説明

ワクチンに対する免疫応答を向上させるためのアジュバントおよび使用方法

本発明は、抗原およびTIM標的化分子を含有する組成物を提供する。本発明は、さらに、TIM標的化分子結合体、例えば、治療用または診断用部分に標的させるTIM標的化分子を提供する。本発明は、さらに、かかる組成物の使用方法を提供する。1つの実施形態において、本発明は、抗原およびTIM標的化分子が薬学的に許容され得る担体中に含まれた組成物を投与することにより、個体において免疫応答を刺激する方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、抗原およびTIM標的化分子(これらは、単一の組成物にて一緒に、または別々に投与され得る)を投与することにより、個体において免疫応答を刺激する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
微生物に対する身体の防御は、初期の先天的免疫系の反応および後期の適応的免疫系の応答によって媒介される。先天的免疫性は、例えば、微生物病原体に特徴的であり、かつ哺乳動物細胞には存在しない構造を認識する機構を伴う。かかる構造の例としては、細菌のリポ多糖(LPS)、ウイルスの二本鎖RNAおよび非メチル化CpG DNAヌクレオチドが挙げられる。先天的免疫応答のエフェクター細胞には、好中球、マクロファージおよびナチュラルキラー細胞(NK細胞)が含まれる。先天的免疫性に加え、哺乳動物を含む脊椎動物は進化した免疫学的防御機構を有し、これは、感染性因子への曝露によって刺激され、かつ特定の抗原に対する連続的な曝露の各々の場合で大きさと有効性が増加するというものである。ある特定の感染または抗原性傷害(insult)に対するその適応性から、この免疫防御機構は、適応的免疫性と表現されている。適応的免疫応答には、体液性免疫(Bリンパ球によって産生される抗体が関与)および細胞媒介性免疫(Tリンパ球によって媒介)と呼ばれる2つの型がある。
【0002】
Tリンパ球には、2つの主な型:CD8+細胞傷害性Tリンパ球(CTL)およびCD4+Tヘルパー細胞(Th細胞)が示されている。CD8+T細胞は、T細胞レセプター(TCR)を介して、例えばウイルスまたは細菌に感染した細胞上のMHCクラスI分子によって提示される外来抗原を認識するエフェクター細胞である。外来抗原が認識されると、CD8+T細胞は、活性化、成熟および増殖のプロセスを受ける。この分化プロセスは、外来抗原をディスプレイする標的細胞を破壊する能力を有するCTLクローンをもたらす。他方、Tヘルパー細胞は、エフェクター免疫応答の体液性形態および細胞媒介性形態の両方に関与する。体液性免疫応答または抗体免疫応答に関しては、Bリンパ球により、Th細胞との相互作用によって抗体が産生される。具体的には、細胞外抗原(例えば、循環微生物など)が、特殊(specialized)抗原提示細胞(APC)によって取り込まれ、プロセッシングされ、主要組織適合性複合体(MHC)クラスII分子と会合してCD4+Th細胞に提示される。これらのTh細胞が、こんどは、Bリンパ球を活性化し、抗体産生をもたらす。細胞媒介性または細胞性免疫応答は、対照的に、標的細胞の成功裡の感染後などに細胞内部に存在する微生物を中和する機能を果たす。外来抗原(例えば、微生物抗原など)は、感染細胞内で合成され、MHCクラスI分子と会合してかかる細胞の表面上に提示される。かかるエピトープの提示は、上記のCD8+CTLの刺激をもたらし、これは、こんどはCD4+Th細胞によっても刺激されるプロセスである。Th細胞は、Th1細胞およびTh2細胞と称される少なくとも2つの性質の異なる亜集団から構成される。Th1およびTh2亜型は、抗原への曝露後、共通の前駆体から分化するTh細胞の分極した集団を表す。
【0003】
各Tヘルパー細胞サブタイプは、互いに対立し、かつ互いの拡張(expansion)および機能を交差調節(cross−regulate)する、性質の異なる免疫学的効果を促進するサイトカインを分泌する。Th1細胞は、高量のサイトカイン、例えばインターフェロン−γ(IFN−γ)、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、インターロイキン−2(IL−2)およびIL−12など、ならびに低量のIL−4を分泌する。Th1関連サイトカインは、CD8+細胞傷害性Tリンパ球(CTL)活性を促進し、非常に多くの場合、細胞内病原体に対する細胞媒介性免疫応答と関連する。対照的に、Th2細胞は、高量のサイトカイン、例えばIL−4、IL−13およびIL−10など分泌するが、IFN−γは少なく、抗体応答を促進する。Th2応答は、体液性応答(例えば、炭疽菌からの保護および蠕虫感染の排除)に特に関連している。
【0004】
生じる免疫応答がTh1駆動性であるかTh2駆動性であるかは、関与する病原体および細胞内環境の因子(例えば、サイトカインなど)に大きく依存する。Tヘルパー応答または正確なTヘルパーサブセットの活性化がなされないと、ある具体的な病原体に抵抗するための充分な応答を高めることができなくなるばかりでなく、再感染に対してもたらされる免疫性が不充分となり得る。多くの感染性因子は細胞内病原体であり、この場合、細胞媒介性応答(Th1免疫性が例示される)が、保護および/または治療において重要な役割を果たすことが予想され得る。さらに、これらの感染の多くでは、不適切なTh2応答の誘発は、疾患転帰にマイナスの影響を与えることが示された。例としては、M.tuberculosis、S.mansoni、またリーシュマニア属も挙げられる。非治癒性形態のヒトおよびマウスリーシュマニア症は、強力だが逆効果を生じるTh2様優勢免疫応答に起因する。らい腫らいもまた、優勢だが不適切なTh2様応答を特色とするようである。HIV感染は、別の例を示す。この場合、他のTh細胞亜集団に対するTh1様細胞の比率の低下は、疾患症状の進行に重要な役割を果たし得ることが示されている。
【0005】
感染性因子に対する保護的措置として、微生物に対するワクチン接種プロトコルが開発されている。感染性病原体に対するワクチン接種プロトコルは、多くの場合、不充分なワクチン免疫原性、不適切な型の応答(細胞性免疫に対する抗体)、長期免疫学的記憶を惹起する能力の欠如、および/または所与の病原体の異なる血清型に対する免疫性の発生に対する機能不全が障害となる。現行のワクチン接種ストラテジーは、所与の血清型に特異的な抗体および多くの一般的な病原体(例えば、ウイルス系の血清型または病原体)に特異的な抗体を惹起することを目標としている。どの血清型が世界中に蔓延しているかを反復的にモニターすることに尽力されるべきである。この一例は、主要な感染性株であると予測されるA型インフルエンザ血清型の出現を毎年モニタリングすることである。
【0006】
ワクチン接種プロトコルを補助するため、特定の感染性疾患に対する免疫応答の発生を補助し得るアジュバントが開発されている。例えば、アルミニウム塩は、ある特定の病原体に対する抗体応答を増強させるために、比較的安全で有効なワクチンアジュバントとして使用されている。かかるアジュバントの不都合点の1つは、これらが、細胞媒介性免疫応答の刺激の際に比較的非有効性であること、および主にTh2に偏った免疫応答をもたらすことである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
適応的免疫応答の有効性を増大させるためには(例えば、ワクチン接種プロトコルにおいて、または微生物性感染時)、したがって、新規でより有効なワクチンアジュバントを開発することが重要である。本発明はこの必要性を満たし、その上、関連する利点を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
本発明は、抗原およびTIM標的化分子またはTIM標的化因子を含有する組成物を提供する。本発明は、さらに、かかる組成物の使用方法を提供する。1つの実施形態において、本発明は、抗原およびTIM標的化分子が薬学的に許容され得る担体中に含まれた組成物を投与することにより、個体において免疫応答を刺激する方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、抗原およびTIM標的化分子を投与すること(これらは、単一の組成物にて一緒に投与してもよく、または別々に投与してもよい)により、個体において免疫応答を刺激する方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
発明の詳細な説明
本発明は、抗原およびTIM標的化分子を含有する組成物ならびにかかる組成物の使用方法を提供する。1つの実施形態において、本発明は、抗原およびTIM標的化分子が薬学的に許容され得る担体中に含まれた組成物を投与することにより、個体において免疫応答を刺激する方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、抗原およびTIM標的化分子を投与すること(これらは、単一の組成物にて一緒に投与してもよく、または別々に投与してもよい)により、個体において免疫応答を刺激する方法を提供する。本発明の組成物および方法は、TIMシグナル伝達を標的化し、それにより、Th1およびTh2ヘルパー細胞のレベルを調節するために使用され得る。本発明の組成物および方法は、適切でより有効な免疫応答を増大させるためにTh1およびTh2のレベルを調節するのに好都合に使用され得る。
【0010】
感染性病原体に対するワクチン接種プロトコルは、多くの場合、不充分なワクチン免疫原性、不適切な型の応答(抗体対細胞性免疫)、長期記憶の欠如および/または所与の病原体の異なる血清型に対する免疫性をもたらすことができないことが障害となる。アジュバント(例えば、アルミニウム塩など)がワクチン配合物に、70年以上にわたって使用されており、ある特定の適応症では、その安全性および有効性が充分確立されている(Baylorら,Vaccine 20 増補版3,S18−23(2002))。アルミニウム塩をワクチンアジュバントとして細胞内病原体に対して使用することの潜在的な欠点の1つは、IgG1およびIgE抗体応答の誘発である。さらにまた、アルミニウム塩は、Th1免疫を刺激できず、CD8+T細胞の誘導を促進しない(Newmanら J.Immunol.148:2357−2362(1992);Sheikhら Vaccine 17:2974−2982(1999))。これまで、Th1/Th2バランスを随意に改変できるアジュバントまたは生物学的製剤はない。アルミニウム塩以外のアジュバントを含有するワクチンで、米国において認可されたものはまだない。
【0011】
最近、新しいファミリーの分子であって、現在はTIM(T細胞免疫グロブリンおよびムチン(T cell Immunoglobulin and Mucin)と呼ばれている、活性化されたTh1またはTh2 Tヘルパー細胞の応答の調節において重要な役割を果たす分子がキャラクタライズされた(Monneyら Nature 415:536−541(2002);Mclntireら Nat.Immunol.2:1109−1116(2001))。具体的には、TIM−3は、最終分化Th1細胞上で発現される細胞表面分子であることが確認された。対照的に、TIM−1は、分化Th2細胞上で発現される(Kuchrooら Nat.Rev.Immunol.3:454−462(2003))。本発明は、抗TIM抗体およびTIM融合タンパク質(例えば免疫グロブリンFcドメインと融合させた細胞外TIMドメイン(TIM/Fc)からなる)の、免疫応答を増強させるためのワクチンアジュバントおよび刺激物質としての使用を提供する。本発明の分子は、感染性疾患の処置のため、および悪性疾患(例えば、腫瘍など)の処置のためのワクチンアジュバントとして使用され得る。
【0012】
感染性因子に対する保護は、病原性生物に対する固有の適応的免疫応答の誘発を必要とする。適応的免疫応答のエフェクター期(phase)は、CD4Tヘルパー細胞がTh1またはTh2サブタイプのどちらに成熟するかによって、決定的な影響を受ける。各サブタイプは、互いに対立し、かつ互いの拡張および機能を交差調節する性質の異なる免疫学的効果を促進するサイトカインを分泌する。Th1細胞は、高量のサイトカイン、例えばインターフェロン−γ(IFN−γ)、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、インターロイキン−2(IL−2)およびIL−12など、ならびに低量のIL−4を分泌する(Mosmannら,J.Immunol.136:2348−2357(1986))。Th1関連サイトカインは、CD8細胞傷害性Tリンパ球(CTL)活性、およびマウスでは、細胞内病原体に感染した細胞を効果的に溶解するIgG2a抗体を促進する(Allanら,J.Immunol.144:3980−3986(1990))。対照的に、Th2細胞は、高量のサイトカイン、例えばIL−4、IL−13およびIL−10など分泌するが、IFN−γは少なく、抗体応答を促進し、マウスでは、一般的に、高量のIgG1非溶解性イソタイプを分泌する。Th2応答は、体液性応答、例えば、炭疽菌からの保護(Lepplaら,J.Clin.Invest.110:141−144(2002))および蠕虫感染の排除(Yoshidaら,Parasitol.Int.48:73−79(1999))に特に関連している。
【0013】
生じる免疫応答がTh1駆動性であるかTh2駆動性であるかは、関与する病原体および細胞内環境の因子(例えば、サイトカインなど)に大きく依存する。Tヘルパー応答または正確なTヘルパーサブセットの活性化がなされないと、ある具体的な病原体に抵抗するための充分な応答を高めることができなくなるばかりでなく、再感染に対してもたらされる免疫が不充分となり得る。多くの感染性因子は細胞内病原体であり、この場合、細胞媒介性応答(Th1免疫が例示される)が、保護および/または治療において重要な役割を果たすことが予想され得る。さらに、細胞内病原体、例えば、M.tuberculosis(Lindbladら,Infect.Immun.65:623−629(1997))もしくはLeishmania、またはS.mansoni(Scottら,Immunol.Rev.112:161−182(1989))などに対する不適切なTh2応答の誘発は、疾患転帰にマイナスの影響を与える。非治癒性形態のヒトおよびマウスリーシュマニア症は、強力だが逆効果を生じるTh2様優勢免疫応答に起因する。らい腫らいもまた、優勢だが不適切なTh2様応答を特色とするようである。HIV感染は、別の例を示す。この場合、他のTh細胞亜集団に対するTh1様細胞の比率の低下は、疾患症状の進行に重要な役割を果たし得ることが示されている。
【0014】
多くのウイルス系感染のクリアランスは、CD8T細胞の機能(これは、こんどはTh1初回免疫サイトカイン環境によって増強される)に依存する。さらにまた、異なる血清型のウイルスに対して保護的免疫(ヘテロサブタイプ的免疫として知られる現象)が誘発され得るためには、1つのウイルス血清型に対するTh1応答が必要とされる。現行のワクチン接種ストラテジーは、所与のウイルスの血清型に特異的な抗体の惹起を目標としたものである。しかしながら、このストラテジーの不都合点は、抗体が非常に特異的であり、(インフルエンザの例では、血球凝集素およびノイラミニダーゼの)表面タンパク質のアミノ酸配列の変化によりもたらされる異なる血清型のウイルスに対する保護をもたらさないことである。このような変異は、あまり見られないもの(minor)(抗原連続変異)またはよく見られるもの(major)(抗原不連続変異)であり得る。多くの一般的なウイルス系病原体に対し、どの血清型が世界中で流行しているのかをモニターするために、反復的に尽力されなければならない。この一例は、主要な感染性株であると予想されるインフルエンザ血清型の出現の年間モニタリングである。また、ヘテロサブタイプ的免疫の誘発はできないことが、インフルエンザのマウスモデルで観察された。このモデルでは、不活化されたウイルス系ワクチンの使用はTh1プロフィールを促進しない。これにより、マウスは効率的なウイルス系のクリアランスが不能となり、血清学的に性質の異なるウイルスに再感染しやすくなる(Moranら,J.Infect.Dis.180:579−585(1999))。対照的に、ワクチン接種の際に、不活化したウイルスとともにIL−12および抗IL−4抗体で処置したマウスは、Th1サイトカインの産生を特徴とする免疫応答を生じた。これらのマウスは、血清学的に異なるウイルスによるその後の抗原刺激に対するヘテロサブタイプ細胞性免疫応答を高める(mount)ことができる。Th1/Th2初回免疫環境に関して知られていることと合わせると、データは、Tヘルパー刺激および/またはTh1サイトカイン応答への偏り(deviation)が、抗原連続変異または抗原不連続変異のいずれかに由来する種々の血清型に対して広域の免疫を生じ得ることを示す。したがって、Th1応答のTIM媒介性誘導は、現在使用されているワクチンを改善するために実行可能なストラテジーであり得、TIM標的化試薬(例えば、TIMタンパク質またはTIM抗体)は、種交差またはヘテロサブタイプ的免疫を刺激するために使用され得る。
【0015】
アルミニウム塩は、ある特定の病原体に対する抗体応答を増強させるために、比較的安全で有効なワクチンアジュバントとして使用されている。かかるアジュバントの不都合点の1つは、これらが、細胞媒介性免疫応答の刺激の際に比較的非有効性であることである(GrunおよびMaurer,Cell Immunol.121:134−145(1989))。低い毒性および/または細胞性免疫を正確に制御および刺激する能力を有する他のアジュバントの開発は依然として課題である。適応的免疫応答の有効性を増大させるため(例えば、ワクチン接種プロトコルにおいて、または微生物性感染の際)、本発明は、TIM−1シグナル伝達経路、TIM−2シグナル伝達経路、TIM−3シグナル伝達経路またはTIM−4シグナル伝達経路を標的化する因子の、宿主の保護に有効なアジュバントとしての使用を提供する。
【0016】
免疫系の応答を刺激するためのワクチン接種プロトコルは、例えばウイルス系、寄生虫系、細菌系、古細菌系、マイコプラズマ系およびプリオン外的病原因子によって引き起こされる感染などの感染性疾患の予防および処置ために使用され得る。ワクチン接種プロトコルはまた、過形成および悪性疾患(例えば、腫瘍など)の予防および処置のため、ならびに免疫系の刺激が有益である任意の他の疾患のために予防的または治療的処置として、使用され得る。かかる他の疾患の例としては、自己免疫疾患、例えば、多発性硬化症、慢性関節リウマチ、1型糖尿病、乾癬および他の自己免疫疾患が挙げられる。自己免疫疾患の特性の1つは、自己エピトープに対する自己反応性抗体の生成である。かかる自己反応性抗体は、自己免疫疾患の発症、進行および慢性性性質に非常に重要な役割を果たす。例えば、かかる自己反応性抗体を中和する抗イディオタイプ抗体の生成をもたらすワクチンが使用され得る。
【0017】
本明細書に開示するように、TIM−1シグナル伝達経路を標的化する試薬は、有効なワクチンアジュバントとしての機能を果たす(実施例を参照)。かかる試薬としては、TIM−1に対する抗体、TIM−1リガンドに対する抗体、組換えTIM−1タンパク質(TIM−1融合タンパク質を含む)およびTIM−1リガンドタンパク質(TIM−1リガンド融合タンパク質を含む)が挙げられる。したがって、本発明は、有効なワクチンアジュバントとして機能するTIM−1標的化分子を提供する。本発明は、さらに、他のTIM(限定されないが、TIM−3ならびにTIM−2およびTIM−4が挙げられる)を標的化する同様の型の分子を提供する。
【0018】
本発明は、TIMシグナル伝達経路を標的化し、有効なワクチンアジュバントとしての機能を果たす因子を提供する。本明細書で使用する場合、用語「因子」は、TIMシグナル伝達経路に関して使用する場合、TIMによって媒介されるシグナル伝達経路調節する分子をいう。TIMを標的化する因子は、本明細書では、TIM標的化分子または試薬ともいう。かかる因子としては、TIM−1について例示すると、TIM−1に対する抗体、TIM−1リガンドに対する抗体、組換えTIM−1タンパク質(TIM−1融合タンパク質を含む)およびTIM−1リガンドタンパク質(TIM−1リガンド融合タンパク質を含む)が挙げられる。同様の型の因子が、他のそれぞれのTIMシグナル伝達経路(TIM−2シグナル伝達経路、TIM−3シグナル伝達経路またはTIM−4シグナル伝達経路が挙げられる)を調節するために使用され得る。融合タンパク質としては、例えば、TIM−1またはTIM−1リガンドと、タンパク質またはタンパク質断片(例えば、免疫グロブリンのFc領域、アルブミン、トランスフェリン、Mycタグ、ポリヒスチジンタグまたは他の所望のタンパク質もしくはタンパク質断片)との融合体が挙げられる。また、本発明の因子としては、化学的に修飾された因子、例えば、ペグ化されたTIMもしくはTIMリガンドまたは他の所望の化学的修飾体が挙げられる。ある具体的なTIMについて言及する場合、そのTIMの多型およびスプライスバリアントも含まれることを理解されたい。また、本発明の因子は、低分子、ペプチド、ポリペプチド、ポリヌクレオチド(アンチセンスおよびsiRNAを含む)、炭水化物(多糖を含む)、脂質、薬物、ならびにある特定のTIM(例えば、TIM−1、TIM−2、TIM−3またはTIM−4)とそのリガンドとの相互作用を刺激もしくは阻害するか、またはTIMもしくはTIMリガンドシグナル伝達を刺激もしくは阻害するその擬似物、誘導体および組合せであり得る。TIM−1シグナル伝達経路を標的化する因子の使用に関する本明細書の任意の記載は、例示であって、他のTIMシグナル伝達経路(TIM−2シグナル伝達経路、TIM−3シグナル伝達経路およびTIM−4シグナル伝達経路が挙げられる)を標的化する因子にに同様に適用され得ることを理解されたい。本発明の因子は、例えばワクチン接種において身体の免疫応答を刺激するためのアジュバントとして使用され得る。これらの因子のアジュバントとしての使用は、なんら特定の型の免疫刺激処置またはワクチン接種に限定されず、ワクチン接種プロトコルの上記の例の任意のものが含まれるが、これらに限定されない。
【0019】
本発明は、抗原およびTIM標的化分子またはTIM標的化因子が薬学的に許容され得る担体中に含まれた組成物を提供する。本明細書で使用する場合、「TIM標的化分子」は、TIMまたはTIMリガンドに結合する分子をいう。例示的なTIM標的化分子としては、限定されないが、TIMに対する抗体、TIMリガンドに対する抗体、組換えTIMタンパク質、TIM融合ポリペプチド、TIMリガンド(TIMリガンド融合ポリペプチドを含む)が挙げられる。本明細書に開示するように、抗原およびTIM標的化分子またはTIM標的化因子は、単一の組成物にて、または別々の組成物として投与され得る。
【0020】
種々のTIMが当業者によく知られており、TIM−1、TIM−2、TIM−3およびTIM−4が挙げられる。種々のTIMは、例えば、WO03/002722;WO97/44460;米国特許第5,622,861号(1997年4月22日に発行);および米国特許公開公報第2003/0124114号(これらの各々は、引用により本明細書に組み込まれる)に教示されている。例示的なTIM配列を図31および32に示す。異なる種由来の多様なTIMが、所望の用途に応じて本発明の組成物および方法に使用され得る。ある具体的な種に由来するTIMを、ある具体的な用途に使用することができ、例えば、ヒトTIMが、所望によりヒトにおいて使用され得る。また、他の種に由来するTIMを所望のとおりに使用してもよい。
【0021】
1つの実施形態において、TIM標的化分子は、例えば、TIM(例えば、TIM−1、TIM−2、TIM−3またはTIM−4)との融合タンパク質であり得、TIMの細胞外領域の少なくとも1つのドメインまたはその部分と、免疫グロブリンの定常重鎖またはその部分とを含み得る。ある具体的な実施形態では、可溶性TIM融合タンパク質は、TIMの細胞外ドメインの少なくとも1つのドメインと別のポリペプチドとを含む融合タンパク質をいう。1つの実施形態において、可溶性TIMは、例えばペプチド結合を介して免疫グロブリン(例えば、IgGなど)のFc断片と共有結合したTIMの細胞外領域を含む融合タンパク質であり得、かかる融合タンパク質は、典型的にはホモ二量体である。別の実施形態では、可溶性TIM融合体は、例えばペプチド結合を介して免疫グロブリン(例えば、IgGなど)のFc断片と共有結合したTIMの細胞外領域のIgドメインだけ(just)を含む融合タンパク質であり得、かかる融合タンパク質は、典型的にはホモ二量体である。当該技術分野ではよく知られているように、Fc断片は、2つの部分定常重鎖のホモ二量体である。各定常重鎖は、少なくともCHIドメイン、ヒンジならびにCH2およびCH3ドメインを含む。かかるFc融合タンパク質の各単量体は、免疫グロブリンの定常重鎖またはその部分(例えば、ヒンジ、CH2、CH3ドメイン)と連結させたTIMの細胞外領域を含む。ある特定の実施形態における定常重鎖は、免疫グロブリンのヒンジ領域のN末端であるCHIドメインの一部または全部を含むものであり得る。他の実施形態では、定常重鎖は、ヒンジを含むがCH1ドメインは含まないものであり得る。また別の実施形態では、定常重鎖は、ヒンジおよびCH1ドメインを含まず、例えば、IgGのCH2およびCH3ドメインのみを含む。
【0022】
1つの実施形態において、TIM標的化分子は、TIM抗体、例えばTIM−1、TIM−2、TIM−3またはTIM−4に特異的な抗体であり得る。他のTIMに対する抗体もまた、使用され得る。別の実施形態では、TIM標的化分子は、Fcと融合させたTIM−Fc融合ポリペプチド(例えば、TIM−1、TIM−2、TIM−3またはTIM−4)である。当業者は、Fcまたは他の所望のポリペプチド(所望のドメインを含有するTIMポリペプチド断片など)との多様なTIM融合ポリペプチドを容易に作製することができる。また別の実施形態では、本発明のTIM標的化分子またはTIM標的化因子は、低分子、ペプチド、ポリペプチド、ポリヌクレオチド(アンチセンスおよびsiRNAを含む)、炭水化物(多糖を含む)、脂質、薬物、ならびにTIMとそのリガンドとの相互作用またはTIMもしくはTIMリガンドシグナル伝達を刺激もしくは阻害するその擬似物、誘導体および組合せであり得る。
