説明

ワクチン組成物および方法

ポリペプチドの三次元構造を修飾することによる、ポリペプチドの抗原提示促進または免疫原性増大のための方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、ワクチン組成物、ワクチン組成物の製造方法、ならびに癌、細胞増殖性疾患、細菌性疾患、および/またはインフルエンザのごときウイルス性疾患の処置におけるこれらのワクチンの使用方法に関する。
【0002】
発明の背景
ワクチンは、疾病を予防し、疾病の拡散を制御するための最も有効、安全、無毒かつ経済的な武器の1つである。慣用的なワクチンは、疾病発症前に与えられる免疫予防剤の形態であり、特異的抗原に対する強力な宿主の免疫学的記憶を生じさせることにより免疫防御を可能にするものである。ワクチン投与の主な目的は、疾病または病原体に関連した特異的抗原に対するBリンパ球およびTリンパ球を生じさせることを主な目的として、適応性のある特異的免疫応答を活性化させることである。
【0003】
ある種のウイルス性疾患は現在制御可能であるが、有効かつ長期にわたる予防は得られていない。例えば、インフルエンザは、インフルエンザウイルスにより引き起こされる伝染性疾患である。それはヒトの呼吸管(鼻、のど、および肺)を攻撃する。通常は、インフルエンザは突然発症し、例えば、発熱、頭痛、および乾燥した咳のような徴候を含む。インフルエンザにかかった大部分の人々は1〜2週間で回復するが、インフルエンザの結果として生命を脅かす合併症(肺炎のごとき)を発症する人もいる。米国において数百万人が−米国在住の約10%ないし20%が−毎年インフルエンザにかかるであろう。米国において1年に約36000人がインフルエンザで死亡し、1年に114000人がインフルエンザの結果入院する。インフルエンザによる重大な問題はいずれの年齢層にも生じ得るものであるが、特に老年層、例えば65歳およびそれ以上の人は慢性的な医学的症状を有し、非常に幼い子供は、例えば、インフルエンザから肺炎、気管支炎、ならびに洞および耳の感染のような合併症をより引き起こしやすい。
【0004】
喘息を有する人々は、インフルエンザにかかっている間に喘息発作を起こす可能性があり、慢性の鬱血性心疾患を有する人々は、インフルエンザにより引き金を引かれることによりこの症状を悪化させる可能性がある。
【0005】
現在、不活性化ウイルスから作られるフル・ショット(flu shot)が利用可能であり、広く用いられている。しかしながら、より良いアプローチは、DNAまたは蛋白をベースにしたワクチンの開発であり、そのようなワクチンは恒常的な免疫応答を誘発し(フル・ショットのように毎年投与しなければならないものではない)、不活性化ウイルスに依存しないものであり、その使用による副作用、例えば、妊婦にそれを用いる場合の心配の可能性がないものである。さらにそのうえ、現在のインフルエンザワクチンは、1の特定のウイルス株に狭く指向されているという点で欠点を有する。より良いワクチンは、すべてではないにしても多くの株をカバーする広範な抗インフルエンザ防御を有するものであろう。
【0006】
有効なT細胞ベースの免疫治療薬を開発することに対する主な障害は、細胞表面上の抗原提示がしばしば不十分であり、抗原に対して十分な一次T細胞応答を誘発できないことである。それにもかかわらず、一次免疫応答がすでに誘発されている場合には、細胞表面上の抗原提示量は二次応答を誘発するに十分である。かくして、癌の景物学、ウイルス学および免疫学のごとき分野の研究者の主な目的は、抗原提示を促進する処置方法であって、一次免疫応答の形成を可能にする方法を開発することである。
【0007】
発明の概要
本発明は、新たなワクチン組成物、それらの製造方法、および疾病、例えば、癌、細胞増殖性疾患、細菌性疾患、および/またはインフルエンザのごときウイルス性疾患の予防および治療におけるこれらのワクチンの使用方法に指向される。本発明は、疾病に関連した、例えばウイルス蛋白をコードするウイルスDNAリガーゼ変異体分子、またはウイルス蛋白自体に関する新規概念を特徴とし、問題の蛋白の1またはそれ以上の内部領域には破壊的エレメントが含まれている。細胞中の、あるいは細胞により産生される「正常」ウイルス蛋白は、典型的には、ユビキチン−プロテアソーム分解系により蛋白を、MHC−1に結合しうるペプチドにまで十分に分解する能力を細胞が持たないことにより、ほとんど提示されない。MHC−1に結合した結合ペプチドは細胞表面上に提示され、T細胞、例えば細胞毒性リンパ球により結合され、同時に感染細胞の破壊が起こる。特別な抗原提示細胞(例えば、樹状細胞)におけるMHC−1上の類似のペプチドの提示は、正しいT細胞クローン増殖の活性化を介して恒常的免疫応答の発生を導く。破壊的エレメント、例えば、内部、例えば蛋白の疎水性部分(または当該蛋白のコーディング領域)における欠失、置換または挿入の導入により、細胞中の当該蛋白のコンホーメーションが変化して、その結果、ユビキチン−プロテアソーム系が蛋白をずっと効率的に分解し、生じるペプチドが増加し、MHC−1への結合頻度が増え、それゆえ、より効率的で長期にわたるT細胞応答が誘発される。
【0008】
本発明の1の態様は、ポリペプチドの3次元構造を修飾することによる、ポリペプチドの蛋白分解促進、抗原提示促進、あるいは免疫原性上昇方法に関する。修飾は、ポリペプチドの1またはそれ以上の内部(例えば、疎水性)ドメイン領域中の破壊的エレメントであり、該修飾は、蛋白構造のコンホーメーション変化を生じさせ、例えばプロテアソームにおける蛋白分解により分解を増加させる。破壊的エレメントは、修飾されたウイルス蛋白の三次構造を未修飾ウイルス蛋白のものから変化させ、分解を増加させる。
【0009】
破壊的エレメントは、1またはそれ以上のアミノ酸の挿入または欠失であってもよく、あるいは1またはそれ以上のアミノ酸の置換(例えば、非荷電または疎水性アミノ酸を荷電または親水性アミノ酸で置換)であってもよい。有利には、破壊的エレメントは、2個またはそれ以上のアミノ酸、例えば2個のアスパラギン酸残基のごとき負に帯電したアミノ酸を含む外来性アミノ酸配列である。
【0010】
本発明のもう1つの態様は、破壊的エレメントを含む修飾ウイルス蛋白を対象中に導入して免疫応答を誘導することにより、対象中において疾病に関連した、例えばウイルス蛋白に対する免疫応答を誘導する方法を提供する。破壊的エレメントは、蛋白の1個またはそれ以上のアミノ酸の挿入、欠失および/または置換を包含する。非限定的な例を示すと、破壊的エレメントは、1個またはそれ以上の疎水性アミノ酸(例えば、フェニルアラニン、システイン、イソロイシン、ロイシン、バリンまたはトリプトファン)の、1個またはそれ以上の親水性アミノ酸(例えば、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、ヒスチジン、リジン、またはアルギニン)での置換を包含する。親水性アミノ酸は連続していてもよく、あるいは親水性アミノ酸は連続していなくてもよい。
【0011】
破壊的エレメントはアミノ酸配列の内部領域中に存在する。該アミノ酸配列の内部領域は典型的には疎水性であってもよく、あるいは破壊的エレメントは両親媒性α−らせん領域中に存在してもよい。
【0012】
本発明の具体例において、破壊的エレメントはポリペプチド配列の末端、例えばポリペプチド配列のN末端またはC末端あるいはその付近に存在する。「末端付近」は、末端の1個、5個、10個、20個、50個75個または100個までのアミノ酸の範囲内のアミノ酸位置を包含する。本発明の好ましい具体例において、破壊的エレメントはウイルス蛋白のドメイン構造中に存在する。(ウイルス)蛋白のドメイン構造は、当該蛋白よりも少なくともアミノ酸1個短いポリペプチドを包含する。ドメイン構造は、ポリペプチドの二次構造(α−らせん領域、ベータ板状シート領域、またはコイル)に影響する構造である。あるいはまた、ドメイン構造は、蛋白に影響する、例えば、リガンドとの結合、抗体による認識、触媒活性、または他の分子との結合に影響するアミノ酸配列である。ドメイン構造は、PDZ、プレクストリンホモロジー(PH)、tecホモロジー(TH)、プロリン豊富領域、Srcホモロジー3(SH3)、およびSrcホモロジー2(SH2)を包含するが、これらに限らない。当業者は、Pfamのごときドメインデータベースを用いて、興味あるポリペプチド中の適当な蛋白ドメインを確認することができる(Pfamは、多くの共通蛋白ドメインおよびファミリーをカバーする多数の配列アラインメントおよびマルコフモデルの大きなコレクションである。PfamはSanger Institute, UKおよび他のロケーションからオンラインでアクセス可能である。)。本発明の1の具体例において、破壊的エレメントは、互いに近接した(互いに1個、2個、3個、5個、10個、15個またはそれ以上のアミノ酸残基の範囲内にある)2個のアスパラギン酸残基を含む。破壊的エレメントを、蛋白の3次元構造に対して伸長されたアルファらせんドメインに挿入され、あるいは該ドメイン中に存在していてもよい。あるいはまた、2個のアスパラギン酸残基は、ウイルス蛋白の三次構造中の互いに近い位置に存在してもよい(例えば、2個のアスパラギン酸残基が約1ないし約100オングストローム未満離れている)。
【0013】
特に有利な具体例において、本発明は、現在使用されているワクチンよりも改良されたインフルエンザワクチンおよびその使用に関する。修飾されたインフルエンザNP蛋白(すなわち、本明細書にて説明される破壊的エレメントを含む)をコードするDNA分子(典型的には、適当なベクター中に含まれる)が患者にデリバリーされ、促進された、安定かつ広範な免疫応答が生じる。インフルエンザNP蛋白は高度に保存されており、そのようなものとして、本発明のインフルエンザワクチンは(すべてではないが)広範な特異的ウイルス株に対して有効であり、それは重要な利益であろう。本発明の具体例において、修飾NP核酸または修飾NPポリペプチドを有する説明されたワクチンが、1またはそれ以上のさらなるワクチン、例えば、修飾NP核酸または修飾NPポリペプチドを含まないワクチンと組み合わせて投与される。
