説明

ワクチンアジュバントの組み合わせ

水中油型エマルジョン、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、およびポリカチオン性ポリマーを含む免疫学的アジュバントであって、ここで上記オリゴヌクレオチドおよび上記ポリマーは、理想的には、互いに会合して、複合体を形成する、免疫学的アジュバント。上記アジュバントは、ワクチンを調製するために、免疫原と合わせられ得る。上記オリゴヌクレオチドおよびポリマーの複合体は吸着性である。上記吸着性複合体の平均直径は上記エマルジョン中の油滴の平均直径より大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2008年9月18日に出願された米国仮出願第61/192,577号からの優先権を主張し、上記米国仮出願の全容は、参照によって本明細書に援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、ワクチンアジュバントおよびそれらの組み合わせの分野にある。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)
水中油型エマルジョンは、ワクチンアジュバントとしての使用について公知であり、FLUADTM製品は、水中スクアレン型「MF59」アジュバントを含む。本発明の目的は、改変および改善されたエマルジョンアジュバントを提供することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の開示)
本発明は、水中油型エマルジョン、免疫刺激性オリゴヌクレオチドおよびポリカチオン性ポリマーを含む免疫学的アジュバントを提供する。上記オリゴヌクレオチドおよび上記ポリマーは、理想的には、互いに会合して、複合体を形成する。
【0005】
本発明はまた、本発明の免疫学的アジュバントを調製するためのプロセスを提供し、上記プロセスは、水中油型エマルジョンと、免疫刺激性オリゴヌクレオチドおよびポリカチオン性ポリマーの複合体とを混合する工程を包含する。
【0006】
本発明はまた、(i)本発明のアジュバント、および(ii)免疫原を含む免疫原性組成物を提供する。
【0007】
本発明はまた、(i)本発明のアジュバント、および(ii)免疫原を混合する工程を包含する、免疫原性組成物を調製するためのプロセスを提供する。
【0008】
上記免疫原、エマルジョン、オリゴヌクレオチドおよびポリマーは、任意の順序で混合され得る。例えば、本発明は、本発明の免疫原性組成物を調製するためのプロセスを提供し、上記プロセスは、(i)水中油型エマルジョン、および(ii)免疫原を混合する工程;ならびにその後、上記エマルジョン/免疫原混合物と、免疫刺激性オリゴヌクレオチドおよびポリカチオン性ポリマーとを混合する工程を包含する。
【0009】
本発明はまた、本発明の免疫原性組成物を調製するためのプロセスを提供し、上記プロセスは、(i)免疫刺激性オリゴヌクレオチドおよびポリカチオン性ポリマー(代表的には、複合体の形態にある)と、(ii)免疫原とを混合する工程;ならびにその後、上記オリゴヌクレオチド/ポリマー/免疫原複合体と、水中油型エマルジョンとを混合する工程を包含する。
【0010】
本発明はまた、(i)本発明のアジュバントを含む第1の容器;および(ii)免疫原および/もしくはさらなるアジュバントを含む第2の容器を含むキットを提供する。本発明はまた、(i)水中油型エマルジョンを含む第1の容器;ならびに(ii)免疫刺激性オリゴヌクレオチドおよびポリカチオン性ポリマーを含む第2の容器を含むキットを提供する。上記第1の容器および第2の容器のうちの一方もしくは両方は、免疫原を含み得る。従って、上記2つの容器の内容物は、(例えば、使用の時点で)組み合わされて、本発明のアジュバントもしくは免疫原性組成物を形成し得る。これらキットは、免疫原および/もしくはさらなるアジュバントを含む第3の容器を含み得る。
【0011】
本発明はまた、水中油型エマルジョンおよび吸着性粒状アジュバントを含む免疫学的アジュバントを提供し、ここで上記吸着性粒状アジュバントにおける粒子の平均直径および上記エマルジョン中の油滴の平均直径はともに、250nm未満(例えば、≦220nm、≦200nm、≦190nm、≦180nm、≦150nm、≦120nm、≦100nmなど)である。上記粒状アジュバントが、ある直径の範囲を有する粒子を有する場合、これら直径は、油滴粒径と重なり合わない可能性がある(すなわち、最大の油滴は、最小のアジュバント粒子より小さいか、または最大のアジュバント粒子は、最小の油滴より小さい)。しかし、他の実施形態において、上記サイズ分布は、重なり合い得る。いくつかの実施形態において、上記アジュバント粒子の平均直径は、上記油滴の平均直径と実質的に同じであってもよいし、これら2つの直径は、例えば、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%などだけ異なっていてもよい。
【0012】
本発明はまた、水中油型エマルジョンおよび吸着性粒状アジュバントを含む免疫学的アジュバントを提供し、ここで上記吸着性粒状アジュバントにおける粒子の平均直径は、上記エマルジョン中の油滴の平均直径より大きい。上記吸着性粒状アジュバントは、理想的には、(i)不溶性アルミニウム塩もしくはカルシウム塩も、(ii)ポリマー微粒子も含まず、むしろ、好ましくは、(iii)免疫刺激性オリゴヌクレオチドおよびポリカチオン性ポリマーの複合体を含む。水中油型エマルジョンとこのような複合体との混合は、上記複合体の分析された平均直径を低減するために本明細書で示される。
【0013】
本発明はまた、(i)水中油型エマルジョンおよび吸着性粒状アジュバントを含む免疫学的アジュバント;ならびに(ii)免疫原を含む免疫原性組成物を提供する。上記のように、上記吸着性粒状アジュバントは、理想的には、不溶性アルミニウム塩もカルシウム塩も、ポリマー微粒子も含まず、好ましくは、免疫刺激性オリゴヌクレオチドおよびポリカチオン性ポリマーの複合体である。代表的には、上記免疫原は、上記吸着性粒状アジュバントに少なくとも部分的に吸着される。
【0014】
本発明はまた、水中油型エマルジョンおよび免疫刺激性オリゴヌクレオチドを含む免疫学的アジュバントを提供し、ここで上記免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、少なくとも1種のCpIモチーフ(イノシンに結合したシトシンを含むジヌクレオチド配列)を含む。上記オリゴデオキシヌクレオチドは、1種より多い(例えば、2種、3種、4種、5種、6種以上)CpIモチーフを含み得、これらは、直接反復され得る(例えば、配列(CI)を含み、ここでxは、2、3、4、5、6以上である)か、または互いに分離され得る(例えば、配列(CIN)を含み、ここでxは、2、3、4、5、6以上であり、各Nは、1種以上のヌクレオチドを独立して表す)。上記オリゴヌクレオチド中のシトシン残基は、理想的には、メチル化されていない。本発明はまた、この免疫学的アジュバントを調製するためのプロセスを提供し、上記プロセスは、水中油型エマルジョンと、CpI含有免疫刺激性オリゴヌクレオチドとを混合する工程を包含する。本発明はまた、(i)このアジュバント、および(ii)免疫原を含む免疫原性組成物を提供する。本発明はまた、免疫原性組成物を調製するためのプロセスを提供し、上記プロセスは、(i)このアジュバント、および(ii)免疫原を混合する工程を含む。本発明はまた、本発明の免疫原性組成物を調製するためのプロセスを提供し、上記プロセスは、(i)水中油型エマルジョンおよび(ii)免疫原を混合する工程;ならびにその後、上記エマルジョン/免疫原混合物と、CpI含有免疫刺激性オリゴヌクレオチドとを混合する工程を包含する。
【0015】
本発明はまた、本発明の免疫原性組成物を調製するためのプロセスを提供し、上記プロセスは、(i)CpI含有免疫刺激性オリゴヌクレオチドおよび(ii)免疫原を混合する工程;ならびにその後、上記オリゴヌクレオチド/免疫原混合物と、水中油型エマルジョンとを混合する工程を包含する。
【0016】
(水中油型エマルジョン)
本明細書で使用される水中油型エマルジョンは、代表的には、少なくとも1種の油および少なくとも1種の界面活性剤を含み、上記油および界面活性剤は、生分解性(代謝可能)および生体適合性である。
【0017】
上記エマルジョン中の油滴は、一般に、5μm直径未満であり、理想的には、サブミクロンの直径を有し、これら小さなサイズは、マイクロフルイダイザー(microfluidiser)で達成され、安定なエマルジョンを提供する。220nm未満のサイズを有する液滴は、濾過滅菌に供され得るので、好ましい。いくつかの有用なエマルジョンにおいて、上記油滴のうちの少なくとも80%(数で)は、500nm未満の直径を有する。
