説明

ワイヤ操作式車両搬送装置

【課題】小型車両から大型車両までの被検車両の前輪を持ち上げて搬送することができ、X線の影になる範囲が狭く実質的に被検車両全体をX線検査することができ、移動台車に動力源が不要であり、すべての操作を地上から制御することができるワイヤ操作式車両搬送装置を提供する。
【解決手段】被検車両1の走行面11より低く両側面より外側に位置する1対の台車用通路13内に設けられた1対の走行レール12に沿ってそれぞれ独立に移動可能な1対の移動台車14にそれぞれ設けられ、被検車両1の前輪1aを持ち上げ可能で走行面より下方に退避可能な1対の前輪リフト装置16と、移動台車14の移動範囲の前方及び後方に設けられ、牽引ワイヤ19a,19bにより移動台車を牽引して走行レール12に沿って移動させるワイヤ牽引装置18と、駆動ワイヤ25a〜25d、26a〜26dにより前輪リフト装置16を駆動するワイヤ駆動装置20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を搬送しながらX線検査するためのワイヤ操作式車両搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンテナ等を運搬する車両をX線検査するX線検査装置が非特許文献1に開示され、その車両を運搬する装置が、特許文献1,2に開示されている。
【0003】
非特許文献1の「コンテナ貨物大型X線検査装置」は、コンテナの内部をコンテナをトラックの荷台に搭載したままX線検査する装置である。
【0004】
このX線検査装置において、車両運転手は、建屋の進入ヤードに入り、所定の場所でコンテナを載せた車両(コンテナ車両)を停止させ下車する。次いで、第1搬送装置が、車両の前輪部分を持ち上げ、入口遮蔽扉が開いた後、X線検査トンネル内を自動走行し、X線検査トンネル内でコンテナ車両を解放して、第1搬送装置は進入ヤードに戻る。次に、第2搬送装置が、X線検査トンネル内で車両の前輪部分を持ち上げ、退出ヤードに向かって自動走行し、その走行中にX線発生装置からX線が照射され、コンテナ車両をX線検査するようになっている。
【0005】
特許文献1の「X線検査方法」は、X線を照射する遮蔽室の下方に、台車用通路を形成し、その通路を自走する搬送台車で、車両の前輪を持ち上げて、遮蔽室を通過させるものである。
【0006】
特許文献2の「搬送装置」は、X線を照射する遮蔽室の下方には台車用通路を形成せず、車両の前方から車両の前輪を持ち上げて自走する地上牽引式搬送台車である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「コンテナ貨物大型X線検査装置」、石川島播磨技報 Vol.43 No.3 (2003−5)
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−287507号公報、「X線検査方法」
【特許文献2】特開2007−331852号公報、「搬送装置」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した従来のX線検査用の車両搬送装置は、車両の前輪を搬送する移動台車に、走行用駆動装置(モータおよび減速機)および搬送用持ち上げ装置の操作用制御の油圧ユニットや制御盤が搭載されているため、移動台車の構造が複雑であり、重量も重く、製造コストが高い問題点があった。
また、移動台車に搭載した駆動装置への電力を供給するために給電装置が必要であった。
【0010】
また、X線検査装置は、コンテナ車両のような大型車両だけでなく、乗用車や小型トラック等の小型車両も併用して検査する必要がある。しかし、コンテナ車両のような大型車両に対しては搬送装置がX線の陰にならないよう配置できるが、小型車両や中型車両では、X線の水平照射により搬送装置の一部(操作用制御の油圧ユニットや制御盤)が被検査車体に重なって投影されるため、X線の影になる範囲が検査できない問題点があった。
【0011】
本発明は、上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、小型車両から大型車両までの被検車両の前輪を持ち上げて搬送することができ、X線の垂直照射と水平照射によりX線の影になる範囲が狭く、実質的に被検車両全体をX線検査することができ、かつ車両の前輪を搬送する移動台車に動力源が不要であり、すべての操作を地上から制御することができるワイヤ操作式車両搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、被検車両を搬送しながら被検車両をX線検査するためのワイヤ操作式車両搬送装置であって、