【0014】
本発明の修飾蛋白(または修飾蛋白をコードする核酸)は疾病または疾患と関連がある。修飾蛋白は、例えば、腫瘍関連ポリペプチド、参謀増殖性疾患関連ポリペプチド、または疾病関連ウイルスポリペプチドである。ウイルスポリペプチドは、NP蛋白(すなわち、ウイルス核酸蛋白または核蛋白)のごときコア蛋白であってもよい。
【0015】
本発明は、修飾疾病関連ポリペプチド、例えば、アミノ酸約50個、約25個、約15個、約10個または約5個未満の長さの1またはそれ以上のペプチドにまで分解されるポリペプチドを包含する、有効な蛋白分解的開裂を受けうるウイルスポリペプチドを提供する。修飾ウイルスポリペプチドは、未修飾ウイルス蛋白と比較すると、蛋白分解(例えば、プロテアソーム依存性またはプロテアソーム非依存性の蛋白分解)に対する変化した感受性を有する。本発明の修飾蛋白は、蛋白分解的に処理された場合に、例えば、プロテアソームにおいて、MHCクラスI分子に結合する1またはそれ以上のペプチドを生じるポリペプチドを包含する。
【0016】
もう1つの態様において、本発明は、免疫応答を誘発するに有効量の核酸分子を含むワクチンを提供し、該核酸分子は就職ウイルス蛋白をコードし、発現しうるものであり、該修飾ウイルス蛋白は破壊的エレメントを含む。核酸は、未修飾ウイルス蛋白と比較すると、蛋白分解に対して変化した感受性を有する修飾ウイルス蛋白をコードしている。核酸分子はプロモーターに作動可能に連結されていてもよい。さらに、核酸分子は、修飾ウイルス蛋白をコードする核酸の発現を指令しうるベクターのごときベクター中にあってもよい。本発明の具体例において、ベクターは、ワクシニアウイルスベクター、レトロウイルスベクターのごときRNAベクター、またはレンチウイルスベクターのごときウイルス由来のベクターであってもよい。また本発明は、このワクチンを対象に投与することを含む免疫方法を提供する。対象は、癌、ウイルス感染または不適当な遺伝子発現に関連する疾患にかかっている、あるいはかかる可能性のある哺乳動物(例えば、ヒトまたは非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ブタ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ヤギまたは齧歯類)であってもよい。あるいはまた、本発明は、対象の細胞を用意し、この細胞をワクチンと接触させ、次いで、この細胞を対象に投与することを含み、そのことにより対象を免疫する、免疫方法を提供する。
【0017】
投与は腹腔内、皮下、鼻腔内、静脈、経口、局所または経皮的デリバリーによるものであってもよい。本発明の具体例において、ワクチンを、ベクター(例えば、DNAベクターまたはRNAベクター)またはリポソームに入れて投与する。他の具体例において、ワクチンを、1またはそれ以上の化合物とともに投与し、該化合物は、抗原提示を促進する化合物、アジュバント、およびインターフェロン−γのごときサイトカインを包含する。
【0018】
さらなる態様において、本発明は、対象におけるウイルス蛋白に対する免疫応答の誘導方法に関し、該方法は、破壊的エレメントを含む修飾ウイルス蛋白をコードする核酸分子を対象に導入する工程を含み、核酸分子は対象細胞中で発現されうるものであり、その結果、免疫応答が誘導される。
【0019】
また本発明は、免疫応答を誘発するに有効な量のベクターを含むワクチンも提供し、該ベクターは破壊的エレメントを含む修飾NPポリペプチドをコードする核酸分子に作動可能に連結されたプロモーターを含む。プロモーターはサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターまたはワクシニアウイルス(VV)−p65プロモーターまたは当該分野で知られた他のプロモーターであってよい。ある具体例において、ベクターはワクシニアウイルスベクターである。
【0020】
もう1つの態様において、本発明は、哺乳動物の免疫機構を刺激しうるワクチンの製造方法を提供し、該方法は、ウイルスポリペプチドをコードする核酸に破壊的エレメントを導入して修飾ウイルスポリペプチドを得て、次いで、修飾ウイルスポリペプチドをワクチン担体と結合させる工程を含み、そのことによりワクチンを得るものであり、該修飾ウイルスポリペプチドは、未修飾ウイルス蛋白と比較すると、蛋白分解に対して変化した感受性を有するものである。
【0021】
もう1つの態様において、本発明は、哺乳動物の免疫機構を刺激しうるワクチンの製造方法を提供し、該方法は、ウイルスポリペプチド中に破壊的エレメントを導入して修飾ウイルスポリペプチドを得て、次いで、修飾ウイルスポリペプチドをウイルス担体に結合させることを含み、そのことによりワクチンを得るものであり、該修飾ウイルスポリペプチドは、未修飾ウイルス蛋白と比較して、蛋白分解に対して変化した感受性を有するものである。
【0022】
さらに本発明は、対象における免疫方法を提供し、該方法は、対象細胞を用意し、修飾ウイルス蛋白をコードする核酸を含むワクチンに該細胞を接触させ、次いで、該細胞を対象に投与する工程を含み、そのことにより対象を免疫するものである。本発明の具体例において、対象細胞は対象から単離される。
【0023】
もう1つの態様において、本発明は、教育された(educated)、抗原特異的免疫エフェクター細胞の実質的に純粋な集団を得る方法を提供し、該方法は、修飾ウイルス蛋白が抗原提示細胞において発現されうる場合において、免疫エフェクター細胞を抗原提示細胞と接触させる工程を含み、抗原提示細胞は、破壊的エレメントを含む修飾ウイルス蛋白をコードする核酸分子を含むものである。あるいはまた、本発明は、修飾ウイルス蛋白が抗原提示細胞において発現されうる場合において、教育された、抗原特異的免疫エフェクター細胞の実質的に純粋な集団を提供するものであり、該エフェクター細胞は、破壊的エレメントを含む修飾ウイルス蛋白をコードする核酸分子を含む抗原提示細胞とともに免疫エフェクター細胞を培養することにより得られるものである。抗原特異的免疫エフェクター細胞はTリンパ球であってもよい。
【0024】
また本発明は、対象において蛋白に対する免疫応答を誘導する方法を提供し、該方法は、破壊的エレメントおよび修飾部位を含む修飾蛋白を対象に導入する工程を含み、そのことにより免疫応答が誘導される。修飾部位は生物学的プロセスのための部位である。生物学的プロセスはリン酸化、脱リン酸化、糖鎖付加、アセチル化、メチル化、ユビキチネーション、硫酸化、蛋白分解、プレニル化、およびセレン取り込み、トランスグルタミネーション、メチル化、アセチル化、スモイル化(SUMOylation)を包含する。生物学的プロセスは上記蛋白の三次構造の変化を引き起こす。
【0025】
本発明は、哺乳動物細胞において不適切に発現されるポリペプチドに関する。例えば、腫瘍細胞は腫瘍特異的抗原(TSAs)ならびに腫瘍関連抗原(TAAs、癌の発症および/または進行に関連する抗原であり、腫瘍細胞および非腫瘍細胞上に発現される)を産生する。腫瘍抗原の例はMAGE−1、MAGE−3、MART−1、gp100、チロシナーゼ、チロシナーゼ関連蛋白−1、BAGE、GAGE−1、GAGE−3、gp75、腫瘍胎児抗原、変異p53、変異rasおよびテロメラーゼを包含する。さらに、不適切な蛋白フォールディングは、アルツハイマー病および癌のごとき種々のヒト疾患の発症の重要な因子である(Tjernberg et al., 1999. JBC 274:12619; Lim et al., 2001. J. Clin. Path. 54:642参照)。細胞プリオン蛋白(PrPc)の発現およびフォールディングの脱調節ならびにその病原性イソ形態(PrPsc)への変換はヒトおよび獣医学的疾病に関連している。
【0026】
本発明は、一部には、修飾ウイルスポリペプチドに関するものである。修飾ウイルスポリペプチドの非限定的な例は、表1に示された修飾インフルエンザNPポリペプチドである。
【0027】
また本発明は修飾核酸分子にも関する。非限定的な例は、修飾インフルエンザNPポリペプチドのアミノ酸配列をコードする核酸配列を包含する核酸分子である。
【0028】
もう1つの態様において、本発明は抗原提示方法を提供し、該方法は、抗原提示細胞を、ペプチドの内部領域中に破壊的エレメントを有するウイルスポリペプチドをコードする核酸分子と接触させ、次いで、抗原提示細胞中で該核酸分子を発現させる工程を含み、そのことにより、抗原提示細胞によってウイルスポリペプチド由来の1またはそれ以上のペプチドが抗原として提示される方法である。これらの1またはそれ以上の誘導ペプチドはMHCクラスI分子と結合する。
【0029】
さらに本発明はワクチンの処方方法に関し、該方法は、ウイルス蛋白をコードするアミノ酸配列を提供し、欠失または置換に適した、あるいは破壊的エレメント導入用の挿入ポイントとしての、ウイルスポリペプチドの1またはそれ以上のアミノ酸を同定し、次いで、ウイルス蛋白をコードする核酸配列に該破壊的エレメントを導入する工程を含み、破壊によりウイルス蛋白の三次構造が変化し、該核酸が発現されることにより、ワクチンが処方される。
【0030】
本発明は、種々の態様において、免疫応答、例えばT細胞またはB細胞を誘発するに有効な量のワクチンも提供する。ワクチンは修飾ポリペプチドをコードする核酸分子を含む。修飾ポリペプチドは、その核酸分子が発現された場合、対応未修飾ポリペプチドと比較すると、変化した三次元構造、増加した抗原提示および/または増加した蛋白分解的な分解を有する。修飾は、例えば、1個またはそれ以上のアミノ酸および/またはアミノ酸配列の挿入または欠失である。好ましくは、修飾ポリペプチドは、ペプチドよりも増加した分解を有する。用語ペプチドは特定の長さを意味するものではない。ペプチドはMHCクラスI分子に結合しうるものである。
【0031】