【0018】
上記エマルジョンは、油(例えば、動物(例えば、魚類)もしくは植物源に由来するもの)を含み得る。植物油供給源としては、堅果、種子および穀類が挙げられる。ラッカセイ油、大豆油、ココナツ油、およびオリーブ油(最も一般的に市販されている)は、上記堅果油の例である。ホホバ油が使用され得、例えば、ホホバ豆から得られ得る。種子油としては、サフラワー油、ココナツシード油、ヒマワリ油、ごま油などが挙げられる。穀類グループにおいて、コーン油は、最も容易に入手可能であるが、他の穀物(cereal grain)の油(例えば、小麦、オート麦、ライ麦、コメ、テフ、ライ小麦など)もまた、使用され得る。グリセロールおよび1,2−プロパンジオールの6〜10個の炭素の脂肪酸エステルは、種子油中には天然に存在しないが、堅果油および種子油から生じる適切な物質の加水分解、分離およびエステル化によって、調製され得る。哺乳動物の乳汁に由来する脂肪および油は、代謝可能であり、従って、本発明の実施において使用され得る。分離、精製、鹸化および動物供給源から純粋な油を得るために必要な他の手段のための手順は、当該分野で周知である。大部分の魚類は、容易に回収され得る代謝可能な油を含む。例えば、タラ肝油、サメ肝油、および鯨油(例えば、鯨ろう)は、本明細書で使用され得る魚油のうちのいくつかの例である。多くの分枝鎖の油は、5個の炭素のイソプレンユニットにおいて生化学的に合成され、一般に、テルペノイドといわれる。サメ肝油は、スクアレン(2,6,10,15,19,23−ヘキサメチル−2,6,10,14,18,22−テトラコサヘキサエン)として公知の分枝状の不飽和テルペノイドを含む。スクアラン(スクアレンの飽和アナログ)も、使用され得る。魚油(スクアレンおよびスクアランが挙げられる)は、商業的供給源から容易に入手可能であるか、または当該分野で公知の方法によって得られ得る。スクアレンが好ましい。
【0019】
他の有用な油は、トコフェロールであり、トコフェロールは、有利なことには、年配の被験体(例えば、60歳以上)において使用するためのワクチン中に含まれる。なぜなら、ビタミンEは、この被験体群において免疫応答に対して陽性の効果を有することが報告されたからである。トコフェロールはまた、エマルジョンの安定化の一助となり得る抗酸化特性を有する。種々のトコフェロールが存在する(α、β、γ、δ、εもしくは)が、αが通常使用される。好ましいα−トコフェロールは、DL−α−トコフェロールである。α−トコフェロールスクシネートは、インフルエンザワクチンと適合性であり、水銀化合物の代替として有用な保存剤であることが公知である。
【0020】
油の混合物が使用され得る(例えば、スクアレンおよびα−トコフェロール)。
【0021】
2〜20%(容積で)の範囲の油含有量が、代表的である。
【0022】
界面活性剤は、それらの「HLB」(親水性/親油性バランス)によって分類され得る。本発明で有用ないくつかの界面活性剤は、少なくとも10、例えば、少なくとも15もしくは少なくとも16のHLBを有する。本発明は、以下が挙げられるが、これらに限定されない界面活性剤とともに使用され得る:ポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤((一般に、Tweenといわれる)特にポリソルベート20およびポリソルベート80);エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、および/もしくはブチレンオキシド(BO)のコポリマー(DOWFAXTM商品名の下で市販される)(例えば、直鎖状EO/POブロックコポリマー);オクトキシノール(これは、反復するエトキシ(オキシ−1,2−エタンジイル)基の数が変化し得る)(オクトキシノール−9(Triton X−100、もしくはt−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)は、特に重要である);(オクチルフェノキシ)ポリエトキシエタノール(IGEPAL CA−630/NP−40);リン脂質(例えば、ホスファチジルコリン(レシチン));ノニルフェノールエトキシレート(例えば、TergitolTM NPシリーズ);ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコールおよびオレイルアルコールに由来するポリオキシエチレン脂肪エーテル(Brij界面活性剤として公知)、例えば、トリエチレングリコールモノラウリルエーテル(Brij 30);ならびにソルビタンエステル(一般には、SPANとして公知)、例えば、ソルビタントリオレエート(Span 85)およびソルビタンモノラウレート。非イオン性界面活性剤が、好ましい。上記エマルジョン中に含めるための最も好ましい界面活性剤は、ポリソルベート80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート;Tween 80)である。
【0023】
界面活性剤の混合物が、使用され得る(例えば、Tween 80/Span 85の混合物)。ポリオキシエチレンソルビタンエステルとオクトキシノールとの組み合わせもまた、適切である。別の有用な組み合わせは、ラウレス9と、ポリオキシエチレンソルビタンエステルおよび/もしくはオクトキシノールとを含む。
【0024】
界面活性剤の有用な量(重量%)は、ポリオキシエチレンソルビタンエスエル(例えば、Tween 80) 0.01〜1%(特に、約0.1%);オクチルもしくはノニルフェノキシポリオキシエタノール(例えば、Triton X−100、もしくはTritonシリーズの他の界面活性剤) 0.001〜0.1%(特に、0.005〜0.02%);ポリオキシエチレンエーテル(例えば、ラウレス9) 0.1〜20%(例えば、0.1〜10%および特に、0.1〜1%もしくは約0.5%)である。
【0025】
スクアレン含有エマルジョンが好ましく、特に、ポリソルベート80を含むものが好ましい。
【0026】
本発明で有用な特定の水中油型エマルジョンアジュバントとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
・スクアレン、ポリソルベート80、およびソルビタントリオレエートのサブミクロンエマルジョン。上記エマルジョンの容積での組成は、約5% スクアレン、約0.5% ポリソルベート80および約0.5% Span 85であり得る。重量では、これら比は、4.3% スクアレン、0.5% ポリソルベート80および0.48% Span 85になる。このアジュバントは、引用文献4の第10章および引用文献5の第12章により詳細に記載されるように、「MF59」として公知である[1〜3]。上記MF59エマルジョンは、有利なことには、クエン酸イオン(例えば、10mM クエン酸ナトリウム緩衝液)を含む。
【0028】
・スクアレン、トコフェロール、およびポリソルベート80のサブミクロンエマルジョン。これらエマルジョンは、2〜10% スクアレン、2〜10% トコフェロールおよび0.3〜3% ポリソルベート80を有し得、スクアレン:トコフェロールの重量比は、好ましくは、≦1(例えば、0.90)である。なぜなら、これは、より安定なエマルジョンを提供し得るからである。スクアレンおよびポリソルベート80は、約5:2の容積比もしくは約11:5の重量比で存在し得る。1種のこのようなエマルジョンは、Tween 80をPBS中に溶解して、2%溶液を与え、次いで、この溶液90mlと、(5gのDL−α−トコフェロールおよび5ml スクアレン)の混合物とを混合し、次いで、上記混合物をマイクロフルイダイズする(microfluidise)ことによって、作製され得る。得られたエマルジョンは、例えば、100〜250nmの間、好ましくは、約180nmの平均直径を有するサブミクロン油滴を有する。上記エマルジョンはまた、3−de−O−アシル化モノホスホリルリピドA(3d−MPL)を含み得る。このタイプの別の有用なエマルジョンは、ヒトの用量あたり、0.5〜10mg スクアレン、0.5〜11mg トコフェロール、および0.1〜4mg ポリソルベート80を含み得る[6]。
【0029】
・スクアレン、トコフェロール、およびTriton界面活性剤(例えば、Triton X−100)のエマルジョン。上記エマルジョンはまた、3d−MPL(上記を参照のこと)を含み得る。上記エマルジョンは、リン酸緩衝液を含み得る。
【0030】
・ポリソルベート(例えば、ポリソルベート80)、Triton界面活性剤(例えば、Triton X−100)およびトコフェロール(例えば、α−トコフェロールスクシネート)を含むエマルジョン。上記エマルジョンは、約75:11:10(例えば、750μg/ml ポリソルベート80、110μg/ml Triton X−100および100μg/ml α−トコフェロールスクシネート)の質量比でこれら3種の成分を含み得、これら濃度は、抗原由来のこれら成分の何らかの寄与を含むはずである。上記エマルジョンはまた、スクアレンを含み得る。上記エマルジョンはまた、3d−MPLを含み得る。その水相は、リン酸緩衝液を含み得る。
