ワキシング装置、紡績ユニット及び紡績機
【課題】紡績糸に対するワックスの付与量の調整作業を容易にするワキシング装置、紡績ユニット、及び紡績機を提供することを目的とする。
【解決手段】ワキシング装置100は、走行する紡績糸10にワックスを付与するためのワックス成形体Wを保持する回転軸101と、回転軸101に保持されたワックス成形体Wを当接させて、紡績糸10に対するワックス成形体Wの位置決めを行うワックスピン113と、ワックスピン113をワックス成形体Wへの進退方向に移動可能に支持するベース105と、ベースに対してワックスピン113をワックス成形体Wから離れる方向に付勢する圧縮バネ119と、圧縮バネ119で付勢されたワックスピン113とベース105とで挟み込まれて着脱可能に保持され、ベース105に対するワックスピン113の位置を決定するスペーサユニット120と、を備える。
【解決手段】ワキシング装置100は、走行する紡績糸10にワックスを付与するためのワックス成形体Wを保持する回転軸101と、回転軸101に保持されたワックス成形体Wを当接させて、紡績糸10に対するワックス成形体Wの位置決めを行うワックスピン113と、ワックスピン113をワックス成形体Wへの進退方向に移動可能に支持するベース105と、ベースに対してワックスピン113をワックス成形体Wから離れる方向に付勢する圧縮バネ119と、圧縮バネ119で付勢されたワックスピン113とベース105とで挟み込まれて着脱可能に保持され、ベース105に対するワックスピン113の位置を決定するスペーサユニット120と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワキシング装置、紡績ユニット及び紡績機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、下記特許文献1に記載のワキシング装置が知られている。このワキシング装置は、走行する糸に円筒形状のワックスの端面が接触するように配置される。そして、糸を走行させワックスを回転させることで、走行する糸とワックスの端面とが接触し、糸にワックスが付与される。このとき、ワックスは、回転軸線方向に上記端面側に向けて付勢されており、前方に配置されたスペーサの先端に突き当てられることで、ワックスの端面が位置決めされる。この構造により、ワックスの端面と糸との接触状態が決定され、糸に対するワックスの付与量が決定される。
【0003】
また、糸に対するワックスの付与量を変更する場合には、スペーサ本体が被せられるネジ頭部とスペーサ本体との間に調整板を複数枚挟み込むようにし、調整板の枚数を変更することによってスペーサ先端の位置を上記回転軸方向にずらす。これにより、ワックスの端面の位置が回転軸線方向に移動し、ワックスの端面と糸との接触状態が変更される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−290872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この装置において上記調整板を着脱する作業は、スペーサが設けられたカバーを外し、複数のスペーサ本体を外して調整板を挟み込むといったように、手間が大きい。この事情に鑑み、本発明は、紡績糸に対するワックスの付与量の調整作業を容易にするワキシング装置、紡績ユニット、及び紡績機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のワキシング装置は、走行する紡績糸にワックスを付与するためのワックス成形体を保持するワックス保持部と、ワックス保持部に保持されたワックス成形体に当接して、紡績糸に対するワックス成形体の位置決めを行うワックス当接部と、ワックス当接部を移動可能に支持する支持部と、支持部に対してワックス当接部を付勢する付勢部材と、付勢部材で付勢されたワックス当接部と支持部とによって着脱可能に保持され、支持部に対するワックス当接部の位置を決定する位置決定部材と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
このワキシング装置では、ワックス当接部がワックス成形体に当接することで、ワックス成形体が位置決めされ、位置決定部材によってワックス当接部の支持部に対する位置が決定される。ワックス当接部は付勢部材によって付勢されており、位置決定部材は付勢されたワックス当接部と支持部とで保持される。このように、位置決定部材を、付勢されたワックス当接部と支持部とで保持し着脱可能としたので、ネジ等を用いて位置決定部材を固定する必要がない。従って、位置決定部材の着脱作業が容易であり、ワックス成形体の位置の調整作業を容易に行うことができ、その結果、糸に対するワックスの付与量の調整作業が容易になる。
【0008】
また、ワックス当接部は、ワックス成形体に当接する第1の端部と、ワックス成形体から遠い側の他の端部である第2の端部とを有し、第2の端部には、付勢部材による付勢力が付与されていることとしてもよい。この構成によれば、第2の端部への付勢力によってワックス当接部が適正な方向に付勢され、ワックス当接部の位置精度が向上する。
【0009】
また、ワックス当接部は、第1の端部から第2の端部まで延在する円筒形状の接続部を有しており、第2の端部は、接続部から径方向に突出し付勢部材による付勢力を受ける少なくとも3つのツメ部を有することとしてもよい。この構成によれば、付勢部材の付勢力が接続部の円周方向においてワックス当接部に伝達される。
【0010】
また、本発明のワキシング装置は、 ワックス成形体のワックス当接部側の面に紡績糸が接触して走行するように紡績糸を案内する紡績糸案内部を更に備え、第1の端部は、ワックス成形体に対する進退方向に平行な視線で見て略円形状に形成され、円周方向に配列されワックス成形体に向けて突出する3つの凸部を有していることとしてもよい。この構成によれば、紡績糸は、凸部を避けた糸道を通過しながらワックス成形体のワックス当接部側の面に接触する。ワックス当接部側の面は3つの凸部で安定的に位置固定されるので、紡績糸に対し安定的にワックスが付与される。また、例えば、糸切れ又は糸切断後において上記の糸道に紡績糸を再挿入する際にも、凸部が3つであるので紡績糸の挿入経路を確保し易い。
【0011】
また、第1の端部には、支持部に対するワックス当接部の円周方向への回転を阻止する回転阻止手段が設けられていることとしてもよい。この構成によれば、ワックス成形体を上記円周方向に回転させながら紡績糸に接触させる場合に、ワックス当接部がワックス成形体の回転に引き摺られることが避けられ、紡績糸に対してワックスを安定して付与することができる。
【0012】
また、位置決定部材は、支持部に対するワックス当接部の位置を調整する所定厚さの板状のスペーサ板と、厚さが異なる複数種類のスペーサ板を選択的に保持可能であり、スペーサ板を保持した状態でワックス当接部に対して着脱可能に設けられたスペーサ板保持部材と、を有することとしてもよい。この構成によれば、スペーサ板保持部材が保持するスペーサ板を選択するといった簡易な方法で、ワックス当接部の位置を調整し、ひいては、紡績糸へのワックスの付与量を調整することができる。
【0013】
また、ワックス保持部とワックス当接部とは、紡績糸がワックス成形体に接触することにより屈曲した走行経路で走行するようにワックス成形体の位置決めを行い、スペーサ板保持部材に保持されるスペーサ板の厚さが薄いほど、紡績糸の走行経路の屈曲が大きくなって、紡績糸へのワックスの付与量が大きくなり、スペーサ板保持部材に保持されるスペーサ板の厚さが厚いほど、紡績糸の走行経路の屈曲が小さくなって、紡績糸へのワックスの付与量が小さくなることとしてもよい。この構成によれば、スペーサ板の厚さを選択することにより、紡績糸の走行経路が変化し、紡績糸へのワックスの付与量を調整することができる。
【0014】
また、位置決定部材は、スペーサ板をスペーサ板保持部材に固定する固定部材を更に有することとしてもよい。この構成によれば、位置決定部材を着脱する際に、スペーサ板が脱落しにくく、位置決定部材の交換等の作業を円滑に行うことができる。
【0015】
また、位置決定部材は、スペーサ板保持部材に保持されたスペーサ板の厚さを表示するスペーサ板厚表示部を有することとしてもよい。この構成によれば、作業者は、スペーサ板厚表示部を確認してスペーサ板保持部材に保持されたスペーサ板の厚さを知ることができるので、ワックス成形体の位置の調整作業をより容易に行うことができる。
【0016】
また、スペーサ板厚表示部は、スペーサ板に設けられ、当該スペーサ板の厚さに関連付けられた位置に突出する表示凸部と、スペーサ板保持部材に設けられ、内部に保持されたスペーサ板の表示凸部を外部に露出させる開口部と、で構成され、開口部から露出した表示凸部の位置によって、ワックス当接部の位置を表示することとしてもよい。この構成によれば、スペーサ板厚表示部を簡易な構成で実現することができる。また、表示凸部はスペーサ板自体に設けられているので、スペーサ板厚表示部は、スペーサ板の厚さを正確に表示することができる。
【0017】
本発明のワキシング装置は、走行する紡績糸にワックスを付与するためのワックス成形体を保持するワックス保持部と、ワックス保持部に保持されたワックス成形体に当接して、紡績糸に対するワックス成形体の位置決めを行うワックス当接部と、ワックス当接部を支持する支持部と、ワックス当接部と支持部との間に配置され、支持部に対するワックス当接部の位置を決定する位置決定部材と、位置決定部材で決定されるワックス当接部の位置を表示するワックス当接部位置表示部と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
このワキシング装置では、ワックス当接部がワックス成形体に当接することで、ワックス成形体が位置決めされる。また、ワックス当接部と支持部との間に配置された位置決定部材によって、ワックス当接部の支持部に対する位置が決定される。また、ワックス当接部位置表示部によってワックス当接部の位置が表示されるので、ワックス成形体の位置の確認が容易になる。従って、ワックス成形体の位置の調整作業を効率的に行うことができ、その結果、紡績糸に対するワックスの付与量の調整作業が容易になる。
【0019】
また、位置決定部材は、支持部に対するワックス当接部の位置を調整する所定厚さの板状のスペーサ板と、厚さが異なる複数種類のスペーサ板を選択的に保持可能であり、スペーサ板を保持した状態でワックス当接部に対して着脱可能に設けられたスペーサ板保持部材と、を有しており、ワックス当接部位置表示部は、スペーサ板保持部材に保持されたスペーサ板の厚さに関連する情報を表示することにより、ワックス当接部の位置を表示することとしてもよい。この構成によれば、スペーサ板保持部材に保持されたスペーサ板の厚さを容易に確認することができる。
【0020】
本発明の紡績ユニットは、スライバをドラフトして繊維束とするドラフト装置と、ドラフト装置によりドラフトされた繊維束を旋回気流によって紡績し紡績糸を生成する空気紡績装置と、空気紡績装置により紡出された紡績糸にワックスを付与する上記の何れかの構成を有するワキシング装置と、ワキシング装置によってワックスが付与された紡績糸をパッケージに巻き取る巻取装置と、を備えたことを特徴とする。
【0021】
この紡績ユニットでは、旋回気流を用いる空気紡績装置によって紡績糸を生成している。旋回気流により紡績された紡績糸は、リング糸と比べて毛羽が脱落し難い。毛羽が脱落し易いリング糸にワックスを付与する紡績ユニットの場合、脱落した毛羽がワックス体の表面に付着し、ワックスがリング糸に付着し難くなる。しかし、旋回気流により紡績された紡績糸は、毛羽が脱落し難く、ワックス体の表面に毛羽が付着し難いため、紡績糸にワックスを直接付与することができる。そのため、ワックス体は削ずれ易く、付与量が調整された状態で紡績糸にワックスを付与することが重要である。よって、空気紡績装置を備えた紡績ユニットにおいては、付与量が調整された状態で紡績糸にワックスを付与する上述のワキシング装置の構成を採用することが好適である。
【0022】
また、位置決定部材は、正面側から挿抜して着脱可能であることとしてもよい。この構成によれば、作業者は、紡績ユニットの正面側から位置決定部材を挿抜して交換することができるので、ワックス成形体の位置の調整作業を容易に行うことができる。
【0023】
また、本発明の紡績機は、上述の何れかの紡績ユニットを複数備えたことを特徴とする。複数の紡績ユニット各々に属する各々のワキシング装置において、位置決定部材の交換を容易に行うことができ、紡績機全体でのワックス成形体の位置の調整作業を効率良く行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のワキシング装置、紡績ユニット及び紡績機によれば、紡績糸に対するワックスの付与量の調整作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る紡績機の正面図である。
【図2】図1の紡績機の紡績ユニットの側面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るワキシング装置の斜視図である。
【図4】図3のワキシング装置の要部を示す正面図である。
