説明

ワイヤーラップ組成物、およびそれに関連する方法

本開示は、ポリイミド層およびボンディング層を有するワイヤーラップ組成物に関する。ポリイミド層は、ポリイミドおよびサブミクロン充填材から構成される。ポリイミドは、剛性ロッド二無水物、非剛性ロッド二無水物およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの芳香族二無水物成分と、剛性ロッドジアミン、非剛性ロッドジアミンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの芳香族ジアミン成分とから誘導される。二無水物のジアミンに対するモル比は、48〜52:52〜48であり、そしてXを剛性ロッド二無水物および剛性ロッドジアミンのモルパーセント、Yを非剛性ロッド二無水物および非剛性ロッドジアミンのモルパーセントとした場合のX:Y比率は、20〜80:80〜20である。サブミクロン充填材は、少なくとも1つの寸法で550ナノメートル未満であり、3:1を超えるアスペクト比を有し、全ての寸法でフィルムの厚さ未満である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、ポリイミド層およびボンディング層を含んでなるワイヤーラップ組成物に関する。より詳しくは、ポリイミド層は、サブミクロン充填材と、ハイブリッド骨格構造を有するポリイミドポリマーとを含んでなる。
【背景技術】
【0002】
ワイヤーラップは、良好な電気特性(例えば絶縁耐力)、ならびに良好な機械的特性を有する必要がある。高い絶縁耐力、ならびに良好な機械的特性は、航空宇宙用途と関連する活発な条件に必要とされる。
【0003】
典型的に、ワイヤーは様々な形状または方向に屈曲する。したがって、ワイヤーまたはケーブルを被覆するワイヤーラップは、同様の能力を有する必要がある。したがって、弾性率および伸び率は、ワイヤーラップ用途において、絶縁耐力に加えて重要な特性である。従来のワイヤーラップ(ケーブルラップ)では、高い機械的強度を有する場合、望ましいコンパクトさをもたらすことができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
改善された熱安定性および寸法安定性を有する、より低コストのワイヤーラップに対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、ポリイミド層およびボンディング層を含んでなるワイヤーラップ組成物に関する。ポリイミド層は、第1の表面および第2の表面を有し、ポリイミド層は、ポリイミドおよびサブミクロン充填材を含んでなる。ポリイミドは、
i)剛性ロッド二無水物、非剛性ロッド二無水物およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの芳香族二無水物成分と、
ii)剛性ロッドジアミン、非剛性ロッドジアミンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの芳香族ジアミン成分と
から誘導される。
【0006】
ポリイミドの全二無水物成分および全ジアミン成分に基づき、二無水物のジアミンに対するモル比は、48〜52:52〜48であり、そしてXを剛性ロッド二無水物および剛性ロッドジアミンのモルパーセント、Yを非剛性ロッド二無水物および非剛性ロッドジアミンのモルパーセントとした場合のX:Y比率は、20〜80:80〜20である。そして
【0007】
サブミクロン充填材は、少なくとも1つの寸法で、(数平均で)550ナノメートル未満であり、3:1を超えるアスペクト比を有し、全ての寸法でポリイミド層の厚さ未満であり、そしてポリイミド層の10〜45容積%の量で存在する。ポリイミド層は、5〜150ミクロンの厚さを有する。
【0008】
ボンディング層は、第1の表面および第2の表面を有し、ボンディング層の第1の表面は、ポリイミド層の第1の表面と隣接しており、ボンディング層は、
i)ボンディング層の全重量に基づき、65〜100重量%の量の、ポリ(テトラフルオロエチレン−co−ペルフルオロ[アルキルビニルエーテル])、または
ii)ポリイミド接着剤
を含んでなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】導電性ワイヤーまたはケーブルに巻き付ける、本発明による誘電体基板を示す。分かりやすくするため(すなわち、不必要な混乱を避けるため)、重複部分のないラップを示すが、実際には、本発明の誘電体基板を、典型的に、重複する様式でワイヤーまたはケーブルに巻き付ける。
【発明を実施するための形態】
【0010】
定義
「フィルム」は、独立フィルムまたは(自立もしくは非自立)コーティングを意味するように意図される。「フィルム」という用語は、「層」という用語と交換可能に使用されて、所望の領域を被覆することを示す。
【0011】
「二無水物」は、本明細書で使用される場合、技術的には二無水物ではなくてもよいが、それにもかかわらず、ジアミンと反応して、次にポリイミドへと変換可能なポリアミド酸を形成する能力のため、機能的には同等であろうそれらの前駆体または誘導体を含むように意図される。
【0012】
「ジアミン」は、本明細書で使用される場合、技術的にはジアミンではなくてもよいが、それにもかかわらず、二無水物と反応して、次にポリイミドに変換可能なポリアミド酸を形成する能力のため、機能的には同等であるそれらの前駆体または誘導体を含むように意図される。
【0013】
「ポリアミド酸」は、本明細書で使用される場合、二無水物およびジアミンモノマーまたはそれらの官能性同等物の組み合わせから誘導され、そしてポリイミドに変換可能ないかなるポリイミド前駆体物質も含むように意図される。
【0014】
「サブミクロン」は、(数平均で)ミクロン未満である少なくとも1つの寸法を有する粒子を記載するように意図される。
【0015】
「化学変換」または「化学的に変換される」は、本明細書で使用される場合、ポリアミド酸をポリイミドに変換するための触媒(促進剤)もしくは脱水剤(または両方)の使用を示しており、そしてその後、98%を超える固体濃度まで高温で乾燥される、部分的に化学的に変換されたポリイミドを含むように意図される。
【0016】
「アスペクト比」は、長さと高さとの比率などの、1つの寸法ともう1つの寸法との比率を意味するように意図される。
【0017】
ある種のポリマーの記載において、出願人らが、それらを製造するために使用するモノマー、またはそれらを製造するために使用するモノマーの量によってポリマーを示すことがあることを理解すべきである。そのような記載は、最終ポリマーを記載するために使用される特定の命名法を含まないかもしれず、またはプロダクト−バイ−プロセス用語を含有しないかもしれないが、モノマーおよび量のそのような記載は、文脈が別に示すか、または暗示しない限り、ポリマーがそれらのモノマーから製造されることを意味するように解釈されなければならない。
【0018】
本明細書で使用される場合、「含んでなる」、「含んでなっている」「含む」、「含んでいる」、「有する」、「有している」という用語、またはそれらの他のあらゆる変形は、非排他的包含を含むように意図される。例えば、要素のリストを含んでなる方法、プロセス、物品または装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されるというわけではなく、明白に記載されていない、またはそのような方法、プロセス、物品もしくは装置に固有の他の要素を含んでもよい。さらには、逆に明示されない限り、「または」は包括的論理和を示し、そして排他的論理和を示さない。例えば、条件AまたはBは、以下のいずれか1つによって満たされる。Aは真であり(または存在する)、そしてBは偽である(または存在しない)、Aは偽であり(または存在しない)、そしてBは真である(または存在する)、ならびにAおよびBが両方とも真である(または存在する)。
【0019】
また、冠詞「a」または「an」は、本発明の要素および構成部分を記載するために使用される。これは単に、便宜のため、そして本発明の一般的な意味を与えるためである。この記載は、他を意味することが明らかでない限り、1つまたは少なくとも1つを含むように読解されるべきであり、また単数形は複数形を含む。
【0020】
概要
本開示のワイヤーラップ組成物は、ポリイミド層およびボンディング層を有する。ポリイミド層は、ポリイミドおよびサブミクロン充填材を含んでなる。ポリイミドは、剛性ロッド部分および非剛性ロッド部分を含んでなるハイブリッド骨格構造を有する。サブミクロン充填材は、一般に、熱膨張係数を維持または低下させ、貯蔵弾性率を増加させながら、ポリイミド層を過度に脆くさせることなく、比較的高い充填量でポリイミド層に組み込むことができる。
【0021】
ポリイミド
本開示のポリイミドは、剛性ロッド部分および非剛性ロッド部分の両方を含んでなるポリマー骨格構造を提供する、ある種の芳香族二無水物と、ある種の芳香族ジアミンとの重合反応から誘導される。剛性ロッド部分は、ポリイミドへの芳香族剛性ロッドモノマーの重合に起因し、そして非剛性ロッド部分は、ポリイミドへの非剛性ロッド芳香族モノマーの重合に起因する。ポリイミドへと重合する時に、芳香族剛性ロッドモノマーはポリマー骨格に同一直線上の(約180°)配置を与え、したがって、比較的小さい運動能力を与える。
【0022】
芳香族剛性ロッドジアミンモノマーの例は、以下の通りである。
【0023】
1,4−ジアミノベンゼン(PPD)、
4,4’−ジアミノビフェニル、
2,2’−ビス(トリフルオロメチル)4,4’−ジアミノビフェニル(TFMB)、
1,4−ナフタレンジアミン、
1,5−ナフタレンジアミン、
4,4’’−ジアミノテルフェニル、
4,4’−ジアミノベンズアニリド
4,4’−ジアミノフェニルベンゾエート、
3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、
2,5−ジアミノトルエンなど。
【0024】
芳香族剛性ロッド二無水物モノマーの例は、以下の通りである。
【0025】
ピロメリット酸二無水物(PMDA)、
2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、および
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)。
【0026】
(剛性ロッドジアミンおよび剛性ロッド二無水物の)上記例に実質的に等しいか、それ未満で、(ポリイミドへと重合した時点で)回転運動の自由度を有するか、または屈曲するモノマーは、本開示の目的に関して、剛性ロッドモノマーとみなされるように意図される。
【0027】
非剛性ロッドモノマーは、本開示の目的に関して、上記の例示された剛性ロッドモノマーと比べて、実質的に大きい運動の自由度を有するポリイミド骨格構造へと重合することが可能な芳香族モノマーを意味するように意図される。非剛性ロッドモノマーは、ポリイミドへと重合される時、屈曲部を有する骨格構造を提供するか、またはそれらが生じたポリイミド骨格に沿って同一直線上ではない(例えば、約180°ではない)。本開示による非剛性ロッドモノマーの例としては、ポリイミド骨格に沿って回転性または屈曲性架橋基を提供することが可能ないかなるジアミンおよびいかなる二無水物も含まれる。回転性または屈曲性架橋基の例には、−O−、−S−、−SO2−、−C(O)−、C(CH32−、−C(CF32−および−C(R,R’)−(式中、RおよびR’は、同一であるか、または異なって、炭素に結合可能な任意の有機基である)が含まれる。
【0028】
非剛性ロッドジアミンの例としては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(“ODA”)、2,2−ビス−(4−アミノフェニル)プロパン、1,3−ジアミノベンゼン(MPD)、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、ビス−(4−(4−アミノフェノキシ)フェニルスルホン(BAPS)、4,4’−ビス−(アミノフェノキシ)ビフェニル(BAPB)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−イソプロピリデンジアニリン、2,2’−ビス−(3−アミノフェニル)プロパン、N,N−ビス−(4−アミノフェニル)−n−ブチルアミン、N,N−ビス−(4−アミノフェニル)メチルアミン、m−アミノベンゾイル−p−アミノアニリド、4−アミノフェニル−3−アミノベンゾエート、N,N−ビス−(4−アミノフェニル)アニリン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、2,4−ジアミン−5−クロロトルエン、2,4−ジアミノ−6−クロロトルエン、2,4−ビス−(ベータ−アミノ−t−ブチル)トルエン、ビス−(p−ベータ−アミノ−t−ブチルフェニル)エーテル、p−ビス−2−(2−メチル−4−アミノペンチル)ベンゼン、m−キシレンジアミン、p−キシレンジアミン、1,2−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,2−ビス−(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス−(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1−(4−アミノフェノキシ)−3−(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス−(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1−(4−アミノフェノキシ)−4−(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス−(4−[4−アミノフェノキシ]フェニル)プロパン(BAPP)、2,2’−ビス−(4−アミノフェニル)−ヘキサフルオロプロパン(6Fジアミン)、2,2’−ビス−(4−フェノキシアニリン)イソプロピリデン、4,4’−ジアミノ−2,2’−トリフルオロメチルジフェニルオキシド、3,3’−ジアミノ−5,5’−トリフルオロメチルジフェニルオキシド、4,4’−トリフルオロメチル−2,2’−ジアミノビフェニル、2,4,6−トリメチル−1,3−ジアミノベンゼン、4,4’−オキシ−ビス−[2−トリフルオロメチル)ベンゼンアミン](1,2,4−OBABTF)、4,4’−オキシ−ビス−[3−トリフルオロメチル)ベンゼンアミン]、4,4’−チオ−ビス−[(2−トリフルオロメチル)ベンゼン−アミン]、4,4’−チオビス[(3−トリフルオロメチル)ベンゼンアミン]、4,4’−スルホキシル−ビス−[(2−トリフルオロメチル)ベンゼンアミン、4,4’−スルホキシル−ビス−[(3−トリフルオロメチル)ベンゼンアミン]、および4,4’−ケト−ビス−[(2−トリフルオロメチル)ベンゼンアミン]が含まれる。
