説明

ワクチン組成物

本発明は、特に、病原体に対する免疫応答を惹起する方法であって、(i)該病原体に由来する1つまたはそれ以上の第1の免疫原性ポリペプチド;(ii)該病原体に由来する1つまたはそれ以上の第2の免疫原性ポリペプチドをコードする1つまたはそれ以上の異種ポリヌクレオチドを含んでなる1つまたはそれ以上のウイルスベクター;および(iii)アジュバント;を投与することを含んでなり、この際、該1つまたはそれ以上の第1の免疫原性ポリペプチド、該1つまたはそれ以上のウイルスベクター、および該アジュバントを同時投与する方法に関する。また、本発明は、該ポリペプチド、ウイルスベクターおよびアジュバントを使用するワクチン、医薬組成物、キットおよび使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
発明の分野
本発明は、哺乳動物、特にヒトにおいて免疫応答を刺激する際の、特に、病原体による感染の防止および処置のための、新規なワクチン組成物およびその使用に関する。特に、本発明は、後の複雑なプライム・ブースト計画に頼ることなく、対象においてCD4+およびCD8+ T細胞応答ならびに抗体応答を誘導することができる組成物に関する。
【0002】
背景技術
19世紀後期から、不活性化した全生物のワクチン接種における使用が成功している。比較的最近になって、抽出物、サブユニット、トキソイドおよび莢膜多糖類の投与を含むワクチンが使用されている。遺伝子工学技術が利用可能になって以来、組換えタンパク質の使用が有利な戦略になっており、天然供給源に由来する精製タンパク質の使用に付随する多くのリスクが除かれている。
【0003】
初期のワクチンアプローチは、インビボで免疫応答のある種の側面を刺激するタンパク質の投与に基づいていた。その後、宿主によって転写され、免疫原性タンパク質に翻訳されうるDNAの投与によっても免疫応答を惹起しうることが評価されている。
【0004】
哺乳動物の免疫応答は、2つの重要な要素、即ち、体液性応答および細胞媒介応答を有している。体液性応答には、循環抗体の生成が関与しており、該抗体がその特異的抗原に結合し、それによって抗原を中和し、他の細胞(細胞毒性または食細胞性のいずれかである)が関与する過程による該抗原のその後の浄化を有利にする。B細胞は、抗体の生成(血漿B細胞)、ならびに免疫学的な体液性記憶の保持(記憶B細胞)、即ち、抗原への最初の暴露(例えばワクチン接種による)の後の数年間にわたって抗原を認識する能力の原因である。細胞媒介応答には、数多くの異なる種類の細胞(特にT細胞)の相互作用が関与している。T細胞は、多くの異なるサブセット、主にCD4+およびCD8+T細胞に分けられる。
【0005】
マクロファージや樹状細胞などの抗原提示細胞(APC)は、免疫系の見張りとして働き、外来抗原に対して身体をスクリーニングする。細胞外の外来抗原がAPCによって検出されたときに、これらの抗原はAPC内部に取り込まれ(飲み込まれ)、そこで、より小さいペプチドにプロセシングされるであろう。次いで、これらのペプチドは、APC表面の主要組織適合遺伝子複合体クラス II(MHC II)分子上に提示され、そこで、CD4表面分子を発現する抗原特異的なTリンパ球(CD4+T細胞)によって認識されることができる。CD4+T細胞が、追加の十分な共刺激性シグナルの存在下にMHC II分子上の抗原(これに該細胞が特異的である)を認識したときに、それらは活性化され、一連のサイトカインを分泌し、次いでこれが免疫系の他のアームを活性化する。通常、CD4+T細胞は、抗原認識に続いてそれらがもたらす応答の種類に依存して、Tヘルパー1(Th1)またはTヘルパー2(Th2)サブセットに分類される。ペプチド-MHC II複合体を認識したときに、Th1 CD4+T細胞は、インターロイキンおよびサイトカイン(インターフェロンガンマなど)を分泌し、それによって、毒性化学物質(酸化窒素および反応性酸素/窒素種など)を放出するようにマクロファージを活性化する。また、IL-2およびTNF-αも、通常はTh1サイトカインとして類別される。対照的に、Th2 CD4+T細胞は、インターロイキン(IL-4、IL-5またはIL-13など)を分泌するのが普通である。
【0006】
ヘルパーCD4+T細胞の他の機能には、抗体を産生および放出するようにB細胞を活性化するのを助けることが含まれる。また、これらは、抗原特異的なCD8+T細胞(CD4+T細胞と並ぶ他の主要T細胞サブセットである)の活性化にも関与することができる。
【0007】
