説明

ワイヤーライン・コアバーレルのスリーブの抜け止め装置

【課題】ワイヤーライン・コアバーレルのスリーブの抜け止め装置に関し、インナーチューブ組立体を地上より落とし込んで、外管部内に設置する際に、孔内の掘削流体に対する衝撃抵抗を受ける場合に、スリーブが不用意に抜け出すのを多重に防止できるようにする。
【解決手段】ビット2を有する外管部Tと、外管部内に挿脱可能に挿入されるインナーチューブ3と、外管部の内周面との間にスリーブケース4を介してインナーチューブに対して着脱可能に設けられた筒状のインナーエクステンション5と、インナーエクステンションの外周に引出可能に装着されたスリーブ6と、スリーブの上端が止着され、インナーチューブ内を上動可能なガイドプラグ7と、を設けたワイヤーライン・コアバーレルであり、ガイドプラグの外周の軸方向Iにスリーブケースの内周に突設した係止突起4aに係止可能なOリング8A,8B・・・を間隔Pをあけて設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワイヤーライン・コアバーレルのスリーブの抜け止め装置に関し、地上からインナーチューブ組立体を孔内にあるコアバーレルの外管部に落とし込んで孔内に溜まっている掘削流体に対する衝撃抵抗を受ける場合に、ガイドプラグの外周にOリングを装備して上端が取付けられて折畳まれているスリーブが不用意に抜け出すのを多重に防止し、掘削時においてスリーブが所定の位置からコアを包み込むことができるようにするものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般地質調査用のコアバーレルには、掘削して採取されるコアがコアバーレルのインナーチューブと直接接触する際の摩擦抵抗を軽減してコア詰まりを抑制するのと、地上にてコアを乱さないように、掘削された状態のまま取り出し保管するために、極薄の合成樹脂ビニールにより袋状に形成されたスリーブによりコアを包み込むようにしたスリーブ装着タイプのコアバーレルがあった。このコアバーレルの一例として、例えばビットが下端に設けられたアウターチューブ、リーマ、およびアウターチューブサブを備えた外管部と、前記外管部内に挿脱可能に挿入されるインナーチューブと、前記インナーチューブと前記ビットとの間であって前記外管部の内周面との間にスリーブケースを介して前記インナーチューブに対して着脱可能に設けられた筒状のインナーエクステンションと、前記インナーエクステンションの外周に上方に向かって引出可能に装着された極薄の合成樹脂ビニールにより袋状に形成されたスリーブと、前記スリーブの上端が止着され、前記インナーチューブ内を上動可能に設けられた略筒状のガイドプラグと、を設けた構成の、通常浅尺(目安200mの深さまで)の普通工法用コアバーレルを使用するものがあった。そして、このスリーブ装着タイプのコアバーレルでは、その外管部の下端に設けられたビットにより掘削されるコアは、ガイドプラグに上端部が止着されてインナーエクステンションの外周に引出可能に折畳まれて収納されているスリーブ内に収容されながら、スリーブ毎前記インナーチューブ内に収納されて行く。そして、コア採取後は、ボーリング・ロッドと共にコアバーレル毎地上へ引上げられる。それから、引上げられたコアバーレルを分解してスリーブ内に収容されているコアを取出し、コアの採取を行うものがあった(例えば特許文献1参照。)。
【0003】
ところで、例えば特許文献1に記載された普通工法用コアバーレルでは、コアバーレルの長さによって1回の掘進長さが決まり、コア回収の度にボーリング・ロッドを引き上げる必要があるため、掘削深度が深くなるのに従い、作業効率が著しく低下する点に鑑み、これを改善する方策として、ワイヤーライン工法と呼ばれるものがあった。
【0004】