【0029】
非剛性ロッド芳香族二無水物の例としては、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−チオ−ジフタル酸無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物(DSDA)、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホキシド二無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA)、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)チオエーテル二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(BPADA)、2,2−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)1,1,1,3,3,3,−ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、5,5−[2,2,2]−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチリデン、ビス−1,3−イソベンゾフランジオン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、シクロペンタジエニルテトラカルボン酸二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物が含まれる。
【0030】
いくつかの実施形態において、ポリイミドの全二無水物成分およびジアミン成分に基づき、二無水物のジアミンに対するモル比は、48〜52:52〜48であり、そして、Xを剛性ロッド二無水物および剛性ロッドジアミンのモルパーセント、Yを非剛性ロッド二無水物および非剛性ロッドジアミンのモルパーセントとした場合のX:Y比率は、20〜80:80〜20である。そして他の実施形態において、その広い比率の範囲内のいかなる下位の範囲であることも可能である(例えば、20〜80は、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75および80の間、および場合により、端点を含むいかなる範囲も含み、そして80〜20は、80、75、70、65、60、55、45、40、35、30および25の間、および場合により、端点を含むいかなる範囲も含む)。
【0031】
一実施形態において、本開示のポリイミドは、実質的に等モル量の4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(4,4’−ODA)非剛性ロッドモノマーと、ピロメリット酸二無水物(PMDA)剛性ロッドモノマーとから誘導される。もう1つの実施形態において、芳香族二無水物成分の少なくとも70モル%は、ピロメリット酸二無水物であり、そして芳香族ジアミン成分の少なくとも70モル%は、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルである。いくつかの実施形態において、(ポリイミドの全二無水物(dianydride)含有量に基づき)芳香族二無水物成分の少なくとも70、75、80、85、90または95モル%は、ピロメリット酸二無水物であり、そして(ポリイミドの全ジアミン含有量に基づき)芳香族ジアミン成分の少なくとも70、75、80、85、90または95モル%は、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルである。そのようなPMDA//4,4’ODAポリイミドは、比較的低コストで特性が改善されるため、本開示のサブミクロン充填材との組み合わせに特に好適であることが見出されている。もう1つの実施形態において、ポリイミドは、100モル%のピロメリット酸二無水物と、100モル%の4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとから誘導される。もう1つの実施形態において、ポリイミドは、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよび1,4−ジアミノベンゼンと、ピロメリット酸二無水物および3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とから誘導されるランダムコポリマーである。さらにもう1つの実施形態において、ポリイミドは、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよび1,4−ジアミノベンゼンと、ピロメリット酸二無水物とから誘導されるランダムコポリマーである。
【0032】
もう1つの実施形態において、芳香族二無水物成分の少なくとも75モル%は、ピロメリット酸二無水物であり、芳香族ジアミン成分としては70モル%の4,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよび30モル%の1,4−ジアミノベンゼンである。
【0033】
もう1つの実施形態において、ポリイミドはブロックコポリマーである。ブロックコポリマーは、完全にランダムなモノマー配列の分布と対照的に、実質的に1つの二無水物/ジアミンの組み合わせの配列がポリマー骨格に沿って存在するポリマーである。典型的に、ポリアミド酸調製の間、異なるモノマーの連続添加によって、これは達成される。
【0034】
さらにもう1つの実施形態において、ポリイミドは、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよび1,4−ジアミノベンゼンとピロメリット酸二無水物とから誘導されるブロックコポリマーである。さらにもう1つの実施形態において、ポリイミドは、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(4,4’−ODA)および1,4−ジアミノベンゼン(PPD)と、ピロメリット酸二無水物(PMDA)および3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)とから誘導されるブロックコポリマーである。さらにもう1つの実施形態において、ポリイミドは、実質的に剛性のブロック(PPDと反応したPMDA)と、実質的により屈曲性のブロック(ODAと反応したPMDA)とからなるブロックコポリマーである。もう1つの実施形態において、ブロックコポリマーは、10〜40モル%のピロメリット酸二無水物および1,4−ジアミノベンゼンのブロックと、90〜60モル%のピロメリット酸二無水物および4,4’−ジアミノジフェニルエーテルのブロックとから誘導される。
【0035】
サブミクロン充填材
本開示によると、充填材は、(少なくとも1つの寸法で)サブミクロンの充填材またはサブミクロンの充填材の混合物である。
【0036】
一実施形態において、本開示のポリイミド層は、
1.少なくとも1つの寸法で、550ナノメートル未満である(そしていくつかの実施形態において、475、450、425、400、375、350、325、300、275、250、225または200ナノメートル未満である)(充填材は、任意の寸法で様々な形状を有することが可能であるため、そして充填材の形状は、任意の寸法に沿って異なることが可能であるため、「少なくとも1つの寸法」は、その寸法に沿った数平均であるように意図される)、
2.3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15対1を超える平均アスペクト比を有し、
3.全寸法において、ポリイミド層の厚さの100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15または10%未満であり、そして
4.ポリイミド層の10、15、20、25、30、35、40および45容積%の任意の2つのパーセントの間の量、および場合により、端点を含む量で存在する
サブミクロン充填材を含んでなる。
【0037】
適切なサブミクロン充填材は、一般に、300、350、400、425または450℃を超える温度で安定であり、そしていくつかの実施形態において、フィルムの電気絶縁特性を有意に低下させない。いくつかの実施形態において、サブミクロン充填材は、針様充填材(針状)、繊維状充填材、プレートレット充填材およびそれらの混合物からなる群から選択される。一実施形態において、サブミクロン充填材は、実質的に非凝集体である。サブミクロン充填材は、中空、多孔質または固体であることが可能である。
【0038】
一実施形態において、本開示のサブミクロン充填材は、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15対1のアスペクト比を示す。一実施形態において、サブミクロン充填材アスペクト比は、5:1またはそれより大きい。もう1つの実施形態において、サブミクロン充填材のアスペクト比は、10:1またはそれより大きく、そしてもう1つの実施形態において、アスペクト比は、12:1またはそれより大きい。いくつかの実施形態において、サブミクロン充填材は、酸化物(例えば、ケイ素、マグネシウムおよび/またはアルミニウムを含んでなる酸化物)、窒化物(例えば、ホウ素および/またはケイ素を含んでなる窒化物)、炭化物(例えば、タングステンおよび/またはケイ素を含んでなる炭化物)、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、サブミクロン充填材は、針状二酸化チタン、タルク、SiC繊維、プレート状Al23またはそれらの混合物である。いくつかの実施形態において、サブミクロン充填材は、全寸法において(数平均で)50、25、20、15、12、10、8、6、5、4または2ミクロン未満である。
【0039】
さらにもう1つの実施形態において、機械特性を増加させるために、他のサブミクロン充填材と組み合わせて、炭素繊維およびグラファイトを使用することができる。しかしながら、一実施形態において、グラファイトおよび炭素繊維充填材が電気絶縁特性を低下させるおそれがあり、そしていくつかの実施形態においては、低下した電気絶縁特性が望ましくないため、グラファイト、炭素繊維および/または導電性充填材の充填は、浸透閾値以下(おそらく10容積%未満)である必要があり得る。
【0040】
いくつかの実施形態において、サブミクロン充填材は、カップリング剤でコーティングされている。いくつかの実施形態において、サブミクロン充填材は、アミノシランカップリング剤でコーティングされる。いくつかの実施形態において、サブミクロン充填材は、分散剤でコーティングされる。いくつかの実施形態において、サブミクロン充填材は、カップリング剤および分散剤の組み合わせでコーティングされる。いくつかの実施形態において、サブミクロン充填材は、カップリング剤、分散剤またはそれらの組み合わせでコーティングされる。あるいは、カップリング剤および/または分散剤をポリイミド層に直接組み込むことが可能であり、必ずしもサブミクロン充填材上にコーティングされない。いくつかの実施形態において、サブミクロン充填材は、少なくとも一部が酸化アルミニウムでコーティングされた針状二酸化チタンを含んでなる。
【0041】
いくつかの実施形態において、サブミクロン充填材は、所望の加工温度でそれ自体が分解しないか、またはオフガスを生じないように選択される。同様に、いくつかの実施形態において、サブミクロン充填材は、ポリマーの分解の一因とならないように選択される。
【0042】
一実施形態において、1つの粒子において1つの酸化物がもう1つの酸化物を封入する充填材複合材(例えば単一または複数コア/シェル構造)を使用することができる。
【0043】
ポリイミド層
比較的安価なポリイミドに本開示のサブミクロン充填材を充填することが可能であり、それによって、少なくともいくつかの様式で、より低コストであるが、より高価なポリイミドと同様に機能することが見出されている。BPDAまたはフッ素化モノマーなどの、より高価なモノマーを、より安価なモノマーと少なくとも部分的に(または完全に)置き換えることができる。高価なモノマーの他に、いくつかのポリイミドは、例えば、BPDA//PPDではブリスター形成のため、商業的に加工することがより困難である。より低い製造速度は、フィルムのコストを高める。その上、全ての剛性ロッドモノマーから誘導されたポリイミドは、低いCTEおよび高い弾性率を有し得るが、充填時に低い伸び率を有する。3:1またはそれより大きいアスペクト比を有するサブミクロン充填材を、より安価であり、容易に加工可能なポリイミドに比較的高い充填濃度(10〜45容積%)で組み込むことができることが見出された。本開示のサブミクロン充填材は、ポリイミド層を過度に脆くさせることなく、本開示のポリイミド層の貯蔵弾性率を増加させて、そしてCTEを低下させるか、またはほぼ維持する傾向がある。
【0044】
驚くべきことに、本開示のサブミクロン充填材は、全てのポリイミドにおいて同様に作用しないことがある。驚くべきことに、剛性ロッドポリイミド(BPDA//PPD)において、CTEは未充填の剛性ロッドポリイミドにおけるよりも大きくなり得る。
【0045】
本開示のサブミクロン充填材は、本開示のポリイミドに組み込まれる場合、それらの従来のアスペクト比が高くない(3:1未満のアスペクト比)対応物と比較して、より良好な特性(または特性の釣合い)を有するポリイミド層を生じる。
