例に係るワイヤーハーネス1は、図1〜図3に示すように、樹脂製の電線シート2及び保護シート3を備える複合シート5を、電線シート2を内側とし且つ保護シート3を外側として複数の電線6の配列方向D(以下、「巻き方向D」とも記載する。)に巻いて円筒状に形成されている。この複合シート5は、接着シート4を更に備えている。
【0021】
上記電線シート2の表面には、電線6を被覆する長尺管状の複数(図中6つ)の被覆部2aが互いに略並行に設けられている。この被覆部2aには、被覆部2aの長手方向に沿ってスリット状の切欠部7が形成されている。この切欠部7を介して被覆部2aに被覆保持された電線6が容易に取り外される。よって、電線シート2の表面には複数(図中6つ)の電線6が互いに略平行に配置されることとなる。また、電線シート2の接着シート4に対する接着面側の表面には、剥離剤を塗布してなる剥離層8が形成されている。
【0022】
上記保護シート3は、接着シート4により、電線シート2の複数の電線6が配置される表面と反対側の表面に剥離可能に積層されている。この保護シート3の接着シート4に対する接着面側の表面には、剥離剤を塗布してなる剥離層8が形成されている。
【0023】
上記接着シート4は、図4に示すように、電線シート2及び保護シート3の間に介在され、その両方の表面に接着層4a,4bを有している。この接着シート4及び保護シート3の巻き方向Dの一端側には、図1及び図3に示すように、電線シート2に対して延長された延長部9が設けられている。そして、この延長部9の接着層4aは、複合シート5の巻き方向Dの一端側と他端側とを接続するように保護シート3の外表面に接着されている。
【0024】
ここで、図4に示すように、上記電線シート2及び保護シート3の巻き方向Dの一端側のそれぞれには、接着シート4により接着されない非接着部10が設けられている。これら非接着部10は、接着シート4の端部に対して延長されている。
【0025】
(2)ワイヤーハーネスの分解方法
次に、上記構成のワイヤーハーネス1の分解方法について説明する。先ず、図5に示すように、接着シート4の延長部9を含む複合シート5の一端側を掴んで保護シート3の外表面から巻き方向Dと反対方向に引き剥して、複合シート5を平面シート状に巻き戻す。次に、図6及び図7に示すように、電線シート2及び保護シート3の非接着部10を掴んで両シート2,3を接着シート4から引き剥がして、各シート2,3,4を剥離する。次いで、図8〜図10に示すように、各電線6の一端側に接続されたコネクタ11を掴んで、切欠部7を介して電線シート2の被覆部2aから各電線6を取り外す。その後、コネクタ11から各電線6を引き抜いてワイヤーハーネス1が分解されることとなる。なお、ワイヤーハーネス1の組付け方法は、上述の分解方法と逆の手順で行われる。
【0026】
(3)実施例に効果
以上より、本実施例のワイヤーハーネス1によると、電線シート2及び保護シート3を備える複合シート5を電線の配列方向Dに巻いて形成され、電線シート2は切欠部7が形成された被覆部2aを備えるので、複合シート5を巻き戻した状態で、電線シート2と保護シート3とを容易に剥離することができるとともに、切欠部7を介して電線シート2の被覆部2aから電線6を容易に取り出すことができる。そのため、ワイヤーハーネス1を部品単位で簡単に分解することが可能となり、リサイクル性を向上させることができる。また、複合シート5を巻いた状態では、各電線6は、被覆部2aに被覆保持されるとともに電線シート2及び保護シート3により保護されるので、電線6の保護性に優れる。
【0027】
また、本実施例では、複合シート5を、接着シート4を更に備えて構成したので、接着シート4の接着により電線シート2と保護シート3とが剥離可能に積層される。そのため、電線シート2及び保護シート3に対する接着シート4の接着を解除することにより、電線シート2及び保護シート3を容易に剥離することができる。
【0028】
また、本実施例では、接着シート4の巻き方向Dの一端側に延長部9を設け、この延長部9の接着層4aを保護シート3の外表面に接着させるようにしたので、保護シート3に対する接着シート4の延長部9の接着により、複合シート5の巻き方向Dの一端側と他端側とが接続されて複合シート5を巻いた状態に容易に固定することができる。また、保護シート3に対する接着シート4の延長部9の接着を解除することにより、複合シート5を容易に巻き戻すことができる。
【0029】
また、本実施例では、電線シート2及び保護シート3の巻き方向Dの一端側のそれぞれに、接着シート4により接着されない非接着部10を設けたので、電線シート2及び保護シート3の各非接着部10を掴んで接着シート4から引き剥がすことにより、電線シート2及び保護シート3を更に容易に剥離することができる。
【0030】
また、本実施例では、接着シート4に対する電線シート2及び保護シート3のそれぞれの接着面側の表面に、剥離剤からなる剥離層8を設けたので、電線シート2及び保護シート3の剥離性を更に高めることができる。
【0031】
さらに、本実施例では、コネクタ11を掴んで複数の電線6を電線シート2の被覆部2aからまとめて取り外すようにしたので、ワイヤーハーネス1の分解作業性を高めることができる。
【0032】
<実施例2>
次に、本実施例2に係るワイヤーハーネスの構成について説明する。
【0033】
(1)ワイヤーハーネスの構成