【0023】
標的化は、因子またはTIM標的化分子が、TIMもしくはTIMリガンドまたはTIMもしくはTIMリガンドシグナル伝達経路の成分に直接または間接的に結合するか、あるいはこれと、TIMまたはTIMリガンドの活性に影響を及ぼすような様式で相互作用する場合に起こる。活性は、当業者によって、常套的な実験室用の方法(例えば、Reith,Protein Kinase Protocols Humana Press,Totowa NJ(2001);Hardie,Protein Phosphorylation:A Practical Approach 第2版,Oxford University Press,Oxford,United Kingdom(1999);KendallおよびHill,Signal Transduction Protocols:Methods in Molecular Biology 第41巻,Humana Press,Totowa NJ(1995)を参照のこと)を用いて評価され得る。例えば、情報伝達の強度、またはレセプター結合後に起こるか、通常起こり得る別の下流の生物学的事象が評価され得る。TIMまたはTIMリガンドを標的する因子によってもたらされる活性は、天然に存在するTIMまたはTIMリガンドが天然に存在するTIMまたはTIMリガンドに結合する場合にもたらされる活性と異なり得るが、必ずしもそうでない。例えば、TIM−1を標的化する因子またはTIM標的化分子は、該レセプターに天然に存在するTIM−1リガンドが結合したら生じ得るものと実質的に同じ活性をもたらすならば、本発明の範囲に含まれる。加えて、因子またはTIM標的化分子は、天然に存在するTIMリガンドによるシグナル伝達を阻害するアンタゴニストであり得る。
【0024】
上記のように、本発明の因子は、2つの機能的部分:因子をTIMまたはTIMリガンドをもつ細胞(例えば、TIM−1、TIM−2、TIM−3またはTIM−4など)に標的化する標的化部分と、例えば、本明細書に記載のように、例えばTIMまたはTIMリガンドをもつ細胞を溶解するか、あるいは排除をもたらす二量体化および/または標的細胞枯渇性(depleting)部分とを含有し得る。したがって、因子は、TIMポリペプチドおよび異種のポリペプチド(例えば、抗体のIgGおよびIgMサブクラスのFc領域など)を含むキメラポリペプチドであり得る。Fc領域は、補体結合およびFcレセプター結合を抑制する変異を含み得るか、または細胞溶解性または標的細胞枯渇性であり得る、すなわち、補体に結合することにより、または別の機構(例えば、抗体依存的補体溶解)により細胞を破壊し得る。したがって、Fcは細胞溶解性であり得、補体およびFcレセプター媒介性活性を活性化し、標的細胞溶解をもたらし、TIMまたはTIMリガンドを発現する所望の細胞の枯渇を可能にし得る。
【0025】
Fc領域は、天然の供給源から単離されたもの、組換えにより作製されたもの、または周知のペプチド合成法を用いた化学的に合成されたものであり得る。例えば、IgG C末端ドメインに相同なFc領域を、パパインでのIgGの消化によって作製し得る。IgG Fcは、およそ50kDaの分子量を有する。本発明のポリペプチドは、Fc領域全体、または細胞溶解能を保持したより小さい部分を含むものであり得る。加えて、完全長または断片のFc領域は、野生型分子のバリアントであり得る。すなわち、これらは、変異(該ポリペプチドの機能に影響し得る、または影響し得ない)を含有し得る。Fc領域は、IgG(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4もしくは類縁の哺乳動物IgGに由来のものなど)、またはIgM(例えば、ヒトIgMもしくは類似の哺乳動物IgMなど)に由来のものであり得る。ある具体的な実施形態では、Fc領域は、ヒトIgG1またはマウスIgG2aのヒンジ、CH2およびCH3ドメインを含む。
【0026】
本発明のTIM標的化分子またはTIM標的化因子の一部分であり得るFc領域は、「標的細胞枯渇性」(本明細書では細胞溶解性ともいう)、であってもよく、または「非標的細胞枯渇性」(本明細書では非細胞溶解性ともいう)であってもよい。非標的細胞枯渇性Fc領域は、典型的には、高親和性Fcレセプター結合性部位およびC’1q結合部位を欠く。マウスIgG Fcの高親和性Fcレセプター結合性部位は、Leu残基をIgG Fcの235位に含む。したがって、マウスFcレセプター結合性部位は、Leu235を変異または欠失させることにより破壊され得る。例えば、Leu235をGluに置換することにより、Fc領域の高親和性Fcレセプターへの結合能力が抑制される。マウスC’1q結合性部位は、IgGのGlu318、Lys320およびLys322残基を変異または欠失させることにより、機能が破壊され得る。例えば、Glu318、Lys320およびLys322をAla残基で置換することにより、IgG1 Fcは、抗体依存性補体溶解を指示することができなくなる。対照的に、標的細胞枯渇性IgG Fc領域は、高親和性Fcレセプター結合性部位およびC’1q結合性部位を有し、例えば、本明細書に開示したようなFc細胞溶解性活性または他の機構によって標的細胞の量を低減させ得る。高親和性Fcレセプター結合性部位はLeu残基をIgG Fcの235位に含み、C’1q結合性部位はIgG1のGlu318、Lys320およびLys322残基を含む。標的細胞枯渇性IgG Fcは、野生型残基または保存的アミノ酸置換をこれらの部位に有する。標的細胞枯渇性IgG Fcは、細胞を、抗体依存性細胞性細胞傷害または補体特異的(directed)細胞溶解(CDC)に標的化し得る。また、ヒトIgGに対する適切な変異も公知である(例えば、Morrisonら,The Immunologist 2:119−124(1994);およびBrekkeら,The Immunologist 2:125,1994を参照のこと)。当業者は、TIM標的化分子またはTIM標的化因子との標的細胞枯渇性融合体または非標的細胞枯渇性融合体を作製するための他の種のFc領域の類似の残基を容易に決定することができよう。
【0027】
多様な抗原が本発明の組成物において使用され得る。例示的な抗原としては、限定されないが、ウイルス抗原、細菌抗原、寄生虫抗原および腫瘍関連抗原が挙げられる。抗原は、種々の形態であり得、限定されないが、完全体の不活化された生物、これに由来するタンパク質抗原またはペプチド抗原、または生物もしくは細胞型に対して免疫応答を惹起するのに適した他の抗原性分子が挙げられる。また、抗原は、抗原をコードしている核酸(例えば、核酸ワクチンに使用されるもの)の形態であり得る。本明細書に開示するように、本発明の組成物は、TIM標的化分子またはTIM標的化因子の存在下で、TIM標的化分子またはTIM標的化因子を欠く組成物と比べ、免疫応答を増強するために使用され得る(実施例を参照)。免疫応答の増強は、B型肝炎ウイルス、炭疽菌、インフルエンザウイルスおよびHIVについて観察された(実施例VI〜Xを参照)。また、免疫応答の増強は、癌モデルにおいて観察された(実施例XIIを参照)。
【0028】
本発明の組成物において使用され得る例示的な抗原としては、限定されないが、B型肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、炭疽菌、リステリア菌、ボツリヌス菌、結核菌(特に、多剤耐性株)、ツラレミア、大痘瘡(天然痘)、ウイルス性出血性熱、Yersinia pestis(ペスト)、HIV、および感染性因子と関連する他の抗原が挙げられる。さらなる例示的な抗原としては、腫瘍細胞と関連する抗原、自己免疫性疾患と関連する抗原またはその抗原に対する抗体、またはアレルギーおよび喘息と関連する抗原が挙げられる。かかる抗原は、それぞれの疾患に対するワクチンとしての使用のための、TIM標的化分子またはTIM標的化因子を含有する本発明の組成物に含まれ得る。
【0029】
1つの実施形態において、本発明の方法および組成物は、感染症を有するか、または感染症を有するリスクのある個体を、その感染性因子由来の抗原を含めることにより処置するために使用され得る。感染症とは、宿主内で複製される外来の生物または因子が宿主内に存在することに起因する疾患または状態をいう。感染症は、典型的には、感染性の生物または因子による粘膜バリアまたは他の組織のバリアの破壊を伴う。感染症を有する被験体は、被験体の身体内に存在する客観的に測定可能な感染性生物または因子を有する被験体である。感染症を有するリスクのある被験体は、感染症を発症する素因のある被験体である。かかる被験体には、例えば、感染性の生物または因子に曝露されたことがわかっているか、またはそれが疑われる被験体が含まれ得る。また、感染症を有するリスクのある被験体には、感染性の生物または因子に対する免疫応答を高める能力の障害と関連する状態を有する被験体、例えば、先天性または後天性免疫不全を有する被験体、放射線療法または化学療法を受けている被験体、火傷を有する被験体、外傷を有する被験体、外科手術もしくは他の侵襲的処置もしくは歯科処置を受けている被験体、または同様に免疫無防備状態(immunocompromised)の個体も含まれ得る。
【0030】
感染症は、関与する感染性の生物または因子の種類に基づき、大きく、細菌性、ウイルス性、真菌性、または寄生虫性に分類される。また、他のあまり一般的でない型の感染症も当該技術分野で知られており、例えば、リケッチア、マイコプラズマが関与する感染症、ならびにヒツジ海綿状脳症、ウシ海綿状脳症(BSE)およびプリオン疾患(例えば、クールーおよびクロイツフェルト・ヤコブ病)を引き起こす因子が挙げられる。感染症を引き起こす細菌、ウイルス、真菌および寄生虫の例は、当該技術分野でよく知られている。感染症は、急性、亜急性、慢性または潜伏性のものであり得、限局性または全身性のものであり得る。さらにまた、感染症は、宿主内での感染性の生物または因子の生活環の少なくとも1つの期において、細胞内または細胞外で優勢となり得る。
【0031】
細菌としては、グラム陰性菌およびグラム陽性菌の両方が挙げられる。グラム陽性菌の例としては、限定されないが、パスツレラ菌種、ブドウ球菌種およびストレプトコッカス菌種が挙げられる。グラム陰性菌の例としては、限定されないが、大腸菌、シュードモナス菌種およびサルモネラ菌種が挙げられる。感染性細菌の具体例としては、限定されないが、Helicobacter pyloris、Borrelia burgdorferi、Legionella pneumophilia、マイコバクテリア種(例えば、M.tuberculosis、M.avium、M.intracellulare、M.kansasii、M.gordonae)、Staphylococcus aureus、Neisseria gonorrhoeae、Neisseria meningitidis、Listeria monocytogenes、Streptococcus pyogenes(A群ストレプトコッカス)、Streptococcus agalactiae(B群ストレプトコッカス)、Streptococcus(ヴィリダンス群)、Streptococcus faecalis、Streptococcus bovis、Streptococcus(嫌気性種)、Streptococcus pneumoniae、病原性カンピロバクター種、エンテロコッカス種、Haemophilus influenzae、Bacillus anthracis、Corynebacterium diphtheriae、コリネバクテリウム種、Erysipelothrix rhusiopathiae、Clostridium perfringens、Clostridium tetani、Enterobacter aerogenes、Klebsiella pneumoniae、Pasturella multocida、バクテロイデス種、Fusobacterium nucleatum、Streptobacillus moniliformis、Treponema pallidum、Treponema pertenue、レプトスピラ属、リケッチア属、およびActinomyces israeliiが挙げられる。
【0032】
ヒトにおいて感染を引き起こすことがわかっているウイルスの例としては、限定されないが、レトロウイルス科(例えば、ヒト免疫不全ウイルス、例えばHIV−1(HTLV−IIIとも称する)、HIV−2、LA VもしくはIDLV−III/LA V、またはHIV−III、および他の単離されたもの、例えばHIV−LP;ピコルナウイルス科(Picomaviridae)(例えば、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス;エンテロウイルス、ヒトコクサッキーウイルス、ライノウイルス、ECHOウイルス);カルジオウイルス科(Calciviridae)(例えば、胃腸炎を引き起こす株);トガウイルス科(例えば、ウマ脳炎ウイルス、風疹ウイルス);フラビウイルス科(例えば、デング熱ウイルス、脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス);コロナウイルス科(例えば、コロナウイルス);ラブドウイルス科(例えば、水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス);フィロウイルス科(例えば、エボラウイルス);パラミクソウイルス科(例えば、パラインフルエンザウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、呼吸器多核体ウイルス);オルトミクソウイルス科(例えば、インフルエンザウイルス);ブンヤウイルス科(Bungaviridae)(例えば、ハンターンウイルス、ブンヤ(bunga)ウイルス、フェレボウイルスおよびナイロウイルス);アレナウイルス科(出血熱ウイルス);レオウイルス科(例えば、レオウイルス、オルビウイルス(orbiviurs)およびロタウイルス);Bimaviridae;ヘパドナウイルス科(B型肝炎ウイルス);パルボウイルス科(パルボウイルス);パポバウイルス科(パピローマウイルス、ポリオーマウイルス);アデノウイルス科(ほとんどのアデノウイルス);ヘルペスウイルス科(単純ヘルペスウイルス(HSV)1型および2型、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、ヘルペスウイルス);ポックスウイルス科(痘瘡ウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス);およびイリドウイルス科(例えば、アフリカブタコレラウイルス);ならびに未分類ウイルス(例えば、海綿状脳症の病因因子、デルタ肝炎の因子(B型肝炎ウイルスの欠損付随体(satellite)と考えられる)、非A、非B型肝炎の因子(クラス1=経腸感染;クラス2=腸管外感染(すなわち、C型肝炎);ノーウォークおよび関連ウイルス、およびアストロウイルス)が挙げられる。
【0033】
真菌の例としては、アスペルギルス属菌種、Blastomyces dermatitidis、Candida albicans、他のカンジダ菌種、Coccidioides immitis、Cryptococcus neoformans、Histoplasma capsulatum、Chlamydia trachomatis、ノカルジア属菌種、Pneumocystis cariniiが挙げられる。
【0034】
寄生虫としては、限定されないが、血液媒介性および/または組織寄生虫、例えば、Babesia microti、Babesia divergens、赤痢アメーバ、ランブル鞭毛虫、熱帯リーシュマニア、リーシュマニア属、ブラジルリーシュマニア、ドノバンリーシュマニア、熱帯熱マラリア原虫、四日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、ならびにトキソプラスマ、ガンビアトリパノソーマおよびローデシアトリパノソーマ(アフリカ睡眠病)、クルーズトリパノソーマ(シャーガス病)、ならびにトキソプラスマ、扁虫、回虫が挙げられる。
【0035】
本発明は、さらに、本発明の組成物の使用方法を提供する。1つの実施形態において、本発明は、抗原およびTIM標的化分子またはTIM標的化因子が薬学的に許容され得る担体中に含まれた組成物を投与することにより、個体において免疫応答を刺激する方法を提供する。かかるTIM標的化分子は、TIM抗体(例えば、TIM−1、TIM−2、TIM−3またはTIM−4に対する抗体)であり得る。
【0036】
本明細書に開示するように、本発明の組成物は、抗原に対する免疫応答の刺激または増強方法において使用され得る。本発明は、TIM標的化分子またはTIM標的化因子および抗原を含有する本発明の組成物を投与することにより免疫応答を刺激する方法を提供する。TIM標的化分子またはTIM標的化因子を含むものは、TIM標的化分子またはTIM標的化因子を欠く組成物と比べて免疫応答を増強するアジュバントとして機能し得る(実施例を参照)。
【0037】
本発明の組成物および方法は、多様な疾患を予防および/または処置するために免疫応答を刺激するのに使用され得る。かかる疾患としては、感染性疾患、例えば、限定されないが、ウイルス系生物、細菌系生物または寄生虫系生物(例えば、B型肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、炭疽菌、リステリア菌、ボツリヌス菌、結核菌(特に、多剤耐性株)、ツラレミア、大痘瘡(天然痘)、ウイルス性出血性熱、Yersinia pestis(ペスト)、HIVおよび本明細書に開示したような他の感染性因子)によって引き起こされる疾患が挙げられる。
【0038】
本発明の組成物および方法は、さらに、癌を有するか、または癌を有するリスクのある被験体を処置するために使用され得る。癌は、細胞の成長が制御されていない状態であって、身体の器官および系の正常な機能が妨害される状態である。癌を有する被験体は、被験体の身体内に存在する客観的に測定可能な癌細胞を有する被験体である。癌を有するリスクのある被験体は、癌を発症する素因のある被験体である。かかる被験体には、例えば、癌の発症に対する家族歴または遺伝的素因を有する被験体が含まれ得る。また、癌を有するリスクのある被験体には、癌を引き起こす因子に曝露されたことがわかっているか、またはそれが疑われる被験体が含まれ得る。
【0039】
最初の位置から移動して重要な臓器に播種される癌は、最終的に、冒された器官の機能障害による被験体の死をもたらし得る。造血系の癌(例えば、白血病など)は、被験体内の正常な造血系区画を打ち負かす(out−compete)ことができ、それにより、造血系機能不全(貧血、血小板減少症および好中球減少症の形態で)をもたらし、最終的に死をもたらす。
【0040】
転移は、原発性腫瘍の位置とは異なる癌細胞の領域であり、原発性腫瘍から他の身体部分への癌細胞の播種に起因する。原発性腫瘍塊の診断時、被験体を、転移の存在についてモニターするのがよい。転移は、最も多くの場合、具体的な症状のモニタリングに加え、磁気共鳴画像形成(MRI)スキャン、コンピュータ連動断層撮影(CT)スキャン、血球および血小板の計測、肝機能試験、胸部X線および骨スキャンの単独使用または併用によって検出される。
【0041】
本発明の組成物および方法はまた、腫瘍関連抗原を該組成物中に含めることにより、多様な癌または癌を発症するリスクのある被験体を処置するために使用され得る。本明細書で使用する場合、「腫瘍関連抗原」は、腫瘍細胞で発現される腫瘍抗原である。多くのの腫瘍関連抗原がある特定の腫瘍細胞と関連することが当該技術分野でよく知られており、多様な癌(限定されないが、乳癌、前立腺癌、結腸癌および血液の癌(例えば、白血病、慢性リンパ性白血病(CLL)など)が挙げられる)を処置するために本発明の組成物に含めることができる。本発明の方法は、腫瘍の成長を阻害または遅延させることにより、または腫瘍の大きさを小さくすることにより、免疫応答を刺激して腫瘍を処置するために使用され得る(実施例XIIを参照)。また、腫瘍関連抗原は、この抗原が、主に(必ずしも排他的ではないが)、癌細胞において発現されるという点で、腫瘍特異的抗原であり得る。かかる場合では、腫瘍特異的抗原が、好都合に標的化され、腫瘍細胞に対する選択的標的化が可能になり得ることを理解されたい。
【0042】
さらなる癌としては、限定されないが、基底細胞癌、胆道癌;膀胱癌;骨の癌;脳および中枢神経系(CNS)の癌;頸部癌;絨毛上皮腫;結腸直腸癌;結合組織の癌;消化器系の癌;子宮内膜の癌;食道癌;眼の癌;頭部および頚部の癌;胃癌;上皮内新生物;腎臓癌;喉頭癌;肝臓癌;肺癌(例えば、小細胞および非小細胞);リンパ腫(ホジキンおよび非ホジキンリンパ腫を含む);黒色腫;骨髄腫;神経芽細胞腫;口腔癌(例えば、唇、舌、口および咽頭);卵巣癌;膵臓癌;網膜芽細胞腫;横紋筋肉腫;直腸癌;呼吸器系の癌;肉腫;皮膚癌;胃癌;精巣癌;甲状腺癌;子宮癌;泌尿器系の癌、ならびに他の癌腫および肉腫が挙げられる。
【0043】
現在使用されているか、または開発中の癌免疫療法剤の例としては、限定されないが、RituxanTM、IDEC−C2B8、抗CD20 Mab、PanorexTM、3622W94、抗EGP40(17−1A)、腺癌に対するパンカルシノーマ(pancarcinoma)抗原、HerceptinTM、抗Her2、抗EGFr、BEC2、抗イディオタイプGD3エピトープ、OvarexTM、B43.13、抗イディオタイプCA125、4B5、抗VEGF、RhuMAb、MDX−210、抗HER−2、MDX−22、MDX−220、MDX−447、MDX−260、抗GD−2、QuadrametTM、CYT−424、IDEC−Y2B8、OncolymTM、Lym−1、SMART M195、ATRAGENTM、LDP−03、抗CAMPATH、ior t6、抗CD6、MDX−1l、OV1IO3、ZenapaxTM、抗Tac、抗IL−2レセプター、MELIMMUNE−1および−2、CEACIDETM、PretargetTM、NovoMAb−G2、TNT、抗ヒストン、Gliomab−H、GNI−250、EMD−72000、LymphoCide、CMA 676、Monopharm−C、ior egf/r3、ior c5、抗FLK−2、SMART 1D1O、SMART ABL 364、およびImmuRAIT−CEAが挙げられる。
【0044】
癌ワクチンは、癌細胞に対する内因性免疫応答を刺激するために使用される医薬である。現在作製されているワクチンは、主に、体液性免疫系(すなわち抗体依存性免疫応答)を活性化する。現在開発中の他のワクチンは、細胞媒介性免疫系(腫瘍細胞を死滅させることができる細胞傷害性Tリンパ球を含む)の活性化に焦点をあてたものである。癌ワクチンは、一般的に、抗原提示細胞(APC)(例えば、マクロファージや樹状細胞)および/または他の免疫細胞(T細胞、B細胞やNK細胞など)の両方に対する癌抗原の提示を増強する。癌ワクチンは、本明細書に記載したいくつかの形態の1つをとり得るが、その目的は、APCによるかかる抗原の内因性プロセッシングおよびMHCクラスI分子との関連で(in the context of)細胞表面上での最終的な抗原提示を助長にするために、癌抗原および/または癌関連抗原をAPCに送達することである。癌ワクチンの一形態は全細胞ワクチンであり、これは、被験体から取り出し、エキソビボで処理し(一般的に、癌細胞を死滅させるため、またはその増殖を抑制するため)、次いで被験体内で全細胞として再導入される、癌細胞調製物である。腫瘍細胞の細胞溶解物もまた、免疫応答を惹起するための癌ワクチンとして使用され得る。癌ワクチンの別の形態はペプチドワクチンであり、これは、T細胞を活性化する癌特異的低分子タンパク質または癌関連低分子タンパク質を用いたものである。癌関連タンパク質は、癌細胞によって排他的に発現されるのではないタンパク質である、すなわち、他の正常細胞もなおこれらの抗原を発現し得る。しかしながら、癌関連抗原の発現は、一般的に、一貫してある特定の型の癌によって上方調節される。癌ワクチンのまた別の形態は樹状細胞ワクチンであり、これは、癌抗原または癌関連抗原にインビトロで曝露された樹状細胞全体を含む。樹状細胞の細胞溶解物または膜画分もまた、癌ワクチンとして使用され得る。樹状細胞ワクチンは、APCを直接活性化することができる。他の癌ワクチンとしては、ガングリオシドワクチン、熱ショックタンパク質ワクチン、ウイルス系および細菌系ワクチン、ならびに核酸ワクチンが挙げられる。
【0045】
本発明の組成物および方法は、さらに、自己免疫疾患(例えば、多発性硬化症、慢性関節リウマチ、1型糖尿病、乾癬または他の自己免疫性障害)を処置するために使用され得る。自己免疫疾患は、被験体自身の抗体が宿主組織と反応するか、または免疫エフェクターT細胞が内因性自己ペプチドに対して自己反応性であり、組織の破壊を引き起こす疾患の一類型である。したがって、被験体自身の抗原(自己抗原と呼ばれる)に対する免疫応答が高められている。自己免疫疾患としては、前述の例、また、クローン病および他の炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎など)、全身性エリテマトーデス(SLE)、自己免疫性脳脊髄炎、重症筋無力症(MG)、橋本甲状腺腫、グッドパスチャー症候群、天疱瘡(例えば、尋常性天疱瘡)、グレーヴズ病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少性紫斑病、抗コラーゲン抗体を伴う強皮症、混合結合組織病、多発性筋炎、悪性貧血、特発性アジソン病、自己免疫関連不妊症、糸球体腎炎(例えば、半月体形成性糸球体腎炎、増殖性糸球体腎炎)、水疱性類天疱瘡、シェーグレン症候群、乾癬性関節炎、インスリン抵抗性、自己免疫性真性糖尿病(I型糖尿病;インスリン依存性糖尿病)、自己免疫性肝炎、自己免疫性血友病、自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)、自己免疫性ブドウ膜網膜炎、およびギヤン−バレー症候群が挙げられる。最近、自己免疫疾患は、アテローム性動脈硬化およびアルツハイマー病も包含すると認識されている。自己抗原は、正常宿主組織の抗原をいう。正常宿主組織は癌細胞を含まない。したがって、自己抗原に対する高い免疫応答(自己免疫疾患との関連で)は、望ましくない免疫応答であり、正常組織の破壊および損傷に寄与するが、癌抗原に対する高い免疫応答は望ましい免疫応答であり、腫瘍または癌の破壊に寄与する。