【図5】図3のワキシング装置のワックスピンを示す斜視図である。
【図6】図3のワキシング装置の要部であり、スペーサユニットを挿抜する状態を示す分解斜視図である。
【図7】図3のワキシング装置の要部を示す断面図である。
【図8】図6のスペーサユニットの分解斜視図である。
【図9】図3のワキシング装置のスペーサユニット受け部とスペーサ板ホルダーとを示す斜視図である。
【図10】スペーサユニット受け部側から見たスペーサ板ホルダーの斜視図である。
【図11】(a)〜(b)は、図6のスペーサユニットのスペーサ板を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るワキシング装置、紡績ユニット及び紡績機の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書において「上流」及び「下流」とは、紡績時での糸の走行方向における上流及び下流を意味するものとする。図1は紡績機の全体的な構成を示した正面図、図2は紡績機の縦断面図である。
【0027】
図1に示す紡績機1は、並設された多数の紡績ユニット2を備えている。この紡績機1は、糸継台車3と、ブロアボックス80と、原動機ボックス5と、を備えている。なお、紡績機1が設置される工場では、図1における紡績機1から見て紙面手前側に、紡績ユニット2の配列方向に延びる作業者通路が設けられる。作業者は、作業者通路側から、各紡績ユニット2の操作や監視等を行うことができる。
【0028】
図1に示すように、各紡績ユニット2は、上流から下流へ向かって順に、ドラフト装置7と、空気紡績装置9と、糸弛み取り装置(糸貯留装置)12と、ワキシング装置100と、巻取装置13と、を主要な構成として備えている。ドラフト装置7は紡績機1の筐体6の上端近傍に設けられており、このドラフト装置7から送られてくる繊維束8を空気紡績装置9で紡績するように構成している。空気紡績装置9から送出された紡績糸10は後述のヤーンクリアラ52を通過した後、糸弛み取り装置12で更に下方に送られてワキシング装置100でワックス付与される。その後、紡績糸10は、巻取装置13によって巻き取られ、これによりパッケージ45が形成される。
【0029】
ドラフト装置7は、スライバ15を延伸して繊維束8にするためのものである。このドラフト装置7は図2に示すように、バックローラ対16、サードローラ対17、エプロンベルト18を装架したミドルローラ対19、及びフロントローラ対20の4つのローラ対を備えている。各ローラ対16,17,19,20のボトムローラは、原動機ボックス5からの動力、又はそれぞれの紡績ユニット2に配置された図示しない電動モータの動力により駆動される。各ローラ対16,17,19,20は、回転速度を異ならせて駆動され、この結果、上流側から供給されたスライバ15を延伸して繊維束8にし、下流側の空気紡績装置9に送ることができる。
【0030】
空気紡績装置9は、旋回気流を利用して繊維束8に撚りを与え、紡績糸10を生成する。空気紡績装置9は、詳細な説明や図示は省略するが、繊維案内部と、旋回流発生ノズルと、中空ガイド軸体と、を備えている。繊維案内部は、ドラフト装置7から送られた繊維束8を、空気紡績装置9の内部に形成される紡績室に案内する。旋回流発生ノズルは、繊維束8の経路の周囲に配置され、紡績室内に旋回流を発生させる。この旋回流によって、紡績室内の繊維束8の繊維端が反転され旋回する。中空ガイド軸体は、紡績された紡績糸10を紡績室から空気紡績装置9の外部へと案内する。
【0031】
空気紡績装置9の下流には、糸弛み取り装置12が設けられている。この糸弛み取り装置12は、紡績糸10に所定の張力を与えて空気紡績装置9から引き出す機能と、糸継台車3(後述)による糸継ぎ時などに空気紡績装置9から送出される紡績糸10を滞留させて紡績糸10の弛みを防止する機能と、巻取装置13(後述)側の張力の変動が空気紡績装置9側に伝わらないように張力を調節する機能と、を有している。図2に示すように、糸弛み取り装置12は、弛み取りローラ(糸貯留ローラ)21と、糸掛け部材22と、上流側ガイド23と、電動モータ25と、下流側ガイド26と、糸貯留量センサ27と、を備えている。
【0032】
糸掛け部材22は、紡績糸10に係合する(引っ掛ける)ことが可能に構成されており、紡績糸10に係合した状態で弛み取りローラ21と一体回転することにより、当該弛み取りローラ21の外周面に紡績糸10を巻き付けることができるように構成されている。
【0033】
弛み取りローラ21は、その外周面に紡績糸10を一定量巻き付けて貯留することができるように構成されている。また、弛み取りローラ21は、電動モータ25によって回転駆動される。この構成で、弛み取りローラ21の外周に巻き付けられた紡績糸10は、弛み取りローラ21が回転することにより当該弛み取りローラ21を締め付けるようにして巻かれ、糸弛み取り装置12よりも上流側の紡績糸10を引っ張る。即ち、外周に紡績糸10を巻き付けた状態の弛み取りローラ21を所定の回転速度で回転させることで、紡績糸10に所定の張力を与えて空気紡績装置9から所定の速度で引き出し、所定の速度で下流側に搬送することができる。
【0034】
そして、弛み取りローラ21の外周に所定量の紡績糸10を巻き付けることで、弛み取りローラ21と紡績糸10との間で所定の接触面積を確保することができる。これにより、弛み取りローラ21が十分な力で紡績糸10を保持して引っ張ることが可能となり、スリップ等を発生させることなく空気紡績装置9から安定した速度で紡績糸10を引き出すことができる。また、図2に示すように、空気紡績装置9と糸弛み取り装置12との間には紡績糸10に張力を与えるための他の構成(従来のデリベリローラなど)がないので、空気紡績装置9からの糸の引出し速度は、弛み取りローラ21の回転速度によって決定される。従って、本実施形態の紡績機1では、糸弛み取り装置12によって紡績糸10に対して張力を与え、バラツキが少なく正確な速度で当該紡績糸10を空気紡績装置9から引き出すことができる。
【0035】
糸貯留量センサ27は弛み取りローラ21上に貯留されている紡績糸10の貯留量を非接触式で検出し、不図示のユニットコントローラに送信するように構成されている。
【0036】
上流側ガイド23は弛み取りローラ21のやや上流側に配置される。上流側ガイド23は、弛み取りローラ21の外周面に対して紡績糸10を適切に案内する案内部材であるとともに、空気紡績装置9から伝播してくる紡績糸10の撚りが当該上流側ガイド23よりも下流側に伝わることを防止する撚り止めの役割を兼ねている。
【0037】
紡績機1の筐体6の前面側であって前記空気紡績装置9と前記糸弛み取り装置12との間の位置には、ヤーンクリアラ52が設けられている。そして、空気紡績装置9で紡出された紡績糸10は、糸弛み取り装置12で巻き取られる前に前記ヤーンクリアラ52を通過するようになっている。ヤーンクリアラ52は走行する紡績糸10の太さを監視し、紡績糸10の糸欠点を検出した場合に、糸欠点検出信号をユニットコントローラへ送信するように構成されている。
【0038】
上記ユニットコントローラは、前記糸欠点検出信号を受信すると、直ちに、空気紡績装置9の旋回気流発生ノズルからの圧空の噴出を停止させる。これにより、旋回気流が停止して繊維束8の加撚が停止すると共に空気紡績装置9への繊維束8の導入も停止する。そして、空気紡績装置9において繊維の連続状態が分断され、紡績糸10が切断される。その後、ユニットコントローラは、更にドラフト装置7等を停止させる。また、ユニットコントローラは糸継台車3に制御信号を送り、当該紡績ユニット2の前まで走行させる。その後、空気紡績装置9等を再び駆動し、前記糸継台車3に糸継ぎを行わせて巻取りを再開させるようになっている。このとき、糸弛み取り装置12は、空気紡績装置9が紡績を再開してから巻取りが再開されるまでの間、空気紡績装置9から連続的に送出される紡績糸10を弛み取りローラ21に滞留させて紡績糸10の弛みを取るように構成されている。
【0039】
糸継台車3は、図1及び図2に示すように、スプライサ(糸継装置)43と、サクションパイプ44と、サクションマウス46と、を備えている。糸継台車3は、ある紡績ユニット2で糸切れや糸切断が発生すると、前記レール41上を当該紡績ユニット2まで走行し、停止するように構成されている。前記サクションパイプ44は、軸を中心に上下方向に回動しながら、空気紡績装置9から送出される糸端を吸い込みつつ捕捉してスプライサ43へ案内する。サクションマウス46は、軸を中心に上下方向に回動しながら、前記巻取装置13に支持されたパッケージ45から糸端を吸引しつつ捕捉してスプライサ43へ案内する。スプライサ43は、案内された糸端同士の糸継ぎを行う。
【0040】
糸弛み取り装置12の下流には、ワキシング装置100が設けられている。ワキシング装置100は、糸弛み取り装置12から巻取装置13に向けて走行する紡績糸10に、ワックスを付与する装置である。
【0041】
巻取装置13は、支軸70まわりに揺動可能に支持されたクレードルアーム71を備える。このクレードルアーム71は、紡績糸10を巻回するためのボビン48を回転可能に支持することができる。
【0042】
また、前記巻取装置13は、巻取ドラム72と、トラバース装置75と、を備えている。巻取ドラム72は、前記ボビン48やそれに紡績糸10を巻回して形成されるパッケージ45の外周面に接触して駆動できるように構成されている。また、トラバース装置75は、紡績糸10に係合可能なトラバースガイド76を備えている。この構成で、巻取装置13は、トラバースガイド76を図略の駆動手段によって往復動させながら巻取ドラム72を図略の電動モータによって駆動することで、巻取ドラム72に接触するパッケージ45を回転させ、紡績糸10を綾振りしつつパッケージ45を巻き取るようになっている。なお、トラバース装置75のトラバース機構は、複数の紡績ユニット2で共有されるシャフトにより、各紡績ユニット2で共通に駆動される。
【0043】
続いて、前述のワキシング装置100について、図3及び図4を参照しながら更に詳細に説明する。ワキシング装置100は、ワックス成形体Wを回転軸線A周りに回転させながら、走行する紡績糸10にワックス成形体Wの一端面を押し当てる。これにより、紡績糸10にワックスが付与される。
【0044】
ここでは、図3に示すようにXYZ座標系を設定し、各部位の位置関係の説明にX,Y,Zを用いる場合がある。Z軸は、ワキシング装置100に対する紡績糸10の導入・導出方向に平行である。Y軸は、紡績機1や紡績ユニット2の正面・背面方向に一致し、−Y側が正面側、+Y側が背面側である。X軸は、ワックス成形体Wの回転軸線Aに平行である。また、X軸は、紡績機1が備える複数の紡績ユニット2の配列方向に一致する。また、回転軸101の先端・後端の方向を基準とし、+X方向を「前」、−X方向を「後」として、「前方」、「後方」といったような前後の概念を含む語を説明に用いる場合がある。
【0045】
ワキシング装置100は、円筒形状のワックス成形体Wが取り付けられる回転軸101と、当該回転軸101を回転させるモータ103と、モータ103を初めとする各部品を支持するベース(支持部)105と、を備えている。ベース105は、筐体6(図2参照)に固定される。更にワキシング装置100は、回転軸101に取り付けられたワックス成形体Wを押さえる押さえレバー107を備えている。回転軸101及び押さえレバー107は、ワックス成形体Wを保持するワックス保持部として機能する。
【0046】
押さえレバー107は、図示しないバネにより後方(−X方向)に向けて付勢されている。押さえレバー107は、ワックス成形体Wの前端面Waに取り付けられた鍔状部材109を介して、ワックス成形体Wを後方に向けて押している。その一方、ワックス成形体Wの後端面Wbは、ワックス成形体Wの後方に配置されたワックスピン(ワックス当接部)113の3つの突起113pに突き当てられる。ワックスピン113のX方向の位置は、ベース105に対して位置決めされている。この構造によって、ワックス成形体WがX方向でベース105に対し位置決めされ、ワックス成形体Wの後端面Wbは、常に、ワックスピン113の3つの突起113pの先端の位置にある。なお3つの突起113pの先端は、同一平面上に存在する。
【0047】
ベース105は、回転軸101の上方(+Z側)に形成された上流ガイド部(紡績糸案内部)105uと、回転軸101の下方(−Z側)に形成された下流ガイド部(紡績糸案内部)105dと、を備えている。上流ガイド部105uは、上流側からワキシング装置100に導入される紡績糸10をガイドし、下流ガイド部105dは、ワキシング装置100から下流側に導出される紡績糸10をガイドする。ベース105の正面側には、ベース105のプレートの正面側端部から上流ガイド部105u及び下流ガイド部105dまで延びるスリットが形成されている。糸切れ又は糸切断後には、サクションパイプ44で案内される紡績糸10が、正面側から上記スリットを通して上流ガイド部105u及び下流ガイド部105dに挿入され、紡績糸10が所定の糸道に復帰する。
【0048】