本実施例に係るワイヤーハーネス21は、図11〜図13に示すように、樹脂製の電線シート22及び保護シート23を備える複合シート25を、電線シート22を内側とし且つ保護シート23を外側として複数の電線26の配列方向D(以下、「巻き方向D」とも記載する。)に巻いて円筒状に形成されている。この複合シート25は、接着シート24を更に備えている。
【0034】
上記電線シート22の表面には、電線26を被覆する長尺管状の複数(図中6つ)の被覆部22aが互いに略並行に設けられている。この被覆部22aには、被覆部22aの長手方向に沿ってスリット状の切欠部27が形成されている。この切欠部27を介して被覆部22aに被覆保持された電線26が容易に取り外される。よって、電線シート22の表面には複数(図中6つ)の電線26が互いに略平行に配置されることとなる。また、電線シート22には、後述する突部が挿入する複数の挿入孔32が設けられている。これら各挿入孔32は、隣接する被覆部22aの間に配置されている。
【0035】
上記保護シート23の表面には複数の突部33が設けられている。これら各突部33は、軸部33aと軸部33aの先端側に設けられたフック部33bとを有している(図14参照)。そして、各突部33が各挿入孔32に挿入することにより、保護シート23は、電線シート22の複数の電線26が配置される表面と反対側の表面に剥離可能(係脱可能)に積層されている。
【0036】
上記接着シート24は、図14に示すように、電線シート22及び保護シート23のそれぞれの一端側の間に介在され、その両方の表面に接着層24a,24bを有している。この接着シート24及び保護シート23の巻き方向Dの一端側には、図11及び図13に示すように、電線シート22に対して延長された延長部29が設けられている。そして、この延長部29の接着層24aは、複合シート25の巻き方向Dの一端側と他端側とを接続するように保護シート25の外表面に接着されている。また、接着シート24には、突部33が挿入して係止している(図11参照)。
【0037】
(2)ワイヤーハーネスの分解方法
次に、上記構成のワイヤーハーネス21の分解方法について説明する。先ず、図15に示すように、接着シート24の延長部29を含む複合シート25の一端側を掴んで保護シート23の外表面から巻き方向Dと反対方向に引き剥して、複合シート25を平面シート状に巻き戻す。次に、図16及び図17に示すように、電線シート22及び保護シート23の一端側を掴んで両シート22,23を接着シート24から引き剥がして、各シート22,23,24を剥離する。次いで、各電線26の一端側に接続されたコネクタ31を掴んで、切欠部27を介して電線シート22の被覆部22aから各電線26を取り外す(図8〜図10参照)。その後、コネクタ31から各電線26を引き抜いて、ワイヤーハーネス21が分解される。なお、ワイヤーハーネス21の組付け方法は、上述の分解方法と逆の手順で行われる。
【0038】
(3)実施例に効果
以上より、本実施例のワイヤーハーネス21によると、電線シート22及び保護シート23を備える複合シート25を電線の配列方向Dに巻いて形成され、電線シート22は切欠部27が形成された被覆部22aを備えるので、複合シート25を巻き戻した状態で、電線シート22と保護シート23とを容易に剥離することができるとともに、切欠部27を介して電線シート22の被覆部22aから電線26を容易に取り出すことができる。そのため、ワイヤーハーネス21を部品単位で簡単に分解することが可能となり、リサイクル性を向上させることができる。また、複合シート25を巻いた状態では、各電線26は、被覆部22aに被覆保持されるとともに電線シート22及び保護シート23により保護されるので、電線26の保護性に優れる。
【0039】
また、本実施例では、保護シート25に設けられた突部33を電線シート22に設けられた挿入孔32に挿入するようにしたので、挿入孔32に対する突部33の挿入により、電線シート22と保護シート23とが剥離可能に積層される。そのため、挿入孔32に対する突部33の挿入を解除することにより、電線シート22と保護シート23とを容易に剥離することができる。
【0040】
また、本実施例では、複合シート25を接着シート24を更に備えて構成し、接着シート24の巻き方向Dの一端側に延長部29を設け、延長部29の表面に設けられた接着層24aを保護シート23の外表面に接着させるようにしたので、保護シート23に対する接着シート24の延長部29の接着により、複合シート25の巻き方向Dの一端側と他端側とが接続されて複合シート25を巻いた状態に容易に固定することができる。また、保護シート23に対する接着シート24の延長部29の接着を解除することにより、複合シート25を容易に巻き戻すことができる。
【0041】
また、本実施例では、接着シート24に、保護シート23に設けられた突部33が挿入して係止するようにしたので、電線シート22及び保護シート23のそれぞれの一端側の間に接着シート24を確実に挟持できる。
【0042】
さらに、本実施例では、コネクタ31を掴んで複数の電線26を電線シート22の被覆部22aからまとめて取り外すようにしたので、ワイヤーハーネス21の分解作業性を高めることができる。
【0043】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。すなわち、上記実施例1及び2では、平面シート状の保護シート3,23を例示したが、これに限定されず、例えば、図8に示すように、コルゲート状(例えば、波状、蛇腹状等)の保護シート35を採用してもよい。
【0044】