【0046】
図19に例示したように、TIM−3シグナル伝達は、マウスにおいて糖尿病を加速する(Sanchez−Fueyoら,Nat.Immunol.4:1093−1101(2003)を参照のこと)。NOD−SCIDマウスは、糖尿病マウス由来のT細胞が投与され、対照Igまたは抗TIM−3(実験継続期間中、100μgを週2回)で処理した。抗TIM−3の投与により、Th1媒介性疾患である糖尿病発症が加速され、これは、TIM−3がTh1機能の調節において機能することを示す。したがって、TIM−3標的化分子を用いた1つ以上のTIM−3シグナル伝達経路の妨害は、糖尿病を処置するために使用され得る。
【0047】
本発明の組成物および方法はまた、喘息およびアレルギー反応を処置するために使用され得る。喘息は、気道の炎症および狭窄ならびに吸入因子に対する気道の反応性の増大を特徴とする呼吸器系の障害である。喘息は、多くの場合(排他的ではないが)アトピー性またはアレルギー性の症状を伴う。アレルギーは、物質(アレルゲン)に対する後天性過敏症である。アレルギー状態としては、湿疹、アレルギー性鼻炎またはコリーザ、枯草熱、気管支喘息、蕁麻疹(urticaria/hives)および食物アレルギー、ならびに他のアトピー性の状態が挙げられる。「アレルギーを有する被験体」は、アレルゲンに応答したアレルギー反応を有するか、またはそのアレルギー反応を発症するリスクのある被験体である。「アレルゲン」は、易罹患性被験体にアレルギー性または喘息性の応答を誘導し得る物質をいう。数多くのアレルゲンがあり、花粉、昆虫毒、動物皮あか、ほこり、真菌胞子および薬物(例えば、ペニシリン)が挙げられる。
【0048】
天然動物および植物アレルゲンの例としては、以下の属:イヌ属(Canisfamiliaris);ヒョウヒダニ属(例えば、Dermatophagoides farinae);ネコ属(Felis domesticus);ブタクサ属(Ambrosia)(Ambrosia artemiisfolia;Lotium(例えば、Lotium perenneまたはLotium multiflorum);スギ属(Cryptomeriajaponica);アルテルナリア属(Alternaria alternata);ハンノキ属(Alder);ハンノキ属(Alnus)(Alnus gultinosa);カバノキ属(Betula verrucosa);カシ属(Quercus alba);オレア属(Olea europa);ヨモギ属(Artemisia vulgaris);プランタゴ属(例えば、Plantago lanceolata);ヒカゲミズ属(例えば、Parietaria officinalisまたはParietaria judaica);チャバネゴキブリ属(例えば、Blattella gennanica);ミツバチ属(例えば、Apis multiflornm);イトスギ属(例えば、Cupressus sempervirens,Cupressus arizonicaおよびCupressus macrocarpa);ビャクシン属(例えば、Juniperus sabinoides,Juniperus virginiana,Juniperus communisおよびJuniperns ashei);ニオイヒバ属(例えば、Thuya orientalis);ヒノキ属(例えば、Chamaecyparis obtusa);ワモンゴキブリ属(例えば、Periplaneta americana);カモジグサ属(例えば、Agropyron repens);ライムギ属(例えば、Secale cereale);コムギ属(例えば、Triticum aestivum);カモガヤ属(例えば、Dactylis glomerata);フェスツカ属(Festuca)(例えば、Festuca elatior);イチゴツナギ属(例えば、Poa pratensisまたはPoa compressa);エンバク属(例えば、Avena sativa);コウボウ属(例えば、Holcus lanatus);ハルガヤ属(例えば、Anthoxanthum odoratum);アルテナルム属(例えば、Arrhenatherum elatius);ヌカボ属(例えば、Agrostis alba);オオアワガエリ属(例えば、Phleum pratense);クサヨシ属(例えば、Phalaris arundinacea);スズメノヒエ属(例えば、Paspalum notatum);ソルガム属(例えば、Sorghum halepensis);およびスズメノチャヒキ属(例えば、Bromus inermis)に特異的なタンパク質が挙げられる。
【0049】
さらにまた、本発明の組成物および方法は、臓器拒絶反応を抑制するための移植に、および炎症性サイトカインに影響を与えることにより心臓疾患において使用され得る。種々の疾患モデルにおける種々のTIM標的化分子の効果は、図19および実施例VI〜XIIに示されている。TIMまたは抗TIM抗体での処置により、ワクチン接種による強い免疫応答の誘発が促進された。
【0050】
本発明の方法は、Th1またはTh2を増加させるために使用され得、これは、ある特定の適応症に好都合である。例えば、Th1サイトカインは、細胞内病原体(例えば、細菌またはウイルスなど)、癌および遅延型過敏症に適する。Th2サイトカインは、細胞外蠕虫寄生虫(例えば、サナダムシおよび線虫など)ならびに循環しているウイルスおよび細菌を中和するための抗体応答の発現に適する。対照的に、不適切なTh1応答は、自己免疫性障害、例えば、多発性硬化症、乾癬、慢性関節リウマチ、および1型糖尿病、ならびに移植片拒絶反応をもたらし、Th1サイトカインの不足は、細胞内病原体(例えば、ウイルスおよび細菌)と戦う能力の不足をもたらす。不適切なTh2応答は、喘息、アレルギー性障害、細胞内感染のクリアランスの能力不足、およびHIVに対する易感染性をもたらし、Th2サイトカインの不足は、ウイルスおよび細菌の侵入を中和する能力不足をもたらす。
【0051】
本発明の方法は、所望のとおりにTh1応答またはTh2応答を増大させるために使用され得るため、好都合である。免疫応答が増進されると、TIM分子が発現され、適切なサイトカインメッセンジャーの分泌の指示が補助される。TIM−1はTh2の刺激において機能し、一方、TIM−3がTh1の刺激において機能する。したがって、ある具体的なTIM標的化分子の使用がTh1またはTh2の相対量を調節するために使用され得、これは、ある特定の所望の免疫応答に有用である。例示的な疾患、および種々の疾患の処置のために免疫応答を増強するのに、TIM標的化分子の所望の効果をどのように使用し得るかを図30に示す。
【0052】
本発明の組成物および方法は、ある特定の状態を処置するための他の治療法と組合せてもよいことは理解されよう。例えば、本発明の組成物の癌ワクチンとしての使用は、任意選択で、他の癌治療法(例えば、周知の化学療法または放射線療法)と組み合わせて用いられ得る。同様に、自己免疫疾患を処置するための本発明の組成物の使用は、任意選択で、ある具体的な自己免疫疾患を処置するのに使用される治療法と組み合わせてもよい。同様に、喘息またはアレルギー状態を処置するための本発明の組成物は、任意選択で、それぞれの状態の治療法と組み合わせてもよい。
【0053】
本発明の組成物および方法は、治療用および/または診断用の目的に使用され得、ヒト用または獣医科用の適用であり得る。例えば、本発明の組成物は、治療用部分または診断用部分を標的させるために使用され得る。治療用部分の場合では、該部分は、薬物、例えば化学療法剤、細胞傷害剤、毒素などであり得る。例えば、細胞傷害剤は、放射性の核種または化合物であり得る。治療用因子として有用な例示的な放射性核種としては、例えば、X線またはγ線放射体が挙げられる。加えて、該部分は、薬物送達ビヒクル、例えば、チャンバ型マイクロデバイス、細胞、リポソームまたはウイルスなどであり得、これらは、因子(例えば、薬物または核酸)を収容し得る。
【0054】
例示的な治療用因子としては、例えば、アントラサイクリン系のドキソルビシンが挙げられ、これは抗体に結合されたものであり、抗体/ドキソルビシン結合体は、腫瘍の処置において治療有効性である(Sivamら,Cancer Res.55:2352−2356(1995);Lauら,Bioorg.Med.Chem.3:1299−1304(1995);Shihら,Cancer Immunol.Immunother.38:92−98(1994))。同様に、他のアントラサイクリン系、例えば、イダルビシンおよびダウノルビシンなどは、抗体に化学的に結合体化されたものであり、これは、有効用量の因子を腫瘍に送達する(Rowlandら,Cancer Immunol.Immunother.37:195−202(1993);Aboud−Pirakら,Biochem.Pharmacol.38:641−648(1989))。
【0055】
アントラサイクリン系の他に、アルキル化剤(例えば、メルファランおよびクロラムブシルなど)を抗体に結合させて治療有効性の結合体が作製されており(Rowlandら,Cancer Immunol.Immunother.37:195−202(1993);Smythら,Immunol.Cell Biol.65:315−321(1987))、ビンカアルカロイドでも作製されている(例えば、ビンデシンおよびビンブラスチンなど)(Aboud−Pirakら(前出),1989;Starlingら,Bioconj.Chem.3:315−322(1992))。同様に、抗体や代謝拮抗剤(例えば、5−フルオロウラシル,5−フルオロウリジンおよびその誘導体など)の結合体は、腫瘍の処置において有効である(Krauerら,Cancer Res.52:132−137(1992);Hennら,J.Med.Chem.36:1570−1579(1993))。他の化学療法剤、例えばシスプラチン(cis−platinum)(Schechterら,Int.J.Cancer 48:167−172(1991))、メトトレキサート(Shawlerら,J.Biol.Resp.Mod.7:608−618(1988);FitzpatrickおよびGarnett,Anticancer Drug Des.10:11−24(1995))ならびにミトマイシン−C(Dillmanら,Mol.Biother.1:250−255(1989))もまた、種々の異なる抗体との結合体として投与した場合、治療有効性である。治療剤はまた、毒素(例えば、リシンなど)であり得る。
【0056】
また、治療剤は、物理的、化学的または生物学的材料、例えば、リポソーム、マイクロカプセル、マイクロポンプまたは他のチャンバ型マイクロデバイスなどであり得、これらは、例えば薬物送達系として使用され得る。一般的に、かかるマイクロデバイスは、非毒性で、所望により生分解性であるべきである。種々の部分(例えば、マイクロカプセルなどであって、因子を収容し得る)、および部分(チャンバ型マイクロデバイスなど)を本発明のTIM標的化分子またはTIM標的化因子と連結させるための方法は、当該技術分野においてよく知られており、市販されている(例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」 第18版(Mack Publishing Co.1990)、第89〜91章;HarlowおよびLane,Antibodies:A laboratory manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press 1988;Hermanson,Bioconjugate Techniques,Academic Press,San Diego(1996)を参照のこと)。
【0057】
診断用目的のため、TIM標的化分子またはTIM標的化因子は、検出可能な部分をさらに含み得る。検出可能な部分は、例えば、放射性核種、蛍光部分、磁気部分、比色部分などであり得る。インビボ診断用目的のため、γ光線放射性の放射性核種(例えば、インジウム−111またはテクニチウム−99)などの部分を本発明の抗体と連結させることができ、被験体への投与後、固体シンチレーション検出器を用いて検出し得る。同様に、陽電子放射性の放射性核種(例えば、炭素−11)または常磁性スピン標識(例えば、炭素−13など)を該分子と連結させることができ、被験体への投与後、該部分の局在化を、それぞれ、陽電子放射型断層撮影または磁気共鳴映像法を用いて検出し得る。かかる方法により、原発性腫瘍ならびに転移病変を確認することができる。
【0058】
診断用目的のため、TIM標的化分子またはTIM標的化因子は、インビボ診断に、または個体から(例えば、組織生検材料により)得た組織試料にてインビトロで使用され得る。例示的な体液としては、限定されないが、血清、血漿、尿、滑液などが挙げられる。
【0059】
治療用または検出可能な部分は、TIM標的化分子またはTIM標的化因子と、部分をカップリングまたは結合体化させるための多くの周知の方法によりカップリングさせ得る。かかるカップリング方法により、TIM標的化分子またはTIM標的化因子の結合活性を妨害または阻害することなく、治療用部分または検出可能部分の結合が可能になることが理解されよう。部分を本発明のTIM標的化分子またはTIM標的化因子に結合体化させるための方法は、当業者によく知られている(例えば、Hermanson,Bioconjugate Techniques,Academic Press,San Diego(1996)を参照のこと)。さらに、治療用または検出可能な部分は、非共有結合の結合体が所望の目的のための充分な結合親和性を有する限り、非共有結合でTIM標的化分子またはTIM標的化因子に結合体化され得ることが、理解されよう。例えば、治療用または検出可能な部分をTIM標的化分子に、ビオチンまたはアビジンをそれぞれの部分およびTIM標的化分子と結合体化させ、ビオチン−アビジンを用いて該部分とTIM標的化分子を非共有結合性に結合体化させることにより、結合体化させ得る。よく知られた結合分子ペアの他の型を同様に使用することができ、例えば、マルトース結合性タンパク質/マルトース、グルタチオン−Sトランスフェラーゼ/グルタチオンなどが挙げられる。
【0060】
したがって、本発明の1つの実施形態では、TIM標的化分子またはTIM標的化因子、例えば抗TIM抗体またはTIMタンパク質は、毒性の放射性同位元素または毒素を、適切なTIM分子をその表面上に発現する(抗TIM抗体によって標的化される)またはTIMリガンド分子(TIMタンパク質によって標的化される)をその表面上に発現する癌細胞または自己反応性BおよびT細胞の特異的標的化のための送達系として使用され得る。抗体または組換えタンパク質(TIMタンパク質、例えば、FcテイルとのTIMタンパク質など)を、植物毒素(リシン、アブリン、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、サポリン、ゲロニンなど)または細菌毒素(シュードモナス外毒素、ジフテリア毒素など)、または化学物質毒素(例えば、カリケアマイシンおよびエスペラマイシン、デュオカルマイシン、ドキソルビシン、メルファラン、メトトレキサート、クロラムブシル、シタラビンもしくはアラビノシルシトシ(cytosine arabinoside)(ARA−C)、ビンデシン、シスプラチン、エトポシド、ブレオマイシン、マイトマイシンCおよび5−フルオロウラシルなど);または放射性同位元素(ヨウ素−131もしくはイットリウム−90など)と結合体化され得る。
【0061】
1つの実施形態において、本発明の組成物は、共有結合または非共有結合により、毒性の分子(化学物質毒素、細菌毒素または植物毒素および放射性同位元素が挙げられる)と結合体化され得る。別の実施形態では、本発明は、癌または自己免疫疾患の処置方法であって、治療用様式としての使用のために、TIM標的化分子またはTIM標的化因子、例えば抗TIM抗体またはTIMタンパク質を、共有結合または非共有結合により、治療用部分、例えば毒性の分子(化学物質毒素、細菌毒素または植物毒素および放射性同位元素が挙げられる)と結合体化される、癌または自己免疫疾患の処置方法を提供する。また、種々の毒素の組合せを1つの抗体分子にカップリングさせることもあり得る。他の化学療法剤は当業者に知られており、本明細書に開示している。
【0062】
さらなる実施形態では、本発明は、被験体における自己免疫性障害の処置用の医薬の製造のための、治療用部分(例えば、抗毒素など)と結合体化させたTIM標的化分子またはTIM標的化因子を含む組成物の使用を提供する。またさらなる実施形態では、本発明は、治療用部分と結合体化させたTIM標的化分子またはTIM標的化因子の使用を提供し、この場合、自己免疫性障害は、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、自己免疫性真性糖尿病、全身性エリテマトーデス、自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)などから選択される障害である。
【0063】
さらに別の実施形態では、本発明は、被験体における癌の処置のためのTIM標的化分子またはTIM標的化因子の使用を提供する。例えば、癌は、癌腫、肉腫もしくはリンパ腫、または他の型の癌であり得る。TIM標的化分子またはTIM標的化因子は、適切にTIMまたはTIMリガンドを発現する腫瘍の処置のために使用され得る。TIMまたはTIMリガンドは、腫瘍生検材料試料において確認され得る。本明細書に開示するように、腎腺癌、胸腺腫およびリンパ腫を含む種々の細胞株がTIMまたはTIMリガンドを発現することが示されている(実施例XVおよび図33〜36を参照のこと)。腫瘍生検材料試料がTIM発現に対して陽性であるならば、TIM標的化分子(例えば細胞傷害剤と結合体化させた抗TIM抗体)が、腫瘍細胞を標的化するために使用し得る。他方、腫瘍がTIM分子の適切なリガンドを発現するならば、適切なTIM分子を、単独で、または細胞傷害剤と結合体化させた融合タンパク質としてTIMリガンド発現腫瘍の標的化に使用され得る。同様に、TIM標的化分子またはTIM標的化因子、またはその治療用部分もしくは診断用部分との結合体は、TIMまたはTIMリガンドを発現する種々の細胞型または組織を標的化するために使用され得る。
【0064】
本発明は、治療用部分または診断用部分と結合体化させたTIM標的化分子を含む組成物を提供する。治療用部分は、化学療法剤、細胞傷害剤または毒素であり得る。細胞傷害剤は、例えば、放射性核種または化合物であり得、限定されないが、化合物としては、カリケアマイシン、エスペラマイシン、デュオカルマイシン、ドキソルビシン、メルファラン、メトトレキサート、クロラムブシル、シタラビン、ビンデシン、シスプラチン、エトポシド、ブレオマイシン、マイトマイシンCおよび5−フルオロウラシル、または放射性核種としては、ヨウ素−131もしくはイットリウム−90が挙げられる。ある具体的な実施形態では、毒素は、植物毒素または細菌毒素であり得、限定されないが、植物毒素としてはリシン、アブリン、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、サポリンもしくはゲロニン、またはシュードモナス外毒素もしくはジフテリア毒素由来の細菌性毒素が挙げられる。
【0065】
組成物をワクチンとして作製および投与する方法は、当業者によく知られている。成分の免疫学的有効量は、経験的に決定されるが、例えば、動物モデルにおける免疫学的有効量を基にし得る。考慮すべき要素としては、抗原性、配合、投与経路、免疫化用量を投与する回数、個体の健康状態、体重および年齢などが挙げられる。かかる要素は、当該技術分野においてよく知られており、当業者なら容易に決定し得る(例えば、PaolettiおよびMcInnes編、Vaccines,from Concept to Clinic:A Guide to the Development and Clinical Testing of Vaccines for Human Use CRC Press(1999)を参照のこと。本明細書に開示するように、TIM標的化分子またはTIM標的化因子は、アジュバントとして使用され得る(実施例を参照)。本発明のTIM標的化分子またはTIM標的化因子は、アジュバントとして単独で、または所望により他のよく知られたアジュバントと組み合わせて、使用され得ることを理解されたい。
【0066】
本発明の組成物は、限局的または全身に、当該技術分野で知られた任意の方法(限定されないが、筋肉内,皮内,静脈内,皮下,腹腔内,鼻腔内,経口または他の粘膜経路が挙げられる)によって投与され得る。さらなる経路としては、頭蓋内(例えば、槽内または脳室内),眼窩内,眼内(ophthalmic),包内,脊椎内,および局所投与が挙げられる。本発明の組成物は、適当な非毒性の医薬用担体において投与され得るか、またはマイクロカプセルに、もしくは徐放性インプラントとして処方され得る。本発明の免疫原性組成物は、所望により、所望の免疫応答を持続させるために多数回投与され得る。適切な経路、処方および免疫処置スケジュールは、当業者により決定され得る。
【0067】
本発明の方法では、本発明の組成物は、抗原およびTIM標的化分子が、抗原およびTIM標的化分子が共投与されるように投与される単一の組成物内にあるように投与してもよい。あるいはまた、本発明の方法は、抗原およびTIM標的化分子が別々の組成物(例えば、別々の医薬組成物)として投与されるように行われ得る。別々に抗原およびTIM標的化分子を含有するかかる組成物は、組成物を一緒に混合するか、または同じ部位に注射するかのいずれかによって同時に投与してもよく、またはこれらの組成物を、同じもしくは異なる位置に別々に投与してもよい。TIM標的化分子は、同じ部位に抗原として、または異なる部位に投与してもよく、同時に、または数分から数日の期間にわたって逐次投与してもよい。当業者は、所望の効果のため、抗原およびTIM標的化分子の所望される投与計画を容易に決定できよう。抗原が既に存在する場合、例えば、疾患関連抗原が免疫系に曝露されている進行中の感染または疾患では、TIM標的化分子は、個体内で既に発現されている抗原に対する免疫応答を刺激するために投与され得る。
【0068】
TIM標的化分子は、1つ以上の異なる形態で投与され得る。TIM標的化分子がペプチドまたはポリペプチド(抗TIM抗体またはTIM融合タンパク質など)である場合、投与様式としては、限定されないが、精製された該ペプチドもしくはポリペプチドの投与、該ペプチドもしくはポリペプチドを発現する細胞の投与、または該ペプチドもしくはポリペプチドをコードされた核酸の投与が挙げられる。
【0069】
本発明の方法およびこれを実施するために使用される治療用組成物は、「実質的に純粋な」因子を含有する。例えば、TIM標的化分子またはTIM標的化因子がポリペプチドである場合、該ポリペプチドは、他のポリペプチドまたは該ポリペプチドの元の供給源中の望ましくない成分に対して少なくとも約60%純粋であり得る。例えば、ポリペプチドが、天然の供給源から精製されたもの、組換え発現によるもの、または化学合成物である場合、純度は、元の天然の供給源、組換え供給源または合成反応における他の成分に対するものである。当業者は、本発明のポリペプチド因子または他の因子のための適切な周知の精製方法を容易に決定できよう。具体的に、因子は、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%または少なくとも約99%の純度であり得る。当業者は、ある具体的な所望の適用用途に好適な純度を容易に決定できよう。純度は、任意の適切な標準方法、例えば、カラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、HPLC解析によって測定され得、所望の定量基準(例えば、紫外吸収、染色など)または因子の化学的性質に依存する量を測定する同様の方法に基づくのがよい。本発明の因子を、アジュバントとしての他の成分と、例えばワクチンにおいて組み合わせる場合、TIM標的化分子またはTIM標的化因子は、ある特定の純度、例えば95%純度で投与され得るが、ワクチン中の抗原、バッファーなどの成分の95%であることは必要とされないことを理解されたい。当業者は、本発明の組成物中の他の望ましい成分に対するTIM標的化分子またはTIM標的化因子の適当な純度および適当な量を容易に決定できよう。
【0070】
本発明の方法において有用な因子は、天然に存在する供給源から得られ得るが、例えば、TIM標的化分子またはTIM標的化因子をコードする組換え核酸分子の発現によって、合成するか、あるいは製作してもよい。ポリペプチドを組換えにより発現するための方法は、当業者によく知られている(Ausubelら,Current Protocols in Molecular Biology(増補版56),John Wiley & Sons,New York(2001);SambrookおよびRussel,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第3版,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor(2001))。ペプチド合成法もまた、当業者によく知られている(Merrifield,J.Am.Chem.Soc.85:2149(1964);Bodanszky,Principles of Peptide Synthesis Springer−Verlag(1984))。天然の供給源、例えば真核生物系生物から精製するポリペプチドは、自然状態で会合している成分を実質的に含まないように精製するのがよい。同様に、真核生物細胞または原核生物細胞(例えば、大腸菌もしくは他の原核生物)内で組換えにより発現されるポリペプチド、または化学的に合成されるポリペプチドは、所望のレベルの純度に精製し得る。該ポリペプチドがキメラである場合、これは、因子の全部または一部をコードする1つの配列(例えば、TIMポリペプチドをコードする配列)およびIgGのFc領域をコードする配列を含有するハイブリッド核酸分子にコードされ得る。