核酸はDNAまたはRNAである。核酸はポリペプチドのコーディング領域を含む。核酸はプロモーター、例えば、CMV、RSV、EF−1a、またはSV40プロモーターに作動可能に連結される。いくつかの態様において、核酸は、ワクシニアウイルスベクターのごときベクター中にある。あるいはまた、核酸はプラスミド中にあり、プラスミド自体により、またはリポソーム中に入れられてデリバリーされる。ポリペプチドはコア蛋白のごときウイルスポリペプチドである。コア蛋白はインフルエンザウイルスのNP蛋白である。あるいはまた、ポリペプチドは腫瘍関連ポリペプチド、細胞増殖性疾患関連ポリペプチドまたは細菌ポリペプチドである。
【0032】
本発明のワクチンを対象、例えばヒトに投与することによる免疫方法が、本発明により提供される。免疫はインビボまたはエクスビボにおけるものである。ガンマインターフェロンまたはサイトカインのごとき抗原提示を増加させる化合物をさらに対象に投与する。投与は予防的または治療的である。いくつかの態様において、対象は癌、ウイルス感染または不適切な遺伝子発現に関連した疾患、例えば、細胞増殖性疾患にかかっている、あるいはかかる危険性のある者である。投与は、ベクター、例えば、ウイルスベクター、DNAベクター、またはRNAベクター中に入れて、あるいはリポソームに入れて、腹腔内、皮下、鼻腔内、静脈内、経口、局所または経皮的なものであってもよい。
【0033】
特記しない限り、本明細書中のすべての技術用語および科学用語は、本発明の属する技術分野の当業者により通常理解されているのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または同等の方法および材料を本発明の実施および試験に使用することができるが、適当な方法および材料を以下に説明する。本明細書で述べられるすべての刊行物、特許出願、特許、および他の文献を、参照により本明細書に一体化させる。コンフリクトの場合、定義を含む本願明細書が支配的であろう、さらに、材料、方法、および実施例は説明のためだけのものであり、限定的に解してはならない。
【0034】
本発明の他の特徴および利点は以下の詳細な説明、ならびに特許請求の範囲から明かであろう。
【0035】
発明の詳細な記載
古典的な免疫は、病原体、例えばウイルス、細菌または腫瘍関連抗原に対するB細胞の免疫応答を発生させることを目的とする。ワクチンは予防的手段として生物に投与されて、病原体に対する中和抗体を誘発する。病原体がその後生物に感染した場合、抗体が病原体に結合し、それを生物から除去する。このアプローチは、開発され、成功している、スモールポックス(smallpox)などのワクチンすべての基礎となっている。しかしながら、B細胞をベースとした免疫に耐性のあるインフルエンザのごときウイルス病原体が存在する。それらの表面蛋白は素早く変異し、かくして、もはや抗体は、変化した表面蛋白を有する変異ウイルスを認識できなくなり、表見蛋白は抗体応答から逃れる。古典的な免疫に対するさらなる制限は、それが予防のみであり、病原体が生物に感染した後に治療的に使用するもとができないことである。
【0036】
本発明は、一部には、免疫系のT細胞ブランチを活性化させて病原体、例えば血清中のウイルス粒子よりもむしろ感染細胞を標的とすることによる、古典的な免疫に対する代替物に基づく。感染細胞はそれらの表面に病原体由来のペプチドをMHC−I蛋白との複合体として提示する。細胞表面に提示される病原体由来のペプチドの数が閾値を越える場合、感染細胞を特異的に認識するT細胞の特化したクローンが誘導され、感染細胞が除去される。T細胞免疫応答を防止あるいは低下させる多重機構がウイルス中に生じている。重要かつ普遍的な機構は、プロテアソームによる分解を防止し、かくしてプロセッシングを減らし、MHC−I上に提示されるペプチドを減少させる構造のウイルス蛋白の獲得物である。例えば、インフルエンザウイルスのNP−蛋白(核性蛋白または核蛋白)は、細胞の蛋白分解機構によってはほとんどプロセッシングされず、MHC−I上にほとんど提示されず、T細胞免疫応答はほとんど活性化されない。インフルエンザNPは、インフルエンザ表面蛋白と比較すると、変異速度が遅い(例えば、Lee et al., 2001. Arch. Virol. 146:369-77参照)。インフルエンザ核蛋白(インフルエンザA/プエルトリコ/8/34株)は、アミノ酸残基147〜155を含むH−2Kd−制限CD8+細胞(T CD8+)エピトープを含んでいること、「ミニジーン」/レコンビナントワクシニアウイルス(vac)法による単離体中のNP147−158は、NP−特異的殺細胞に対して標的細胞を感作すること、その一方では、位置156においてアルギニンを欠く147〜158(本明細書では147−155TGという)は感作しないこと、そして、単一アミノ酸Met159のブロックされたペプチドのC末端への付加(147−155TGMを生成)により提示が回復されること(Yellen-Shaw, etbal., 1997 J Immunol. 158(4):1727-33参照)が示されている。
【0037】
本発明は、その種々の態様において、対応する未修飾(すなわち、対照)ポリペプチドと比較して、ポリペプチドの三次元構造または蛋白分解を変化させることにより、ポリペプチドの抗原提示または免疫原性を変化させる、例えば、増加、促進、または減少させる方法を提供する。
【0038】
本発明は、免疫応答を誘発するに有効な量の、修飾蛋白またはポリペプチド、例えば、腫瘍関連ポリペプチド、細胞増殖性疾患関連ポリペプチド、または疾病関連ウイルスポリペプチドをコードする核酸を有するワクチンも提供する。修飾ポリペプチドは、細胞で発現された場合、未修飾ポリペプチドと比較して、変化した三次元構造、増大した蛋白分解により分解、あるいは増大した抗原提示を有する。
【0039】
定義
「ウイルス蛋白」は、ウイルス遺伝子によりコードされるあらゆるポリペプチドを包含する。本明細書の用語「ポリペプチド」および「蛋白」は同義である。
【0040】
「疾病関連蛋白」は、その発現、細胞または組織局在性、あるいはフォールディングが1またはそれ以上の疾病に関連しているポリペプチドを包含し、さらに、インフルエンザのようなウイルス状態も包含する。腫瘍特異的抗原(TSAs)および腫瘍関連抗原(TAAs)は典型的な疾病関連蛋白である。
【0041】
「修飾ウイルス蛋白」は、未修飾ウイルス蛋白(すなわち、野生型ウイルス蛋白)と比較すると、異なる一次、二次または三次アミノ酸配列を有するウイルス蛋白を包含する。
【0042】
「修飾核酸」または「修飾ウイルス核酸」は、修飾(ウイルス)蛋白をコードする核酸を包含する。
【0043】
「破壊的エレメント」は、蛋白の三次元構造を破壊し、その結果、修飾ウイルス蛋白の蛋白分解的分解を変化(例えば、増加または減少)させる、ウイルス蛋白または修飾ウイルス蛋白をコードする核酸に対する修飾を包含する。かかる修飾は、好ましくは蛋白の内部領域、例えば疎水性領域における、1個またはそれ以上のアミノ酸の挿入、置換または欠失、あるいはウイルス蛋白をコードする核酸配列における1個またはそれ以上の核酸の挿入、置換または欠失を包含する。
【0044】
ポリペプチドの「三次構造」はポリペプチドの三次元構造を表す。
【0045】
ポリペプチドの「二次構造」は、アルファ−ヘリックス、ベータ板状シート、またはランダムコイルへのペプチド鎖のフォールディングを示す。ポリペプチドの二次構造は、1またはそれ以上のアルゴリズムをポリペプチドの一次アミノ酸配列に適用することにより決定することができる。これらのアルゴリズムはDPM法、Homolog法、およびPredator法を包含する。
【0046】
ウイルス蛋白の「ドメイン構造」は、当該ウイルス蛋白よりも少なくとも1アミノ酸短いウイルス蛋白に由来するポリペプチドを包含する。一般的には、ドメイン構造は、ポリペプチドの二次構造を決定する構造、あるいはポリペプチドのリガンドへの結合活性、抗体による認識、触媒活性、または他の分子との結合に影響する構造である。
【0047】
ポリペプチドの「内部領域」は、N末端またはC末端アミノ酸以外のポリペプチドのアミノ酸を包含する。ポリペプチドの内部領域は、ポリペプチドの疎水性ドメイン中に存在する1個またはそれ以上のアミノ酸も包含する。
【0048】
ポリペプチドの「疎水性ドメイン」は、生理学的(例えば非変性)条件下において溶媒に接近できないポリペプチドの領域を包含する。
【0049】
「腫瘍関連ポリペプチド」は、腫瘍の増殖または癌細胞の増殖の発生および/または進行に関連するポリペプチドを包含する。
【0050】
「細胞増殖性疾患」は、癌、再狭窄、網膜症および他の血管増殖性の疾病を包含する。
【0051】
「抗原提示」は、主要組織適合複合体クラスIまたはクラスIIの分子(MHC−IまたはMHC−II)に関連した細胞表面上における抗原の発現を包含する。抗原提示は当該分野で知られた方法により測定される。例えば、抗原提示は、Gills, et al., J. Immunol. 120:2027 (1978)に記載されたようなインビトロ細胞アッセイを用いて測定される。
【0052】
「免疫原性」は、免疫応答を刺激する物質の能力を包含する。免疫原性は、例えば、物質に対して特異的な抗体の存在を調べることにより測定される。抗体の存在は、当該分野において知られた方法、例えばELISAアッセイにより検出される。
【0053】
「蛋白分解的分解」は、ペプチド結合の加水分解によるポリペプチドの分解を包含する。用語「ペプチド」は特定の長さを意味するものではない。蛋白分解的分解は、例えば、電気泳動(例えば、ゲル電気泳動)、NMR分析または質量スペクトル分析を用いて測定される。
【0054】
本明細書の用語「癌」は、侵入性および非侵入性の腫瘍を包含する、異常な細胞増殖を包含する。
【0055】
本明細書の用語「ウイルス」は、遺伝学的物質のRNAまたはDNAコアを囲む蛋白コートを有する感染性粒子を包含する。
【0056】
