説明

ワクチンの調製のためのB型肝炎ウイルス表面抗原の発現

HBsAgは、HBsAgコード配列を有するプラスミドを保持するSaccharomyces cerevisiae宿主において発現され、ここでこのプラスミドは:(1)HBsAgコード配列の発現を制御するためのグリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ遺伝子から上流プロモーター;および(2)HBsAgコード配列下流のARG3転写ターミネーターを含む。このプラスミドはまた、(3)LEU2選択マーカー;(4)2μプラスミド配列;および(5)Escherichia coliにおける機能的な複製起点を含む。HBsAgは、この宿主に発現され得、ワクチンの製造における使用のため、特に組合せワクチンの製造のためおよび新規の一価のHBVワクチン(例えば、アルミニウムアジュバントを含まない)における使用のために精製され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
明細書中に引用されるすべての文書は、その全体が参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、タンパク質発現の分野、特にワクチンの調製に使用するためのB型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)を発現させる工程に関する。
【背景技術】
【0003】
B型肝炎ワクチンは、長年利用されており(例えば、参考文献1(非特許文献1)の16章を参照のこと)、これらの活性成分はB型肝炎ウイルス(HBV)由来の表面抗原(HBsAg)である。最初のHBVワクチンは、ヒトの血液から精製されたHBsAgを使用したが、組換え発現されたHBsAgを基にしたワクチンが、1990年代に広く利用されるようになった。次いで、HBsAgはまた、このワクチンの投与が2つ以上の病原体に対して被験体を同時に免疫し得るように、多価ワクチン(すなわち、2つ以上の病原体由来の免疫原の混合物を含むワクチン)の成分として援用されている。これらの多価ワクチンは代表的にHBsAgと少なくとも「DTP」(ジフテリア、破傷風および百日咳)抗原を含有する。
【0004】
最初の一価の組換えHBVワクチン、ENGERIX BTMは、水酸化アルミニウムアジュバントを含有する。もっと最近になって、より最新のアジュバントに基づいた一価のHBVワクチンが利用できるようになった(例えば、GSKの製品FENDRIXTMにおける「AS04」アジュバント[2(非特許文献2)]、Berna Biotechの製品SUPERVAXTMにおけるRC−529アジュバント、またはColey PharmaceuticalsのCPG7909のようなCpGオリゴヌクレオチドアジュバント[3(非特許文献3)]の使用)。
【0005】
HBsAgの組換え発現に関して、種々の系が記載されている。使用された発現宿主として、バクテリア、酵母(Saccharomyces、HanensulaおよびPichia種を含む)、哺乳動物細胞の培養物(CHO細胞、COS細胞、Bu3細胞を含む)、昆虫細胞(バキュロウイルスベクターを使用する)および植物細胞(例えば、「食用ワクチン」のために)が挙げられる。
【非特許文献1】Vaccines、PlotkinおよびOrenstein編、第4版、2004年、ISBN:0−7216−9688−0
【非特許文献2】Desombereら、Vaccine、第20巻、2002年、2597〜2602頁
【非特許文献3】Cooperら、J Clin Immunol、第24巻、2004年、693〜701頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、HBsAgの組換え発現のため、特に組合せワクチン(DTP抗原を含有するような)または新たな一価のHBVワクチンに使用されるHBsAgを調製するためにさらに改善された系を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(本発明の開示)
組換えHBsAg発現の初期の報告は、E.coli[4〜6]、マウス細胞[7]、ヒト細胞[8]、サル細胞[9]および酵母[10〜12]に集中した。しかしながら、もっと最近になって、Pichia pastoris[25、26]およびHanensula polymorpha[27、28]酵母において発現を有するように、組換え植物における発現が広い注目を得ている[13〜24]。
【0008】
これら最新の発現系への動きにもかかわらず、本発明に従って、HBsAgはSaccharomyces cerevisiae宿主で発現される。種々の選択肢がHBsAgの酵母に基づいた発現において利用可能であり、これらとしては酵母種および酵母株、培養条件、発現の制御に使用されるプロモーター、遺伝子終止配列、コドンの使用などの選択が挙げられる。本発明に従って、HBsAgは、HBsAgコード配列を有するプラスミドを保持するSaccharomyces cerevisiae宿主において発現され、ここでこのプラスミドは:(1)HBsAgコード配列の発現を制御するためのグリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ遺伝子から上流プロモーター;および(2)HBsAgコード配列下流のARG3転写ターミネーターを含む。このプラスミドはまた、代表的に(3)LEU2選択マーカー;(4)2μプラスミド配列;および(5)Escherichia coliにおける機能的な複製起点を含む。
【0009】
HBsAgは、Saccharomyces cerevisiae宿主で発現され得、ワクチンの製造、特に組合せワクチンおよび新たな一価のHBVワクチンの製造において使用するために精製され得る。この酵母で発現された材料は、S.cerevisiae発現HBsAgが免疫抑制の可能性を有し得るという参考文献29の報告にもかかわらず、これら複合体ワクチンの使用に適している。
【0010】
(多価ワクチン)
従って、本発明は、多価免疫原性組成物を調製するためのプロセスを提供し、このプロセスは以下の工程(a)本発明のS.cerevisiae宿主における発現後、HBsAgを精製することによりHBV成分を調製する工程;(b)少なくとも1つの非HBV成分を調製する工程;および(c)多価組成物を得るためにHBVおよび非HBV成分を混合する工程を包含する。
【0011】
本発明はまた、(a)本発明のS.cerevisiae宿主において発現されるHBsAgを含むHBV成分;および(b)少なくとも1つの非HBV成分を含む多価の免疫原性組成物を提供する。本組成物はまた、代表的に1つ以上のアジュバントを含有する。
【0012】
これらの多価組成物は、特に子供においてHBV病原体および非HBV病原体による感染に対して同時に保護するのに有用である。代表的な患者は、0歳であり、出生後6週と9週の間にこの組成物の第1の投薬を受ける。さらに2回または3回の投薬は、代表的には約6〜8週の間隔を与えて投与される。この組成物はまた、別のワクチンの最初の免疫スケジュールを完全にするために使用され得る。本組成物はまた追加免疫(booster)として使用され得る(例えば、1〜16歳の子供において)。
【0013】
(一価ワクチン)
本発明はまた、一価の免疫原性組成物を調製するためのプロセスを提供し、このプロセスは以下の工程(a)本発明のS.cerevisiae宿主における発現後、HBsAgを精製することによりHBV成分を調製する工程;(b)免疫原性組成物を得るためにHBsAgをアジュバントと合わせる工程を包含する。このアジュバントは、好ましくは水酸化アルミニウムアジュバントではなく、より好ましくは単にアルミニウム塩アジュバントではない。
【0014】
本発明はまた、(a)本発明のS.cerevisiae宿主で発現されたHBsAgを含むHBV成分;および(b)アジュバントを含む一価の免疫原性組成物を提供する。
【0015】
これらの一価の組成物は、既存のアジュバントワクチン(adjuvanted vaccine)(例えば、ENGERIX BTM製品)が無効である患者においてB型肝炎ウイルス感染に対する保護および/または処置に特に有用である。この組成物が特に適している患者の部分群として;免疫不全の患者;血液透析患者;血液透析前の患者;腎機能不全(renal insufficiency)を有する患者;腎不全(renal failure)を有する患者;血液透析と必要とする前の早期腎不全を有する患者;肝移植を待っている(例えば、順番待ちリスト上の)患者;末期の腎不全を有する患者;臓器移植(特に肝移植)を受けた患者(例えば、本発明のワクチンの第1の投薬前6ヶ月間に);B型肝炎免疫グロブリン(HBIg)処置を受容する患者(または受けた患者、例えば、本発明のワクチンの第1の投薬前6ヶ月間に);HLA DQ2ハプロタイプを有する患者[30];HLA DR3ハプロタイプを有する患者[30];HLA DR7ハプロタイプを有する患者[30];HLA対立遺伝子DQB10202を有する患者[31];HIVに感染した患者;慢性HBV保有者;最近輸血を受けた患者;免疫抑制薬を受容する患者;AIDSを患っている患者;腹水を有する患者;肝硬変を有する患者;脳症を有する患者;インターフェロン治療、特にifn−αを受容する患者;タバコを吸う患者;葉巻を吸う患者;30kg/m以上のボディマス指数を有する患者;HBsAgワクチンを受けたことがあるがセロコンバージョンしていない患者(例えば、標準的な最初の投薬スケジュール(例えば、ENGERIX BTMの3回投与)後、10mIU/mlより少ない血清抗HBsAg力価を有する)が挙げられる。
【0016】
これらの患者は、30ml/分より小さいクレアチニンクリアランス速度(通常の健常な範囲が男性において、約100〜140ml/分、女性において、約90〜130ml/分である)を有し得る。患者は、好ましくは少なくとも15歳(例えば15〜40歳の間、15〜60歳の間、40〜60歳の間、または60歳以上)である。55歳より上の患者は、いずれの内在する病気にも関わらず、有効に処置され得る。
【0017】
(B型肝炎表面抗原)
HBVビリオンは、外部タンパク質被膜またはカプシドにより囲まれた内部コアからなる。カプシドの主要成分は、「HBsAg」と呼ばれるタンパク質である。既存のすべてのB型ワクチンは、HBsAgを含んでおり、この抗原が正常なワクチン被接種者に投与された場合、HBV感染を防ぐ抗HBsAg抗体の産生を刺激する。
【0018】
ワクチンの製造に関して、HBsAgは、2つの方法で作製され得る。大量のHBsAgは、HBV感染中肝臓で合成され、血流に放出されるので、第1の方法は、慢性B型肝炎の保有者の血漿から微粒子の形態での抗原を精製する工程を包含する。第2の方法は、組換えDNA法により、タンパク質を発現させる工程を包含する。本発明を用いて使用するためのHBsAgは、Saccharomyces cerevisiae酵母で組換え発現される。
【0019】
天然のHBsAg(すなわち、血漿を精製した製品)と違って、本発明を用いて使用されるHBsAgは、グリコシル化されていない。このHbsAgの形態が好ましい。なぜなら免疫原性が高く、血液製品の汚染の危険なしに調製され得るからである。
【0020】
酵母で発現されるHBsAgは、有利なことに、実質的に球状の粒子の形態であり(約20nmの平均直径)、リン脂質を含む脂質マトリックスを含む。血漿由来のHBsAg粒子と違って、この酵母で発現される粒子は、ホスファチジルイノシトールを含み得る。さらに、この脂質マトリックスは、非イオン性の界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)を含み得、これは、酵母で発現される宿主由来の抗原の精製の間にマトリックス中に組み入れられ得る。HBsAg精製の開始時の組換え酵母細胞の破壊の間、ポリソルベート20を使用することは、それをHBsAg粒子に導入し得る1つの方法である。このポリソルベート20は、代表的に100μgのHBsAgあたり少なくとも5μgの重量比で存在する。
【0021】
公知のすべてのHBVサブタイプは共通の決定因子「a」を含んでいる。他の決定因子および副決定因子(subdeterminant)と結合されて、9つのサブタイプ:ayw1、ayw2、ayw3、ayw4、ayr、adw2、adw4、adrq−およびadrq+が同定されている。これらのサブタイプに加えて、他の変異体が出現した(例えば、免疫された個体で検出されたHBV変異体「エスケープ(escape)変異体」)。いくつかの研究は、非応答者(例えば、血液透析患者)において大多数の血清がadw4またはadw3サブタイプで感染されており(例えば、参考文献32を参照すると、血清の75%がadw4であり、ある血液透析患者群においては88%まで上昇した;参考文献33を参照すると、血液透析患者から得られた細かく型決定した(subtyped)サンプルの58%がayw3であった)、本発明を用いる使用のための最も好ましいHBVサブタイプは、adw2サブタイプである。このサブタイプは、参考文献32の単回血液透析患者、ならびに1994年の間カリフォルニアおよびネブラスカ[34]においておよびその後ブラジル[35、36]において血液透析患者の間でほんの少数のHBV感染の発症において発見されたが、98%より多い血液透析患者において免疫原性が高く効果的であった。
【0022】
好ましいHBsAgは、以下の226マーのアミノ酸配列を有する(配列番号3):
【0023】
【化1】

本発明は、配列番号3または配列番号3と10個まで(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10)の単一アミノ酸置換により異なる配列を使用し得る。
【0024】
HBsAgコード配列は、以下の678マーのヌクレオチド配列であり得る(配列番号4):
【0025】
【化2】

HBsAgコード配列の最後のコドンに、好ましくはTAA終止コドン(オーカー)が続く。
【0026】
「S」配列に加えて、表面抗原は、プレS配列のすべてまたは一部を含み得る(例えば、プレS1および/またはプレS2配列のすべてまたは一部)。しかしながら、上に示すようなS配列のみの使用が好ましい。
【0027】
(GAPDHプロモーター)
本発明によると、HBsAgは、グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ(GAPDH)遺伝子から、特に酵母GAPDHから上流プロモーターを有するプラスミドを保持するSaccharomyces cerevisiae宿主で発現される[37〜40]。このプロモーターは、その転写を調節するためにHBsAgコード配列に連結される。
【0028】
グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼは、解糖酵素であり、そのプロモーターは、S.cerevisiaeにおいてHBsAgの発現を制御するのに特に適していることが発見された[41]。参考文献41に開示されるGAPDHプロモーターは、以下の1061マーの配列を有する(配列番号5)。
【0029】
【化3】