【0071】
本発明の因子、特に、組換えにより発現されるポリペプチドは、該ポリペプチドの精製を容易にするために、親和性タグと融合させ得る。1つの実施形態において、親和性タグは、該ポリペプチドの機能(例えば、TIM標的化分子またはTIM標的化因子の結合性)に干渉しない、比較的低分子であり得る。あるいはまた、親和性タグは、親和性タグが組換えにより発現されたポリペプチドから除去されるのを可能にするプロテアーゼ切断部位を有するポリペプチドと融合させ得る。プロテアーゼ切断部位を含めることは、親和性タグが比較的大きく、該ポリペプチドの機能に潜在的に干渉し得る場合、特に有用である。例示的な親和性タグとしては、ポリヒスチジンタグ(一般的に、約5〜約10個のヒスチジンを含有する)、または血球凝集素タグ(これは、組換えにより発現されるポリペプチドを原核生物細胞または真核生物細胞から精製するのを助長するために使用され得る)が挙げられる。他の例示的な親和性タグとしては、マルトース結合性タンパク質またはレクチン(ともに糖類に結合する)、グルタチオン−Sトランスフェラーゼ、アビジンなどが挙げられる。他の適切な親和性タグとしては、特異的抗体が利用し得るエピトープが挙げられる。エピトープは、例えば、約3〜5個以上のアミノ酸の短鎖ペプチド、炭水化物、有機系低分子などであり得る。エピトープタグは、組換えタンパク質をアフィニティ精製するために使用されており、市販されている。例えば、エピトープタグ(myc、FLAG、血球凝集素(HA)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ポリHisなどが挙げられる)に対する抗体が市販されている(例えば、Sigma,セントルイス MO;PerkinElmer Life Sciences,ボストン MAを参照のこと)。
【0072】
治療用途では、本発明の因子は、生理的に許容され得る担体(例えば、生理食塩水など)とともに投与され得る。本発明の治療用組成物はまた担体または賦形剤を含有し、その多くは当業者に知られている。使用され得る賦形剤としては、バッファー、例えば、クエン酸バッファー、リン酸バッファー、酢酸バッファー、および重炭酸バッファー;アミノ酸;ウレア;アルコール;アスコルビン酸;リン脂質;タンパク質(例えば、血清アルブミン);エチレンジアミン四酢酸(EDTA);塩化ナトリウムまたは他の塩;リポソーム;マンニトール、ソルビトール、グリセロールなどが挙げられる。本発明の因子は、種々の様式で、対応する投与経路に応じて処方され得る。例えば、液体の液剤は、摂取または注射のために作製され得、ゲルまたは粉剤は、摂取、吸入または局所適用用途のために作製され得る。かかる処方物の作製方法はよく知られており、例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」第18版,Mack Publishing Company,Easton PA(1990)を見るとよい。
【0073】
上記のように、本発明のポリペプチド因子(融合タンパク質であるものを含む)は、適当な真核生物または原核生物の発現系における1つ以上の核酸分子の発現およびその後の該ポリペプチド因子の精製によって得られ得る。加えて、本発明のポリペプチド因子はまた、患者に、1つ以上の核酸分子をコードする適当な治療用発現ベクターによって、インビボまたはエキソビボのいずれかで投与され得る。さらにまた、該核酸は、移植片の細胞内に該移植片の移植前に導入させ得る。したがって、前記因子をコードする核酸分子は本発明の範囲内である。
【0074】
本発明のポリペプチドが、野生型ポリペプチドとのその同一性に関して示され得るように、これらをコードする核酸分子は、対応する野生型ポリペプチドをコードするものと、ある一定の同一性を有する。例えば、TIM−1、TIM−2、TIM−3またはTIM−4をコードする核酸分子は、天然または野生型のTIM−1、TIM−2、TIM−3またはTIM−4をコードする核酸と、少なくとも約50%、少なくとも約65%、少なくとも約75%、少なくとも85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であり得る。同様に、TIMポリペプチドは、天然または野生型のTIM−1、TIM−2、TIM−3またはTIM−4ポリペプチドと、少なくとも約50%、少なくとも約65%、少なくとも約75%、少なくとも85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一性を有し得る。対応する野生型分子と100%未満の同一性を有するポリペプチドまたはそれをコードする核酸は、依然としてTIMポリペプチドの所望の機能を保持していることを理解されよう。
【0075】
本発明の因子をコードする核酸分子は、天然に存在する配列を含有するもの、または天然に存在するものとは異なるが、遺伝コードの縮重により同じポリペプチドをコードする配列を含有するものであり得る。これらの核酸分子は、RNAもしくはDNA、例えばゲノムDNA、cDNAもしくは合成DNA(例えば、ホスホロアミダイト合成により作製されるものなど)、またはこれらの型の核酸内のヌクレオチドの組合せまたは修飾体からなるものであり得る。加えて、該核酸分子は、二本鎖または一本鎖であり得、センスまたはアンチセンス鎖のいずれかであり得る。当業者には、核酸の適当な形態は、所望の利用目的(例えば、一本鎖または二本鎖であり、センスまたはアンチセンスであるウイルス系ベクターを用いる発現)に基づいて選択され得ることが理解されよう。
【0076】
本発明の核酸分子が天然に存在するものの場合、この核酸分子は、ゲノム内で直接隣接する5’または3’コード配列のいずれかと分離されるため、生物の天然に存在するゲノムから「単離された」ものであり得る。したがって、核酸分子は、ポリペプチドをコードする配列を含み、コード配列の上流または下流に存在する非コード配列を含み得る。当業者は、核酸分子を単離するための常套的な手順がよくわかっている(例えば、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,Cold Spring Harbor Press,Plainview,New York(1989);Ausubelら,Current Protocols in Molecular Biology(増補版56),John Wiley & Sons,New York(2001);ならびにSambrookおよびRussel,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第3版,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor(2001)を参照のこと)。該核酸は、例えば、ゲノムDNAの制限エンドヌクレアーゼでの処理によって、または周知の方法を用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行い、ゲノムDNAまたはcDNAの所望の領域を増幅することによって作製され得る(例えば、DieffenbachおよびDveksler,PCR Primer:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press(1995)を参照のこと)。核酸分子がリボ核酸(RNA)の場合、分子は、インビトロ転写によって作製され得る。
【0077】
単離された本発明の核酸分子は、天然状態では見られない断片を含むことがあり得る。したがって、本発明は、組換え分子、例えば、核酸配列(例えば、TIM−1、TIM−2 TIM−3またはTIM−4をコードする配列)がベクター(例えば、プラスミドもしくはウイルス系ベクター)内に組み込まれたもの、または異種の細胞のゲノム内もしくは同種の細胞のゲノム内に天然の染色体内の位置とな異なる位置に組み込まれたものを包含する。
【0078】
上記のように、本発明の因子は融合タンパク質であり得る。上記の異種のポリペプチドに加え、またはこれの代わりに、本発明の因子をコードする核酸分子は、「マーカー」または「レポーター」をコードする配列を含み得る。マーカーまたはレポーター遺伝子の例としては、βラクタマーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(neo、G418)、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ(HPH)、チミジンキナーゼ(TK)、lacZ(βガラクトシダーゼをコードする)、およびキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(XGPRT)が挙げられる。本発明の実施と関連する標準的な手順の多くに関して、当業者には、さらなる有用な試薬(例えば、マーカーまたはレポーターの機能を果たし得るさらなる配列)が認識されよう。
【0079】
本発明の核酸分子は、任意の生物細胞(哺乳動物の細胞など)から得た、または常套的なクローン化方法によって作製した本発明の因子(例えば、TIM−1、TIM−2、TIM−3またはTIM−4分子)に変異を導入することにより得られ得る。したがって、本発明の核酸は、マウス、ラット、モルモット、ウシ、ヒツジ、ウマ、ブタ、ウサギ、サル、ヒヒ、イヌまたはネコのものであり得る。ある具体的な実施形態では、核酸分子はヒトTIMをコードするものであり得る。
【0080】
本明細書に記載する本発明の核酸分子はベクター内に含有され得、このベクターは、例えば、該ベクターによって形質導入された細胞内でその発現を指示することができるものである。したがって、ポリペプチド因子に加え、該因子をコードする核酸分子を含有する発現ベクター、および該ベクターで形質転換された細胞が提供される。
【0081】
本発明における使用に適したベクターとしては、細菌における使用のためのT7系ベクター(例えば、Rosenbergら,Gene 56:125−135(1987)を参照のこと)、哺乳動物細胞における使用のためのpMSXND発現ベクター(LeeおよびNathans,J.Biol.Chem.263:3521−3527(1988))、酵母発現系(Pichia pastorisなど、例えば、PICZファミリーの発現ベクター(Invitrogen,カールズバッド,CA))およびバキュロウイルス由来ベクター(例えば、昆虫細胞における使用のための発現ベクターpBacPAK9(Clontech,Palo Alto,CA))が挙げられる。かかるベクター内の目的のポリペプチドをコードする核酸挿入物はプロモーターと作動可能に連結させ得、プロモーターは、例えば、該核酸が発現される細胞型に基づいて選択される。例えば、T7プロモーターは細菌において使用され得、ポリヘドリンプロモーターは昆虫細胞において使用され得、サイトメガロウイルスまたはメタロチオネインプロモーターは哺乳動物細胞において使用され得る。また、高等真核生物の場合、組織特異的プロモーターおよび細胞型特異的プロモーターは、広範囲に利用可能である。これらのプロモーターは、身体内の所与の組織または細胞型内での核酸分子の発現を指示する能力のため、そのように命名されている。当業者は、所望の細胞または生物内での核酸の発現を指示するために使用され得る適当なプロモーターおよび/または他の調節エレメントを容易に決定できよう。
【0082】
挿入された核酸分子の転写を助長する配列に加え、ベクターは、複製起点、および選択可能マーカーをコードする他の遺伝子を含有し得る。例えば、ネオマイシン耐性(neo)遺伝子は、これが発現される細胞に対してG418耐性を付与し、したがって、トランスフェクト細胞の表現型の選択を可能にする。細胞の表現型の選択を可能にする他の実行可能な選択可能マーカー遺伝子としては、種々の蛍光タンパク質,例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)およびその変異体が挙げられる。当業者は、所与の調節エレメントまたは選択可能マーカーが、ある具体的な使用目的に適当か否かを容易に決定できよう。例示的なベクターを図18に示す。
【0083】
本発明において使用され得るウイルス系ベクターとしては、例えば、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクターおよびアデノ随伴ベクター、ヘルペスウイルスベクター、シミアンウイルス40(SV40)ベクターならびにウシパピローマウイルスベクターが挙げられる(例えば、Gluzman(編),Eukaryotic Viral Vectors,CSH Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New Yorkを参照のこと)。
【0084】
本発明の因子をコードする核酸分子を含有し、該核酸分子にコードされるタンパク質を発現する原核生物系または真核生物系細胞もまた提供される。本発明の細胞は、トランスフェクト細胞、すなわち、1つ以上の核酸分子、例えば、TIM−1、TIM−2、TIM−3またはTIM−4ポリペプチドをコードする核酸分子または、例えば、抗TIM抗体の重鎖および軽鎖をコードする核酸が、組換えDNA手法により導入された細胞である。かかる細胞の子孫もまた、本発明の範囲内とみなされる。多様な発現系を利用し得る。例えば、TIM−1、TIM−2、TIM−3もしくはTIM−4または抗TIMポリペプチドは、原核生物系宿主(細菌である大腸菌など)、または真核生物系宿主(昆虫細胞、例えばSf21細胞、もしくは哺乳動物細胞、例えば、COS細胞、CHO細胞、293細胞、PER.C6細胞、NIH 3T3細胞、HeLa細胞など)内で産生され得る。これらの細胞は多くの供給源(American Type Culture Collection(マナサス,VA)が挙げられる)から入手可能である。当業者は、所望の細胞または生物に適したある特定の発現系に適切な成分(上記のような発現ベクター、プロモーター、選択可能マーカーなどが含まれる)を容易に選択できよう。種々の発現系の使用の選択については、例えば、Ausubelら,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,New York,NY(1993);およびPouwelsら,Cloning Vectors:A Laboratory Manual,1985 増補版.1987)を見るとよい。本発明の因子をコードする核酸分子を含有し、かかる核酸分子にコードされるタンパク質を発現する真核生物系細胞もまた提供される。
【0085】
さらにまた、本発明の真核生物系細胞は、移植細胞、移植組織または移植臓器の一部である細胞であり得る。かかる移植片は、ドナー生物から採取した初代(primary)細胞か、レシピエント生物内(例えば、真核生物細胞株(幹細胞または先祖細胞を含む))への移植前にインビトロで培養、改変(modified)および/または選択された細胞のいずれかを含み得る。レシピエント生物内への移植後、細胞増殖が起こる場合、かかる細胞の子孫もまた、本発明の範囲内とみなされる。移植細胞、移植組織または移植臓器の一部である細胞は、TIMまたは抗TIMポリペプチドをコードする核酸でトランスフェクトし、続いて、レシピエント生物内に移植し得、ここで該ポリペプチドの発現が起こる。さらにまた、かかる細胞は、レシピエント生物内への移植前に、例えば、特定の細胞系統または細胞型の選択手順の適用を可能にする1つ以上のさらなる核酸構築物を含有し得る。かかる移植細胞は、治療用適用用途において使用され得る。例えば、TIM標的化分子またはTIM標的化因子がポリペプチドである場合、TIM標的化分子を発現する細胞を、周知の遺伝子送達方法および適当なベクター(例えば、KaplittおよびLoewy,Viral Vectors:Gene Therapy and Neuroscience Applications Academic Press,San Diego(1995)を参照のこと)を用いて移植し、TIM標的化分子の供給源を提供することができる。
【0086】
移植細胞の場合、該細胞は、植込み手順によるか、または血管壁を介したカテーテル媒介注射手順を用いるかのいずれかで投与され得る。場合によっては、該細胞は、脈管構造内への放出によって投与され得、ここから細胞は、引き続いて血流によって分散され、および/または周囲組織内に移動する。
【0087】
別の実施形態では、免疫抑制剤として機能するTIM標的化分子を、臓器の細胞への遺伝子送達方法によって導入し得る。かかる場合において、ドナー臓器それ自体が、臓器移植を容易にし、移植片拒絶反応を抑制するための免疫抑制剤を提供する。
【0088】
本発明は、さらに、抗原およびTIM標的化分子またはTIM標的化因子を含む組成物を含むキットを提供する。本発明は、さらに、抗原と、TIM標的化分子またはTIM標的化因子を含む組成物とを含む組成物を含むキットを提供する。本発明の組成物の投与に関して上記に示したように、抗原とTIM標的化分子の別々の(separate)組成物を含むキットは、共投与(co−administer)してもよく、同じ位置または異なる位置のいずれかに別々に投与してもよい。別々に抗原とTIM標的化分子組成物とを含むキットは、本明細書に開示したように、同時に投与してもよく、異なる時点で投与してもよい。
【0089】
本明細書で使用する場合、用語「抗体」は、その最も広い意味で用い、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体、ならびにかかる抗体の抗原結合性断片を含む。抗原に特異的な抗体、またはかかる抗体の抗原結合性断片は、抗原またはそのエピトープに対して少なくとも約1×10−1の特異的結合活性を有することを特徴とする。したがって、抗原に特異的な抗体のFab、F(ab’)、FdおよびFv断片であって、抗原に対する特異的結合活性を保持しているものは、抗体の定義に含まれる。TIMなどの抗原に対する特異的結合活性は、例えば、ある抗体のそのそれぞれの抗原と非抗原対照分子とに対する結合活性を比較することにより、当業者によって容易に測定され得る。当業者には、ある具体的な抗原(例えば、TIM)に対する特異的結合活性を有する抗体の意味が容易に理解されよう。抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であり得る。ポリクローナルまたはモノクローナル抗体の調製方法は、当業者によく知られている(例えば、HarlowおよびLane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1988)を参照のこと)。ポリクローナル抗体を用いる場合、ポリクローナル血清は、低下したバックグラウンド結合性およびより高比率の抗原特異的抗体を有する単一特異的抗体を調製するために、抗原を用いてアフィニティ精製され得る。
【0090】
加えて、用語「抗体」は、本明細書で用いる場合、天然に存在する抗体ならびに非天然の抗体(例えば、単鎖抗体、キメラ抗体、二機能性(bifunctional)抗体およびヒト化抗体が挙げられる)、ならびにその抗原結合性断片を含む。ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン配列(例えば、ヒトフレームワーク配列)を、抗原特異性を提供する相補性決定領域(CDR)に由来する非ヒト免疫グロブリン配列と合わせることによって作製される組換え抗体を含むことを意図する。非ヒト免疫グロブリン配列は、抗体生成に適した種々の非ヒト生物から入手され得、限定されないが、ラット、マウス、ウサギ,ヤギなどが挙げられる。ヒト化抗体はまた、完全にヒトの抗体を含むことを意図する。例えば、ファージディスプレイライブラリー系またはヒトMHC遺伝子座(locus)トランスジェニックマウスなどを用いて完全にヒトの抗体を得る方法は、当該技術分野でよく知られている(例えば、米国特許第5,585,089号;同第5,530,101号;同第5,693,762号;同第6,180,370号;同第6,300,064号;同第6,696,248号;同第6,706,484号;同第6,828,422号;同第5,565,332号;同第5,837,243号;同第6,500,931号;同第6,075,181号;同第6,150,584号;同第6,657,103号;同第6,162,963号を参照のこと)。かかる非天然の抗体は、固相ペプチド合成を用いて構築することができ、組換えにより作製することができ、または、例えば、Huseら(Science 246:1275−1281(1989))に記載されたようにして、可変重鎖および可変軽鎖からなるコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることにより得ることができる。例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、CDR−移植化抗体、単鎖抗体、および二機能性抗体のこれらのおよび他の作製方法は、当業者によく知られている(WinterおよびHarris,Immunol.Today 14:243−246(1993);Wardら,Nature 341:544−546(1989);HarlowおよびLane(前出),1988;Hilyardら,Protein Engineering:A practical approach(IRL Press 1992);Borrabeck,Antibody Engineering.2版.(Oxford University Press 1995))。
【0091】
抗原に特異的な抗体は、単離されたTIMポリペプチドまたはその断片(これらは、天然の供給源から調製されるもの、または組換えにより作製されるものであり得る)、またはエピトープとして機能し得る抗原の抗原性部分などの免疫原を用いて惹起され得る。かかるエピトープは、そのエピトープが、抗原に特異的な抗体を生成させるために使用可能ならば、機能的抗原性断片である。非免疫原性または弱免疫原性の抗原またはその部分は、ハプテンを、ウシ血清アルブミン(BSA)またはキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)などの担体分子とカップリングさせることにより免疫原性とし得る。種々の他の担体分子、およびハプテンを担体分子とカップリングさせるための方法は、当該技術分野でよく知られている(例えば、HarlowおよびLane(前出),1988を参照のこと)。抗原の免疫原性ペプチド断片はまた、該ペプチド部分を、例えば、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、ポリHisなどとの融合タンパク質として発現させることにより生成させ得る。ペプチド融合体を発現させるための方法は、当業者によく知られている(Ausubelら,Current Protocols in Molecular Biology(増補版47),John Wiley & Sons,New York(1999))。
【0092】
TIM標的化分子は、本明細書に開示したように、ポリペプチド、所望の活性を有するポリペプチドの機能的断片、または融合ポリペプチドとして、組換えにより発現させ得る。TIM標的化分子の組換え形態の作製および発現方法は、当業者によく知られており、これは、例えば、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,Cold Spring Harbor Press,Plainview,New York(1989);Ausubelら,Current Protocols in Molecular Biology(増補版56),John Wiley & Sons,New York(2001);ならびにSambrookおよびRussel,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第3版,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor(2001)に教示されている。かかる方法を実施例において例示し、図18に、TIM標的化分子構築物用の例示的な発現ベクターを示す。当業者は、TIM標的化分子としての使用のための、所望の断片、例えば所望の機能を有するTIMの機能的断片、例えば細胞外ドメインまたはその断片(Igドメインおよび/またはムチンドメインなど)を容易に決定できよう。
【0093】