本明細書の用語「自己免疫性疾患」は、自己免疫抗体またはリンパ球を産生する生物の分子、細胞または組織を攻撃する自己免疫抗体またはリンパ球により特徴づけられる、あるいはそれらに関連する疾病または疾患を包含し、例えば、ろうそう、リューマチ性関節炎、多発性硬化症、全身性硬化症、糖尿病、Rasmussen脳炎、Lambert Eaton 筋無力症候群、重症筋無力症、熱帯性痙性対麻痺/HTLV−1−関連骨髄症(TSP/HAM)、自己免疫性末梢ニューロパシー、慢性炎症性脱髄性多発性ニューロパシー(CIDP)、自己免疫性小脳性変性、眼球クローヌス/筋クローヌス(Anti−Ri)、スティッフパーソン(stiff person)症候群、および老年性多発性ニューロパシーを伴う歩行失調(GALOP)を包含する。
【0057】
ポリペプチドの「部分」はポリペプチドの2個またはそれ以上のアミノ酸を意味し、ポリペプチドのドメイン(例えば、細胞内、膜貫通または細胞外ドメイン、シグナルペプチド、および核局在化シグナル)を包含する。部分は、蛋白分解的開裂により作られるポリペプチドのフラグメントを包含する。
【0058】
細胞は抗原提示しうるいずれの細胞であってもよい。抗原提示細胞(APCs)は、Tリンパ球に提示するために抗原を捕獲および処理し、リンパ球の増殖および分化に必要なシグナルを発生する。APCsは体細胞、B細胞、マクロファージおよび樹状細胞(例えば、骨髄樹状細胞)を包含する。
【0059】
修飾されたウイルスポリペプチド
本発明は、ポリペプチド配列中に破壊的エレメントを含む、修飾されたウイルスポリペプチド(および細胞中での発現のためのそれらをコードする核酸)に一部、関連する。破壊的エレメントは、修飾されたポリペプチドのタンパク質分解によるプロセシングが未修飾のポリペプチドのプロセシングとは異なるように、修飾されたポリペプチド構造において立体構造上の変化を生じる。理論に束縛されることは望まないが、タンパク質分解によりプロセシングに差を生じる1つの作用機構は、立体構造の変化により内部アミノ酸の接近性が変化する(例えば、増大するかまたは減少する)ことである。タンパク質分解によるプロセシングはプロテアソームを通じて生じる。あるいは、タンパク質分解によるプロセシングは、プロテアソーム以外の経路を通じて生じる。
【0060】
好ましい修飾されたウイルスポリペプチドには、修飾されたインフルエンザNPポリペプチドが含まれ、その限定的ではない例が表1に提供される。
【表1】


置換されたアミノ酸は太字かつ下線を付して示される。挿入されたアミノ酸は太字かつ下線を付して示される。
【0061】
破壊的エレメントは、1つ以上のアミノ酸の挿入または欠失、あるいは1つ以上のアミノ酸の置換(例えば、電荷を有しているアミノ酸または親水性アミノ酸の、電荷を有していないアミノ酸または疎水性アミノ酸での置換)であり得る。あるいは、破壊的エレメントとは、プロテアーゼ、または2つ以上のプロテアーゼの組み合わせによる作用を受けることができる2つ以上のアミノ酸を含む外因性のアミノ酸配列である。限定的ではない例は、ポリペプチド(例えば、N末端またはC末端のいずれでもない2つのアミノ酸の間)への配列DEVDGの挿入である。この配列は、カスパーゼ−3プロテアーゼの切断部位を含み、このプロテアーゼはC末端のDとGの間でペプチドを切断する。有用なプロテアーゼまたはタンパク質分解酵素としては、Arg−Cプロテイナーゼ、Asp−Nエンドペプチダーゼ、BNPS_Skatole、カスパーゼ1、カスパーゼ2、カスパーゼ3、カスパーゼ4、カスパーゼ5、カスパーゼ6、カスパーゼ7、カスパーゼ8、カスパーゼ9、カスパーゼ10、キモトリプシン(例えば、高特異性(C末端から[FYW]、Pは続かない)または低特異性(C末端から[FYWML]、Pは続かない))、クロストリパイン、エンテロキナーゼ、グランザイムB、第Xa因子、グルタミルエンドペプチダーゼ、ペプシン、プロリンエンドペプチダーゼ、プロテイナーゼK、ブドウ球菌(Staphylococcal)ペプチダーゼI、サーモリシン、トロンビン、およびトリプシンが挙げられる。例えば、ペプシンは、ペプチドのP1またはP1’位のPhe、Tyr、Trp、およびLeuを優先的に切断する。プロテアーゼ切断部位は、Peptide Cutter(Swiss Institute of Bioinformatics(SIB)のExPASy(Expert Protein Analysis System)プロテオミクスサーバーで利用できる)のようなプログラムを使用して、当該分野で一般的に公知である。
【0062】
本明細書中に記載される破壊的エレメント(例えば、NPポリペプチド配列のポリペプチド配列中に挿入された1つ以上のアスパラギン酸−アスパラギン酸(DD)ジペプチド)は、修飾されたポリペプチドのタンパク質分解を増大させ、これにより修飾されたポリペプチドが哺乳動物被験体に導入された際の抗原提示細胞(APC)による抗原提示を増大させ、それによって被験体のポリペプチドに対する免疫応答を増大させる。
【0063】
破壊的エレメントは、破壊的エレメントをポリペプチドに直接導入することによって、または破壊的エレメントをポリペプチドをコードするヌクレオチド配列中に導入する(それによって、核酸配列の翻訳により破壊的エレメントを含むポリペプチドが生じる)ことによって、修飾されたポリペプチドを形成するようにポリペプチド中に導入することができる。
【0064】
修飾されたポリペプチドをコードする核酸への破壊的エレメントの導入
修飾されたポリペプチドは、修飾された核酸によってコードされる修飾されたポリペプチドを発現させることによって、またはポリペプチドを直接修飾することによって作成することができる。ポリペプチドの三次元構造の修飾は、例えば、ポリペプチドの三次元構造が変化する、すなわち、破壊的エレメントを含むように、ポリペプチド配列中に1つ以上のアミノ酸を挿入するか、またはポリペプチド配列中の1つ以上のアミノ酸を欠失させることによってアミノ酸配列を修飾することにより行われる。破壊的エレメントは、ポリペプチドの内部領域に、例えば、伸張されたα−ヘリックスドメインのようなドメイン構造中に配置される。例えば、1、3、5、10、25、50、100個、またはそれ以上のアミノ酸のアミノ酸配列が挿入されるかまたは欠失させられる。あるいは、未修飾のポリペプチドのポリペプチド配列中の1つ以上のアミノ酸が、1つ以上の異なるアミノ酸で置換される。あるいは、三次元構造の修飾は、ポリペプチドのドメイン構造内に、1、3、5、10、25、50、100個、またはそれ以上のアミノ酸のアミノ酸配列を挿入するか、またはドメイン構造内の1、3、5、10、25、50、100個、またはそれ以上のアミノ酸のアミノ酸配列を欠失させることによって行われる。修飾はタンパク質レベルである。あるいは、修飾は、DNAまたはRNAレベルであり、例えば、未修飾のポリペプチドをコードする未修飾のヌクレオチド配列中への1つ以上の核酸の挿入、または未修飾のポリペプチドをコードする未修飾のヌクレオチド配列中の1つ以上の核酸の欠失であり、これにより、修飾されたポリペプチドをコードする修飾されたヌクレオチド配列が作成されるか、あるいは、1つ以上の核酸の1つ以上の異なる核酸での置換である。
【0065】
破壊的エレメントがアミノ酸配列中に導入される位置は、タンパク質分解に対する破壊的エレメントの効果に影響を与える。好ましくは、破壊的エレメントは、ポリペプチドの1つ以上の内部疎水性ドメイン領域に導入される。
【0066】
ポリペプチドの修飾は、修飾されたポリペプチドのタンパク質分解が変化する、すなわち、未修飾のペプチドと比較して増大する、例えば、修飾されたポリペプチドがより効率よくタンパク質分解によってプロセシングされるか、または修飾されたポリペプチドが未修飾のポリペプチドに対しては作用しない1つ以上のタンパク質分解酵素の基質であるような、ポリペプチドの立体構造上の変化を生じる。
【0067】
ポリペプチドは、例えば、ウイルスコアタンパク質、例えば、インフルエンザのNPタンパク質のようなウイルスペプチド;細菌タンパク質;腫瘍関連タンパク質;または異常な遺伝子発現に関係しているポリペプチドである。インフルエンザNP核酸およびポリペプチドの配列は表2に示される。インフルエンザNP核酸としては、例えば、GenBank登録番号AB126632、AF536708、AJ293924、およびAF483604が挙げられる。インフルエンザNPアミノ酸としては、例えば、GenBank登録番号NP_775533、CAA91084、およびP31609が挙げられる。修飾されたNP核酸およびアミノ酸の配列の限定的ではない例は、表3および実施例のセクションに提供される。



【表2−1】


【表2−2】


【0068】
あるいは、ポリペプチドは、腫瘍特異的抗原または腫瘍関連抗原ペプチド、例えば、MAGEファミリー(例えば、MAGE−1、MAGE−3)、MART−1、gp100、チロシナーゼ、チロシン関連タンパク質−1、BAGE、GAGE−1、GAGE−3、gp75、腫瘍胎児抗原、変異体p53、変異体ras、またはテロメラーゼである。TSA核酸およびポリペプチドには、例えば、GenBank登録番号NM_004988(ヒトMAGE−1);NM_005367(ヒトMAGE−12);およびHSU10340(ヒトMAGE−2)が含まれる。TSA核酸およびポリペプチドの配列は、National Center for Biotechnology Information, National Library of Medicine, National Institutes of Healthからオンラインで入手できる。
【0069】
