説明

ワイヤーロープ

【課題】識別性に優れるなどの機能性に富むワイヤーロープを提供する。
【解決手段】医療分野で使用されるワイヤーロープ1は、ロープ本体1Aを有し、該ロープ本体1Aは、複数(7本)の撚線2が撚られて構成され、さらに、該撚線2は、金属材料からなる素線3が複数(7本)で撚られて構成されており、前記ロープ本体1Aの前記撚線2間には、熱可塑性の樹脂材料が充填されており、該樹脂材料が該ロープ本体1Aの表面における撚線2間から露出することによって、該ロープ本体1Aの表面には、該ロープ本体1Aの軸線を中心にして螺旋状をなす樹脂材螺旋部10Aが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーロープに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、素線を複数撚り合わせてなるワイヤーロープが知られている。そのようなワイヤーロープは、例えば医療現場で使用されるガイドワイヤに使用されることもある。具体的には、医療現場で使用されるガイドワイヤにあって、使用時における視認性を向上させたものが、種々開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−17864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の構成にはワイヤーロープを適用しにくいという問題があった。すなわち、該ワイヤーロープは、複数の素線からなる撚線がさらに複数撚られて作製される構成であるため、その表面が微細で複雑な凹凸構造となる。このため、その表面に素線に沿って色を付したり視認マーカーを形成したりする作業は、極めて煩雑で面倒であり、全体として製造コストの高騰につながる。
【0005】
また、上記問題点に加え、ワイヤーロープ全体としての特性は、該ワイヤーロープを構成する素線の特性や巻回条件等によって決定されてしまうことが一般的であるが、これらに限定されることなく、様々な特性を該ワイヤーロープに簡便な手法で追加したいという要請もあった。
【0006】
そこで本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、様々な特性を容易に追加することができて機能性に優れるワイヤーロープを提供することを目的とする。また、例えば視認性を向上させるべく、簡易な手法で、その表面に異なる色を螺旋状に形成することができる構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数の素線からなる撚線が複数撚られてなるロープ本体によって構成されたワイヤーロープであって、前記ロープ本体の前記撚線間に、前記素線の材料と異なる異種材料が充填されており、前記異種材料が前記ロープ本体の表面における撚線間から露出することにより、前記ロープ本体の表面に、前記ロープ本体の軸線を中心にして螺旋状をなす異種材螺旋部が形成されていることを特徴とするワイヤーロープを提供するものである。
【0008】
さらに述べれば、上記構成にあっては、前記異種材料の色が、前記素線の表面の色と異なる構成としてもよい。
【0009】
上記構成にあっては、前記異種材料の色を適宜選定するだけで、複雑な凹凸構造のワイヤーロープ表面に、撚線の撚方向の識別性を向上させる着色部位を螺旋状に表示することが可能となる。
【0010】
また、前記異種材螺旋部の表面の摩擦抵抗と、前記素線の表面の摩擦抵抗と、が異なる構成としてもよい。
【0011】
かかる構成にあっては、前記異種材料を適宜選定するだけで、素線のみを構成要素とするワイヤーロープを基準にして表面の摩擦抵抗をより高く設定したり、より低く設定したりすることが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、簡易な手法で、様々な特性をワイヤーロープに容易に追加することができる優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ワイヤーロープの外観図
【図2】ワイヤーロープを横断する切断面を示す断面図
【図3】別形態のワイヤーロープを横断する切断面を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明にかかるワイヤーロープの実施形態を添付図面に従って説明する。
【0015】
図1,2に示すように、ワイヤーロープ1は、ロープ本体1Aを有し、該ロープ本体1Aは、複数(7本)の撚線2が撚られて構成されている。撚線2の本数は7本に限定されない。さらに、該撚線2は、金属材料からなる素線3が複数(7本)で撚られて構成されている。なお、素線3の本数は7本に限定されない。また、該素線3は中空状のものであってもよい。
【0016】
また、前記ロープ本体1Aの前記撚線2間には、樹脂材料が充填されており、該樹脂材料が該ロープ本体1Aの表面における撚線2間から露出することによって、該ロープ本体1Aの表面には、該ロープ本体1Aの軸線を中心にして螺旋状をなす樹脂材螺旋部(異種材螺旋部)10Aが形成されている。なお、前記樹脂材螺旋部10Aの表面は、ロープ本体1Aにおける撚線2のうち最外周に位置する複数の撚線2により形成される外周面よりも、内側に位置している。