【0031】
・スクアラン、ポリソルベート80およびポロキサマー401(「PluronicTM L121」)のエマルジョン。上記エマルジョンは、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)中に処方され得る。このエマルジョンは、ムラミルジペプチドの有用な送達ビヒクルであり、「SAF−1」アジュバント中でトレオニル−MDPとともに使用されてきた[7](0.05〜1% Thr−MDP、5% スクアラン、2.5% Pluronic L121および0.2% ポリソルベート80)。このエマルジョンはまた、「AF」アジュバントでのように[8](5% スクアラン、1.25% Pluronic L121および0.2% ポリソルベート80)、上記Thr−MDPなしでも使用され得る。マイクロフルイダイゼーションは好ましい。
【0032】
・スクアレン、水性溶媒、ポリオキシエチレンアルキルエーテル親水性非イオン性界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレン(12)セトステアリルエーテル)および疎水性非イオン性界面活性剤(例えば、ソルビタンエステルもしくはマンニドエステル(mannide ester)(例えば、ソルビタンモノオレエート(monoleate)もしくは「Span 80」))を含むエマルジョン。上記エマルジョンは、好ましくは、熱可逆性であり、そして/または上記油滴のうちの少なくとも90%(容積で)が、200nm未満のサイズを有する[9]。上記エマルジョンはまた、アルジトール;凍結保護剤(例えば、糖(例えば、ドデシルマルトシドおよび/もしくはスクロース));および/またはアルキルポリグリコシドのうちの1種以上を含み得る。上記エマルジョンは、TLR4アゴニストを含み得る[10]。このようなエマルジョンは、凍結乾燥され得る。
【0033】
・スクアレン、ポロキサマー105およびAbil−Careのエマルジョン[11]。アジュバント添加ワクチン中のこれら成分の最終濃度(重量)は、5% スクアレン、4% ポロキサマー105(プルロニックポリオール)および2% Abil−Care 85(ビス−PEG/PPG−16/16 PEG/PPG−16/16ジメチコン;トリカプリルグリセリド/トリカプリン酸グリセリル)である。
【0034】
・0.5〜50%の油、0.1〜10%のリン脂質、および0.05〜5%の非イオン性界面活性剤を有するエマルジョン。参考文献12に記載されるように、好ましいリン脂質成分は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、スフィンゴミエリンおよびカルジオリピンである。サブミクロン液滴サイズが有利である。
【0035】
・非代謝性の油(例えば、軽油)および少なくとも1種の界面活性剤(例えば、レシチン、Tween 80もしくはSpan 80)のサブミクロン水中油型エマルジョン。添加剤が含まれ得る(例えば、QuilAサポニン、コレステロール、サポニン−親油性結合体(例えば、参考文献13に記載され、グルクロン酸のカルボキシル基を介して、脂肪族アミンを、デスアシルサポニン(desacylsaponin)に添加することにより生成されるGPI−0100)、ジメチル(dimethyi)ジオクタデシルアンモニウムブロミドおよび/もしくはN,N−ジオクタデシル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)プロパンジアミン)。
【0036】
・サポニン(例えば、QuilAもしくはQS21)およびステロール(例えば、コレステロール)が螺旋状ミセルとして会合されるエマルジョン[14]。
【0037】
・ミネラルオイル、非イオン性親油性エトキシル化脂肪アルコール、および非イオン性親水性界面活性剤(例えば、エトキシル化脂肪アルコールおよび/もしくはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー)を含むエマルジョン15。
【0038】
・ミネラルオイル、非イオン性親水性エトキシル化脂肪アルコール、および非イオン性親油性界面活性剤(例えば、エトキシル化脂肪アルコールおよび/もしくはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー)を含むエマルジョン[15]。
【0039】
上記のように、スクアレンを含む水中油型エマルジョンは、特に好ましい。いくつかの実施形態において、ワクチン用量における上記スクアレンの濃度は、5〜15mgの範囲(すなわち、0.5ml用量容積と仮定すると、濃度10〜30mg/ml)にあり得る。しかし、例えば、<5mg/用量、またはさらに<1.1mg/用量を含むように、スクアレンの濃度を低下させることは可能である[16,17]。例えば、ヒトの用量は、9.75mg スクアレン/用量(FLUADTM製品における場合:0.5ml用量容積中、9.75mg スクアレン、1.175mg ポリソルベート80、1.175mg ソルビタントリオレエート)を含み得るか、またはその分数量(例えば、3/4、2/3、1/2、2/5、1/3、1/4、1/5、1/6、1/7、1/8、1/9、もしくは1/10)を含み得る。例えば、組成物は、4.875 スクアレン/用量(従って、ポリソルベート80およびソルビタントリオレエートは各々0.588mg)、3.25mg スクアレン/用量、2.438mg/用量、1.95mg/用量、0.975mg/用量などを含み得る。上記FLUADTM−ストレングス(strength)MF59のこれら分数希釈のいずれかは、8.3:1:1(質量で)のスクアレン:ポリソルベート−80:ソルビタン−トリオレエート比率を維持しながら、本発明とともに使用され得る。
【0040】
(免疫刺激性オリゴヌクレオチドおよびポリカチオン性ポリマー)
本発明は、免疫刺激性オリゴヌクレオチドおよびポリカチオン性ポリマーを使用する。これらは、理想的には、互いに会合されて、粒状複合体を形成し、この複合体は、有用なことには、TLR9アゴニストである。
【0041】
免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、有用なアジュバントとして公知である。それらはしばしば、CpGモチーフ(グアノシンに結合した非メチル化シトシンを含むジヌクレオチド配列)を含み、それらのアジュバント効果は、参考文献18〜23において議論されている。TpGモチーフ、パリンドローム配列、複数の保存的チミジンヌクレオチド(例えば、TTTT)、複数の保存的シトシンヌクレオチド(例えば、CCCC)もしくはポリ(dG)配列を含むオリゴヌクレオチドもまた、二本鎖RNAとして存在するので、公知の免疫刺激剤である。これら種々の免疫刺激性オリゴヌクレオチドのうちのいずれかが本発明とともに使用され得るが、デオキシイノシンおよび/もしくはデオキシウリジンを含むオリゴデオキシヌクレオチド、ならびに理想的には、デオキシイノシンおよびデオキシシトシンを含むオリゴデオキシヌクレオチドを使用することが、好ましい。イノシン含有オリゴデオキシヌクレオチドは、CpIモチーフ(イノシンに結合されたシトシンを含むジヌクレオチド配列)を含み得る。上記オリゴデオキシヌクレオチドは、1つより多い(例えば、2個、3個、4個、5個、6個以上)CpIモチーフを含み得、これらは、直接反復されてもよいし(例えば、配列(CI)を含み、ここでxは、2、3、4、5、6以上である)、互いに分離していてもよい(例えば、配列(CIN)を含み、ここでxは、2、3、4、5、6以上であり、各Nは、独立して、1個以上のヌクレオチドを表す)。シトシン残基は、理想的には、メチル化されていない。
【0042】
上記オリゴヌクレオチドは、代表的には、10〜100ヌクレオチド、例えば、15〜50ヌクレオチド、20〜30ヌクレオチド、もしくは25〜28ヌクレオチドを有する。上記オリゴヌクレオチドは、代表的には、一本鎖である。
【0043】
上記オリゴヌクレオチドは、もっぱら天然のヌクレオチドを含み得るか、もっぱら非天然のヌクレオチドを含み得るか、またはその両方の混合物を含み得る。例えば、上記ヌクレオチドは、1個以上のホスホロチオエート結合を含み得、および/もしくは1個以上のヌクレオチドは、2’−O−メチル修飾を有し得る。
【0044】
本発明での使用に好ましいオリゴヌクレオチドは、26−mer配列 5’−(IC)13−3’(配列番号1)を含む一本鎖デオキシヌクレオチドである。このオリゴデオキシヌクレオチドは、ポリカチオン性ポリマーと安定な複合体を形成して、良好なアジュバントを与える。