被検車両の走行面より低く、被検車両の両側面より外側に位置し、搬送方向に水平に延びる1対の台車用通路内に設けられた1対の走行レールと、
前記走行レールに沿ってそれぞれ独立に移動可能な1対の移動台車と、
該各移動台車にそれぞれ設けられ、被検車両の前輪を持ち上げ可能であり、かつ前記走行面より下方に退避可能な1対の前輪リフト装置と、
前記移動台車の移動範囲の前方及び後方に設けられ、牽引ワイヤにより移動台車を牽引して前記走行レールに沿って移動させるワイヤ牽引装置と、
前記移動台車の移動範囲の前方及び後方に設けられ、駆動ワイヤにより前記前輪リフト装置を駆動するワイヤ駆動装置と、を備えたことを特徴とするワイヤ操作式車両搬送装置が提供される。
【0013】
本発明の実施形態によれば、前記駆動ワイヤは、揺動駆動ワイヤと昇降駆動ワイヤからなり、
前記前輪リフト装置は、鉛直軸を中心に水平に揺動可能な1対の水平フォークと、該水平フォークを被検車両の前輪に対して反対方向に揺動駆動する1対の揺動装置と、前記水平フォーク及び揺動装置を一体的に昇降する1対の昇降装置とを備え、
前記ワイヤ駆動装置は、前記揺動駆動ワイヤにより前記各揺動装置を駆動する1対の揺動駆動装置と、前記昇降駆動ワイヤにより前記各昇降装置を駆動する1対の昇降駆動装置とを備える。
【0014】
また、前記各昇降装置は、鉛直軸を中心に回転可能な昇降用ネジと、該昇降用ネジと噛合し、鉛直軸を中心に回転可能であり、外面にピニオン歯を有する昇降用ナットと、該昇降用ナットのピニオン歯と噛合し前後方向に延びる昇降用ラックとからなり、
前記各揺動装置は、前記昇降用ネジの上端部に揺動可能に設けられた揺動用ピニオンと、該揺動用ピニオンと噛合し前後方向に延びる揺動用ラックとからなり、
前記各水平フォークは、その末端が前記揺動用ピニオンに固定されている。
【発明の効果】
【0015】
上記本発明の構成によれば、小型車両から大型車両までの被検車両に対して、その走行面より低く、被検車両の両側面より外側に位置し、搬送方向に水平に延びる1対の台車用通路内に1対の走行レールを設け、1対の移動台車を、被検車両より下方に設けたので、移動台車に遮られることなく、X線を垂直照射と水平照射して被検車両全体をX線検査することができる。
また、1対の前輪リフト装置は、被検車両の前輪を持ち上げた時には走行面より上方に位置するが、X線の垂直照射又は水平照射を遮るのは水平に揺動する水平フォークの一部のみであり、実質的に被検車両全体をX線検査することができる。
【0016】
また上記本発明の構成によれば、ワイヤ牽引装置により、移動台車を牽引ワイヤにより牽引して走行レールに沿って移動させ、かつワイヤ駆動装置により、駆動ワイヤにより前輪リフト装置を駆動するので、車両の前輪を搬送する移動台車に動力源が不要であり、すべての操作を地上から制御することができる。

【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による搬送装置の側面図である。
【図2】本発明による搬送装置の平面図である。
【図3】図1の前輪リフト装置の拡大図である。
【図4】図3の前輪リフト装置の断面図である。
【図5】本発明の搬送装置の作動説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して説明する。なお各図において、共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0019】
本発明のワイヤ操作式車両搬送装置は、X線の垂直照射と水平照射によりX線検査する被検車両の前輪を持ち上げて前方に搬送する搬送装置である。
以下、本発明のワイヤ操作式車両搬送装置を単に「搬送装置」と略称する。
【0020】
図1は、本発明による搬送装置の側面図であり、図2は本発明による搬送装置の平面図である。
図1、図2において、本発明の搬送装置10は、走行レール12、移動台車14、前輪リフト装置16、ワイヤ牽引装置18、及びワイヤ駆動装置20を備える。
【0021】
図1において、1は被検車両であり、コンテナ車両のような大型車両を示している。なお、被検車両1は、大型車両に限定されず、乗用車や小型トラック等の小型車両であってもよい。これらの被検車両1は水平な走行面11の上を自走するようになっている。