上流ガイド部105uと下流ガイド部105dとを結ぶ仮想直線は、Z軸に平行であると共に、ワックスピン113の3つの突起113pよりも−Y側を通過する。また、上記仮想直線は、3つの突起113pの先端よりも僅かに+X側に位置する。このような位置関係により、上流ガイド部105uと下流ガイド部105dとの間を走行する紡績糸10は、ワックス成形体Wの後端面Wbによって−X側に押し込まれることになり、紡績糸10の走行経路は−X側に膨らむように屈曲する。そして、紡績糸10が後端面Wbを擦りながら走行することで、紡績糸10にワックスが付与される。このとき、ワックス成形体Wは、回転軸線A周りに回転しているので、ワックス成形体Wの後端面Wbは均等に磨り減っていく。また、ワックス成形体Wの消耗に伴って押さえレバー107がワックス成形体Wを後方に移動させるので、ワックス成形体Wの後端面Wbは、常に同じ位置に維持される。
【0049】
上記構造によれば、紡績糸10に対するワックスの付与量は、ベース105(上流ガイド部105u及び下流ガイド部105d)に対する、ワックス成形体WのX方向の位置(後端面WbのX方向の位置)に依存する。すなわち、ワックス成形体Wの後端面Wbが−X側に位置するほど、紡績糸10の走行経路の屈曲(−X方向への膨らみ)が大きくなり、後端面Wbが紡績糸10に押し当てられる力も強くなるので、紡績糸10に対するワックスの付与量が大きくなる。逆に、ワックス成形体Wの後端面Wbが+X側に位置するほど、紡績糸10の走行経路の屈曲が小さくなり、後端面Wbが紡績糸10に押し当てられる力も弱くなるので、紡績糸10に対するワックスの付与量が小さくなる。
【0050】
ワックスの付与量は、例えば、パッケージ45の仕様に応じて変更する必要があり、また、微調整が必要な場合もあるので、ワックス成形体Wの位置調整が、簡易な作業で行われることが好ましい。特に、多数の紡績ユニット2を備えた紡績機1にあっては、紡績ユニット2の数に応じて位置調整作業が発生するので、当該作業の簡易化は運転効率の向上に大きく貢献する。なお、前述の通り、ワックス成形体Wの位置(後端面Wbの位置)は、ワックスピン113の3つの突起113pに突き当てることで決定されるので、ワックス成形体Wの位置調整は、ワックスピン113のベース105に対する相対位置を、X方向で調整することに他ならない。このため、ワックスピン113は、ベース105に支持されると共に、ワックス成形体Wに対して進退する方向(X方向)に移動可能とされており、ワックスピン113のX方向の位置は調整可能である。
【0051】
以下、具体的に、ワックス成形体W位置の調整のためのワックスピン113位置の調整について、図5〜図7を参照しながら説明する。図5は、ワックスピン113単独の斜視図である。図6は、ワキシング装置100のうちワックスピン113の位置調整に関連する要部を取り出して示す分解斜視図であり、ベース105の一部と、ワックスピン113と、取り外されたスペーサユニット120(位置決定部材)と、を示している。図7は、図6に示す要素の断面図であり、回転軸線Aを含みXY平面に平行な断面を取った断面図である。
【0052】
図5に示すように、ワックスピン113は、ワックス成形体Wに当接する側の前端部分(第1の端部)113aと、ワックス成形体Wから遠い側の後端部分(第2の端部)113bと、前端部分113aから後端部分113bまで延びる円筒接続部113cと、を有し、一体に形成されている。前端部分113aは、回転軸線Aに平行な視線で見て略円形に形成されており、ワックス成形体W側に向けて突出する3つの突起113pを有している。3つの突起113pは、回転軸線Aを中心とする円周上に配置されている。また、3つの突起113pは、一緒にワックス成形体Wの後端面Wbに当接するように、+X方向に同じ高さで突出している。更に前端部分113aには、径方向に突出した回り止め凸部(回転阻止部)113dが形成されている。回り止め凸部113dの機能については後述する。
【0053】
円筒接続部113cの筒軸は、回転軸線Aに一致しており、円筒接続部113cの中空部にモータ103のシャフト等(図示せず)が挿通される。後端部分113bは、円筒接続部113cの後端として構成されている。後端部分113bは、円筒接続部113cの外周面から径方向に突出する3つのツメ部113qを有している。3つのツメ部113qは、周方向に所定の間隔で配置されている。
【0054】
図6及び図7に示すように、ワックスピン113は、ベース105に取り付けられ、ワックス成形体Wに対して進退する方向(X方向)に移動可能に支持されている。具体的には、ベース105は、回転軸線A上で+X方向に突き出したスペーサユニット受け部106を有している。ワックスピン113の後端部分113bが、スペーサユニット受け部106の中央の孔に挿入される。ワックスピン113は、円筒接続部113cの外周面をスペーサユニット受け部106の孔に摺動させながら、X方向に前後移動可能な状態とされている。
【0055】
更に図7に示すように、ワックスピン113のツメ部113qは、スペーサユニット受け部106との間に組み込まれた圧縮バネ(付勢部材)119によって、ベース105に対し−X方向に付勢されている。なお、図7の断面には1つのツメ部113qのみが現れているが、他の2つのツメ部113qも同様の構成で−X方向に付勢されている。ここでは、3つのツメ部113qが周方向に所定の間隔で配置されているので、ワックスピン113全体としては、上記周方向において−X方向に付勢され、ワックスピン113の位置精度が高い。なお、ツメ部113qの個数は3つに限られず、周方向に所定の間隔で配置されれば4つ以上のツメ部113qが形成されてもよい。
【0056】
スペーサユニット120は、ベース105に対するワックスピン113のX方向での位置を決定するための部材である。図6及び図7に示すように、スペーサユニット120は、上記の構成で−X方向に付勢されたワックスピン113と、スペーサユニット受け部106との間に挟み込まれる。図8にも示すように、スペーサユニット120は、背面側(+Y側)が開放された馬蹄形をなしており、薄板状のスペーサ板121(図11参照)と、スペーサ板121を保持するスペーサ板ホルダー(スペーサ板保持部材)123と、スペーサ板ホルダー123にスペーサ板121を固定するための留め具(固定部材)125と、を有している。スペーサ板121、スペーサ板ホルダー123、及び留め具125もすべて馬蹄形を呈する。
【0057】
図8に示すように、スペーサ板ホルダー123の載置面123c上にスペーサ板121が載置され、スペーサ板121の外縁部を留め具125で押さえ込むようにして、留め具125がスペーサ板ホルダー123に取り付けられる。このとき、留め具125の両端部に形成された突起部125aが、スペーサ板ホルダー123の対応箇所の凹部123aに嵌り込む。これにより、留め具125がスペーサ板ホルダー123から容易に分離しなくなり、その結果、留め具125で押さえられたスペーサ板121も、スペーサ板ホルダー123から容易に脱落しなくなる。
【0058】
以上のように組み立てられたスペーサユニット120は、図6及び図3に示すように、ベース105のスペーサユニット受け部106とワックスピン113との間に挿入され、着脱可能に取り付けられる。作業者は、圧縮バネ119の付勢力に逆らって+X方向にワックスピン113を引っ張り、スペーサユニット120を所定位置にセットした後、ワックスピン113を開放するといった操作で、スペーサユニット120を取り付ければよい。また、作業者は、逆の操作によってスペーサユニット120を取り外せばよい。
【0059】
スペーサユニット120が取り付けられた状態では、図7に示すように、ワックスピン113の前端部分113aの後面113tと、スペーサユニット受け部106の前面106hとの間に、スペーサ板ホルダー123の一部及びスペーサ板121が挟み込まれる。
【0060】
このとき、図9に示されるスペーサ板ホルダー123の内縁部123rが、前面106hに形成された段差部106rに係合してスペーサ板ホルダー123のZ方向の位置が固定される。また、図10に示すように、スペーサ板ホルダー123の、スペーサユニット受け部106に面する側には、スペーサユニット受け部106に向けて突出した凸条部123dが設けられている。そして、図7にも示されるように、スペーサ板ホルダー123の凸条部123dが、対面する前面106hの凹溝106kに嵌り込むことで、スペーサ板ホルダー123のY方向の位置及び回転軸線A周りの回転方向の位置が固定される。この構造により、ベース105に対するスペーサユニット120の移動や回転が阻止され、スペーサユニット120はスペーサユニット受け部106とワックスピン113との間に確実に保持される。
【0061】
更に、スペーサ板ホルダー123には、切欠部123b(図6,図8参照)が形成されており、ワックスピン113の回り止め凸部113dが当該切欠部123bに嵌り込む。これにより、ワックスピン113のスペーサユニット120に対する回転軸線A周りの回転が阻止される。この結果、ベース105に対するワックスピン113の回転軸線A周りの回転が阻止される。以上のように、内縁部123r、段差部106r、凸条部123d、凹溝106k、切欠部123b、及び回り止め凸部113dによって、ベース105に対するワックスピン113の回転軸線A周りの回転を阻止する回転阻止手段が構成されている。
【0062】
以上のようなスペーサユニット120が取り付けられることで、ワックスピン113の前端部分113aの後面113tと、スペーサユニット受け部106の前面106hとの間隙が決定され、その結果、ワックスピン113のベース105に対するX方向の相対位置が決定される。このような構成から理解されるように、ワックスピン113のX方向の位置を調整するためには、スペーサ板121の厚さを調整すればよい。
【0063】
そこで、図11(a)〜(c)に例示するように、ワキシング装置100においては、種々の厚さのスペーサ板121が準備される。作業者が、スペーサユニット120にセットするスペーサ板121を適宜選択することにより、スペーサ板121の板厚に応じてワックスピン113のX方向の位置が調整される。
【0064】
また、図11(a)〜(c)に示されるように、板厚が異なる各スペーサ板121a,121b,121cには、その形成位置によって板厚を判別可能とする凸片(表示凸部)122a,122b,122cがそれぞれ形成されている。すなわち、凸片122a,122b,122cが突出する位置は、各スペーサ板121a,121b,121cの板厚に関連付けられている。例えば、板厚0.2mmのスペーサ板121aの凸片122aは下段の位置に突出し、板厚0.1mmのスペーサ板121bの凸片122bは中段の位置に突出し、板厚0.05mmのスペーサ板121cの凸片122cは上段の位置に突出している。
【0065】
そして、各凸片122a,122b,122cの突出位置(下段、中段、上段)に対応する位置に、スペーサ板ホルダー123には、開口123h,123j,123k(図6参照)が形成されている。各開口123h,123j,123kは、それぞれ凸片122a,122b,122cを挿通させるように、スペーサ板ホルダー123の壁面を貫通しており、各凸片122a,122b,122cは、それぞれ各開口123h,123j,123kから外側に突出して、紡績ユニット2の正面側から視認可能となる。なお、紡績ユニット2の「正面側」とは、紡績機1の設置場所において作業者通路に面する側である。
【0066】
この構造に基づき、どの開口123h,123j,123kから凸片122a,122b,122cが突出しているかによって、スペーサ板121の板厚、ワックスピン113のX方向の位置が表示されることになる。例えば、図6の場合、開口123hから凸片122aが突出しているので、板厚0.2mmのスペーサ板121aがセットされていることが判る。この構成によれば、作業者は、作業者通路から各開口123h,123j,123kを目視確認することにより、どの厚さのスペーサ板121がスペーサユニット120にセットされているかを知ることができる。
【0067】
このように、スペーサ板121に形成された凸片122a,122b,122cと、スペーサ板ホルダー123に形成された開口123h,123j,123kと、は、スペーサ板厚表示部を構成する。当該スペーサ板厚表示部は、スペーサユニット120にセットされたスペーサ板121の板厚を表示し、ひいては、ワックスピン113の位置、ワックス成形体Wの位置、及び紡績糸10に対するワックスの塗布量を間接的に表示する機能を有するものであり、ワックス当接部位置表示部を構成する。
【0068】
続いて、以上説明したワキシング装置100による作用効果について説明する。
【0069】
ワキシング装置100では、ワックス成形体Wの位置の調整時に着脱されるスペーサユニット120が、付勢されたワックスピン113とベース105とで挟み込んで保持されるので、ネジ等を用いてスペーサユニット120を固定する必要がない。すなわち、付勢力に逆らってワックスピン113を+X方向に引っ張るといった簡単な操作で、工具を必要とせずに、スペーサユニット120の着脱作業を容易に行うことができる。
【0070】
スペーサユニット120にセットすべき板厚のスペーサ板121を選択し取り替えるといった簡易な手法で、ワックスピン113のX方向の位置が調整される。その結果、ワックス成形体W及びその後端面WbのX方向の位置が調整され、紡績糸10に対するワックスの付与量が調整される。以上のとおり、ワキシング装置100によれば、作業者が、ワックス成形体Wの位置の調整作業を容易に行うことができ、紡績糸10に対するワックスの付与量の調整作業を容易に行うことができる。