CD8+ T細胞は、ペプチドが、適当な共刺激性シグナルの存在下に主要組織適合遺伝子複合体クラスI(MHC I)分子によって宿主細胞の表面に提示されたときに、該ペプチドを認識する(これに該細胞が特異的である)。MHC I分子上に提示されるためには、外来抗原は、ウイルスまたは細胞内細菌が宿主細胞に直接入り込むとき、またはDNAワクチン接種後のように、細胞の内部(サイトゾルまたは核)に直接入ることを必要とする。細胞内部において、抗原は小さいペプチドにプロセシングされ、これがMHC I分子上に積載され、これが細胞表面に再び向けられる。活性化したときに、CD8+T細胞は、一連のサイトカイン(インターフェロンガンマなど)を分泌し、これがマクロファージおよび他の細胞を活性化する。特に、これらCD8+ T細胞のサブセットは、活性化したときに溶解性および細胞毒性の分子(例えば、グランザイム、パーフォリン)を分泌する。このようなCD8+T細胞は、細胞毒性T細胞と称される。
【0008】
より最近になって、MHC I複合体上への細胞外抗原またはそのフラグメントの積載に関与する抗原提示の別経路が記載され、「交差提示」と称されている。
【0009】
また、T細胞応答の性質は、ワクチンにおいて使用されるアジュバントの組成によっても影響を受ける。例えば、MPLおよびQS21を含むアジュバントは、Th1 CD4+T細胞を活性化してIFN-γを分泌させることが示されている(Stewartら、Vaccine、2006年、24 (42-43):6483-92)。
【0010】
アジュバントは、タンパク質抗原に対する免疫応答を増強する際に価値を有することが周知であるが、DNAまたはDNAに基づくベクターによるワクチン接種と同時に使用することは一般的ではなかった。何故アジュバントがDNA-ベクターに基づくワクチンと同時に使用されていなかったかについては、いくつかの仮説が存在する。実際のところ、アジュバントとベクターの間の干渉が、それらの安定性に影響を有することもある。さらに、アジュバントを弱毒化ベクターに加えると、そのような生成物によって誘導される反応源性を増大させることもあると予測する者もいる。最後に、DNA-ベクターに基づくワクチンの免疫原性を増大させると、ベクターそれ自体に対する増強された中和性の免疫応答を導くことがあり、それによって、同一のベクターに基づくワクチンのその後の注射の強化効果を妨げることがある。実際に、熱帯熱マラリア(P. falciparum)感染に対する保護に向けられたワクチン接種プロトコールにおいて、Jonesら、J Infect Diseases、2001年、183、303-312は、DNAによるプライムに続いて強化組成物としてDNA、組換えタンパク質およびアジュバントを組合せた後の不都合な結果を報告している。実際のところ、寄生虫血症のレベルは、強化組成物がタンパク質およびアジュバントのみを含む群において有意に低かった。このプロトコールにおけるDNA、組換えタンパク質およびアジュバントの組合せの使用は、寄生虫血症ならびに抗体応答の結果に悪影響を及ぼしたと結論された。
【0011】
他方において、アジュバント-DNAに基づくベクターワクチンの効力の増強が報告されている(Ganneら、Vaccine、1994年、12 (13)、1190-1196)。特に、油アジュバントの添加による複製欠損アデノウイルス-ベクターワクチンの効力増強が比較的高い抗体レベルと関係付けられたが、CD4+およびCD8+T細胞応答に対する影響は報告されていない。
【0012】
アジュバントとしての病原性ウイルスの使用が、国際公開第2007/016715号パンフレットに開示されている。該ウイルスがいずれかの異種ポリヌクレオチドを含むこともできることは言及されていない。
【0013】
一般に、CD4+およびCD8+細胞の両方の刺激が、最適保護免疫のために、特に、ある種の疾患(HIV感染/AIDSなど)において必要であると考えられている。予防的または治療的のいずれかで最適免疫応答を誘導するためには、CD4+およびCD8+細胞の両方の刺激が望ましい。これが、「プライム・ブースト」ワクチン接種戦略の主な目的の1つであり、この際、タンパク質に基づくワクチン(主にCD4+ T細胞を誘導する)とDNA-ベクターに基づくワクチン、即ち、裸のDNA、ウイルスベクターまたは細胞内細菌ベクター、例えばリステリア(主にCD8+T細胞を誘導する)との交互投与またはその逆が、CD4+およびCD8+T細胞応答の両方を活性化する可能性が最も高い。
【0014】