このワイヤーライン工法は、コアを取り込むインナーチューブ組立体のみをワイヤーで地上へと回収し、採取されたコアを取り出す。そして、コアを取り出したインナーチューブ組立体を地上よりボーリング・ロッドを通じて落とし込んで孔内の外管部内に再設置して掘削するものであり、ボーリング・ロッドの揚管および降管作業の必要がなく、掘削におけるコアリング作業を効率化するものであるが、このインナーチューブ組立体を地上より落とし込む際に想定される衝撃力に対してスリーブの抜けを防止するための工夫が施されたものはなかった。そして、このワイヤーライン工法を適用して採取されたコアの収納取出し具として、ワイヤーライン工法にて採取されたコアを収納してなるコア収納用内管内のコアを収納するための筒体よりなるコア収納チューブと、該コア収納チューブの一方向より、挿脱自在の筒状体誘導部を利用して前記コア収納チューブの外周に装着され、前記コア収納用チューブ内のコアが押し出された時には自動的にコア収納体となる合成樹脂製薄膜からなる筒状体と、前記筒状体を外周に装着してなるコア収納チューブとからなるものがあった(例えば特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−74489号公報
【特許文献2】実開昭62−176738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載された普通工法用コアバーレルでは、コア採取を行うためには、コア回収の度にボーリング・ロッドを地上に引き上げる必要があり、作業効率が著しく低いものであった。
【0007】
また、上記特許文献2に記載されたワイヤーライン工法を適用した採取されたコアの収納取出し具の発明は、採取されたコアを地上で取り出す際の収納取出し具自体の発明であり、コア採取後のインナーチューブ組立体のみをワイヤーで地上へと回収後に、再びインナーチューブ組立体を地上より外管部内に設置する場合には、ボーリング・ロッドを通じて外管部内に落とし込むと、孔内に溜まっている掘削流体により衝撃抵抗を受けて、スリーブケース内に折り畳まれている合成樹脂薄膜よりなるスリーブが不用意に抜け出してしまい、掘削開始前にスリーブが所定の位置にないため、コアがスリーブ内へ適正に収納されずスリーブ効果が正しく機能しないため、コアの摩擦抵抗を軽減してコア詰まりの抑制をしたり、地上でそのままコアを乱さず採取された状態のまま取り出す事が出来ずにいた。
【0008】
本発明は上記従来の欠点を解決し、インナーチューブ組立体を地上より落とし込んで、ボーリング・ロッドを通じて外管部内に設置する際に、孔内に溜まっている掘削流体に対する衝撃抵抗を受ける場合に、ガイドプラグの外周にOリングを介して上端が取付けられて折畳まれているスリーブが不用意に抜け出すのを多重に防止し、掘削時においてスリーブが所定の位置からコアを包み込むことができるようにするためのワイヤーライン・コアバーレルのスリーブの抜け止め装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に記載の発明は、ビットが下端に設けられた外管部と、前記外管部内に挿脱可能に挿入されるインナーチューブと、前記インナーチューブと前記ビットとの間であって前記外管部の内周面との間にスリーブケースを介して前記インナーチューブに対して着脱可能に設けられた筒状のインナーエクステンションと、前記インナーエクステンションの外周に上方に向かって引出可能に装着された可撓性シートからなるスリーブと、前記スリーブの上端が止着され、前記インナーチューブ内を上動可能に設けられた略筒状のガイドプラグと、を設けたスリーブ装着タイプのコアバーレルのスリーブ抜け止め装置において、前記ガイドプラグの外周の軸方向に前記スリーブケースの内周に突設した係止突起に係止可能な複数個のOリングを間隔をあけて設けたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記ガイドプラグの外周には、前記インナーチューブの内径よりも小径の外周をなすリング係止鍔部を複数個突設し、前記Oリングが前記リング係止鍔部に係止可能に設けられるとともに、前記Oリングの前記リング係止鍔部の係止位置の後方部の外周には前記Oリングが落ち込み可能な退避溝が設けられていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1または2において、前記Oリング、および前記リング係止鍔部、前記退避溝が前記ガイドプラグの外周に少なくとも2個設けられ、インナーチューブ組立体を地上から孔内の外管部内に落とし込んで溜まっている掘削流体に対する衝撃抵抗を受ける時に、この衝撃抵抗により第1のOリングが抜け出ても第2のOリングが前記係止突起、および前記リング係止鍔部に係止可能に設けられることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項4に記載の発明は、請求項1−3の何れかにおいて、前記Oリング、および前記リング係止鍔部、前記退避溝が前記ガイドプラグの外周に少なくとも2個設けられ、前記ガイドプラグが上方へ移動することにより、第1のOリング、および第2のOリングが、順次前記係止突起から脱係された時に、第1の前記Oリング、第2の前記Oリングが、順次前記退避溝内に落ち込むように設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に記載の発明によれば、ビットが下端に設けられた外管部と、前記外管部内に挿脱可能に挿入されるインナーチューブと、前記インナーチューブと前記ビットとの間であって前記外管部の内周面との間にスリーブケースを介して前記インナーチューブに対して着脱可能に設けられた筒状のインナーエクステンションと、前記インナーエクステンションの外周に上方に向かって引出可能に装着された可撓性シートからなるスリーブと、前記スリーブの上端が止着され、前記インナーチューブ内を上動可能に設けられた略筒状のガイドプラグと、を設けたスリーブ装着タイプのコアバーレルのスリーブ抜け止め装置において、前記ガイドプラグの外周の軸方向に前記スリーブケースの内周に突設した係止突起に係止可能な複数個のOリングを間隔をあけて設けたので、掘削が進行しコアがガイドプラグを押し上げる状況では、1つのOリングが脱係するまでの保持力をコアの侵入に対する障害にならない程度まで弱めることができる。そして、設置された複数個のOリングを順次脱係させるために、係止効果が分散される。一方、地上にてコア回収後、新たにスリーブをインナーチューブ組立体内に組み付けて、地上から孔内の外管部内に落とし込んで溜まっている掘削流体に対する衝撃抵抗を受ける場合には、ガイドプラグの外周の軸方向に間隔をあけて設けた複数個のOリングは、掘削流体から衝撃を受けて先行するOリングがスリーブケースの内周に突設した係止突起から係止が解かれて抜け出ても、後行するOリングが係止突起に係止され、不用意な抜け出しが確実に防止される。
【0014】
このため、インナーエクステンションの外周に上方に向かって引出可能に装着された可撓性シートからなるスリーブは、地上から孔内の外管部内に落とし込んで溜まっている掘削流体に対する衝撃抵抗を受ける場合においても、不用意に抜け出ることがなく、所定の位置に折り畳まれて収納された状態のままインナーチューブ組立体を設置できるので、例えば特許文献2に記載された従来のワイヤーライン工法とは異なり、普通工法のスリーブ装着タイプのコアバーレルと同じように、コアの採取時にコアがスリーブ内に順次収納されていくために、スリーブが正しく機能し、掘削中においてはコアの摩擦抵抗を軽減することでコア詰まりを抑制し、地上でそのままコアを乱さず採取された状態のまま取り出すことができるので、採取されたコアの収納取り出具を使用する必要がない。
【0015】
また、本発明の請求項2に記載の発明によれば、請求項1において、前記ガイドプラグの外周には、前記インナーチューブの内径よりも小径の外周をなすリング係止鍔部を複数個突設し、前記Oリングが前記リング係止鍔部に係止可能に設けられるとともに、前記Oリングの前記リング係止鍔部の係止位置の後方部の外周には前記Oリングが落ち込み可能な退避溝が設けられているので、可撓性シートからなるスリーブ内にコアを収容してガイドプラグが上動する時には、装備されている複数個のOリングは全てOリング係止位置の後方部にそれぞれ設けられている退避溝内に落ち込み、インナーチューブの内面との接触はしないため、摩擦抵抗とはならない。インナーチューブ組立体を地上より落とし込んで、ボーリング・ロッドを通じて外管部内に設置する際に、孔内に溜まっている掘削流体に対する衝撃抵抗を受ける場合には、ガイドプラグの外周の軸方向に間隔をあけて設けた複数個のOリングは、掘削流体から衝撃を受けて先行するOリングがスリーブケースの内周に突設した係止突起から係止が解かれて抜け出ても、後行するOリングが前記係止突起に係止され、不用意な抜け出しが確実に防止される。
【0016】