【0071】
スペーサユニット120は、背面側(+Y側)が開放された馬蹄形をなすので、スペーサユニット120を着脱する際に、ワックス成形体Wやワックスピン113を回転軸101から一旦取り外すといった作業も必要ない。更に、紡績機1の正面側或いは紡績ユニット2の正面側からスペーサユニット120をY方向に挿抜して着脱可能であり、作業者はワックス成形体Wの位置の調整作業を容易に行うことができる。従って、スペーサユニット120が馬蹄形をなす構成も、ワックスの付与量の調整作業の効率化に寄与する。
【0072】
ワックスピン113の後面113tが、圧縮バネ119の付勢力によってスペーサユニット120に確実に突き当てられるので、ワックスピン113の位置精度が向上し、その結果、ワックス成形体Wの位置精度が向上する。
【0073】
ワックスピン113の後端部分113bの3つのツメ部113qに圧縮バネ119の付勢力が作用するので、ワックスピン113全体としては、周方向において−X方向に付勢されている。その結果、突起113pが均等にワックス成形体Wの後端面Wbに当接し、後端面Wbの位置精度が向上する。
【0074】
円周方向に配列された3つの突起113pにより、ワックスピン113がワックス成形体Wの後端面Wbに3点で当接し、ワックス成形体Wの後端面Wbが安定的にX方向で位置決めされるので、紡績糸10に対し安定的にワックスが付与される。
【0075】
上流ガイド部105uと下流ガイド部105dとを結ぶ仮想直線は、ワックスピン113の3つすべての突起113pよりも−Y側を通過する。すなわち、3つの突起113pはすべて、ワキシング装置100内の糸道よりも背面側(+Y側)に存在する。この構成によれば、糸切れ又は糸切断後に、糸道に再挿入される紡績糸10が、突起113pに干渉せずに円滑に正面側(−Y側)から挿入される。ここでは、突起113pの数を3つとしたので、上記のような紡績糸10の糸道への挿入経路を確保し易い。
【0076】
前述の回転阻止手段によって、ベース105に対するワックスピン113の回転軸線A周りの回転が阻止されるので、ワックスピン113がワックス成形体Wの回転に引き摺られることが避けられ、紡績糸10に対してワックスを安定して付与することができる。
【0077】
スペーサユニット120は、スペーサ板121をスペーサ板ホルダー123に位置固定する留め具125を有しているので、スペーサユニット120をワキシング装置100から着脱する際に、スペーサ板121が脱落しにくく、スペーサユニット120の着脱作業を円滑に行うことができる。
【0078】
スペーサユニット120は、凸片122a,122b,122cと開口123h,123j,123kとで構成されるスペーサ板厚表示部を有する。これにより、作業者は、スペーサ板厚表示部を見て、現在セットされているスペーサ板121の板厚を知ることができ、ワックス成形体Wの位置調整作業をより容易に行うことができる。
【0079】
スペーサ板厚表示部は、凸片122a,122b,122cと開口123h,123j,123kといった簡易な構成で実現することができる。凸片122a,122b,122cはスペーサ板121自体に設けられているので、スペーサ板厚が誤って表示される可能性が低く、スペーサ板121の厚さを正確に知ることができる。
【0080】
上記のようなワキシング装置100を備える紡績ユニット2では、旋回気流を用いる空気紡績装置9によって紡績糸10を生成している。旋回気流により紡績された紡績糸10は、リング糸と比べて毛羽が脱落し難い。毛羽が脱落し易いリング糸にワックスを付与する紡績ユニットの場合、脱落した毛羽がワックスの表面に付着し、ワックスがリング糸に付着し難くなる。しかし、旋回気流により紡績された紡績糸10は、毛羽が脱落し難く、ワックス体Wの表面に毛羽が付着し易いため、紡績糸10にワックスを直接付与することができる。そのため、ワックス体Wは削ずれ易く、付与量が調整された状態で紡績糸10にワックスを付与することが重要である。よって、空気紡績装置9を備えた紡績ユニット2においては、付与量が調整された状態で紡績糸10にワックスを付与する上述のワキシング装置100を採用することが好適である。
【0081】
紡績ユニット2を複数備える紡績機1では、複数の紡績ユニット2の各々に属する各々のワキシング装置100において、スペーサユニット120の交換を容易に行うことができ、紡績機1全体でのワックス成形体Wの位置の調整作業を効率良く行うことができる。
【0082】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形したものであってもよい。
【0083】
例えば、実施形態の紡績機1及び紡績ユニット2では、紡績糸10を一定量巻き付けて貯留する弛み取りローラ21によって空気紡績装置9から紡績糸10を引き出しているが、本発明は、デリベリローラとニップローラとで空気紡績装置から紡績糸を引き出すタイプの紡績機及び紡績ユニットに適用してもよい。
【0084】
実施形態の紡績機1及び紡績ユニット2では、糸欠点検出時に空気紡績装置9の旋回気流を停止させて紡績糸10の切断を実行しているが、本発明は、カッターを用いて糸の切断を行うタイプの紡績機及び紡績ユニットに適用してもよい。
【0085】
実施形態の紡績機1及び紡績ユニット2では、上部のドラフト装置7から下部の巻取装置13に向けて、糸が下向きに走行するように糸道が配置されているが、本発明は、下から上に向けて走行する糸道が配置された紡績機や紡績ユニットに適用してもよい。
【0086】
実施形態の紡績機1及び紡績ユニット2では、空気紡績装置9は、繊維案内部に保持され、紡績室に突出するように配置されたニードルを備えていてもよい。当該ニードルは、繊維束8の撚りが空気紡績装置9の上流側に伝播することを防止する。空気紡績装置9は、ニードルの代わりに、繊維案内部の下流側端部により、繊維束8の撚りの伝播を防止してもよい。また、空気紡績装置9は、互いに反対方向に撚りを掛ける一対のエアジェットノズルを備えていてもよい。
【0087】
実施形態の紡績機1及び紡績ユニット2では、ドラフト装置7のボトムローラやトラバース装置75のトラバース機構が、各紡績ユニット2に共通で駆動されているが、本発明は、紡績ユニットの各部(例えば、ドラフト装置、空気紡績装置、糸巻取装置等)が各紡績ユニット2で独立で駆動されるタイプの紡績機及び紡績ユニットに適用してもよい。
【0088】
上記実施形態では、ワキシング装置100は、空気紡績装置9を備える紡績ユニット2に設けられている。しかし、本発明は、当該実施形態に限定されず、自動ワインダ等、糸にワックスを付与しながらパッケージを巻き取る他の糸巻取機にワキシング装置100を設けるようにしても良い。
【符号の説明】
【0089】
1…紡績機、2…紡績ユニット、7…ドラフト装置、9…空気紡績装置、10…紡績糸、45…パッケージ、100…ワキシング装置、101…回転軸(ワックス保持部)、105…ベース(支持部)、105u…上流ガイド部(紡績糸案内部)、105d…下流ガイド部(紡績糸案内部)、106r…段差部(回転阻止手段)、106k…凹溝(回転阻止手段)、113…ワックスピン(ワックス当接部)、113a…前端部分(第1の端部)、113b…後端部分(第2の端部)、113c…円筒接続部(接続部)、113d…回り止め凸部(回転阻止手段)、113p…突起(凸部)、113q…ツメ部、119…圧縮バネ(付勢部材)、120…スペーサユニット(位置決定部材)、121…スペーサ板、122a〜122c…凸片(表示凸部)、123…スペーサ板ホルダー(スペーサ保持部)、123b…凸条部(回転阻止手段)、123d…切欠部(回転阻止手段)、123h〜123k…開口(開口部)、125…留め具(固定部材)、W…ワックス成形体、Wb…後端面(ワックス当接部側の面)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワキシング装置、紡績ユニット及び紡績機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、下記特許文献1に記載のワキシング装置が知られている。このワキシング装置は、走行する糸に円筒形状のワックスの端面が接触するように配置される。そして、糸を走行させワックスを回転させることで、走行する糸とワックスの端面とが接触し、糸にワックスが付与される。このとき、ワックスは、回転軸線方向に上記端面側に向けて付勢されており、前方に配置されたスペーサの先端に突き当てられることで、ワックスの端面が位置決めされる。この構造により、ワックスの端面と糸との接触状態が決定され、糸に対するワックスの付与量が決定される。
【0003】
また、糸に対するワックスの付与量を変更する場合には、スペーサ本体が被せられるネジ頭部とスペーサ本体との間に調整板を複数枚挟み込むようにし、調整板の枚数を変更することによってスペーサ先端の位置を上記回転軸方向にずらす。これにより、ワックスの端面の位置が回転軸線方向に移動し、ワックスの端面と糸との接触状態が変更される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−290872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この装置において上記調整板を着脱する作業は、スペーサが設けられたカバーを外し、複数のスペーサ本体を外して調整板を挟み込むといったように、手間が大きい。この事情に鑑み、本発明は、紡績糸に対するワックスの付与量の調整作業を容易にするワキシング装置、紡績ユニット、及び紡績機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のワキシング装置は、走行する紡績糸にワックスを付与するためのワックス成形体を保持するワックス保持部と、ワックス保持部に保持されたワックス成形体に当接して、紡績糸に対するワックス成形体の位置決めを行うワックス当接部と、ワックス当接部を移動可能に支持する支持部と、支持部に対してワックス当接部を付勢する付勢部材と、付勢部材で付勢されたワックス当接部と支持部とによって着脱可能に保持され、支持部に対するワックス当接部の位置を決定する位置決定部材と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
このワキシング装置では、ワックス当接部がワックス成形体に当接することで、ワックス成形体が位置決めされ、位置決定部材によってワックス当接部の支持部に対する位置が決定される。ワックス当接部は付勢部材によって付勢されており、位置決定部材は付勢されたワックス当接部と支持部とで保持される。このように、位置決定部材を、付勢されたワックス当接部と支持部とで保持し着脱可能としたので、ネジ等を用いて位置決定部材を固定する必要がない。従って、位置決定部材の着脱作業が容易であり、ワックス成形体の位置の調整作業を容易に行うことができ、その結果、糸に対するワックスの付与量の調整作業が容易になる。
【0008】
また、ワックス当接部は、ワックス成形体に当接する第1の端部と、ワックス成形体から遠い側の他の端部である第2の端部とを有し、第2の端部には、付勢部材による付勢力が付与されていることとしてもよい。この構成によれば、第2の端部への付勢力によってワックス当接部が適正な方向に付勢され、ワックス当接部の位置精度が向上する。
【0009】
また、ワックス当接部は、第1の端部から第2の端部まで延在する円筒形状の接続部を有しており、第2の端部は、接続部から径方向に突出し付勢部材による付勢力を受ける少なくとも3つのツメ部を有することとしてもよい。この構成によれば、付勢部材の付勢力が接続部の円周方向においてワックス当接部に伝達される。
【0010】
また、本発明のワキシング装置は、 ワックス成形体のワックス当接部側の面に紡績糸が接触して走行するように紡績糸を案内する紡績糸案内部を更に備え、第1の端部は、ワックス成形体に対する進退方向に平行な視線で見て略円形状に形成され、円周方向に配列されワックス成形体に向けて突出する3つの凸部を有していることとしてもよい。この構成によれば、紡績糸は、凸部を避けた糸道を通過しながらワックス成形体のワックス当接部側の面に接触する。ワックス当接部側の面は3つの凸部で安定的に位置固定されるので、紡績糸に対し安定的にワックスが付与される。また、例えば、糸切れ又は糸切断後において上記の糸道に紡績糸を再挿入する際にも、凸部が3つであるので紡績糸の挿入経路を確保し易い。
【0011】
また、第1の端部には、支持部に対するワックス当接部の円周方向への回転を阻止する回転阻止手段が設けられていることとしてもよい。この構成によれば、ワックス成形体を上記円周方向に回転させながら紡績糸に接触させる場合に、ワックス当接部がワックス成形体の回転に引き摺られることが避けられ、紡績糸に対してワックスを安定して付与することができる。
【0012】
また、位置決定部材は、支持部に対するワックス当接部の位置を調整する所定厚さの板状のスペーサ板と、厚さが異なる複数種類のスペーサ板を選択的に保持可能であり、スペーサ板を保持した状態でワックス当接部に対して着脱可能に設けられたスペーサ板保持部材と、を有することとしてもよい。この構成によれば、スペーサ板保持部材が保持するスペーサ板を選択するといった簡易な方法で、ワックス当接部の位置を調整し、ひいては、紡績糸へのワックスの付与量を調整することができる。