【0046】
いくつかの実施形態において、ポリイミド層は、芳香族二無水物成分として100モル%のピロメリット酸二無水物と、芳香族ジアミン成分として100モル%の4,4'−ジアミノジフェニルエーテルとから誘導されるポリイミドを含んでなり、そしてサブミクロン充填材は、針状二酸化チタン、タルク、SiC繊維、プレート状Al23またはそれらの混合物である。いくつかの実施形態において、ポリイミドは、ピロメリット酸二無水物と4,4'−ジアミノジフェニルエーテルとのホモポリマーである。
【0047】
もう1つの実施形態において、ポリイミド層は、10〜40モル%のピロメリット酸二無水物および1,4−ジアミノベンゼンのブロックと、90〜60モル%のピロメリット酸二無水物および4,4'−ジアミノジフェニルエーテルのブロックとから誘導されたブロックコポリマーであるポリイミドを含んでなり、そしてサブミクロン充填材は、針状二酸化チタン、タルク、SiC繊維、プレート状Al23またはそれらの混合物である。
【0048】
本開示のポリイミド層は、一般に、電気導体、特に電線およびケーブルを絶縁するために有用であり、一般に、ポリイミド層を少なくとも1つのボンディング層と組み合わせることによって製造することができる。
【0049】
熱および寸法安定性
充填材の添加がCTEを低下させて、貯蔵弾性率を増加させることは一般に知られているが、驚くべきことに、本開示のサブミクロン充填材に関しては、貯蔵弾性率の有意な増加および/またはCTEの減少が観察される閾値がある。一実施形態において、サブミクロン充填材は、機械特性および熱特性を改善しながら、熱膨張係数(CTE)を実質的に維持する(80、70、60、50、40、30、20、10、5、4、3、2または1%、プラスまたはマイナス)。
【0050】
一実施形態において、本開示のポリイミド層は、面内熱膨張係数(CTE)を、60℃(または50℃)〜350℃の間で測定すると、1、5、10、15、20、25、30および35ppm/℃の任意の2つの間(および場合により端点を含む)範囲で面内CTEを有する。
【0051】
本開示のいくつかの未充填のブロックまたはランダムコポリマーは、比較的低いCTEを有し得る。したがって、いくつかの実施形態において、本開示のサブミクロン充填材は、ブロックコポリマーCTEに対してほとんど影響を及ぼさない。いくつかの実施形態において、本開示のサブミクロン充填材は、低いCTEを有するブロックまたはランダムコポリマーのCTEを増加させ得るが、CTEはなお所望の範囲内に維持される。
【0052】
ポリイミド層の厚さもCTEに影響を及ぼす可能性があって、より薄いフィルムでは、より低いCTEを与える傾向があり(そして、より厚いフィルムでは、より高いCTEを与える傾向がある)、したがって、ポリイミド層の厚さを、選択されるいずれかの特定の用途次第で、ポリイミド層のCTEを微調整するために使用することができる。本開示のポリイミド層は、5、6、8、10、12、15、20、25、50、75、100、125および150ミクロンのいずれかの厚さ(ミクロン)の間の(および任意にそれらを含む)範囲の厚さを有する。本開示の範囲内のモノマーおよびサブミクロン充填材を、上記範囲内でCTEを微調整するために選択することもでき、または最適化することもできる。通常の技術および実験は、特定の用途次第で、本開示のポリイミド層のいずれかの特定のCTEを微調整する際に必要であり得る。いくつかの実施形態において、ポリイミド層の面内CTEは、10℃/分で400℃まで運転され、次いで、冷却され、400℃まで再加熱されるTA Instruments TMA−2940を利用する熱機械分析によって得ることができる。CTEは、ppm/℃の単位で、50℃〜350℃の間の再加熱走査の間に得られる。もう1つの実施形態において、ポリイミド層の面内CTEは、熱機械分析(TA Instruments、TMA−2940、10℃/分で460℃まで加熱、次に冷却し、500℃まで再加熱)によって得ることができ、再加熱時50℃〜350℃の間で評価される。もう1つの実施形態において、ポリイミド層の面内CTEは、熱機械分析(TA Instruments、TMA−2940、10℃/分で380℃まで加熱、次に冷却し、380℃まで再加熱)によって得ることができ、再加熱時50℃〜350℃の間で評価される。
【0053】
いくつかの実施形態において、サブミクロン充填材は、ポリイミドのガラス転移温度(Tg)を越えて、貯蔵弾性率を増加させる。いくつかの実施形態において、本開示のサブミクロン充填材は、25℃で、3:1未満のアスペクト比を有するサブミクロン充填材と比較して、少なくとも20、22、24、26、28または30%貯蔵弾性率を増加させる。いくつかの実施形態において、本開示のサブミクロン充填材は、480℃〜500℃で、3:1未満のアスペクト比を有するサブミクロン充填材と比較して、貯蔵弾性率を少なくとも40、42、44または46%増加させる。いくつかの実施形態において、本開示のサブミクロン充填材は、25℃で、未充填のポリイミドと比較して、貯蔵弾性率を少なくとも38、40、42、44または46%増加させる。いくつかの実施形態において、本開示のサブミクロン充填材は、480℃〜500℃で、未充填のポリイミドと比較して、貯蔵弾性率を少なくとも52、53、54または55%増加させる。
【0054】
典型的に、フィルム中の充填材の量が増加すると、フィルムはより脆く、加工が困難になる傾向がある。典型的に、引張伸び率が20%未満である場合、フィルムは加工が困難であり、商業的な価値が制限される。驚くべきことに、本開示のサブミクロン充填材が、二無水物のジアミンに対するモル比が48〜52:52〜48であり、そしてXを剛性ロッド二無水物および剛性ロッドジアミンのモルパーセント、Yを非剛性ロッド二無水物および非剛性ロッドジアミンのモルパーセントとした場合のX:Y比率が20〜80:80〜20であるポリイミドに添加される場合、引張伸び率は容認できる値のままである。いくつかの実施形態において、10容積%より多いサブミクロン充填材が使用される場合、引張伸び率は容認できる値のままである。一実施形態において、30容積%より多いサブミクロン充填材が使用される場合、引張伸び率は容認できる値のままである。もう1つの実施形態において、40容積%より多いサブミクロン充填材が使用される場合、引張伸び率は容認できる値のままである。
【0055】
一般に、ポリイミドを形成する際、化学変換過程は(熱変換過程とは対照的に)、より低いCTEポリイミドフィルムをもたらす。したがって、本開示の利点は、化学的または熱的に変換されたポリイミドの両方に関して見られるが、本開示のサブミクロン充填材を組み込むことの利点は、本開示の化学的に変換されたポリイミドに関して最も有用となり得る。
【0056】
ポリイミド層形成
本開示のポリイミド層は、当該技術で周知の方法によって製造することができる。いくつかの実施形態において、上記のモノマーを溶媒と一緒に組み合わせて、ポリアミド酸(またポリアミド酸溶液とも呼ばれる)を形成することによって、ポリイミド層を製造することができる。二無水物およびジアミン成分は、典型的に、0.9〜1.10の芳香族二無水物成分と芳香族ジアミン成分とのモル比で組み合わせられる。分子量は、二無水物およびジアミン成分のモル比を調節することによって調節することができる。
【0057】
本開示の実施において、化学変換または熱変換を使用することができる。化学変換が使用される例において、ポリアミド酸キャスティング溶液をポリアミド酸溶液から誘導する。一実施形態において、ポリアミド酸キャスティング溶液は、(i)1種または複数種の、脂肪族酸無水物(無水酢酸など)および芳香族酸無水物などの脱水剤、ならびに(ii)1種または複数種の、脂肪族第三級アミン(トリエチルアミンなど)、芳香族第三級アミン(ジメチルアニリンなど)、および複素環式第三級アミン(ピリジン、ピコリン、イソキノリンなど)などの触媒などの変換化学物質と組み合わせたポリアミド酸溶液を含んでなる。無水脱水物質は、しばしば、コポリアミド酸のアミド酸基の量のモル過剰で使用される。使用される無水酢酸の量は、典型的に、アミド酸1当量につき約2.0〜3.0モルである。一般に、相当量の第三級アミン触媒が使用される。
【0058】
一実施形態において、ポリアミド酸は、約5重量%〜40重量%(40重量%を含む)濃度で有機溶媒に溶解される。一実施形態において、ポリアミド酸は、約5、10、15、20、25、30、35または40重量%の濃度で有機溶媒に溶解される。適切な溶媒の例には、ホルムアミド溶媒(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなど)、アセトアミド溶媒(N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなど)、ピロリドン溶媒(N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなど)、フェノール溶媒(フェノール、o−、m−またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなど)、ヘキサメチルホスホルアミドおよびガンマ−ブチロラクトンが含まれる。これらの溶媒の1種またはそれらの混合物を使用することが望ましい。これらの溶媒と、キシレンおよびトルエンなどの芳香族炭化水素、またはジグリム、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコール、メチルエーテルアセテート、テトラヒドロフランなどのエーテル含有溶媒との組み合わせを使用することも可能である。
【0059】
一実施形態において、本開示のポリイミド層を形成するために多数の変形を使用して、プレポリマーを調製すること、およびサブミクロン充填材(それらの分散またはコロイド)と組み合わせることが可能である。「プレポリマー」は、典型的に、やや化学量論過剰(約2〜4%)のジアミンモノマー(または過剰の二無水物モノマー)で製造された、より低分子量のポリマーを意味するように意図される。プレポリマーの分子量(および溶液粘度)を増加させることは、1:1の二無水物とジアミンとの化学量論比に到達させるために、追加的な二無水物(または二無水物モノマーが最初にプレポリマーにおいて過剰である場合、追加的なジアミン)の増加量を添加することによって達成することができる。
【0060】
本開示によるポリイミド層を製造するための有用な方法は、Kreuzらへの米国特許第5,166,308号明細書に見ることができる。多数の変形も可能であり、例えば、(a)ジアミン成分および二無水物成分をあらかじめ一緒に混合しておき、次いで、攪拌しながら、混合物を溶媒に数回に分けて添加する方法、(b)溶媒をジアミンおよび二無水物成分の攪拌混合物に添加する方法(上記(a)とは逆)、(c)ジアミンのみを溶媒に溶解し、次いで、反応速度を制御するような比率で、二無水物をそれに添加する方法、(d)二無水物成分のみを溶媒に溶解し、次いで、反応速度を制御するような比率で、アミン成分をそれに添加する方法、(e)ジアミン成分および二無水物成分を別々に溶媒に溶解し、次いで、これらの溶液を反応器で混合する方法、(f)過剰のアミン成分を含むポリアミド酸および過剰の二無水物成分を含むもう1つのポリアミド酸をあらかじめ形成し、次いで、特に非ランダムまたはブロックコポリマーを生じるような様式で、反応器中で互いに反応させる方法、(g)アミン成分および二無水物成分の特定の部分を最初に反応させ、次いで、残りのジアミン成分を反応させる、またはその逆の方法、(h)変換化学物質をポリアミド酸と混合して、ポリアミド酸キャスティング溶液を形成し、次いで、キャストしてゲルフィルムを形成する方法、(i)任意の順番で、成分の一部または全部を、溶媒の一部または全部に添加する方法であって、また、任意の成分の一部または全部を、溶媒の一部または全体中の溶液として添加することもできる方法、(j)最初に二無水物成分の1つをジアミン成分の1つと反応させ、第1のポリアミド酸を生じ、次いで、他の二無水物成分を他のアミン成分と反応させ、第2のポリアミド酸を生じ、次いで、複数の方法のいずれか1つでアミド酸を組み合わせ、その後、フィルム形成を行う方法、ならびに(k)連続添加によってブロックコポリマーを生じさせる方法、例えば、第1のジアミンおよび第1の二無水物を添加して、過剰な二無水物(または過剰なジアミン)を有するポリアミド酸を形成し、第1のブロックを生じさせ、次いで、第2のジアミンおよび第2の二無水物をポリアミド酸に添加して、第1のブロックの存在下で第2のブロックを生じさせる方法が挙げられる。(k)に関しては、特定の応用または所望の特性次第で、(各ブロック中で)異なる二無水物(および同一ジアミン)に基づき、または異なる二無水物および異なるジアミンに基づき、ブロックを製造することができる。
【0061】
サブミクロン充填材(それらの分散またはコロイド)は、ポリイミド層調製のいくつかの点で添加することができる。一実施形態において、コロイドまたは分散をプレポリマーに組み込み、25℃で50〜100ポアズの範囲のBrookfield溶液粘度を得る。他の実施形態において、コロイドまたは分散をモノマーと直接組み合わせられることができ、この場合、重合は反応中に充填材が存在する状態で生じる。モノマーは、この「その場」重合の間、過剰の任意のモノマー(ジアミンまたは二無水物)を有してもよい。モノマーは、1:1の比率で添加されてもよい。モノマーがアミン過剰(ケースi)または二無水物過剰(ケースii)のいずれかで添加される場合、必要に応じて、1:1の二無水物とアミンとの化学量論比に到達するように、追加的な二無水物(ケースi)またはジアミン(ケースii)の増加量を添加することによって、分子量(および溶液粘度)の増加を達成することができる。
【0062】
次いで、ポリアミド酸キャスティング溶液を、エンドレスベルトまたは回転ドラムなどの支持体上にキャストまたは塗布することができる。ポリアミド酸は、変換化学反応物を含有する。次に、適切な温度で焼成して溶媒を除去することによって(熱硬化)、または化学変換反応物と一緒に焼成することによって(化学硬化)、溶媒含有フィルムを自立フィルムに変換することができる。次いで、フィルムを支持体から分離して、連続的な熱硬化とともに、幅出し(tentering)などによって延伸して、フィルム(ポリイミド層)を提供することができる。