上記のように、TIM標的化分子またはTIM標的化因子は、低分子、ペプチド、ポリペプチド、ポリヌクレオチド(アンチセンスおよびsiRNAを含む)、炭水化物(多糖を含む)、脂質、薬物、ならびに擬似物などであり得る。かかる分子を作製するための方法は、当業者によく知られている(Huse,米国特許第5,264,563号;Francisら,Curr.Opin.Chem.Biol.2:422−428(1998);Tietzeら,Curr.Biol.,2:363−371(1998);Sofia,Mol.Divers.3:75−94(1998);Eichlerら,Med.Res.Rev.15:481−496(1995);Gordonら,J.Med.Chem.37:1233−1251(1994);Gordonら,J.Med.Chem.37:1385−1401(1994);Gordonら,Acc.Chem.Res.29:144−154(1996);WilsonおよびCzarnik編,Combinatorial Chemistry:Synthesis and Application,John Wiley & Sons,New York(1997))。アンチセンス核酸分子の選択および調製のための方法は、当該技術分野においてよく知られており、インシリコ(in silico)アプローチが挙げられる(Patzelら,Nucl.Acids Res.27:4328−4334(1999);Chengら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:8502−8507(1996);LebedevaおよびStein,Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.41:403−419(2001);JulianoおよびYoo,Curr.Opin.Mol.Ther.2:297−303(2000);ならびにCho−Chung,Pharmacol.Ther.82:437−449(1999))。si RNAの作製方法およびRNA干渉の使用方法は、以前に報告されている(Fireら,Nature 391:806−811(1998);Hammondら Nature Rev.Gen.2:110−119(2001);Sharp,Genes Dev.15:485−490(2001);ならびにHutvagnerおよびZamore,Curr.Opin.Genetics & Development 12:225−232(2002);HutvagnerおよびZamore,Curr.Opin.Genetics & Development 12:225−232(2002);Bernsteinら,Nature 409:363−366(2001);(Nykanenら,Cell 107:309−321(2001))。
【0094】
本発明はまた、個体に、抗原およびTIM標的化分子またはTIM標的化因子が薬学的に許容され得る担体中に含まれた組成物を投与することによる、疾患の予防的処置方法を提供する。したがって、本発明の組成物は、疾患の発症を予防するため、または疾患の重篤度を軽減するためのワクチンとして使用され得る。該方法は、多様な疾患に使用され得、限定されないが、感染性疾患または癌が挙げられる。
【0095】
本発明は、さらに、個体に、抗原およびTIM標的化分子またはTIM標的化因子が薬学的に許容され得る担体中に含まれた組成物を投与することによる、疾患と関連する徴候または症状の改善方法を提供する。該方法は、疾患の重篤度を軽減するために使用され得る。したがって、本発明の組成物は、疾患を処置するために治療的に使用され得る。当業者は、ある具体的な疾患と関連する徴候または症状および関連する徴候または症状の改善を容易に判断できよう。該方法は、多様な疾患に使用され得、限定されないが、感染性疾患または癌が挙げられる。感染性疾患の場合、該方法は、感染を有する個体における感染性因子の量を減少させるために使用され得る。
【0096】
本発明は、さらに、腫瘍の標的化方法を提供する。該方法は、TIM標的化分子を被験体に投与する工程を含み得、この場合、腫瘍はTIMまたはTIMリガンドを発現するものである。腫瘍は、例えば、癌腫、肉腫およびリンパ腫であり得る。別の実施形態では、本発明は、TIM標的化分子を被験体に投与することによる腫瘍成長の抑制方法であって、腫瘍がTIMまたはTIMリガンドを発現するものである、腫瘍成長の抑制方法を提供する。また別の実施形態では、本発明は、診断用部分と結合体化させたTIM標的化分子を被験体に投与することによる腫瘍の検出方法であって、腫瘍がTIMまたはTIMリガンドを発現するものである、腫瘍の検出方法を提供する。
【0097】
さらに別の実施形態では、本発明は、本明細書に開示したようにしてTIM標的化分子を被験体に投与することによる、自己免疫疾患と関連する徴候または症状の改善方法を提供する。自己免疫疾患は、例えば、本明細書に開示したような、関節リウマチ、多発性硬化症、自己免疫性真性糖尿病、全身性エリテマトーデス、乾癬、乾癬性関節炎、炎症性腸疾患(クローン病または潰瘍性大腸炎など)、重症筋無力症および自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)、ならびにアテローム性動脈硬化およびアルツハイマー病、または他の自己免疫疾患であり得る。自己免疫障害は、細胞性エフェクター、例えば、T細胞、マクロファージ、B細胞およびこれらが産生する抗体、ならびに他の細胞によって媒介される。これらの細胞は、本明細書に開示したような1つ以上のTIMまたはTIMリガンドを発現する。自己免疫性応答に関与する細胞を、例えば、抗体中の細胞溶解性Fcまたは融合タンパク質を用いて、または毒性の結合体を用いることによって排除することにより、かかる自己免疫性障害における治療上の利益が得られる。
【0098】
本発明の方法において、TIM標的化分子は、単独で投与してもよく、または任意選択で、抗原とともに投与してもよい。免疫応答が刺激される本発明の方法では、本明細書に開示したように、TIM標的化分子は、1種類の内因性抗原もしくは複数種類の抗原に対する免疫応答、またはTIM標的化分子とともに投与される1種類の外因性抗原もしくは複数種類の抗原に対する免疫応答を増強し得る。例えば、抗原は、腫瘍の標的化方法における腫瘍抗原であり得る。同様に、細胞媒介性自己免疫疾患と関連する抗原が、所望により、TIM標的化分子またはその結合体とともに投与され得る。TIM標的化分子はまた、治療用部分と結合体化させ得る。加えて、TIM標的化分子またはTIM標的化分子結合体は、TIM−Fc融合ポリペプチドであり得る。かかるTIM−Fc融合ポリペプチドは、標的細胞枯渇性(細胞溶解性)または非標的細胞枯渇性(非細胞溶解性)であり得る。
【0099】
本発明の種々の実施形態の活性に実質的な影響を与えない改変もまた、本明細書に示した本発明の定義内に規定されることを理解されたい。したがって、以下の実施例は例示を目的とし、本発明を限定しない。
【実施例】
【0100】
(実施例 I)
(抗TIM−1抗体の精製)
マウス抗ヒトTIM−1抗体またはラット抗マウスTIM−1抗体を分泌するハイブリドーマを、まず細胞培養フラスコ中で培養し、続いて、Bioperm細胞培養反応器に移した。分泌された抗体を含有する培養上清み液を48時間毎に回収し、除濁し(clarify)、4℃で保存した。回収した上清み液をプールし、抗TIM−1抗体を上清み液から、プロテインGセファロース親和性クロマトグラフィーによって精製し、カラムから、グリシン(pH2.5〜3.5)を用いて溶出した。溶出液をpH中和し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に対して透析した。精製された抗体を、さらなる使用まで−80℃で保存した。
【0101】
(実施例 II)
(マウスとヒトのTIM−1/Fc融合タンパク質発現用DNAベクターの構築)
TIM−1/Fc融合タンパク質遺伝子セグメントのクローン化のためのシャトルプラスミドベクター(pTPL−1)を設計および構築した。基礎となるベクターpTPL−1は、細菌系および真核生物系耐性遺伝子、ならびにCMVエンハンサーおよびβ−グロビンポリA部位と隣接するマルチプルクローニングサイトを担持する(TIM−3融合体に関する図18も参照のこと)。マウス非細胞溶解性IgG2a/Fc断片(ヒンジ、CH2およびCH3ドメイン)を、オリゴヌクレオチド部位特異的突然変異誘発により作製し、C1q結合性モチーフを取替え、FcγRl結合部位を不活性化した(Zhengら,J.Immunol.154:5590−5600(1995))。
【0102】
本発明の因子の一部分であり得るFc領域は、「細胞溶解性」または「非細胞溶解性」であり得る。非細胞溶解性Fc領域は、典型的には、高親和性Fcレセプター結合性部位およびC’1q結合部位を欠く。マウスIgG Fcの高親和性Fcレセプター結合性部位は、IgG Fcの235位にLeu残基を含む。したがって、マウスFcレセプター結合性部位は、Leu235を変異または欠失させることにより破壊され得る。例えば、Leu235をGluで置換すると、Fc領域が高親和性Fcレセプターに結合する能力が抑制される。マウスC’1q 結合性部位は、IgGのGlu318、Lys320およびLys322残基を変異または欠失させることにより機能が破壊され得る。例えば、Glu318、Lys320およびLys322をAla残基で置換すると、IgG Fcは、抗体依存性補体溶解を指示できなくなる。対照的に、細胞溶解性IgG Fc領域は、高親和性Fcレセプター結合性部位およびC’1q結合部位を有する。高親和性Fcレセプター結合性部位は、IgG Fcの235位にLeu残基を含み、C’1q結合性部位は、IgGのGlu318、Lys320およびLys322残基を含む。細胞溶解性IgG Fcは、野生型残基または保存的アミノ酸置換をこれらの部位に有する。細胞溶解性IgG Fcは、抗体依存性細胞性細胞傷害性または補体特異的細胞溶解(CDC)のために細胞を標的化し得る。また、ヒトIgGに対する適切な変異も知られている(例えば、Morrisonら,The Immunologist 2:119−124(1994);およびBrekkeら,The Immunologist 2:125(1994)を参照のこと)。
【0103】
野生型および点変異IgG2a Fc断片はともに、それぞれPCRによって増幅し、pTPL−1内にクローン化してpTPL−1/mFc2aおよびpTPL−1/mFc2a/nl(nlは非細胞溶解性)を創製した。続いて、ヒトCD5シグナル配列遺伝子セグメントを、以下の2つのオリゴヌクレオチド(遺伝子座(Locus):NM_014207、フォワードオリゴヌクレオチド:5’−TGGCACCGGTGCCACCATGCCCATGGGGTCTCTGCAACCGCTGGCCACCTTGTACCTGCTGGGG−3’、配列番号:43;およびリバースオリゴヌクレオチド:5’−TAGGAGATCTCCTAGGCAGGAAGCGACCAGCATCCCCAGCAGGTACAAGGTGGCCAGCGG−3’、配列番号:44)を用いたアニーリングおよびフィルイン(fill−in)反応によって合成した。フォワードオリゴヌクレオチドは、適当な制限部位およびCD5シグナル配列の開始ATG(下線部)の前であってこの配列の5’末端にコザックコンセンサス配列を含有する。リバースオリゴヌクレオチドは、CD5シグナル配列の3’末端由来の配列および適当な制限部位から構成される。合成した遺伝子断片を消化し、pTPL−1/Fcベクター内にクローン化した。これにより、プラスミドpTPL−1/CD5/mFc2aおよびpTPL−1/CD5/mFc2a/nlが創製された。最後に、マウスTIM−1のそれぞれの細胞外ドメインをPCR増幅し、pTPL−1/CD5/mFc2aおよびpTPL−1/CD5/mFc2a/nlベクター内のヒトCD5シグナル配列とIg Fc領域との間にクローン化した。このクローン化工程により、最終発現プラスミドpTPL−1/TIM−1FcおよびpTPL−1/TIM−1Fc/nlを得た。プラスミド構築物の正確さは、DNA配列決定によって確認した。以下のマウスTIM−1/Fc発現ベクターを構築物した:(1)非細胞溶解性および細胞溶解性マウスIgG2a Fcと融合させたTIM−1の免疫グロブリン(Ig)ドメインのみ。Igドメインのそれぞれのヌクレオチド配列を図1および2に示す。(2)非細胞溶解性および細胞溶解性マウスIgG2a Fcと融合させたマウスTIM−1(BALB/cまたはC57Bl/6対立遺伝子のいずれか)の完全長の細胞外ドメイン。細胞外ドメイン(Igドメイン+ムチンドメイン)の配列を図1および2に示す。タンパク質の配列を図2に示す。例示的なTIM−1/Fc融合タンパク質のタンパク質配列を図4に示す。
【0104】
上記のマウスTIM−1/Fc発現ベクターと同様にして、ヒトTIM−1/Fcを発現するベクターも作製した。これを行うため、ヒトIgG1 FcまたはヒトIgG4 Fc(それぞれの免疫グロブリンのヒンジ、CH2およびCH3ドメイン)のいずれかをPCRによって増幅し、pTPL−1内にクローン化した。次いで、CD5リーダー配列を、上記のようにして挿入し、最後に、異なるTIM−1対立遺伝子(米国特許出願公開第20030124114号に記載)を該発現ベクター内にクローン化した。この場合も、TIM−1のIgドメインのみ、またはTIM−1のIgドメインおよびムチンドメインのいずれかを含有するベクターを用いてTIM−1/Fc発現ベクターを作製した。同様の構築物を、TIM−3およびTIM−4ならびにマウスTIM−2について作製した。
【0105】
(実施例 III)
(293細胞におけるTIM/Fc融合タンパク質一過性発現)
作製した発現ベクターの機能性を試験するため、293細胞において一過性トランスフェクションを行った。簡単には、血清無含有成長培地(293−SFM II;InvitroGen,カールズバッド,CA)中の80〜90%コンフルエント293細胞を、Lipofectamine 2000系を製造業者の取扱説明書(InvitroGen,カールズバッド,CA)に従って用い、トランスフェクトした。常套的には、10個の細胞あたり1μgのプラスミドDNAを用いた。トランスフェクションの1日後、成長培地を新たな培地と交換し、細胞を7日間まで培養した。細胞培養上清み液を遠心分離によって除濁し、TIM−1/FcまたはTIM−3/Fc融合タンパク質を、プロテインGセファロース親和性クロマトグラフィーによって精製した。プロテインGビーズからの低pH溶出後、精製タンパク質をPBSに対して透析し、−80℃で保存した。生成されたタンパク質の同一性、純度および完全性(integrity)を、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS PAGE)ならびに銀染色またはクマシー染色、ウエスタンブロッティングおよびELISAによって解析した。
【0106】
(実施例 IV)
(TIM−1/Fc、TIM−3/FcおよびTIM−4/Fcを安定発現するCHO細胞株の作製)
種々のTIM−1/Fc融合タンパク質を安定発現するCHO細胞株を、以下のようにして作製した。接着(CHO−K1)または懸濁成長CHO−S細胞(InvitroGen,カールズバッド,CA)を、適切な発現プラスミド(pTPL−1;TIM−1/Fc系列)により、市販のキット(Lipofectamine 2000,InvitroGen,カールズバッド,CA)を製造業者の取扱説明書に従って用いるか、またはエレクトロポレーションによるかのいずれかによってトランスフェクトした。トランスフェクト細胞を、1日中、成長培地(CHO−SFM II;InvitroGen,カールズバッド,CA;またはDMEM、10%ウシ胎仔血清)中で回収し、次いで、抗生物質G418(0.5mg/mL〜1mg/mL)を含有する選択培地中に移した。個々のクローンを、単一細胞限界希釈クローン化(懸濁株)によって、または「クローンピッキング」(接着細胞株)によって調製し、さらに増殖させた。ELISAを用い、培養培地の上清み液を分泌されたTIM−1/Fcタンパク質の存在についてアッセイした。高産生性クローンを、さらにサブクローン化し、タンパク質産生のために拡大(expand)させた。本質的に同一のプロトコルを用いて、TIM−3/FcおよびTIM−4/Fc融合タンパク質を安定発現するCHO細胞株を作製した。
【0107】
(実施例 V)
(マウスTIM/Fc融合タンパク質の作製および精製)
TIM−1/Fc融合タンパク質を安定発現するCHO細胞株を、血清無含有成長培地(CHO−SFM II;InvitroGen,カールズバッド,CA)またはDMEM(5%ウシ胎仔血清)中で拡大させた。培養培地を回収し、遠心分離により除濁および/または濾過し、限外濾過(Pall UltrasetteTM,アナーバー,MI)によって濃縮し、プロテインAまたはGにより固定化した。タンパク質が結合した樹脂を洗浄し、TIM−1/Fc融合タンパク質を低pHで溶出した。画分を回収し、中性pHに調整した。必要により、溶出TIM−1/Fcタンパク質を、イオン交換クロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィーによってさらに精製した。精製タンパク質を、適当な生理学的バッファー(例えば、PBS)に対して透析し、アリコートに分けて−80℃で保存した。本質的に同一のプロトコルを用いて、TIM−3/FcおよびTIM−4/Fc融合タンパク質を作製および精製した。
【0108】
(実施例 VI)
(B型肝炎ワクチン接種用アジュバントとしての抗TIM−1)
BALB/cマウスに、単回用量(10マイクログラム、「mcg」)のEngerix−BTMワクチン(Glaxo Smith Kline)を、50mcg/mLの抗TIM−1抗体とともに、またはこれなしで、ワクチン接種した。抗体は、注射の前に、ワクチン(アジュバントとして0.5mg/mLの水酸化アルミニウムを含有するワクチン)と混合した。対照マウスは、水酸化アルミニウム含有PBS、PBS単独、またはイソタイプ適合抗体を含有するビヒクルの対照で処置した。免疫処置後第7日、第14日および第21日に、各群のマウスを解析に供した。簡単には、脾臓および血清を回収し、処理して、β−メルカプトエタノール、10%ウシ胎仔血清(FBS)および抗生物質(ペニシリン、ストレプトマイシン、ファンギゾン)を加えたRPMI培地中で単一細胞懸濁液とした。処理した脾臓細胞(3×10個の細胞)を、精製B型肝炎表面抗原(5mcg/mL、Research Diagnostics,Inc.,フランダース,ニュージャージー州)の存在下でインキュベートした。37℃、5%COで96時間のインキュベーション後、全生存細胞を、WST細胞増殖キット(Roche Diagnostics,インディアナポリス,IN)によって解析した。さらに、96時間後、これらの実験ウェルから上清み液を回収し、IFN−γおよびIL−4の存在について、市販のサイトカインELISAキットを製造業者(R&D Systems;ミネアポリス MN)の取扱説明書に従って用いて解析した。血清試料を1:200に希釈し、B型肝炎表面抗原に特異的な抗体を検出するELISAにて解析した。
【0109】
他の実験では、ワクチン接種した動物から単離した脾臓細胞を、0.3、1.0または3.0mcg/mLのB型肝炎表面抗原とともに、上記のようにしてインキュベートした。抗原に応答した細胞の増殖を、Delfia Proliferation Assayキット(Perkin Elmer,ボストン,MA)を用いて測定した。簡単には、BALB/cマウス(1群あたり6匹のマウス)を、アジュバントとしてミョウバンを含むEngerix BTMおよび100mcgのTIM−1抗体によりワクチン接種した。B型肝炎表面抗原特異的脾臓細胞の増殖を、リンパ球調製物を4日間、抗原の存在または非存在下、全容量0.2mLの完全培地(RPMI 10%ウシ胎仔血清、ペニシリン−ストレプトマイシン、β−メルカプトエタノール)中でインキュベートすることにより測定した。各増殖時点の終了の24時間前、96ウェル平底組織培養プレート内の細胞を、0.02mLの5−ブロモ−2’−デオキシウリジン(BrdU)標識化溶液を用いて標識した。24時間後、プレートを遠心分離し、培地を除去した。ウェルの核酸内容物を該プラスチック(plastic)に固定し、ユウロピウムで標識した抗BrdU抗体を添加して、取り込まれたBrdUと結合させた。ウェルの洗浄および蛍光誘導物質の添加後、ユウロピウム蛍光を、Wallac Victor 2マルチラブル(multilable)解析装置を用いて解析し、相対蛍光単位(RFU)で示した。アッセイ対照には、細胞なしのウェル、BrdU無含有細胞および抗原刺激なしの細胞を含めた。
【0110】
実験結果は、市販のB型肝炎ワクチン(Engerix−BTM,GlaxoSmithKline)の投与がマウスにおいて不充分な免疫原性しかないことを示す。このワクチンは、マウスにおいて細胞媒介性免疫応答を惹起せず、B型肝炎抗原に対する抗体は免疫処置の3週間後にしか検出されない。抗TIM−1抗体をアジュバントとしてワクチン接種時にB型肝炎ワクチンとともに投与することにより、ワクチン接種後の7日以内にB型肝炎抗原に対する抗原特異的細胞媒介性免疫応答の発生がもたらされた。細胞媒介性免疫は、抗原への再曝露後の免疫細胞増殖モニタリングすることにより、およびTヘルパーサイトカインの産生を測定することによりアッセイした。また、抗TIM−1抗体をアジュバントとしてワクチン接種時に投与することにより、ワクチン接種後の7日以内にB型肝炎抗原に対する抗体の生成ももたらされた。
【0111】
図5は再刺激時の抗原に対する増殖を示す。BALB/cマウスは、Engerix−BTM(10mcg)単独または単回用量の抗TIM抗体(50mcg)によりワクチン接種した。表示した時間に、脾臓を、B型肝炎表面抗原に対する増殖について解析した(96時間アッセイ)。ワクチン単独は、抗原に応答した脾細胞およびT細胞増殖をほとんど刺激しなかったが、抗TIM−1抗体は、抗原に対する細胞の増殖応答を大いに増強し、細胞性免疫の増大が示された。これらの結果は、抗TIM−1抗体がB型肝炎ワクチンに対する応答を改善したことを示す。
【0112】
図6は、抗原での再刺激後のサイトカイン産生を示す。BALB/cマウスを、10mcgのB型肝炎ワクチンにより、または抗TIM抗体とともに10mcgのワクチンにより免疫処置した。第7日、第14日、および第21日に、インビトロでB型肝炎抗原により脾臓細胞を刺激した。96時間後、上清み液をそれぞれIFN−γおよびIL−4について解析した。ワクチン単独は、抗原に応答したIFN−γ産生(Th1サイトカイン)をほとんど刺激しなかったが、抗TIM−1抗体は、このサイトカインの産生を大いに増強し、Th1応答の増大が示された。対照的に、Th2サイトカインであるIL−4の発現すべての時点でバックグラウンドレベルであった。これらの結果は、インターフェロン−γ産生に対する抗TIM−1抗体のアジュバント効果を示す。
【0113】
図7は、B型肝炎特異的抗体の産生を示す。B型肝炎ワクチンで抗TIM抗体(単回用量;50mcg)とともに、またはこれなしでワクチン接種したマウス由来の血清試料を、B型肝炎表面抗原に特異的な抗体の存在について免疫処置後第7日に試験した。ワクチン単独は、免疫処置後の初期ではB型肝炎抗原に対する抗体応答をほとんど刺激しなかったが、抗TIM−1抗体は強い抗体応答を刺激した。これらの結果は、B型肝炎ワクチンと組み合わせた抗TIM−1抗体での処置がB型肝炎抗原に対する抗体を誘発することを示す。
【0114】
図8は、B型肝炎表面抗原特異的脾細胞の抗原刺激と用量依存的関係での増殖を示す。10mcgのEngerix BTMを100mcgのTIM−1 mAbとともに、またはこれなしで1回ワクチン接種したマウス由来の脾細胞を単離し、漸増濃度のB型肝炎表面抗原の存在または非存在下で培養した。4日間のインキュベーション後、ウェルを、Delfia Cell Proliferation Assayを用いて増殖について解析した。TIM−1 mAbとともにワクチンを接種したマウスは、Engerix BTMワクチンを単独またはイソタイプ対照抗体とともにワクチン接種した場合と比べ、特異的抗原に対して統計学的に有意な応答(p<0.05)を生じた。これらの結果は、抗TIM−1が、B型肝炎表面抗原に対する脾細胞の増殖を増強することを示す。
【0115】
図9は、特異的抗原での刺激におけるIFN−γの産生を示す。インターフェロン−γ発現は、B型肝炎表面抗原(HepBsAg)に対する全脾細胞において測定した。上記の増殖アッセイウェルから上清み液を、ELISAによるサイトカイン解析のために取り出した。TIM−1 mAbをワクチン接種したマウスは、抗原刺激に応答して、ワクチン単独またはイソタイプ対照抗体とともにワクチンを接種したマウスよりも有意に高い量のIFN−γ(p<0.05)を生成した。IL−4は検出され得なかった。これらの結果は、抗TIM−1が、B型肝炎表面抗原に応答してIFN−γ発現を増強することを示す。
【0116】
(実施例VII)
(HIV抗原用アジュバントとしての抗TIM−1)
6〜8週齢のC57BL/6マウス(1群あたり4匹)に、単回用量のHIV p24抗原(25または50mcg)をPBSにて皮下に、50もしくは100mcgのTIM−1 mAb、イソタイプ対照抗体または50もしくは100mcgのCpG 1826オリゴデオキシヌクレオチド(Invitrogen Corporation;カールズバッド CAにより合成)のいずれかを腹腔内に、第1日および第15日にワクチン接種した。CpG 1826オリゴは、
TCCATGACGTTCCTGACGTT(配列番号:45)
ZOOFZEFOEZZOOZEFOEZT
である。上列は、標準的な一文字略号命名法でのヌクレオチドの配列である。塩基はすべて、最後のTを除き、ホスホロチオエート化により修飾されている。第2列は、ホスホロチオエート化塩基の一文字略号を用いた配列である。コードは、F=A−ホスホロチオエート、O=c−ホスホロチオエート、E=g−ホスホロチオエート、Z=T−ホスホロチオエートである。次いで、マウスを第21日に致死させ、抗原に対する増殖を測定するため脾臓細胞を回収した。簡単には、脾臓細胞を、リンパ球調製物を4日間、HIV p24抗原の存在または非存在下で、全容量0.2mLの完全培地(RPMI 10%ウシ胎仔血清、ペニシリン−ストレプトマイシン、β−メルカプトエタノール)中でインキュベートすることにより測定した。細胞増殖は、Delfia Cell Proliferation Assay(PerkinElmer)を用いて測定した。インキュベーション期間終了の24時間前、96ウェル丸底組織培養プレート内の細胞を、0.02mLのBrdU標識化溶液で標識した。24時間後、プレートを遠心分離し、培地を除去した。ウェルの核酸内容物を該プラスチックに固定し、ユウロピウムで標識した抗BrdU抗体を添加して、取り込まれたBrdUと結合させた。BrdUの取り込みを、蛍光定量的解析装置を用い、ユウロピウムの相対蛍光単位(RFU)で示した。アッセイ対照には、細胞なしのウェル、BrdU無含有細胞、およびビヒクル単独(リン酸緩衝生理食塩水、PBS)を含めた。