このため、インナーエクステンションの外周に上方に向かって引出可能に装着された可撓性シートからなるスリーブは、不用意に抜け出すことがなく、所定の位置に折畳まれて収納され、適正なコアの採取に備えた姿勢を保持しているので、例えば特許文献2に記載された従来のワイヤーライン工法とは異なり、コアの採取時にコアがスリーブ内に順次収納されて行くために、スリーブが正しく機能し、掘削中においてもコアの摩擦抵抗を軽減することでコア詰まりを抑制し、地上でそのままコアを乱すことなく、採取された状態のまま取り出すことができるので、採取されたコアの収納取り出し具を使用する必要が無い。
【0017】
また、本発明の請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2において、前記Oリング、および前記リング係止鍔部、前記退避溝が前記ガイドプラグに少なくとも2個設けられ、インナーチューブ組立体を地上から孔内の外管部内に落とし込んで溜まっている掘削流体に対する衝撃抵抗を受ける時に、この衝撃抵抗により第1のOリングが抜け出ても第2のOリングが前記係止突起、および前記リング係止鍔部に係止可能に設けられるので、インナーチューブ組立体を地上より落とし込んで、ボーリング・ロッドを通じて外管部内に設置する際に、孔内に溜まっている掘削流体に対する衝撃抵抗を受ける場合に、ガイドプラグの外周の軸方向に間隔をあけて設けた第1、および第2の2個のOリングは、掘削流体から衝撃を受けてガイドプラグがインナーチューブ内を僅かに上動して先行する第1のOリングがスリーブケースの内周に突設した係止突起から係止が解かれて抜け出ても、このOリングは、第1のリング係止鍔部の係止位置の後方部の外周に設けられた第1の退避溝内に落ち込み、それ以上の後退は阻止され、後行する第2のOリングが係止突起に係止され、不用意な抜け出しが確実に防止される。
【0018】
このため、インナーエクステンションの外周に上方に向かって引出可能に装着された可撓性シートからなるスリーブは、不用意に抜け出すことがなく、所定の位置に折畳まれて収納され、適正なコアの採取に備えた姿勢を保持しているので、例えば特許文献2に記載された従来のワイヤーライン工法とは異なり、スリーブが正しく機能し、掘削中においてもコアの摩擦抵抗を軽減することでコア詰まりを抑制し、地上でそのままコアを乱さず採取された状態のまま取り出すことができるので、採取されたコアの収納取り出し具を使用する必要が無い。
【0019】
また、本発明の請求項4に記載の発明によれば、請求項1−3の何れかにおいて、前記Oリング、および前記リング係止鍔部、前記退避溝が前記ガイドプラグの外周に少なくとも2個設けられ、前記ガイドプラグが上方へ移動することにより、第1のOリング、および第2のOリングが、順次前記係止突起から脱係された時に、第1の前記Oリング、第2の前記Oリングが、順次前記退避溝内に落ち込むように設けられているので、可撓性シートからなるスリーブ内にコアを収容してガイドプラグを上動し、ガイドプラグの外周の軸方向に間隔をあけて設けた第1、および第2の2個のOリングは、先行する第1のOリングがスリーブケースの内周に突設した係止突起から係止が解かれて抜け出ても、このOリングは、第1のリング係止鍔部の係止位置の後方部の外周に設けられた第1の退避溝内に落ち込み、それ以上の後退は阻止され、後行する第2のOリングが係止突起に係止され、不用意な抜け出しが確実に防止され、更には第2のOリングが係止突起から抜け出ても、第2のリング係止鍔部の係止位置の後方部の外周に設けられた第2の退避溝内に落ち込み、それ以上の後退は阻止される。
【0020】
このため、複数個のOリングが順次スリーブケースの内周に突設した係止突起から係止が解かれて抜け出て、それぞれの退避溝内に落ち込んだ後は、ガイドプラグの外周のOリグは、インナーチューブ内面との接触はしないため、摩擦抵抗とはならず、コアが収納されるスリーブを円滑に上動する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は本発明のワイヤーライン・コアバーレルのスリーブの抜け止め装置の実施形態を示す拡大部分断面図である。
【図2】図2は同じくワイヤーライン・コアバーレルの全体構造を示す断面図である。
【図3】図3は同じくスリーブケースの係止突起に対してガイドプラグの外周に設けられた第1のOリングが抜け出た状態の拡大部分断面図である。