【0063】
一般的に、表面の粗さが、i.本開示の充填ポリイミド層上に堆積された層の機能を妨害する可能性があり、ii.電気または機械欠陥の可能性を増加させる可能性があり、そしてiii.ポリイミド層に沿って均一性を減少させる可能性があるため、ポリイミド層が平滑であることが望ましい。一実施形態において、サブミクロン充填材(および他の任意の不連続な領域)が、1000、750、500または400ナノメートル未満の平均表面粗度(Ra)を有する最終ポリイミド層を提供するように、ポリイミド層形成時にポリイミド層の表面間に十分にあるように、サブミクロン充填材(および他の任意の不連続な領域)はポリイミド層形成の間に十分に分散する。本明細書に提供される表面粗度は、Veeco Wyco NT 1000 Series機器上、VSIモードで、25.4倍または51.2倍で、Wyco Vision 32を利用して測定するように、Ra値を提供する光学面プロフィロメトリーによって決定することができる。
【0064】
ポリアミド酸(およびキャスティング溶液)は、加工助剤(例えばオリゴマー)、酸化防止剤、光安定剤、難燃添加剤、帯電防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、充填材または様々な強化剤などの複数の添加剤のいずれか1種をさらに含むことができる。
【0065】
アルコキシシランカップリング剤(または任意の従来の、非従来の、現在既知の、もしくは将来発見されるカップリング剤)を、調合前にサブミクロン充填材を前処理することによって、プロセス間に添加することができる。一般に、カップリング剤が重合反応を妨害しない限り、充填材およびモノマーをアルコキシシランと組み合わせることによって、アルコキシシランカップリング剤を「その場」重合の間に添加することもできる。
【0066】
いくつかの場合、二無水物をサブミクロン充填材と接触させることができる。一切の特定の理論または仮説に拘束されるように意図されないが、二無水物とサブミクロン充填材との間のそのような接触によって、モノマーまたはプレポリマーとのさらなる反応の前に、二無水物によるサブミクロン充填材の官能化が可能である。最後に、充填ポリアミド酸組成物を一般にフィルムにキャストして、これを乾燥および硬化させ(化学および/または熱硬化)、充填ポリイミドフィルムを形成する。充填ポリイミドフィルムを製造するための任意の従来の方法または非従来の方法を、本開示に従って使用することができる。一般に、充填ポリイミドフィルムの製造は周知であり、本明細書でさらに説明する必要がない。一実施形態において、本開示のポリイミド層で使用されるポリイミドは、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390または400℃より高いガラス転移温度(Tg)を有する。Tgが高いことは、一般に、高温で貯蔵弾性率などの機械特性を維持するために有益である。
【0067】
いくつかの実施形態において、ポリイミド層の電気特性を変性するために、電気絶縁性充填材を添加してもよい。いくつかの実施形態において、ポリイミド層の電気的完全性および絶縁耐力に悪影響を及ぼすおそれのある小穴または他の欠陥(外部粒子、ゲル、充填材凝集体または他の汚染)がポリイミド層にないことは重要であり、これは一般に、濾過によって対処することができる。そのような濾過は、ポリイミド層製造の任意の段階で実施することができる。例えば、溶媒和された充填材を、1種または複数種のモノマーに添加される前または後に濾過し、そして/または特に、ポリアミド酸が低粘度である場合、ポリアミド酸を濾過し、あるいは濾過が可能な製造プロセスの任意の工程で濾過する。一実施形態において、そのような濾過は、最小の適切なフィルタ細孔サイズで、または選択された充填材の最大寸法よりわずかに大きいサイズで行われる。いくつかの実施形態において、フィルムに組み込む(またはポリイミド前駆体に組み込む)時に、攪拌および/または高剪断混合、あるいは媒体粉砕または分散助剤の使用を含む他の分散技術などの激しい分散エネルギーをサブミクロン充填材に与え、所望の最大充填材サイズを上回る望ましくない凝集体形成を抑制するか、または最初にサブミクロン充填材に存在し得る凝集体を分解する。サブミクロン充填材のアスペクト比が増加すると、サブミクロン充填材の長軸が整列するか、他の様式でポリイミド層の外側表面と平行してそれ自体を配置する傾向も増加する。
【0068】
フィルム内の望ましくない(または望ましくなく大きい)不連続相材料によって生じる欠陥の影響を低減させるために、単層フィルムをより厚く製造することができる。あるいは、任意の特定の層の任意の特定の欠陥(所望の特性に損害を及ぼす可能性のあるサイズの望ましくない不連続相材料)の損害を低減するために、ポリイミドの複数層を使用してもよい。一般的に、そのような多層は、同じ厚さのポリイミド単層と比較して、性能の欠陥がより少ない。欠陥がそれぞれの個々の層で重複する可能性が非常に小さくなる傾向があるため、ポリイミドフィルムの複数層を使用することによって、フィルムの全体の厚さにわたって生じ得る欠陥の発生を減少させることができるか、または排除することができる。したがって、任意の1層の欠陥が、フィルムの全体的な厚さを通して電気的または他の種類の不全を生じる可能性は低い。いくつかの実施形態において、ポリイミド層は2層以上のポリイミド層を含んでなる。いくつかの実施形態において、ポリイミド層は同一である。いくつかの実施形態において、ポリイミド層は異なる。いくつかの実施形態において、ポリイミド層は、独立して、熱的に安定した充填材、強化織物、無機紙、シート、スクリムまたはそれらの組み合わせを含んでもよい。場合により、フィルムの0〜55重量%には、いずれかの特定の用途のために所望であるか、または必要とされる特性を変性するために他の成分も含まれる。
【0069】
ポリイミド層の表面は、他の層へのコア層の接着性を改善するために、変性されてもよい。有用な表面変性の例は、限定されないが、コロナ処理、大気圧下でのプラズマ処理、減圧下でのプラズマ処理、シランおよびチタネートなどのカップリング剤による処理、サンドブラスト、アルカリ処理および酸処理である。
【0070】
ポリイミド層とボンディング層との間の接着強度を改善するために、様々な有機および/または無機金属化合物(例えば金属酸化物および/または金属錯体)を添加することも可能である。これらの金属化合物の添加については、例えば、米国特許第4,742,099号明細書(スズ化合物、チタン化合物など)に開示されている。一般に、これらの金属化合物は、ポリアミド酸に添加されるか、未硬化湿性フィルムに適用される。有機化合物の添加は、ポリイミド層といずれかの隣接する層との間の接着強度を改善するためにも使用されてよい。
【0071】
ボンディング層
ボンディング層は、一般に、機械的性能低下、特にスクレープ摩耗およびカットスルーに対する優れた耐性をポリイミド層に提供する。改善されたスクレープ摩耗耐性(すなわち、絶縁系の最終的な機械的失陥に対する改善された耐性)は、一般に、求められていない電気アークトラッキング(絶縁性が機械的に低下するときに見られる)が重大な問題となる用途において、特に有用となり得る。またボンディング層は、いずれかの外面層(ポリテトラフルオロエチレンなど)と内面のポリイミドコア層との間に、改善されたボンディング性能をもたらす。
【0072】
いくつかの実施形態において、ボンディング層、ボンディング層の全重量に基づき、65、70、75、80、85、90、95および100重量%のいずれか2つの間の(および任意にそれらを含む)量のポリ(テトラフルオロエチレン−co−ペルフルオロ[アルキルビニルエーテル])。もう1つの実施形態において、ポリ(テトラフルオロエチレン−co−ペルフルオロ[アルキルビニルエーテル])が、より高温での用途の必要条件を満たすことができない場合、ポリイミド接着剤がボンディング層として使用されてもよい。いくつかの実施形態において、ボンディング層は、テトラフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレンコポリマーまたはポリ(エチレン−コ−テトラフルオロエチレン)である。
【0073】
ボンディング層が、ポリ(テトラフルオロエチレン−コ−ペルフルオロ[アルキルビニルエーテル])である場合、ボンディング層は、場合により、(ボンディング層の全重量%に基づき)35重量%までのテトラフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレンコポリマー(FEP)フルオロポリマーとブレンドされてもよい。
【0074】
ボンディング層は、一般に、0.25、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.25、1.5、1.75、2、3、4、5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24および25ミクロンのいずれか2つの間の(および任意にそれらを含む)範囲の厚さを有する。有用な厚さの範囲は、約0.75ミクロン〜2.5ミクロンの範囲(一般に、約0.03〜約0.10ミルの範囲)であることが多い。実際には、特に、軍事的または民間の航空機用途に関して、望ましい厚さは、具体的なワイヤーの仕様次第であり得る。
【0075】
いくつかの実施形態において、ボンディング層は、限定されないが、コロイド水分散コーティングまたはラミネーションによって、ポリイミド層または任意の定着剤層に適用されてもよい。
【0076】
ワイヤーラップ
本開示のワイヤーラップは、ポリイミド層およびボンディング層を含んでなった。ポリイミド層は、第1の表面および第2の表面を有する。ボンディング層は、第1および第2の表面を有する。いくつかの実施形態において、ボンディング層の第1の表面は、ポリイミド層の第1の表面に隣接する。
【0077】
本開示のワイヤーラップは、場合により、異なる層または表面の間での接着性を改善するため、あるいはさらに、(ワイヤーラップが重複する様式で適用される場合)ワイヤーラップ自体への接着性を改善するために、追加的な接着剤層を含有してもよい。いくつかの実施形態において、ワイヤーラップ組成物は、ポリイミド層の第2の表面と接触している、ポリイミド−金属(polyimide−to−metal)ボンディング層を含んでなり、ポリイミド−金属ボンディング層は、ポリイミド−金属ボンディング層の全重量に基づき、70〜100重量%のポリ(テトラフルオロエチレン−コ−ヘキサフルオロプロピレン)を含んでなる。任意のポリイミド−金属ボンディング層は、最内層として使用されることが多く、一般に、巻き付けた系の実質的に中央に位置する導電性ワイヤー(またはケーブル)に実質的に隣接して配置されることが意図される。ポリイミド−金属ボンディング層は、ワイヤーまたはケーブルへのポリイミド層の接着性を改善するために使用することができる。
【0078】
いくつかの実施形態において、ポリイミド−金属ボンディング層は、ポリイミド−金属ボンディング層の全重量に基づき、30重量%までの、限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(テトラフルオロエチレン−co−ペルフルオロ[アルキルビニルエーテル])(例えば、テフロン(登録商標)PFA)またはポリ(エチレン−コ−テトラフルオロエチレン)(ETFE)を含む追加的なフルオロポリマーを含んでもよい。
【0079】
いくつかの実施形態において、ポリイミド−金属ボンディング層の厚さは、0.25、0.5、0.7、1、5、10、15、20および25.0ミクロンのいずれか2つの間である(任意にそれらを含む)。もう1つの実施形態において、ポリイミド−金属ボンディング層の厚さは、8〜20ミクロンである。
【0080】
いくつかの実施形態において、ワイヤーラップ組成物は、ポリイミド層の第1の表面およびボンディング層の第1の表面に接触して、そしてそれらの間に、定着剤層を含んでなる。定着剤層は、定着剤層の全重量に基づき、70〜100重量%のポリ(テトラフルオロエチレン−コ−ヘキサフルオロプロピレン)を含んでなる。任意の定着剤層は、ボンディング層とポリイミド層との間の接着性を改善するために使用することができる。
【0081】
いくつかの実施形態において、定着剤層は、定着剤層の全重量に基づき、30重量%までの、限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(テトラフルオロエチレン−co−ペルフルオロ[アルキルビニルエーテル])またはポリ(エチレン−co−テトラフルオロエチレン)(ETFE)を含む追加的なフルオロポリマーを含んでなってもよい。
【0082】
いくつかの実施形態において、定着剤層の厚さは、0.25、0.5、0.7、1、5、10、15、20および25.0ミクロンのいずれか2つの間である(任意にそれらを含む)。もう1つの実施形態において、定着剤層の厚さは、8〜20ミクロンである。ポリイミド−金属ボンディング層および定着剤層は、同一であっても、または異なってもよい。
【0083】
いくつかの実施形態において、ワイヤーラップ組成物は、ボンディング層の第2の表面と接触しているポリテトラフルオロエチレン外面層を追加的に含んでなる。外面層は、一般に、その構造物をワイヤーまたはケーブルなどに巻き付ける時に、いくらかのスクレープ摩耗耐性、化学薬品耐性および熱耐久性をもたらす。
【0084】
いくつかの実施形態において、外面層の厚さは、一般に、1、10、20、40、60、80、100、120、140、160、180および200ミクロンのいずれか2つの間である(任意にそれらを含む)。もう1つの実施形態において、外面層の厚さは、2〜50ミクロンである。いくつかの実施形態において、場合により、他のフルオロポリマーをポリテトラフルオロエチレンとブレンドすることができる。いくつかの実施形態において、ポリテトラフルオロエチレン外面層は、部分的または完全に焼結される。
【0085】