MAGEファミリーの遺伝子は、ヒト腫瘍特異的抗原をコードし、このファミリーの種々の遺伝子は種々の組織構造の腫瘍(黒色腫、肺ガン、結腸癌、乳ガン、喉頭ガン、肉腫、特定の白血病)によって発現され、正常な細胞(通常は、精巣および胎盤を除く)によっては発現されない。野生型MAGE−1核酸およびポリペプチドの配列、ならびに修飾されたMAGE−1ポリペプチドの配列は表4に示される。疎水性分析(Kyte-Doolittle)は、配列番号6のアミノ酸90〜116および191〜207が疎水性ドメインを含むことを示している。破壊的エレメント(DDジペプチド、太字で示される)は、表4に示される配列番号7〜8によって提供されるように、修飾されたMAGE−1ポリペプチドを生じるようにMAGE−1ポリペプチド配列中に導入される。
【表3−1】

【表3−2】

【0070】
修飾されたポリペプチドは、核酸配列から発現させることができる。このような配列は、タンパク質合成を指示することができる、DNA、RNA、またはそれらの任意の変異体である。
【0071】
修飾されたポリペプチドをコードする発現ベクター
修飾されたポリペプチドをコードする核酸は適切な発現ベクター中に存在する。適切な発現ベクターにより、修飾されたポリペプチドをコードする完全な核酸配列を保有しており、それを発現することができるベクターが意味される。このようなベクターとして、上記の核酸配列を、任意の好ましいかもしくは必要な作動エレメントとともにその中に挿入することができ、その後に続いて宿主生物中に導入するかまたはその中に送達させることができ、そのような生物の中で複製させることができる任意のベクターが挙げられる。ベクターは、トランスフェクションまたは感染によって導入することができる。好ましいベクターは、その制限部位がきちんと解説されており、核酸配列の転写に好ましいかまたは必要な作動エレメントを含むベクターである。ベクターとしては、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、プラスミドベクター、コスミドベクター、細菌の人工染色体(BAC)ベクター、および酵母の人工染色体(YAC)ベクターが挙げられる。
【0072】
本発明のベクターを構築するためには、修飾されたポリペプチドとそれに付随する作動エレメントをコードする核酸配列の複数のコピーをそれぞれのベクターに挿入することができることにさらに注目すべきである。このような実施態様では、宿主生物は、1つのベクターについて、より多量の所望される修飾されたポリペプチドを生産するであろう。同様の様式で、それぞれの修飾されたポリペプチドとそれに付随する作動エレメントをコードする核酸配列の1つのコピー(または複数のコピー)をベクターに挿入することにより、1つのベクターから複数の異なる修飾されたポリペプチドを発現させることができる。
【0073】
好ましいベクターは、真核生物細胞中で機能するベクターである。このようなベクターの例として、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、または当該分野で実施されているDNA構築物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましいベクターとして、ワクシニアウイルスが挙げられる。
【0074】
ポリペプチドの三次元構造の修飾の確認は、当該分野で公知の方法によって決定される。例えば、コンピューターを使った分子モデリング(例えば、球面調和関数)または結晶学的解析が使用され得る。あるいは、修飾されたポリペプチドまたはそのペプチド断片のNMRまたは質量スペクトル分析が行われる。さらに、修飾されたポリペプチドは、未修飾のポリペプチドと比較して修飾されたポリペプチドに対して異なる活性を有する1つ以上のタンパク質分解酵素(例えば、プロテアソーム酵素)(すなわち、タンパク質分解酵素は、より大きなタンパク質分解活性を有するか、または低いタンパク質分解活性を有する)と接触させられる。
【0075】
本発明は、T細胞応答を誘発させるために有効な、修飾されたポリペプチドまたは修飾されたポリペプチドをコードする核酸(すなわち、ワクチン)の量を投与する段階を含む、免疫化の方法を提供する。このようなT細胞応答は、51C放出アッセイ(Restifo,N.P.J of Exp. Med., 177:265-272(1993))を含む種々のアッセイによって測定することができる。このような細胞傷害性応答を生じることができるT細胞は、CD8T細胞、CD4T細胞、またはCD8T細胞とCD4T細胞を含む集団であってもよい。
【0076】
アミノ酸配列中への破壊的エレメントの直接的な挿入
本発明は、ポリペプチドの一次アミノ酸配列中への破壊的エレメントの挿入により作成された修飾されたアミノ酸を提供する。挿入は、当業者に公知の方法によって行われる。例えば、1つ以上のアミノ酸を、化学的に合成されたポリペプチド中に挿入する、化学的に合成されたポリペプチドから欠失させる、または化学的に合成されたポリペプチド中の1つ以上の異なるアミノ酸を置換することができる。
【0077】
修飾されたポリペプチドをコードする核酸の投与
ワクチンは、例えば、γ−インターフェロン、サイトカイン、化学療法薬、または抗炎症薬を含む他の治療用成分と組み合わせて投与され得る。
【0078】
ワクチンは、純粋であるかまたは実質的に純粋な形態で投与することができるが、医薬組成物、処方物、または調製物としてそれらを存在させることが好ましい。そのような処方物は、1つ以上の薬学的に許容される担体と状況に応じた他の治療用成分とともに、修飾されたポリペプチドまたは修飾されたポリペプチドをコードする核酸を含む。他の治療用成分としては、抗原提示を増大させる化合物、例えば、γ−インターフェロン、サイトカイン、化学療法薬、または抗炎症薬が挙げられる。処方物は、通常、単位投与量形態で提示され得、そして薬学の分野で周知の方法によって調製され得る。
【0079】
静脈内、筋肉内、皮下、または腹腔内投与に適切な処方物は、通常、溶液とともに、有効成分の滅菌水溶液を含み、溶液は、好ましくは、レシピエントの血液と等張性である。このような処方物は、塩化ナトリウム(例えば、0.1〜2.0M)、グリシンなどのような生理学的に適合性の物質を含み、生理学的条件と適合する緩衝化されたpHを有している水の中に固体の有効成分を溶解させて水溶液とし、上記溶液を滅菌することによって、調製され得ることが便利である。これらは、単位用量または複数回用量の容器、例えば、シールされたアンプルまたはバイアル中に入れられ得る。
【0080】
リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を有している感染細胞に対して標的化されたリポソームを含む)はまた、薬学的に許容される担体として使用することもできる。これらは、当業者に公知の方法に従って、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されているように調製することができる。
【0081】
遺伝子治療用ベクターは、例えば、静脈注射、局所投与(例えば、米国特許第5,328,470号を参照のこと)によって、または定位注射(例えば、Chen et al., 1994, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:3054-3057を参照のこと)によって、被験体に送達することができる。
【0082】
本発明の処方物には、安定剤が配合される場合がある。例示的な安定剤は、ポリエチレングリコール、タンパク質、糖類、アミノ酸、無機酸、および有機酸であり、これらは、単独で、または混合物としてのいずれかで使用され得る。2つ以上の安定剤を、適切な濃度および/またはpHで水溶液中で使用することができる場合もある。このような水溶液の特異的な浸透圧は、通常、0.1〜3.0オスモ(osmos)の範囲であり、好ましくは、0.80〜1.2の範囲である。水溶液のpHは、5.0〜9.0の範囲、好ましくは、6〜8の範囲内になるように調節される。
【0083】
経口用の調製物が所望される場合は、組成物は、特に乳糖、ショ糖、デンプン、タルク、ステアリン酸マグネシウム、結晶性セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、グリセリン、アルギン酸ナトリウム、またはアラビアガムなどのような、一般的な担体と混合され得る。
【0084】
免疫化の方法には、T細胞応答を誘発するために効果的な量の修飾されたポリペプチドの生産を宿主生物に指示することができる核酸配列を投与する段階が含まれ得る。このような核酸配列は、当業者に公知の方法によって、適切な発現ベクター中に挿入され得る。生体内で効率の高い遺伝子送達を生じるために適切な発現ベクターとして、レトロウイルス、アデノウイルス、およびワクシニアウイルスベクターが挙げられる。そのような発現ベクターの作動エレメントは当業者に公知である。好ましいベクターはワクシニアウイルスである。
【0085】
修飾されたポリペプチドをコードする核酸配列を含む発現ベクターは、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、または経口で投与することができる。好ましい投与経路は静脈内である。
【0086】
修飾されたポリペプチド、および修飾されたポリペプチドの宿主生物での合成を指示することができる核酸配列を含む発現ベクターは、キットの形態で単独で、または医薬組成物の形態で供給され得る。
【0087】
発現ベクターは、プロモーター、エンハンサー、および他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化)シグナルを含む1つ以上の調節配列を含む。このような調節配列は、例えば、Goeddel, GENE EXPRESSION TECHNOLOGY: METHODS IN ENZYMOLOGY 185, Academic Press,San Diego,Calif.(1990)に記載されている。
【0088】
適切な誘導性の非融合大腸菌(E.coli)発現ベクターの例として、pTrc(Amrann et al.,(1988)Gene 69:301-315)およびpET 11d(Studier et al., GENE EXPRESSION TECHNOLOGY:METHODS IN ENZYMOLOGY 185, Academic Press,San Diego,Calif.(1990) 60-89)が挙げられる。