【図4】図4は同じくスリーブケースの内周に突設した係止突起に対してガイドプラグの外周に設けられた第1のOリングおよび第2のOリングが抜け出た状態の拡大部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下図面に従い、本発明を実施するための最良の形態につき詳細を説明する。
【0023】
本実施形態は、ビット2が下端に設けられたアウターチューブ1、およびリーマ10、アウターチューブサブ1′を備えた外管部Tと、前記外管部T内に挿脱可能に挿入されるインナーチューブ3と、前記インナーチューブ3と前記ビット2との間であって前記外管部Tの内周面との間にスリーブケース4を介して前記インナーチューブ3に対して着脱可能に設けられた筒状のインナーエクステンション5と、前記インナーエクステンション5の外周に上方に向かって引出可能に装着された可撓性シートからなるスリーブ6と、前記スリーブ6の上端が止着され、前記インナーチューブ3内を上動可能に設けられた略筒状のガイドプラグ7と、を設けたスリーブ装着タイプのコアバーレルのスリーブ抜け止め装置である。そして、前記可撓性シートとしては、例えば極薄の合成樹脂ビニールシートが使用される点は特許文献1に記載された発明と同様である。
【0024】
しかしながら、本実施形態では、スリーブ装着タイプのコアバーレルが、ワイヤーライン・コアバーレルであり、図1に示すように前記ガイドプラグ7の外周の軸方向Iに前記スリーブケース4の内周に突設した係止突起4aに係止可能な複数個のOリング8A,8B・・・を間隔Pをあけて設けている。
【0025】
前記ガイドプラグ7は、その外周に、前記インナーチューブ3の内径φ1よりも小径φ2の外周をなすリング係止鍔部7a,7a′が複数個、本実施形態では2個が軸方向Iに突設され、前記Oリング8A,8B・・・が前記リング係止鍔部7a,7a′に係止可能に設けられるとともに、前記Oリング8A,8B・・・の前記リング係止鍔部7a,7a′に対する係止位置の後方部の外周には前記Oリング8A,8B・・・が落ち込み可能な退避溝7b,7b′が設けられている。すなわち、図に示される本実施形態では、前記Oリング8A,8B、および前記リング係止鍔部7a,7a′、前記退避溝7b,7b′が、前記ガイドプラグ7の外周に少なくとも2個設けられている。前記Oリング8A,8B・・・は、前記リング係止鍔部7a,7a′よりも大きな外周径φ3となるように形成される。また、前記退避溝7b,7b′に移動した前記Oリング8A,8B・・・の外周径φ4は前記リング係止鍔径φ2よりも小さく形成される。
【0026】
このように、ガイドプラグ7の外周に少なくとも2個のリング係止鍔部7a,7a′と、前記リング係止鍔部7a,7a′に対する係止位置の後方部の外周に前記Oリング8A,8B・・・が落ち込み可能な退避溝7b,7b′とを設けたのは、インナーチュブ組立体Wを地上より落とし込んで、ボーリング・ロッド(図に示さず)を通じて前記外管部Tにおけるアウターチューブ1内に設置する際に、孔9内に溜まっている掘削流体Lに対する衝撃抵抗を受ける場合には、ガイドプラグ7の外周の軸方向Iに間隔Pをあけて設けた複数個の前記Oリング8A,8Bは、図3に示すように掘削流体Lから衝撃を受けて先行するOリング8Aがスリーブケース4の内周に前記ガイドプラグ7に向けて突設した係止突起4aから係止が解かれて抜け出ても、後行するOリング8Bが係止突起4aに係止され、前記スリーブ6の不用意な抜け出しを確実に防止するためである。そして、インナーチューブ組立体Wが孔9内にある外管部Tにおけるアウターチューブ1内へ設置を完了し、掘削する場合には、コアKの収納によりガイドプラグ7が上動する時、それぞれOリング8A,8Bが脱係するまでの抵抗力をコアKの侵入に対する障害にならないように調整している。
【0027】