図1に例示される一実施形態において、本発明によるワイヤーラップ14は、ワイヤーまたはケーブル2の周囲にシールされる。本実施形態において、ポリイミド層6は、一般に、高温で機械的強靱性と絶縁耐力をもたらす。任意のポリイミド−金属(PTM)層4は、一般に、金属ワイヤーまたは表面および/またはワイヤーラップ自体へのポリイミドコア層の接着性の改善をもたらす。任意の定着剤層8は、一般に、ボンディング層10とポリイミドコア層6との間の接着力の改善をもたらす。ボンディング層10は、一般に、スクレープ摩耗およびカットスルーに対する機械的耐性の改善をもたらす。任意の外側PTFE層12は、一般に、熱老化耐性、化学薬品耐性および電気アークトラッキングに対する耐性の改善を提供する。
【0086】
いくつかの実施形態において、任意のポリイミド−金属ボンディング層および定着剤層を水分散体の形態でポリイミド層上へコーティングすることができる。任意のポリテトラフルオロエチレン外面層を、多孔性、焼結性ラミネートテープとして別に適用して、次いで、一般に高温で、部分的または完全に焼結(およびヒートシール)して、完全または部分的にポリテトラフルオロエチレン外面層の密度を高めて、本開示の他の層に接着することができる。
【0087】
いくつかの実施形態において、高温でのいずれかの特定の層の性能を改善するために、1つまたはそれ以上の層に添加剤を組み込むことができる。
【0088】
ワイヤーワープ形成
本開示のワイヤーラップ組成物のフィルムまたはシートを狭い幅に裂いて、テープを提供することができる。次いで、これらのテープを、重複部分の有無にかかわらず、らせん状に電気導体に巻付けることができる。ラップの角度次第で、重複部分の量は異なり得る。巻き付け操作の間に使用される張力を、しわが形成するのを防ぐためにちょうど十分な張力から、テープを伸長して、ネックダウン(neck down)するために十分高い張力まで及ぶ広範囲に変化させることも可能である。
【0089】
張力が低い場合でも、テープは、いずれかのその後のヒートシール操作の間の熱の影響を受けて収縮することが多いため、適切な巻き付けが可能である。複合材の他の層にボンディング層を融合させるのに十分な温度および時間で、テープが巻き付けられた導体を処理することによって、テープのヒートシールを達成することができる。必要とされるヒートシール温度は、一般に、絶縁の厚さ、金属導体のゲージ、生産ラインの速度およびシールの長さ次第で、240、250、275、300、325または350℃から、375、400、425、450、475または500℃の範囲である。
【実施例】
【0090】
本発明を以下の実施例にさらに記載する。これは請求の範囲に記載される発明の範囲を限定するように意図するものではない。
【0091】
全ての実施例において、組成物の重量パーセントを等容積百分率に変換する計算に関して、針状二酸化チタンには4.2g/cc、タルクには2.75g/cc、SiCには3.22g/cc、そしてポリイミドには1.42g/ccの密度を使用した。
【0092】
実施例1〜4では、未充填の比較例1と比較した場合、10容積%またはそれより高い本開示のサブミクロン充填材が、破断まで適切な伸び率を維持しながら、貯蔵弾性率を有意に増加させ、CTEを低下させることを実証する。
【0093】
実施例1
PMDA//ODA中15容積%(34.3重量%)針状TiO2
25.0グラムの針状TiO2(FTL−110、Ishihara Corporation,USA)を、141.11グラムの無水DMACと組み合わせた。このスラリーを、正方形孔、高剪断スクリーンを備えたSilverson Model L4RT高剪断混合機(Silverson Machines,LTD,Chesham Baucks,England)を使用して(約4000rpmのブレード速度で)、高剪断下で約10〜15分間混合した。
【0094】
丸底フラスコ中、針状TiO2含有スラリー74.1グラムを、116.94グラムのPMDA//ODAプレポリマー(無水DMAC中20重量%溶液)と混合し、そして得られた混合物を約24時間攪拌した。この操作の間、丸底フラスコ中で穏やかな窒素気体パージを使用した。
【0095】
約24時間撹拌した後、この材料を、45ミクロン濾過材(Millipore、45ミクロンポリプロピレンスクリーン、PP4504700)に通して濾過した。
【0096】
別の容器において、9.00gのPMDA(Aldrich 412287,Allentown,PA)および15mlのDMACを組み合わせて、ピロメリット酸無水物(PMDA)の6重量%溶液を調製した。
【0097】
PMDA溶液をプレポリマースラリーにゆっくり添加し、1090ポアズの最終粘度を達成した。調合物を0℃で一晩中貯蔵し、脱気した。
【0098】
25ミルドクターブレードを使用して、調合物をガラスプレートの表面上にキャストし、3インチ×4インチのフィルムを形成した。次いで、キャストフィルムおよびガラスプレートを、110mlの3−ピコリン(ベータピコリン、Aldrich,242845)および110mlの無水酢酸(Aldrich,98%,P42053)を含有する溶液に浸漬する。
【0099】
その後、フィルムをガラス表面から持ち上げ、そして3インチ×4インチのピンフレーム上に取り付けた。取り付けたフィルムを、炉(Thermolyne、F6000箱形炉)に置いた。炉を窒素パージして、以下の温度プロトコルに従って加熱した。
40℃〜125℃(4℃/分で昇温)
125℃〜125℃(30分浸漬)
125℃〜250℃(4℃/分で昇温)
250℃(30分浸漬)
250℃〜400℃(5℃/分で昇温)
400℃(20分浸漬)
【0100】
熱膨張係数は、熱機械分析(TMA)によって測定した。TA Instrumentモデル2940を張力モードで使用した。機器をN2気体によって30〜50ml/分でパージした。加熱サイクルの間に機器の温度を迅速に冷却する機械式クーラーも使用した。このフィルムを幅2.0mmおよび長さ6〜9mm(MDまたはキャスティング方向)に切断された。フィルムを7.5〜9.0mmの長さに縦に固定した。プレロード張力は、5グラムの力に設定された。次いで、フィルムに10℃/分の速度で0℃〜400℃の加熱を行い、3分間400℃で保持し、再び0℃まで冷却した。同様に400℃までの第2の加熱サイクルを実行した。60℃から400℃までのμm/m−℃(またはpp/℃)の単位の熱膨張係数の計算を、第2の加熱サイクルのキャスティング方向(MD)に関して報告した。
【0101】
貯蔵弾性率(E’)は、フィルムの機械的挙動を特徴づけるために使用される動的機械分析(DMA)機器で測定した。DMA操作は、温度および時間の関数として小さい振動歪み(例えば、10μm)を受けたポリマーの粘弾性応答をベースとした(TA Instruments,New Castle,DE,USA,DMA 2980)。フィルムを多周波−歪みモードで張力下に置いた。長方形の試料の有限サイズを固定ジョーと可動ジョーとの間に固定した。フィルムは、幅6〜6.4mm、厚さ0.03〜0.05mm、長さ10mmであった。MD方向を使用して、フィルムを3in−lbトルク力で固定した。長さ方向の静的力は、125%の自動張力で0.05Nであった。フィルムを、1Hzの周波数で、3℃/分の速度で、0℃から500℃まで加熱した。25℃での貯蔵弾性率は、5757MPaであると測定された。
【0102】
フィルムの引張特性(破断点伸び率%を含む)は、Instronモデル3345機器で測定した。クロスヘッドギャップ(試料試験長さ)は1インチ(2.54センチメートル)であり、そして幅は0.5インチ(1.27センチメートル)であった。クロスヘッド速度は、1インチ(2.54センチメートル)/分であった。
【0103】
結果を表1に示す。
【0104】
実施例2
PMDA//ODA中10容積%(24.70重量%)針状TiO2(FTL−110)
以下の例外を除き、実施例1に記載されたものと同じ手順に従った。針状TiO2含有スラリー(FTL−110、DMAC中15重量%)54.24グラムを、136.15グラムのPMDA//ODAプレポリマー(DMAC中20重量%)と混合した。
【0105】
この物質は、PMDA溶液によって899ポアズの粘度まで仕上げられた。
【0106】
CTE、E’および破断点伸び率%を、実施例1の場合と同様に測定した。
【0107】
結果を表1に示す。
【0108】
実施例3
PMDA//ODA中20容積%(42.5重量%)針状TiO2(FTL−110)
以下の例外を除き、実施例1に記載されたものと同じ手順に従った。針状TiO2含有スラリー(FTL−110、DMAC中15重量%、高剪断混合された)57.7グラムを、63.3グラムのPMDA//ODAプレポリマー(DMAC中20.6重量%)と組み合わせた。
【0109】
この物質は、PMDA溶液によって1380ポアズの粘度まで仕上げられた。
【0110】
CTE、E’および破断点伸び率%を、実施例1の場合と同様に測定した。
【0111】
結果を表1に示す。
【0112】
実施例4
PMDA//ODA中10容積%SiC繊維(20.1重量%)
以下の差異を除き、実施例1に記載されたものと同じ手順に従った。24.75グラムのSiC繊維(Silar(登録商標)Silicon Carbide whiskers、ベータ型、Advanced Composites Materials,Greer,SC,USA)を140.25グラムの無水DMACと組み合わせた。実施例1に記載されるように、スラリーを高剪断条件下で混合した。
【0113】
45.62グラムのこのスラリーを144.44グラムのPMDA//ODAプレポリマー(DMAC中20.6重量%)と組み合わせた。
【0114】
CTE、E’および破断点伸び率%を、実施例1の場合と同様に測定した。
【0115】
結果を表1に示す。
【0116】
比較例1
未充填PMDA//ODA
以下の例外を除き、実施例1に記載されたものと同じ手順に従った。無機粒子を含有するスラリーをPMDA//ODAプレポリマーに添加しなかった(プレポリマーはDMAC中20重量%である)。
【0117】
この物質は、PMDA溶液によって890ポアズの粘度まで仕上げられた。
【0118】
CTE、E’および破断点伸び率%を、実施例1の場合と同様に測定した。
【0119】
結果を表1に示す。
【0120】
比較例2〜5は、本開示のサブミクロン充填材が10容積%未満で存在する場合、貯蔵弾性率(特に500℃の貯蔵弾性率)の有意な増加を生じず、またはCTEを低下させないこと(貯蔵弾性率およびCTEの比較的わずかな改善)を実証する。
【0121】
比較例2
PMDA//ODA中2.5容積%(7重量%)針状TiO2
以下の差異を除き、実施例1に記載されたものと同様の手順を使用した。24.08グラムの針状TiO2(FTL−110,Ishihara Corporation,USA)を、135.92グラムの無水DMACと組み合わせ、そしてスラリーを高剪断下で混合した。
【0122】
針状TiO2含有スラリー10.1グラムを、109.9グラムのPMDA//ODAプレポリマーと混合した。
【0123】
CTE、E’および破断点伸び率%を、実施例1の場合と同様に測定した。
【0124】
結果を表1に示す。
【0125】
比較例3
PMDA//ODA中5容積%(13.5重量%)針状TiO2
以下の差異を除き、実施例1に記載されたものと同様の手順を使用した。24.08グラムの針状TiO2(FTL−110,Ishihara Corporation,USA)を、135.92グラムの無水DMACと組み合わせ、そしてスラリーを高剪断下で混合した。
【0126】
針状TiO2含有スラリー19.1グラムを、100.9グラムのPMDA//ODAプレポリマーと混合した。
【0127】
CTE、E’および破断点伸び率%を、実施例1の場合と同様に測定した。
【0128】
結果を表1に示す。
【0129】
比較例4
PMDA//ODA中6.5容積%(17.1重量%)針状TiO2
以下の差異を除き、実施例1に記載されたものと同様の手順を使用した。24.08グラムの針状TiO2(FTL−110,Ishihara Corporation,USA)を、135.92グラムの無水DMACと組み合わせ、そしてスラリーを高剪断下で混合した。
【0130】
針状TiO2含有スラリー23.96グラムを、96.1グラムのPMDA//ODAプレポリマーと混合した。
【0131】
CTE、E’および破断点伸び率%を、実施例1の場合と同様に測定した。
【0132】
結果を表1に示す。
【0133】
比較例5
PMDA//ODA中8.5容積%(21.6重量%)針状TiO2
以下の差異を除き、実施例1に記載されたものと同様の手順を使用した。
【0134】
24.08グラムの針状TiO2(FTL−110,Ishihara Corporation,USA)を、135.92グラムの無水DMACと組み合わせ、そしてスラリーを高剪断下で混合した。
【0135】
針状TiO2含有スラリー30.0グラムを、90.0グラムのPMDA//ODAプレポリマーと混合した。
【0136】
CTE、E’および破断点伸び率%を、実施例1の場合と同様に測定した。
【0137】
結果を表1に示す。
【0138】
比較例6
PMDA//ODA中15容積%(34.3重量%)のアスペクト比3:1未満のTiO2
比較例6では、3:1未満のアスペクト比を有する充填材が、少なくとも3:1のアスペクト比を有するサブミクロン充填材を15容積%で有する実施例1と比較して、より低い貯蔵弾性率およびより高いCTEを有するフィルムを生じることを実証する。フィルムは端部が脆く、商業的な製造プロセスで実行不可能であった。
【0139】
以下の例外を除き、実施例1に記載されたものと同じ手順に従った。DuPont Light Stabilized Titania,210含有スラリー(DuPont,Wilmington Delaware,DMAC中25重量%、高剪断混合された)33.84グラムを、86.2グラムのPMDA//ODAプレポリマー(DMAC中20.6重量%)と組み合わせた。
【0140】
この物質は、PMDA溶液によって1100ポアズの粘度まで仕上げられた。
【0141】
DuPont Titania 210は、重量基準で130〜140nmの範囲が中央となる粒子分布を有する白色微粉末である。粒子は、ほぼ球状である。