また、上記実施例1及び2では、複合シート5,25を筒状に巻き回してなるワイヤーハーネス1,21を例示したが、これに限定されず、例えば、複合シート5,25を渦巻き状に巻き回してなるワイヤーハーネスとしてもよい。
【0045】
また、上記実施例1及び2では、複合シート5,25を円筒状に巻き回してなるワイヤーハーネス1,21を例示したが、これに限定されず、例えば、複合シート5,25を角筒状に巻き回してなるワイヤーハーネスとしてもよい。
【0046】
また、上記実施例1及び2では、接着シート4,24を利用して複合シート5,25の巻き方向Dの一端側と他端側とを接続するようにしたが、これに限定されず、例えば、接着シート4,24の替わりに又加えて、複合シート5,25に対して着脱可能な綴じ具やクリップ等の固定手段を利用して複合シート5,25の巻き方向Dの一端側と他端側とを接続するようにしてもよい。
【0047】
また、上記実施例1及び2では、接着シート4,24の表面の略全域に接着層4a,4b、24a,24bを設けるようにしたが、これに限定されず、例えば、接着シート4,24の表面に部分的に接着層4a,4b、24a,24bを設けるようにしてもよい。
【0048】
また、上記実施例1及び2において、被覆部2a、22aの長手方向に沿って1つの連続する切欠部7、27を設けてもよいし、被覆部2a、22aの長手方向に沿って複数の切欠部7、27をミシン目状に設けてもよい。
【0049】
また、上記実施例1では、複合シート5の巻き方向Dの一端側において、接着シート4に対して電線シート2及び保護シート3を延長して非接着部10を形成するようにしたが、これに限定されず、例えば、複合シート5の巻き方向Dの一端側において、各シート2,3,4の端部を揃えるとともに接着シート4の端部に接着層を設けずに、電線シート2及び保護シート3の一端側に非接着部10を形成するようにしてもよい。
【0050】
また、上記実施例2では、複合シート25の巻き方向Dの一端側において、接着シート24と保護シート23の端部を揃えるようにしたが、これに限定されず、例えば、図19に示すように、電線シート22及び保護シート23の端部に対して接着シート24の端部を延長させるようにしてもよい。
【0051】
また、上記実施例2では、接着シート24の両方の表面に接着層24a,24bを設けるようにしたが、これに限定されず、例えば、接着シート24の一方の表面のみに接着層を設けるようにしてもよい。
【0052】
さらに、上記実施例2において、例えば、図19に示すように、電線シート22及び保護シート23における接着シート24の接着層24a,24bが接着する表面に剥離剤からなる剥離層28を設けるようにしてもよい。
【0053】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0054】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
車両部品や電化製品等で使用されるワイヤーハーネスに関する技術として広く利用される。特に、乗用車、バス、トラック等の他、列車、汽車等の鉄道車両、建設車両、農業車両、産業車両などの車両部品で使用されるワイヤーハーネスとして好適に利用される。
【符号の説明】
【0056】
1,21;ワイヤーハーネス、2,22;電線シート、2a,22a;被覆部、3,23;保護シート、4,24;接着シート、4a,4b;接着層、5,25;複合シート、6,26;電線、7,27;切欠部、9,29;延長部、32;挿入孔、33;突部、D;電線の配列方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に複数の電線を互いに略平行に配置してなる電線シートと、該電線シートの該複数の電線が配置される表面と反対側の表面に剥離可能に積層される保護シートと、を備える複合シートを、前記複数の電線の配列方向に巻いて形成され、
前記電線シートは、前記電線を被覆して保持し且つ切欠部が形成された被覆部を備えることを特徴とするワイヤーハーネス。
【請求項2】
前記複合シートは、前記電線シート及び前記保護シートの間に介在され且つ両方の表面に接着層を有する接着シートを更に備える請求項1記載のワイヤーハーネス。
【請求項3】
前記接着シートの一端側には、前記電線シートに対して延長された延長部が設けられ、該延長部の前記接着層は、前記複合シートの一端側と他端側とを接続するように前記保護シートの外表面に接着されている請求項2記載のワイヤーハーネス。
【請求項4】
前記電線シート及び前記保護シートのうちの一方のシートに設けられた突部は、他方のシートに設けられた挿入孔に挿入されている請求項1記載のワイヤーハーネス。
【請求項5】
前記複合シートは、前記電線シート及び前記保護シートのそれぞれの一端側の間に介在される接着シートを更に備え、該接着シートの一端側には、前記電線シートに対して延長された延長部が設けられ、該延長部の表面に設けられた接着層は、前記複合シートの一端側と他端側とを接続するように前記保護シートの外表面に接着されている請求項4記載のワイヤーハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−99367(P2012−99367A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246767(P2010−246767)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】