【0117】
図10は、HIV p24抗原+TIM−1 mAbで免疫処置したマウスが、イソタイプ対照抗体またはCpG オリゴヌクレオチドのいずれかと比べ、抗原に対して有意に高い増殖応答(CpGと比べてp<0.05)を生じたことを示す。マウスに、単回用量のHIV p24抗原(50mcg)をPBSにて皮下に、100mcgのTIM−1 mAb、イソタイプ対照抗体または100mcgのCpG(1826)オリゴデオキシヌクレオチドのいずれかを腹腔内に、第1日および第15日にワクチン接種した。次いで、マウスを第24日に致死させ、脾臓細胞を、抗原に対する増殖のために回収した。これらの結果は、抗TIM−1がHIV p24抗原に対する増殖応答を増強することを示す。
【0118】
(実施例VIII)
(インフルエンザワクチン接種用アジュバントとしての抗TIM−1)
BALB/cマウスに、単回用量(30mcg)のFluvirinTMワクチン(Evans Vaccines,Ltd)を、50mcg/mLの抗TIM−1抗体とともに、またはこれなしでワクチン接種した。抗体を、注射の直前にワクチンと混合した。対照マウスは、PBS単独またはイソタイプ適合抗体含有PBSの対照で処置した。免疫処置後、第10日に、各群のマウスを解析に供した。簡単には、脾臓および血清を回収し、処理して、β−メルカプトエタノール、10%FBSおよび抗生物質(ペニシリン、ストレプトマイシン、ファンギゾン)を加えたRPMI培地中で単一細胞懸濁液とした。処理した脾臓細胞(3×10個の細胞)を、不活化した完全体(whole)インフルエンザ(1mcg/mL、北京株、H1N1;Research Diagnostics,Inc.,フランダース,ニュージャージー州)の存在下でインキュベートした。37℃、5%COで96時間のインキュベーション後、生存細胞を、WST細胞増殖キット(Roche Diagnostics,インディアナポリス,IN)によって解析した。96時間後、これらの実験用ウェルから上清み液を回収し、IFN−γおよびIL−4の存在について、市販のサイトカインELISAキットを製造業者(R&D Systems)の取扱説明書に従って用いて解析した。血清試料を1:200に希釈し、インフルエンザウイルスに特異的な抗体を検出するELISAにて解析した。
【0119】
図11は、インフルエンザ抗原に対する脾細胞の増殖応答を示す。BALB/cマウスを、インフルエンザワクチンFluvirinTMまたはFluvirinTM+抗TIM−1抗体(単回用量;50mcg)で免疫処置した。10日後、ウイルス(H1N1)による刺激に対する応答を、96時間増殖アッセイにおいて測定した。PBS、および抗TIM−1抗体単独を処置対照とした。ワクチン単独は、抗原に応答した脾細胞およびT細胞増殖をほとんど刺激しなかったが、抗TIM−1抗体は、抗原に対する細胞の増殖応答を大いに増強し、細胞性免疫の増大が示された。これらの結果は、インフルエンザワクチン接種に対する抗TIM−1抗体のアジュバント効果を示す。
【0120】
図12は、インフルエンザ免疫処置マウスのサイトカイン産生を示す。BALB/cマウスを、30mcgのインフルエンザワクチンFluvirinTMまたはFluvirinTM+抗TIM抗体(単回用量;50mcg)で免疫処置した。10日後、脾細胞を調製し、ウイルス(H1N1)での再刺激におけるTh1サイトカイン(IFN−γ)およびTh2サイトカイン(IL−4)の産生を、96時間の培養後に測定した(PBS、FluvirinTM、抗TIM−1、およびFluvirinTM+抗TIM−1を図12の左から右に示す)。ワクチン単独は、抗原に応答したIFN−γ産生(Th1サイトカイン)をほとんど刺激しなかったが、抗TIM−1抗体は、このサイトカインの産生を大いに増強し、Th1応答の増大が示された。IL−4産生はバックグラウンド以下であった。したがって、IFN−γとは対照的に、Th2サイトカインであるIL−4の発現はバックグラウンドレベルであった。これらの結果は、抗TIM−1アジュバントは、インフルエンザ特異的Th1サイトカイン応答を惹起することを示す。
【0121】
(実施例IX)
(異なるインフルエンザ株に対してヘテロサブタイプ的免疫応答を生じさせるためのアジュバントとしての抗TIM−1)
BALB/cマウス(1群あたり3匹)を、単回用量(10mcg)の北京インフルエンザウイルス(A/北京/262/95、H1N1)で、100mcg/mL 抗TIM−1抗体とともに、またはこれなしでワクチン接種した。抗体を、注射の直前に抗原と混合した。対照マウスは、PBS単独、またはイソタイプ適合(ラットIgG2b)抗体含有抗原の対照で処理した。免疫処置後第21日に、各群のマウスを解析に供した。簡単には、脾臓および血清を回収し、処理し、β−メルカプトエタノール、10%FBSおよび抗生物質(ペニシリン、ストレプトマイシン、ファンギゾン)を加えたRPMI培地中で単一細胞懸濁液とした。処理した脾臓細胞(3×10個の細胞)を、不活化した完全体インフルエンザ(1mcg/ml、北京株、H1N1、またはA/キエフ様301/94−ヨハネスブルグ/33/94、H3N2;Research Diagnostics,Inc.,フランダース,ニュージャージー州)の存在下でインキュベートした。37℃、5%COで96時間のインキュベーション後、生存細胞を、Delfia増殖キット(PerkinElmer)によって解析した。インキュベーション期間終了の24時間前、96ウェル丸底組織培養プレート内の細胞を、20μLのBrdU標識化溶液で標識した。24時間後、プレートを遠心分離し、培地を除去した。ウェルの核酸内容物を該プラスチックに固定し、ユウロピウムで標識した抗BrdU抗体を添加して、取り込まれたBrdUと結合させた。BrdUの取り込みを、蛍光解析装置を用い、ユウロピウムの相対蛍光単位(RFU)で示した。アッセイ対照には、細胞なしのウェル、BrdU無含有細胞および抗原刺激なしの細胞を含めた。96時間後、これらの実験用ウェルから上清み液を回収し、IFN−γおよびIL−4の存在について、市販のサイトカインELISAキットを製造業者(R&D Systems)の取扱説明書に従って用いて解析した。
【0122】
図13は、北京ウイルス(A)またはキエフウイルス(B)による刺激に対する北京免疫処置マウスでの増殖応答を示す。BALB/cマウスを、10mcgの不活化された北京インフルエンザウイルスで、100mcgのTIM−1 mAbまたはイソタイプ対照(ラットIgG2b)の存在または非存在下で免疫処置した。21日後、脾臓を、インビトロ解析のために回収した。増殖はTIM−1 mAbを用いると増強され、キエフ刺激に対する応答は、種交差免疫(p<0.01)を示す。これらの結果は、抗TIM−1がA型インフルエンザに対する脾細胞の増殖を増強し、種交差免疫を刺激することを示す。
【0123】
図14は、北京ウイルス(A)またはキエフウイルス(B)による刺激に対する北京免疫処置マウスでのサイトカイン応答を示す。BALB/cマウスを、10mcgの不活化された北京インフルエンザウイルスで、100mcgのTIM−1 mAbまたはイソタイプ対照(ラットIgG2b)の存在または非存在下で免疫処置した。21日後、脾臓を、インビトロ解析のために回収した。増殖アッセイの上清み液を、IFN−γの存在について解析した。パネルAは、TIM−1 mAbの添加が、北京ウイルス(H1N1)刺激応答したIFN−γの産生を有意に(p<0.01)を増強することを示す。パネルBは、TIM−1 mAbの添加がまた、ヘテロサブタイプキエフ株(H3N2)による刺激に応答したIFN−γの産生も有意に(p<0.01)を増強することを示す。これらの結果は、抗TIM−1が種交差免疫を増強することを示す。
【0124】
図15は、北京ウイルス(A)またはキエフウイルス(B)による刺激に対する北京免疫処置マウスでのIL−4サイトカイン産生を示す。BALB/cマウスを、10mcgの不活化された北京インフルエンザウイルスで、100mcgのTIM−1 mAbまたはイソタイプ対照(ラットIgG2b)の存在または非存在下で免疫処置した。21日後、脾臓をインビトロ解析のために回収した。増殖アッセイの上清み液をIL−4の存在について解析した。パネルAは、TIM−1 mAbの添加が、北京ウイルス(H1N1)刺激応答したIL−4の産生を有意に(p<0.01)を増強することを示す。パネルBは、TIM−1 mAbの添加がまた、ヘテロサブタイプキエフ株(H3N2)による刺激に応答したIL−4の産生も有意に(p<0.01)を増強することを示す。これらの結果は、IL−4発現が、A型インフルエンザで刺激した脾細胞において、抗TIM−1によって増強されたことを示す。
【0125】
(実施例X)
(炭疽ワクチン接種用アジュバントとしての抗TIM−1および抗TIM−3)
C57BL/6マウスに、単回用量(40mcg)の組換えProtective Antigen(rPA、List Biological Laboratories;キャンベル CA)を、50mcg/mlの抗TIM−3抗体とともに、またはこれなしでワクチン接種した。抗体を注射直前に、抗原とアジュバントとしての1.2mg/mlの水酸化アルミニウムとともに混合した。対照マウスは、水酸化アルミニウム含有PBSまたはイソタイプ適合対照抗体を含有するビヒクルで処置した。免疫処置後、第10日に、各群のマウスを解析に供した。簡単には、脾臓および血清を回収し、処理して、β−メルカプトエタノール、10%FBSおよび抗生物質(ペニシリン、ストレプトマイシン、ファンギゾン)を加えたRPMI培地中で単一細胞懸濁液とした。処理した脾臓細胞(3×10個の細胞)を、rPA(1mcg/mL、Research Diagnostics,Inc.,フランダース,ニュージャージー州)の存在下でインキュベートした。37℃、5%COで96時間のインキュベーション後、生存細胞を、WST細胞増殖キット(Roche Diagnostics,インディアナポリス,IN)によって解析した。さらに、96時間後、これらの実験用ウェルから上清み液を回収し、IFN−γおよびIL−4の存在について、市販のサイトカインELISAキットを製造業者(R&D Systems)の取扱説明書に従って用いて解析した。血清試料を1:200に希釈し、rPA抗原に特異的な抗体を検出するELISAにて解析した。
【0126】
あるいはまた、C57BL/6マウスを、単回用量(0.2mL)のBioThraxTM(AVA;Bioport、ランシング、MI)で、50mcg/mlの抗TIM−1抗体とともに、またはこれなしでワクチン接種した。抗体を、注射直前に抗原とアジュバントとしての1.2mg/mlの水酸化アルミニウムとともに混合した。対照マウスは、BioThraxTMワクチン単独またはイソタイプ適合対照抗体を含有するBioThraxTMワクチンで処置した。免疫処置後、第7日に、各群のマウスを解析に供し、血清試料を採取した。血清試料を1:200に希釈し、rPA抗原に特異的な抗体を検出するELISAにて解析した。また、第15日に脾臓を回収し、処理し、β−メルカプトエタノール、10%FBSおよび抗生物質(ペニシリン、ストレプトマイシン、ファンギゾン)を加えたRPMI培地中で単一細胞懸濁液とした。処理した脾臓細胞(3×10個の細胞)を、rPA(1mcg/ml、Research Diagnostics,Inc.,フランダース,ニュージャージー州)の存在下でインキュベートした。37℃、5%COで96時間のインキュベーション後、生存細胞を、WST細胞増殖キット(Roche Diagnostics,インディアナポリス,IN)によって解析した。さらに、96時間後、これらの実験用ウェルから上清み液を回収し、IFN−γおよびIL−4の存在について、市販のサイトカインELISAキットを製造業者(R&D Systems)の取扱説明書に従って用いて解析した。
【0127】
図16は、ワクチン接種後の抗rPA抗体応答を示す。C57BL/6マウスを、0.2mLのAVA(Anthrax Vaccine Absorbed)BioThraxTMまたはBioThraxTM+抗TIM−1抗体で免疫処置した。7日後、rPAに特異的な全血清抗体をELISAにて測定した。BioThraxTM単独およびBioThraxTM+イソタイプ適合抗体を処置対照とした。ワクチン単独は、炭疽菌抗原に対する抗体応答をほとんど刺激しなかったが、抗TIM−1抗体は、有意に高い抗体応答を刺激した。これらの結果は、BioThraxTM+抗TIM−1が抗体産生を増大させることを示す。
【0128】
図17は、炭疽菌ワクチン接種に対する抗TIMアジュバント効果を示す。C57BL/6マウスを、組換えProtective Antigen(rPA;40mcg)またはrPA+抗TIM−3抗体(単回用量;50mcg)で免疫処置した。10日後、rPAによる再刺激に対する脾細胞の応答を、96時間増殖アッセイにおいて測定した。PBSおよびrPA+イソタイプ適合対照抗体を処置対照とした。これらの結果は、炭疽菌ワクチン接種に対する抗TIM−3のアジュバント効果を示す。
【0129】
(実施例XI)
(リステリア菌ワクチン接種用アジュバントとしての抗TIM−1)
C57BL/6マウスに、単回用量の加熱殺菌Listeria monocytogenes(HKLM)を、50mcg/mlの抗TIM−1抗体とともに、またはこれなしでワクチン接種した。抗体を、注射の前に抗原および水酸化アルミニウム(アジュバントとして)と混合した。対照マウスは、水酸化アルミニウム含有PBS、PBS単独またはイソタイプ適合抗体を含有するビヒクルの対照で処置した。免疫処置後第10日に、各群のマウスを解析に供した。簡単には、脾臓および血清を回収し、処理して、β−メルカプトエタノール、10%FBSおよび抗生物質(ペニシリン、ストレプトマイシン、ファンギゾン)を加えたRPMI培地中で単一細胞懸濁液とした。処理した脾臓細胞(3×10個の細胞)を、1mcg/ml HKLMの存在下でインキュベートした。37℃、5%COで96時間のインキュベーション後、生存細胞を、WST細胞増殖キット(Roche Diagnostics,インディアナポリス,IN)によって解析した。96時間後、これらの実験用ウェルから上清み液を回収し、IFN−γおよびIL−4の存在について、市販のサイトカインELISAキットを製造業者(R&D Systems)の取扱説明書に従って用いて解析した。血清試料を1:200に希釈し、HKLMに特異的な抗体を検出するELISAにて解析した。
【0130】
(実施例XII)
(癌ワクチン用アジュバントとして、および腫瘍の処置用治療剤としてのTIM−1/Fc、TIM−4/Fcおよび抗TIM−1)
C57BL/6マウスまたはBALB/cマウスに、10γ照射またはマイトマイシン処置Bl6.F10細胞(黒色腫)、EL4細胞(胸腺腫)またはp815細胞(肥満細胞腫)を皮下注射した。不活化された腫瘍細胞でのワクチン接種時、動物をまた0.1mgのラット抗マウスTIM−1またはTIM−1/Fcで、皮下または腹腔内のいずれかにて処置した。対照マウスは、等量のラットまたはマウスのIgG2aで処置した。このワクチン接種プロトコルを14日後に繰り返した。第20日に、マウスを、10〜10個の肝腫瘍細胞(各腫瘍型について、処置なしで100%腫瘍発生をもたらすように漸増(titrate):B16.F10:5×10個の細胞;P815およびEL4:10細胞)で抗原刺激し、腫瘍の発生および大きさを2日ごとにモニターした。
【0131】
実験で用いたマウスおよび細胞株は、C57BL/6、DBA/2またはBALB/c雌マウス(納期の時点で8〜10週齢)であった。EL4胸腺腫、Bl6F10黒色腫およびP815肥満細胞腫の腫瘍細胞は、American Type Culture Collection(ATCC,マナサス,VA)から購入し、ATCCにより推奨されたとおり、10%(v/v)の熱不活化ウシ胎仔血清(Gemini Bio−Products,ウッドランド,CA)および1000mcg/mlのペニシリンGナトリウム、1000mcg/mlの硫酸ストレプトマイシンおよび2.5mcg/mlのアンホテリシンB(Antibiotic−Antimycotic,Gibco Invitrogen Corp.)を加えたDMEM培地またはRPMI1640培地(Gibco Invitrogen Corp.,カールズバッド,CA)中で培養した。記載の場合、腫瘍細胞に、モデルC−188型コバルト−60線源(MDS−Nordion,オタワ,ON,カナダ)により放射される20,000Radのγ−放射線を照射した。
【0132】
動物処置では、マウスをまず、右側腹部の皮膚上の毛を刈り、次いで、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、Sigma,セントルイス,MO)単独、100mcgのクローン1もしくはクローン2の抗TIM−1抗体、または10γ照射したEL4細胞、B16F10細胞もしくはP815細胞+100mcgのクローン1抗体もしくはクローン2抗体のいずれかを含有するPBSビヒクルのいずれかを注射した。これらの注射は、それぞれの数(上記参照)の腫瘍生細胞(対数成長期の培養物から新たに調製したもの)を動物に注射する10、17および32日前に行った。腫瘍抗原刺激注射は、毛を刈った左側腹部の皮膚に行った。抗原刺激および(pre−challenge)抗原刺激前の注射はすべて、皮下経路により100μlの容量で送達し、26ゲージ5/8インチの皮下用斜端皮下ニードル(BD Medical Systems,フランクリンレークス,NJ)を用いて行った。
【0133】
腫瘍測定および統計学的解析のため、腫瘍抗原刺激マウスの左側腹部の皮膚下の腫瘍成長を、デジタルカリパス(Mitutoyo America Corp.、オーロラ、IL)を用い、腫瘍抗原刺激細胞の皮下送達の10、13、17、23および26日後に測定した。腫瘍測定値(単位ミリメートル)を、腫瘍の長さ(L)、幅(W)および周囲体輪郭からの高さ(H)を表す3つのほぼ垂直な軸上で採寸した。腫瘍の容積を、式:容積=[(4/3)・π・(L/2)・(W/2)・(H/2)]を適用することにより算出した。平均の標準誤差(SEM)およびスチューデントt検定の確率(p)値は、Microsoft Excelソフトウェアを用いて求めた。
【0134】
図20に示されるように、ワクチン接種とともに抗TIM−1抗体を送達することは、完全な腫瘍拒絶を惹起する。マウスには、腫瘍抗原刺激の10、17および32日間前に、記載の材料を注射した。γ照射(20,000Rad)EL4腫瘍細胞を、1回の注射につき10細胞で送達した。抗TIM−1抗体を、1回の注射につき100mcgで送達した。注射はすべて、100μL容量を、C57BL/6雌マウスの毛を刈った右側腹部の皮膚に皮下送達することによって行った。第0日に、マウスを、毛を刈った左側腹部の皮膚への10個のEL4腫瘍生細胞の皮下注射により抗原刺激し、これは、100μL容量のPBSで送達した。示したデータは、抗原刺激後第26日のものである。これらの結果は、ワクチン接種とともに抗TIM−1抗体を送達することは、完全な腫瘍拒絶を惹起することを示す。
【0135】
図21に示されるように、抗TIM−1抗体を加えたワクチンは、腫瘍生細胞での抗原刺激時の腫瘍成長を大きく抑制する。マウスには、腫瘍抗原刺激の10、17および32日間前に、記載の材料を注射した。γ照射(20,000Rad)EL4腫瘍細胞を、1回の注射につき10細胞で送達した。抗TIM−1抗体を、1回の注射につき100mcgで送達した。注射はすべて、100μL容量を、C57BL/6雌マウスの毛を刈った右側腹部の皮膚に皮下送達することによって行った。第0日に、マウスを、毛を刈った左側腹部の皮膚への10個のEL4腫瘍生細胞の皮下注射により抗原刺激し、これは、100μLの容量のPBSにて送達した。腫瘍の容積を、続く26日間にわたって測定し、統計学的有意差を、対応のない(unpaired)両側スチューデントt検定計算値を当てはめることにより求めた。これらの結果は、抗TIM−1抗体を加えたワクチンが、腫瘍生細胞での抗原刺激時の腫瘍成長を大きく抑制することを示す。
【0136】
図22に示されるように、抗TIM−1抗体を加えたワクチンは、腫瘍生細胞での抗原刺激時の腫瘍成長を大きく抑制する。マウスには、腫瘍抗原刺激の10、17および32日間前に、記載の材料を注射した。γ照射(20,000Rad)EL4腫瘍細胞を、1回の注射につき10細胞で送達した。抗TIM−1抗体は、1回の注射につき100mcgで送達した。注射はすべて、100μL容量を、C57BL/6雌マウスの毛を刈った右側腹部の皮膚に皮下送達することによって行った。第0日に、マウスを、毛を刈った左側腹部の皮膚への10個のEL4腫瘍生細胞の皮下注射により抗原刺激し、これは、100μLの容量のPBSにて送達した。腫瘍の容積を26日後に測定し、統計学的有意差を、対応のない両側スチューデントt検定計算値を当てはめることにより求めた。示したデータは、抗原刺激後第26日のものである。これらの結果は、抗TIM−1抗体を加えたワクチンが、腫瘍生細胞での抗原刺激時の腫瘍成長を大きく抑制することを示す。
【0137】
図23に示されるように、腫瘍生細胞抗原刺激前での抗TIM−1抗体による動物の前処置は、腫瘍成長を有意に抑止する。マウスには、腫瘍抗原刺激の10、17および32日間前に、1回の注射につき100mcgの抗TIM−1抗体を注射した。注射は、100μL容量を、C57BL/6雌マウスの毛を刈った右側腹部の皮膚に皮下送達することによって行った。第0日に、マウスを、毛を刈った左側腹部の皮膚への10個のEL4腫瘍生細胞の皮下注射により抗原刺激し、これは、100μLの容量のPBSにて送達した。腫瘍の容積を、続く26日間にわたって測定し、統計学的有意差を、対応のない両側スチューデントt検定計算値を当てはめることにより求めた。これらの結果は、腫瘍生細胞抗原刺激前での抗TIM−1抗体による動物の前処置が、腫瘍成長を有意に抑止することを示す。
【0138】
図24に示されるように、腫瘍生細胞抗原刺激前での抗TIM−1抗体による動物の前処置は、腫瘍成長を有意に制限する。マウスには、腫瘍抗原刺激の10、17および32日間前に、100mcgの抗TIM−1抗体を注射した。γ照射(20,000Rad)EL4腫瘍細胞を、1回の注射につき10細胞で送達した。注射は、100μL容量を、C57BL/6雌マウスの毛を刈った右側腹部の皮膚に皮下送達することによって行った。第0日に、マウスを、毛を刈った左側腹部の皮膚への10個のEL4腫瘍生細胞の皮下注射により抗原刺激し、これは、100μLの容量のPBSにて送達した。腫瘍の容積を26日後に測定し、統計学的有意差を、対応のない両側スチューデントt検定計算値を当てはめることにより求めた。示したデータは、抗原刺激後第26日のものである。これらの結果は、腫瘍生細胞抗原刺激前での抗TIM−1抗体による動物の前処置が、腫瘍成長を有意に制限することを示す。
【0139】
図25に示されるように、抗TIM−1は、腫瘍ワクチンの有効性を増強する。C57BL/6マウスに、10個のγ照射(20,000Rad)EL4腫瘍細胞(皮下注射による送達)による1回目のワクチン接種を行った。同時に、100μLリン酸緩衝生理食塩水(PBS)ビヒクル対照、または100mcgの抗TIM−1抗体もしくは100mcgのrIgG2bイソタイプ対照抗体含有100μLPBSビヒクルのいずれかを腹腔内に送達した。1回目のワクチン接種の3週間後、マウスに、同一の調製物による1回目の追加抗原刺激を行った。この2週間後、2回目の同一の追加抗原刺激を行った。この2回目の追加抗原刺激の11日後、マウスを、10個のEL4腫瘍生細胞の皮下注射(ワクチン接種および追加抗原刺激投与の部位の反対側に送達)により抗原刺激した。すべての場合において、腫瘍生細胞を受けたマウスに、抗原刺激後10日までに測定可能な腫瘍塊が生成した。腫瘍直径を、デジタルカリパスを用い、腫瘍生細胞抗原刺激後19日間のいくつかの時点で測定した。各腫瘍の3つのほぼ垂直な軸の直径、長さ(L)、幅(W)および高さ(H)を各時点で記録した。腫瘍の容積を、容積(V)=(4/3)・π・(L/2)・(W/2)・(H/2)の式を用いて算出した。処置群の平均腫瘍体積を、Microsoft Excelを用いて算出した。P値は、スチューデントt検定により求め、Microsoft Excelを用いて算出した。抗TIM−1モノクローナル抗体は、R&D Systems Inc.(ミネアポリス MN)から購入した(mAb AF1817)。これらの結果は、抗TIM−1が、腫瘍ワクチンの有効性を増強することを示す。
【0140】
図26に示されるように、抗TIM−1 アジュバントでのワクチン接種は、保護的免疫の発生を誘発する。未処置C57BL/6マウスを、10個のγ照射(20,000Rad)EL4腫瘍細胞を、100μLリン酸緩衝生理食塩水(PBS)ビヒクル単独中の混合物、または100mcgの抗TIM−1抗体もしくは100mcgのrIgG2aイソタイプ対照抗体との100μLのPBS中の混合物のいずれかにより、ワクチン接種した(皮下注射による送達)。この15日後、同一の方法を用いて追加抗原刺激を行った。同じ方法による2回目の追加抗原刺激は、1回目の7日後に行った。この2回目の追加抗原刺激の10日後、マウスを、10個のEL4腫瘍生細胞の皮下注射(ワクチン接種および追加抗原刺激投与の部位の反対側に送達)により抗原刺激した。腫瘍生細胞による抗原刺激の31日後、EL4腫瘍抗原刺激を拒絶したマウスから脾細胞を回収した。同様に、rIgG2a対照群マウス、および年齢が適合した未処置C57BL/6マウスからも脾細胞を回収した。インビトロでの赤血球枯渇後、抗TIM−1、rIgG2aまたは未処置マウスにいずれかに由来する10個の脾細胞を、未処置C57BL/6レシピエント動物内に尾静脈注射によって養子移入した。伝達の1日後、レシピエントマウスを、10個のEL4腫瘍生細胞の皮下注射により抗原刺激した。養子移入の18日後、マウスを、先の皮下の生腫瘍抗原刺激の部位の皮下の触診可能な腫瘍塊の存在について評価した。検出可能な腫瘍塊を示さない動物は、腫瘍を含まないと思われ、同一の養子移入処置を受けた全動物のパーセンテージで示す。これらの結果は、養子移入が腫瘍拒絶を誘導することを示す。