このプロモーターは、本発明に従って使用され得るが、以下の1060マーのヌクレオチド配列(配列番号1)を含むプロモーターを使用することが好ましい。:
【0030】
【化4】

この配列は、以下:(1)ヌクレオチド42でA/C置換;(2)ヌクレオチド194でT/A置換;(3)ヌクレオチド301でC/A変異;(4)ヌクレオチド471でAの挿入;(5)残基569でC/T置換;(6)残基597でT/C置換;(7)ヌクレオチド604でTの挿入(4つのTの代わりに5つのT);および(8)単一のAでの3’GCTT配列の置換:のように配列番号5とは異なる。
【0031】
本発明は、配列番号1のプロモーター配列または20個まで(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20)の点変異により配列番号1と異なる配列を使用し得、各点変異は1つのヌクレオチドの欠失、置換または挿入である。
【0032】
この1060マー配列は、好ましくはHBsAgのN末端をコードするATG開始コドンのすぐ上流である(配列番号2)。例えば:
【0033】
【化5】

(ARG3ターミネーター)
本発明に従って、HBsAgは、ARG3から下流の転写ターミネーターを有するプラスミドを保持するSaccharomyces cerevisiae宿主において発現される。このターミネーターは、その転写を調節するために、HBsAgコード配列に連結される。
【0034】
酵母のARG3遺伝子は、オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ酵素をコードし[42]、その転写終止配列は、種々の酵母組換え発現系において使用されている[43〜45]。これは酵母におけるHBsAg発現の制御、特にGAPDHプロモーターとの組合せで有用である。
【0035】
ARG3終止コドンのすぐ下流の配列は、GenBank エントリーGI:171076に開示されるように、以下の450マーである(配列番号6):
【0036】
【化6】

このコード配列のさらに後方に250ヌクレオチド延ばした場合、このARG3遺伝子は、以下の700マー配列を含む(配列番号7):
【0037】
【化7】

配列番号7の転写終止は、下線のSacII部位の領域で起こる。本発明による使用のために好ましいターミネーターは、コード配列およびARG3領域から下流の配列の両方のある部分を含み、特に以下の689マーのヌクレオチド配列を含み(配列番号8)、これは配列番号7と同じ3’末端を有する。
【0038】
【化8】

この配列は、5’末端近くのEcoRI部位(下線)を有用に含み、これは所望される位置へのターミネーターの挿入を容易にする。
【0039】
さらに、ARG3から下流のターミネーター配列がまた存在し得る。ARG3から1500ヌクレオチドまで(すなわち、配列番号7のさらに800ヌクレオチド下流まで)が含まれ得る(例えば、1200ヌクレオチドまで、または約1150ヌクレオチド)。
【0040】
本発明は、配列番号8のターミネーター配列または30個まで(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40)の点変異により配列番号8と異なる配列を使用し得、各点変異は1つのヌクレオチドの欠失、置換または挿入である。
【0041】
689マー配列は、好ましくはHBsAgのC末端で終止コドンのすく下流である(配列番号9)。例えば、
【0042】
【化9】

(プラスミド)
HBsAgをコードする遺伝子、GAPDHプロモーターおよびARG3ターミネーターはすべて同じプラスミドの一部として作動的に連結される。本発明のプラスミドはまた、代表的に以下の要素の1つ、2つまたは(このましくは)3つすべてを含む:LEU2選択マーカー;2μプラスミド配列;およびE.coliにおける機能的な複製起点。これら3つの構成要素は、以前にHBsAg発現に使用されたプラスミドにおいて示されている[45]。
【0043】
LEU2選択マーカーは、しばしば酵母遺伝学において使用される。LEU2は、3−イソプロピルマレートデヒドロゲナーゼをコードし、これはロイシン生合成経路における3番目の酵素である。プラスミドのLEU2マーカーは、代謝前駆体からロイシンを合成する能力を与え、ロイシン栄養要求株(例えばLEU2ヌル変異体)である宿主細胞において使用される。従って、このLEU2マーカーは、通常ロイシン供給なしでは成長できないロイシン栄養要求株を、ロイシン非存在下で成長させることが可能である。
【0044】
2μプラスミド配列はまた、酵母遺伝学においてよく知られており[46]、プラスミドのコピー数を増加させるのに使用される。任意の適した2μプラスミド配列は、本発明のプラスミドにおいて使用され得る。このプラスミドは、酵母の複製起点を含み、これは代表的には2μ配列で提供される。
【0045】
E.coliにおいて機能する複製起点を含むことにより、プラスミドは、酵母とE.coliの間のシャトルベクターとして働き得、それにより便宜的にE.coli系においてプラスミドの操作を可能にする。
【0046】
従って、発明は以下の要素を含むプラスミドを提供する:(1)HBsAgコード配列;(2)HBsAgコード配列の上流でHBsAgコード配列の発現を制御するためのグリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ遺伝子からのプロモーター;および(3)HBsAgコード配列下流のARG3転写ターミネーター。このプラスミドはまた、以下の要素を含み得る:(4)LEU2選択マーカー;(5)2μプラスミド配列;および(5)E.coliにおける機能的な複製起点。このHBsAgコード配列は、好ましくは配列番号3のアミノ酸配列、または配列番号3と10個まで(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10)の単一アミノ酸置換により異なる配列をもつHBsAgをコードする。GAPDHプロモーター配列は、好ましくは配列番号1または20個まで(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20)の点変異により配列番号1と異なる配列を含む。ARG3ターミネーターは、好ましくは配列番号8または20個まで(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20)の点変異により配列番号8と異なる配列を含む。このプラスミドは、S.cerevisiae宿主において維持され得、HBsAgの発現に使用され得る。
【0047】
14500と15000bpの間のプラスミドが好ましい(例えば、14600と14700bpの間)。
【0048】
(S.cerevisiae宿主)
Saccharomyces cerevisiaeは、組換え発現のために広く使用される酵母である。任意の適したS.cerevisiae宿主は、本発明を用いて使用され得る。しかしながら、LEU2選択マーカーがプラスミドにおいて使用され得るように、ロイシン要求株である宿主を使用することが好ましい。この宿主細胞は、leu2−3 leu2−112変異体であり得る。
【0049】
さらに好ましい酵母宿主の特徴は、his3および/またはcan1−11である。最も好ましい酵母宿主は、DC5株のようなleu2−3 leu2−112 his3 can1−11である。
【0050】
本発明は、本発明のプラスミドを保持する酵母を提供する。本発明はまた、本発明の組成物の製造における酵母の使用を提供する。
【0051】
(HBsAg発現および精製)
組換えタンパク質発現のための酵母培養技術は、当該分野において周知である。酵母は、合成培地において培養され得る(例えば、精製されたアミノ酸(代表的には、LEU2マーカーを用いる場合ロイシンを除去した)、ビタミン、塩などを含む)。次いでHBsAgは、沈降、イオン交換クロマトグラフィーおよび限外濾過のような工程を含むプロセスにより精製され得る。この精製の間に使用され得る他の工程として、ゲル透過クロマトグラフィーおよび塩化セシウム超遠心が挙げられる。
【0052】
精製プロセスすべてに包含されるために特に好ましい工程は、非イオン性界面活性剤(例えば、Triton−X100あるいはポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート(ポリソルベート80としても公知)またはより好ましくはポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(ポリソルベート20としても公知)のようなポリオキシエチレンソルビタンの脂肪酸エステル)の存在下における細胞破砕の工程である。次いでこの破砕された細胞は、HBsAgが認められる上清を得るために遠心され得る。次いでこのタンパク質は、上清から精製される(例えば、参考文献47に開示されるプロセスを使用して)。
【0053】
精製後、HBsAgは、透析にかけられ得(例えば、システインを用いて)、これはHBsAg調製の間使用され得るチメロサールのような任意の水銀の保存剤を除去するために使用され得る[48]。
【0054】
本発明に従って発現され精製されたHBsAgは、さらに非HBV抗原と合わされ得、多価ワクチンを調製するか、または新規のアジュバントと合わされ得、改善された一価のワクチンを調製する。
【0055】
(一価の免疫原性組成物)
本発明に従って発現され、精製されたHBsAgは、新しいアジュバントと合わされ得、改善された1価のワクチンを調製する。1価のHBVワクチンにおける使用に関して関心がもたれる3つの特異的アジュバントは:CpGオリゴヌクレオチド;アミノアルキルグルコサミニドホスフェート誘導体;およびアルミニウム塩と3d−MPLとの混合物である。
【0056】
CpGオリゴヌクレオチドアジュバントは、CpGモチーフ(グアノシンが続く非メチル化シトシンを含むジヌクレオチド配列)を含むヌクレオチド配列を含む免疫刺激性オリゴヌクレオチドである。パリンドローム配列またはポリ(dG)配列を含むバクテリアの二本鎖RNAあるいはオリゴヌクレオチドもまた、免疫刺激を示す。CpG’は、ヌクレオチド改変体/ヌクレオチドアナログ(例えば、ホスホロチオアート改変体)を含み得、二本鎖または一本鎖であり得る。必要に応じて、グアノシンは、2’−デオキシ−7−デアザグアノシンのようなアナログで置換され得る。参考文献49〜51は、可能なアナログ置換の例を与える。CpGオリゴヌクレオチドのアジュバント効果は、さらに参考文献52〜57で議論される。
【0057】
CpG配列は、モチーフGTCGTT(配列番号11)またはTTCGTT(配列番号12)のようなTLR9に関し得る[58]。CpG配列は、Th1免疫応答の誘導に特異的であり得る(例えば、CpG−A ODN)か、またはB細胞応答の誘導により特異的であり得る(例えば、CpG−B ODN)。CpG−A ODNおよびCpG−B ODNは、参考文献59〜61で議論される。好ましくは、CpGは、CpG−A ODNである。
【0058】
好ましくは、CpGオリゴヌクレオチドは、5’末端がレセプター認識可能なように構成される。必要に応じて、2つのCpGオリゴヌクレオチド配列は「イムノマー」を形成するために3’末端で結合され得る。例えば、参考文献58および62〜64を参照のこと。
【0059】
アミノアルキルグルコサミニドホスフェート(AGP)誘導体は、RC−529を含み[65〜68]、これはCorixa Corporationにより販売されるアミノアルキルグルコサミニド4ホスフェートである。
【0060】
AS04は、アルミニウム塩アジュバントと3D−MPLアジュバントとの混合物である[69]。AS04を使用する場合、HBsAgは、好ましくはアルミニウム塩に吸着される(例えば、参考文献70に記載されるように)。アルミニウム塩はリン酸塩であり、総HBsAgの少なくとも50%(重量で)(例えば、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、98%以上またはそれ以上)がリン酸アルミニウムに吸着されることが好ましい。吸着される割合は、吸着された物質を吸着されていない物質と分けること(例えば遠心により、アルミニウム吸着された抗原は容易にペレットを形成する一方で、吸着されなかった抗原は上清に残る)により都合よく測定され得る。上清中のHBsAgの量(例えば、抗−HBsAg ELISAにより測定される)は、組成物中のHBsAgの総量から引かれ得、次いで、吸着した割合が計算され得る。HBsAgは完全に吸着されること(すなわち、上清に検出されない)が好ましい。
【0061】
この3D−MPLアジュバントはまた、リン酸アルミニウムに吸着され得る。好ましくは、3D−MPLの少なくとも50%(重量で)(例えば、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、98%以上またはそれ以上)が吸着される。吸着される割合は、HBsAgと同様の方法で測定され得る。50μg/mlの総3D−MPL濃度を有する組成物において、吸着されない3D−MPLの濃度は、25μg/ml未満(例えば、20μg/ml以下、15μg/ml以下、10μg/ml以下、5μg/ml以下、20μg/ml以下、1μg/ml以下など)であるべきである。
【0062】
リン酸アルミニウムアジュバントはより詳細に以下に記載される。
【0063】
3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D−MPL)はまた、3脱−O−アシル化モノホスホリルリピドAまたは3−O−脱アシル−4’−モノホスホリルリピドAと称される。この名前は、モノホスホリルリピドA中の還元末端グルコサミンの位置3が脱アシル化されることを示す。それは、Salmonella minnesotaのヘプトースのない(heptoseless)改変体から調製され、そして化学的にリピドAに類似しているが、酸に不安定なホスホリル基および塩基に不安定なアシル基を欠いている。それは、単球/マクロファージ系統の細胞を活性化し、そしてIL−1、IL−12、TNF−αおよびGM−CSFを含む数種のサイトカインの放出を刺激する。3D−MPLの調製は、最初は参考文献71に記載され、そしてその産物は、Corixa Corporationによって、商標名MPLTMの下で製造および販売されている。さらなる詳細は参考文献72〜75に見出され得る。この3D−MPLは、トリエタノールアミン、トリエチルアンモニウムまたはトリエチルアミンイオンと組み合わせて含まれ得る。
【0064】
3D−MPLは、それらのアシル化によって変動する(例えば、異なる長さであり得る3、4、5または6のアシル鎖を有する)関連分子の混合物の形態をとり得る。2つの2−デオキシ−2−アミノ−グルコース単糖は、それらの2位の炭素(すなわち、2位および2’位)でN−アシル化され、そしてまた3’位でO−アシル化されている。炭素2に結合する基は、式−NH−CO−CH−CR1’を有する。炭素2’に結合する基は、式−NH−CO−CH−CR2’を有する。炭素3’に結合する基は、式−O−CO−CH−CR3’を有する。代表的な構造は以下に示される:
【0065】
【化10】