【0013】
また、ワックス保持部とワックス当接部とは、紡績糸がワックス成形体に接触することにより屈曲した走行経路で走行するようにワックス成形体の位置決めを行い、スペーサ板保持部材に保持されるスペーサ板の厚さが薄いほど、紡績糸の走行経路の屈曲が大きくなって、紡績糸へのワックスの付与量が大きくなり、スペーサ板保持部材に保持されるスペーサ板の厚さが厚いほど、紡績糸の走行経路の屈曲が小さくなって、紡績糸へのワックスの付与量が小さくなることとしてもよい。この構成によれば、スペーサ板の厚さを選択することにより、紡績糸の走行経路が変化し、紡績糸へのワックスの付与量を調整することができる。
【0014】
また、位置決定部材は、スペーサ板をスペーサ板保持部材に固定する固定部材を更に有することとしてもよい。この構成によれば、位置決定部材を着脱する際に、スペーサ板が脱落しにくく、位置決定部材の交換等の作業を円滑に行うことができる。
【0015】
また、位置決定部材は、スペーサ板保持部材に保持されたスペーサ板の厚さを表示するスペーサ板厚表示部を有することとしてもよい。この構成によれば、作業者は、スペーサ板厚表示部を確認してスペーサ板保持部材に保持されたスペーサ板の厚さを知ることができるので、ワックス成形体の位置の調整作業をより容易に行うことができる。
【0016】
また、スペーサ板厚表示部は、スペーサ板に設けられ、当該スペーサ板の厚さに関連付けられた位置に突出する表示凸部と、スペーサ板保持部材に設けられ、内部に保持されたスペーサ板の表示凸部を外部に露出させる開口部と、で構成され、開口部から露出した表示凸部の位置によって、ワックス当接部の位置を表示することとしてもよい。この構成によれば、スペーサ板厚表示部を簡易な構成で実現することができる。また、表示凸部はスペーサ板自体に設けられているので、スペーサ板厚表示部は、スペーサ板の厚さを正確に表示することができる。
【0017】
本発明のワキシング装置は、走行する紡績糸にワックスを付与するためのワックス成形体を保持するワックス保持部と、ワックス保持部に保持されたワックス成形体に当接して、紡績糸に対するワックス成形体の位置決めを行うワックス当接部と、ワックス当接部を支持する支持部と、ワックス当接部と支持部との間に配置され、支持部に対するワックス当接部の位置を決定する位置決定部材と、位置決定部材で決定されるワックス当接部の位置を表示するワックス当接部位置表示部と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
このワキシング装置では、ワックス当接部がワックス成形体に当接することで、ワックス成形体が位置決めされる。また、ワックス当接部と支持部との間に配置された位置決定部材によって、ワックス当接部の支持部に対する位置が決定される。また、ワックス当接部位置表示部によってワックス当接部の位置が表示されるので、ワックス成形体の位置の確認が容易になる。従って、ワックス成形体の位置の調整作業を効率的に行うことができ、その結果、紡績糸に対するワックスの付与量の調整作業が容易になる。
【0019】
また、位置決定部材は、支持部に対するワックス当接部の位置を調整する所定厚さの板状のスペーサ板と、厚さが異なる複数種類のスペーサ板を選択的に保持可能であり、スペーサ板を保持した状態でワックス当接部に対して着脱可能に設けられたスペーサ板保持部材と、を有しており、ワックス当接部位置表示部は、スペーサ板保持部材に保持されたスペーサ板の厚さに関連する情報を表示することにより、ワックス当接部の位置を表示することとしてもよい。この構成によれば、スペーサ板保持部材に保持されたスペーサ板の厚さを容易に確認することができる。
【0020】
本発明の紡績ユニットは、スライバをドラフトして繊維束とするドラフト装置と、ドラフト装置によりドラフトされた繊維束を旋回気流によって紡績し紡績糸を生成する空気紡績装置と、空気紡績装置により紡出された紡績糸にワックスを付与する上記の何れかの構成を有するワキシング装置と、ワキシング装置によってワックスが付与された紡績糸をパッケージに巻き取る巻取装置と、を備えたことを特徴とする。
【0021】
この紡績ユニットでは、旋回気流を用いる空気紡績装置によって紡績糸を生成している。旋回気流により紡績された紡績糸は、リング糸と比べて毛羽が脱落し難い。毛羽が脱落し易いリング糸にワックスを付与する紡績ユニットの場合、脱落した毛羽がワックス体の表面に付着し、ワックスがリング糸に付着し難くなる。しかし、旋回気流により紡績された紡績糸は、毛羽が脱落し難く、ワックス体の表面に毛羽が付着し難いため、紡績糸にワックスを直接付与することができる。そのため、ワックス体は削ずれ易く、付与量が調整された状態で紡績糸にワックスを付与することが重要である。よって、空気紡績装置を備えた紡績ユニットにおいては、付与量が調整された状態で紡績糸にワックスを付与する上述のワキシング装置の構成を採用することが好適である。
【0022】
また、位置決定部材は、正面側から挿抜して着脱可能であることとしてもよい。この構成によれば、作業者は、紡績ユニットの正面側から位置決定部材を挿抜して交換することができるので、ワックス成形体の位置の調整作業を容易に行うことができる。
【0023】
また、本発明の紡績機は、上述の何れかの紡績ユニットを複数備えたことを特徴とする。複数の紡績ユニット各々に属する各々のワキシング装置において、位置決定部材の交換を容易に行うことができ、紡績機全体でのワックス成形体の位置の調整作業を効率良く行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のワキシング装置、紡績ユニット及び紡績機によれば、紡績糸に対するワックスの付与量の調整作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る紡績機の正面図である。
【図2】図1の紡績機の紡績ユニットの側面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るワキシング装置の斜視図である。
【図4】図3のワキシング装置の要部を示す正面図である。
【図5】図3のワキシング装置のワックスピンを示す斜視図である。
【図6】図3のワキシング装置の要部であり、スペーサユニットを挿抜する状態を示す分解斜視図である。
【図7】図3のワキシング装置の要部を示す断面図である。
【図8】図6のスペーサユニットの分解斜視図である。
【図9】図3のワキシング装置のスペーサユニット受け部とスペーサ板ホルダーとを示す斜視図である。
【図10】スペーサユニット受け部側から見たスペーサ板ホルダーの斜視図である。
【図11】(a)〜(b)は、図6のスペーサユニットのスペーサ板を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るワキシング装置、紡績ユニット及び紡績機の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書において「上流」及び「下流」とは、紡績時での糸の走行方向における上流及び下流を意味するものとする。図1は紡績機の全体的な構成を示した正面図、図2は紡績機の縦断面図である。
【0027】
図1に示す紡績機1は、並設された多数の紡績ユニット2を備えている。この紡績機1は、糸継台車3と、ブロアボックス80と、原動機ボックス5と、を備えている。なお、紡績機1が設置される工場では、図1における紡績機1から見て紙面手前側に、紡績ユニット2の配列方向に延びる作業者通路が設けられる。作業者は、作業者通路側から、各紡績ユニット2の操作や監視等を行うことができる。
【0028】
図1に示すように、各紡績ユニット2は、上流から下流へ向かって順に、ドラフト装置7と、空気紡績装置9と、糸弛み取り装置(糸貯留装置)12と、ワキシング装置100と、巻取装置13と、を主要な構成として備えている。ドラフト装置7は紡績機1の筐体6の上端近傍に設けられており、このドラフト装置7から送られてくる繊維束8を空気紡績装置9で紡績するように構成している。空気紡績装置9から送出された紡績糸10は後述のヤーンクリアラ52を通過した後、糸弛み取り装置12で更に下方に送られてワキシング装置100でワックス付与される。その後、紡績糸10は、巻取装置13によって巻き取られ、これによりパッケージ45が形成される。
【0029】
ドラフト装置7は、スライバ15を延伸して繊維束8にするためのものである。このドラフト装置7は図2に示すように、バックローラ対16、サードローラ対17、エプロンベルト18を装架したミドルローラ対19、及びフロントローラ対20の4つのローラ対を備えている。各ローラ対16,17,19,20のボトムローラは、原動機ボックス5からの動力、又はそれぞれの紡績ユニット2に配置された図示しない電動モータの動力により駆動される。各ローラ対16,17,19,20は、回転速度を異ならせて駆動され、この結果、上流側から供給されたスライバ15を延伸して繊維束8にし、下流側の空気紡績装置9に送ることができる。
【0030】
空気紡績装置9は、旋回気流を利用して繊維束8に撚りを与え、紡績糸10を生成する。空気紡績装置9は、詳細な説明や図示は省略するが、繊維案内部と、旋回流発生ノズルと、中空ガイド軸体と、を備えている。繊維案内部は、ドラフト装置7から送られた繊維束8を、空気紡績装置9の内部に形成される紡績室に案内する。旋回流発生ノズルは、繊維束8の経路の周囲に配置され、紡績室内に旋回流を発生させる。この旋回流によって、紡績室内の繊維束8の繊維端が反転され旋回する。中空ガイド軸体は、紡績された紡績糸10を紡績室から空気紡績装置9の外部へと案内する。
【0031】
空気紡績装置9の下流には、糸弛み取り装置12が設けられている。この糸弛み取り装置12は、紡績糸10に所定の張力を与えて空気紡績装置9から引き出す機能と、糸継台車3(後述)による糸継ぎ時などに空気紡績装置9から送出される紡績糸10を滞留させて紡績糸10の弛みを防止する機能と、巻取装置13(後述)側の張力の変動が空気紡績装置9側に伝わらないように張力を調節する機能と、を有している。図2に示すように、糸弛み取り装置12は、弛み取りローラ(糸貯留ローラ)21と、糸掛け部材22と、上流側ガイド23と、電動モータ25と、下流側ガイド26と、糸貯留量センサ27と、を備えている。
【0032】
糸掛け部材22は、紡績糸10に係合する(引っ掛ける)ことが可能に構成されており、紡績糸10に係合した状態で弛み取りローラ21と一体回転することにより、当該弛み取りローラ21の外周面に紡績糸10を巻き付けることができるように構成されている。
【0033】
弛み取りローラ21は、その外周面に紡績糸10を一定量巻き付けて貯留することができるように構成されている。また、弛み取りローラ21は、電動モータ25によって回転駆動される。この構成で、弛み取りローラ21の外周に巻き付けられた紡績糸10は、弛み取りローラ21が回転することにより当該弛み取りローラ21を締め付けるようにして巻かれ、糸弛み取り装置12よりも上流側の紡績糸10を引っ張る。即ち、外周に紡績糸10を巻き付けた状態の弛み取りローラ21を所定の回転速度で回転させることで、紡績糸10に所定の張力を与えて空気紡績装置9から所定の速度で引き出し、所定の速度で下流側に搬送することができる。
【0034】
そして、弛み取りローラ21の外周に所定量の紡績糸10を巻き付けることで、弛み取りローラ21と紡績糸10との間で所定の接触面積を確保することができる。これにより、弛み取りローラ21が十分な力で紡績糸10を保持して引っ張ることが可能となり、スリップ等を発生させることなく空気紡績装置9から安定した速度で紡績糸10を引き出すことができる。また、図2に示すように、空気紡績装置9と糸弛み取り装置12との間には紡績糸10に張力を与えるための他の構成(従来のデリベリローラなど)がないので、空気紡績装置9からの糸の引出し速度は、弛み取りローラ21の回転速度によって決定される。従って、本実施形態の紡績機1では、糸弛み取り装置12によって紡績糸10に対して張力を与え、バラツキが少なく正確な速度で当該紡績糸10を空気紡績装置9から引き出すことができる。
【0035】
糸貯留量センサ27は弛み取りローラ21上に貯留されている紡績糸10の貯留量を非接触式で検出し、不図示のユニットコントローラに送信するように構成されている。
【0036】
上流側ガイド23は弛み取りローラ21のやや上流側に配置される。上流側ガイド23は、弛み取りローラ21の外周面に対して紡績糸10を適切に案内する案内部材であるとともに、空気紡績装置9から伝播してくる紡績糸10の撚りが当該上流側ガイド23よりも下流側に伝わることを防止する撚り止めの役割を兼ねている。
【0037】
紡績機1の筐体6の前面側であって前記空気紡績装置9と前記糸弛み取り装置12との間の位置には、ヤーンクリアラ52が設けられている。そして、空気紡績装置9で紡出された紡績糸10は、糸弛み取り装置12で巻き取られる前に前記ヤーンクリアラ52を通過するようになっている。ヤーンクリアラ52は走行する紡績糸10の太さを監視し、紡績糸10の糸欠点を検出した場合に、糸欠点検出信号をユニットコントローラへ送信するように構成されている。