【0045】
上記ポリカチオン性ポリマーは、理想的には、ポリカチオン性ペプチドである。上記ポリマーは、1個以上のロイシンアミノ酸残基および/もしくは1個以上のリジンアミノ酸残基を含み得る。上記ポリマーは、1個以上のアルギニンアミノ酸残基を含み得る。上記ポリマーは、これらアミノ酸のうちの1つの、少なくとも1個の直接反復(例えば、1個以上のLeu−Leuジペプチド配列、1個以上のLys−Lysジペプチド配列、もしくは1個以上のArg−Argジペプチド配列)を含み得る。上記ポリマーは、少なくとも1個(および好ましくは、複数の(例えば、2個もしくは3個))のLys−Leuジペプチド配列および/もしくは少なくとも1個(および好ましくは、複数の(例えば、2個もしくは3個))のLys-Leu−Lysトリペプチド配列を含み得る。
【0046】
上記ペプチドは、配列R−XZXZXZX−R(ここで:xは、3、4、5、6もしくは7であり;各Xは、独立して、正に荷電した天然のアミノ酸残基および/もしくは天然でないアミノ酸残基であり;各Zは、独立して、アミノ酸残基L、V、I、FもしくはWであり;そしてRおよびRは、独立して、−H、−NH、−COCH、もしくは−COHからなる群より選択される)を含み得る。いくつかの実施形態において、X−Rは、上記ペプチドのC末端アミノ酸残基のアミド、エステルもしくはチオエステルであり得る。
【0047】
ポリカチオン性ペプチドは、代表的には、5〜50個のアミノ酸(例えば、6〜20個のアミノ酸、7〜15個のアミノ酸、もしくは9〜12個のアミノ酸)を有する。
【0048】
ペプチドは、もっぱら天然のアミノ酸、もっぱら非天然のアミノ酸、もしくはその両方の混合物を含み得る。上記ペプチドは、L−アミノ酸および/もしくはD−アミノ酸を含み得る。L−アミノ酸が代表的である。
【0049】
ペプチドは、天然のN末端(NH−)もしくは改変N末端(例えば、ヒドロキシル、アセチルなど)を有し得る。ペプチドは、天然のC末端(−COOH)もしくは改変C末端(例えば、ヒドロキシル、アセチルなど)を有し得る。このような改変は、上記ペプチドの安定性を改善し得る。
【0050】
本発明で使用するのに好ましいペプチドは、11−merのKLKLLLLLKLK(配列番号2)(全てL−アミノ酸)である。そのN末端は、脱アミノ化され得、そしてC末端は、ヒドロキシル化され得る。好ましいペプチドは、H−KLKLKLK−OH(全てL−アミノ酸)である。このオリゴペプチドは、公知の抗菌剤[24]であり、好中球アクチベーター[25]であり、アジュバント[26]であり、免疫刺激性オリゴヌクレオチドと安定な複合体を形成して、良好なアジュバントを与える。
【0051】
免疫刺激性オリゴヌクレオチドおよびポリカチオン性ポリマーの最も好ましい混合物は、IC31TMとして公知のTLR9アゴニストであり[27〜29]、これは、オリゴデオキシヌクレオチド(配列番号1)およびポリカチオン性オリゴペプチド(配列番号2)の吸着性複合体である。
【0052】
上記オリゴヌクレオチドおよびオリゴペプチドは、種々の比で一緒に混合され得るが、一般に、モル過剰で上記ペプチドと混合される。上記モル過剰は、少なくとも5:1(例えば、10:1、15:1、20:1、25:1、30;1、35:1、40:1など)であり得る。約25:1のモル比が理想的である[30,31]。この過剰な比での混合は、オリゴヌクレオチドとオリゴペプチドとの間の不溶性粒状複合体の形成を生じ得る。上記複合体は、水中油型エマルジョンと合わせられ得る。
【0053】
上記オリゴヌクレオチドおよびオリゴペプチドは、代表的には、水性条件下で混合され、例えば、上記オリゴヌクレオチドの溶液は、所望の比で上記オリゴペプチドの溶液と混合され得る。上記2つの溶液は、乾燥した(例えば、凍結乾燥した)物質を、水もしくは緩衝液中に溶解して、ストック溶液(これは、次いで、混合され得る)を形成することによって調製され得る。
【0054】
上記複合体は、参考文献32で開示される方法を使用して分析され得る。それらは、理想的には、上記エマルジョン中の油滴の平均直径より大きい平均直径を有する。1μm〜20μmの範囲の平均直径を有する複合体が、使用され得る。いくつかの実施形態において、上記エマルジョンのサイズ分布と上記複合体のサイズ分布との間に重なり合いはなく、すなわち、エマルジョン中の最大の液滴は、最小の複合体より小さい(もしくは最大の複合体は、最小の液滴より小さい)。しかし、他の実施形態において、液滴直径および複合体直径の範囲は、重なり合ってもよい。
【0055】
ポリアルギニンおよびCpGオリゴデオキシヌクレオチドは、同様に、複合体を形成する[33]。
【0056】
上記複合体は、水性懸濁物において(例えば、水中もしくは緩衝液中)維持され得る。上記複合体とともに使用するための代表的な緩衝液は、リン酸緩衝液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、トリス緩衝液、トリス/ソルビトール緩衝液、ホウ酸緩衝液、コハク酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液などである。代替として、複合体は、ときおり、凍結乾燥され得る。
【0057】
水性懸濁物中の複合体は、バルク媒体からそれらを(例えば、吸引、デカントなどによって)分離するために、遠心分離され得る。次いで、これら複合体は、代替の媒体(例えば、水中油型エマルジョン)中で再懸濁され得る。
【0058】
(エマルジョン、オリゴヌクレオチドおよびポリマーの混合)
本発明のアジュバント組成物は、通常、水中油型エマルジョンと、オリゴヌクレオチド/ポリマー複合体とを混合することによって調製される。上記エマルジョンは液体であり、上記複合体は、代表的には、液体形態で維持され、よって、本発明のアジュバントは、2つの液体を混合することによって形成され得る。いくつかの実施形態において、上記液体のうちの一方もしくは両方は、上記混合が本発明の免疫原性組成物を提供するように、免疫原を含む。他の実施形態においては、何れの液体も免疫複合体を含まない。よって、上記混合生成物(すなわち、本発明のアジュバント組成物)は、後に免疫原と合わせられて、本発明の免疫原性組成物を提供し得る。
【0059】
2つの液体が混合される場合、混合の容積比は、変動し得る(例えば、20:1〜1:20の間、10:1〜1:10の間、5:1〜1:5の間、2:1〜1:2の間など)が、理想的には、約1:1である。上記2つの液体中の成分の濃度は、所望の最終濃度が混合の後に達成されるように選択され得る(例えば、1:1混合が所望の最終濃度を提供するように、両方とも2×強度で調製され得る)。
【0060】
他の実施形態において、上記複合体は、液体形態ではなく(例えば、それらは、遠心分離されたかもしくは凍結乾燥された)、そしてそれらは、エマルジョンと合わせられ(例えば、エマルジョン中に溶解され)得る。
【0061】
オリゴヌクレオチドおよびポリカチオン性ポリマーの種々の濃度が使用され得る(例えば、参考文献27、30、もしくは31において、または参考文献34において使用される濃度のうちのいずれか)。例えば、ポリカチオン性オリゴペプチドは、1100μM、1000μM、350μM、220μM、200μM、110μM、100μM、11μM、10μM、1μM、500nM、50nMなどで存在し得る。オリゴヌクレオチドは、44nM、40nM、20nM、14nM、4.4nM、4nMなどで存在し得る。2000nM未満のポリカチオン性オリゴペプチド濃度が、代表的である。配列番号1および配列番号2については、1:25のモル比で混合され、本発明の3つの実施形態における濃度(mg/mL単位)は、よって、0.311および1.322、または0.109および0.463、または0.031および0.132であり得る。
【0062】
水中スクアレン型エマルジョンと、IC31の水性調製物との1:1容積比での混合は、1mlあたり以下の成分の最終量を有する組成物を与えるために使用され得る:スクアレン,4.9mg;ポリソルベート80,588μg;カチオン性オリゴペプチド,500nmolもしくは50nmol;オリゴヌクレオチド,20nmolもしくは2nmol。
【0063】
(薬学的組成物)
本発明のアジュバント組成物は、通常、上記エマルジョン、オリゴヌクレオチドおよびポリマーに加えて、成分を含み、例えば、本発明のアジュバント組成物は、代表的には、1種以上の薬学的に受容可能な成分を含む。このような成分はまた、本発明の免疫原性組成物中に存在し得、上記アジュバント組成物もしくは別の組成物のいずれかに由来する。このような成分の詳細な議論は、参考文献35で入手される。
【0064】