【0089】
本発明はまた、ガン、ウイルス感染、細菌感染、寄生虫感染、または自己免疫疾患に対して哺乳動物を免疫化するための、薬学的に許容される担体の中に修飾されたポリペプチドまたは修飾されたポリペプチドの宿主生物による合成を指示することができる核酸配列を含む発現ベクターを含むワクチンを提供する。別の実施形態では、それぞれが異なる修飾されたポリペプチドの宿主生物による合成を指示することができる核酸配列を含む複数の発現ベクターが、多価ワクチンとして投与され得る。
【0090】
ワクチン接種は、従来の方法によって行うことができる。例えば、修飾されたポリペプチドは、生理食塩水または水のような適切な希釈剤、あるいは、完全なアジュバントまたは不完全なアジュバントの中で使用することができる。ワクチンは、静脈内、腹腔内、筋肉内、および皮下のような、T細胞応答を誘発するために適切な任意の経路によって投与することができる。ワクチンは、1回投与され得るか、またはT細胞応答が誘発されるまで定期的に投与され得る。T細胞応答は、細胞傷害性アッセイ、増殖アッセイ、およびサイトカイン放出アッセイを含むがこれらに限定されない、当業者に公知の種々の方法によって検出され得る。
【0091】
処方物中で使用される正確な用量もまた、投与経路、疾患または障害の全体的な重篤度に応じて異なり、医師の判断とそれぞれの患者の状況にしたがって決定されるべきである。最終的には、かかりつけの医師が、それぞれの個々の患者を処置するために用いられる本発明のタンパク質の量を決定する。
【0092】
本発明はまた、ガン、ウイルス感染、細菌感染、寄生虫感染、細胞増殖障害もしくは自己免疫疾患のような遺伝子発現の変化が伴う障害を、修飾されたポリペプチド、または修飾されたポリペプチドの宿主生物による合成を指示することができる核酸配列を含む発現ベクターを含む医薬組成物を治療有効量で投与することによって処置するための方法を含む。再び、ワクチンとして、複数の発現ベクターが同時に投与される場合もある。治療的に提供される場合は、修飾されたポリペプチド、または修飾されたポリペプチドをコードする発現ベクターは、ガン、ウイルス、細菌、寄生虫、プリオン、または自己免疫疾患によって引き起こされる感染の発症時(または発症後)に、あるいはそのような感染または疾患の任意の症状の発症の時点で提供される。修飾されたポリペプチド、または修飾されたポリペプチドをコードする発現ベクターの治療的な投与は、感染または疾患を弱めるように作用する。
【0093】
好ましい実施形態は、修飾されたポリペプチドをコードする核酸配列を含むワクシニアウイルスを、哺乳動物に対して治療有効量で投与する段階を含む処置方法である。
【実施例】
【0094】
実施例1:プラスミドおよびワクシニアウイルス組換え体の構築
表1に示されるNP−遺伝子を含むプラスミドが構築された。これらのプラスミドが、DNAワクチン接種のための「安定な」NP−抗原および「不安定化」NP−抗原を発現するワクシニアウイルス(VVR)の組換え体を構築するために利用された(表2)タンパク質は、オルニチン-デカルボキシラーゼ(Clontech)のC末端モチーフを使用して脱安定化させられた。
【表4】


【表5】


【0095】
実施例2:ワクシニアウイルス組換え体にクローニングしたNP-タンパク質の発現およびタンパク質分解安定性
CV1細胞に、W−NPまたはW−dNP組換え体が接種された(1bfu/細胞)。40時間後、細胞が40μg/mlのシクロヘキシミドで処理され、さらに8時間インキュベートされた。細胞が回収され、ホモジナイズされ、タンパク質内容物が、ウェスタンブロットによってNP−タンパク質のレベルについて試験された。ウェスタンブロットの結果は、いずれの組換え体も、その自然界に存在している配列のNPタンパク質を活発に発現しており、C末端モチーフ(dNP)が含まれていることを示している。C末端モチーフを含む融合体は、dNPのタンパク質分解によるプロセシングを何ら有意に増大させるように誘導することはなかった。NPおよびdNPのいずれもが、容易にユビキチネーションされて、ウェスタンブロット上に3つのバンドを有しており、堅い球状の3−D立体構造がタンパク質をプロテアソームプロセシングから保護した。
【0096】
実施例3:W−NPおよびW−dNP組換え体の防御免疫反応
防御免疫反応を試験するために、Balb/cマウスは、対応するVVR株で2回免疫化され、A型インフルエンザウイルス(IVA)に感染させられた。Balb/cマウスは、A型インフルエンザウイルスA/Aichi 2/68(N3H2)に感染させられた。表3に示される結果は、VVRベクターによって送達されたNP−タンパク質が、A型インフルエンザウイルスによる感染に対する有効な保護物質であることを示している。重要なことは、感染に使用された株が、NP−タンパク質がクローニングされた株とは離れたウイルス株であったことである。このことは、NP−タンパク質によるT−抗原性ワクチン接種が、広い範囲のA型インフルエンザ株に対して防御することを示している。
【表6】


【0097】
実施例4:インフルエンザワクチンのコンピューターによる作成
改良されたインフルエンザワクチンは以下のように作成することができる。インフルエンザポリペプチド(例えば、NPもしくはヘマグルチニン(HA))またはその一部の三次元構造は、分子モデリング、結晶解析、あるいは当業者に公知である任意の他の手段によって決定される。1つ以上の破壊的エレメントがタンパク質の一次アミノ酸配列中に導入され(例えば、表1に開示された修飾されたNPペプチドを参照のこと)、これらのエレメントの三次元構造に対する影響(単数または複数)が上記のように決定される。本発明の実施形態では、破壊的エレメントはポリペプチドのαヘリックス領域に配置され、その結果、上記のαヘリックス領域が破壊される。あるいは、修飾されたポリペプチドが未修飾のタンパク質に対しては作用しないプロテアーゼの基質となるように、破壊的エレメントが導入される場合もある。修飾されたポリペプチドおよび未修飾のポリペプチドは培養細胞中で発現させられ、それらの安定性が標準的なアッセイによって定量化される。
【0098】
実施例5:抗原提示を増大させるための修飾されたインフルエンザNPポリペプチドの使用
インフルエンザNPポリペプチド配列は、ごくわずかなβ−鎖を伴って、主にα−ヘリックス構造を有する。二次構造の分析は、NPポリペプチドはおよそ39%がα−ヘリックスであり、16%がβ−鎖であり、45%がループおよびターンであることを示している。さらに、NPポリペプチドは球状タンパク質である(498個のアミノ酸のうち216個が露出させられていると予想される)。NPポリペプチドの1つのヘリックス領域は、配列番号2のアミノ酸256から261までであり、アミノ酸残基261だけがタンパク質の表面上に露出させられていると予想される。したがって、アミノ酸256と257(LT)は、2つのアスパラギン酸残基(DD)による置き換えの標的である。この標的化された突然変異は、PCRに基づく突然変異誘発を使用してNP核酸に対して行われる。得られる修飾されたNP核酸は発現ベクターにクローニングされ、これは宿主細胞に導入される。発現させられた修飾されたNPが発現させられ、修飾されたポリペプチドのタンパク質分解が、発現させられた野生型NPポリペプチドと比較される。発現させられた修飾されたNPポリペプチドは、B細胞、マクロファージ、または樹状細胞のような抗原提示細胞(APC)と接触させられ、修飾されたNPポリペプチドの断片の提示の増大が、APCと接触させられた野生型NPポリペプチドと比較して決定される。
【0099】
他の研究者によって行われた以前の研究は、ユビキチネーションを増大させるNPタンパク質の外側部分の配列を含むことによる、細胞中でのNPタンパク質の分解のある程度の増大を示した(例えば、Gschoesser et al.,2002 Vaccine 20:3731-38;Anton et al., 1999 J.Cell Biol.146:113-124;Anton et al., 1998 J Immunol.160(10):4859-68;およびCerundolo et al.,1997 Eur.J.Immunol.27:336-41を参照のこと。)この分解の程度は、免疫応答の発生に対してごくわずかな程度の良好な抗原提示を生じる。
【0100】
修飾されたNPポリペプチドは、ジペプチド配列DDをコードする核酸配列を、これらの2つのアミノ酸が配列番号2のM136とM137の間に挿入されるように挿入することにより、修飾されたNP核酸から作成された。修飾されたNP核酸配列は、CMVプロモーターの調節下にFLAG−タグを含むベクター中に挿入された。HeLa細胞は、修飾されたNPベクター、または未修飾のNPポリペプチドをコードするベクターのいずれかで一時的にトランスフェクトされたか、あるいは擬似トランスフェクトされた。48時間後、トランスフェクトされた細胞は、タンパク質合成の阻害因子であるシクロヘキシミド(CHI)で、またはCHIとプロテアソームの阻害因子であるMG132との組み合わせで処理された。未処理の細胞は対照とされた。細胞は、1、2、または3時間後に溶解させられ、細胞溶解物がポリアクリルアミドゲル電気泳動され、その後、抗FLAG抗体で免疫ブロッティングされた。図1aに示されるように、CHIの存在下で修飾されたNPポリペプチドを発現する細胞は、CHIに曝されていない修飾されたNPを発現する細胞、または未修飾のNP(「正常なNP」)ポリペプチドを発現する細胞のいずれよりも、CHIの存在下またはCHIが存在しない条件下で、実質的に少ない全長のNPポリペプチド(矢印で示される)を有する。特に、CHIとプロテアーゼ阻害因子であるMG132の存在下での3時間の修飾されたNPポリペプチドのインキュベーションは、修飾されたNPポリペプチドのタンパク質分解をブロックする。