しかし、プライム・ブーストワクチン戦略は、一般に比較的大きいかまたは比較的バランスの取れた応答を生じることができるが、1回を超えて、およびほとんど2回を超えてワクチン接種する必要性は、特に、発展途上国のための大規模免疫付与プログラムにおいて、煩わしいかまたは実行不可能であることもある。
【0015】
さらに、既に上記したように、ベクターそれ自体に対して惹起されることもある免疫のゆえに、ウイルスベクター成分を強化することができないことも多い。
【0016】
従って、本発明の目的には、以下に挙げるものの1つまたはそれ以上が含まれる:
(a)CD4+および/またはCD8+細胞および/または抗体の産生を刺激し、特に、繰り返し免疫付与の必要性を除去または軽減する完全なワクチン接種プロトコールおよびワクチン組成物を提供すること;
(b)免疫原性ポリペプチド単独またはポリヌクレオチド単独を含むワクチン組成物と比較して、あるいは、免疫原性ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの別々の投与を含む通常のプライム・ブーストプロトコールと比較して、CD4+細胞および/またはCD8+細胞および/または抗体の産生の刺激において、同等に良好であるかまたはより良好であるワクチン接種プロトコールおよびワクチン組成物を提供すること;
(c)Th1細胞応答を刺激するかまたはより良好に刺激するワクチン組成物を提供すること;
(d)成分、特にウイルスベクターの必要用量が最少化されるワクチン組成物およびワクチン接種プロトコールを提供すること;および
(e)より一般的に、病原体によって引き起こされる疾患の処置または防止に有用なワクチン組成物およびワクチン接種プロトコールを提供すること。
「より良好に刺激する」とは、応答の強さおよび/または持続性および/または広さが増強されることを意味する。
【発明の概要】
【0017】
即ち、本発明によれば、病原体に対する免疫応答を惹起する方法であって、
(i)該病原体に由来する1つまたはそれ以上の第1の免疫原性ポリペプチド;
(ii)該病原体に由来する1つまたはそれ以上の第2の免疫原性ポリペプチドをコードする1つまたはそれ以上の異種ポリヌクレオチドを含んでなる1つまたはそれ以上のウイルスベクター;および
(iii)アジュバント
を投与することを含んでなり、この際、該1つまたはそれ以上の第1の免疫原性ポリペプチド、該1つまたはそれ以上のウイルスベクター、および該アジュバントを同時投与する方法が提供される。
【0018】
本発明の特定の態様によれば、
(i)病原体に由来する1つまたはそれ以上の第1の免疫原性ポリペプチド;
(ii)該病原体に由来する1つまたはそれ以上の第2の免疫原性ポリペプチドをコードする1つまたはそれ以上の異種ポリヌクレオチドを含んでなる1つまたはそれ以上のウイルスベクター;および
(iii)アジュバント
を含んでなるワクチン組成物が提供される。
【0019】
また、
(i)病原体に由来する1つまたはそれ以上の第1の免疫原性ポリペプチド;
(ii)該病原体に由来する1つまたはそれ以上の第2の免疫原性ポリペプチドをコードする1つまたはそれ以上の異種ポリヌクレオチドを含んでなる1つまたはそれ以上のウイルスベクター;および
(iii)アジュバント
を含んでなる免疫原性組成物も提供される。
【0020】
これらのワクチンおよび免疫原性組成物は、病原体特異的なCD4+ T細胞および/またはCD8+ T細胞および/または抗体の産生を適切に刺激する。
【0021】
「病原体特異的なCD4+ T細胞および/またはCD8+ T細胞および/または抗体」とは、全病原体またはその一部(例えば、免疫原性サブユニット)を特異的に認識するCD4+ T細胞および/またはCD8+ T細胞および/または抗体を意味する。「特異的に認識する」とは、CD4+ T細胞および/またはCD8+ T細胞および/または抗体が、非特異的な様式ではなく免疫特異的な様式で該病原体(またはその一部)を認識することを意味する。
【0022】
また、哺乳動物において免疫応答を刺激する方法であって、哺乳動物に免疫学的有効量の上記組成物を投与することを含んでなる方法が提供される。
また、哺乳動物において免疫応答を刺激するための薬剤の製造における、上記組成物の使用が提供される。
また、哺乳動物において免疫応答を刺激するのに用いるための上記組成物が提供される。
【0023】
また、哺乳動物において病原体特異的なCD4+ T細胞および/またはCD8+ T細胞および/または抗体の産生を刺激する方法であって、該哺乳動物に、
(i)病原体に由来する1つまたはそれ以上の第1の免疫原性ポリペプチド;
(ii)該病原体に由来する1つまたはそれ以上の第2の免疫原性ポリペプチドをコードする1つまたはそれ以上の異種ポリヌクレオチドを含んでなる1つまたはそれ以上のウイルスベクター;および