【0141】
図27に示されるように、抗TIM−1療法は、腫瘍成長を遅延させる。未処置C57BL/6マウスを、10個のEL4腫瘍生細胞の皮下注射によって抗原刺激し、次いで、6日後、100mcgの抗TIM−1抗体または100mcgのrIgG2a対照抗体の1回の腹腔内注射で処置した。個々の動物の腫瘍を、抗TIM−1または対照抗体処置の送達の15日後に測定した。腫瘍直径を、各腫瘍の3つのほぼ垂直な軸、長さ(L)、幅(W)および高さ(H)について記録した。腫瘍の容積を、容積(V)=(4/3)・π・(L/2)・(W/2)・(H/2)の式を用いて算出した。算出された各平均の群の平均腫瘍体積および標準誤差(SEM)を、Microsoft Excelソフトウェアを用いて計算した。P値は、スチューデントt検定により求め、Microsoft Excelを用いて算出した。これらの結果は、抗TIM−1療法が腫瘍成長を遅延させることを示す。
【0142】
抗TIM−1およびTIM−4/Fcはともに、Th1免疫を増強することが示された(実施例XIVを参照のこと)。したがって、TIM−4/Fcは、実施例XIIに示す実験的研究で示されるように、腫瘍ワクチンアジュバントおよび腫瘍の処置のため治療剤の両方として作用する。
【0143】
(実施例XIII)
(癌ワクチン用アジュバントとして、および腫瘍の処置用治療剤としてのTIM−3/Fcおよび抗TIM−3)
この実施例は、癌ワクチンおよび腫瘍の治療的処置のためのTIM−3/Fcおよび抗TIM−3のアジュバント活性を示す。
【0144】
図28に示されるように、TIM−3特異的抗体は、ワクチンアジュバントとして使用したとき、腫瘍成長を低下させる。未処置C57BL/6マウスに、10個のγ照射(20,000Rad)EL4腫瘍細胞を、100μLリン酸緩衝生理食塩水(PBS)ビヒクル単独中の混合物、または100mcgの抗TIM−3抗体もしくは100mcgのrIgG2aイソタイプ対照抗体とのPBS中の混合物のいずれかによる、1回目のワクチン接種を行った。1回目のワクチン接種の2週間後、マウスに、1回目のワクチン接種と同一の追加抗原刺激注射を行った。この追加抗原刺激の10日後、マウスを、10個のEL4腫瘍生細胞の皮下注射(ワクチン接種および追加抗原刺激投与の部位の反対側に送達)により抗原刺激した。すべての場合において、腫瘍生細胞を受けたマウスに、抗原刺激後第10日までに測定可能な腫瘍塊が生成した。腫瘍抗原刺激後36日の間、腫瘍直径を、デジタルカリパスを用いて測定した。腫瘍直径を、各腫瘍の3つのほぼ垂直な軸、長さ(L)、幅(W)および高さ(H)についていくつかの時点で記録した。腫瘍の容積を、容積(V)=(4/3)・π・(L/2)・(W/2)・(H/2)の式を用いて算出した。処置群の平均腫瘍体積を、Microsoft Excelを用いて算出した。これらの結果は、接種抗TIM−3の存在下での腫瘍ワクチンが腫瘍成長を抑止することを示す。
【0145】
図29に示されるように、抗TIM−3療法は腫瘍成長を制限する。未処置C57BL/6マウスを、10個のEL4腫瘍生細胞の皮下注射により抗原刺激し、次いで、9日後、100mcgの抗TIM−3抗体または100mcgのrIgG2aイソタイプ対照抗体の1回の腹腔内注射で処置した。個々の動物の腫瘍を、デジタルカリパスを用い、治療の時点で、そして抗TIM−3または対照抗体での処置後のいくつかの時点で測定した。腫瘍直径を、各腫瘍の3つのほぼ垂直な軸、長さ(L)、幅(W)および高さ(H)について記録した。腫瘍の容積を、容積(V)=(4/3)・π・(L/2)・(W/2)・(H/2)の式を用いて算出した。算出された各平均の処置群の平均および標準誤差(SEM)を、Microsoft Excelを用いて算出した。P値は、2要因の(two−way)ANOVA統計学的解析によって求め、GraphPad Prismソフトウェア(GraphPad Software;San Diego CA)を用いて計算した。これらの結果は、抗TIM−3療法が腫瘍成長を制限することを示す。
【0146】
抗TIM−3およびTIM−3/Fcはともに、Th1免疫を増強すること、およびTh1疾患モデル(Monneyら,Nature 415:536−541(2002);Sabatosら,Nature Immunol.4:1102−1110(2003))の疾患を悪化させることが示された。したがって、TIM−3/Fcは、図28および29に示す実験的研究で示されるように、腫瘍ワクチンアジュバントおよび腫瘍の処置のための治療剤の両方として作用する。
【0147】
(実施例XIV)
(抗TIM−1およびTIM−4/Fcはともに、マウスにおいてTh1誘発免疫反応の免疫応答を刺激する)
6〜8週齢の雌SJL/Jマウス(Jackson Laboratories)を、完全フロイントアジュバント(CFA)中に乳化した100mcgのPLP139−151ペプチドで、右腹側および左腹側において免疫処置し、該ペプチドに対するTh1免疫応答を刺激した。PLP139−151含有CFAの注射後、100ngの百日咳毒素をi.v.(尾静脈)注射した。2回目の100ng用量の百日咳毒素48時間後に投与した。IgG2aイソタイプ対照抗体(100mcg/マウス)、TIM−1 モノクローナル抗体(100mcg)またはTIM−4/Fcを、PLPでの免疫処置後に腹腔内(i.p.)投与した。これらの動物を抗原に対する免疫学的応答の発現についてモニターした。結果は、PLPペプチドへの再曝露に応答してT細胞増殖を測定することによって、ならびにIL−4およびIFN−γサイトカインのELISAによってモニターされるように、TIM−1抗体およびTIM−4/Fcはともに、PLPペプチドに対する免疫応答を刺激することを示す。
【0148】
これらの結果は、TIM標的化分子(抗TIM−1抗体が例示される)が、腫瘍成長を抑制するために使用され得ることを示す。
【0149】
(実施例XV)
(TIM−1およびTIM−3ならびにTIMリガンドを発現するマウス腫瘍細胞株およびヒト腫瘍細胞株)
マウス腫瘍細胞株およびヒト腫瘍細胞株を、TIM−1およびTIM−3発現について、蛍光標示式細胞分取(FACS)解析により解析した。培養腫瘍細胞株を、対照、TIM−1またはTIM−3モノクローナル抗体のいずれかの存在下でインキュベートし、TIM特異的抗体の結合を、蛍光タグを用いたTIM抗体の直接の結合、または蛍光標識二次抗体の使用のいずれかによって検出した。TIM−1発現は、ヒト腎腺癌細胞株769−P(図33)ならびにヒト肝細胞癌腫HepG2において検出された。また、TIM−1発現は、マウス腎腺癌RAGにおいても検出された。TIM−3発現は、胸腺腫およびリンパ腫を含むいくつかの異なる腫瘍において検出された(図35に図示および図36に要約のとおり)。TIM−3/Fcを用い、TIM−3リガンドの発現もまた腫瘍細胞株において解析した。図36にまとめたように、TIM−3リガンド(TIM−3L)を発現する種々の腫瘍が確認され、胸腺腫、リンパ腫および肥満細胞腫が含まれる。
【0150】
本出願書類全体を通して、種々の刊行物に言及している。これらの刊行物の開示は、本発明が関係する技術分野の水準をより充分に記載するために、本出願書類内での引用により、その全体が本明細書に組み込まれる。本発明を、上記の実施例に関して記載したが、本発明の精神から逸脱することなく種々の変形が行われ得ることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】図1は、マウスC57BL/6 TIM−1対立遺伝子の846bp cDNAヌクレオチド配列(配列番号:1)を示す。シグナル配列に下線を付し、ムチンドメインをコードする配列はイタリック体で示し、膜貫通ドメインは下線を付してイタリック体で示す。
【図2】図2は、マウスBALB/c TIM−1対立遺伝子の915bp cDNAヌクレオチド配列(配列番号2:)を示す。シグナル配列に下線を付し、ムチンドメインをコードする配列はイタリック体で示し、膜貫通ドメインは下線を付してイタリック体で示す。
【図3】図3は、一文字アミノ酸コードを用いた、マウスC57Bl/6(B6)(配列番号:3)とBALB/c(BALB)(配列番号:4)TIM−1対立遺伝子のタンパク質配列の比較を示す。単一アミノ酸置き換えに三角で印を付け、潜在的なN−グリコシル化部位に星印を付けている。
【図4】図4は、TIM−1/Fc融合タンパク質(365個のアミノ酸タンパク質で示されるマウスTIM−1 Ig Fc.nlタンパク質(配列番号:5))の一例を示す。示した例は、ヒトCD5リーダー(下線)、その後ろにTIM−1のIgドメイン(標準字体)および点変異された非細胞溶解性マウスIgG2a Fc(ヒンジ、CH2およびCH3ドメイン)のFc領域(イタリック体)を有する前駆体ポリペプチドのものである。IgG2a Fcドメイン内の点変異されたアミノ酸に陰影を付けている。
【図5】図5は再刺激時の抗原の増殖を示す。BALB/cマウスに、対照(白)を注射するか、またはEngerix−BTM(10マイクログラム(mcg))を単独(薄いグレーの陰影)、もしくは単回用量の抗TIM抗体(50mcg)とともに(濃いグレーの陰影)ワクチン接種した。表示した時間に、脾臓を、B型肝炎表面抗原に対する増殖について解析した(96時間アッセイ)。
【図6】図6は、抗原での再刺激後のサイトカイン産生を示す。BALB/cマウスに、対照(白)を注射するか、または10mcgのB型肝炎ワクチン(薄いグレーの陰影)で、もしくは10mcgのワクチンで抗TIM−1抗体とともに(濃いグレーの陰影)免疫処置した。第7日、第14日、および第21日に、脾臓細胞インビトロでB型肝炎抗原により刺激した。96時間後、上清み液をそれぞれIFN−γおよびIL−4産生について解析した。
【図7】図7は、B型肝炎特異的抗体の産生を示す。対照(PBS+ミョウバン:白)を注射するか、またはB型肝炎ワクチンを抗TIM抗体(単回用量;50mcg)とともに(薄いグレーの陰影)もしくはこれなしで(濃いグレーの陰影)ワクチン接種したマウス由来の血清試料を、ELISAにより、B型肝炎表面抗原に特異的な抗体の存在について、免疫処置後第7日に試験した。
【図8】図8は、B型肝炎表面抗原特異的脾細胞の、抗原刺激と用量依存的関係での増殖を示す。10mcgのEngerix BTMを、100mcgのTIM−1モノクローナル抗体(mAb)とともに、またはこれなしで1回ワクチン接種したマウス由来の脾細胞を単離し、漸増濃度のB型肝炎表面抗原の存在または非存在下で培養した。4日間のインキュベーション後、ウェルを、Delfia Cell Proliferation Assayを用いて増殖について解析した。TIM−1 mAbとともにワクチンを接種したマウスでは、Engerix BTMワクチン単独またはイソタイプ対照抗体をワクチン接種した場合と比べ、特異的抗原に対する統計学的に有意に高い増殖応答(p<0.05)が生じた。
【図9】図9は、特異的抗原(B型肝炎表面抗原)での刺激におけるIFN−γの産生を示す。上記の増殖アッセイウェルから上清み液を、ELISAによるサイトカイン解析のために取り出した。TIM−1 mAbとのワクチンを接種されたマウスでは、ワクチン単独またはイソタイプ対照抗体とのワクチンを接種されたマウスよりも、抗原刺激に応答した有意に高い量のIFN−γ(p<0.05)が生じた。IL−4は検出され得なかった。
【図10】図10は、HIVp24抗原+TIM−1 mAbで免疫処置したマウスが、イソタイプ対照抗体またはCpGオリゴヌクレオチドのいずれかと比べ、抗原に対して有意に高い増殖応答(CpGと比べてp<0.05)を生じたことを示す。マウスには、皮下に単回用量のHIVp24抗原(25mcg)をPBSにて、腹腔内に、50mcgのTIM−1 mAb、イソタイプ対照抗体または50mcgのCpG(1826)オリゴデオキシヌクレオチドのいずれかを、第1日および第15日にワクチン接種した。次いで、マウスを第21日に致死させ、脾臓細胞を、抗原に対する増殖のために回収した。
【図11】図11は、インフルエンザ抗原に対する脾細胞の増殖応答を示す。BALB/cマウスを、30mcgのインフルエンザワクチンFluvirinTM(フルビリン)またはFluvirinTM+抗TIM−1抗体(単回用量;50mcg抗体)で免疫処置した。10日後、ウイルス(H1N1)による刺激に対する応答を、96時間増殖アッセイにおいて測定した。PBS、および抗TIM−1抗体単独を処置対照とした(n=4)。
【図12】図12は、インフルエンザ免疫処置マウスのサイトカイン産生を示す。BALB/cマウスを、30mcgのインフルエンザワクチンFluvirinTMまたはFluvirinTM+抗TIM抗体(単回用量;50mcg抗体)で免疫処置した。10日後、脾細胞を調製し、ウイルス(H1N1)での再刺激におけるTh1(IFN−γ)およびTh2(IL−4)サイトカインの産生を、96時間の培養後に測定した(n=4)(N.D.=測定せず)。ワクチン+TIM−1抗体を接種したマウスでは、不活化されたインフルエンザでの刺激に応答した有意に高量のIFN−γが生じた。IL−4は検出されなかった。
【図13】図13は、TIM−アジュバント処置後の種交差(cross−strain)応答を示す。北京ウイルス(A)またはKievウイルス(B)による刺激に対する北京免疫処置マウスの増殖応答を、Delfia増殖アッセイによって96時間の培養後に測定した。BALB/cマウスを、10mcgの不活化された北京インフルエンザウイルスで、100mcgのTIM−1 mAbまたはイソタイプ対照(ラットIgG2b)の存在または非存在下で免疫処置した。21日後、脾臓を、インビトロ解析のために回収した。増殖はTIM−1 mAbを用いると増強され、Kiev刺激に対する応答は、種交差免疫性を示す(p<0.01)。
【図14】図14は、北京ウイルス(A)またはKievウイルス(B)による刺激に対する北京免疫処置マウスの種交差サイトカイン応答を示す。BALB/cマウスを、10mcgの不活化された北京インフルエンザウイルスで、100mcgのTIM−1 mAbまたはイソタイプ対照(ラットIgG2b)の存在または非存在下で免疫処置した。21日後、脾臓を、インビトロ解析のために回収した。増殖アッセイの上清み液を、IFN−γの存在について解析した。パネルAは、TIM−1 mAbの添加が、有意に(p<0.01)北京ウイルス(H1N1)刺激応答したIFN−γの産生を増強することを示す。パネルBは、TIM−1 mAbの添加がまた、ヘテロサブタイプKiev株(H3N2)による刺激に応答したIFN−γの産生も有意に(p<0.01)を増強することを示す。
【図15】図15は、北京ウイルス(A)またはKievウイルス(B)による刺激に対する北京免疫処置マウスでのIL−4サイトカイン産生を示す。BALB/cマウスを、10mcgの不活化された北京インフルエンザウイルスで、100mcgのTIM−1 mAbまたはイソタイプ対照(ラットIgG2b)の存在または非存在下で免疫処置した。21日後、脾臓を、インビトロ解析のために回収した。増殖アッセイの上清み液を、IL−4の存在について解析した。パネルAは、TIM−1 mAbの添加が、北京ウイルス(H1N1)刺激応答したIL−4の産生を有意に(p<0.01)を増強することを示す。パネルBは、TIM−1 mAbの添加がまた、ヘテロサブタイプKiev株(H3N2)による刺激に応答したIL−4の産生も有意に(p<0.01)を増強することを示す。
【図16】図16は、ワクチン接種後の抗rPA抗体応答を示す。C57BL/6マウスを、0.2mLのAVA(Anthrax Vaccine Absorbed)BioThraxTM(バイオスラックス)またはBioThraxTM+抗TIM−1抗体で免疫処置した。7日後、rPAに特異的な全血清抗体をELISAにて測定した。BioThraxTM単独およびBioThraxTM+イソタイプ適合抗体を処置対照とした。
【図17】図17は、炭疽菌ワクチン接種に対する抗TIMアジュバント効果を示す。C57BL/6マウスを、組換えProtective Antigen(rPA;40mcg)またはrPA+抗TIM−3抗体(単回用量;50mcg)で免疫処置した。10日後、rPAによる再刺激に対する脾細胞の応答を、96時間増殖アッセイにおいて測定した。PBSおよびrPA+イソタイプ適合対照抗体を処置対照とした。
【図18】図18は、例示的なTIM発現ベクターを示す。
【図19】図19は、TIM−3シグナル伝達が、Sanchez−Fueyoら,Nat.Immunol.4:1093−1101(2003)に記載のように、マウスにおいて糖尿病を加速することを示す(Sanchez−Fueyoらから適合(adapted)させた図)。
【図20】図20は、ワクチン接種とともに抗TIM−1抗体を送達することが、完全な腫瘍拒絶を惹起することを示す。
【図21】図21は、抗TIM−1抗体を加えたワクチンが、肝腫瘍細胞での抗原刺激時の腫瘍成長を大きく抑制することを示す。
【図22】図22は、抗TIM−1抗体を加えたワクチンが、肝腫瘍細胞での抗原刺激時の腫瘍成長を大きく抑制することを示す。
【図23】図23は、肝腫瘍細胞抗原刺激前での抗TIM−1抗体による動物の前処置が、腫瘍成長を有意に抑止することを示す。
【図24】図24は、肝腫瘍細胞抗原刺激前での抗TIM−1抗体による動物の前処置が、腫瘍成長を有意に制限することを示す。
【図25】図25は、抗TIM−1抗体が癌ワクチンアジュバントとして有効であることを示す。この試験では、C57BL/6マウスに、抗原の供給源としてのγ照射EL4細胞、および抗TIM−1抗体またはrIgG2bイソタイプ対照のいずれかを用いてEL4胸腺腫瘍に対するワクチン接種を行った。これらの動物には、最初のワクチン接種後、2回追加抗原刺激し、続いて、EL4腫瘍生細胞の皮下注射で抗原刺激した。抗原刺激後の観察期間を通し、抗TIM−1抗体を腫瘍ワクチンアジュバントとして受けたマウスの平均腫瘍サイズは、イソタイプ対照抗体を受けたマウスのものより小さかった。また、肝腫瘍抗原刺激の19日後、抗TIM−1抗体を受けた8匹の動物のうち4匹は、完全に腫瘍を拒絶したが、イソタイプ対照抗体を受けた8匹のマウスでは腫瘍拒絶は観察されなかった。
【図26】図26は、抗TIM−1アジュバントでのワクチン接種が保護的免疫性の発生を促進(drive)することを示す。脾細胞は、最初に、抗TIM−1を腫瘍ワクチンアジュバントとして用いてEL4胸腺腫に対するワクチン接種を行い、また、その後の肝腫瘍抗原刺激を完全に拒絶したマウスから回収した。インビトロでの赤血球枯渇後、10個の脾細胞を未処置C57BL/6マウスレシピエント内に養子移入した。他のマウスに、未処置マウスまたは腫瘍ワクチン接種および追加抗原刺激の際にrIgG2aを受けたマウスのいずれかから採取した脾細胞の養子移入を行った。移入の1日後、すべてのレシピエントマウスを、10個のEL4腫瘍生細胞の皮下注射により抗原刺激した。抗TIM−1抗体を腫瘍ワクチンアジュバントとして受けたマウスから移入された脾細胞は、レシピエントマウスにおいて、その後の腫瘍抗原刺激に対する保護を与えることができた。この保護は、未処置マウス、またはγ照射EL4+rIgG2aをワクチン接種したマウスのいずれに由来する脾細胞を移入した場合でも得られ得なかった。これらの結果は、ワクチン接種が抗TIM−1抗体アジュバントを用いてなされた場合の、腫瘍に対する永続性かつ移転性(transferable)の免疫性の確立を示す。
【図27】図27は、抗TIM−1治療が、腫瘍成長の防止に有効であることを示す。抗TIM−1抗体は、以前に確立されたEL4胸腺腫瘍の成長を遅延できる単独(stand−alone)治療剤として有効である。この試験では、未処置C57BL/6マウスを、10個のEL4腫瘍生細胞の皮下注射により抗原刺激し、次いで6日後、100mcgの抗TIM−1抗体または100mcgのrIgG2a対照抗体の腹腔内注射によって処置した。処置開始後の腫瘍成長後、腫瘍成長の統計学的に有意な抑制が、抗TIM−1処置マウス内への抗体送達後15日目に観察された。この結果は、抗TIM−1抗体が治療用として、腫瘍の確立後に腫瘍成長を制限する能力を示す。
【図28】図28は、TIM−3−特異的抗体が、ワクチンアジュバントとして使用したとき腫瘍成長を低下させることを示す。TIM−3特異的抗体の潜在的なアジュバント効果を評価するため、抗原供給源としてγ照射EL4細胞、および抗TIM−3抗体またはrIgG2aイソタイプ対照のいずれかを用い、マウスにEL4胸腺腫瘍に対するワクチン接種を行った。これらの動物には、最初のワクチン接種後、追加抗原刺激を1回、続いてEL4腫瘍生細胞の皮下注射で抗原刺激を行った。経時的に、抗TIM−3抗体を腫瘍ワクチンアジュバントとして受けたマウスにおける抗原刺激腫瘍の平均サイズは、イソタイプ対照抗体を受けたマウスのものより小さかった。
【図29】図29は、抗TIM−3抗体は、以前に確立されたEL4胸腺腫瘍の成長を遅延できる単独治療剤として有効であることを示す。この試験では、未処置C57BL/6マウスを10個のEL4腫瘍生細胞の皮下注射によって抗原刺激し、次いで9日後、100mcgの抗TIM−3抗体または100mcgのrIgG2aイソタイプ対照抗体の3回の毎週の腹腔内注射の初回によって処置した。処置開始後の腫瘍成長後、抑制された進行が、抗TIM−3処置マウスにおいて初回投与の1週間以内に確認された。この効果は経時的に持続し、第17日まで腫瘍成長の統計学的に有意な抑制に進展(develop)した。この結果は、抗TIM−3抗体が、以前に確立された腫瘍の腫瘍成長を制限する能力を示す。
【図30A】図30は、例示的な疾患、Th1/Th2応答との関係、およびTIM標的化分子を含有する本発明の組成物を用いたTh1およびTh2の量の所望のシフトを示す。
【図30B】図30は、例示的な疾患、Th1/Th2応答との関係、およびTIM標的化分子を含有する本発明の組成物を用いたTh1およびTh2の量の所望のシフトを示す。
【図31】図31は、BALB/cマウス由来のマウスTIM−2のcDNA配列(配列番号:6)を示す。このcDNA配列は、シグナル配列、Ig、ムチン、膜貫通および細胞内ドメインを含む。
【図32】図32は、WO03/002722に記載の種々のマウスおよびヒトTIM分子のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示す。示した配列は、マウスTIM−1 BALB/c対立遺伝子(アミノ酸およびヌクレオチドの配列はそれぞれ配列番号:7および8);マウスTIM−1 C.D2 ES−HBAおよびDBA/2J対立遺伝子(アミノ酸およびヌクレオチドの配列はそれぞれ配列番号:9および10);マウスTIM−2 BALB/c対立遺伝子(アミノ酸およびヌクレオチドの配列はそれぞれ配列番号:11および12);マウスTIM−2 C.D2 ES−HBAおよびDBA/2J対立遺伝子(アミノ酸およびヌクレオチドの配列はそれぞれ配列番号:13および14);マウスTIM−3 BALB/c対立遺伝子(アミノ酸およびヌクレオチドの配列はそれぞれ配列番号:15および16);マウスTIM−3 C.D2 ES−HBAおよびDBA/2J対立遺伝子(アミノ酸およびヌクレオチドの配列はそれぞれ配列番号:17および18);TIM−4 BALB/c対立遺伝子(アミノ酸およびヌクレオチドの配列はそれぞれ配列番号:19および20);TIM−4 マウスC.D2 ES−HBAおよびDBA/2J(アミノ酸およびヌクレオチドの配列はそれぞれ配列番号:21および22);ヒトTIM−1対立遺伝子1(アミノ酸およびヌクレオチドの配列はそれぞれ配列番号:23および24);ヒトTIM−1,対立遺伝子2(アミノ酸およびヌクレオチドの配列はそれぞれ配列番号:25および26);ヒトTIM−1対立遺伝子3(アミノ酸およびヌクレオチドの配列はそれぞれ配列番号:27および28);ヒトTIM−1対立遺伝子4(アミノ酸およびヌクレオチドの配列はそれぞれ配列番号29および30);ヒトTIM−1対立遺伝子5(アミノ酸およびヌクレオチドの配列はそれぞれ配列番号:31および32);ヒトTIM−1対立遺伝子6(アミノ酸およびヌクレオチドの配列はそれぞれ配列番号:33および34);ヒトTIM−3対立遺伝子1(アミノ酸およびヌクレオチドの配列はそれぞれ配列番号:35および36);ヒトTIM−3対立遺伝子2(アミノ酸およびヌクレオチドの配列はそれぞれ配列番号:37および38);ヒトTIM−4対立遺伝子1(アミノ酸およびヌクレオチドの配列はそれぞれ配列番号:39および40);ヒトTIM−4対立遺伝子2(アミノ酸およびヌクレオチドの配列はそれぞれ配列番号:41および42である。
【図33】図33は、マウス腎腺癌細胞株RAGは、その細胞表面上にTIM−1を発現することを示す。TIM−1抗体(充実(filled))は、非染色対照または対照抗体(中空(open))で染色した細胞と比べ、RAG細胞に特異的に結合する。
【図34】図34は、ヒト腎腺癌細胞株769−Pは、その細胞表面上にTIM−1を発現することを示す。TIM−1抗体(充実)は、非染色対照または対照抗体(中空)で染色した細胞と比べ、769−P細胞に特異的に結合する。
【図35】図35は、マウス腫瘍細胞株EL4(胸腺腫)および11PO−1(形質転換マスト細胞)がその細胞表面上にTIM−3を発現することを示す。TIM−3 抗体(充実)は、非染色対照または対照抗体(中空)で染色した細胞と比べ、それぞれの腫瘍細胞に特異的に結合する。
【図36】図36は、TIM−3およびTIM−3リガンド(TIM−3L)の発現について試験したマウス腫瘍細胞株のまとめを示す。腫瘍細胞株を発現するTIM−3およびTIM−3リガンドの両方が同定された。TIM−3発現は、TIM−3モノクローナル抗体を用いてモニターした。TIM−3リガンド発現は、TIM−3/Fc融合タンパク質のそれぞれの細胞に対する特異的結合を測定することによって示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原およびTIM標的化分子が薬学的に許容され得る担体中に含まれてなる組成物。