【0022】
また図2に示すように、走行面11の両側に、走行面11より低い1対の台車用通路13が設けられている。台車用通路13は、被検車両1の走行面11より低く、被検車両1の前輪1aの外側に位置し、搬送方向に水平に延びる底面を有する。
走行面11と台車用通路13の底面との段差は、移動台車14の上部が走行面11より上方に突出しない高さに設定されている。
【0023】
なお、走行面11は、この例では、既設の水平面上に走行部11aを盛り上げて設けている。しかし、本発明はこれに限定されず、逆に既設の走行面11に台車用通路13を追加工してもよい。
【0024】
1対の走行レール12は、上述した1対の台車用通路13内にそれぞれ設けられ搬送方向に水平に延びる。
【0025】
1対の移動台車14は、各走行レール12に沿ってそれぞれ独立に設けられ、被検車両1の走行面11より下方に位置し、走行レール12に沿ってそれぞれ独立に移動可能に構成されている。なおこの図で、14aは台車本体である。
【0026】
1対の前輪リフト装置16は、各移動台車14にそれぞれ設けられ、被検車両1の前輪1aを持ち上げ可能であり、かつ走行面11より下方に退避可能に構成されている。
【0027】
図1、図2において、各前輪リフト装置16は、1対の水平フォーク16a、1対の揺動装置16b、及び1対の昇降装置16cを備える。
1対の水平フォーク16aは、鉛直軸を中心に水平に揺動可能に構成されている。また、1対の揺動装置16bは、水平フォーク16aを被検車両1の前輪1aに対して反対方向に揺動駆動するようになっている。さらに、1対の昇降装置16cは、水平フォーク16a及び揺動装置16bを一体的に昇降するようになっている。
【0028】
図2において、水平フォーク16aは、移動台車14上に鉛直軸を中心に水平に揺動可能に構成されている。搬送する車両1の前輪1aは、水平フォーク16aが走行面11側に揺動する位置に近接して停止する。また1対の移動台車14は、門型フレーム14b(図1参照)により互い結合されている。
【0029】
ワイヤ牽引装置18は、移動台車14の移動範囲の前方及び後方に設けられ、牽引ワイヤ19a,19bにより移動台車14を牽引して走行レール12に沿って移動させるようになっている。
【0030】
図1、図2において、ワイヤ牽引装置18は、各移動台車14の移動範囲の前方及び後方にそれぞれ設けられた前方牽引巻取装置18aと後方牽引巻取装置18bとからなる。
前方牽引巻取装置18aは、移動台車14(すなわち台車本体14a)の前端近傍に一端が固定された牽引ワイヤ19aを巻き取ることにより、移動台車14を牽引して走行レール12に沿って前方(図で矢印方向)へ移動させるようになっている。
また、後方牽引巻取装置18bは、移動台車14(すなわち台車本体14a)の後端近傍に一端が固定された牽引ワイヤ19bを巻き取ることにより、移動台車14を牽引して走行レール12に沿って後方(図で矢印の反対方向)へ移動させるようになっている。
前方牽引巻取装置18aと後方牽引巻取装置18bは、この例では、巻取リールとこれを回転駆動する駆動モータ(例えば減速器付モータ)からなる。
【0031】
すなわち移動台車14(台車本体14a)に牽引ワイヤ19a,19bが結合し、始端と終端が張力を張って巻取リールに巻き付けられている。両端の巻取リールは駆動モータで駆動される。この駆動モータは地上に固定されている。
【0032】
ワイヤ駆動装置20は、移動台車14の移動範囲の前方及び後方に設けられ、駆動ワイヤ25a〜25d、26a〜26dにより前輪リフト装置16を駆動するようになっている。駆動ワイヤ25a〜25d、26a〜26dは、後述する揺動駆動ワイヤ25a〜25dと昇降駆動ワイヤ26a〜26dからなる。
【0033】
図1、図2において、ワイヤ駆動装置20は、1対の揺動駆動装置21、22と1対の昇降駆動装置23、24を備える。
【0034】
1対の揺動駆動装置21、22は、各移動台車14の移動範囲の前方及び後方にそれぞれ設けられた左フォーク揺動駆動装置21a,21bと右フォーク揺動駆動装置22a,22bとからなり、揺動駆動ワイヤ25a〜25dにより各揺動装置16bを駆動する。
【0035】
1対の昇降駆動装置23、24は、各移動台車14の移動範囲の前方及び後方にそれぞれ設けられた左フォーク昇降駆動装置23a,23bと右フォーク昇降駆動装置24a,24bとからなり、昇降駆動ワイヤ26a〜26dにより各昇降装置昇降装置16cを駆動する。