組成物は、チメロサール(thiomersal)もしくは2−フェノキシエタノールのような保存剤を含み得る。好ましくは、ワクチンは、水銀物質を実質的に含まない(例えば、<10μg/ml)べきである(例えば、チメロサール非含有)。水銀を含まないワクチンは、より好ましい。保存剤非含有ワクチンは、特に好ましい。α−トコフェロールスクシネートは、インフルエンザワクチン中に、水銀化合物の代替として含まれ得る。
【0065】
張度を制御するために、組成物は、生理学的塩(例えば、ナトリウム塩)を含み得る。塩化ナトリウム(NaCl)が好ましく、塩化ナトリウムは、1〜20mg/mlの間で存在し得る。存在し得る他の塩としては、塩化カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二ナトリウム、および/もしくは塩化マグネシウムなどが挙げられる。
【0066】
組成物は、200mOsm/kg〜400mOsm/kgの間(例えば、240〜360mOsm/kgの間)の、場合によっては、280〜330mOsm/kgもしくは290〜310mOsm/kgの範囲内の重量オスモル濃度を有し得る。
【0067】
組成物のpHは、一般に、5.0〜8.1の間、より代表的には、6.0〜8.0の間(例えば、6.5〜7.5の間、または7.0〜7.8の間)である。
【0068】
組成物は、好ましくは、無菌である。組成物は、好ましくは、非発熱性である(例えば、1用量あたり<1 EU(エンドトキシン単位、標準尺度)、好ましくは、<0.1 EU/用量を含む)。組成物は、好ましくは、グルテン非含有である。
【0069】
免疫原性組成物は、1回の免疫処置のための物質を含んでいてもよいし、複数回の免疫処置のための物質を含んでいてもよい(すなわち、「複数用量」キット)。保存剤を含めることは、複数用量の準備において有用である。複数用量組成物中に保存剤を含める代替として(もしくはそれに加えて)、上記組成物は、物質の取り出しのための無菌アダプタを有する容器中に含まれ得る。
【0070】
組成物は、一般に、投与の時点で水性形態である。ワクチンは、代表的には、約0.5mlの投与容積で投与されるが、半用量(すなわち、約0.25ml)が、例えば小児に、ときおり投与され得る。本発明のいくつかの実施形態において、組成物は、より高い用量(例えば、約1ml)で、例えば、2つの0.5ml容積を混合した後に、投与され得る。
【0071】
(免疫原)
本発明のアジュバント組成物は、免疫応答を誘導するために、免疫原と組み合わせて動物に投与され得る。本発明は、広範な疾患を処置するためもしくはそれらから防御するために、広範な免疫原とともに使用され得る。上記免疫原は、ウイルス性疾患(例えば、エンベロープに包まれたウイルスもしくはエンベロープに包まれていないウイルスに起因する)、細菌性疾患(例えば、グラム陰性細菌もしくはグラム陽性細菌に起因する)、真菌性疾患、寄生生物性疾患、自己免疫疾患、または任意の他の疾患から防御する免疫応答を惹起し得る。上記免疫原はまた、免疫療法において、例えば、腫瘍/がん、アルツハイマー病、もしくは嗜癖を処置するために有用であり得る。
【0072】
上記免疫原は、種々の形態(例えば、完全な生物、外膜小胞、タンパク質、サッカリド、リポサッカリド、結合体(例えば、キャリアおよびハプテンの、またはキャリアおよびサッカリドもしくはリポサッカリドの)など)をとり得る。
【0073】
上記免疫原は、インフルエンザウイルス(インフルエンザAウイルスおよびインフルエンザBウイルスを含む)に対する免疫応答を惹起し得る。水中油型エマルジョンアジュバント(特に、スクアレンを含むもの)の存在は、季節性インフルエンザワクチン[36]および汎発流行性インフルエンザワクチン[37,38]の免疫応答の株交叉反応性を増強することが示された。インフルエンザウイルス免疫原の種々の形態が、現在入手可能であり、代表的には、生ウイルスもしくは不活性化ウイルスのいずれかに基づく。不活化ワクチンは、完全ビリオン、スプリットビリオン、もしくは精製表面抗原に基づき得る。インフルエンザ抗原はまた、ビロゾーム(virosome)の形態で示され得る。赤血球凝集素は、現在の不活化ワクチンにおいて主要な免疫原であり、ワクチン用量は、HAレベルを参照して標準化され、代表的には、SRIDによって測定される。既存のワクチンは、代表的には、約15μgのHA/株を含むが、より低い用量が、例えば、小児のために、もしくは汎発流行の状況において、またはアジュバントを使用する場合に、使用され得る。分数用量(例えば、1/2(すなわち、7.5μg HA/株)、1/4および1/8)が使用されてきており、同様に、より高い用量(例えば、3×もしくは9×用量[39,40])も使用されてきた。従って、組成物は、0.1〜150μgの間のHA/インフルエンザ株、好ましくは、0.1〜50μgの間(例えば、0.1〜20μg、0.1〜15μg、0.1〜10μg、0.1〜7.5μg、0.5〜5μgなど)を含み得る。特定の用量は、例えば、約45/株、約30/株、約15/株、約10/株、約7.5/株、約5/株、約3.8/株、約1.9/株、約1.5/株などを含む。例えば、各株についての上記HA質量が、平均HA質量/株の10%以内、好ましくは、平均の5%以内となるように上記ワクチン中に含まれる各株について実質的に同じ質量のHAを含めることは通常のことである。生ワクチンについては、投与は、HA含有量ではなく、組織培養感染量中央値(median tissue culture infectious dose)(TCID50)によって測定され、1株あたり10〜10の間(好ましくは、106.5〜107.5の間)のTCID50が代表的である。ウイルス増殖の基質としてSPF卵を使用するのではなく(鶏卵の感染した尿膜腔液からウイルスが採取される)、インフルエンザウイルスの複製を支える細胞株が、使用され得る。上記細胞株は、代表的には、哺乳動物起源である(例えば、MDCK)。インフルエンザAウイルス免疫原は、任意の適切なHAサブタイプ株(例えば、H1、H3、H5、H7、H9など)に由来し得る(例えば、H1N1、H3N2および/もしくはH5N1株)。
【0074】
上記免疫原は、カンジダ真菌(例えば、C.albicans)に対する免疫応答を惹起し得る。例えば、上記免疫原は、β−グルカン(これは、キャリアタンパク質に結合体化され得る)であり得る。上記グルカンは、β−1,3および/もしくはβ−1,6結合を含み得る。適切な免疫原としては、参考文献41および42に開示されるものが挙げられる。
【0075】
上記免疫原は、Streptococcus細菌(S.agalactiae、S.pneumoniaeおよびS.pyogenesが挙げられる)に対する免疫応答を惹起し得る。例えば、上記免疫原は、莢膜サッカリド(これは、キャリアタンパク質に結合体化され得る)であり得る。S.agalactiaeについては、上記サッカリドは、血清型Ia、Ib、II、III、および/もしくはVのうちの1つ以上に由来し得る。S.pneumoniaeについては、上記サッカリドは、血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19F、および/もしくは23Fのうちの1つ以上に由来し得る。莢膜サッカリド免疫原に加えて(もしくはその代わりに)、ポリペプチド免疫原が、防御的抗連鎖球菌免疫応答を惹起するために使用され得る。
【0076】
上記免疫原は、髄膜炎菌(N.meningitidis)に対する免疫応答を惹起し得る。例えば、上記免疫原は、莢膜サッカリド(これは、キャリアタンパク質に結合体化され得る)であり得る。莢膜サッカリドおよびそれらの結合体は、髄膜炎菌血清型A、C、W135および/もしくはYから防御するために特に有用である。莢膜サッカリド免疫原に加えて(もしくはその代わりに)、ポリペプチド免疫原および/もしくは外膜小胞が、防御的抗髄膜炎菌免疫応答を惹起するために、例えば、参考文献43に開示されるように、特に、血清型Bに対して使用するために、使用され得る。
【0077】
上記免疫原は、肝炎ウイルス(例えば、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルスおよび/もしくはC型肝炎ウイルス)に対する免疫応答を惹起し得る。例えば、上記免疫原は、B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)であり得る。
【0078】
上記免疫原は、RSウイルスに対する免疫応答を惹起し得る。免疫原は、グループA RSVおよび/もしくはグループB RSVに由来し得る。適切な免疫原は、例えば、参考文献44および45で開示されるように、Fおよび/もしくはG糖タンパク質またはそのフラグメントを含み得る。
【0079】