【0017】
上記樹脂材螺旋部10Aの樹脂材料は、顔料や着色剤等が添加されることにより、前記素線3の表面の色と異ならせてあり、これにより該ワイヤーロープ1の表面には、撚線2の撚方向の識別性を向上させる着色部位が螺旋状に観察されることとなる。
【0018】
上記ワイヤーロープ1は、例えば、複数の撚線2を撚り合わせる際に、それらの間隙に軟化した樹脂を充填し、その後、冷却することにより製造してもよいし、撚り合わせた複数の撚線の間隙に軟化した樹脂を注入することにより製造してもよい。
【0019】
上記構成とすることにより、樹脂材螺旋部10Aを備えるワイヤーロープ1を容易に製造することができ、さらに、複雑な凹凸構造を表面に有するロープ本体1Aに、撚線方向の識別性に優れた着色部位を螺旋状に形成させることが可能となる。なお、上記樹脂材料は、熱可塑性樹脂材料が好ましく、例えばビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ナイロン系樹脂、フッ素系樹脂等が選択可能である。また、上記樹脂材料は、スチレン−ブタジエンゴムやポリイソプレンゴム等の各種ゴム材料であってもよい。
【0020】
また、以下の変形例が提案される。
すなわち、図3に示すように、前記樹脂材螺旋部10Bの表面が外向きに隆起しており、該表面が、ロープ本体1Aにおける撚線2のうち最外周に位置する複数の撚線2により形成される外周面よりも、外側に位置している構成である。このような構成であると、ワイヤーロープ1が他のものと接触した際に、該樹脂材螺旋部10Bが、素線3の表面の傷付きを防止する働きをすることとなる。
【0021】
また、上記ワイヤーロープ1にあって、前記樹脂材螺旋部10A,10Bの表面の摩擦抵抗と、前記素線3の表面の摩擦抵抗と、を異ならせた構成としてもよい。例えば、金属製の素線3に対して、例えば熱可塑性エラストマー材料からなる樹脂材螺旋部10A,10Bを構成することにより、ワイヤーロープ1表面の摩擦抵抗を金属製の素線3のみからなるワイヤーロープに比して、より大きくすることができる。また、例えばポリテトラフロロエチレン材料からなる樹脂材螺旋部10A,10Bとすることにより、ワイヤーロープ1表面の摩擦抵抗をより小さくすることができる。
【0022】
本発明は、上述した実施例に限定されることはなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で設計変更を行ったり、適宜組み合わせたりすることは勿論可能である。例えば、ワイヤーロープ1に、耐熱性能、機械的性能、成形性能、電気的性能、化学的性能、あるいは耐薬品性能を付与させたい場合には、適宜所望の樹脂材料を選択して樹脂材螺旋部10A,10Bを形成することができる。また、前記樹脂材料には、顔料、染料、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶化促進剤、難燃剤、防炎剤、撥水剤、撥油剤、防虫剤、防腐剤、ワックス類、界面活性剤、滑剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、あるいは可塑剤等が添加、混合されてもよい。また、前記樹脂材料は、単独の材料のみで構成されてもよいし、2種以上の材料を混合して構成されてもよい。
【0023】
上記したワイヤーロープ1は、特に医療用分野におけるガイドワイヤとして好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 ワイヤーロープ
1A ロープ本体
2 撚線
3 素線
10A,10B 樹脂材螺旋部(異種材螺旋部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の素線からなる撚線が複数撚られてなるロープ本体によって構成されたワイヤーロープであって、
前記ロープ本体の前記撚線間に、前記素線の材料と異なる異種材料が充填されており、前記異種材料が前記ロープ本体の表面における撚線間から露出することにより、前記ロープ本体の表面に、前記ロープ本体の軸線を中心にして螺旋状をなす異種材螺旋部が形成されている
ことを特徴とするワイヤーロープ。
【請求項2】
前記異種材料の色が、前記素線の表面の色と異なる
請求項1に記載のワイヤーロープ。
【請求項3】
前記異種材螺旋部の表面の摩擦抵抗と、前記素線の表面の摩擦抵抗と、が異なる
請求項1又は請求項2に記載のワイヤーロープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−193475(P2012−193475A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59029(P2011−59029)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(390030731)朝日インテック株式会社 (140)
【Fターム(参考)】