【0036】
左フォーク揺動駆動装置21a,21bと右フォーク揺動駆動装置22a,22b、及び左フォーク昇降駆動装置23a,23bと右フォーク昇降駆動装置24a,24bは、それぞれ巻取リールとこれを回転駆動する駆動モータからなる。
また、各巻取リールは、上述した前方牽引巻取装置18a及び後方牽引巻取装置18bと同一であることが好ましい。
【0037】
図3は、図1の前輪リフト装置16の拡大図であり、図4は前輪リフト装置16の断面図である。
【0038】
図3、図4において、昇降装置16cは、昇降用ネジ31、昇降用ナット33、及び昇降用ラック34からなる。
昇降用ネジ31は、鉛直軸を中心に回転可能に支持されている。
昇降用ナット33は、移動台車14の本体に取り付けられた軸受31aにより、回転可能に支持され、その内面が昇降用ネジ31と噛合する。また、昇降用ナット33には外面にピニオン歯が設けられている。
昇降用ラック34は、昇降用ナット33のピニオン歯と噛合し、移動台車14の前後方向に延び、前後方向に移動可能に構成されている。
昇降用ラック34の前端近傍及び後端近傍には、上述した昇降駆動ワイヤ26a,26c、及び昇降駆動ワイヤ26b,26dの一端がそれぞれ固定され、昇降駆動ワイヤワイヤ26a〜26dにより、昇降用ラック34を前後方向に移動させるようになっている。
【0039】
上述した昇降装置16cの構成により、移動台車14が停止している時に、昇降駆動ワイヤ26a〜26dにより、昇降用ラック34を前後方向に移動させることにより、昇降用ネジ31を回転させて、昇降部材32を昇降させることができる。
【0040】
図3、図4において、揺動装置16bは、揺動用ピニオン35と揺動用ラック36からなる。
揺動用ピニオン35は、昇降用ネジ31の上端部(昇降部材32)に揺動可能に設けられ、かつそのまわりに軸受35aにより揺動可能に構成されている。また、揺動用ピニオン35には外面にピニオン歯が設けられている。
揺動用ラック36は、揺動用ピニオン35のピニオン歯と噛合し、移動台車14の前後方向に延び、前後方向に移動可能に構成されている。
また、各水平フォーク16aは、その末端が揺動用ピニオン35に固定されている。
【0041】
上述した揺動装置16bの構成により、移動台車14が停止している時に、揺動駆動ワイヤ25a〜25dにより、揺動用ラック36を前後方向に移動させることにより、揺動用ピニオン35を回転させて、これに固定された各水平フォーク16aを旋回させることができる。
【0042】
上述したように、図4において、移動台車14には水平フォーク16aを回転させる旋回軸(揺動用ピニオン35)があり、揺動用ピニオン35に水平フォーク16aの末端が固定されている。前後の水平フォーク16aは車両1の前輪1aを前後からはさむように旋回する。揺動用ピニオン35の少なくとも90度以上にピニオン歯がある。このピニオン歯と揺動用ラック36が噛み合っている。揺動用ラック36は図示しないガイドで水平に支持されている。揺動駆動ワイヤ25a〜25dが揺動用ラック36につながり、始端終端が巻取リールに巻かれ、駆動モータで駆動できるようになっている。揺動用ラック36の図で左側と右側にそれぞれ独立に揺動駆動ワイヤ25a〜25dがつながれて独立に駆動モータで駆動される。
【0043】
移動台車14が走行レール12上を車輪15で走行するときは牽引ワイヤ19a,19bで牽引されて走行する。この際、揺動用ピニオン35も同時に移動するので揺動用ラック36につながっている駆動モータも同期して回転し同一移動量を移動することで移動台車14と水平フォーク16aの相対位置が保たれるようになっている。
車両1を持ち上げるときは移動台車14が停止しているので、揺動用ラック36が駆動されて水平フォーク16aを旋回し、前輪1aを前後からつかむ。一方移動終端で車両1を受け渡すときは移動台車14が停止するので、揺動用ラック36により水平フォーク16aを開いて車両1を放すように旋回用のモータが回転する。左右に分かれた移動台車14は門型フレーム14bでフレームにかかる重量の転倒モーメントを受けるように構成されている。
【0044】
図4の昇降用ネジ31は各移動台車14に2本ずつあり、それぞれ前方と後方の水平フォーク16aをそれぞれ独立に支持する。この昇降用ネジ31に昇降用ナット33が噛み合っており、昇降用ナット33は軸受31aで移動台車14に支持されている。この構成により、昇降用ナット33を回転すると昇降用ネジ31が上下方向に昇降をする。
