説明

ワイヤーハーネス

【課題】ワイヤーハーネスの放熱性の低下の防止と配索性の向上とを両立させる。
【解決手段】三本のパワーケーブル30a,30b,30cを扁平な面に沿って並べ(図(a))、その状態で外周を編組線32で覆ってから(図(b))、編組線32を折り曲げて三本のパワーケーブル30a,30b,30cがハーネス断面で三角形の各辺に相当する位置に並ぶ三角形状に配置された構造とするから(図(c))、編組線32の熱伝導により三角形状の内部の熱を外部に放出して放熱性が低下するのを防止すると共にコンパクトな構造として配索を容易にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三相モータの各相に接続され断面が扁平な三本の電力ケーブルをまとめたワイヤーハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種のワイヤーハーネスとしては、エンジンルーム内に駆動源の三相モータを搭載する車両に用いられ、三相モータに電力を供給するための三本のフラット型のパワーケーブルを束ねたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このワイヤーハーネスでは、三本のパワーケーブルを互いに重ならないように扁平な面に沿って並べることにより、表面積を大きくして放熱性を高めることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−287537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなワイヤーハーネスが用いられる車両などにおいては、モータ以外に複数の機器などが搭載されることにより、ワイヤーハーネスの配索スペースが限られたものとなることがある。ここで、上述したような並びで三本のパワーケーブルを配置した構造とすると、ワイヤーハーネスの高さを抑えることができるものの幅が広いものとなるため、配索箇所によっては配索が困難となるなど配索性が低下する場合がある。一方で、幅を抑えるために、三本のパワーケーブルを扁平な面が向き合うよう重ねて配置することも考えられるが、表面積が小さくなるため、放熱性が低下してしまう。
【0005】
本発明のワイヤーハーネスは、放熱性の低下の防止と配索性の向上とを両立させることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のワイヤーハーネスは、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明のワイヤーハーネスは、
三相モータの各相に接続され断面が扁平な三本の電力ケーブルをまとめたワイヤーハーネスであって、
前記三本の電力ケーブルを扁平な面に沿って並べ、その外周を熱伝導性を有する素材で形成された編組線で覆ってから、該編組線を折り曲げて前記三本の電力ケーブルがハーネス断面において三角形の各辺に相当する位置に並ぶ三角形状に配置された構造とする
ことを要旨とする。
【0008】
この本発明のワイヤーハーネスでは、三本の電力ケーブルを扁平な面に沿って並べ、その外周を熱伝導性を有する素材で形成された編組線で覆ってから、編組線を折り曲げて三本の電力ケーブルがハーネス断面において三角形の各辺に相当する位置に並ぶ三角形状に配置された構造とする。これにより、編組線の熱伝導により三角形の内部の熱を外部に放出することができるから、放熱性が低下するのを防止することができる。また、ワイヤーハーネスをコンパクトな構造として、配索を容易にすることができる。この結果、放熱性の低下の防止と配索性の向上とを両立させることができる。
【0009】
こうした本発明のワイヤーハーネスにおいて、前記三本の電力ケーブルがハーネス断面において三角形の各辺に相当する位置に並ぶ三角形状に配置した後に、保護部材で覆う構造とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施例としてのワイヤーハーネス26が用いられるハイブリッド自動車20の外観を示す説明図である。
【図2】ワイヤーハーネス26の構造の概略を示す説明図である。
【図3】ワイヤーハーネス26を成形する際の様子を示す説明図である。
【図4】実施例のワイヤーハーネス26の断面を示す説明図である。
【図5】比較例のワイヤーハーネス26Bの断面を示す説明図である。
【図6】比較例のワイヤーハーネス26Cの断面を示す説明図である。
【図7】比較例のワイヤーハーネス26Dの断面を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0012】
図1は、本発明の一実施例としてのワイヤーハーネス26が用いられるハイブリッド自動車20の外観を示す説明図である。図示するように、ハイブリッド自動車20の車両前部のエンジンルーム21内には、走行用の動力を出力可能なエンジン22と、三相の交流電動機として構成され発電機や電動機として駆動する図示しないジェネレータと三相の交流電動機として構成され走行用の動力を出力する図示しないモータとを有するモータユニット24と、モータユニット24内のモータやジェネレータを駆動する図示しない2つのインバータを有するインバータユニット28などが搭載されており、モータユニット24とインバータユニット28とは、エンジンルーム21内を配索される二本のワイヤーハーネス26により電気的に接続されている。また、車両後部の図示しないリヤシートの後方や下方などには、インバータユニット28を介してモータユニット24と電力をやり取りするバッテリ40が搭載されており、インバータユニット28とバッテリ40とは、車体下部に配策されるワイヤーハーネス42により電気的に接続されている。
【0013】
ここで、ワイヤーハーネス26の構造の概略を図2に示す。図示するように、ワイヤーハーネス26は、図示しない導線の周囲を絶縁体で被覆した断面が扁平なフラット型のパワーケーブル30(三本のパワーケーブル30a,30b,30c)と、熱伝導性を有する銅線などの金属線によりパワーケーブル30を覆って電磁的にシールドする編組線32と、この編組線32をパワーケーブル30の略全長に亘って被覆して損傷や摩耗を防止する保護部材34(例えばコルゲートチューブや網目状のシート材など)とにより構成されている。このワイヤーハーネス26は、その断面であるハーネス断面で、三本のパワーケーブル30a,30b,30cが三角形の各辺に相当する位置に並ぶ三角形状に配置した構造となっている。なお、実施例では、三本のパワーケーブル30a,30b,30cは同じサイズであり、このため、ハーネス断面は正三角形状となる。また、図2ではワイヤーハーネス26の構造を示すために編組線32や保護部材34の一部の図示を省略した。