基R、RおよびRは各々独立して−(CH−CHである。nの値は、好ましく8〜16の間であり、より好ましくは9〜12の間であり、そして最も好ましくは10である。
【0066】
基R1’、R2’およびR3’は各々独立して:(a)−H;(b)−OH;または(c)−O−CO−Rであり得、ここでRは−Hまたは−(CH−CHのいずれかであり、ここでmの値は、好ましくは8〜16の間であり、そしてより好ましくは10、12または14である。2の位置では、mは好ましくは14である。2’位置では、mは好ましくは10である。3’位置では、mは好ましくは12である。基R1’、R2’およびR3’は従って好ましくはドデカン酸、テトラデカン酸またはヘキサデカン酸由来の−O−アシル基である。
【0067】
1’、R2’およびR3’のすべてが−Hであるとき、上記3D−MPLは3つのアシル鎖のみを有する(2、2’および3’位の各々に1つ)。R1’、R2’およびR3’の2つのみが−Hである場合、上記3D−MPLは4つのアシル鎖を有し得る。R1’、R2’およびR3’の1つのみが−Hである場合、上記3D−MPLは5つのアシル鎖を有し得る。R1’、R2’およびR3’のいずれもが−Hではない場合、上記3D−MPLは、6つのアシル基を有し得る。本発明に従って用いられる3D−MPLアジュバントは、3〜6つのアシル鎖を備えたこれらの形態の混合物であり得るが、この混合物中に6つのアシル鎖をもつ3D−MPLを含むことが好ましく、そして特に6つのアシル鎖形態が総3D−MPLの少なくとも10重量%、例えば、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上またはさらに多くを占めることが好ましい。6つのアシル鎖を備えた3D−MPLは、最もアジュバント活性な形態であることが見出された。
【0068】
従って、本発明の組成物に含めるために3D−MPLの最も好ましい形態は、以下に示される式(II)を有する。
【0069】
水性条件では、3D−MPLは、異なるサイズを備えた、例えば、直径<150nmまたは>500nmを備えたミセル凝集体または粒子を形成し得る。これらのいずれか、または両方は、本発明とともに用いられ得、そしてより良好な粒子が通常のアッセイによって選択され得る。より小さな粒子(例えば、3D−MPLの透明な水性懸濁物を与えるに十分小さい)が、より優れていることが報告され[76]、本発明に従う使用に好ましい。好ましい粒子は、220nmより小さい、より好ましくは200nmより小さい、150nmより小さい、あるいは120nmより小さい平均直径を有する。100nmより小さい平均直径を有しさえし得る。しかしながら、大部分の事例では、この平均直径は、50nmより小さくはない。
【0070】
3D−MPLがリン酸アルミニウムに吸着される場合、3D−MPL粒子サイズを直接測定することは可能ではないかも知れないが、粒子サイズは、吸着が起こる前に測定され得る。
【0071】
粒子直径は、動的光散乱の通常の技法によって評価され得、これは、平均粒子直径を示す。粒子がxnmの平均直径を有するといわれる場合、一般的にはほぼこの平均の粒子の分布が存在するが、粒子の数で少なくとも50%(例えば、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、またはそれより多く)がx±20%の範囲内の直径を有する。
【0072】
【化11】