【0142】
CTE、E’および破断点伸び率%を、実施例1の場合と同様に測定した。
【0143】
結果を表1に示す。
【0144】
比較例7
未充填BPDA//PPD
針状TiO2を調合物に添加しなかったことを除き、比較例8に関して記載されたものと同じ手順に従った。
【0145】
CTE、E’および破断点伸び率%を、実施例1の場合と同様に測定した。
【0146】
結果を表1に示す。
【0147】
比較例8〜9は、本開示のサブミクロン充填材が、全てのポリイミドで予測された通りに作用しないことを実証する。BPDA//PPD系の場合、約15容積%の針状TiO2が導入されると、CTEは劇的に増加する(2倍より大きい)。
【0148】
比較例8
BPDA//PPD中14.64容積%(33.7重量%)針状TiO2(FTL−110)
針状TiO2の導入によってCTEは増加した。
【0149】
BPDA//PPDプレポリマー(無水DMAC中17.5重量%溶液69.3g)を5.62gの針状TiO2(FTL−110,Ishihara Corporation,USA)と組み合わせて、得られたスラリーを24時間攪拌した。別の容器で、0.9gのPMDA(Aldrich 412287,Allentown,PA)および15mlのDMACを組み合わせることによって、ピロメリット酸無水物(PMDA)の6重量%溶液を調製した。
【0150】
PMDA溶液をプレポリマースラリーにゆっくり添加して、653ポアズの最終粘度を達成した。調合物を0℃で一晩貯蔵し、脱気した。
【0151】
25ミルドクターブレードを使用して、調合物をガラスプレートの表面上にキャストし、3インチ×4インチのフィルムを形成した。ガラス表面からのフィルムの除去を促進するために、ガラスを剥離剤で前処理した。フィルムを20分間、80℃のホットプレート上で乾燥させた。その後、フィルムを表面から持ち上げ、そして3インチ×4インチのピンフレーム上に取り付けた。
【0152】
真空下、室温で、さらに12時間乾燥した後、取り付けたフィルムを、炉(Thermolyne、F6000箱形炉)に置いた。炉を窒素でパージして、以下の温度プロトコルに従って加熱した。
・125℃(30分)
・125℃〜350℃(4℃/分で昇温)
・350℃(30分)
・350℃〜450℃(5℃/分で昇温)
・450℃(20分)
・450℃〜40℃(8℃/分で冷却)
【0153】
CTE、E’および破断点伸び率%を、実施例1の場合と同様に測定した。
【0154】
結果を表1に示す。
【0155】
比較例9
BPDA//PPD中14.64容積%針状TiO2(FTL−110)
破断までの伸び率は非常に低い。フィルムが非常に脆いため、製造は困難である。
【0156】
以下の差異を除き、実施例1に記載されたものと同様の手順を使用した。33.99グラムの針状TiO2(FTL−110,Ishihara Corporation,USA)を、191.9グラムの無水DMACと組み合わせた。このスラリーを、正方形孔、高剪断スクリーンを備えたSilverson Model L4RT高剪断混合機(Silverson Machines,LTD,Chesham Baucks,England)を使用して(約4000rpmのブレード速度で)、高剪断下で約10〜15分間混合した。
【0157】
129.25gのBPDA//PPDプレポリマー(無水DMAC中17.5重量%溶液)を、針状TiO2含有スラリー69.335グラムと組み合わせた。得られたスラリーを24時間撹拌した。別の容器において、0.9gのPMDA(Aldrich 412287,Allentown,PA)および15mlのDMACを組み合わせて、ピロメリット酸無水物(PMDA)の6重量%溶液を調製した。
【0158】
PMDA溶液をプレポリマースラリーにゆっくり添加し、998ポアズの最終粘度を達成した。
【0159】
化学的イミド化の後、フィルムをガラス表面から持ち上げ、そして3インチ×4インチのピンフレーム上に取り付けた。取り付けたフィルムを、炉(Thermolyne、F6000箱形炉)に置いた。炉を窒素パージして、以下の温度プロトコルに従って加熱した。
125℃(30分)
125℃〜350℃(4℃/分で昇温)
350℃(30分)
350℃〜450℃(5℃/分で昇温)
450℃(20分)
450℃〜40℃(8℃/分で冷却)
【0160】
CTE、E’および破断点伸び率%を、実施例1の場合と同様に測定した。
【0161】
結果を表1に示す。
【0162】
比較例10
未充填PMDA//ODA
PMDAおよびODAのプレポリマー(DMAC中約20.6%で調製した。粘度約50ポアズ)180g部分3つを、26gのDMACの添加によって、18%ポリマー固体まで希釈し、希釈ポリマー206g部分3つを得た。これらの3つの希釈プレポリマー試料の1つを、強力に混合しながらDMAC中6重量%PMDA溶液を段階的に添加することによって、約2100ポアズの粘度(#LV5スピンドルを備えたBrookfield DV−II+粘度計)まで反応させ(「仕上げ」)、分子量を増加させた(以下、「仕上げポリマー」と呼ぶ)。溶液をポリプロピレンスクリーンフィルターディスク(45ミクロン)を通して加圧濾過した後、溶液を真空下で脱気し、気泡を除去して、次いで、この溶液をレターサイズの透明なポリエステルフィルム(厚さ約3ミル)のシート上にキャストした。その後、ポリエステルシート上のポリアミド酸コーティングを、無水酢酸および3−ピコリンの容積比1/1の混合物を含有する浴に浸漬した。約2分後、部分的にイミド化されたコーティングがポリエステルシートから分離し始めたら、これを浴から取り出し、約8インチ×8インチのピンフレーム上にピンでとめ、そして約10〜20分間、研究室フード中、室温で静置した。次に、ピンフレーム上のフィルムを、窒素パージしたオーブン中に置き、そして30分間、約40℃でパージした後、このオーブンを70分間かけて320℃まで昇温させ、この温度で30分間保持し、次いで、約16分間かけて450℃まで昇温させ、そしてこの温度で4分間保持して、ポリイミドに硬化した。冷却後、得られた2.4ミル(61ミクロン)のフィルムをオーブンおよびピンフレームから取り外した。
【0163】
動的機械分析(TA Instruments、DMA−2980、5℃/分)による貯蔵弾性率(E’)は、5℃/分で室温から500℃まで加熱することによって測定した。
【0164】
熱機械分析(TA Instruments、TMA−2940、10℃/分で460℃まで加熱、次に冷却し、500℃まで再加熱)による熱膨張係数(CTE)は、再加熱時50〜350℃の間で評価した。
【0165】
引張伸び率%(Instronモデル3345張力試験機)−試料幅0.5インチ、ゲージ長さ1インチ(2.54センチメートル)、クロスヘッド速度1インチ(2.54センチメートル)/分。
【0166】
結果を表1に示す。
【0167】
比較例11
PMDA//ODA中5.4容積%(10重量%)タルク
比較例11は、タルクが約5.5容積%未満である場合、予測通りに作用しないことを実証する。
【0168】
比較例10と同様の方法で、PMDAおよびODAのプレポリマー(DMAC中約20.6%で調製した。粘度約50ポアズ)1部分を、DMACの添加によって、18%ポリマー固体まで希釈した。次いで、プレポリマーをThinky ARE−250遠心混合機中で数分間、SF310タルクとブレンドし、PAA溶液中の充填材の分散体を得、PIフィルム中約10重量%の充填量を達成した。仕上げ、濾過、キャスティングおよび硬化は、比較例10に記載されるものと同様であった。1ミル(25ミクロン)のフィルムが製造された。
【0169】
CTE、E’および破断点伸び率%を、比較例10の場合と同様に測定した。
【0170】
結果を表1に示す。
【0171】
実施例5〜9は、タルクが約5.5容積%より高い場合、破断まで適切な伸び率を維持しながら、貯蔵弾性率が有意に増加し、CTEが低下することを実証する。
【0172】
実施例5
PMDA//ODA中14.0容積%(24重量%)タルク
以下の例外を除き、実施例1に記載されたものと同じ手順に従った。25グラムのタルク(Flextalc 610,Kish Company,Inc.,Mentor,OH)を、141グラムの無水DMACと高剪断下で混合した。
【0173】
55.9グラムのこのスラリーを、134.7グラムのPMDA//ODAプレポリマーと混合した。
【0174】
CTE、E’および破断点伸び率%を、実施例1の場合と同様に測定した。
【0175】
結果を表1に示す。
【0176】
実施例6
PMDA//ODA中18容積%(30重量%)タルク
比較例11と同様の方法で、比較例10からの希釈プレポリマーの第2の206g部分を、14.77gのFlextalc 610(Lot M1085、Kish Co.,Mentor,OH)とブレンドした。仕上げ、濾過、キャスティングおよび硬化は、比較例10に記載されるものと同様であった。充填材の充填量は、ポリイミドフィルム中約30重量%であった。3.2ミル(81ミクロン)のフィルムが製造された。
【0177】
CTE、E’および破断点伸び率%を、比較例10の場合と同様に測定した。
【0178】
結果を表1に示す。
【0179】
実施例7
PMDA//ODA中18.1容積%(30重量%)タルク
比較例11と同様の方法で、比較例10からの希釈プレポリマーの第3の206g部分を、14.77gのSF310タルク(Kish Co.,Mentor,OH)とブレンドした。仕上げ、濾過、キャスティングおよび硬化は、比較例10に記載されるものと同様であった。充填材の充填量は、ポリイミドフィルム中約30重量%であった。3.2ミル(81ミクロン)のフィルムが製造された。
【0180】
CTE、E’および破断点伸び率%を、比較例10の場合と同様に測定した。
【0181】
結果を表1に示す。
【0182】
実施例8
PMDA//ODA中34容積%(50重量%)タルク
比較例11と同様の方法で、PMDA//ODAプレポリマーをSF310タルクとブレンドし、PIフィルム中約50重量%の充填量を達成した。仕上げ、濾過、キャスティングおよび硬化は、比較例10に記載されるものと同様であった。充填材の充填量は、ポリイミドフィルム中約50重量%であった。1.8ミル(46ミクロン)のフィルムが製造された。
【0183】
CTE、E’および破断点伸び率%を、比較例10の場合と同様に測定した。
【0184】
結果を表1に示す。
【0185】
実施例9
PMDA//ODA中43.6容積%(60重量%)タルク
比較例11と同様の方法で、PMDA//ODAプレポリマーをSF310タルクとブレンドし、PIフィルム中約60重量%の充填量を達成した。仕上げ、濾過、キャスティングおよび硬化は、比較例10に記載されるものと同様であった。1.3ミル(33ミクロン)のフィルムが製造された。
【0186】
CTE、E’および破断点伸び率%を、比較例10の場合と同様に測定した。
【0187】
結果を表1に示す。
【0188】
実施例10〜11は、本開示のサブミクロン充填材がポリイミドコポリマー中10容積%より高い場合、比較例13の未充填のコポリマーと比較して、貯蔵弾性率が有意に増加し、CTEが低下することを実証する。
【0189】
実施例10
PMDA//ODA/PPD 100//70/30のランダムコポリマー中18.1容積%(30重量%)タルク
比較例11と同様の方法で、比較例13からのプレポリマー186.87g部分を、13.13gのFlextalc 610(Lot M6734、Kish Co.,Mentor,OH)とブレンドした。仕上げ、濾過、キャスティングおよび硬化は、比較例10に記載されるものと同様であった。充填材の充填量は、ポリイミドフィルム中約30重量%であった。2.2ミル(56ミクロン)のフィルムが製造された。
【0190】
CTE、E’および破断点伸び率%を、比較例10の場合と同様に測定した。
【0191】
結果を表1に示す。
【0192】
実施例11
PMDA//ODA/PPD 100//70/30のランダムコポリマー中12.6容積%(30重量%)針状TiO2
比較例11と同様の方法で、比較例13からのプレポリマー173g部分を、DMAC中の針状TiO2(Ishihara Corp.(USA)からのFTL−110粉末)の粉砕/分散された45重量%スラリー27gとブレンドした。仕上げ、濾過、キャスティングおよび硬化は、比較例10に記載されるものと同様であった。充填材の充填量は、ポリイミドフィルム中約30重量%であった。1.1ミル(28ミクロン)のフィルムが製造された。
【0193】
CTE、E’および破断点伸び率%を、比較例10の場合と同様に測定した。
【0194】
結果を表1に示す。
【0195】
比較例12
PMDA//ODA/PPD 100//70/30の未充填ランダムコポリマー
窒素パージされたグローブボックス内で1.5リットルのビーカー中、15.118gのPPD(0.1398モル)および65.318g(0.3262モル)のODAを、機械撹拌器で十分に攪拌した779.2gのDMACに添加した。室温で簡単に混合した後、温度を40℃未満に保持するように、99.612g(0.4567モル)のPMDAをゆっくり添加し、続いて、41.0gのDMACを添加して、反応を約2時間進行させた。得られたプレポリマー溶液(ジアミンに対して98%の二無水物の全化学量論量、18%ポリマー固体)を容器中にデカンテーションし、使用するまでは冷凍庫で貯蔵した。このプレポリマーの一部分を実施例Aの場合と同様に仕上げて、濾過し、次いで、比較例10と同様にフィルムをキャストし、硬化した。1.4ミル(36ミクロン)のフィルムが製造された。
【0196】
CTE、E’および破断点伸び率%を、比較例10の場合と同様に測定した。
【0197】
結果を表1に示す。
【0198】
実施例12および13は、本開示のサブミクロン充填材の混合物が、比較例10の未充填のポリイミドと比較した場合、貯蔵弾性率を有意に増加させ、CTEを低下させることを実証する。
【0199】
実施例12
PMDA//ODAポリマー中10重量%タルク、20重量%針状TiO2