【0014】
このワイヤーハーネス26を成形する際の様子を図3に示す。図示するように、ワイヤーハーネス26の成形は、まず、パワーケーブル30が互いに重ならないよう扁平な面に沿って並べ(図3(a)参照)、並べた状態の外周を編組線32で覆ってから(図3(b)参照)、編組線32を折り曲げながら三本のパワーケーブル30a,30b,30cが三角形の各辺に相当する位置に並ぶ三角形状の配置となるようパワーケーブル30a,30cを起こすことにより行なわれる(図3(c)参照)。このように成形することで、編組線32が三角形状の内側と外側とを覆うものとなる。なお、図3(c)の状態で、保護部材34で覆うことにより、図2に示すワイヤーハーネス26となる。
【0015】
このような構造とした実施例のワイヤーハーネス26の断面を図4に示し、比較例のワイヤーハーネス26B,26C,26Dの断面を図5〜図7に示す。なお、図5の比較例にはパワーケーブル30を三角形状の配置とした後に編組線32(保護部材34)で覆うものを示し、図6の比較例にはパワーケーブル30が互いに重ならないよう扁平な面に沿って並べて配置したもの(図3(a)(b)と同じ配置)を示し、図7の比較例にはパワーケーブル30を扁平な面が向き合うよう重ねて配置したものを示す。図5の比較例では、編組線32は三角形状に配置されたパワーケーブル30の外側だけを覆うものとなるため、三角形状の内部の熱を効率よく外部に伝えることができず、内部に熱がこもるおそれがある。一方、図4の実施例では、上述したように、編組線32は三角形状の内側と外側とを覆うものとなる。この内側の編組線32と外側の編組線32とは繋がっているから、編組線32の熱伝導によって三角形状の内部の熱を外部に放出することができる。このため、実施例では、図5の比較例に比して三角形状の内部に熱がこもるのを防止することができる。また、このように三角形状の内部に熱がこもるのを防止することができるから、図6の比較例に比して、放熱性が大きく低下するのを抑制しつつ幅を抑えたコンパクトな構造として配索性を向上させることができる。さらに、図7の比較例に比して、表面積を大きく確保して放熱性を向上させつつ幅や高さが一回り大きくなる程度に抑えることができる。即ち比較的コンパクトな構成として配索性が低下するのを抑制することができる。これらのことから、ワイヤーハーネス26の放熱性の低下の防止と配索性の向上とを両立させることができる。
【0016】
以上説明した実施例のワイヤーハーネス26によれば、三本のパワーケーブル30a,30b,30cを扁平な面に沿って並べ、その状態で外周を編組線32で覆ってから、編組線32を折り曲げて三本のパワーケーブル30a,30b,30cがハーネス断面で三角形の各辺に相当する位置に並ぶ三角形状に配置された構造とするから、編組線32の熱伝導により三角形状の内部の熱を外部に放出して放熱性が低下するのを防止すると共にコンパクトな構造として配索を容易にすることができる。この結果、ワイヤーハーネス26の放熱性の低下の防止と配索性の向上とを両立させることができる。
【0017】
実施例のワイヤーハーネス26では、保護部材34をパワーケーブル30の略全長に亘って被覆するものとしたが、これに限られず、損傷や摩耗が特に問題となる箇所だけを部分的に被覆するものなどとしてもよい。
【0018】
実施例のワイヤーハーネス26は、2つのモータ(モータとジェネレータ)とエンジンとを備えるハイブリッド自動車20に用いられるものとしたが、これに限られず、1つのモータを備えるハイブリッド自動車に用いられるものとしてもよいし、エンジンを備えない電気自動車に用いられるものなどとしてもよい。また、こうしたハイブリッド自動車や電気自動車に用いられるものに限られず、自動車以外の列車などの車両に用いられるものとしてもよいし、車両以外の移動体や移動しない設備などに組み込まれた駆動装置に用いられるものとしてもよい。
【0019】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、モータユニット24が「三相モータ」に相当し、インバータユニット28が「インバータ」に相当し、パワーケーブル30(30a,30b,30c)が「電力ケーブル」に相当し、ワイヤーハーネス26が「ワイヤーハーネス」に相当する。
【0020】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0021】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、自動車の製造産業に利用可能である。
【符号の説明】
【0023】
20 ハイブリッド自動車、21 エンジンルーム、22 エンジン、24 モータユニット、26,26B,26C,26D ワイヤーハーネス、28 インバータユニット、30,30a,30b,30c パワーケーブル、32 編組線、34 保護部材、40 バッテリ、42 ワイヤーハーネス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相モータの各相に接続され断面が扁平な三本の電力ケーブルをまとめたワイヤーハーネスであって、
前記三本の電力ケーブルを扁平な面に沿って並べ、その外周を熱伝導性を有する素材で形成された編組線で覆ってから、該編組線を折り曲げて前記三本の電力ケーブルがハーネス断面において三角形の各辺に相当する位置に並ぶ三角形状に配置された構造とする
ことを特徴とするワイヤーハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−93144(P2013−93144A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233408(P2011−233408)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】