【0045】
この昇降用ナット33の外周にはピニオン歯が設けられおり、このピニオン歯に昇降用ラック34が噛み合っている。また、この昇降用ラック34は図示しないガイドで水平に支持されている。昇降駆動ワイヤ26a〜26dで昇降用ラック34の両端を結合し、昇降駆動ワイヤ26a〜26dの巻取リールとつながっていて駆動モータによって張力がかかっている。昇降駆動ワイヤ26a〜26dは牽引ワイヤ19a,19bと同期して移動するように駆動モータが制御されている。牽引ワイヤ19a,19bが停止して移動台車14が停止すると、水平フォーク16aの上下作動が行われる。このときは上下作動に必要な回転数をそれぞれの昇降駆動ワイヤ26a〜26dの駆動モータに指令して、昇降作業を行い、また、走行が始まると、走行速度と同期して昇降駆動ワイヤ26a〜26dが移動するよう制御されるので、水平フォーク16aの昇降位置が変化することはないよう保つことができる。
【0046】
図5は、上述した本発明の搬送装置10の作動説明図である。
この図において、2は水平X線発生装置、3はコリメータ、4は水平X線検出器、5は垂直X線発生装置、6はコリメータ、7は垂直X線検出器である。
【0047】
本発明では、従来の搬送装置の欠点を回避するために、被検車両1の走行面11を搬送装置10の移動台車14より上方に配置し、前輪リフト装置16を被検車両1の両側面より外側に配置している。
従って、この構成により水平方向の検査において移動台車14及び前輪リフト装置16が被検車両1の陰にならない。また垂直方向に対しては前輪リフト装置16が地上にあり、かつ被検車両1の両側面より外側に位置しているので垂直のX線をさえぎる構造物がない。これにより、X線の垂直照射と水平照射において、陰になるのは前輪リフト装置16の水平フォーク16aだけになり、被検車両1のほぼ100%が検査可能となる。
【0048】
上述した本発明の搬送装置10は、以下の特徴を有する。
(1) 牽引ワイヤ19a,19bを牽引し、移動台車14を往復動させる。また、車両搬送用の水平フォーク16aを別の揺動駆動ワイヤ25a〜25d、26a〜26dで操作できるように構成した前輪リフト装置16を備えている。
(2) 水平フォーク16aの旋回用に専用の揺動駆動ワイヤ25a〜25dを有し、また水平フォーク16aの昇降操作に専用の昇降駆動ワイヤ26a〜26dを有する。さらにそれぞれのワイヤ25a〜26dを独立に駆動する駆動装置21a〜24bを備え、これらを移動台車14の両側に備えている。
【0049】
(3) 水平フォーク16aの揺動駆動ワイヤ25a〜25dの始端終端にそれぞれ巻取リールを用い、それぞれ駆動モータで駆動できるように構成し、互いに各ワイヤ25a〜25dに張力をかけるように構成する。
牽引ワイヤ19a,19bも同様に始端終端に駆動モータを配置し、巻取リールで張力のかかるように構成する。
牽引ワイヤ19a,19bと揺動駆動ワイヤ25a〜25dは、移動台車14が走行するときは完全に同期して移動し、移動台車14が停車したときに、フォーク旋回用のモータを旋回角度分追加回転して、水平フォーク16aを操作する。
【0050】
(4) 昇降駆動ワイヤ26a〜26dを始端終端にそれぞれ巻取リールを用い、それぞれ駆動モータで駆動できるように構成し、互いにワイヤ26a〜26dに張力をかけるように構成する。
牽引ワイヤ19a,19bも同様に始端終端に駆動モータを配置し、巻取リールで張力のかかるように構成する。
牽引ワイヤ19a,19bと昇降駆動ワイヤ26a〜26dは、移動台車14が走行するときは完全に同期して移動し、移動台車14が停車したときに、フォーク昇降用のモータを昇降分追加回転して、水平フォーク16aの昇降を操作する。
【0051】
上述した本発明の構成によれば、ワイヤ牽引装置18により、移動台車14を牽引ワイヤ19a,19bにより牽引して走行レール12に沿って移動させ、かつワイヤ駆動装置20により、駆動ワイヤ25a〜25d、26a〜26dにより前輪リフト装置16を駆動するので、車両1の前輪1aを搬送する移動台車14に動力源が不要であり、すべての操作を地上から制御することができる。
【0052】
従って上述した本発明の搬送装置10は、以下のメリットを有する。
移動台車14には駆動装置や電源を必要とするモータ類、油圧源が搭載されない。従って、集電トロリー設備を無くすことができる。
複雑な制御装置やコンピュータを移動台車14に搭載しないので、移動台車14との信号のやり取りを無くすことができる。