(iii)アジュバント
を投与することを含んでなり、この際、該1つまたはそれ以上の第1の免疫原性ポリペプチド、該1つまたはそれ以上のウイルスベクター、および該アジュバントを、例えば免疫学的有効量の上記組成物の投与によって同時投与する方法が提供される。
【0024】
また、哺乳動物において病原体特異的なCD4+および/またはCD8+細胞および/または抗体の産生を刺激するための薬剤の製造における上記組成物の使用が提供される。
例えば、CD4+ T細胞またはCD8+ T細胞または抗体の産生を刺激する。
【0025】
適切には、CD4+ T細胞および/またはCD8+ T細胞および/または抗体の2つ、特に3つの産生を刺激する。
【0026】
適切には、CD8+ T細胞の産生を刺激する。適切には、CD4+およびCD8+ T細胞の産生を刺激する。適切には、CD4+およびCD8+ T細胞および抗体の産生を刺激する。
【0027】
また適切には、CD4+ T細胞の産生を刺激する。適切には、CD4+ T細胞および抗体の産生を刺激する。
【0028】
また適切には、抗体の産生を刺激する。
【0029】
本発明の方法は、免疫応答を惹起するための完全な方法にとって十分な工程を提供することを適切に意図する(所望により、この方法を繰り返すこともあるが)。従って適切には、本方法は、プライミング用量のいずれかの免疫原性ポリペプチドまたはいずれかの免疫原性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、ウイルスベクターなどのベクターの形態にある)の使用を含まない。
【0030】
例えば、病原体に対する免疫応答を惹起する方法であって、
(a)(i)該病原体に由来する1つまたはそれ以上の第1の免疫原性ポリペプチド;(ii)該病原体に由来する1つまたはそれ以上の第2の免疫原性ポリペプチドをコードする1つまたはそれ以上の異種ポリヌクレオチドを含んでなる1つまたはそれ以上のウイルスベクター;および(iii)アジュバント、を投与し、この際、該1つまたはそれ以上の免疫原性ポリペプチド、該1つまたはそれ以上のウイルスベクター、および該アジュバントを同時投与し;そして
(b)所望により(a)の工程を繰り返す、
ことからなる方法が提供される。
【0031】
繰り返しによって改善された免疫応答が得られるときには、本方法を繰り返してもよい(例えば1回の繰り返し)。少なくともT細胞応答に関する限り、反復を全く必要とすることなく、十分な応答を得ることができる。
【0032】
また、病原体に対する免疫応答を惹起する方法であって、
(a)(i)該病原体に由来する1つまたはそれ以上の第1の免疫原性ポリペプチド;(ii)該病原体に由来する1つまたはそれ以上の第2の免疫原性ポリペプチドをコードする1つまたはそれ以上の異種ポリヌクレオチドを含んでなる1つまたはそれ以上のウイルスベクター;および(iii)アジュバント、を投与することを含んでなり、この際、該1つまたはそれ以上の第1の免疫原性ポリペプチド、該1つまたはそれ以上のウイルスベクター、および該アジュバントを同時投与し、かつ、いずれのプライミング用量の免疫原性ポリペプチドまたは免疫原性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの投与をも含まない方法が提供される。
【0033】
また、本発明の方法において使用するためのキットであって、
(i)病原体に由来する1つまたはそれ以上の第1の免疫原性ポリペプチド;
(ii)該病原体に由来する1つまたはそれ以上の第2の免疫原性ポリペプチドをコードする1つまたはそれ以上の異種ポリヌクレオチドを含んでなる1つまたはそれ以上のウイルスベクター;および
(iii)アジュバント
を含んでなるキット、および特に、
(i)病原体に由来する1つまたはそれ以上の第1の免疫原性ポリペプチドおよびアジュバント;および
(ii)該病原体に由来する1つまたはそれ以上の免疫原性ポリペプチドをコードする1つまたはそれ以上の異種ポリヌクレオチドを含んでなる1つまたはそれ以上の第2のウイルスベクター
を含んでなるキットが提供される。
【0034】
本発明の組成物および方法は、無経験の対象において病原体による感染を防止するのに、または以前に該病原体に暴露された対象において病原体による感染を防止するのに、または以前に病原体に感染した対象において再感染を防止するのに、または病原体に感染した対象を処置するのに有用であろう。
【0035】
配列表のまとめ
【表1】

【0036】