上記免疫原は、クラミジア細菌(C.trachomatisおよびC.pneumoniaeが挙げられる)に対する免疫応答を惹起し得る。適切な免疫原としては、参考文献46〜52で開示されるものが挙げられる。
【0080】
上記免疫原は、Escherichia coli細菌(腸管外病原性株を含む)に対する免疫応答を惹起し得る。適切な免疫原としては、参考文献53〜55で開示されるものが挙げられる。
【0081】
上記免疫原は、コロナウイルス(例えば、ヒトSARSコロナウイルス)に対する免疫応答を惹起し得る。適切な免疫原は、スパイク糖タンパク質を含み得る。
【0082】
上記免疫原は、Helicobacter pylori細菌に対する免疫応答を惹起し得る。適切な免疫原としては、CagA[56〜59]、VacA[60,61]、および/もしくはNAP[62〜64]が挙げられる。
【0083】
上記免疫原は、狂犬病ウイルスに対する免疫応答を惹起し得る。適切な免疫原は、不活性化狂犬病ウイルスである[65,RabAvertTM]。
【0084】
上記免疫原は、ヒトパピローマウイルスに対する免疫応答を惹起し得る。有用な免疫原は、L1キャプシドタンパク質(これは、ウイルス様粒子(VLP)として公知の構造を形成するようにアセンブルし得る)である。上記VLPは、酵母細胞(例えば、S.cerevisiae)においてもしくは昆虫細胞(例えば、Spodoptera細胞(例えば、S.frugiperda)もしくはDrosophila細胞)において、L1の組換え発現によって生成され得る。酵母細胞については、プラスミドベクターが上記L1遺伝子を有し得;昆虫細胞については、バキュロウイルスベクターが上記L1遺伝子を有し得る。より好ましくは、上記組成物は、HPV−16株およびHPV−18株の両方に由来するL1 VLPを含む。この二価組み合わせは、非常に効率的であることが示された[66]。HPV−16株およびHPV−18株に加えて、HPV−6株およびHPV−11株に由来するL1 VLPを含めることも可能である。
【0085】
上記免疫原は、腫瘍抗原(例えば、MAGE−1、MAGE−2、MAGE−3(MAGE−A3)、MART−1/Melan A、チロシナーゼ、gp100、TRP−2など)に対する免疫応答を惹起し得る。上記免疫原は、肺がん、黒色腫、乳がん、前立腺がんなどに対する免疫療法的応答を惹起し得る。
【0086】
上記免疫原は、キャリアタンパク質に結合体化されたハプテンに対する免疫応答を惹起し得る(上記ハプテンは、乱用薬物である[67])。例としては、アヘン剤、マリファナ、アンフェタミン、コカイン、バルビツレート、グルテチミド、メチプリロン、抱水クローラル、メタクワロン、ベンゾジアゼピン、LSD、ニコチン、抗コリン作用性薬物、抗精神病薬、トリプタミン、他の精神作用薬、鎮静薬、フェンシクリジン、プシロシビン(psilocybine)、揮発性ニトレート、ならびに身体的および/もしくは精神的依存性を誘導する他の薬物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
種々の他の免疫原が使用され得る。
【0088】
免疫原性組成物が、免疫刺激性オリゴヌクレオチドおよびポリカチオン性ポリマーの複合体を含む場合、免疫原は、通常、上記複合体に吸着されるが、これは、必要ではない。従って、抗原は、遠心分離後に、上記複合体と会合され得る(このことは、吸着を示す)。免疫原が、複合体に「少なくとも部分的に吸着される」と記載される場合、上記組成物中のその免疫原の総量のうちの少なくとも10%(重量で)が、例えば、>20%、>30%、>40%以上が吸着されることが好ましい。免疫原が、複合体に「吸着される」と記載される場合、上記組成物中のその免疫原の総量のうちの少なくとも50%(重量で)が、例えば、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%以上が吸着されることが好ましい。いくつかの実施形態において、免疫原は、完全に吸着される。すなわち、遠心分離して、バルク液体媒体から複合体を分離した後に、上清中で検出不可である。しかし、他の実施形態において、吸着は認められない。
【0089】
(組成物もしくはキット成分のパッケージング)
本発明のアジュバント組成物、免疫原性組成物およびキット成分に適切な容器としては、バイアル、シリンジ(例えば、使い捨てシリンジ)などが挙げられる。これら容器は、滅菌であるべきである。上記容器は、(例えば、同じボックス中で)キットを形成するために一緒にパッケージされ得る。
【0090】
成分がバイアル中に配置される場合、上記バイアルは、ガラス物質もしくはプラスチック物質から作製され得る。上記バイアルは、好ましくは、上記組成物が上記バイアルに添加される前に、滅菌される。ラテックス感受性被験体に伴う問題を回避するために、バイアルは、好ましくは、ラテックス非含有ストッパーでシールされ、全てのパッケージング物質中にラテックスが存在しないことが好ましい。上記バイアルは、ワクチンの単一用量を含んでいてもよいし、1用量より多い用量(「複数用量」バイアル)、例えば、10用量を含み得る。有用なバイアルは、無色ガラスから作製される。ホウケイ酸ガラスは、ソーダ石灰ガラスより好ましい。バイアルは、ブチルゴムから作製されるストッパーを有し得る。
【0091】
バイアルは、シリンジがキャップに挿入され得るように適合されたキャップ(例えば、ルアーロック)を有し得る。バイアルキャップは、シールもしくはカバーの内部に配置され得る。その結果、上記シールもしくはカバーは、上記キャップに到達し得る前に除去されなければならない。バイアルは、特に、複数用量バイアルについては、その内容物の無菌的取り出しを可能にするキャップを有し得る。
【0092】
成分がシリンジにパッケージされる場合、上記シリンジは、これに取り付けられるニードルを有し得る。ニードルが取り付けられていない場合、別個のニードルが、組み立ておよび使用のために、上記シリンジと共に供給され得る。このようなニードルは、鞘に入れられ得る。シリンジにおけるプランジャーは、上記プランジャーが吸引の間に偶発的に除去されてしまわないように、ストッパーを有し得る。上記シリンジは、ラテックスゴムキャップおよび/もしくはプランジャーを有し得る。使い捨てシリンジは、単一用量のワクチンを含む。上記シリンジは、一般に、ニードルの取り付け前に、先端をシールするために先端キャップを有し、上記先端キャップは、ブチルゴムから作製され得る。上記シリンジおよびニードルが別個にパッケージされる場合、上記ニードルは、好ましくは、ブチルゴムシールドと適合させられる。有用なシリンジは、商品名「Tip−Lok」TMの下で市販されるものである。
【0093】
容器は、例えば、小児への送達を容易にするために、半用量容積を示すために印が付けられ得る。例えば、0.5ml用量を含むシリンジは、0.25ml容積を示す印を有し得る。
【0094】
被験体投与のために必要とされるよりも多くの材料を含むことは、複数成分の製品において通常である。その結果、完全な最終用量容積が、物質移動における任意の非効率にも拘わらず、得られる。従って、個々の容器は、例えば、5〜20容積%の過剰分(overfill)を含み得る。
【0095】
(処置方法および免疫原性組成物の投与)
本発明の組成物は、ヒト被験体への投与に適しており、本発明は、被験体における免疫応答を惹起するための方法を提供し、上記方法は、本発明の免疫原性組成物を上記被験体に投与する工程を包含する。
【0096】
本発明はまた、被験体における免疫応答を惹起するための方法を提供し、上記方法は、本発明のキットの容器(もしくはシリンジのチャンバ)の内容物を混合する工程、および上記混合した内容物を上記被験体に投与する工程を包含する。
【0097】
本発明はまた、例えば、被験体における免疫応答を惹起することにおいて使用するために、医薬として使用するための本発明の組成物もしくはキットを提供する。
【0098】
本発明はまた、被験体における免疫応答を惹起するための医薬の製造における、水中油型エマルジョン、免疫刺激性オリゴヌクレオチドおよびポリカチオン性ポリマーの使用を提供する。この医薬は、免疫原との組み合わせにおいて投与され得る。
【0099】
本発明はまた、被験体における免疫応答を惹起するための医薬の製造における、水中油型エマルジョン、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、ポリカチオン性ポリマーおよび免疫原の使用を提供する。
【0100】
これら方法および使用は、一般に、抗体応答、好ましくは、防御的抗体応答を引き起こすために使用される。
【0101】
本発明の組成物は、種々の方法において投与され得る。通常の免疫経路は、(例えば、腕もしくは脚への)筋肉内注射によるものであるが、他の利用可能な経路としては、皮下注射、鼻内経路、経口経路、口内経路、舌下経路、皮内経路、経皮的(transcutaneous)経路、経皮的(transdermal)経路などが挙げられる。