制御装置や駆動装置はすべて地上に設置するので、コストが低く、故障しにくく、故障の保守も容易にできる。
【0053】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々に変更することができることは勿論である。例えば、ワイヤをチェーンやスチールベルトに置き換えることもできる。また、モータを片側だけでワイヤを循環ループに構成することもできる。また、ワイヤを電線と共用して、別途動力を送ったり、センサーの信号を取り出すなどの応用もできる。
【符号の説明】
【0054】
1 被検車両(小型車両、大型車両)、1a 前輪、
2 水平X線発生装置、3 コリメータ、4 水平X線検出器、
5 垂直X線発生装置、6 コリメータ、7 垂直X線検出器、
10 ワイヤ牽引式車両搬送装置(搬送装置)、
11 走行面、11a 走行部、12 走行レール、13 台車用通路、
14 移動台車、14a 台車本体、14b 門型フレーム、
15 車輪、16 前輪リフト装置、16a 水平フォーク、
16b 揺動装置、16c 昇降装置、18 ワイヤ牽引装置、
18a 前方牽引巻取装置、18b 後方牽引巻取装置、
19a,19b 牽引ワイヤ、20 ワイヤ駆動装置、
21 揺動駆動装置、21a,21b 左フォーク揺動駆動装置、
22 揺動駆動装置、22a,22b 右フォーク揺動駆動装置、
23 昇降駆動装置、23a,23b 左フォーク昇降駆動装置、
24 昇降駆動装置、24a,24b 右フォーク昇降駆動装置、
25a〜25d 揺動駆動ワイヤ、26a〜26d 昇降駆動ワイヤ、
31 昇降用ネジ、31a 軸受、32 昇降部材、
33 昇降用ナット、34 昇降用ラック、
35 揺動用ピニオン、35a 軸受、36 揺動用ラック


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検車両を搬送しながら被検車両をX線検査するためのワイヤ操作式車両搬送装置であって、
被検車両の走行面より低く、被検車両の両側面より外側に位置し、搬送方向に水平に延びる1対の台車用通路内に設けられた1対の走行レールと、
前記走行レールに沿ってそれぞれ独立に移動可能な1対の移動台車と、
該各移動台車にそれぞれ設けられ、被検車両の前輪を持ち上げ可能であり、かつ前記走行面より下方に退避可能な1対の前輪リフト装置と、
前記移動台車の移動範囲の前方及び後方に設けられ、牽引ワイヤにより移動台車を牽引して前記走行レールに沿って移動させるワイヤ牽引装置と、
前記移動台車の移動範囲の前方及び後方に設けられ、駆動ワイヤにより前記前輪リフト装置を駆動するワイヤ駆動装置と、を備えたことを特徴とするワイヤ操作式車両搬送装置。
【請求項2】
前記駆動ワイヤは、揺動駆動ワイヤと昇降駆動ワイヤからなり、
前記前輪リフト装置は、鉛直軸を中心に水平に揺動可能な1対の水平フォークと、該水平フォークを被検車両の前輪に対して反対方向に揺動駆動する1対の揺動装置と、前記水平フォーク及び揺動装置を一体的に昇降する1対の昇降装置とを備え、
前記ワイヤ駆動装置は、前記揺動駆動ワイヤにより前記各揺動装置を駆動する1対の揺動駆動装置と、前記昇降駆動ワイヤにより前記各昇降装置を駆動する1対の昇降駆動装置とを備える、ことを特徴とする請求項1に記載のワイヤ操作式車両搬送装置。
【請求項3】
前記各昇降装置は、鉛直軸を中心に回転可能な昇降用ネジと、該昇降用ネジと噛合し、鉛直軸を中心に回転可能であり、外面にピニオン歯を有する昇降用ナットと、該昇降用ナットのピニオン歯と噛合し前後方向に延びる昇降用ラックとからなり、
前記各揺動装置は、前記昇降用ネジの上端部に揺動可能に設けられた揺動用ピニオンと、該揺動用ピニオンと噛合し前後方向に延びる揺動用ラックとからなり、
前記各水平フォークは、その末端が前記揺動用ピニオンに固定されている、ことを特徴とする請求項2に記載のワイヤ操作式車両搬送装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−35983(P2012−35983A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179100(P2010−179100)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【出願人】(000198318)株式会社IHI検査計測 (132)
【Fターム(参考)】