上記した配列を、本発明の例示的側面において使用するためのポリペプチドまたはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとして使用することができる。これらのポリペプチドは、上記配列からなるか、または上記配列を含んでなることができる。先頭のMet残基は任意的である。N末端のHis残基(配列番号10におけるように、先頭のMetの直後のHis残基を含む)は任意的であるか、または異なる長さのN末端Hisタグを使用することができる(例えば、通常は6個までのHis残基を用いて、該タンパク質の単離を容易にすることができる)。参照配列の全長にわたって大きな配列同一性、例えば80%を超える、例えば90%を超える、例えば95%を超える、例えば99%を超える配列同一性を有する類似タンパク質を、特に、該類似タンパク質が同様の機能を有するときに、および特に、該類似タンパク質が同様に免疫原性であるときに使用することができる。例えば20個まで、例えば10個まで、例えば1〜5個のアミノ酸置換(例えば保存性置換)を許容することができる。同一タンパク質または上記類似タンパク質をコードする上記核酸とは異なる核酸を使用することができる。配列同一性は、通常の手段によって、例えばBLASTを用いて決定することができる。挙げることができる配列番号16の1つの特定の変異体においては、398位のCysがSerによって置換されている。
【発明の具体的説明】
【0037】
本明細書中で使用する場合、用語「同時」は、1つまたはそれ以上の免疫原性ポリペプチド、1つまたはそれ以上のウイルスベクターおよびアジュバントを、12時間以内に、例えば1時間以内に、通常は1回で投与することを意味する。これは、医療従事者への1回の訪問の最中であってよく、例えば、該1つまたはそれ以上の免疫原性ポリペプチド、該1つまたはそれ以上のウイルスベクターおよび該アジュバントを、同一訪問中に連続してまたは同時に投与する。
【0038】
本明細書中で使用する場合、用語「エピトープ」は、免疫原性アミノ酸配列を指す。エピトープは、その天然の状況から取り出されたときに、例えば、異種ポリペプチド中に移植されたときに免疫原性である通常は6〜8個のアミノ酸からなる最小アミノ酸配列を指すこともある。また、エピトープは、タンパク質の免疫原性である部分を指すこともあり、この際、該エピトープを含むポリペプチドは、抗原(または、時には「ポリペプチド抗原」)と称される。ポリペプチドまたは抗原は、1つまたはそれ以上(例えば、2つまたは3つまたはそれ以上)の別個のエピトープを含むこともある。用語「エピトープ」は、B細胞およびT細胞エピトープを包含する。用語「T細胞エピトープ」は、CD4+T細胞エピトープおよびCD8+T細胞エピトープ(時には、CTLエピトープとも称される)を包含する。
【0039】
用語「免疫原性ポリペプチド」は、免疫原性であるポリペプチドを指す。即ち、それは、動物において免疫応答を誘導することができ、従って、1つまたはそれ以上のエピトープ(例えば、T細胞および/またはB細胞エピトープ)を含んでいる。免疫原性ポリペプチドは、1つまたはそれ以上のポリペプチド抗原を含むことができる。これらは、天然配置または非天然配置(例えば、融合タンパク質)であることができる。
通常、免疫原性ポリペプチドは、例えば、異種宿主(例えば、細菌宿主)、酵母または培養哺乳動物細胞における発現によって産生された組換えタンパク質であろう。
【0040】
用語「病原体に由来するポリペプチド」は、病原体において天然に生じる配列またはそれに対して高度の配列同一性(少なくとも10個、例えば少なくとも20個のアミノ酸の範囲にわたって、例えば95%を超える同一性)を保持する配列(即ち、抗原)を、部分的にまたは全体的に含むポリペプチドを意味する。
【0041】
免疫原性ポリペプチドは、1つまたはそれ以上(例えば、1つ、2つ、3つまたは4つ)のポリペプチド抗原を含むことができる。
本明細書中におけるポリペプチド、抗原、エピトープおよびポリヌクレオチドへの言及は、そのフラグメントまたは部分への言及を包含する。
他に特記することがなければ、「免疫応答」は、細胞性および/または体液性免疫応答であってよい。
【0042】
本発明の1つの態様において、該1つまたはそれ以上の第1の免疫原性ポリペプチドの1つまたはそれ以上は、該1つまたはそれ以上の第2の免疫原性ポリペプチドの1つまたはそれ以上と実質的に同一である。例えば、該少なくとも1つの第1の免疫原性ポリペプチドの1つおよび該少なくとも1つの第2の免疫原性ポリペプチドの1つは、1つまたは他の免疫原性ポリペプチドの長さにわたって、90%またはそれ以上、例えば95%またはそれ以上、例えば98%またはそれ以上、あるいは例えば99%またはそれ以上の全体的な配列同一性を有することができる。