【0102】
本発明に従って調製される免疫原性組成物は、小児および成人両方を処置するためにワクチンとして使用され得る。被験体は、1歳未満、1〜5歳、5〜15歳、15〜55歳、または少なくとも55歳であり得る。上記ワクチンを受容するのに好ましい被験体は、高齢者(例えば、≧50歳、≧60歳、および好ましくは、≧65歳)、若年者(例えば、≦5歳)、入院した被験体、ヘルスケア労働者、軍関係者および従軍者、妊娠女性、慢性疾患患者、免疫不全被験体、外国へ旅行するヒトなどである。IC31TMは、乳児集団において有効であることが示された[34,68]。しかし、上記ワクチンは、これらグループに対してのみ適切であるわけではなく、集団においてより一般に、使用され得る。
【0103】
処置は、単一用量スケジュールもしくは複数用量スケジュールによるものであり得る。複数用量は、初期刺激免疫スケジュールにおいておよび/もしくはブースター免疫スケジュールにおいて使用され得る。複数用量スケジュールにおいて、種々の用量が、同じ経路もしくは異なる経路(例えば、初期刺激は非経口およびブースターは粘膜、初期刺激は粘膜およびブースターは非経口、など)によって与えられ得る。1より多い用量(代表的には、2用量)の投与は、免疫学的にナイーブな被験体において特に有用である。複数用量は、代表的には、少なくとも1週間間隔を空けて(例えば、約2週間、約3週間、約4週間、約6週間、約8週間、約12週間、約16週間など)投与される。
【0104】
(一般)
用語「含む(comprising)」は、「含む(including)」および「からなる(consisting)」を含み、例えば、Xを「含む」組成物は、もっぱらXからなってもよいし、さらなる何かを含んでいてもよい(例えば、X+Y)。
【0105】
語句「実質的に」は、「完全に」を排除しない。例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、完全にYを含まなくてもよい。必要であれば、語句「実質的に」は、本発明の定義から省略され得る。
【0106】
数値xに関する用語「約」とは、任意であり、例えば、x±10%を意味する。
【0107】
別段示されなければ、2種以上の成分を混合する工程を包含するプロセスは、いかなる特定の混合する順序も必要としない。従って、成分は、任意の順序で混合され得る。3つの成分が存在する場合、2つの成分が、互いに合わされ得、次いで、その組み合わせが、第3の成分と合わせられ得るなど。
【0108】
動物(および特にウシ)の物質が、細胞培養において使用される場合、それら物質は、伝染性海綿状脳症(TSE)を含まない、特に、ウシ海綿状脳症(BSE)を含まない供給源から得られるべきである。全体として、動物由来物質が完全に存在しない状態で細胞を培養することが好ましい。
【0109】
化合物が、組成物の一部として身体に投与される場合、その化合物は、代わりに、適切なプロドラッグによって置換され得る。
【0110】
細胞基質が、再集合もしくは逆遺伝学手順のために、またはウイルス増殖のために使用される場合、それは、好ましくは、例えば、Ph Eur general chapter 5.2.3におけるように、ヒトワクチン生成における使用のために承認されたものである。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】図1は、IC31およびMF59の混合物における粒子直径を示す。y軸は、体積(%)を示し、x軸は、粒子直径(μm)を示す。
【図2】図2〜5は、(2)時間0;(3)30分;(4)6時間;および(5)24時間でのアジュバント添加H5N1抗原についての同じ分析を示す。
【図3】図2〜5は、(2)時間0;(3)30分;(4)6時間;および(5)24時間でのアジュバント添加H5N1抗原についての同じ分析を示す。
【図4】図2〜5は、(2)時間0;(3)30分;(4)6時間;および(5)24時間でのアジュバント添加H5N1抗原についての同じ分析を示す。
【図5】図2〜5は、(2)時間0;(3)30分;(4)6時間;および(5)24時間でのアジュバント添加H5N1抗原についての同じ分析を示す。
【図6】図6は、IC31単独でアジュバント添加したH5N1抗原についての同じ分析を示す。
【図7】図7および図8は、注射の3日前から注射後5日までの経時的な体温(℃)を示す。
【図8】図7および図8は、注射の3日前から注射後5日までの経時的な体温(℃)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0112】
(発明を実施するための様式)
(アジュバント)
水中スクアレン型エマルジョン(MF59)を、参考文献4の第10章で開示されるように調製した。IC31を、参考文献31で開示されるように、高濃度および低濃度(10倍差)で調製した。アジュバント組み合わせを、MF59と、IC31highもしくはIC31lowとを、1:1容積比もしくは5:1容積比のいずれかで混合することによって作製した。3つの個々のアジュバント(MF59、IC31high、IC31low)、および2つの混合物(MF59+IC31high、MF59+IC31low)を、種々の免疫原と合わせ、それらの効力を評価するために、種々の哺乳動物に投与した。
【0113】
さらに、IC31highおよびIC31lowを、MF59アジュバント添加インフルエンザワクチン(FLUADTM)と、1:1容積比で混合した。ヒト被験体については、上記混合を、免疫する直前に行った(「ベッドサイドミックス」)。
【0114】
(インフルエンザウイルス)
IC31highもしくはIC31lowのいずれかをFLUADTMに添加した後、上記インフルエンザ抗原は、上記IC31複合体と迅速に会合(吸着)する。室温において、IC31highの添加の30分以内に、上記抗原のうちの少なくとも98%が、上記IC31粒子に吸着する。96%吸着は、室温においてIC31lowを添加した2時間後に認められた。より低い温度(4℃)で24時間にわたって、97%(IC31high)吸着もしくは91%(IC31low)吸着が認められた。重量オスモル濃度およびpHは、IC31highおよびIC31lowの両方について、室温において24時間にわたって実質的に一定のままであった。このことは、上記組み合わせが安定であることを示す。上記エマルジョンの粒径および上記IC31複合体の粒径は、混合後、維持される。
【0115】
インフルエンザ抗原に、MF59(FLUADTM)、IC31(IC31highもしくはIC31lowのいずれか)、またはMF59+IC31の組み合わせ(等量の水性IC31と混合した50μL FLUADTM;両方のアジュバントは、2×強度で混合されて、希釈後に最終1×を与える)のいずれかをアジュバント添加した。種々の組成物の2用量をマウスに投与し、HI力価を評価した。単一のサンプルに基づき、インフルエンザAウイルスのH1N1株に対する第2の用量後の力価は、以下のとおりであった。
【0116】
【表1】

3つの株全てについてプールされたサンプルを調べると、HI力価は、以下のとおりであった。
【0117】
【表2】

従って、MF59およびIC31の組み合わせは、特に、インフルエンザAウイルスについて、いずれのアジュバント単独よりHI力価を増強し得る。
【0118】
CD4+ T細胞を評価して、上記アジュバントが、Th1タイプの応答を惹起したかもしくはTh2タイプの応答を惹起したかを決定した。MF59が、Th2タイプ応答に偏った応答を与えたのに対して、IC31は、Th1タイプ応答に偏った(しかし、MF59ほど偏ってはいない)応答を(両方の用量で)与えた。上記組み合わせたアジュバントは、Th1タイプ応答とTh2タイプ応答との間のバランスをより保った。
【0119】
IC31の、FLUADTMへの添加は、HI力価に対して大きな影響を有しないが、上記免疫応答のバランスをシフトさせる。
【0120】
(C型肝炎ウイルス)
C型肝炎ウイルスE1E2タンパク質を、マウスを免疫するために使用した。MF59+IC31を使用して達成した抗体応答は、MF59単独での応答と類似であったが、3用量後のCD81結合の最高の阻害を、MF59+IC31lowで認めた。
【0121】
(ExPEC)
腸管外病原性E.coli株に由来する抗原124に、ミョウバン、IC31、MF59もしくはIC31+MF59をアジュバント添加した。防御率は、以下のとおりであった。
【0122】
【表3】

(血清群B髄膜炎菌)
参考文献43の髄膜炎菌血清群Bワクチンからの抗原に、MF59、IC31high、IC31lowもしくはこれらの組み合わせをアジュバント添加した。上記ワクチンは、3つの組換え抗原(Ag1、Ag2およびAg3)を含み、これらに対する総IgGレベルは、以下のとおりであった。