【0038】
上記ユニットコントローラは、前記糸欠点検出信号を受信すると、直ちに、空気紡績装置9の旋回気流発生ノズルからの圧空の噴出を停止させる。これにより、旋回気流が停止して繊維束8の加撚が停止すると共に空気紡績装置9への繊維束8の導入も停止する。そして、空気紡績装置9において繊維の連続状態が分断され、紡績糸10が切断される。その後、ユニットコントローラは、更にドラフト装置7等を停止させる。また、ユニットコントローラは糸継台車3に制御信号を送り、当該紡績ユニット2の前まで走行させる。その後、空気紡績装置9等を再び駆動し、前記糸継台車3に糸継ぎを行わせて巻取りを再開させるようになっている。このとき、糸弛み取り装置12は、空気紡績装置9が紡績を再開してから巻取りが再開されるまでの間、空気紡績装置9から連続的に送出される紡績糸10を弛み取りローラ21に滞留させて紡績糸10の弛みを取るように構成されている。
【0039】
糸継台車3は、図1及び図2に示すように、スプライサ(糸継装置)43と、サクションパイプ44と、サクションマウス46と、を備えている。糸継台車3は、ある紡績ユニット2で糸切れや糸切断が発生すると、前記レール41上を当該紡績ユニット2まで走行し、停止するように構成されている。前記サクションパイプ44は、軸を中心に上下方向に回動しながら、空気紡績装置9から送出される糸端を吸い込みつつ捕捉してスプライサ43へ案内する。サクションマウス46は、軸を中心に上下方向に回動しながら、前記巻取装置13に支持されたパッケージ45から糸端を吸引しつつ捕捉してスプライサ43へ案内する。スプライサ43は、案内された糸端同士の糸継ぎを行う。
【0040】
糸弛み取り装置12の下流には、ワキシング装置100が設けられている。ワキシング装置100は、糸弛み取り装置12から巻取装置13に向けて走行する紡績糸10に、ワックスを付与する装置である。
【0041】
巻取装置13は、支軸70まわりに揺動可能に支持されたクレードルアーム71を備える。このクレードルアーム71は、紡績糸10を巻回するためのボビン48を回転可能に支持することができる。
【0042】
また、前記巻取装置13は、巻取ドラム72と、トラバース装置75と、を備えている。巻取ドラム72は、前記ボビン48やそれに紡績糸10を巻回して形成されるパッケージ45の外周面に接触して駆動できるように構成されている。また、トラバース装置75は、紡績糸10に係合可能なトラバースガイド76を備えている。この構成で、巻取装置13は、トラバースガイド76を図略の駆動手段によって往復動させながら巻取ドラム72を図略の電動モータによって駆動することで、巻取ドラム72に接触するパッケージ45を回転させ、紡績糸10を綾振りしつつパッケージ45を巻き取るようになっている。なお、トラバース装置75のトラバース機構は、複数の紡績ユニット2で共有されるシャフトにより、各紡績ユニット2で共通に駆動される。
【0043】
続いて、前述のワキシング装置100について、図3及び図4を参照しながら更に詳細に説明する。ワキシング装置100は、ワックス成形体Wを回転軸線A周りに回転させながら、走行する紡績糸10にワックス成形体Wの一端面を押し当てる。これにより、紡績糸10にワックスが付与される。
【0044】
ここでは、図3に示すようにXYZ座標系を設定し、各部位の位置関係の説明にX,Y,Zを用いる場合がある。Z軸は、ワキシング装置100に対する紡績糸10の導入・導出方向に平行である。Y軸は、紡績機1や紡績ユニット2の正面・背面方向に一致し、−Y側が正面側、+Y側が背面側である。X軸は、ワックス成形体Wの回転軸線Aに平行である。また、X軸は、紡績機1が備える複数の紡績ユニット2の配列方向に一致する。また、回転軸101の先端・後端の方向を基準とし、+X方向を「前」、−X方向を「後」として、「前方」、「後方」といったような前後の概念を含む語を説明に用いる場合がある。
【0045】
ワキシング装置100は、円筒形状のワックス成形体Wが取り付けられる回転軸101と、当該回転軸101を回転させるモータ103と、モータ103を初めとする各部品を支持するベース(支持部)105と、を備えている。ベース105は、筐体6(図2参照)に固定される。更にワキシング装置100は、回転軸101に取り付けられたワックス成形体Wを押さえる押さえレバー107を備えている。回転軸101及び押さえレバー107は、ワックス成形体Wを保持するワックス保持部として機能する。
【0046】
押さえレバー107は、図示しないバネにより後方(−X方向)に向けて付勢されている。押さえレバー107は、ワックス成形体Wの前端面Waに取り付けられた鍔状部材109を介して、ワックス成形体Wを後方に向けて押している。その一方、ワックス成形体Wの後端面Wbは、ワックス成形体Wの後方に配置されたワックスピン(ワックス当接部)113の3つの突起113pに突き当てられる。ワックスピン113のX方向の位置は、ベース105に対して位置決めされている。この構造によって、ワックス成形体WがX方向でベース105に対し位置決めされ、ワックス成形体Wの後端面Wbは、常に、ワックスピン113の3つの突起113pの先端の位置にある。なお3つの突起113pの先端は、同一平面上に存在する。
【0047】
ベース105は、回転軸101の上方(+Z側)に形成された上流ガイド部(紡績糸案内部)105uと、回転軸101の下方(−Z側)に形成された下流ガイド部(紡績糸案内部)105dと、を備えている。上流ガイド部105uは、上流側からワキシング装置100に導入される紡績糸10をガイドし、下流ガイド部105dは、ワキシング装置100から下流側に導出される紡績糸10をガイドする。ベース105の正面側には、ベース105のプレートの正面側端部から上流ガイド部105u及び下流ガイド部105dまで延びるスリットが形成されている。糸切れ又は糸切断後には、サクションパイプ44で案内される紡績糸10が、正面側から上記スリットを通して上流ガイド部105u及び下流ガイド部105dに挿入され、紡績糸10が所定の糸道に復帰する。
【0048】
上流ガイド部105uと下流ガイド部105dとを結ぶ仮想直線は、Z軸に平行であると共に、ワックスピン113の3つの突起113pよりも−Y側を通過する。また、上記仮想直線は、3つの突起113pの先端よりも僅かに+X側に位置する。このような位置関係により、上流ガイド部105uと下流ガイド部105dとの間を走行する紡績糸10は、ワックス成形体Wの後端面Wbによって−X側に押し込まれることになり、紡績糸10の走行経路は−X側に膨らむように屈曲する。そして、紡績糸10が後端面Wbを擦りながら走行することで、紡績糸10にワックスが付与される。このとき、ワックス成形体Wは、回転軸線A周りに回転しているので、ワックス成形体Wの後端面Wbは均等に磨り減っていく。また、ワックス成形体Wの消耗に伴って押さえレバー107がワックス成形体Wを後方に移動させるので、ワックス成形体Wの後端面Wbは、常に同じ位置に維持される。
【0049】
上記構造によれば、紡績糸10に対するワックスの付与量は、ベース105(上流ガイド部105u及び下流ガイド部105d)に対する、ワックス成形体WのX方向の位置(後端面WbのX方向の位置)に依存する。すなわち、ワックス成形体Wの後端面Wbが−X側に位置するほど、紡績糸10の走行経路の屈曲(−X方向への膨らみ)が大きくなり、後端面Wbが紡績糸10に押し当てられる力も強くなるので、紡績糸10に対するワックスの付与量が大きくなる。逆に、ワックス成形体Wの後端面Wbが+X側に位置するほど、紡績糸10の走行経路の屈曲が小さくなり、後端面Wbが紡績糸10に押し当てられる力も弱くなるので、紡績糸10に対するワックスの付与量が小さくなる。
【0050】
ワックスの付与量は、例えば、パッケージ45の仕様に応じて変更する必要があり、また、微調整が必要な場合もあるので、ワックス成形体Wの位置調整が、簡易な作業で行われることが好ましい。特に、多数の紡績ユニット2を備えた紡績機1にあっては、紡績ユニット2の数に応じて位置調整作業が発生するので、当該作業の簡易化は運転効率の向上に大きく貢献する。なお、前述の通り、ワックス成形体Wの位置(後端面Wbの位置)は、ワックスピン113の3つの突起113pに突き当てることで決定されるので、ワックス成形体Wの位置調整は、ワックスピン113のベース105に対する相対位置を、X方向で調整することに他ならない。このため、ワックスピン113は、ベース105に支持されると共に、ワックス成形体Wに対して進退する方向(X方向)に移動可能とされており、ワックスピン113のX方向の位置は調整可能である。
【0051】
以下、具体的に、ワックス成形体W位置の調整のためのワックスピン113位置の調整について、図5〜図7を参照しながら説明する。図5は、ワックスピン113単独の斜視図である。図6は、ワキシング装置100のうちワックスピン113の位置調整に関連する要部を取り出して示す分解斜視図であり、ベース105の一部と、ワックスピン113と、取り外されたスペーサユニット120(位置決定部材)と、を示している。図7は、図6に示す要素の断面図であり、回転軸線Aを含みXY平面に平行な断面を取った断面図である。
【0052】
図5に示すように、ワックスピン113は、ワックス成形体Wに当接する側の前端部分(第1の端部)113aと、ワックス成形体Wから遠い側の後端部分(第2の端部)113bと、前端部分113aから後端部分113bまで延びる円筒接続部113cと、を有し、一体に形成されている。前端部分113aは、回転軸線Aに平行な視線で見て略円形に形成されており、ワックス成形体W側に向けて突出する3つの突起113pを有している。3つの突起113pは、回転軸線Aを中心とする円周上に配置されている。また、3つの突起113pは、一緒にワックス成形体Wの後端面Wbに当接するように、+X方向に同じ高さで突出している。更に前端部分113aには、径方向に突出した回り止め凸部(回転阻止部)113dが形成されている。回り止め凸部113dの機能については後述する。
【0053】
円筒接続部113cの筒軸は、回転軸線Aに一致しており、円筒接続部113cの中空部にモータ103のシャフト等(図示せず)が挿通される。後端部分113bは、円筒接続部113cの後端として構成されている。後端部分113bは、円筒接続部113cの外周面から径方向に突出する3つのツメ部113qを有している。3つのツメ部113qは、周方向に所定の間隔で配置されている。
【0054】
図6及び図7に示すように、ワックスピン113は、ベース105に取り付けられ、ワックス成形体Wに対して進退する方向(X方向)に移動可能に支持されている。具体的には、ベース105は、回転軸線A上で+X方向に突き出したスペーサユニット受け部106を有している。ワックスピン113の後端部分113bが、スペーサユニット受け部106の中央の孔に挿入される。ワックスピン113は、円筒接続部113cの外周面をスペーサユニット受け部106の孔に摺動させながら、X方向に前後移動可能な状態とされている。
【0055】
更に図7に示すように、ワックスピン113のツメ部113qは、スペーサユニット受け部106との間に組み込まれた圧縮バネ(付勢部材)119によって、ベース105に対し−X方向に付勢されている。なお、図7の断面には1つのツメ部113qのみが現れているが、他の2つのツメ部113qも同様の構成で−X方向に付勢されている。ここでは、3つのツメ部113qが周方向に所定の間隔で配置されているので、ワックスピン113全体としては、上記周方向において−X方向に付勢され、ワックスピン113の位置精度が高い。なお、ツメ部113qの個数は3つに限られず、周方向に所定の間隔で配置されれば4つ以上のツメ部113qが形成されてもよい。
【0056】
スペーサユニット120は、ベース105に対するワックスピン113のX方向での位置を決定するための部材である。図6及び図7に示すように、スペーサユニット120は、上記の構成で−X方向に付勢されたワックスピン113と、スペーサユニット受け部106との間に挟み込まれる。図8にも示すように、スペーサユニット120は、背面側(+Y側)が開放された馬蹄形をなしており、薄板状のスペーサ板121(図11参照)と、スペーサ板121を保持するスペーサ板ホルダー(スペーサ板保持部材)123と、スペーサ板ホルダー123にスペーサ板121を固定するための留め具(固定部材)125と、を有している。スペーサ板121、スペーサ板ホルダー123、及び留め具125もすべて馬蹄形を呈する。
【0057】
図8に示すように、スペーサ板ホルダー123の載置面123c上にスペーサ板121が載置され、スペーサ板121の外縁部を留め具125で押さえ込むようにして、留め具125がスペーサ板ホルダー123に取り付けられる。このとき、留め具125の両端部に形成された突起部125aが、スペーサ板ホルダー123の対応箇所の凹部123aに嵌り込む。これにより、留め具125がスペーサ板ホルダー123から容易に分離しなくなり、その結果、留め具125で押さえられたスペーサ板121も、スペーサ板ホルダー123から容易に脱落しなくなる。
【0058】