【0043】
本発明の別の態様において、該1つまたはそれ以上の第1の免疫原性ポリペプチドの1つまたはそれ以上は、該1つまたはそれ以上の第2の免疫原性ポリペプチドの1つまたはそれ以上に含まれる抗原と実質的に同一である少なくとも1つの抗原を含んでいる。例えば、該少なくとも1つの第1の免疫原性ポリペプチドの1つおよび該少なくとも1つの第2の免疫原性ポリペプチドの1つは、20個のアミノ酸またはそれ以上、例えば40個のアミノ酸またはそれ以上、例えば60個のアミノ酸またはそれ以上の範囲にわたって、90%またはそれ以上、例えば95%またはそれ以上、例えば98%またはそれ以上、あるいは例えば99%またはそれ以上の全体的な配列同一性を有することができる。
【0044】
適切には、該1つまたはそれ以上の第1の免疫原性ポリペプチドは、少なくとも1つのT細胞エピトープを含んでなる。
適切には、該1つまたはそれ以上の第2の免疫原性ポリペプチドは、少なくとも1つのT細胞エピトープを含んでなる。
適切には、該1つまたはそれ以上の第1の免疫原性ポリペプチドは、少なくとも1つのB細胞エピトープを含んでなる。
適切には、該1つまたはそれ以上の第2の免疫原性ポリペプチドは、少なくとも1つのB細胞エピトープを含んでなる。
【0045】
本発明の別の態様において、該1つまたはそれ以上の第1の免疫原性ポリペプチドの1つまたはそれ以上および該1つまたはそれ以上の第2の免疫原性ポリペプチドの1つまたはそれ以上は、1つまたはそれ以上の同一のB細胞および/またはT細胞エピトープを共有する。適切には、これらは、長さが10個のアミノ酸またはそれ以上、例えば15個のアミノ酸またはそれ以上、例えば25個のアミノ酸またはそれ以上である1つまたはそれ以上の同一のアミノ酸配列を供有する。
【0046】
本発明の別の態様において、該1つまたはそれ以上の第1の免疫原性ポリペプチドの1つまたはそれ以上のいずれもが、該1つまたはそれ以上の第2の免疫原性ポリペプチドの1つまたはそれ以上と実質的に同一ではないか、またはそれらと共通するいずれの抗原をも含んでいない。例えば、これらは、20個のアミノ酸またはそれ以上、例えば40個のアミノ酸またはそれ以上、例えば60個のアミノ酸またはそれ以上の範囲にわたって、90%未満の全体的な配列同一性を有することができる。
【0047】
即ち、これらは、いずれのB細胞またはT細胞エピトープをも共有しないであろう。例えば、これらは、長さが10個のアミノ酸またはそれ以上、例えば15個のアミノ酸またはそれ以上、例えば25個のアミノ酸またはそれ以上であるいずれの同一アミノ酸配列をも共有しないであろう。
【0048】
本発明の1つの特定の態様において、第1の免疫原性ポリペプチドおよび第2の免疫原性ポリペプチドは、同一抗原を、同一配置でまたは異なる配置で含んでいる。「異なる配置」とは、これらを異なる順序で配置しうることおよび/またはこれらを分割しうること、例えば、抗原を分離し、別の抗原の両側に配置しうることを意味する。このような例においては、抗原を、その長さに沿って任意の点で分離することができる。本発明の別の特定の態様において、第1の免疫原性ポリペプチドおよび第2の免疫原性ポリペプチドは同一である。
【0049】
本発明の組成物は、1つの第1の免疫原性ポリペプチドを、組成物中の唯一の免疫原性ポリペプチドとして含むことができる。また、本発明の組成物は、1つを超える第1の免疫原性ポリペプチド、例えば、2つまたは3つまたは4つまたはそれ以上の免疫原性ポリペプチドを含むことができる。
【0050】
本発明の組成物は、1つのウイルスベクターを含んでなることができる。また、それは、1つを超えるウイルスベクター、例えば、2つまたはそれ以上のウイルスベクターを含んでなることができる。
【0051】
本発明の組成物において、ウイルスベクターは、1つの第2の免疫原性ポリペプチドをコードする異種ポリヌクレオチドを含んでなるか、あるいは、1つを超える第2の免疫原性ポリペプチドを一緒にコードし、同一プロモーターまたは1つを超えるプロモーターの制御下にあってよい1つを超える異種ポリヌクレオチドを含んでなることができる。
【0052】