本発明のワイヤーライン・コアバーレルのスリーブの抜け止め装置の実施形態は以上の構成からなり、図1に示すようにガイドプラグ7の外周の軸方向Iに前記スリーブケース4の内周に前記ガイドプラグ7に向けて突設した係止突起4aに係止可能な複数個のOリング8A,8B・・・を間隔Pをあけて設けているので、インナーチューブ組立体Wを地上より落とし込んで、ボーリング・ロッド(図には示さず)を通じて外管部Tにおけるアウターチューブ1内に設置する際に、孔9内に溜まっている掘削流体Lに対する衝撃抵抗を受ける場合には、ガイドプラグ7の外周の軸方向Iに間隔Pをあけて設けた複数個、本実施形態では図1に図示するように2個のOリング8A,8Bは、掘削流体Lから衝撃を受けて図3に示すように先行するOリング8Aがスリーブケース4の内周に突設した係止突起4aから係止が解かれて抜け出ても、後行するOリング8Bが前記係止突起4aに係止され、スリーブ6の不用意な抜け出しが確実に防止される。そして、インナーチューブ組立体Wが孔9内にある外管部Tにおけるアウターチューブ1内へ設置を完了し掘削する場合には、図4に示すように前記ガイドプラグ7に上端部が止着されてインナーエクステンション5の外周に上方に向かって引出可能に装着された可撓性シートからなるスリーブ6内にコアKを収容してガイドプラグ7が上動するが、それぞれOリング8A,8Bが脱係する時の抵抗力はコアKの侵入に対して障害にならないように調整される。
【0028】
この際、前記ガイドプラグ7は、図1に示すようにその外周に、前記インナーチューブ3の内径φ1よりも小径φ2の外周をなすリング係止鍔部7a,7a′が複数個、本実施形態では図示のように突設されて、2個の前記Oリング8A,8Bが前記リング係止鍔部7a,7a′に係止可能に設けられるとともに、前記Oリング8A,8Bの前記リング係止鍔部7a,7a′の係止位置の後方部の外周には、前記Oリング8A,8Bが落ち込み可能な退避溝7b,7b′が設けられているので、インナーチューブ組立体Wを地上より落とし込んで、ボーリング・ロッド(図に示さず)を通じて外管部Tにおけるアウターチューブ1内に設置する際に、孔9内に溜まっている掘削流体Lに対する衝撃抵抗を受ける場合に、ガイドプラグ7の外周の軸方向Iに設けた2個のOリング8A,8Bは、図3に示すように先行する第1のOリング8Aがスリーブケース4の内周に突設した係止突起4aから係止が解かれて抜け出ても、この第1のOリング8Aは、リング係止鍔部7aの係止位置の後方部の外周に設けられた第1の退避溝7b内に落ち込み、Oリング8Aのそれ以上の後退は阻止されるとともにガイドプラグ7がインナーチューブ3を軸方向Iに移動する場合の抵抗にならず、移動が円滑に行え、今度は後行する第2のOリング8Bが前記係止突起4aに係止されるので、スリーブ6の不用意な抜け出しが確実に防止される。
【0029】
このため、本実施形態では、インナーチュブ組立体Wを地上より落とし込んで、ボーリング・ロッド(図に示さず)を通じて外管部Tにおけるアウターチューブ1内に設置した後でも、インナーエクステンション5の外周に上方に向かって引出可能に装着された可撓性シートからなるスリーブ6は、不用意に抜け出すことがなく、スリーブケース4の内周であって且つインナーエクステンション5の外周の所定の位置に折畳まれて収納され、コアKの採取に備えた適正な姿勢を保持しているため、例えば特許文献2に記載された従来のワイヤーライン工法とは異なり、掘削中におけるコアKが収納時にスリーブ6内に順次収納されていくために、掘削中においてもコアKとインナーチューブ3の内面との摩擦抵抗を軽減することでコア詰まりを生ずることなく掘削し、地上でそのままコアKを乱さず採取された状態のまま取り出すことができるので、採取されたコアの収納取出し具を使用する必要がない。
【0030】
そして、図3に示すように、ガイドプラグ7の外周に設けられた第1のOリング8Aがスリーブケース4の内周に突設した係止突起4aから係止が解かれて抜け出て後方の退避溝7b内に落ち込むのはもとより、図4に示すように、後行する第2のOリング8Bが係止突起4aから係止が解かれ、抜け出て後方の退避溝7b′内に落ち込むため、2個のOリング8A,8Bは、それ以上の後退は阻止されるとともに、前記係止突起4aから抜け出た後のOリング8A,8Bの外周径φ4はガイドプラグ7の前記リング係止鍔径φ2よりも小さく形成され、インナーチューブ3の内径φ1に内接しないために、ガイドプラグ7がインナーチューブ3内を軸方向Iに移動する場合の抵抗にならず、移動が円滑に行える。
【0031】