以上のように組み立てられたスペーサユニット120は、図6及び図3に示すように、ベース105のスペーサユニット受け部106とワックスピン113との間に挿入され、着脱可能に取り付けられる。作業者は、圧縮バネ119の付勢力に逆らって+X方向にワックスピン113を引っ張り、スペーサユニット120を所定位置にセットした後、ワックスピン113を開放するといった操作で、スペーサユニット120を取り付ければよい。また、作業者は、逆の操作によってスペーサユニット120を取り外せばよい。
【0059】
スペーサユニット120が取り付けられた状態では、図7に示すように、ワックスピン113の前端部分113aの後面113tと、スペーサユニット受け部106の前面106hとの間に、スペーサ板ホルダー123の一部及びスペーサ板121が挟み込まれる。
【0060】
このとき、図9に示されるスペーサ板ホルダー123の内縁部123rが、前面106hに形成された段差部106rに係合してスペーサ板ホルダー123のZ方向の位置が固定される。また、図10に示すように、スペーサ板ホルダー123の、スペーサユニット受け部106に面する側には、スペーサユニット受け部106に向けて突出した凸条部123dが設けられている。そして、図7にも示されるように、スペーサ板ホルダー123の凸条部123dが、対面する前面106hの凹溝106kに嵌り込むことで、スペーサ板ホルダー123のY方向の位置及び回転軸線A周りの回転方向の位置が固定される。この構造により、ベース105に対するスペーサユニット120の移動や回転が阻止され、スペーサユニット120はスペーサユニット受け部106とワックスピン113との間に確実に保持される。
【0061】
更に、スペーサ板ホルダー123には、切欠部123b(図6,図8参照)が形成されており、ワックスピン113の回り止め凸部113dが当該切欠部123bに嵌り込む。これにより、ワックスピン113のスペーサユニット120に対する回転軸線A周りの回転が阻止される。この結果、ベース105に対するワックスピン113の回転軸線A周りの回転が阻止される。以上のように、内縁部123r、段差部106r、凸条部123d、凹溝106k、切欠部123b、及び回り止め凸部113dによって、ベース105に対するワックスピン113の回転軸線A周りの回転を阻止する回転阻止手段が構成されている。
【0062】
以上のようなスペーサユニット120が取り付けられることで、ワックスピン113の前端部分113aの後面113tと、スペーサユニット受け部106の前面106hとの間隙が決定され、その結果、ワックスピン113のベース105に対するX方向の相対位置が決定される。このような構成から理解されるように、ワックスピン113のX方向の位置を調整するためには、スペーサ板121の厚さを調整すればよい。
【0063】
そこで、図11(a)〜(c)に例示するように、ワキシング装置100においては、種々の厚さのスペーサ板121が準備される。作業者が、スペーサユニット120にセットするスペーサ板121を適宜選択することにより、スペーサ板121の板厚に応じてワックスピン113のX方向の位置が調整される。
【0064】
また、図11(a)〜(c)に示されるように、板厚が異なる各スペーサ板121a,121b,121cには、その形成位置によって板厚を判別可能とする凸片(表示凸部)122a,122b,122cがそれぞれ形成されている。すなわち、凸片122a,122b,122cが突出する位置は、各スペーサ板121a,121b,121cの板厚に関連付けられている。例えば、板厚0.2mmのスペーサ板121aの凸片122aは下段の位置に突出し、板厚0.1mmのスペーサ板121bの凸片122bは中段の位置に突出し、板厚0.05mmのスペーサ板121cの凸片122cは上段の位置に突出している。
【0065】
そして、各凸片122a,122b,122cの突出位置(下段、中段、上段)に対応する位置に、スペーサ板ホルダー123には、開口123h,123j,123k(図6参照)が形成されている。各開口123h,123j,123kは、それぞれ凸片122a,122b,122cを挿通させるように、スペーサ板ホルダー123の壁面を貫通しており、各凸片122a,122b,122cは、それぞれ各開口123h,123j,123kから外側に突出して、紡績ユニット2の正面側から視認可能となる。なお、紡績ユニット2の「正面側」とは、紡績機1の設置場所において作業者通路に面する側である。
【0066】
この構造に基づき、どの開口123h,123j,123kから凸片122a,122b,122cが突出しているかによって、スペーサ板121の板厚、ワックスピン113のX方向の位置が表示されることになる。例えば、図6の場合、開口123hから凸片122aが突出しているので、板厚0.2mmのスペーサ板121aがセットされていることが判る。この構成によれば、作業者は、作業者通路から各開口123h,123j,123kを目視確認することにより、どの厚さのスペーサ板121がスペーサユニット120にセットされているかを知ることができる。
【0067】
このように、スペーサ板121に形成された凸片122a,122b,122cと、スペーサ板ホルダー123に形成された開口123h,123j,123kと、は、スペーサ板厚表示部を構成する。当該スペーサ板厚表示部は、スペーサユニット120にセットされたスペーサ板121の板厚を表示し、ひいては、ワックスピン113の位置、ワックス成形体Wの位置、及び紡績糸10に対するワックスの塗布量を間接的に表示する機能を有するものであり、ワックス当接部位置表示部を構成する。
【0068】
続いて、以上説明したワキシング装置100による作用効果について説明する。
【0069】
ワキシング装置100では、ワックス成形体Wの位置の調整時に着脱されるスペーサユニット120が、付勢されたワックスピン113とベース105とで挟み込んで保持されるので、ネジ等を用いてスペーサユニット120を固定する必要がない。すなわち、付勢力に逆らってワックスピン113を+X方向に引っ張るといった簡単な操作で、工具を必要とせずに、スペーサユニット120の着脱作業を容易に行うことができる。
【0070】
スペーサユニット120にセットすべき板厚のスペーサ板121を選択し取り替えるといった簡易な手法で、ワックスピン113のX方向の位置が調整される。その結果、ワックス成形体W及びその後端面WbのX方向の位置が調整され、紡績糸10に対するワックスの付与量が調整される。以上のとおり、ワキシング装置100によれば、作業者が、ワックス成形体Wの位置の調整作業を容易に行うことができ、紡績糸10に対するワックスの付与量の調整作業を容易に行うことができる。
【0071】
スペーサユニット120は、背面側(+Y側)が開放された馬蹄形をなすので、スペーサユニット120を着脱する際に、ワックス成形体Wやワックスピン113を回転軸101から一旦取り外すといった作業も必要ない。更に、紡績機1の正面側或いは紡績ユニット2の正面側からスペーサユニット120をY方向に挿抜して着脱可能であり、作業者はワックス成形体Wの位置の調整作業を容易に行うことができる。従って、スペーサユニット120が馬蹄形をなす構成も、ワックスの付与量の調整作業の効率化に寄与する。
【0072】
ワックスピン113の後面113tが、圧縮バネ119の付勢力によってスペーサユニット120に確実に突き当てられるので、ワックスピン113の位置精度が向上し、その結果、ワックス成形体Wの位置精度が向上する。
【0073】
ワックスピン113の後端部分113bの3つのツメ部113qに圧縮バネ119の付勢力が作用するので、ワックスピン113全体としては、周方向において−X方向に付勢されている。その結果、突起113pが均等にワックス成形体Wの後端面Wbに当接し、後端面Wbの位置精度が向上する。
【0074】
円周方向に配列された3つの突起113pにより、ワックスピン113がワックス成形体Wの後端面Wbに3点で当接し、ワックス成形体Wの後端面Wbが安定的にX方向で位置決めされるので、紡績糸10に対し安定的にワックスが付与される。
【0075】
上流ガイド部105uと下流ガイド部105dとを結ぶ仮想直線は、ワックスピン113の3つすべての突起113pよりも−Y側を通過する。すなわち、3つの突起113pはすべて、ワキシング装置100内の糸道よりも背面側(+Y側)に存在する。この構成によれば、糸切れ又は糸切断後に、糸道に再挿入される紡績糸10が、突起113pに干渉せずに円滑に正面側(−Y側)から挿入される。ここでは、突起113pの数を3つとしたので、上記のような紡績糸10の糸道への挿入経路を確保し易い。
【0076】
前述の回転阻止手段によって、ベース105に対するワックスピン113の回転軸線A周りの回転が阻止されるので、ワックスピン113がワックス成形体Wの回転に引き摺られることが避けられ、紡績糸10に対してワックスを安定して付与することができる。
【0077】
スペーサユニット120は、スペーサ板121をスペーサ板ホルダー123に位置固定する留め具125を有しているので、スペーサユニット120をワキシング装置100から着脱する際に、スペーサ板121が脱落しにくく、スペーサユニット120の着脱作業を円滑に行うことができる。
【0078】
スペーサユニット120は、凸片122a,122b,122cと開口123h,123j,123kとで構成されるスペーサ板厚表示部を有する。これにより、作業者は、スペーサ板厚表示部を見て、現在セットされているスペーサ板121の板厚を知ることができ、ワックス成形体Wの位置調整作業をより容易に行うことができる。
【0079】
スペーサ板厚表示部は、凸片122a,122b,122cと開口123h,123j,123kといった簡易な構成で実現することができる。凸片122a,122b,122cはスペーサ板121自体に設けられているので、スペーサ板厚が誤って表示される可能性が低く、スペーサ板121の厚さを正確に知ることができる。
【0080】
上記のようなワキシング装置100を備える紡績ユニット2では、旋回気流を用いる空気紡績装置9によって紡績糸10を生成している。旋回気流により紡績された紡績糸10は、リング糸と比べて毛羽が脱落し難い。毛羽が脱落し易いリング糸にワックスを付与する紡績ユニットの場合、脱落した毛羽がワックスの表面に付着し、ワックスがリング糸に付着し難くなる。しかし、旋回気流により紡績された紡績糸10は、毛羽が脱落し難く、ワックス体Wの表面に毛羽が付着し易いため、紡績糸10にワックスを直接付与することができる。そのため、ワックス体Wは削ずれ易く、付与量が調整された状態で紡績糸10にワックスを付与することが重要である。よって、空気紡績装置9を備えた紡績ユニット2においては、付与量が調整された状態で紡績糸10にワックスを付与する上述のワキシング装置100を採用することが好適である。
【0081】
紡績ユニット2を複数備える紡績機1では、複数の紡績ユニット2の各々に属する各々のワキシング装置100において、スペーサユニット120の交換を容易に行うことができ、紡績機1全体でのワックス成形体Wの位置の調整作業を効率良く行うことができる。
【0082】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形したものであってもよい。
【0083】
例えば、実施形態の紡績機1及び紡績ユニット2では、紡績糸10を一定量巻き付けて貯留する弛み取りローラ21によって空気紡績装置9から紡績糸10を引き出しているが、本発明は、デリベリローラとニップローラとで空気紡績装置から紡績糸を引き出すタイプの紡績機及び紡績ユニットに適用してもよい。
【0084】
実施形態の紡績機1及び紡績ユニット2では、糸欠点検出時に空気紡績装置9の旋回気流を停止させて紡績糸10の切断を実行しているが、本発明は、カッターを用いて糸の切断を行うタイプの紡績機及び紡績ユニットに適用してもよい。
【0085】
実施形態の紡績機1及び紡績ユニット2では、上部のドラフト装置7から下部の巻取装置13に向けて、糸が下向きに走行するように糸道が配置されているが、本発明は、下から上に向けて走行する糸道が配置された紡績機や紡績ユニットに適用してもよい。
【0086】
実施形態の紡績機1及び紡績ユニット2では、空気紡績装置9は、繊維案内部に保持され、紡績室に突出するように配置されたニードルを備えていてもよい。当該ニードルは、繊維束8の撚りが空気紡績装置9の上流側に伝播することを防止する。空気紡績装置9は、ニードルの代わりに、繊維案内部の下流側端部により、繊維束8の撚りの伝播を防止してもよい。また、空気紡績装置9は、互いに反対方向に撚りを掛ける一対のエアジェットノズルを備えていてもよい。
【0087】
実施形態の紡績機1及び紡績ユニット2では、ドラフト装置7のボトムローラやトラバース装置75のトラバース機構が、各紡績ユニット2に共通で駆動されているが、本発明は、紡績ユニットの各部(例えば、ドラフト装置、空気紡績装置、糸巻取装置等)が各紡績ユニット2で独立で駆動されるタイプの紡績機及び紡績ユニットに適用してもよい。
【0088】
上記実施形態では、ワキシング装置100は、空気紡績装置9を備える紡績ユニット2に設けられている。しかし、本発明は、当該実施形態に限定されず、自動ワインダ等、糸にワックスを付与しながらパッケージを巻き取る他の糸巻取機にワキシング装置100を設けるようにしても良い。
【符号の説明】
【0089】