(多価免疫原性組成物)
本発明に従って発現され、精製されたHBsAgは、1つ以上の非HBV抗原と合わされ得、多価ワクチンを調製する。この非HBV抗原は、バクテリア抗原および/またはウイルス抗原を含み得る。本発明に従う使用のための代表的な非HBV成分として、
ジフテリアトキソイド(「D」)
破傷風トキソイド(「T」)
百日咳抗原(「P」)(細胞性(「wP」)あるいは無細胞性(「aP」)のどちらであってもよい)
A型肝炎ウイルス(HAV)抗原
結合体化Haemophilus influenzae b型莢膜サッカリド(「Hib」)
不活化ポリオウイルス(IPV)
結合体化Neisseria meningitidis 血清群C莢膜サッカリド(「MenC」)
結合体化Neisseria meningitidis 血清群A莢膜サッカリド(「MenA」)
結合体化Neisseria meningitidis 血清群W135莢膜サッカリド(「MenW135」)
結合体化Neisseria meningitidis 血清群Y莢膜サッカリド(「MenY」)
結合体化Streptococcus pneumoniae 莢膜サッカリド
麻疹ウイルス抗原
ムンプスウイルス抗原
風疹ウイルス抗原
水痘−帯状疱疹ウイルス抗原
インフルエンザウイルス抗原
が挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
2つ以上のこれら非HBV抗原が使用され得る。以下の抗原の組合せが特に好ましい。
【0074】
2価のワクチン:HBV−HAV;HBV−Hib
3価のワクチン:HBV−D−T
4価のワクチン:HBV−D−T−P
5価のワクチン:HBV−D−T−P−Hib;HBV−D−T−P−IPV
6価のワクチン:HBV−D−T−P−Hib−IPV
7価のワクチン:HBV−D−T−P−Hib−MenA−MenC;HBV−D−T−P−Hib−IPV−MenC。
【0075】
ジフテリアトキソイド(「D」)は、参考文献1の13章により詳細に開示される。好ましいジフテリアトキソイドは、ホルムアルデヒド処理により調製される。このジフテリアトキソイドは、ウシの抽出物を添加し得る増殖培地(例えば、Fenton培地またはLinggoud & Fenton培地)中でC.diphtheriaeを成長させ、続いてホルムアルデヒドで処理し、限外濾過および沈降させることにより得られ得る。次いでこのトキソイド化した物質は、滅菌濾過および/または透析を包含する工程により、処理され得る。ジフテリアトキソイドの量は、国際単位(IU)で示され得る。例えば、NIBSCは、「Diphtheria Toxoid Adsorbed Third International Standard 1999」[77、78]を提供し、これは、アンプルあたり160 IUを含む。IU系の代替として、「Lf」単位(「凝集単位」または「凝集限界量」)は、1国際単位の抗毒素を用いて混合した場合、最適の凝集混合物を産生するトキソイドの量として定義される[79]。例えば、NIBSCは1アンプルあたり300LFを含む「Diphtheria Toxoid, Plain」[80]を提供し、そしてまた1アンプルあたり900Lfを含む「The 1st International Reference Reagent For Diphtheria Toxoid For Flocculation Test」[81]を提供する。
【0076】
破傷風トキソイド(「T」)は、参考文献1の第27章により詳細に開示される。好ましい破傷風トキソイドは、ホルムアルデヒドで処理されたものである。破傷風トキソイドは、増殖培地(例えば、ウシのカゼイン由来のLatham培地)中C.tetaniを成長させ、その後ホルムアルデヒド処理、限外濾過および沈降させることにより得られ得る。次いでこの物質は、滅菌濾過および/または透析を含むプロセスにより処理され得る。破傷風トキソイドの量は、国際単位(IU)で表わされ得る。例えば、NIBSCは、「Tetanus Toxoid Adsorbed Third International Standard 2000」[82、83]を提供し、これは1アンプルあたり469IUを含む。IU系の代替として、「Lf」単位(「凝集単位」または「凝集限界量」)は、1国際単位の抗毒素を用いて混合した場合、最適の凝集混合物を産生するトキソイドの量として定義される[79]。例えば、NIBSCは、「The 1st International Reference Reagent for Tetanus Toxoid For Flocculation Test」[84]を提供し、これは1アンプルあたり1000Lfを含む。
【0077】
百日咳抗原(「P」)は、細胞性(「wP」)または無細胞性(「aP」)のいずれかであり得る。細胞性百日咳抗原は、代表的に不活性化されたB.pertussis細胞の形態をとる。細胞性百日咳抗原の調製は、よくまとめられており(例えば、参考文献1の第21章を参照のこと)、例えば、B.pertussisのフェーズIの培養物の熱不活化により得られ得る。wP抗原の量は、国際単位(IU)で示され得る。例えば、NIBSCは、「Third International Standard For Pertussis Vaccine」[85]を提供し、これは1アンプルあたり46IUを含む。各アンプルは、8リットルのM/15 Sorensen’s緩衝液pH7.0で希釈された10リットルのバクテリア懸濁液(U.S. Opacity Standardに換算して180不透明度単位(Opacity Unit)に等しい)を含んだ水溶液の2.0mlアリコートの凍結乾燥残渣を含む。IU系の代替として「OU」単位(「不透明度単位」)がまた使用される(例えば、4OUが約1IUであり得る)。近年ワクチンに使用されるAcellular pertussis抗原は、百日咳トキソイド(PT)、線状ヘム凝集素(FHA)、ペルタクチン(「69キロダルトン外膜タンパク質」としても公知)および采(例えば、凝集原2および3)を含む。本発明は、好ましくはPT、FHAおよびペルタクチンのうちの少なくとも2つ、好ましくは3つすべてを使用する(すなわち、采を使用しない)。これら3つの抗原は、好ましくは改変されたStainer−Scholte液体培地で増殖させたB.pertussis培養物からの単離により調製される。PTおよびFHAは、発酵培養液から単離され得る(例えば、ヒドロキシアパタイトゲルへの吸着により)一方、ペルラクチンは、熱処理および凝集(例えば、塩化バリウムを使用する)により、細胞から抽出され得る。この抗原は、継続的なクロマトグラフィー工程および/または沈降工程で精製され得る。PTおよびFHAは、疎水クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーおよびサイズ除外クロマトグラフィーにより精製され得る。ペルトラクチンは、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィーおよびサイズ除外クロマトグラフィーにより精製され得る。FHAおよびペルラクチンは、本発明に従って使用される前にホルムアルデヒドで処理され得る。PTは好ましくは、ホルムアルデヒドおよび/またはグルタルアルデヒドで処理され解毒される。化学的解毒手順の代替として、PTは、酵素活性が突然変異により減少されたPT変異体であり得る[86]が、化学的処理による解毒が好ましい。無細胞の百日咳抗原の量は、代表的にマイクログラムで表わされる。
【0078】
A型肝炎ウイルス(HAV)ワクチンは、参考文献1の15章に開示される。好ましいHAV成分は不活性ウイルスに基づいており、不活性化は、ホルマリン処理により達成され得る。ウイルスは、ヒト胎児肺二倍体線維芽細胞(例えば、MRC−5細胞)で増殖され得る。好ましいHAV株は、HM175であるが、CR326Fがまた使用され得る。この細胞は、ウイルスの増殖を可能にする条件下で増殖される。この細胞を溶解し、得られた懸濁液を限外濾過およびゲル透過クロマトグラフィーで精製され得る。
【0079】
b型H.influenzae 莢膜サッカリド(「Hib」)結合体は、参考文献1の第14章に、より詳細に開示される。このHib莢膜サッカリドは、その免疫原性を特に子供において増強するためにキャリアタンパク質に結合体化される。ジフテリアトキソイド、CRM197、血清群B髄膜炎菌に由来する外膜タンパク質複合体、H.influenzaeプロテインDまたは破傷風トキソイドを含む種々のキャリアタンパク質が使用され得る。破傷風トキソイドは好ましいキャリアであり、製品中に使用される場合、一般に「PRP−T」と呼ばれる。PRP−Tは、臭化シアンを使用するHib莢膜ポリサッカリドを活性化し、活性化したサッカリドをアジピン酸リンカー(例えば、(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、代表的には塩酸塩)に結合し、次いでリンカー−サッカリドの実体を破傷風トキソイドキャリアタンパク質と反応させることにより作製され得る。Hib結合体のサッカリド部分は、Hibバクテリアから調製されるような全長ポリリボシルリビトールホスフェート(PRP)を含み得、そして/または全長PRPの断片を含み得る。サッカリド:タンパク質比(w/w)が1:5(すなわち、過剰なタンパク質)と5:1(すなわち、過剰なサッカリド)の間にある結合体が使用され得る(例えば、1:2と5:1の間の比および1:1.25と1:2.5の間の比)。好ましい結合体において、サッカリドとキャリアタンパク質の重量比は、1:2.5と1:3.5の間である。破傷風トキソイドが抗原およびキャリアタンパク質の両方として存在するワクチンにおいて、結合体中のサッカリドとキャリアタンパク質の重量比は、1:0.3と1:2の間であり得る[87]。このHib結合体の投与は、好ましくは0.15μg/ml以上、より好ましくは1μg/ml以上の抗PRP抗体濃度を生じ、これらは標準の受容可能な反応の閾値である。
【0080】
不活化ポリオウイルスワクチン(IPV)は、参考文献1の第24章に、より詳細に開示される。ポリオウイルスは、細胞培養物中で成長され得、好ましい培養物は、サルの腎臓由来のVero細胞株を使用する。Vero細胞は、都合よく培養されたミクロキャリアであり得る。成長後、ビリオンは、透析濾過(diafiltration)およびクロマトグラフィのような方法を使用して精製され得る。患者に投与する前に、ポリオウイルスは不活化されなければならず、これはホルムアルデヒドで処理することにより達成され得る。ポリオは、3つの型のポリオウイルスのうちの1つにより引き起こされ得る。この3つの型は類似しており、同一の症状を引き起こすが、これらは免疫原性的に非常に異なっており、1つの型による感染は他の型による感染に対して予防しない。それ故、本発明において、3つのポリオウイルス抗原:1型ポリオウイルス(例えば、Mahoney株)、2型ポリオウイルス(例えば、MEF−1株)および3型ポリオウイルス(例えば、Saukett株)の使用が好ましい。これらウイルスは、好ましくは個々に成長させ精製し、そして不活化し、次いで合わされ、本発明による使用のために大量の3価の混合物を得る。IPVの量は、代表的に「DU」単位(「D−抗原単位」[88])で表わされる。
【0081】
結合体化髄膜炎菌抗原は、キャリアタンパク質に結合体化されたN.meningitidis由来の莢膜サッカリド抗原を含む。血清群Cに対する結合体ワクチンが、ヒト使用に関して認可されており、それには、MENJUGATETM[89]、MENINGITECTMおよびNEISVAC−CTMが挙げられる。血清群A+Cに由来する結合体の混合物が、公知であり[90、91]、血清群A+C+W135+Yに由来する結合体の混合物が、報告され[92〜95]、2005年にMENACTRATM製品として認可された。本発明に使用される髄膜炎菌サッカリドは、血清群A、C、W135およびYのうちの1つ以上に由来し得る(例えば、A+C、A+W135、A+Y、C+W135、C+Y、W135+Y、A+C+W135、A+C+Y、C+W135+Y、A+C+W135+Y)。少なくとも血清群Cのサッカリドを使用することが好ましく、血清群AおよびCの両方由来のサッカリドを使用することが好ましい。MENJUGATETMおよびMENINGITECTM製品は、CRM197キャリアタンパク質を使用し、このキャリアはまた、本発明に従って使用され得る。NEISVAC−CTM製品は、破傷風トキソイドキャリアタンパク質を使用し、そしてこのキャリアはまた、本発明に従って使用され得、同様に、ジフテリアトキソイドを使用し得る。髄膜炎菌結合体のための特に好ましいキャリアタンパク質は、H.influenzae由来のプロテインDであり、これは既存の認可された結合体ワクチンのいずれにも存在しない。この結合体のサッカリド部分は、髄膜炎菌から調製されるような全長サッカリドを含み得、そして/または全長サッカリドの断片を含み得る。血清群Cサッカリドは、OAc+またはOAc−株のいずれかから調製され得る。血清群Aサッカリドに関して、好ましくは少なくとも50%(例えば、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上)のマンノサミン残基がC−3位でO−アセチル化される。サッカリド:タンパク質比(w/w)が1:10(すなわち、過剰なタンパク質)と10:1(すなわち、過剰なサッカリド)の間にある髄膜炎菌結合体が使用され得る(例えば、1:5と5:1の間の比、1:2.5と2.5:1の間の比または1:1.25と1.25:1の間の比)。結合体の投与は、好ましくは関連血清群に関して少なくとも4倍、好ましくは少なくとも8倍の血清殺菌アッセイ(SBA)力価の増加を生じる。SBA力価は、胎児のウサギの補体またはヒトの補体を使用して測定され得る[96]。
【0082】
結合体化肺炎球菌抗原は、キャリアタンパク質に結合体化されたS.pneumoniae由来の莢膜サッカリド抗原を含む[例えば、参考文献97〜99]。1つよりも多くの血清型のS.pneumoniaeに由来するサッカリドを含むことが、好ましく、23種の異なる血清型に由来するポリサッカリドの混合物が、広範に使用され、同様に、5種〜11種の異なる血清型に由来するポリサッカリドを含む結合体ワクチンも、広範に使用される[100]。例えば、PrevNarTM[101]は、7種の血清型(4、6B、9V、14、18C、19F、および23F)に由来する抗原を含み、各サッカリドは、還元的アミノ化によってCRM197に個別に結合体化されており、0.5μl用量あたり各サッカリド2μg(4μgの血清型6B)であり、結合体は、リン酸アルミニウムアジュバントに吸着されている。本発明の組成物は、好ましくは、少なくとも血清型6B、14、19Fおよび23Fを含む。さらに血清型は、好ましくは1、3、4、5、7F、9Vおよび18Cから選択される。
【0083】
麻疹ウイルス、ムンプスウイルスおよび風疹ウイルスに対して予防するための抗原は、代表的には生ウイルスであり、公知の1価のワクチンおよび3価のワクチン(「MMR」)が見出されている。麻疹ウイルスワクチンは、参考文献1の第19章に、より詳細に記載される。ムンプスウイルスワクチンは、参考文献1の第20章に、より詳細に記載される。風疹ウイルスワクチンは、参考文献1の第26章に、より詳細に記載される。代表的な風疹ウイルス株として、Moraten;Connaught;Schwarz;Edmonston−Zagreb;CAM−70;AIK−C;TD97;Leningrad−16;Shanghai−191などが挙げられる。Schwarz株およびMoraten株がUSAおよびヨーロッパにおいて最も一般的に使用される。代表的なムンプスウイルス株として、Jeryl Lynn;RIT 4385;Urabe;Hoshino;Rubini;Leningrad−3;Leningrad−Zagreb;Miyahara;Torii;NKM−46;S−12などが挙げられる。Jeryl Lynn株、RIT4385株、Urabe株およびLeningrad−Zagreb株は、最も一般的な世界的な株である。代表的な風疹ウイルス株として、RA27/3;Matsuba;TCRB 19;Takahashi;Matsuura;TP−336などが挙げられる。RA27/3株が西欧側世界で使用される最も一般的な株である。
【0084】
水痘に対する予防のためのVZV抗原は、代表的に生ウイルスであり、このウイルスのOka株に基づいている。VZVワクチンは、参考文献1の第28章に、より詳細に記載される。
【0085】
インフルエンザウイルス抗原は、参考文献1の第17章および第18章に、より詳細に記載される。概して、インフルエンザウイルスワクチンは、生ウイルスまたは不活化ウイルスに基づき得、不活化ワクチンは、完全なウイルスの「スプリット」ウイルスまたは精製された表面抗原(血液凝集素およびノイラミニダーゼを含む)に基づき得る。ワクチンを調製するために使用されるウイルスは、卵または細胞培養物のいずれかで成長され得る。インフルエンザウイルスのワクチン株は、季節から季節へと変化する。最近の大流行の間の期間において、ワクチンは、代表的に2つのインフルエンザA株(H1N1およびH3N2)および1つのインフルエンザB株を含み、3価のワクチンが代表的である。本発明はまた、H2、H5、H7またはH9サブタイプ株(特にインフルエンザA株ウイルス)のような流行株由来のウイルスを使用し得(すなわち、ワクチンの受容者および一般的ヒト集団に対する株は、免疫原性的にナイーブである)、流行株に対するインフルエンザワクチンは、1価であり得るか、または流行株により補われた通常な3価のワクチンに基づき得る。このインフルエンザウイルスは、再集合体株であり得、逆方向遺伝学技術により得られ得る。このウイルスは、弱毒化され得る。このウイルスは、温度感受性であり得る。このウイルスは、低温適応性であり得る。
【0086】
多価の組合せを作製する場合、抗原は連続して個々に組合せられ得るか、またはそれらはあらかじめ混合され、一緒に添加され得る。例えば、4価のDTP−HBsAgワクチンは、HBsAg、D、TおよびP抗原の容器への連続的な添加を含むプロセス、またはD、TおよびP抗原をあらかじめ混合し、次いでHBsAgおよびDTP混合物を合わせることにより作製され得る。
【0087】
抗原性成分は、任意の適した順番で合わせられ得る。
【0088】
ジフテリアトキソイドおよび破傷風トキソイドが本発明の組成物中に含まれる場合、これらは好ましくはHBsAgと合わせられる前にあらかじめ混合される。従って、本発明のプロセスは、HBsAgを含む第1の成分をD抗原およびT抗原の両方を含む第2の成分と合わせる工程を包含する。従って、あらかじめ混合されたD−T成分を使用することが好ましい。この2価の成分は、本発明のプロセスで使用され得る(例えば、HBsAgと合わせられ得、3価のD−T−HBV成分を作製する)。代替物として、前もって混合したD−T成分は、さらに非HBV抗原(例えば、無細胞性百日咳抗原)と合わせられ得、次いでこの成分は、HBsAgなどと合わせられ得る。
【0089】
同様に、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイドおよび全細胞百日咳抗原が組成物中に含まれる場合、これらは好ましくは前もって混合されるので、本発明の工程は、HBsAgを含む第1の成分をD抗原、T抗原およびPw抗原を含む第2の成分と合わせる工程を包含する。
【0090】
従って、あらかじめ混合されたD−T−Pw成分を使用し、そして本発明のプロセスの間この成分を使用することが好ましい。
【0091】
アジュバントが本発明の組成物中に含まれる場合、これはまた種々の段階で添加され得る。代表的には、抗原は、本発明のプロセスで使用される前にアジュバントと合わされる(例えば、二価のD−T混合物は、本発明のプロセスで使用される前にアルミニウム塩アジュバントに吸着される)が、抗原が混合された後にアジュバントを添加するか、またはアジュバントに抗原を添加することも可能である(例えば、水性アジュバントを用いて開始し、次いで個々にまたはあらかじめ混合して抗原を添加する)。以下に記載されるように、HBsAg成分は、好ましくは非HBV抗原性成分と合わせられる前にリン酸アルミニウムアジュバントに吸着される。
【0092】
(HBsAg融合タンパク質)
HBsAgを発現させるために使用されることに加え、本発明は、同じポリペプチド内にHBsAg配列および非HBsAg配列を含むハイブリッド抗原を発現させるために使用され得る。非HBsAg配列は、HBsAg配列に挿入され得るか、またはHBsAg配列のN−末端またはC−末端に融合され得る。
【0093】
HBsAg配列を異種性の抗原に融合させHBsAgの能力を利用し、粒子を組立てることが公知である。例えば、参考文献102は、サイズおよび密度の点で天然のHBsAg粒子に似ている(約25%の脂質組成および粒子あたり約100の含有量のgp120に一致する)、自発的に粒子を組立てるタンパク質を与えるHIV−1 gp120のHBsAgへの融合を報告する。このgp120は、この融合において天然の形態に折り込むことができ、その生物学的活性を維持した。同様に、HIV gp41エピトープは、HBsAgを用いて内部融合を作ることにより改善され、この融合タンパク質は、酵母において22nmのリポタンパク粒子を自己組立てした[103]。
【0094】
この手法はまた、マラリアワクチンにも使用される。参考文献104は、マラリアgp190抗原由来の61aaまでのエピトープをHBsAg配列に挿入し、発現したハイブリッド粒子は動物において抗gp190免疫応答を惹起したことを報告する。参考文献105は、HBsAgを有する融合タンパク質として発現されたスポロゾイド周囲タンパク質の4マー配列の16回の反復を有するタンパク質を報告する。参考文献106は、HBsAgに融合されたPfs16から構成されるウイルス様粒子の酵母における産生を報告する。参考文献107は、スポロゾイド周囲タンパク質がHBsAgに融合されるハイブリッド抗原を開示する。参考文献108は、20〜45nmサイズの免疫原性粒子を形成したP.vivaxのメロゾイト表面タンパク質1のC末端領域の融合を開示する。従って、自己組立ての粒子形態においてマラリア抗原を提示するためのHBsAgの使用は、当該分野において周知である。
【0095】
この手法は、特にHIV、Plasmodium falciparum、Plasmodium vivax、Plasmodium malariaeまたはPlasmodium ovale由来の抗原を有するHBsAg配列を融合するのに適している。HBsAgハイブリッドを作製するのに適したHIV抗原は、外被糖タンパク質gp120またはその抗原性フラグメントを含む[102]。HBsAgハイブリッドを作製するのに適したP.falciparum抗原は、スポロゾイド周囲表面抗原(「CSP」)のサブユニットに基づき得(例えば、そのNANPモチーフの3と20の間の繰返しを含み得る(配列番号14))、そして/またはCSPのC末端領域を含み得る(しかし、代表的にはC末端から最後の12アミノ酸を含まない)。例えば、本発明は、「RTS」として公知の抗原を使用し得、これはP.falciparumのNF54または7G8単離物由来のCSPのC末端の大部分を含み(アミノ酸210〜398であり、19個のNANP繰返しおよびアミノ酸367〜390のT細胞エピトープ領域を含む)、HBsAgのpreS2の4アミノ酸によりHBsAgのN末端に融合される。酵母で発現される場合、タンパク質に加え脂質(主にリン脂質)を含むRTSは粒子を形成する。従って、RTSの配列は、本明細書の配列番号15と同様に:(i)N末端のメチオニン残基;(ii)Met−Ala−Pro;(iii)P.falciparum 7G8由来のCSタンパク質のアミノ酸210〜398かまたはP.falciparum NF54由来のCSタンパク質のアミノ酸207〜395のいずれかに相当する189アミノ酸;(iv)ArgまたはGly;(v)B型肝炎Pre−S2タンパク質由来のPro−Val−Thr−Asn;および(vi)HBsAgを含む。7G8単離物由来の完全長RTSは、参考文献109中に配列番号1として与えられる配列を有する(参考文献110の図5も参照のこと):
【0096】
【化12】