PMDAおよびODAのプレポリマー(DMAC中約20.6%で調製した。粘度約50ポアズ)168.21g部分を、4.60gのSF310タルクおよび20.46gのFTL−110 TiO2(実施例11に記載の45%スラリー)と一緒にブレンドし、PIフィルム中10重量%および20重量%のそれぞれのサブミクロン充填材の充填量を達成した(合計30重量%)。仕上げ、濾過、キャスティングおよび硬化は、比較例10に記載されるものと同様であった。1.0ミル(25ミクロン)のフィルムが製造された。
【0200】
CTE、E’および破断点伸び率%を、比較例10の場合と同様に測定した。
【0201】
結果を表1に示す。
【0202】
実施例13
PMDA//ODAポリマー中20重量%タルク、10重量%針状TiO2
実施例12と同様に、PMDA//ODAプレポリマー173.13g部分を、9.45gのSF310タルクおよび10.50gのFTL−110 TiO2(実施例11に記載の45%スラリー)と一緒にブレンドし、PIフィルム中20重量%および10重量%のそれぞれのサブミクロン充填材の充填量を達成した(合計30重量%)。仕上げ、濾過、キャスティングおよび硬化は、比較例10に記載されるものと同様であった。2.2ミル(56ミクロン)のフィルムが製造された。
【0203】
CTE、E’および破断点伸び率%を、比較例10の場合と同様に測定した。
【0204】
結果を表1に示す。
【0205】
実施例14および15は、本開示のTiO2サブミクロン充填材が、CTEに関して、全てのポリイミドで同様に作用しないことを実証する。
【0206】
実施例14
PMDA//ODA/PPD 100//80/20のブロックコポリマー中11.7容積%針状TiO2(28.23重量%)
実施例14のブロックコポリマー中の高アスペクト比のTiO2は、比較例13の未充填のブロックコポリマーと比較して、CTEをほとんど維持しながら、貯蔵弾性率を有意に増加させる。
【0207】
以下の差異を除き、実施例1に記載されたものと同様の手順を使用した。プレポリマーを調製するために、1.36グラムのPPDを110.0グラムの無水DMACと組み合わせ、40℃で約20分間、穏やかに加熱しながら攪拌した。次いで、2.71グラムのPMDAをこの混合物に添加し、第1のブロックを生じさせ、これを約2.5時間、穏やかに加熱(35〜40℃)しながら、攪拌した。混合物を室温まで冷却した。
【0208】
この調合物に10.10グラムのODAを添加し、約5分間で調合物に溶解させた。次いで、その後のPMDA添加の間、温度をコントロールするために氷水浴を使用した。この混合物に10.9gのPMDAをゆっくり添加した。この調合物に追加的な15グラムのDMACを添加し、そして反応物を約90分間、穏やかに加熱(30〜35℃)しながら、攪拌した。混合物を約18時間、室温で撹拌した。
【0209】
別の容器で、20.88グラムの針状TiO2(FTL−11)を、25.52gの無水DMACおよび0.426gのSolplus D540(Lubrizol)と組み合わせ、そして8mmの球状粉砕媒体を使用して、ジャーミル中で24時間粉砕した。
【0210】
TiO2含有スラリー14.2グラムを、上記のプレポリマー調合物105.8グラムと混合した。
【0211】
以下に示す修正された加熱手順を使用した。
40℃〜125℃(4℃/分で昇温)
125℃(30分浸漬)
125℃〜350℃(4℃/分で昇温)
350℃〜350℃(30分浸漬)
350℃〜450℃(5℃/分で昇温)
450℃(20分浸漬)
【0212】
CTE、E’および破断点伸び率%を、実施例1の場合と同様に測定した。
【0213】
結果を表1に示す。
【0214】
実施例15
PMDA//ODA/PPD 100//80/20のブロックコポリマー中17.5容積%針状TiO2(38.5重量%)
15のブロックコポリマー中の高アスペクト比のTiO2は、比較例13の未充填のブロックコポリマーと比較して、移動方向でCTEをわずかに低下させるが、貯蔵弾性率を有意に増加させる。
【0215】
以下の差異を除き、実施例1に記載されたものと同様の手順を使用した。プレポリマーを調製するために、1.36グラムのPPDを113.0グラムの無水DMACと組み合わせ、40℃で約20分間、穏やかに加熱しながら攪拌した。次いで、2.71グラムのPMDAをこの混合物に添加し、第1のブロックを生じさせ、これを約2.5時間、穏やかに加熱(35〜40℃)しながら、攪拌した。混合物を室温まで冷却した。
【0216】
この調合物に10.10グラムのODAを添加し、約5分間で調合物に溶解させた。次いで、その後のPMDA添加の間、温度をコントロールするために氷水浴を使用した。この混合物に10.9gのPMDAをゆっくり添加した。この調合物に追加的な12グラムのDMACを添加し、そして反応物を約90分間、穏やかに加熱(30〜35℃)しながら、攪拌した。混合物を約18時間、室温で撹拌した。
【0217】
別の容器で、20.88グラムの針状TiO2(FTL−11)を、25.52gの無水DMACおよび0.426gのSolplus D540(Lubrizol)と組み合わせ、そして8mmの球状粉砕媒体を使用し、80rpmで回転させて、4インチ(内径)ナイロンジャーミル中で24時間粉砕した。
【0218】
TiO2含有スラリー15.34グラムを、上記のプレポリマー調合物72.0グラムと混合した。
【0219】
以下に示す修正された加熱手順を使用した。
40℃〜125℃(4℃/分で昇温)
125℃(30分浸漬)
125℃〜350℃(4℃/分で昇温)
350℃〜350℃(30分浸漬)
350℃〜450℃(5℃/分で昇温)
450℃(20分浸漬)
【0220】
CTE、E’および破断点伸び率%を、実施例1の場合と同様に測定した。
【0221】
結果を表1に示す。
【0222】
比較例13
PMDA//ODA/PPD 100//80/20の未充填ブロックコポリマー
針状TiO2スラリーを調合物に添加しなかったことを除き、実施例15に記載されたものと同様の手順を使用した。調合物の最終粘度は、1000〜1200ポアズであった。
【0223】
CTE、E’および破断点伸び率%を、実施例1の場合と同様に測定した。
【0224】
結果を表1に示す。
【0225】
実施例16
12.6容積%針状TiO2(30重量%)充填のPMDA//ODA/PPD 100//70/30ブロックコポリマー
実施例16は、本開示の針状TiO2サブミクロン充填材が、CTEに関して、全てのポリイミドで同様に作用しないことを実証する。CTEは、比較例14の未充填のブロックコポリマーと比較して、増加するが、なお望ましい範囲にある。
【0226】
比較例11と同様の方法で、比較例14からのプレポリマー173g部分を、DMAC中の針状TiO2(Ishihara Corp.(USA)からのFTL−110粉末)の粉砕/分散された45重量%スラリー27gとブレンドした。仕上げ、濾過、キャスティングおよび硬化は、比較例10に記載されるものと同様であった。充填材の充填量は、ポリイミドフィルム中約30重量%であった。3.0ミル(76ミクロン)のフィルムが製造された。
【0227】
CTE、E’および破断点伸び率%を、比較例10の場合と同様に測定した。
【0228】
結果を表1に示す。
【0229】
比較例14
PMDA//ODA/PPD 100//70/30の未充填ブロックコポリマー
窒素パージされたグローブボックス内で1.5リットルのビーカー中、15.115gのPPDを、機械撹拌器で十分に攪拌した396.7gのDMACに添加した。室温で簡単に混合した後(全てではないが、いくらかのPPDが溶解した)、温度を40℃未満に保持するように、28.962gのPMDAをゆっくり添加した。モノマーは溶解して、反応し、そしてポリアミド酸(PAA)溶液を1時間撹拌した。その後、溶液を382.3gのDMACで希釈し、次いで、65.304gのODAを添加した。この溶液を30分間撹拌し、そしてODAをPAA溶液に溶解した。その後、70.627gのPMDAをゆっくり添加し、続いて、41.0gのDMACを添加して、反応を約2時間進行させた。得られたプレポリマー溶液(ジアミンに対して98%の二無水物の全化学量論量、18%ポリマー固体)を容器中にデカンテーションし、使用するまでは冷凍庫で貯蔵した。このプレポリマーの180g部分を比較例10の場合と同様に約2200ポアズに仕上げて、濾過し、次いで、比較例10と同様にフィルムをキャストし、硬化した。得られた2.2ミル(56ミクロン)のフィルムの特性
【0230】
CTE、E’および破断点伸び率%を、比較例10の場合と同様に測定した。
【0231】
結果を表1に示す。
【0232】
実施例17〜20は、ブロックコポリマーが約5.5容積%より多いタルクを含む場合、破断まで適切な伸び率が維持されながら、貯蔵弾性率が有意に増加し、CTEが維持されることを実証する。
【0233】
実施例17
18.1容積%タルク(30重量%)充填のPMDA//ODA/PPD 100//70/30ブロックコポリマー
比較例11と同様の方法で、比較例14で調製したプレポリマー186.87g部分を、13.13gのSF−310タルク(Lot M685,Kish Co.,Mentor,OH)とブレンドした。この充填材含有PAA溶液を、比較例10に記載されるものと同様に仕上げ、約2000ポアズの粘度を得た。溶液を45ミクロンポリプロピレンスクリーンに通して加圧濾過し、真空下で脱気し、気泡を除去した。比較例10と同様に、フィルムをキャストおよび硬化した。充填材の充填量は、ポリイミドフィルム中約30重量%であった。2.6ミル(66ミクロン)のフィルムが製造された。
【0234】
CTE、E’および破断点伸び率%を、比較例10の場合と同様に測定した。
【0235】
結果を表1に示す。
【0236】
実施例18
18.1容積%タルク(30重量%)充填のPMDA//ODA/PPD 100//70/30ブロックコポリマー
比較例11と同様の方法で、比較例14からのプレポリマー186.87g部分を、13.13gのFlextalc 610(Lot M1085、Kish Co.,Mentor,OH)とブレンドした。仕上げ、濾過、キャスティングおよび硬化は、比較例10に記載されるものと同様であった。充填材の充填量は、ポリイミドフィルム中約30重量%であった。2.9ミル(74ミクロン)のフィルムが製造された。
【0237】
CTE、E’および破断点伸び率%を、比較例10の場合と同様に測定した。
【0238】
結果を表1に示す。
【0239】
実施例19
25.6容積%タルク(40重量%)充填のPMDA//ODA/PPD 100//70/30ブロックコポリマー
比較例15と同様の方法で、PMDA//ODA/PPD 100//70/30のブロックプレポリマーをSF310タルクとブレンドして、PIフィルム中約40重量%の充填量を達成した。仕上げ、濾過、キャスティングおよび硬化は、比較例10に記載されるものと同様であった。1.8ミル(46ミクロン)のフィルムが製造された。
【0240】
CTE、E’および破断点伸び率%を、比較例10の場合と同様に測定した。
【0241】
結果を表1に示す。
【0242】
実施例20
34容積%タルク(50重量%)充填のPMDA//ODA/PPD 100//70/30ブロックコポリマー
比較例14と同様の方法で、ブロックプレポリマーを、70/30のODA対PPDの比率で調製した。次いで、比較例11と同様の方法で、このプレポリマーの171.75g部分を、28.255gのSF310とブレンドして、PIフィルム中約50重量%の充填量を達成した。仕上げ、濾過、キャスティングおよび硬化は、比較例10に記載されるものと同様であった。1.5ミル(38クロン)のフィルムが製造された。
【0243】
CTE、E’および破断点伸び率%を、比較例10の場合と同様に測定した。
【0244】
結果を表1に示す。
【0245】
比較例15
5.4容積%タルク(10重量%)充填のPMDA//ODA/PPD 100//70/30ブロックコポリマー
【0246】
比較例15は、タルクが約5.5容積%未満である場合、貯蔵弾性率は有意に増加しないことを実証する。
【0247】
比較例14と同様の方法で、ブロックプレポリマーを、70/30のODA対PPDの比率で調製した。次いで、比較例11と同様の方法で、このプレポリマーの187.16g部分を、3.48gのSF310とブレンドし、PIフィルム中約10重量%の充填量を達成した。仕上げ、濾過、キャスティングおよび硬化は、比較例10に記載されるものと同様であった。1.7ミル(43クロン)のフィルムが製造された。
【0248】
CTE、E’および破断点伸び率%を、比較例10の場合と同様に測定した。
【0249】
結果を表1に示す。
【0250】
実施例21〜24は、本発明の組成物に追加的なコモノマーを含ませても、なお望ましい特性を達成する能力を例示する。
【0251】
実施例21
18.1容積%(30重量%)タルク充填のPMDA/BPDA//ODA/PPD 95/5//70/30ブロックコポリマー
比較例14と同様の方法で、393.4gのDMAC中、14.988gのPPDおよび28.720gのPMDAからプレポリマーを製造し、続いて、386.8gのDMACによって希釈し、次いで、64.758gのODA、次いで、6.796gのBPDA(これを溶解/反応させた)、次いで、64.998gのPMDAを添加し、続いて、41.0gのDMACを添加した。比較例11と同様の方法で、このプレポリマーの186.8g部分を、13.17gのSF310タルク(Lot M685,Kish Co.,Mentor,OH)とブレンドし、比較例10と同様に仕上げ、濾過し、次いで、比較例10と同様に、フィルムをキャストし、硬化した。2.0ミル(51ミクロン)のフィルムが製造された。
【0252】
CTE、E’および破断点伸び率%を、比較例10の場合と同様に測定した。
【0253】
結果を表1に示す。
【0254】
実施例22
12.6容積%(30重量%)針状TiO2充填のPMDA/BPDA//ODA/PPD 95/5//70/30ブロックコポリマー
実施例21と同様の方法で、実施例21からのプレポリマーの172.7g部分を、実施例16に記載のTiO2スラリーの27.3g部分とブレンドした。仕上げ、濾過、キャスティングおよび硬化は、比較例10に記載されるものと同様であった。充填材の充填量は、ポリイミドフィルム中約30重量%であった。2.2ミル(56ミクロン)のフィルムが製造された。