【0123】
【表4】

従って、抗原「Ag3」を除いて、MF59およびIC31の混合物を使用した場合に、最高のIgGレベルを認めた。
【0124】
血清をまた、種々の髄膜炎菌株に対するそれらの殺菌活性について試験した。代表的結果は、以下を含む。
【0125】
【表5】

従って、いくつかの例外はあるが、MF59およびIC31の混合物を使用した場合に、最高の殺菌力価を認めた。
【0126】
(髄膜炎菌の複数の血清群)
これら髄膜炎菌Bタンパク質抗原をまた、血清群A、C、W135およびY抗原に由来する結合体化サッカリド抗原と合わせ、同じアジュバント混合物で試験した。各血清群からの試験株に対する殺菌力価は、以下のとおりであった。
【0127】
【表6】

従って、血清群Aを除いて、MF59およびIC31の混合物を使用した場合、最高の殺菌力価を認めた。
【0128】
(汎発流行性インフルエンザ)
IC31highを、MF59もしくは緩衝液と1:1比で、またはMF59および緩衝液と1:0.5:0.5比で合わせた。このようにして、MF59を、その通常の濃度もしくは半分の濃度で試験した。上記アジュバントを、インフルエンザウイルス(A/ベトナム/1193/04)のH5N1株に由来する表面抗原ワクチンと合わせた。上記組み合わせの安定性および免疫原性を、試験した。
【0129】
安定性を、室温の貯蔵の時間0、およびその後30分もしくは6時間後に、pH、重量オスモル濃度、吸着、および粒径を試験することによって評価した。上記pHは、7.23〜7.26の範囲において安定であった。重量オスモル濃度は、280〜286mOsm/kgの範囲で安定であった。上記吸着した抗原の割合は、6時間にわたって76%から80%まで上昇した(30分の時点では、僅かに低下した)。これら数字は、MF59を欠いているコントロール組成物に類似である。上記コントロール組成物は、僅かに低い重量オスモル濃度(273〜275mOsm/kg)、僅かに高いpH(7.32〜7.35)、および吸着した抗原の僅かに低い割合(54〜68%)を有した。
【0130】
時間0での、PBS中のIC31high:MF59の1:1混合物の粒径を、図1に示す。上記エマルジョンの液滴(平均直径161nm)は、上記体積のうちの46.4%を占め、IC31複合体(平均直径15.9μm)は、53.6%を占めた。図2〜5は、室温において時間0から24時間まで、H5N1抗原を含むアジュバント添加ワクチンについての類似の分析を示す。
【0131】
【表7】

MF59単独と組み合わせたH5N1抗原(IC31なし)は、151nmの平均液滴直径を有した。IC31highと組み合わせたH5N1抗原(しかしMF59なし)は、38.4μmの平均粒子直径を有した(図6)。従って、MF59およびIC31の混合は、MF59粒子の分析した直径を僅かに増大させ(その一方で、滅菌濾過はなお可能である)、上記IC31複合体の直径を減少させる。しかし、全ての場合において、上記混合物は安定である。
【0132】
フェレット(Mustela putorius furo)モデルは、候補の汎発流行性インフルエンザワクチンの効力の証拠を提供するために好ましい動物モデルである。このようにして、アジュバント添加した、1μgもしくは3.75μg(赤血球凝集素用量)いずれかの抗原を有するワクチンを、フェレットの8つの群に投与した。フェレットに、初期刺激用量およびブースト用量を与え、次いで、異種H5N1株でチャレンジした。
【0133】
フェレットの体温を、チャレンジの前後でモニターした。図7および8は、2例のマウス(1匹は、群D(図7)および1匹は群E(図8))からの温度を示す。
【0134】
HAI力価を、0日目、21日目、42日目および49日目に、ワクチン株に対して評価した。平均力価は、以下のとおりであった。
【0135】
【表8】

従って、IC31およびMF59(グループBおよびグループE)の組み合わせは、最高の力価を与えた。
【0136】
予備データは、罹患した肺組織の割合(肉眼的な肺病変の面積の概算)および相対的肺重量(1.0未満は、健康な肺を示す)を調べた。1群あたりの平均結果は、以下のとおりであった。
【0137】
【表9】

IC31およびMF59の組み合わせは、MF59もしくはIC31単独と比較した場合、このモデルにおいて肺病理を改善した。
【0138】
従って、IC31と上記MF59水中油型エマルジョンアジュバントとの組み合わせは、安定であり、良好な免疫原性および汎発流行性インフルエンザウイルス株に対する防御をフェレットに提供した。
【0139】
(グループA連鎖球菌およびカンジダ)
S.pyogenes抗原およびC.albicans抗原にも、MF59TM+IC31TMをアジュバント添加した。
【0140】
本発明は、例示によって記載されてきたに過ぎず、改変が行われ得るが、それは本発明の範囲および趣旨の範囲内にあることが理解される。
【0141】
(参考文献)
【0142】
【数1】

【0143】
【数2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中油型エマルジョン、免疫刺激性オリゴヌクレオチドおよびポリカチオン性ポリマーを含む、免疫学的アジュバント。
【請求項2】
前記オリゴヌクレオチドおよび前記ポリマーが複合体化されている、請求項1に記載のアジュバント。
【請求項3】
前記オリゴヌクレオチドおよびポリマーの複合体が吸着性である、請求項2に記載のアジュバント。
【請求項4】
前記吸着性複合体の平均直径が前記エマルジョン中の油滴の平均直径より大きい、請求項3に記載のアジュバント。
【請求項5】
前記複合体が1〜20μm範囲の平均直径を有する、請求項4に記載のアジュバント。
【請求項6】
前記油滴が平均直径<220nmを有する、請求項5に記載のアジュバント。
【請求項7】
前記エマルジョンのサイズ分布と前記複合体のサイズ分布との間に重なり合いがない、請求項4〜6のいずれか1項に記載のアジュバント。
【請求項8】
水中油型エマルジョンおよび吸着性粒状アジュバントを含む免疫学的アジュバントであって、ここで該吸着性粒状アジュバントにおける粒子の平均直径は、該エマルジョン中の油滴の平均直径より大きく、該吸着性粒状アジュバントは、免疫刺激性オリゴヌクレオチドおよびポリカチオン性ポリマーの複合体である、免疫学的アジュバント。
【請求項9】
水中油型エマルジョンおよび免疫刺激性オリゴヌクレオチドを含む免疫学的アジュバントであって、ここで該免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つのCpIモチーフを含む、免疫学的アジュバント。
【請求項10】
水中油型エマルジョンおよび吸着性粒状アジュバントを含む免疫学的アジュバントであって、ここで該吸着性粒状アジュバントにおける粒子の平均直径および該エマルジョン中の油滴の平均直径はともに、250nm未満である、免疫学的アジュバント。
【請求項11】
前述の請求項のいずれかに記載のアジュバントを調製するためのプロセスであって、該プロセスは、水中油型エマルジョンと、免疫刺激性オリゴヌクレオチドおよびポリカチオン性ポリマーの複合体とを混合する工程を包含する、プロセス。
【請求項12】
(i)請求項1〜10のいずれか1項に記載のアジュバント、および(ii)免疫原を含む、免疫原性組成物。
【請求項13】
免疫原性組成物を調製するためのプロセスであって、該プロセスは、(i)請求項1〜10のいずれか1項に記載のアジュバント、および(ii)免疫原を混合する工程を包含する、プロセス。
【請求項14】
前記免疫原が、宿主に投与された場合、ウイルス性疾患、細菌性疾患、真菌性疾患、寄生生物性疾患、もしくは自己免疫疾患から防御する免疫応答を誘発する、請求項12に記載の組成物もしくは請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記免疫原が、インフルエンザAウイルスもしくはインフルエンザBウイルス、例えば、H5N1型インフルエンザAウイルスに対する免疫応答を誘発する、請求項12に記載の組成物もしくは請求項13に記載のプロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−502972(P2012−502972A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527427(P2011−527427)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【国際出願番号】PCT/IB2009/007111
【国際公開番号】WO2010/032138
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】