【0101】
実施例6:ワクシニアウイルスベクターにクローニングされた修飾されたNPタンパク質の作成、発現、およびタンパク質分解安定性
A型インフルエンザ核タンパク質遺伝子(例えば、配列番号1、これは、A型インフルエンザウイルス株A/Paris/908/97(H3N2)に相当する)が、PCRに基づく突然変異誘発のような破壊的エレメントを挿入するための特異的突然変異誘発に供され、その結果、修飾された核酸が作成される。修飾された核酸は、修飾されたNPポリペプチド(例えば、配列番号3〜4)をコードする。修飾された核酸は、修飾されたNPポリペプチド(mNP)、または野生型(未修飾の)NPポリペプチド(Wt−NP)を発現することができる、ワクシニアウイルス組換え体、あるいはDNAワクチン接種のための組み換えDNAを作成するために使用される、ワクシニアウイルスベクター(例えば、修飾されたワクシニアウイルスAnkaraベクター)またはプラスミド発現ベクター(例えば、pcDNA3(Invitrogen))のようなベクターにクローニングされる。特定の実施形態では、NPポリペプチドが、FLAG、c−myc、またはpoly−His(6×His)のような免疫原性エピトープを含む融合タンパク質として発現されるように、修飾された核酸がエピトープタグ化ベクターにクローニングされる。
【0102】
上皮細胞(例えば、CV1細胞株)に、mNPまたはWtNP組換え体が接種される(1つの細胞あたり1バースト形成単位(bfu))。40時間後、細胞は40μg/mlのシクロヘキシミドで処理され、さらに8時間インキュベートされる。細胞が回収され、ホモジナイズされ、そして発現させられたタンパク質内容物が、mNPおよびWtNPポリペプチドのレベルについてウェスタンブロッティングによって決定される。ウェスタンブロットの結果は、NPへの破壊的エレメント(例えば、DD)の導入が、NPポリペプチドのタンパク質分解によるプロセシングの顕著な増大を誘導したことを示している。
【0103】
防御免疫反応を測定するために、Balb/cマウスは、修飾されたNPまたはWtNPのいずれかをコードする核酸組換え体またはワクシニアウイルス組換え体で2回免疫化される。野生型NP核酸ウイルスを含む核酸ベクターまたは組換え体ワクシニアウイルスベクターを2回免疫化されたマウスは対照として使用される。6週間後、Balb/cマウスをA型インフルエンザウイルスA/Aichi 2/68(N3H2)に感染させる。しかし、A/Paris/908/97(H3N2)株のような他の株も想定される。VVRベクターによって送達された修飾されたNP−タンパク質は、野生型NPタンパク質と比較して、A型インフルエンザウイルスによる感染に対するより有効な保護物質である。WtNPで免疫化されたマウスと比較した、mNPで免疫化されたマウスの生存性の増大は、mNPがインフルエンザウイルスに対して防御性であることを示している。明らかに、感染に使用されたA/Aichi 2/68(N3H2)株は、NP−タンパク質がクローニングされた株とは異なる。したがって、修飾されたNPタンパク質によるワクチン接種は、広い範囲のA型インフルエンザ株に対して防御する。
【0104】
実施例7:抗原提示を増大させるための修飾されたMAGE−1ポリペプチドの作成および使用
MAGE−1ポリペプチドの発現は、黒色腫を含むガンと関係している。MAGEポリペプチド配列は多数の疎水性ドメインを有する。野生型MAGE−1ポリペプチドは配列番号6に提供される。ポリペプチドの構造に基づくと、アミノ酸191〜207を含む領域は、2つのアスパラギン酸残基(DD)の挿入、またはアスパラギン酸残基での2つ以上のアミノ酸の置き換えのための標的である。この標的化された突然変異は、PCRに基づく突然変異誘発を使用してMAGE−1核酸(例えば、配列番号5に提供される核酸配列)に対して行われる。得られる修飾されたMAGE−1核酸は発現ベクターにクローニングされ、これは宿主細胞に導入される。複数の実施形態においては、修飾されたMAGE−1核酸配列が、プロモーターの調節下にエピトープタグ(例えば、FLAG−タグ)を含むベクターに挿入される。プロモーターは、当業者に公知であるような構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターであり得る。誘導性プロモーターは、必要とされる場合に、修飾されたMAGE−1核酸の発現をオン、オフに切り替えることができる。発現させられた修飾されたMAGE−1が発現させられ、修飾されたポリペプチドのタンパク質分解が、発現させられた野生型MAGE−1ポリペプチドと比較される。発現させられた修飾されたMAGE−1ポリペプチドは、マクロファージまたは樹状細胞のような抗原提示細胞(APC)と接触させられ、修飾されたMAGE−1ポリペプチドの断片の提示の増大が、APCと接触させられた野生型MAGE−1ポリペプチドと比較して決定される。
【0105】
哺乳動物被験体(例えば、ヒト患者)は、当業者に公知の遺伝的および/または他の診断試験によって決定されるように、ガンを有しているか、またはガン(例えば、黒色腫)に対して高い罹患性を有するとして同定される。哺乳動物への投与に適切なベクター中の修飾されたMAGE−1核酸が被験体に提供され、その結果、修飾されたMAGE−1核酸によってコードされる修飾されたMAGE−1ポリペプチドのタンパク質分解が、野生型(未修飾の)MAGE−1ポリペプチドと比較して、増大させられる。このタンパク質分解の増大は、抗原提示の増大、およびMAGE−1ポリペプチド(野生型MAGE−1ポリペプチドまたはその変異体のいずれか)を発現する細胞のクリアランス(例えば、崩壊)の増大を生じる。したがって、本発明は、ガンを有しているか、またはガンに対して高い罹患性を有する被験体を、修飾されたTSAまたはTAA核酸およびポリペプチドを使用して、上記のように処置するための方法を提供する。
【0106】
他の実施形態
本発明は、その詳細な説明と併せて記載されているが、上記の記載は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を説明するように意図され、その範囲を限定するようには意図されない。他の態様、利点、および変更が、以下の特許請求の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】図1は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)により分離され、抗−FLAG抗体を用いてブロットされた、FLAGタグを有するNP蛋白の写真映像のセットである。図1aは、シクロヘキシミド(CHI)で処理後の全長修飾NP蛋白の低下したレベルを示す。図1bは未修飾NPの蛋白分解はMG132処理によるプロテアーゼ阻害によりブロックされることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
修飾蛋白を対象に導入して免疫応答を誘導することを含む、対象における蛋白に対する免疫応答の誘導方法であって、該修飾蛋白が破壊的エレメントを含むものであり、該破壊的エレメントが該修飾蛋白の内部領域に存在するものである方法。
【請求項2】
該修飾ポリペプチドが、未修飾蛋白と比較して、蛋白分解に対して変化した感受性を有するものである請求項1記載の方法。
【請求項3】
該破壊的エレメントが該蛋白のドメイン構造中に存在するものである請求項1記載の方法。
【請求項4】
該アミノ酸配列の該内部領域が疎水的である請求項1記載の方法。
【請求項5】
該破壊的エレメントが両親媒性α−らせん領域に存在するものである請求項1記載の方法。
【請求項6】
該破壊的エレメントが、1またはそれ以上の疎水的アミノ酸に代わる1またはそれ以上の親水性アミノ酸を含むものである請求項1記載の方法。
【請求項7】
該疎水的アミノ酸がフェニルアラニン、システイン、イソロイシン、ロイシン、バリンおよびトリプトファンからなるより選択されるものである請求項6記載の方法。
【請求項8】
該親水性アミノ酸がアスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、リジン、またはアルギニンからなる群より選択されるものである請求項6記載の方法。
【請求項9】
該破壊的エレメントが1ないし10個の親水性アミノ酸を含むものである請求項6記載の方法。
【請求項10】
該1個またはそれ以上の親水性アミノ酸が連続したものである請求項6記載の方法。
【請求項11】
該蛋白がウイルス蛋白、腫瘍関連ポリペプチド、細胞増殖性疾患関連ポリペプチド、および疾病関連ポリペプチドからなる群より選択されるものである請求項1記載の方法。
【請求項12】
該ポリペプチドがウイルスコア蛋白である請求項1記載の方法。
【請求項13】
該ウイルスコア蛋白がNP蛋白である請求項12記載の方法。
【請求項14】
該修飾蛋白が、蛋白分解的プロセッシングを受ける場合、未修飾ウイルス蛋白と比較した場合、約50アミノ酸未満の長さにまで分解される、請求項1記載の方法。
【請求項15】
該修飾蛋白が、蛋白分解的プロセッシングを受ける場合、未修飾ウイルス蛋白と比較した場合、約25アミノ酸未満の長さにまで分解される、請求項1記載の方法。
【請求項16】
該修飾蛋白が、蛋白分解的プロセッシングを受ける場合、未修飾ウイルス蛋白と比較した場合、約5ないし10アミノ酸未満の長さにまで分解される、請求項1記載の方法。
【請求項17】
該破壊的エレメントがジペプチドである請求項1記載の方法。
【請求項18】
該ジペプチドがアスパラギン酸−アスパラギン酸である請求項17記載の方法。
【請求項19】
該破壊的エレメントが、該修飾ウイルス蛋白の三次構造を、野生型または未修飾のウイルス蛋白と比較した場合に、変化させるものである請求項1記載の方法。
【請求項20】
該応答がT細胞応答である請求項1記載の方法。
【請求項21】