本ハイブリッド抗原は、配列番号15をコードする配列を用いて酵母で発現され得る。酵母に正常のHBsAgと共にハイブリッドタンパク質を共発現することが好ましい。この手法は、以前にRTSを用いて使用され、この共発現の産生物を「RTS,S」という。約1:4のRTS:S比が有用である。
【0097】
従って、本発明の有用な局面は、(i)HBsAgおよび(ii)RTSを共発現させることである。これら抗原のうちの1つまたは両方は、上記のプラスミドを使用して発現され得る。共発現したタンパク質は、粒子抗原を形成し、マラリアワクチン内の活性成分として使用され得る。
【0098】
(多価ワクチンで使用するためのアジュバント)
CpG、AGPsおよびAS04を含む「最新の」アジュバントは、上に記載される。これらは、本発明の多価組成物において使用され得るが、アルミニウム塩を使用するほうが好ましい。これらは、水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウムとして公知のアジュバントを含む。これらの名前は、慣習的であるが、便宜上のみに使用され、いずれも存在している実際の化合物の正確な説明でもない[例えば、参考文献111の第9章を参照のこと]。本発明は、アジュバントとして一般的に使用される「水酸化物」または「リン酸塩」のいずれかのアジュバントを使用し得る。
【0099】
「水酸化アルミニウム」として公知のアジュバントは、代表的には、アルミニウムのオキシヒドロキシド塩であり、これらは、通常、少なくとも部分的に結晶である。式AlO(OH)によって表され得るオキシ水酸化アルミニウムは、赤外(IR)分光学によって、特に、1070cm−1における吸収帯および3090〜3100cm−1における強力なショルダーの存在によって水酸化アルミニウムAl(OH)のようなその他のアルミニウム化合物と区別され得る[参考文献111の第9章]。
【0100】
「リン酸アルミニウム」として公知のアジュバントは、代表的には、ヒドロキシリン酸アルミニウムであり、しばしば、少量の硫酸塩(すなわち、ヒドロキシリン酸硫酸アルミニウム)をまた含む。それらは沈殿によって得られ得、そして沈殿の間の反応条件および濃度は、この塩中のヒドロキシルに対するリン酸の置換の程度に影響する。ヒドロキシリン酸塩は、一般に、0.3〜1.2の間のPO/Alモル比を有する。ヒドロキシリン酸塩は、厳密なAlPOからヒドロキシル基の存在によって区別され得る。例えば、3164cm−1におけるIRスペクトルバンド(例えば、200℃に加熱した場合)は、構造的ヒドロキシルの存在を示す[参考文献111の第9章]。
【0101】
リン酸アルミニウムアジュバントのPO/Al3+モル比は、一般に0.3と1.2の間、好ましくは0.8と1.2の間、そしてより好ましくは0.95±0.1である。このリン酸アルミニウムは、一般に、特にヒドロキシリン酸塩については非晶質である。代表的なアジュバントは、0.84と0.92の間のPO/Al3+モル比を有する非晶質のヒドロキシリン酸アルミニウムであり、0.6mgAl3+/mlで含む。このリン酸アルミニウムは、一般に、粒子状である。この粒子の代表的な直径は、任意の抗原の吸着の後、0.5〜20μmの範囲(例えば、約5〜10μm)である。
【0102】
リン酸アルミニウムのPZCは、ヒドロキシルに対するリン酸の置換の程度に逆に相関し、そしてこの置換の程度は、沈殿によって塩を調製するために用いられる反応条件および反応物の濃度に依存して変動し得る。PZCはまた、溶液中の遊離のリン酸イオンの濃度を変化することによるか(より多くのリン酸=より酸性のPZC)、またはヒスチジン緩衝液(PZCをより塩基性にする)のような緩衝液を添加することにより変更される。本発明に従って使用されるリン酸アルミニウムは、一般に、4.0と7.0の間、より好ましくは5.0と6.5の間、例えば、約5.7のPZCを有する。
【0103】
本発明の組成物を調製するために用いられるリン酸アルミニウム溶液は、緩衝剤を含み得るが(例えば、リン酸塩またはヒスチジンまたはTris緩衝液)、常に必要なわけではない。このリン酸アルミニウム溶液は、好ましくは、滅菌され、そして発熱物質を含まない。このリン酸アルミニウム溶液は、遊離の水性リン酸イオンを含み得る(例えば、1.0と20mMの間、好ましくは5と15mMの間、そしてより好ましくは約10mMの濃度で存在する)。このリン酸アルミニウム溶液はまた、塩化ナトリウムを含み得る。塩化ナトリウムの濃度は、好ましくは0.1〜100mg/mlの範囲(例えば、0.5〜50mg/ml、1〜20mg/ml、2〜10mg/ml)であり、そしてより好ましくは約3±1mg/mlである。NaClの存在は、抗原の吸着前のpHの正確な測定を容易にする。
【0104】
アルミニウム塩は、HBV抗原および非HBV抗原のいずれかの吸着に使用され得る。HBsAgは、好ましくはリン酸アルミニウムアジュバントに吸着される[70]。ジフテリアトキソイドは、好ましくは水酸化アルミニウムアジュバントに吸着される。破傷風トキソイドは、好ましくは水酸化アルミニウムアジュバントに吸着されるが、これは必要ではない(例えば、0〜10%の間の破傷風トキソイドの吸着が使用され得る)。無細胞性の百日咳抗原、特に69kDの抗原は、好ましくは水酸化アルミニウムアジュバントに吸着される。結合体化Hib抗原は、リン酸アルミニウムに吸着され得る[112、113]か、または吸着され得ない。この方法でのHib吸着は、特にD−T−Pw−Hib−HBsAg抗原を含むワクチンで有用である。他の結合体化抗原(例えば、髄膜炎菌、肺炎球菌)は、同様にアルミニウム塩(リン酸塩)に吸着され得るか、吸着され得ない[114]。IPV抗原は、代表的に本発明のプロセスにおいて使用される前にいかなるアジュバントにも吸着されないが、他の成分を起源とするアルミニウムアジュバントに吸着されるようになり得る。
【0105】
HBsAg吸着に関して、リン酸アルミニウムアジュバントは、好ましくはHBsAgが添加される水溶液の形態で使用される(NB:「溶液」として水性リン酸アルミニウムをいうことが標準的であるが、厳密な物理化学的観点から、この塩は、不溶性であり、懸濁液を形成する)。リン酸アルミニウムを必要とされる濃度に希釈し、HBsAgの添加前に同種の溶液を確保することが好ましい。HBsAgの添加前のAl3+の濃度は、一般的に0mg/mlと10mg/mlの間である。好ましいAl3+濃度は、2mg/mlと6mg/mlの間である。
【0106】
本発明プロセスにおける使用に関して2つの好ましい成分は:(1)水酸化アルミニウムアジュバントを含む二価のD−T成分;および(2)水酸化アルミニウムアジュバントとリン酸アルミニウムアジュバントの両方を含む三価のD−T−Pw成分である。
【0107】
(薬学的組成物)
アジュバントおよび抗原成分に加え、本発明の組成物は、さらなる成分を含有し得る。これらの成分は、種々の供給源を有する。例えば、これらは、製造の間に使用される抗原またはアジュバント成分のうちの1つにおいて存在し得るか、または抗原性成分とは別々に添加され得る。
【0108】
本発明の好ましい組成物は、1つ以上の薬学的キャリアおよび/または賦形剤を含有する。
【0109】
張度を制御するために、生理的塩(例えば、ナトリウム塩)を含有することが好ましい。塩化ナトリウム(NaCl)が好ましく、1mg/mlと20mg/mlの間で存在し得る。
【0110】
組成物は、一般に200mOsm/kgと400mOsm/kgの間、好ましくは240〜360mOsm/kgの間の浸透圧モル濃度を有し、より好ましくは290〜300mOsm/kgの範囲内となる。浸透圧モル濃度は、ワクチン接種により引き起こされる痛みに対して影響を有しないことが以前に報告されている[115]が、この範囲に浸透圧モル濃度を維持することが、やはり好ましい。
【0111】
本発明の組成物は、1つ以上の緩衝液を含有し得る。代表的な緩衝液として:リン酸緩衝液;Tris緩衝液;ホウ酸緩衝液;コハク酸緩衝液;ヒスチジン緩衝液;またはクエン酸緩衝液が挙げられる。緩衝液は、代表的に5〜20mMの範囲で含有される。
【0112】
本発明の組成物のpHは、一般的に5.0と7.5の間、より代表的には至適安定性のため5.0と6.0の間、または6.0と7.0の間である。それ故本発明のプロセスは、包装前のバルクワクチンのpHを調整する工程を包含し得る。
【0113】
本発明の組成物は、好ましくは、滅菌である。
【0114】
本発明の組成物は、好ましくは、非発熱性である(例えば、用量あたり<1EU(エンドトキシン単位、標準測定)、そして好ましくは用量あたり<0.1EUを含む)。
【0115】
本発明の組成物は、好ましくは、グルテンを含まない。
【0116】
任意の水性の包装されたワクチン材料のpHは、好ましくは5〜8の間(例えば、5.5と6.5の間)である。
【0117】
HBsAgの吸着される性質に起因して、最終のワクチン産物は、濁った外観をもつ懸濁液であり得る。この外観は、微生物汚染が容易に見えず、そのためこのワクチンは、好ましくは抗微生物薬剤を含むことを意味する。これは、このワクチンが複数用量容器に包装される場合、特に重要である。含有物として好ましい抗微生物薬剤は、2−フェノキシエタノールおよびチメロサールである。しかし、本発明のプロセスの間に水銀の保存剤(例えば、チメロサール)を用いないことが好ましい。しかし、本発明の組成物を調製するために用いられる前に、HBsAgが、このような保存剤で処理される場合、痕跡量の存在は避けられないかも知れない。しかし、安全性のために、最終組成物が約25ng/mlより少ない水銀を含むことが好ましい。より好ましくは、この最終的なワクチン産物は、検出可能なチメロサールを含まない。これは、一般に、本発明のプロセスにおける添加の前に抗原調製物から水銀保存剤を除去するか、組成物を作製するために用いられる成分の調製の間にチメロサールの使用を避けることによって達成される。
【0118】
二価のD−T混合物が本発明のプロセス中に使用される場合、チメロサールを含まないはずである。いくつかの実施形態において、D−T混合物は、2−フェノキシエタノールを含み得るが、他の実施形態において、チメロサールと2−フェノキシエタノールの両方を含まない。3価のD−T−Pw混合物は、本発明のプロセスの間に使用される場合、2−フェノキシエタノールを含み得ないか、チメロサールを含み得る。
【0119】
製造の間に、所望の最終濃度を与えるための成分の希釈は、通常、WFI(注射用水)で実施される。
【0120】
本発明の組成物中のリン酸アルミニウムの濃度は、Al3+によって表され、好ましくは、5mg/mlより少ない(例えば、4mg/ml以下、3mg/ml以下、2mg/ml以下、1mg/ml以下など)。
【0121】
本発明の組成物中の任意の3D−MPLの濃度は、好ましくは、200μg/mlより少ない(例えば、150μg/ml以下、125μg/ml以下、110μg/ml以下、100μg/ml以下)。
【0122】
本発明の組成物中のHBsAgの濃度は、好ましくは、60μg/mlより少ない(例えば、55μg/ml以下、50μg/ml以下、45μg/ml以下、40μg/ml以下など)。約20μg/mlの濃度が代表的である。
【0123】
本発明の組成物中のジフテリアトキソイドの濃度は、代表的には少なくとも50IU/mlである。
【0124】
本発明の組成物中の破傷風トキソイドの濃度は、代表的には少なくとも100IU/mlである。
【0125】
本発明の組成物中のジフテリアトキソイドと破傷風トキソイドの比は、通常2:1と3:1の間(Lf単位で測定される)、好ましくは、2.4:1と2.6:1の間、より好ましくは2.5:1である。
【0126】
細胞性百日咳抗原が使用される場合、代表的に少なくとも8IU/mlであり;無細胞性抗原が使用される場合、代表的には用量あたり25〜75μgの間のPT、約25〜75μgの間のFHA、約10〜20μgの間のペルタクチンである。
【0127】
サッカリドとして測定される本発明組成物中のHib結合体の量は、代表的には10μg/mlと30μg/mlの間である。
【0128】
EU(Elisa単位)で測定されるHAV抗原の量は、代表的には少なくとも600EU/mlである。
【0129】
IPV抗原の量は、株の血清型に依存する。1型ウイルスに関して組成物は、代表的に約80DU/ml含有する。2型ウイルスに関して組成物は、代表的に約16DU/mlを含有する。3型ウイルスに関して組成物は、代表的に約65DU/ml含有する。
【0130】
サッカリドとして測定される本発明組成物中の髄膜炎菌結合体の量は、代表的に各々の血清群に関して5μg/mlと25μg/mlの間である。
【0131】
サッカリドとして測定される本発明組成物中の肺炎球菌結合体の量は、代表的に各々の血清群に関して2μg/mlと20μg/mlの間である。
【0132】
本発明の組成物は、好ましくは、患者に0.5ml用量で投与される。0.5ml用量に関して、通常の分散(例えば、0.5ml±0.05ml)を含むことが理解される。
【0133】
本発明は、個々の用量への包装に適したバルク材料を提供し得、次いで患者に投与するために分配され得る。上に挙げられる濃度は、最終的に包装された用量の代表的な濃度であり、そのためバルクワクチン中の濃度はより高くても良い(例えば、希釈によって最終濃度まで減少され得る)。
【0134】
本発明の組成物は、一般に、水溶液形態である。
【0135】
(本発明の組成物の包装)
HBsAgとアジュバントを合わせた後、本発明のこのプロセスは、抽出する工程および0.5ml混合物サンプルを容器に包装する工程を包含し得る。複数回投与の状況に関して、複数回投薬量が抽出され1つの容器に一緒に包装される。
【0136】
本発明のプロセスは、使用のためにワクチンを容器に包装するさらなる工程を含み得る。適した容器として、バイアルおよび使い捨てシリンジ(好ましくは滅菌されたもの)が挙げられる。
【0137】
本発明の組成物が、バイアルに包装される場合、これらは、好ましくは、ガラスまたはプラスチック材料から作製される。このバイアルは、好ましくは、上記組成物がそれに添加される前に滅菌され得る。ラテックス感受性患者にともなう問題を避けるために、バイアルは、好ましくは、ラテックスを含まないストッパーでシールされる。このバイアルは、単回用量のワクチンを含み得るか、またはそれは、2回以上の用量(「複数回用量」バイアル)例えば、10回用量を含み得る。複数回用量バイアルを用いる場合、各用量は、厳密な無菌状態下で滅菌ニードルおよびシリンジで引き出されるべきであり、バイアル内容物を汚染することを避けるよう注意をする。好ましいバイアルは、色のないガラスから作製される。
【0138】
バイアルは、あらかじめ充填されたシリンジがキャップに挿入され得るように適したキャップ(例えば、Luerロック)を有し得、シリンジの内容物は、バイアル中に排出され得(例えば、その中で凍結乾燥された物質を再構成するため)、バイアル中の内容物は、シリンジに戻され得る。バイアルからシリンジをはずした後、次いで針は患者に添えられ、組成物が投与され得る。このキャップは、好ましくは、シールまたはカバーの内側に位置され、このシールまたはカバーは、キャップが接触され得る前に取り除かれるはずである。
【0139】
上記組成物が、シリンジ中に包装される場合、このシリンジは、通常、それに取り付けられたニードルを有さないが、別個のニードルが組み立ておよび使用のためにシリンジとともに提供され得る。安全ニードルが好ましい。1−インチ23−ゲージ、1−インチ25−ゲージおよび5/8−インチ25−ゲージのニードルが代表的である。シリンジには、その上に内容物のロット番号および使用期限日がプリントされ得る剥ぎ取りラベルが提供され得、記録維持を容易にする。このシリンジ中のプランジャーは、好ましくは、ストッパーを有し、プランジャーが吸引の間に偶発的に外れることを防ぐ。これらのシリンジは、ラテックスゴムキャップおよび/またはプランジャーを有し得る。使い捨てシリンジは、単回用量のワクチンを含む。このシリンジは、一般に、先端部キャップを有し、この先端部をニードルの取り付けの前にシールし、そしてこの先端部キャップは、好ましくはブチルゴムから作製される。このシリンジとニードルとが別個に包装される場合、次いでこのニードルは、好ましくは、ブチルゴムシールドが取り付けられる。Greyブチルゴムが好ましい。好ましいシリンジは、商標名「Tip−Lok」TMの下で販売されるものである。
【0140】
ガラス容器(例えば、シリンジまたはバイアル)が用いられる場合、ソーダ石灰ガラス製のよりもホウケイ酸ガラス製の容器を用いることが好ましい。
【0141】
組成物が容器中に包装された後、この容器は、次いで、配布のための箱内、例えば、厚紙の箱の内側に囲われ得、そしてこの箱は、ワクチンの詳細、例えば、その商標名、ワクチン中の抗原のリスト(例えば、「B型肝炎組換え体」など)、容器の説明(例えば、「使い捨て予備充填Tip−Lokシリンジ」または「10×0.5ml単回用量バイアル」)、その用量(例えば、「各々1回の0.5ml用量を含む」)、警告(例えば、「成人使用のみ」または「小児使用のみ」)、使用期限日、適応症(例えば、「腎不全を有する患者(血液透析前および血液透析患者を含む)のためのすべて公知のサブタイプにより引き起こされるB型肝炎ウイルス(HBV)に対する能動性免疫、15歳より上」など)、患者番号などでラベルされる。各箱は、2つ以上の包装されたワクチン、例えば、5または10の包装されたワクチン(特にバイアルについて)を含み得る。このワクチンがシリンジ中に含まれる場合、この包装物は、シリンジの絵を示し得る。
【0142】