1…紡績機、2…紡績ユニット、7…ドラフト装置、9…空気紡績装置、10…紡績糸、45…パッケージ、100…ワキシング装置、101…回転軸(ワックス保持部)、105…ベース(支持部)、105u…上流ガイド部(紡績糸案内部)、105d…下流ガイド部(紡績糸案内部)、106r…段差部(回転阻止手段)、106k…凹溝(回転阻止手段)、113…ワックスピン(ワックス当接部)、113a…前端部分(第1の端部)、113b…後端部分(第2の端部)、113c…円筒接続部(接続部)、113d…回り止め凸部(回転阻止手段)、113p…突起(凸部)、113q…ツメ部、119…圧縮バネ(付勢部材)、120…スペーサユニット(位置決定部材)、121…スペーサ板、122a〜122c…凸片(表示凸部)、123…スペーサ板ホルダー(スペーサ保持部)、123b…凸条部(回転阻止手段)、123d…切欠部(回転阻止手段)、123h〜123k…開口(開口部)、125…留め具(固定部材)、W…ワックス成形体、Wb…後端面(ワックス当接部側の面)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行する紡績糸にワックスを付与するためのワックス成形体を保持するワックス保持部と、
前記ワックス保持部に保持された前記ワックス成形体に当接して、前記紡績糸に対する前記ワックス成形体の位置決めを行うワックス当接部と、
前記ワックス当接部を移動可能に支持する支持部と、
前記支持部に対して前記ワックス当接部を付勢する付勢部材と、
前記付勢部材で付勢された前記ワックス当接部と前記支持部とによって着脱可能に保持され、前記支持部に対する前記ワックス当接部の位置を決定する位置決定部材と、
を備えたことを特徴とするワキシング装置。
【請求項2】
前記ワックス当接部は、
前記ワックス成形体に当接する第1の端部と、前記ワックス成形体から遠い側の他の端部である第2の端部とを有し、
前記第2の端部には、前記付勢部材による付勢力が付与されていることを特徴とする請求項1に記載のワキシング装置。
【請求項3】
前記ワックス当接部は、前記第1の端部から前記第2の端部まで延在する円筒形状の接続部を有しており、
前記第2の端部は、前記接続部から径方向に突出し前記付勢部材による前記付勢力を受ける少なくとも3つのツメ部を有することを特徴とする請求項2に記載のワキシング装置。
【請求項4】
前記ワックス成形体の前記ワックス当接部側の面に前記紡績糸が接触して走行するように前記紡績糸を案内する紡績糸案内部を更に備え、
前記第1の端部は、
前記ワックス成形体に対する進退方向に平行な視線で見て略円形状に形成され、
円周方向に配列され前記ワックス成形体に向けて突出する3つの凸部を有していることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のワキシング装置。
【請求項5】
前記第1の端部には、前記支持部に対する前記ワックス当接部の前記円周方向への回転を阻止する回転阻止手段が設けられていることを特徴とする請求項4に記載のワキシング装置。
【請求項6】
前記位置決定部材は、
前記支持部に対する前記ワックス当接部の位置を調整する所定厚さの板状のスペーサ板と、
厚さが異なる複数種類の前記スペーサ板を選択的に保持可能であり、前記スペーサ板を保持した状態で前記ワックス当接部に対して着脱可能に設けられたスペーサ板保持部材と、を有することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のワキシング装置。
【請求項7】
前記ワックス保持部と前記ワックス当接部とは、前記紡績糸が前記ワックス成形体に接触することにより屈曲した走行経路で走行するように前記ワックス成形体の位置決めを行い、
前記スペーサ板保持部材に保持される前記スペーサ板の厚さが薄いほど、前記紡績糸の前記走行経路の屈曲が大きくなって、前記紡績糸へのワックスの付与量が大きくなり、
前記スペーサ板保持部材に保持される前記スペーサ板の厚さが厚いほど、前記紡績糸の前記走行経路の屈曲が小さくなって、前記紡績糸へのワックスの付与量が小さくなることを特徴とする請求項6に記載のワキシング装置。
【請求項8】
前記位置決定部材は、
前記スペーサ板を前記スペーサ板保持部材に固定する固定部材を更に有することを特徴とする請求項6又は7の何れか1項に記載のワキシング装置。
【請求項9】
前記位置決定部材は、
前記スペーサ板保持部材に保持された前記スペーサ板の厚さを表示するスペーサ板厚表示部を有することを特徴とする請求項6〜8の何れか1項に記載のワキシング装置。
【請求項10】
前記スペーサ板厚表示部は、
前記スペーサ板に設けられ、当該スペーサ板の厚さに関連付けられた位置に突出する表示凸部と、
前記スペーサ板保持部材に設けられ、内部に保持された前記スペーサ板の前記表示凸部を外部に露出させる開口部と、で構成され、
前記開口部から露出した前記表示凸部の位置によって、前記ワックス当接部の位置を表示することを特徴とする請求項9に記載のワキシング装置。
【請求項11】
走行する紡績糸にワックスを付与するためのワックス成形体を保持するワックス保持部と、
前記ワックス保持部に保持された前記ワックス成形体に当接して、前記紡績糸に対する前記ワックス成形体の位置決めを行うワックス当接部と、
前記ワックス当接部を支持する支持部と、
前記ワックス当接部と前記支持部との間に配置され、前記支持部に対する前記ワックス当接部の位置を決定する位置決定部材と、
前記位置決定部材で決定される前記ワックス当接部の位置を表示するワックス当接部位置表示部と、を備えたことを特徴とするワキシング装置。
【請求項12】
前記位置決定部材は、
前記支持部に対する前記ワックス当接部の位置を調整する所定厚さの板状のスペーサ板と、
厚さが異なる複数種類の前記スペーサ板を選択的に保持可能であり、前記スペーサ板を保持した状態で前記ワックス当接部に対して着脱可能に設けられたスペーサ板保持部材と、を有しており、
前記ワックス当接部位置表示部は、
前記スペーサ板保持部材に保持された前記スペーサ板の厚さに関連する情報を表示することにより、前記ワックス当接部の位置を表示することを特徴とする請求項11に記載のワキシング装置。
【請求項13】
スライバをドラフトして繊維束とするドラフト装置と、
前記ドラフト装置によりドラフトされた繊維束を旋回気流によって紡績し紡績糸を生成する空気紡績装置と、
前記空気紡績装置により紡出された前記紡績糸にワックスを付与する請求項1〜12の何れか1項に記載のワキシング装置と、
前記ワキシング装置によってワックスが付与された前記紡績糸をパッケージに巻き取る巻取装置と、を備えたことを特徴とする紡績ユニット。
【請求項14】
前記位置決定部材は、
正面側から挿抜して着脱可能であることを特徴とする請求項13に記載の紡績ユニット。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の紡績ユニットを複数備えたことを特徴とする紡績機。
【請求項1】
走行する紡績糸にワックスを付与するためのワックス成形体を保持するワックス保持部と、
前記ワックス保持部に保持された前記ワックス成形体に当接して、前記紡績糸に対する前記ワックス成形体の位置決めを行うワックス当接部と、
前記ワックス当接部を移動可能に支持する支持部と、
前記支持部に対して前記ワックス当接部を付勢する付勢部材と、
前記付勢部材で付勢された前記ワックス当接部と前記支持部とによって着脱可能に保持され、前記支持部に対する前記ワックス当接部の位置を決定する位置決定部材と、
を備えたことを特徴とするワキシング装置。
【請求項2】
前記ワックス当接部は、
前記ワックス成形体に当接する第1の端部と、前記ワックス成形体から遠い側の他の端部である第2の端部とを有し、
前記第2の端部には、前記付勢部材による付勢力が付与されていることを特徴とする請求項1に記載のワキシング装置。
【請求項3】
前記ワックス当接部は、前記第1の端部から前記第2の端部まで延在する円筒形状の接続部を有しており、
前記第2の端部は、前記接続部から径方向に突出し前記付勢部材による前記付勢力を受ける少なくとも3つのツメ部を有することを特徴とする請求項2に記載のワキシング装置。
【請求項4】
前記ワックス成形体の前記ワックス当接部側の面に前記紡績糸が接触して走行するように前記紡績糸を案内する紡績糸案内部を更に備え、
前記第1の端部は、
前記ワックス成形体に対する進退方向に平行な視線で見て略円形状に形成され、
円周方向に配列され前記ワックス成形体に向けて突出する3つの凸部を有していることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のワキシング装置。
【請求項5】
前記第1の端部には、前記支持部に対する前記ワックス当接部の前記円周方向への回転を阻止する回転阻止手段が設けられていることを特徴とする請求項4に記載のワキシング装置。
【請求項6】
前記位置決定部材は、
前記支持部に対する前記ワックス当接部の位置を調整する所定厚さの板状のスペーサ板と、
厚さが異なる複数種類の前記スペーサ板を選択的に保持可能であり、前記スペーサ板を保持した状態で前記ワックス当接部に対して着脱可能に設けられたスペーサ板保持部材と、を有することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のワキシング装置。
【請求項7】
前記ワックス保持部と前記ワックス当接部とは、前記紡績糸が前記ワックス成形体に接触することにより屈曲した走行経路で走行するように前記ワックス成形体の位置決めを行い、
前記スペーサ板保持部材に保持される前記スペーサ板の厚さが薄いほど、前記紡績糸の前記走行経路の屈曲が大きくなって、前記紡績糸へのワックスの付与量が大きくなり、
前記スペーサ板保持部材に保持される前記スペーサ板の厚さが厚いほど、前記紡績糸の前記走行経路の屈曲が小さくなって、前記紡績糸へのワックスの付与量が小さくなることを特徴とする請求項6に記載のワキシング装置。
【請求項8】
前記位置決定部材は、
前記スペーサ板を前記スペーサ板保持部材に固定する固定部材を更に有することを特徴とする請求項6又は7の何れか1項に記載のワキシング装置。
【請求項9】
前記位置決定部材は、
前記スペーサ板保持部材に保持された前記スペーサ板の厚さを表示するスペーサ板厚表示部を有することを特徴とする請求項6〜8の何れか1項に記載のワキシング装置。
【請求項10】
前記スペーサ板厚表示部は、
前記スペーサ板に設けられ、当該スペーサ板の厚さに関連付けられた位置に突出する表示凸部と、
前記スペーサ板保持部材に設けられ、内部に保持された前記スペーサ板の前記表示凸部を外部に露出させる開口部と、で構成され、
前記開口部から露出した前記表示凸部の位置によって、前記ワックス当接部の位置を表示することを特徴とする請求項9に記載のワキシング装置。
【請求項11】
走行する紡績糸にワックスを付与するためのワックス成形体を保持するワックス保持部と、
前記ワックス保持部に保持された前記ワックス成形体に当接して、前記紡績糸に対する前記ワックス成形体の位置決めを行うワックス当接部と、
前記ワックス当接部を支持する支持部と、
前記ワックス当接部と前記支持部との間に配置され、前記支持部に対する前記ワックス当接部の位置を決定する位置決定部材と、
前記位置決定部材で決定される前記ワックス当接部の位置を表示するワックス当接部位置表示部と、を備えたことを特徴とするワキシング装置。
【請求項12】
前記位置決定部材は、
前記支持部に対する前記ワックス当接部の位置を調整する所定厚さの板状のスペーサ板と、
厚さが異なる複数種類の前記スペーサ板を選択的に保持可能であり、前記スペーサ板を保持した状態で前記ワックス当接部に対して着脱可能に設けられたスペーサ板保持部材と、を有しており、
前記ワックス当接部位置表示部は、
前記スペーサ板保持部材に保持された前記スペーサ板の厚さに関連する情報を表示することにより、前記ワックス当接部の位置を表示することを特徴とする請求項11に記載のワキシング装置。
【請求項13】
スライバをドラフトして繊維束とするドラフト装置と、
前記ドラフト装置によりドラフトされた繊維束を旋回気流によって紡績し紡績糸を生成する空気紡績装置と、
前記空気紡績装置により紡出された前記紡績糸にワックスを付与する請求項1〜12の何れか1項に記載のワキシング装置と、
前記ワキシング装置によってワックスが付与された前記紡績糸をパッケージに巻き取る巻取装置と、を備えたことを特徴とする紡績ユニット。
【請求項14】
前記位置決定部材は、
正面側から挿抜して着脱可能であることを特徴とする請求項13に記載の紡績ユニット。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の紡績ユニットを複数備えたことを特徴とする紡績機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−57144(P2013−57144A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196332(P2011−196332)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】
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