予防的ワクチン接種のためだけでなく、本発明の組成物を、既に病原体に感染した個体においても使用することができ、確立された感染の改善された免疫学的制御または浄化を得ることができる。これは、病原体がHIVであるときに特に重要である。HIVの場合、この制御は、HIV感染細胞を特異的に認識するCD8陽性T細胞によって達成されると考えられる。このようなCD8陽性T細胞応答は、HIV特異的なCD4陽性ヘルパーT細胞の存在によって維持される。従って、両種類の免疫応答の誘導が特に有用であり、これを、異なるワクチン組成物を組合せることによって達成することができる。アジュバント添加(adjuvanted)タンパク質と組換えウイルスの組合せが特に重要である。上記のワクチン接種によって利益を受けるであろうHIV感染患者は、ワクチン接種の時点でHIV感染の初感染、潜在相または末期相のいずれかにある。患者は、ワクチン接種の時点において、またはワクチン接種に近接する時点において、病原体に対する他の治療処置介入(HIVの場合には、例えば高活性の抗レトロウイルス治療)を受けていても受けていなくてもよい。
【0053】
抗原
本発明に従って使用する抗原は、病原体から誘導される。病原体には、ヒトを含む動物に対して有害であるウイルス、細菌、原生動物および他の寄生生物が含まれる。
【0054】
本発明によるポリペプチドまたはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとして投与する適当なポリペプチド抗原には、以下のものに由来する抗原が含まれる:HIV(例えば、HIV-1)、ヒトヘルペスウイルス(例えば、gH、gL、gM、gB、gC、gK、gEもしくはgDまたはこれらの誘導体、あるいは前初期タンパク質、例えば、HSV1またはHSV2由来のICP27、ICP47、ICP4、ICP36)、サイトメガロウイルス、特にヒト(例えば、gBまたはその誘導体)、エプスタイン・バーウイルス(例えば、gp350またはその誘導体)、水痘帯状疱疹ウイルス(例えば、gpl、II、IIIおよびIE63)、あるいは肝炎ウイルス、例えば、B型肝炎ウイルス(例えば、B型肝炎表面抗原、PreS1、PreS2および表面envタンパク質、B型肝炎コア抗原またはpol)、C型肝炎ウイルス(例えば、コア、E1、E2、P7、NS2、NS3、NS4A、NS4B、NS5AおよびB)およびE型肝炎ウイルス抗原、あるいは他のウイルス病原体、例えば、パラミクソウイルス:呼吸器合胞体ウイルス(例えば、FおよびGタンパク質またはこれらの誘導体)、あるいはパラインフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、ヒトパピローマウイルス(例えば、HPV6、11、16、18、例えば、L1、L2、E1、E2、E3、E4、E5、E6、E7)、フラビウイルス(例えば、黄熱病ウイルス、デング熱ウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス)またはインフルエンザウイルス(例えば、ヘマグルチン、核タンパク質、NA、またはMタンパク質、またはこれらの組合せ)、あるいは細菌病原体、例えば、ナイセリア(Neisseria)種、これは淋菌(N. gonorrhea)および髄膜菌(N. meningitides)(例えば、トランスフェリン結合タンパク質、ラクトフェリン結合タンパク質、PiIC、付着因子)を含む;化膿レンサ球菌(S. pyogenes)(例えば、Mタンパク質またはそのフラグメント、C5Aプロテアーゼ)、B群溶連菌( S. agalactiae)、ミュータンス菌(S. mutans);軟性下疳菌(H. ducreyi);モラクセラ(Moraxella)種、これはカタル球菌(Branhamella catarrhalis)としても知られるカタル球菌(M. catarrhalis)(例えば、高および低分子量付着因子およびインバシン)を含む;ボルデテラ(Bordetella)種、これは百日咳菌(B. pertussis)(例えば、パータクチン、百日咳毒素またはその誘導体、糸状赤血球凝集素、アデニル酸シクラーゼ、フィムブリエ)、パラ百日咳菌(B. parapertussis)および気管支敗血症菌(B. bronchiseptica)を含む;ミコバクテリウム(Mycobacterium)種、これは結核菌(M. tuberculosis)、ウシ型結核菌(M. bovis)、らい菌(M. leprae)、ヨーネ菌(M. avium)、パラ結核菌(M. paratuberculosis)、スメグマ菌(M. smegmatis)を含む;レジオネラ(Legionella)種、これはレジオネラ属菌(L. pneumophila)を含む;エシェリキア(Escherichia)種、これは腸毒性大腸菌(例えば、定着因子、熱不安定性毒素またはその誘導体、熱安定性毒素またはその誘導