ワクチンは、ワクチンの詳細、例えば、投与のための指示書、ワクチン内の抗原の詳細などを含む印刷物とともに一緒に(例えば、同じ箱中に)包装され得る。これらの指示書はまた、警告、例えば、ワクチン接種の後のアナフィラキシー反応の場合、直ちに利用できるようにアドレナリンの溶液を準備しておくことなどを含み得る。
【0143】
この包装されたワクチンは、好ましくは、2℃と8℃との間で貯蔵される。それは、凍結されるべきではない。
【0144】
ワクチンは、製造の間に完全な液体形態(すなわち、すべての抗原性成分が水溶液または懸濁液である)で提供され得るか、またはいくつかの成分が液体形態であり、他の成分が凍結乾燥形態である形態で調製され得る。従って、最終的なワクチンは、混合する時点で2つの成分:(a)水性抗原を含む第1の成分;および(b)凍結乾燥された抗原を含む第2の成分を混合することにより即座に調製され得る。この2つの成分は、好ましくは別々の容器(例えば、バイアルおよび/またはシリンジ)にあり、本発明は、成分(a)および(b)を含むキットを提供する。この形式は、特に結合体成分、特にHibおよび/または髄膜炎菌結合体を含むワクチンに有用であり、なぜならこれらは凍結乾燥形態でより安定であり得るからである。従って、結合体は本発明による使用の前に凍結乾燥され得る。さらなる成分がまた、凍結乾燥の前に添加され得る(例えば、安定剤として)。含有するための好ましい安定剤は、乳糖、ショ糖およびマンニトールならびにそれらの混合物(例えば、乳糖/ショ糖混合物、ショ糖/マンニトール混合物など)である。従って、最終的なワクチンは、乳糖および/またはショ糖を含み得る。ショ糖/マンニトール混合物を使用することは、乾燥工程をスピードアップし得る。
【0145】
従って、本発明は、2つの容器の組合せワクチンを調製するプロセスを提供し、この方法は、以下の工程:
上に記載される水性の組合せワクチンを調製する工程、しかし上記1つ以上の抗原は、結合体化莢膜サッカリド抗原を含まない;
この組合せワクチンを第1の容器(例えば、シリンジ)に包装する工程;
凍結乾燥の形態で、結合体化莢膜サッカリド抗原を調製する工程;
上記凍結乾燥抗原を第2の容器(例えば、バイアル)に包装する工程;および
第1の容器および第2の容器を一緒にキット中に包装する工程
を含む。
【0146】
次いで本キットは、医師に配布され得る。
【0147】
D、T、PおよびHBsAg成分は、好ましくは液体形態である。
【0148】
(処置およびワクチンの投与の方法)
本発明の組成物は、ヒト患者への投与に適しており、そして本発明は、患者における免疫応答を惹起する方法を提供し、本発明の組成物を患者に投与する工程を包含する。
【0149】
本発明はまた、薬剤における使用のための本発明の組成物を提供する。
【0150】
本発明はまた、患者への投与のための医薬の製造における(i)本発明に従って発現されたHBsAg;および(ii)1つ以上の非HBV抗原の使用を提供する。
【0151】
この発明はまた、患者への投与のための医薬の製造における(i)本発明に従って発現されたHBsAgおよび(ii)水酸化アルミニウム以外のアジュバントの使用を提供する。この医薬は、好ましくは1価のワクチンである。このワクチンを受ける好ましい患者群は、上に挙げられる。
【0152】
本発明の免疫原性組成物は、本発明の使用および/または少なくともB型肝炎ウイルス感染の処置に関して好ましくはワクチンである。本発明の組成物を受容している患者は、好ましくは第1の免疫から6週目で測定される血清抗HBsAg GM力価が500mIU/ml以上を有する。より好ましくは、12ヶ月後に測定されたときこの力価が500mIU/ml以上である。
【0153】
十分な効力のために、小児のための代表的な免疫スケジュールは、2回以上の投薬を投与する工程を包含する。例えば、投薬が、0および6ヶ月目(時間0が第1の投薬);0、1、2および6ヶ月目;0、21日目および第3の投薬が6ヶ月と12ヶ月の間;または0、1、2、6および12ヶ月目であり得る。
【0154】
本発明の組成物は、例えば、腕または脚への筋肉内注射により投与され得る。
【0155】
本発明により産生されるワクチンは、別の肺炎球菌結合体ワクチン(例えば、PrevnarTM)と同時に患者に投与され得る。
【0156】
本発明の組成物が、アルミニウムベースのアジュバントを含む場合、成分の沈殿が貯蔵の間に生じ得る。それ故、この組成物は、患者への投与の前に振盪しなければならない。振盪された組成物は、不透明な白い懸濁液である。
【0157】
(好ましいワクチン)
本発明の特異的な多価免疫原性組成物は:
HBsAgおよびHAVを含む2価の組成物。このワクチンは、水性の形態である。水酸化アルミニウムアジュバントとリン酸アルミニウムアジュバントの両方を含む。HbsAgは、リン酸アルミニウムに吸着される。HAVは、水酸化アルミニウムに吸着される。1mlあたりの量:約720ELISA単位HAV;約20μg HBsAg。用量:約1ml。事前に充填されたシリンジに与えられ得る。
【0158】
HBsAg、D、T、PaおよびIPVを含む五価の組成物。このワクチンは水性形態である。これは、水酸化アルミニウムアジュバントとリン酸アルミニウムアジュバントの両方を含む。HBsAgは、リン酸アルミニウムに吸着される。D、TおよびPaは、水酸化アルミニウムに吸着される。1mlあたりの量:約50Lfジフテリアトキソイド;約20Lf破傷風トキソイド;約50μgPT;約50μg FHA;約16μgペルタクチン;約20μg HBsAg;約80DU 1型ポリオウイルス;約16DU 2型ポリオウイルス;約64DU 3型ポリオウイルス。用量:約0.5ml。事前に充填されたシリンジに与えられ得る。
【0159】
HBsAg、D、T、PaおよびIPVを含む五価の組成物。このワクチンは水性形態である。これは、水酸化アルミニウムアジュバントとリン酸アルミニウムアジュバントの両方を含む。HBsAgは、リン酸アルミニウムに吸着される。D、TおよびPaは、水酸化アルミニウムに吸着される。1mlあたりの量:少なくとも60IUジフテリアトキソイド;少なくとも80IU破傷風トキソイド;約50μgPT;約50μg FHA;約16μgペルタクチン;約20μg HBsAg;約80DU 1型ポリオウイルス;約16DU 2型ポリオウイルス;約64DU 3型ポリオウイルス。用量:約0.5ml。事前に充填されたシリンジに与えられ得る。
【0160】
HBsAg、D、TおよびPwを含む四価の組成物。この成分は水性形態である。これは、水酸化アルミニウムアジュバントとリン酸アルミニウムアジュバントの両方を含む。HBsAgは、リン酸アルミニウムに吸着される。DおよびTは、水酸化アルミニウムに吸着される。この組成物はチメロサールを含むが、好ましくは2−フェノキシエタノールを含まない。1mlあたりの量:少なくとも60IUジフテリアトキソイド;少なくとも120IU破傷風トキソイド;少なくとも8IU Pw;約20μg HBsAg。用量:約0.5ml。
【0161】
HBsAg、D、T、PwおよびHib−T結合体を含む五価の組成物。このHBsAg、D、TおよびPw成分は、水性形態であり;Hib−Tは凍結乾燥される。これは、水酸化アルミニウムアジュバントとリン酸アルミニウムアジュバントの両方を含む。DおよびTは、水酸化アルミニウムに吸着される。HBsAgおよびHib−Tは、リン酸アルミニウムに吸着される。凍結乾燥されたHib−Tは乳糖を含む。この水性成分は、チメロサールを含み得る。1mlあたりの量:少なくとも60IUジフテリアトキソイド;少なくとも120IU破傷風トキソイド(それに加えてHib−T中のキャリアとして5〜25μgの間の破傷風トキソイド);少なくとも8IU Pw;約20μg HBsAg;サッカリドとして測定され約5μg Hib−T。用量:約0.5ml。
【0162】
これらの組成物は、別々に使用され得るか、またはさらなるワクチンの成分として使用され得る。例えば、本発明は、上記の五価のHBsAg−D−T−Pa−IPV組成物に加え凍結乾燥されたHib−T結合体を含む六価の組成物を提供する。この凍結乾燥されたHib−Tは、好ましくは、アルミニウム塩に吸着されない。本発明はまた、上記の四価のHBsAg−D−T−Pw組成物に加え凍結乾燥されたHib−T結合体を含む五価の組成物を提供する。本発明はまた、上記の四価のHBsAg−D−T−Pw組成物に加え凍結乾燥されたHib−T結合体、MenA結合体およびMenC結合体の混合物を含む七価の組成物を提供する。最終的なワクチンは、使用時に水性HBsAg含有物質を用いて凍結乾燥された物質を再構成することにより調製され得、この凍結乾燥された成分および水性成分は、好ましくは上記のように一緒にキットに包装される。
【0163】
本発明の特異的な一価の免疫原性組成物は:
リン酸アルミニウムアジュバントおよび3D−MPLアジュバントと組み合わせたHBsAgであり、ここでHBsAgおよび3D−MPLの両方、リン酸アルミニウムに吸着される。1mlあたりの量:約20μg HBsAg、約50μg 3D−MPL、約0.5mg Al3+
【0164】
本発明の特定のプロセスとしては、以下の工程を含むプロセスが挙げられる:
本発明による発現後のHBsAgの精製;リン酸アルミニウムアジュバントにHBsAgを吸着させる;水酸化アルミニウムアジュバントを有するチメロサールを含まない二価のD−T混合物を得る;Pa成分としてPT、FHAおよびペルタクチンを得る;プールされた1型、2型および3型として、好ましくはアルミニウム塩アジュバントなしのIPV抗原を得る;任意の順番でD−T、Pa、IPVおよびHBsAgを合わせ、最終的な五価の組合せを与える;必要に応じて、シリンジに包装する。
【0165】
本発明による発現後のHBsAgの精製;リン酸アルミニウムアジュバントにHBsAgを吸着させる;水酸化アルミニウムアジュバントおよびリン酸アルミニウムアジュバントとの、2−フェノキシエタノールを含まずチメロサールを含む三価のD−T−Pw混合物を得る;D−T−PwおよびHBsAgを合わせ、最終的な四価の組合せを与え;必要に応じて、シリンジに包装する;必要に応じて凍結乾燥された結合体成分(例えば、Hib−T、MenA、MenC)と組合せて包装する。
【0166】
本発明による発現後のHBsAgの精製;リン酸アルミニウムアジュバントにHBsAgを吸着する;水酸化アルミニウムアジュバントおよびリン酸アルミニウムアジュバントとの、2−フェノキシエタノールを含ずチメロサールを含む三価のD−T−Pw混合物を得る;凍結乾燥されたHib−T結合体を得る;D−T−PwおよびHBsAgを合わせ、水性の四価の成分を与える;水性の四価の成分をガラスバイアルに包装する;凍結乾燥されたHib−Tをガラスバイアルに包装する;2つのバイアルを合わせ、再構成のための1つのキットに与えられ、五価の組合せワクチンを与える;このガラスバイアルは、I型ガラスであり、ゴムのブチルストッパーを有し得る。
【0167】
本発明による発現後のHBsAgの精製;リン酸アルミニウムアジュバントにHBsAgを吸着する;水酸化アルミニウムアジュバントおよびリン酸アルミニウムアジュバントとの、2−フェノキシエタノールを含まずチメロサールを含む三価のD−T−Pw混合物を得る;プールされた1型、2型および3型として、好ましくはアルミニウム塩アジュバントなしのIPV抗原を得る;D−T−Pw、IPVおよびHBsAgを任意の順番で合わせ、最終的な五価の組み合わせを与える;必要に応じて、シリンジに包装する;必要に応じて凍結乾燥された結合体成分(例えば、Hib−T、MenA、MenC)と組合せて包装する。
【0168】
さらなる成分は、任意の段階で加えられ得る(例えば、塩化ナトリウム、アジュバント、保存剤など)。例えば、上記のワクチンを調製するために、これらのプロセスが使用され得る。
【0169】
この異なるプロセスの工程は、実質的に同時に実施され得るか、または別々に実施され得る。これらは、同じ場所または異なる場所、異なる国でさえ実施され得る(例えば、HBsAg発現がHib−T結合体の凍結乾燥と異なる場所で実施され得る)。
【0170】
(結合体のためのキャリアタンパク質)
結合体化サッカリド抗原は、キャリアタンパク質を含み、このサッカリドは直接またはリンカーを介してのいずれかでこのキャリアタンパク質に共有結合される。結合体化技術についての一般的な情報は、参考文献116に見出され得る。
【0171】
種々のタンパク質は、キャリアとしての使用が公知であり、好ましいキャリアタンパク質は、バクテリアトキシンまたはバクテリアトキソイド(例えば、ジフテリアトキソイドまたは破傷風トキソイド)である。他の適したキャリアタンパク質としては、ジフテリアトキシンのCRM197変異体[117−119]、N.meningitidisの外膜タンパク質[120]、合成ペプチド[121、122]、熱ショックタンパク質[123、124]、百日咳タンパク質[125、126]、サイトカイン[127]、リンホカイン[127]、ホルモン[127]、成長因子[127]、種々の病原体から誘導された抗原由来の複数のヒトCD4T細胞エピトープを含む人工タンパク質[128](例えば、N19[129])、H.influenzae由来のプロテインD[130、131]、肺炎球菌の表面タンパク質PspA[132]、ニューモライシン(pneumolysin)[133]、鉄取り込みタンパク質[134]、C.difficile由来のトキシンAまたはトキシンB[135]、S.agalactiaeタンパク質[136]などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0172】
キャリアへのサッカリドの結合は、好ましくは−NH基(例えば、キャリアタンパク質中のリシン残基の側鎖、またはアルギニン残基の側鎖)を介する。−SH基への結合(例えば、システインの側鎖)がまた可能である。
【0173】
1:5(すなわち、タンパク質過剰)および5:1(すなわち、サッカリド過剰)の間のサッカリド:タンパク質比(w/w)を有する結合体が好ましい。
【0174】
組成物は、少量の遊離キャリアを含み得る。別個の抗原として含まれるあらゆるキャリアを無視する場合、結合されないキャリアは、好ましくは全体として組成物中のキャリアタンパク質の総量の5%以下であり、より好ましくは2%重量未満である。
【0175】
組成物中に1つより多い型のキャリアタンパク質を含むことは可能である(例えば、キャリア抑制の危険を減少させる)。
【0176】
N.meningitidis結合体に使用されるこのキャリアタンパク質は、H.influenzae由来のDタンパク質であり得る。このタンパク質は、参考文献137および138に詳細に記載され、結合体中キャリアタンパク質としてのその使用は参考文献139に記載される。用語「プロテインD」は、参考文献139に開示されるように天然の完全長タンパク質のフラグメント、および完全長プロテインDまたはこれらのフラグメントのいずれかを含む融合タンパク質(例えば、インフルエンザウイルスNS1タンパク質のフラグメントとプロテインDのフラグメントとの融合)を含む。これらのフラグメントは、それらに結合体化される場合、T非依存性のサッカリド抗原をT依存性の抗原に変換する能力を保持する。代表的なフラグメントは、プロテインDのN末端の少なくとも1/3を含む。このタンパク質は、都合よくE.coliに発現され得[138]、この組換え材料は、本発明での使用に好ましい[139]。
【0177】
(一般)
用語「含む(comprising)」は、「含有する(including)」および「からなる」を包含し、例えば、Xを「含む」組成物は、専らXからなり得るか、またはさらなる何かを含有し得る(例えば、X+Y)。
【0178】
用語「実質的に」は、「完全に」を排除せず、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まなくても良い。必要である場合、語「実質的に」は、本発明の定義から省略され得る。
【0179】
数値xに関する用語「約」は、例えば、x±10%を意味する。
【0180】
詳細に述べられていなければ、2つ以上の成分を混合する工程を含むプロセスは、混合の任意の特定の順序を要求しない。それ故、成分は任意の順序で混合され得る。3つの成分が存在するとき、そのときは、2つの成分が互いと組み合わされ得、そして次にこの組み合わせが、第3の成分と組み合わされ得るなどである。
【0181】
抗原がアジュバントに「吸着される」と記載される場合、少なくとも50%の抗原が吸着されることが好ましい(例えば、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%またはそれ以上)。ジフテリアトキソイドおよび破傷風トキソイドは両方とも完全に吸着されることが好ましい(すなわち、上清に検出されない)。HBsAgの完全な吸着がまた好ましい。
【0182】
イオン化可能な基は、明細書中の式に示される中性の形態で存在し得るか、または荷電した形態で存在し得る(例えば、pHに依存して)ことが理解される。従って、ホスフェート基は、−P−O−(OH)として示され得、この式は、単に代表的な中性ホスフェート基であり、他の荷電した形態は、本発明により包含される。同様に、糖環は、開いた形態または閉じた形態で存在し得、閉じた形態は、本明細書中の構造式で示されるが、開いた形態もまた、本発明により包含される。
【0183】
動物(および特にウシ)材料が細胞の培養に使用される場合、伝染性海綿状脳症(TSE)のない、および特にウシ海綿状脳症(BSE)のない供給源から取得しなければならない。
【0184】
【化13】