免疫応答を誘発するに有効な量の、修飾ウイルス蛋白をコードする核酸分子を含むワクチン組成物であって、該修飾蛋白が破壊的エレメントを含み、該破壊的エレメントが該修飾ウイルス蛋白の内部領域に存在し、該核酸分子が発現されうるものである、ワクチン。
【請求項22】
該修飾ウイルス蛋白が、未修飾ウイルス蛋白と比較して、蛋白分解に対して変化した感受性を有するものである請求項21記載のワクチン。
【請求項23】
該核酸分子がプロモーターに作動可能に連結されている請求項21記載のワクチン。
【請求項24】
該核酸分子がベクターである請求項21記載のワクチン。
【請求項25】
該ベクターがワクシニアウイルスベクターである請求項24記載のワクチン。
【請求項26】
該修飾ポリペプチドが、未修飾ウイルス蛋白と比較して、蛋白分解に対して変化した感受性を有するものである請求項24記載のワクチン。
【請求項27】
該破壊的エレメントが該修飾ウイルス蛋白のドメイン構造中に存在するものである請求項26記載のワクチン。
【請求項28】
該アミノ酸配列の内部領域が1またはそれ以上の疎水性アミノ酸を含むものである請求項21記載のワクチン。
【請求項29】
該破壊的エレメントが両親媒性α−らせん領域に存在するものである請求項21記載のワクチン。
【請求項30】
該破壊的エレメントが、1またはそれ以上の疎水的アミノ酸に代わる1またはそれ以上の親水性アミノ酸を含むものである請求項21記載のワクチン。
【請求項31】
該疎水的アミノ酸がフェニルアラニン、システイン、イソロイシン、ロイシン、バリンおよびトリプトファンからなるより選択されるものである請求項30記載のワクチン。
【請求項32】
該親水性アミノ酸がアスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、リジン、またはアルギニンからなる群より選択されるものである請求項30記載のワクチン。
【請求項33】
該破壊的エレメントが1ないし10個の親水性アミノ酸を含むものである請求項30記載のワクチン。
【請求項34】
該1個ないしそれ以上の親水性アミノ酸が連続したものである請求項21記載の方法。
【請求項35】
該蛋白がインフルエンザウイルス蛋白である請求項21記載のワクチン。
【請求項36】
該ポリペプチドがウイルスコア蛋白である請求項21記載のワクチン。
【請求項37】
該ウイルスコア蛋白がNP蛋白である請求項21記載のワクチン。
【請求項38】
該修飾ウイルス蛋白が、蛋白分解的プロセッシングを受ける場合、対応未修飾ポリペプチドと比較した場合、約50アミノ酸未満の長さにまで分解される、請求項21記載のワクチン。
【請求項39】
該修飾ウイルス蛋白が、蛋白分解的プロセッシングを受ける場合、対応未修飾ポリペプチドと比較した場合、約25アミノ酸未満の長さにまで分解される、請求項21記載のワクチン。
【請求項40】
該修飾ウイルス蛋白が、蛋白分解的プロセッシングを受ける場合、対応未修飾ポリペプチドと比較した場合、約5ないし10アミノ酸未満の長さにまで分解される、請求項21記載のワクチン。
【請求項41】
該ペプチドがMHCクラスI分子に結合するものである請求項21記載のワクチン。
【請求項42】
修飾蛋白をコードする核酸分子を対象に導入することを含む、対象において蛋白に対する免疫応答を誘導する方法であって、該修飾蛋白が破壊的エレメントを含むものであり、該破壊的エレメントが該修飾蛋白の内部領域に存在し、該核酸分子が細胞において発現されうる場合に、免疫応答が誘導される、方法。
【請求項43】
請求項21記載のワクチンを対象に投与することを含む免疫方法。
【請求項44】
腹腔内、皮下、鼻腔内、静脈内、経口、局所および経皮デリバリーからなる群より選択される経路により投与が行われる請求項43記載の方法。
【請求項45】
該ワクチンがベクター中またはリポソーム中に入れて投与される請求項43記載の方法。
【請求項46】
該ベクターがウイルスベクター、DNAベクター、またはRNAベクターである請求項45記載の方法。
【請求項47】
抗原提示を促進する化合物、アジュバントおよびサイトカインからなる群より選択される化合物をさらに該対象に投与する、請求項43記載の方法。
【請求項48】
該化合物がインターフェロン−γである請求項47記載の方法。
【請求項49】
該対象が癌、ウイルス感染または不適切な遺伝子発現に関連した疾患にかかっている、あるいはかかる危険性がある、請求項43記載の方法。
【請求項50】
下記工程:
a)対象細胞を用意し;
b)該細胞を請求項21記載のワクチンと接触させ;次いで、
c)該細胞を対象に投与して、そのことにより該対象を免疫する
を含む免疫方法。
【請求項51】
免疫応答を誘発するに有効量の、修飾NPポリペプチドをコードする核酸分子を含むベクターを含有するワクチンであって、該修飾NPポリペプチドが破壊的エレメントを含み、該破壊的エレメントが該修飾NP蛋白の内部領域に存在し、該核酸分子がプロモーターに作動可能に連結されている、ワクチン。
【請求項52】
該プロモーターがCMVプロモーターまたはVV−P65プロモーターである請求項51記載のワクチン。
【請求項53】
該ベクターがワクシニアウイルスベクターである請求項52記載のワクチン。
【請求項54】
ポリペプチドをコードする核酸中に破壊的エレメントを導入して、修飾ポリペプチドを得て、次いで、該修飾ポリペプチドをワクチン担体と結合させて、ワクチンを得ることを含む、哺乳層物の免疫機構を刺激しうるワクチンを製造する方法であって、該破壊的エレメントが該修飾蛋白の内部領域に存在し、該修飾ポリペプチドが、未修飾蛋白と比較した場合に、蛋白分解に対して変化した感受性を有するものである、方法。
【請求項55】
ポリペプチドに破壊的エレメントを導入して、修飾ポリペプチドを得て、次いで、該修飾ポリペプチドをワクチン担体に結合させて、ワクチンを得ることを含む、哺乳動物の免疫機構を刺激しうるワクチンを製造する方法であって、該破壊的エレメントが該修飾蛋白の内部領域に存在し、該修飾ポリペプチドが、未修飾蛋白と比較した場合に、蛋白分解に対して変化した感受性を有するものである、方法。
【請求項56】
下記工程:
a)対象細胞を用意し;
b)該細胞を請求項21記載のワクチンと接触させ;次いで、
c)該細胞を対象に投与して、そのことにより該対象を免疫する
を含む免疫方法。
【請求項57】
免疫エフェクター細胞を抗原提示細胞と接触させることを含む、教育された(educated)、抗原特異的な免疫エフェクター細胞の実質的に純粋な集団を得る方法であって、該抗原提示細胞が修飾蛋白をコードする核酸分子を含み、該修飾蛋白が破壊的エレメントを含み、該破壊的エレメントが該修飾蛋白の内部領域に存在し、該核酸分子が該抗原提示細胞において発現されうるものである、方法。
【請求項58】
免疫エフェクター細胞を抗原提示細胞とともに培養することにより得られる、教育された(educated)、抗原特異的な免疫エフェクター細胞の実質的に純粋な集団であって、該抗原提示細胞が修飾蛋白をコードする核酸分子を含み、該修飾蛋白が破壊的エレメントを含み、該破壊的エレメントが該修飾蛋白の内部領域に存在し、該核酸分子が該抗原提示細胞において発現されうるものである、集団。
【請求項59】
該抗原特異的免疫エフェクター細胞がTリンパ球である請求項58記載の集団。
【請求項60】
修飾蛋白を対象に導入することを含む、対象における蛋白に対する免疫応答の誘導方法であって、該修飾蛋白が破壊的エレメントを含み、該破壊的エレメントが該修飾蛋白の内部領域に存在し、該修飾蛋白がさらに修飾部位を含み、その結果、免疫応答が誘導されるものである、方法。
【請求項61】
該修飾部位が、リン酸化、脱リン酸化、糖鎖付加、アセチル化、メチル化、ユビキチネーション、硫酸化、蛋白分解、プレニル化およびセレン取り込みからなる群より選択される生物学的プロセスのための部位である、請求項60記載の方法。
【請求項62】
該生物学的プロセスが該蛋白の三次構造の変化を引き起こすものである、請求項61記載の方法。
【請求項63】
配列番号:3のアミノ酸配列を含む修飾ペプチド。
【請求項64】
配列番号:4のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む核酸分子。
【請求項65】
下記工程を含む、抗原の提示方法:
a)抗原提示細胞を核酸分子と接触させ、ここに該核酸分子は破壊的エレメントを有するポリペプチドをコードするものであり、該破壊的エレメントは該蛋白の内部領域に存在するものであり;次いで
b)該抗原提示細胞において該核酸分子を発現させて、該ポリペプチド由来の1またはそれ以上のポリペプチドを該抗原提示細胞により抗原として提示させる。
【請求項66】
下記工程を含む、ワクチンの処方方法:
a)ウイルス蛋白をコードするアミノ酸配列を用意し;
b)破壊的エレメントの導入により破壊され、該破壊により該ポリペプチドの三次構造が変化する、該ポリペプチドの1またはそれ以上のアミノ酸を同定し;次いで
c)該蛋白をコードする核酸配列中に該破壊的エレメントを導入する、ここに該核酸は発現されうるものである。


【図1】
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【公表番号】特表2007−525403(P2007−525403A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−562579(P2004−562579)
【出願日】平成15年12月22日(2003.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2003/041350
【国際公開番号】WO2004/058188
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(505233387)キュアラブ・インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】CURELAB, INC.
【Fターム(参考)】