【請求項2】
前記TIM標的化分子がTIM抗体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記TIM抗体が、TIM−1、TIM−2、TIM−3およびTIM−4から選択されるTIMに特異的である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記TIM標的化分子がTIM−Fc融合ポリペプチドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記TIM−Fc融合ポリペプチドのFc部分が標的細胞枯渇性である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記TIM−Fc融合ポリペプチドのFc部分が非標的細胞枯渇性である、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記TIM−Fc融合ポリペプチドのTIM部分が、TIM−1、TIM−2、TIM−3およびTIM−4から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
前記抗原が、ウイルス抗原、細菌抗原、寄生虫抗原および腫瘍関連抗原から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
治療用部分または診断用部分と結合体化させたTIM標的化分子を含む組成物。
【請求項10】
前記治療用部分が、化学療法剤、細胞傷害剤および毒素から選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記細胞傷害剤が放射性核種または化合物である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記化合物が、カリケアマイシン、エスペラマイシン、デュオカルマイシン、ドキソルビシン、メルファラン、メトトレキサート、クロラムブシル、シタラビン、ビンデシン、シスプラチン(cis−platinum)、エトポシド、ブレオマイシン、マイトマイシンCおよび5−フルオロウラシルから選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記放射性核種がヨウ素−131またはイットリウム−90である、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記毒素が植物または細菌の毒素である、請求項10に記載の組成物。
【請求項15】
前記植物毒素が、リシン、アブリン、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、サポリンおよびゲロニンから選択される、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記細菌毒素が、シュードモナス外毒素およびジフテリア毒素から選択される、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
前記TIM標的化分子がTIM抗体である、請求項9に記載の組成物。
【請求項18】
前記TIM抗体が、TIM−1、TIM−2、TIM−3およびTIM−4から選択されるTIMに特異的である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記TIM標的化分子がTIM−Fc融合ポリペプチドである、請求項9に記載の組成物。
【請求項20】
前記TIM−Fc融合ポリペプチドのFc部分が標的細胞枯渇性である、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記TIM−Fc融合ポリペプチドのFc部分が非標的細胞枯渇性である、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
前記TIM−Fc融合ポリペプチドのTIM部分が、TIM−1、TIM−2、TIM−3およびTIM−4から選択される、請求項19に記載の組成物。
【請求項23】
抗原およびTIM標的化分子が薬学的に許容され得る担体中に含まれてなる組成物を投与することを含む、個体における免疫応答の刺激方法。
【請求項24】
前記TIM標的化分子がTIM抗体である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記TIM抗体が、TIM−1、TIM−2、TIM−3およびTIM−4から選択されるTIMに特異的である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記TIM標的化分子がTIM−Fc融合ポリペプチドである、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記TIM−Fc融合ポリペプチドのTIM部分が、TIM−1、TIM−2、TIM−3およびTIM−4から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記抗原が、ウイルス抗原、細菌抗原、寄生虫抗原および腫瘍関連抗原から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記抗原がペプチドである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
個体に、抗原およびTIM標的化分子が薬学的に許容され得る担体中に含まれてなる組成物を投与することを含む、疾患の予防的処置方法。
【請求項31】
前記TIM標的化分子がTIM抗体である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記TIM抗体が、TIM−1、TIM−2、TIM−3およびTIM−4から選択されるTIMに特異的である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記TIM標的化分子がTIM−Fc融合ポリペプチドである、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記TIM−Fc融合ポリペプチドのTIM部分が、TIM−1、TIM−2、TIM−3およびTIM−4から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記疾患が感染性疾患である、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
前記抗原が、ウイルス抗原、細菌抗原および寄生虫抗原から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記疾患が癌である、請求項30に記載の方法。
【請求項38】
前記抗原が腫瘍関連抗原である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
個体に、抗原およびTIM標的化分子が薬学的に許容され得る担体中に含まれてなる組成物を投与することを含む、疾患と関連する徴候または症状の改善方法。
【請求項40】
前記TIM標的化分子がTIM抗体である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記TIM抗体が、TIM−1、TIM−2、TIM−3およびTIM−4から選択されるTIMに特異的である、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記TIM標的化分子がTIM−Fc融合ポリペプチドである、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記TIM−Fc融合ポリペプチドのTIM部分が、TIM−1、TIM−2、TIM−3およびTIM−4から選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記疾患が感染性疾患である、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
前記抗原が、ウイルス抗原、細菌抗原および寄生虫抗原から選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記疾患が癌である、請求項39に記載の方法。
【請求項47】
前記抗原が腫瘍関連抗原である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
TIM標的化分子を被験体に投与することを含む腫瘍の標的化方法であって、前記腫瘍がTIMまたはTIMリガンドを発現するものである、腫瘍の標的化方法。
【請求項49】
前記TIM標的化分子を抗原とともに投与する、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記抗原が腫瘍関連抗原である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記TIM標的化分子がTIM抗体である、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
前記TIM抗体が、TIM−1、TIM−2、TIM−3およびTIM−4から選択されるTIMに特異的である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記TIM標的化分子がTIM−Fc融合ポリペプチドである、請求項48に記載の方法。
【請求項54】
前記TIM−Fc融合ポリペプチドのFc部分が標的細胞枯渇性である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記TIM−Fc融合ポリペプチドのFc部分が非標的細胞枯渇性である、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記TIM−Fc融合ポリペプチドのTIM部分が、TIM−1、TIM−2、TIM−3およびTIM−4から選択される、請求項53に記載の方法。
【請求項57】
前記腫瘍が、癌腫、肉腫およびリンパ腫から選択される、請求項48に記載の方法。
【請求項58】
前記TIM標的化分子を治療用部分に結合体化させる、請求項48に記載の方法。
【請求項59】
前記治療用部分が、化学療法剤、細胞傷害剤および毒素から選択される、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記細胞傷害剤が放射性核種または化合物である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記化合物が、カリケアマイシン、エスペラマイシン、デュオカルマイシン、ドキソルビシン、メルファラン、メトトレキサート、クロラムブシル、シタラビン、ビンデシン、シスプラチン、エトポシド、ブレオマイシン、マイトマイシンCおよび5−フルオロウラシルから選択される、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記放射性核種が、ヨウ素−131またはイットリウム−90である、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
前記毒素が植物または細菌の毒素である、請求項59に記載の方法。
【請求項64】
前記植物毒素が、リシン、アブリン、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、サポリンおよびゲロニンから選択される、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記細菌毒素が、シュードモナス外毒素およびジフテリア毒素から選択される、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
前記TIM標的化分子がTIM抗体である、請求項58に記載の方法。
【請求項67】
前記TIM抗体が、TIM−1、TIM−2、TIM−3およびTIM−4から選択されるTIMに特異的である、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記TIM標的化分子がTIM−Fc融合ポリペプチドである、請求項58に記載の方法。
【請求項69】
前記TIM−Fc融合ポリペプチドのFc部分が標的細胞枯渇性である、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記TIM−Fc融合ポリペプチドのFc部分が非標的細胞枯渇性である、請求項68に記載の方法。
【請求項71】
前記TIM−Fc融合ポリペプチドのTIM部分が、TIM−1、TIM−2、TIM−3およびTIM−4から選択される、請求項68に記載の方法。
【請求項72】
TIM標的化分子を被験体に投与することを含む腫瘍成長の抑制方法であって、前記腫瘍がTIMまたはTIMリガンドを発現するものである、腫瘍成長の抑制方法。
【請求項73】
前記TIM標的化分子を抗原とともに投与する、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記TIM標的化分子がTIM抗体である、請求項72に記載の方法。
【請求項75】
前記TIM抗体が、TIM−1、TIM−2、TIM−3およびTIM−4から選択されるTIMに特異的である、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記TIM標的化分子がTIM−Fc融合ポリペプチドである、請求項72に記載の方法。
【請求項77】
前記TIM−Fc融合ポリペプチドのFc部分が標的細胞枯渇性である、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記TIM−Fc融合ポリペプチドのFc部分が非標的細胞枯渇性である、請求項76に記載の方法。
【請求項79】
前記TIM−Fc融合ポリペプチドのTIM部分が、TIM−1、TIM−2、TIM−3およびTIM−4から選択される、請求項76に記載の方法。
【請求項80】
前記腫瘍が、癌腫、肉腫およびリンパ腫から選択される、請求項72に記載の方法。
【請求項81】
前記TIM標的化分子を治療用部分に結合体化させる、請求項72に記載の方法。
【請求項82】
前記治療用部分が、化学療法剤、細胞傷害剤および毒素から選択される、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記細胞傷害剤が放射性核種または化合物である、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記化合物が、カリケアマイシン、エスペラマイシン、デュオカルマイシン、ドキソルビシン、メルファラン、メトトレキサート、クロラムブシル、シタラビン、ビンデシン、シスプラチン、エトポシド、ブレオマイシン、マイトマイシンCおよび5−フルオロウラシルから選択される、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記放射性核種が、ヨウ素−131またはイットリウム−90である、請求項83に記載の方法。
【請求項86】
前記毒素が植物または細菌の毒素である、請求項82に記載の方法。
【請求項87】
前記植物毒素が、リシン、アブリン、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、サポリンおよびゲロニンから選択される、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記細菌毒素が、シュードモナス外毒素およびジフテリア毒素から選択される、請求項86に記載の方法。
【請求項89】
前記TIM標的化分子がTIM抗体である、請求項81に記載の方法。
【請求項90】
前記TIM抗体が、TIM−1、TIM−2、TIM−3およびTIM−4から選択されるTIMに特異的である、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記TIM標的化分子がTIM−Fc融合ポリペプチドである、請求項81に記載の方法。
【請求項92】
前記TIM−Fc融合ポリペプチドのFc部分が標的細胞枯渇性である、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記TIM−Fc融合ポリペプチドのFc部分が非標的細胞枯渇性である、請求項91に記載の方法。
【請求項94】
前記TIM−Fc融合ポリペプチドのTIM部分が、TIM−1、TIM−2、TIM−3およびTIM−4から選択される、請求項91に記載の方法。
【請求項95】
診断用部分と結合体化させたTIM標的化分子を被験体に投与することを含む腫瘍の検出方法であって、前記腫瘍がTIMまたはTIMリガンドを発現するものである、腫瘍の検出方法。
【請求項96】
前記TIM標的化分子がTIM抗体である、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
前記TIM抗体が、TIM−1、TIM−2、TIM−3およびTIM−4から選択されるTIMに特異的である、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記TIM標的化分子がTIM−Fc融合ポリペプチドである、請求項95に記載の方法。
【請求項99】
前記TIM−Fc融合ポリペプチドのTIM部分が、TIM−1、TIM−2、TIM−3およびTIM−4から選択される、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
TIM標的化分子を被験体に投与することを含む、自己免疫疾患と関連する徴候または症状の改善方法。
【請求項101】
前記自己免疫疾患が、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、自己免疫性真性糖尿病、全身性エリテマトーデスおよび自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)から選択される、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
前記TIM標的化分子を抗原とともに投与する、請求項100に記載の方法。
【請求項103】
前記TIM標的化分子がTIM抗体である、請求項100に記載の方法。
【請求項104】
前記TIM抗体が、TIM−1、TIM−2、TIM−3およびTIM−4から選択されるTIMに特異的である、請求項103に記載の方法。
【請求項105】
前記TIM標的化分子がTIM−Fc融合ポリペプチドである、請求項100に記載の方法。
【請求項106】
前記TIM−Fc融合ポリペプチドのFc部分が標的細胞枯渇性である、請求項105に記載の方法。
【請求項107】
前記TIM−Fc融合ポリペプチドのFc部分が非標的細胞枯渇性である、請求項105に記載の方法。
【請求項108】
前記TIM−Fc融合ポリペプチドのTIM部分が、TIM−1、TIM−2、TIM−3およびTIM−4から選択される、請求項105に記載の方法。
【請求項109】
前記TIM標的化分子を治療用部分に結合体化させる、請求項100に記載の方法。
【請求項110】
前記治療用部分が、化学療法剤、細胞傷害剤および毒素から選択される、請求項109に記載の方法。
【請求項111】
前記細胞傷害剤が放射性核種または化合物である、請求項110に記載の方法。
【請求項112】
前記化合物が、カリケアマイシン、エスペラマイシン、デュオカルマイシン、ドキソルビシン、メルファラン、メトトレキサート、クロラムブシル、シタラビン、ビンデシン、シスプラチン、エトポシド、ブレオマイシン、マイトマイシンCおよび5−フルオロウラシルから選択される、請求項111に記載の方法。
【請求項113】
前記放射性核種が、ヨウ素−131またはイットリウム−90である、請求項111に記載の方法。
【請求項114】
前記毒素が植物または細菌の毒素である、請求項110に記載の方法。
【請求項115】
前記植物毒素が、リシン、アブリン、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、サポリンおよびゲロニンから選択される、請求項114に記載の方法。
【請求項116】
前記細菌毒素が、シュードモナス外毒素およびジフテリア毒素から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項117】
前記TIM標的化分子がTIM抗体である、請求項109に記載の方法。
【請求項118】
前記TIM抗体が、TIM−1、TIM−2、TIM−3およびTIM−4から選択されるTIMに特異的である、請求項117に記載の方法。
【請求項119】
前記TIM標的化分子がTIM−Fc融合ポリペプチドである、請求項109に記載の方法。
【請求項120】
前記TIM−Fc融合ポリペプチドのFc部分が標的細胞枯渇性である、請求項119に記載の方法。
【請求項121】
前記TIM−Fc融合ポリペプチドのFc部分が非標的細胞枯渇性である、請求項119に記載の方法。
【請求項122】
前記TIM−Fc融合ポリペプチドのTIM部分が、TIM−1、TIM−2、TIM−3およびTIM−4から選択される、請求項119に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30A】
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【図30B】
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【図31】
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【図32A】
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【図32B】
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【図32C】
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【図32D】
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【図32E】
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【図32F】
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【図32G】
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【図32H】
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【図32I】
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【図32J】
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【図32K】
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【図32L】
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【図32M】
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【図32N】
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【図32O】
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【図32P】
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【図32Q】
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【図32R】
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【図32S】
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【図32T】
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【図32U】
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【図32V】
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【図32W】
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【図32X】
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【図32Y】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【公表番号】特表2007−530560(P2007−530560A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−505092(P2007−505092)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/009480
【国際公開番号】WO2005/097211
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(506320325)テロス ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】