【実施例】
【0185】
(本発明を実施するための様式)
(プラスミドの調製)
プラスミドは、以下の順で種々の要素を含み構成される:酵母GAPDHプロモーター;HBsAgコード配列;酵母ARG3転写ターミネーターを含む領域;E.coliベクターpBR327由来のDNA;LEU2マーカーを有する酵母DNA;E.coliベクターpBR327由来のDNA;酵素2μプラスミド配列;E.coliベクターpBR327由来のDNA。pBR327配列は、E.coliにおいて機能的なoriを含む。このプラスミドは、全体で14600bpと14700bpの間の長さである。
【0186】
GAPDHプロモーター配列は、以下の1060−マーを含む(配列番号1):
【0187】
【化14】

HBsAgコード配列は、以下のとおりであり(配列番号4)、オーカー終止コドンが続く:
【0188】
【化15】

この配列は、以下の配列番号3のアミノ酸配列をもつポリペプチドをコードする:
【0189】
【化16】

このARG3配列は、以下の689−マー配列(配列番号8)を下流領域またはARG3由来の付加的な配列と一緒に含む:
【0190】
【化17】

従って、このプラスミドは、発現カセット中、以下の2430−マーを含む(配列番号13):
【0191】
【化18】

(プラスミドの要素の配列解析)
GAPDHプロモーター配列(配列番号1)は、いくつかの位置で参考文献41で開示されるGAPDHプロモーター配列(配列番号5)と異なる:
【0192】
【化19】

配列番号1を、2005年4月7日にフィルタリングなしで「すべてのGenBank+EMBL+DDBJ+PDB配列(EST、STS、GSS、環境サンプルまたは第0相、1相または2相のHTGS配列ではない)」に対して検索した。この検索において最大のヒットは、以下のように配列番号1とともに並べる:
【0193】
【化20】

従って、配列番号1は、最も近い適合の逆方向相補体に比較して、2つのヌクレオチドで異なる。
【0194】
HBsAgコード配列(配列番号4)を、同様の方法でGneBank配列に対して解析した。配列番号4は、最も近いデータベース適合(AY576426.1)とヌクレオチド350(A/G)でのみ異なる。この違いは、Ser/Asnコドン変化を生じる。
【0195】
このコードされた配列(配列番号3)を、2005年4月4日に「環境性サンプルを除く非重複性GenBank CDS 翻訳+PDB+SwissProt+PIR+PRF」データベースを使用してフィルタリングなしでBLASTPにより解析した。配列番号3は、最も近いデータベース適合とアミノ酸117で異なり、SerよりもAsnを有する。最大のヒットは、エントリーCAA84792.1(配列番号10)であった。
【0196】
【化21】

ARG3の下流配列(配列番号8)のBLASTN解析は、データーベースエントリーM28301.1と100%同一であることを明らかにするが、配列番号8のヌクレオチド7で始まる683マーしか重複しない。配列番号8の5’末端での7ヌクレオチドを含むこれら2つの配列のCLUSTALWアラインメントを、以下に与える:
【0197】
【化22】