【0255】
CTE、E’および破断点伸び率%を、比較例10の場合と同様に測定した。
【0256】
結果を表1に示す。
【0257】
実施例23
18.1容積%(30重量%)タルク充填のPMDA/BPDA//ODA/PPD 75/25//70/30ブロックコポリマー
比較例14と同様の方法で、378.1gのDMAC中、14.407gのPPDおよび27.607gのPMDAからプレポリマーを製造し、続いて、401gのDMACによって希釈し、次いで、62.249gのODA、次いで、32.666gのBPDA(これを溶解/反応させた)、次いで、43.106gのPMDAを添加し、続いて、41.0gのDMACを添加した。比較例11と同様の方法で、このプレポリマーの186.8g部分を13.17gのSF310タルク(Lot M685,Kish Co.,Mentor,OH)とブレンドし、比較例10と同様に仕上げ、キャストし、硬化した。1.7ミル(43ミクロン)のフィルムが製造された。
【0258】
CTE、E’および破断点伸び率%を、比較例10の場合と同様に測定した。
【0259】
結果を表1に示す。
【0260】
実施例24
12.6容積%(30重量%)針状TiO2充填のPMDA/BPDA//ODA/PPD 75/25//70/30ブロックコポリマー
実施例23と同様の方法で、実施例23からのプレポリマーの172.7g部分を、実施例16に記載のTiO2スラリーの27.3g部分とブレンドした。仕上げ、濾過、キャスティングおよび硬化は、比較例10に記載されるものと同様であった。2.3ミル(58ミクロン)のフィルムが製造された。
【0261】
CTE、E’および破断点伸び率%を、比較例10の場合と同様に測定した。
【0262】
結果を表1に示す。
【0263】
以下の実施例は、ポリイミドフィルムの特性に及ぼす、高アスペクト比(3:1より高いアスペクト比)のプレートレット充填材に対する(アスペクト比3:1未満の)粒子の特性の影響を実証する。プレートレット充填材では、等重量充填量で、有利により高い弾性率およびより低いCTEがもたらされる。(ここで留意すべきは、粒径分析(Horiba LA−930粒径分析器)によって、これらの2つの充填材の平均粒径は有意に異なるように見えるが(プレートレットは有意により大きい)、特性に及ぼす影響は、平均粒径の差異によるものよりも、主に充填材の形状によるものであると考えられているということである)。
【0264】
比較例16
PMDA//ODA中(40重量%)アスペクト比3:1未満のAl23(粒子)
PMDAおよびODAのポリアミド酸プレポリマーの1部分(DMAC中約20.6%で調製した。粘度約50ポアズ)を、Silverson(model L4RT−A)高剪断混合器中、粒子アルミナ充填材(Martoxid MZS−1,Albermarle Corporation)とブレンドした。アルミナの量は、最終的にポリイミド中アルミナ40重量%の充填量で最終ポリイミドフィルムを生じるように選択した。次いで、このポリアミド酸を、高トルク機械混合機/攪拌ブレードによって強力に混合しながら、DMAC中6重量%PMDA溶液を段階的に添加することによって、約537ポアズの粘度(#LV5スピンドルを備えたBrookfield DV−II+粘度計)までさらに反応させた(「仕上げた」)。その後、このポリマーをガラスプレートにキャストし、そして不粘着性フィルムが得られるまで約80℃に加熱した。フィルムを慎重にガラスから剥離し、そしてピンフレーム上に置き、循環式エアオーブン中に置き、そして温度を320℃までゆっくり昇温させ、この温度で30分間保持した。次に、フィルムを320℃のオーブンから取り出し、そして400℃のエアオーブンに約5分間置いた。その後、ピンフレーム上のポリイミドフィルムをオーブンから取り出し、室温まで冷却した。次いで、フィルムをピンフレームから分離した。
【0265】
E’を比較例10の場合と同様に測定した。CTEは、試料を380℃まで加熱し、次いで冷却し、そして380℃まで再加熱し、そして再加熱時50℃〜350℃の間で評価したことを除き、比較例10と同じ機器で、そして同じ速度で測定した。
【0266】
結果を表1に示す。
【0267】
実施例25
PMDA//ODA中(40重量%)アスペクト比が3:1より大きいAl23(プレート状)。
【0268】
比較例16と同様の方法で、比較例16の粒子アルミナと同じ充填量で、PMDA//ODAプレポリマーの1部分を、プレートレット状アルミナ(Advanced Nanotechnology Limited,Australiaからの「Platyl」)とブレンドし、502ポアズのBrookfield粘度まで仕上げた。比較例16と同様に、この充填ポリマー溶液をキャストし、熱硬化した。
【0269】
E’を比較例10の場合と同様に測定した。CTEは、比較例16と同じ機器で、そして同じ速度で測定した。
【0270】
結果を表1に示す。
【0271】
ここでは、一般的な記載または実施例において上記の活性の全てが必要とされるのではなく、特定の活性の一部は必要とされなくてもよく、そして記載される活性に加えて、さらなる活性が実行されてもよいという点に留意すべきである。なおさらに、各活性が記載される順番が、必ずしも、それらが実行される順番であるというわけではない。この明細書を読んだ後、当業者は、それらの特定のニーズまたは要求に対して、どの活性を使用することができるかを決定することができるであろう。
【0272】
上記明細書において、本発明は、特定の実施形態に関して説明された。しかしながら、当業者は、以下の請求の範囲において明かにされる本発明の範囲から逸脱することなく、様々な修正および変更を実行することができることを認識する。したがって、本明細書およびいずれの図面も、限定的な意味よりもむしろ、実例と見なされるべきであり、そして全てのそのような修正は、本発明の範囲内に含まれるように意図される。
【0273】
利益、他の利点および課題に対する解決策は、特定の実施形態に関しては上記に記載されている。しかしながら、利益、利点、課題に対する解決策、および利益、利点または解決策を生じさせるか、またはより明白とさせる任意の要素が、請求の範囲のいずれか、または全ての重要な、必要な、もしくは本質的な特徴または要素として解釈されるべきではない。
【0274】
量、濃度、あるいは他の値またはパラメーターが、範囲、好ましい範囲、または高い値および低い値のリストのいずれかとして記載される場合、これは、範囲が別々に開示されるかどうかにかかわらず、任意の高い範囲限界または好ましい値と、任意の低い範囲限界または好ましい値との任意の組から形成される全ての範囲を具体的に開示するものとして理解されるべきである。数値の範囲が本明細書に列挙される場合、特に明記しない限り、その範囲は、それらの終点と、その範囲内の全ての整数および分数を含むように意図される。範囲が定義される場合、本発明の範囲が、列挙された具体的な値に限定されるようには意図されない。
【0275】
【表1】

【0276】
【表2】

【0277】
【表3】

【0278】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)第1の表面および第2の表面を有し、5〜150ミクロンの厚さを有するポリイミド層であって、
a)i)剛性ロッド二無水物、非剛性ロッド二無水物およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの芳香族二無水物成分と
ii)剛性ロッドジアミン、非剛性ロッドジアミンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの芳香族ジアミン成分と
から誘導され、ポリイミドの全二無水物成分および全ジアミン成分に基づき、二無水物のジアミンに対するモル比が、48〜52:52〜48であり、そしてXを剛性ロッド二無水物および剛性ロッドジアミンのモルパーセント、Yを非剛性ロッド二無水物および非剛性ロッドジアミンのモルパーセントとした場合のX:Y比率が、20〜80:80〜20である、ポリイミド、ならびに
b)i)少なくとも1つの寸法で、(数平均で)550ナノメートル未満であり、
ii)3:1を超えるアスペクト比を有し、
iii)全ての寸法で前記ポリイミド層の厚さ未満であり、
iv)前記ポリイミド層の10〜45容積%の量で存在する、サブミクロン充填材
を含んでなるポリイミド層と、
B)第1の表面および第2の表面を有するボンディング層であって、前記ボンディング層の第1の表面が、前記ポリイミド層の第1の表面と隣接しており、
i)前記ボンディング層の全重量に基づき、65〜100重量%の量の、ポリ(テトラフルオロエチレン−co−ペルフルオロ[アルキルビニルエーテル])、または
ii)ポリイミド接着剤
を含んでなるボンディング層
を含んでなる、ワイヤーラップ組成物。
【請求項2】
前記サブミクロン充填材が、少なくとも1つの寸法で400ナノメートル未満である、請求項1に記載のワイヤーラップ組成物。
【請求項3】
前記サブミクロン充填材が、酸化物、窒化物、炭化物およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載のワイヤーラップ組成物。
【請求項4】
前記サブミクロン充填材が、針状二酸化チタン、タルク、SiC繊維、プレート状Al23またはそれらの混合物である、請求項1に記載のワイヤーラップ組成物。
【請求項5】
a)前記芳香族二無水物成分の少なくとも70モル%がピロメリット酸二無水物であり、そして
b)前記芳香族ジアミン成分の少なくとも70モル%が4,4’−ジアミノジフェニルエーテルである、請求項1に記載のワイヤーラップ組成物。
【請求項6】
前記サブミクロン充填材が、針状二酸化チタン、タルク、SiC繊維、プレート状Al23またはそれらの混合物である、請求項5に記載のワイヤーラップ組成物。
【請求項7】
a)前記芳香族二無水物成分の少なくとも75モル%がピロメリット酸二無水物であり、そして
b)前記芳香族ジアミン成分としては、70モル%の4,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよび30モル%の1,4−ジアミノベンゼンである、請求項1に記載のワイヤーラップ組成物。
【請求項8】
前記ポリイミドがブロックコポリマーである、請求項1に記載のワイヤーラップ組成物。
【請求項9】
前記ブロックコポリマーが、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよび1,4−ジアミノベンゼンと、ピロメリット酸二無水物および3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とから誘導される、請求項8に記載のワイヤーラップ組成物。
【請求項10】
前記ブロックコポリマーが、
a)10〜40モル%の、ピロメリット酸二無水物および1,4−ジアミノベンゼンのブロックと、
b)90〜60モル%の、ピロメリット酸二無水物および4,4’−ジアミノジフェニルエーテルのブロックと
から誘導される、請求項8に記載のワイヤーラップ組成物。
【請求項11】
前記サブミクロン充填材が、針状二酸化チタン、タルク、SiC繊維、プレート状Al23またはそれらの混合物である、請求項10に記載のワイヤーラップ組成物。
【請求項12】
前記サブミクロン充填材が、カップリング剤、分散剤またはそれらの組み合わせによってコーティングされている、請求項1に記載のワイヤーラップ組成物。
【請求項13】
前記ポリイミド層の第2の表面と接触している、ポリイミド−金属(polyimide−to−metal)ボンディング層を追加的に含んでなる、請求項1に記載のワイヤーラップ組成物であって、前記ポリイミド−金属ボンディング層が、前記ポリイミド−金属ボンディング層の全重量に基づき、70〜100重量%のポリ(テトラフルオロエチレン−co−ヘキサフルオロプロピレン)を含んでなる、ワイヤーラップ組成物。
【請求項14】
前記ポリイミド層の第1の表面および前記ボンディング層の第1の表面に接触して、そしてそれらの間に、定着剤層を追加的に含んでなる、請求項1に記載のワイヤーラップ組成物であって、前記定着剤層が、前記定着剤層の全重量に基づき、70〜100重量%のポリ(テトラフルオロエチレン−co−ヘキサフルオロプロピレン)を含んでなる、ワイヤーラップ組成物。
【請求項15】
前記ボンディング層の第2の表面と接触している、ポリテトラフルオロエチレン外面層を追加的に含んでなる、請求項1に記載のワイヤーラップ組成物。
【請求項16】
前記ポリテトラフルオロエチレン外面層が、部分的または完全に焼結された、請求項15に記載のワイヤーラップ組成物。
【請求項17】
前記ポリイミドが、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよび1,4−ジアミノベンゼンと、ピロメリット酸二無水物および3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とから誘導されるランダムコポリマーである、請求項1に記載のワイヤーラップ組成物。
【請求項18】
前記ポリイミドが、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよび1,4−ジアミノベンゼンと、ピロメリット酸二無水物とから誘導されるランダムコポリマーである、請求項1に記載のワイヤーラップ組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2013−512535(P2013−512535A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540092(P2012−540092)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【国際出願番号】PCT/US2010/057434
【国際公開番号】WO2011/063238
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】