なお、上記実施形態の説明では、ガイドプラグ7の外周に設けられるリング係止鍔部7a,7a′、およびこのリング係止鍔部7a,7a′に係止可能に設けられるOリング8A,8B、前記Oリング8A,8Bが落ち込み可能な退避溝7b,7b′が、それぞれ2個設けられている場合を代表的に説明しているが、これは例示であり、リング係止鍔部と、Oリングと、退避溝との設置個数は3個以上の複数個が設けられている場合も本発明の適用範囲である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、コア採取後に、インナーチューブ組立体を地上より落とし込んで、ボーリング・ロッドを通じて外管部内に設置する際に、孔内に溜まっている掘削流体に対する衝撃抵抗を受ける場合に、ガイドプラグの外周にOリングを装備して上端が取付けられて折畳まれているスリーブが不用意に抜け出すのを多重に防止し、掘削時においてスリーブが所定の位置からコアを包み込むことができるようにする用途・機能に適する。
【符号の説明】
【0033】
1 アウターチューブ
1′ アウターチューブサブ
2 ビット
3 インナーチューブ
4 スリーブケース
4a 係止突起
5 インナーエクステンション
6 スリーブ
7 ガイドプラグ
7a リング係止鍔部
7a′ リング係止鍔部
7b 退避溝
7b′ 退避溝
8A Oリング
8B Oリング
9 孔
10 リーマ
I 軸方向
K コア
T 外管部
W インナーチューブ組立体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビットが下端に設けられた外管部と、前記外管部内に挿脱可能に挿入されるインナーチューブと、前記インナーチューブと前記ビットとの間であって前記外管部の内周面との間にスリーブケースを介して前記インナーチューブに対して着脱可能に設けられた筒状のインナーエクステンションと、前記インナーエクステンションの外周に上方に向かって引出可能に装着された可撓性シートからなるスリーブと、前記スリーブの上端が止着され、前記インナーチューブ内を上動可能に設けられた略筒状のガイドプラグと、を設けたスリーブ装着タイプのコアバーレルのスリーブ抜け止め装置において、
前記ガイドプラグの外周の軸方向に前記スリーブケースの内周に突設した係止突起に係止可能な複数個のOリングを間隔をあけて設けた
ことを特徴とするワイヤーライン・コアバーレルのスリーブの抜け止め装置。
【請求項2】
前記ガイドプラグの外周には、前記インナーチューブの内径よりも小径の外周をなすリング係止鍔部を複数個突設し、前記Oリングが前記リング係止鍔部に係止可能に設けられるとともに、前記Oリングの前記リング係止鍔部の係止位置の後方部の外周には前記Oリングが落ち込み可能な退避溝が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のワイヤーライン・コアバーレルのスリーブの抜け止め装置。
【請求項3】
前記Oリング、および前記リング係止鍔部、前記退避溝が前記ガイドプラグの外周に少なくとも2個設けられ、インナーチューブ組立体を地上から孔内の外管部内に落とし込んで溜まっている掘削流体に対する衝撃抵抗を受ける時に、この衝撃抵抗により第1のOリングが抜け出ても第2のOリングが前記係止突起、および前記リング係止鍔部に係止可能に設けられることを特徴とする請求項1または2に記載のワイヤーライン・コアバーレルのスリーブの抜け止め装置。
【請求項4】
前記Oリング、および前記リング係止鍔部、前記退避溝が少なくとも前記ガイドプラグの外周に少なくとも2個設けられ、前記ガイドプラグが上方へ移動することにより、第1のOリング、および第2のOリングが、順次前記係止突起から脱係された時に、第1の前記Oリング、第2の前記Oリングが、順次前記退避溝内に落ち込むように設けられていることを特徴とする請求項1−3の何れかに記載のワイヤーライン・コアバーレルのスリーブの抜け止め装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−117310(P2012−117310A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269142(P2010−269142)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(501021782)株式会社クリステンセン・マイカイ (4)
【Fターム(参考)】