(HBsAg発現および吸着)
このプラスミドは、S.cerevisiae酵母(DC5)のleu2−3 leu2−112 his3 can1−11株を形質変換させるために使用される。この酵母は、精製アミノ酸(ロイシンを除く)ビタミンおよび適した塩を含む合成培地で培養される。発現したHBsAgは、細胞の回収、沈降、限外濾過、ゲル浸透、イオン交換、超遠心および脱塩を包含する工程により精製される。
【0198】
精製した抗原は、グリコシル化されておらず、実質的に球状粒子の形態が見られ得る(平均直径約20nm)。
【0199】
等張化生理食塩水中のリン酸アルミニウムの懸濁液は、精製したHBsAg濃縮物と混合される。pHを5.2と6.0の間に調整後、この混合物を攪拌しながら1日、室温に放置する。アジュバントへの抗原の吸着は、このときに実施される。
【0200】
(一価のワクチン)
一価のワクチンを作製するために、3D−MPLを吸着されたHBsAgに添加し、20μg/mlの最終HBsAg濃度を与えるための希釈を、注射用水および滅菌生理食塩水を使用して得る。次いでこの大量のワクチンを、バイアルまたは使い捨てシリンジのいずれかに個々の用量で包装する。
【0201】
(多価のワクチン)
組合せワクチンを作製するために、DTPw抗原の混合物をドイツ、マールブルクのChiron Behringから得る。この混合物を吸着されたHBsAgとともに混合し、四価のワクチン製品を与える。この4価の製品は、それ自身で使用され得るか、または(a)リン酸アルミニウムアジュバントに吸着される凍結乾燥されたHib−T結合体または(b)Hib、MenAおよびMenC由来の凍結乾燥された結合体の3価の混合物のいずれかを再構成するために使用され得る。
【0202】
本発明は、例系のみによって記載され、改変は、本発明の範囲および精神の中にあるままでもなされ得る。
【0203】
【化23】

【0204】
【化24】

【0205】
【化25】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)HBsAgコード配列を有するプラスミドを保持するS.cerevisiae宿主における発現後、HBsAgを精製することによりHBV成分を調製する工程であって、ここで該プラスミドは:(1)該HBsAgコード配列の発現を制御するためのグリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ遺伝子から上流プロモーター;および(2)該HBsAgコード配列下流のARG3転写ターミネーターを含む、工程;
(b)少なくとも1つの非HBV成分を調製する工程;ならびに
(c)多価組成物を得るために該HBVおよび非HBVを混合する工程
を包含する、多価免疫原性組成物を調製するためのプロセス。
【請求項2】
(a)HBsAgコード配列を有するプラスミドを保持するS.cerevisiae宿主で発現されたHBsAgを含むHBV成分であって、該プラスミドは:(1)HBsAgコード配列の発現を制御するためのグリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ遺伝子から上流プロモーター;および(2)HBsAgコード配列下流のARG3転写ターミネーターを含む、HBV成分;
(b)少なくとも1つの非HBV成分
を含む、多価免疫原性組成物。
【請求項3】
前記組成物がまた、1つ以上のアジュバントを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記非HBV成分がジフテリアトキソイドを含む、請求項1〜3のいずれかに記載のプロセスまたは組成物。
【請求項5】
前記非HBV成分が破傷風トキソイドを含む、請求項1〜4のいずれかに記載のプロセスまたは組成物。
【請求項6】
前記非HBV成分が細胞性百日咳抗原を含む、請求項1〜5のいずれかに記載のプロセスまたは組成物。
【請求項7】
前記非HBV成分が非細胞性百日咳抗原を含む、請求項1〜5のいずれか1つに記載のプロセスまたは組成物。
【請求項8】
前記非HBV成分がA型肝炎ウイルス抗原を含む、請求項1〜7のいずれかに記載のプロセスまたは組成物。
【請求項9】
前記非HBV成分が結合体化b型Haemophilus influenzae莢膜サッカリドを含む、請求項1〜8のいずれかに記載のプロセスまたは組成物。
【請求項10】
前記非HBV成分が不活化ポリオウイルスを含む、請求項1〜9のいずれかに記載のプロセスまたは組成物。
【請求項11】
前記非HBV成分が血清群Cの結合体化Neisseria meningitidis莢膜サッカリドを含む、請求項1〜10のいずれかに記載のプロセスまたは組成物。
【請求項12】
前記非HBV成分が血清群Aの結合体化Neisseria meningitidis莢膜サッカリドを含む、請求項1〜11のいずれかに記載のプロセスまたは組成物。
【請求項13】
前記非HBV成分が血清群W135の結合体化Neisseria meningitidis莢膜サッカリドを含む、請求項1〜12のいずれかに記載のプロセスまたは組成物。
【請求項14】
前記非HBV成分が血清群Yの結合体化Neisseria meningitidis莢膜サッカリドを含む、請求項1〜13のいずれかに記載のプロセスまたは組成物。
【請求項15】
前記組成物が二価のHBV−HAV組成物である、請求項1〜14のいずれかに記載のプロセスまたは組成物。
【請求項16】
前記組成物が二価のHBV−Hib組成物である、請求項1〜15のいずれかに記載のプロセスまたは組成物。
【請求項17】
前記組成物が三価のHBV−D−T組成物である、請求項1〜16のいずれかに記載のプロセスまたは組成物。
【請求項18】
前記組成物が四価のHBV−D−T−Pa組成物である、請求項1〜17のいずれかに記載のプロセスまたは組成物。
【請求項19】
前記組成物が四価のHBV−D−T−Pw組成物である、請求項1〜18のいずれかに記載のプロセスまたは組成物。
【請求項20】
前記組成物が四価のHBV−HAV組成物である、請求項1〜19のいずれかに記載のプロセスまたは組成物。
【請求項21】
前記組成物が五価のHBV−D−T−Pa−IPV組成物である、請求項1〜20のいずれかに記載のプロセスまたは組成物。
【請求項22】
前記組成物が五価のHBV−D−T−Pw−Hib組成物である、請求項1〜21のいずれかに記載のプロセスまたは組成物。
【請求項23】
前記組成物が五価のHBV−D−T−Pa−Hib組成物である、請求項1〜22のいずれかに記載のプロセスまたは組成物。
【請求項24】
前記組成物が六価のHBV−D−T−Pa−Hib−IPV組成物である、請求項1〜23のいずれかに記載のプロセスまたは組成物。
【請求項25】
前記組成物が七価のHBV−D−T−Pw−Hib−MenA−MenC組成物である、請求項1〜24のいずれかに記載のプロセスまたは組成物。
【請求項26】
前記組成物が七価のHBV−D−T−Pa−Hib−IPV−MenC組成物である、請求項1〜25のいずれかに記載のプロセスまたは組成物。
【請求項27】
前記組成物が水酸化アルミニウムアジュバントおよびリン酸アルミニウムアジュバントの両方を含む、請求項1〜26のいずれかに記載のプロセスまたは組成物。
【請求項28】
前記HBsAgがポリソルベート20を含む、請求項1〜27のいずれかに記載のプロセスまたは組成物。
【請求項29】
前記HBsAgがホスファチジルイノシトールを含む、請求項1〜28のいずれかに記載のプロセスまたは組成物。
【請求項30】
(a)HBsAgコード配列を有するプラスミドを保持するS.cerevisiae宿主において発現後、HBsAgを精製することによりHBV成分を調製する工程であって、ここで該プラスミドは:(1)HBsAgコード配列の発現を制御するためのグリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ遺伝子の上流プロモーター;および(2)HBsAgコード配列下流のARG3転写ターミネーターを含む、工程;
(b)免疫原性組成物を得るためにHBsAgをアジュバントと合わせる工程であって、ただし、ここで該アジュバントは水酸化アルミニウムアジュバントではない、工程
を包含する、一価の免疫原性組成物を調製するためのプロセス。
【請求項31】
(a)HBsAgコード配列を有するプラスミドを保持するS.cerevisiae宿主において発現後、HBsAgを精製することによりHBV成分を調製する工程であって、ここで該プラスミドは:(1)HBsAgコード配列の発現を制御するためのグリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ遺伝子から上流プロモーター;および(2)HBsAgコード配列下流のARG3転写ターミネーターを含む、工程;
(b)免疫原性組成物を得るためにHBsAgをアジュバントと合わせる工程であって、ただし、ここで該アジュバントはアルミニウム塩のみから構成されない、工程
を包含する、一価の免疫原性組成物を調製するためのプロセス。
【請求項32】
(a)HBsAgコード配列を有するプラスミドを保持するS.cerevisiae宿主で発現されるHBsAgを含むHBV成分であって、ここで該プラスミドは:(1)HBsAgコード配列の発現を制御するためのグリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ遺伝子から上流プロモーター;および(2)HBsAgコード配列下流のARG3転写ターミネーターを含む、HBV成分;ならびに
(b)水酸化アルミニウムではないアジュバント
を含む、一価の免疫原性組成物。
【請求項33】
(a)HBsAgコード配列を有するプラスミドを保持するS.cerevisiae宿主で発現されるHBsAgを含むHBV成分であって、ここで該プラスミドは:(1)該HBsAgコード配列の発現を制御するためのグリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ遺伝子から上流プロモーター;および(2)該HBsAgコード配列下流のARG3転写ターミネーターを含む、HBV成分;ならびに
(b)アルミニウム塩のみから構成されないアジュバント
を含む、一価の免疫原性組成物。
【請求項34】
前記アジュバントがリン酸アルミニウムアジュバントおよび3D−MPLアジュバントの混合物を含む、請求項30または31に記載のプロセスあるいは請求項32または請求項3に記載の組成物。
【請求項35】
前記3D−MPLおよびHBsAgの両方が前記リン酸アルミニウムに吸着される、請求項34に記載のプロセスまたは組成物。
【請求項36】
前記HBsAgがポリソルベート20を含む、請求項30〜35のいずれか1つに記載のプロセスまたは組成物。
【請求項37】
前記HBsAgがホスファチジルイノシトールを含む請求項30〜36のいずれか1つに記載のプロセスまたは組成物。
【請求項38】
前記組成物が血液透析患者または血液透析前の患者において使用するためである、請求項30〜37のいずれかに記載のプロセスまたは組成物。
【請求項39】
前記プラスミドはまた:(3)LEU2選択マーカー;(4)2μプラスミド配列;および(5)Escherichia coliにおいて機能的な複製起点;
を含む、請求項1〜38のいずれかに記載のプロセスまたは組成物。
【請求項40】
前記S.cerevisiae宿主はロイシンの栄養要求株であるが、前記プラスミドLEU2マーカーはロイシン供給源の非存在下において該宿主を成長させる、請求項39に記載のプロセスまたは組成物。
【請求項41】
前記上流プロモーターが、配列番号1のヌクレオチド配列を含む、請求項1〜40のいずれかに記載のプロセスまたは組成物。
【請求項42】
配列番号1の直後にHBsAgの開始コドンが続く、請求項41に記載のプロセスまたは組成物。
【請求項43】
前記HBsAgが、配列番号3のアミノ酸配列を有する、請求項1〜42のいずれかに記載のプロセスまたは組成物。
【請求項44】
HBsAgが、配列番号4のヌクレオチド配列により前記プラスミド中にコードされる、請求項1〜43のいずれかに記載のプロセスまたは組成物。
【請求項45】
配列番号4の直後にオーカー終止コドンが続く、請求項44に記載のプロセスまたは組成物。
【請求項46】
前記ARG3ターミネーターが配列番号8のヌクレオチド配列を含む請求項1〜45のいずれかに記載のプロセスまたは組成物。
【請求項47】
配列番号8が前記HBsAgコード配列の終止コドンのすぐ下流である、請求項46に記載のプロセスまたは組成物。
【請求項48】
前記組成物が、200mOsm/kgと400mOsm/kgの間の浸透圧モル濃度を有する、請求項1〜47のいずれかに記載のプロセスまたは組成物。
【請求項49】
請求項1〜48に記載の組成物を患者に投与する工程を包含する、患者において免疫応答を惹起するための方法。
【請求項50】
患者に投与するための医薬の製造において(i)HBsAgコード配列を有するプラスミドを保持するS.cerevisiae宿主で発現されるHBsAgであって、ここで該プラスミドは:(1)HBsAgコード配列の発現を制御するためのグリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ遺伝子から上流プロモーター;および(2)HBsAgコード配列下流のARG3転写ターミネーターを含む、HBsAg;ならびに(ii)1つ以上の非HBV抗原の、使用。
【請求項51】
患者に投与するための医薬の製造において(i)HBsAgコード配列を有するプラスミドを保持するS.cerevisiae宿主で発現されるHBsAgであって、ここで該プラスミドは:(1)HBsAgコード配列の発現を制御するためのグリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ遺伝子から上流プロモーター;および(2)HBsAgコード配列下流のARG3転写ターミネーターを含む、HBsAg;ならびに(ii)水酸化アルミニウム以外のアジュバントの、使用。
【請求項52】
(1)配列番号3のアミノ酸配列をコードするHBsAgコード配列;(2)該HBsAgコード配列の上流かつ該HBsAgコード配列の発現を制御するためのグリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ遺伝子由来のプロモーターであって配列番号1のアミノ酸配列を含む、プロモーター;および
(3)該HBsAgコード配列下流のARG3転写ターミネーターであって配列番号8を含む、ターミネーター
を含むプラスミド。
【請求項53】
14500と15000の間の塩基対を有する、請求項52に記載のプラスミド。
【請求項54】
請求項52または請求項53のプラスミドを保持する酵母。

【公表番号】特表2008−536515(P2008−536515A)
【公表日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−507760(P2008−507760)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/014240
【国際公開番号】WO2006/113528
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(506361100)ノバルティス ヴァクシンズ アンド ダイアグノスティクス, インコーポレイテッド (44)
【Fターム(参考)】