体)、腸管出血性大腸菌、腸管病原性大腸菌(例えば、志賀毒素様の毒素またはその誘導体)を含む;ビブリオ(Vibrio)種、これはコレラ菌(V. cholera)(例えば、コレラ毒素またはその誘導体)を含む;シゲラ(Shigella)種、これは赤痢菌(S. sonnei)、志賀赤痢菌(S. dysenteriae)、フレクスナー赤痢菌(S. flexnerii)を含む;エルシニア(Yersinia)種、これは腸炎エルシニア菌(Y. enterocolitica)(例えば、Yopタンパク質)、ペスト菌(Y. pestis)、偽結核菌(Y. pseudotuberculosis)を含む;カンピロバクター(Campylobacter)種、これはカンピロバクター属細菌(C. jejuni)(例えば、毒素、付着因子およびインバシン)およびC. coliを含む;サルモネラ(Salmonella)種、これはチフス菌(S. typhi)、パラチフス菌(S. paratyphi)、ネズミチフス菌(S. choleraesuis)、ゲルトネル菌(S. enteritidis)を含む;リステリア(Listeria)種、これはリステリア菌(L. monocytogenes)を含む;ヘリコバクター(Helicobacter)種、これは潰瘍原因菌(H. pylori)(例えば、ウレアーゼ、カタラーゼ、空洞化毒素)を含む;シュードモナス(Pseudomonas)種、これは緑膿菌(P. aeruginosa)を含む;スタフィロコッカス(Staphylococcus)種、これは黄色ブドウ球菌(S. aureus)、表皮ブドウ球(S. epidermidis)を含む;エンテロコッカス(Enterococcus)種、これは腸球菌(E. faecalis)、フェシウム菌(E. faecium)を含む;クロストリジウム(Clostridium)種、これは破傷風菌(C. tetani)(例えば、破傷風毒素およびその誘導体)、ボツリヌス菌(C. botulinum)(例えば、ボツリヌス毒素およびその誘導体)、偽膜性腸炎菌(C. difficil)(例えば、クロストリジウム毒素AまたはBおよびこれらの誘導体)を含む;バチルス(Bacillus)種、これは炭疽菌(B. anthracis)(例えば、炭疽毒素およびその誘導体)を含む;コリネバクテリウム(Corynebacterium)種、これはジフテリア菌(C. diphtheriae)(例えば、ジフテリア毒素およびその誘導体)を含む;ボレリア(Borrelia)種、これはライム病ボレリア(B. burgdorferi)(例えば、OspA、OspC、DbpA、DbpB)、ボレリアガリニ(B. garinii)(例えば、OspA、OspC、DbpA、DbpB)、ボレリアアフゼリ(B. afzelii)(例えば、OspA、OspC、DbpA、DbpB)、ボレリアアンダーソニー(B. andersonii)(例えば、OspA、OspC、DbpA、DbpB)、ボレリアヘルムシ(B. hermsii)を含む;エーリキア(Ehrlichia)種、これはウマエーリキア症原因菌(E. equi)およびヒト顆粒球エーリキア症の媒介物質を含む;リケッチア(Rickettsia)種、これは斑点熱リケッチア(R. rickettsii)を含む;クラミジア(Chlamydia)種、これはクラミジア・トラコマチス(C. trachomatis)、クラミジアニューモニエ(C. pneumoniae)、クラミジアシッタシ(C. psittaci)を含む;レプトスピラ(Leptospira)種、これはレプトスピラインタロガンス(L. interrogans)を含む;トレポネーマ(Treponema)種、これは梅毒トレポネーマ(T. pallidum)(例えば、希外膜タンパク質)、トレポネーマデンチコラ(T. denticola)、ブラキスピラヒオディセンテリエ(T. hyodysenteriae)を含む;あるいは寄生生物、例えば、プラスモジウム(Plasmodium)種、これは熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)および3日熱マラリア病原虫(P. vivax)を含む;トキソプラズマ(Toxoplasma)種、これはトキソプラズマ原虫(T. gondii)(例えば、SAG2、SAG3、Tg34)を含む;エントアメーバ(Entamoeba)種、これは赤痢アメーバ(E. histolytica)を含む;バベシア(Babesia)種、これはバベシアミクロチ(B. microti)を含む;トリパノソーマ(Trypanosoma)種、これはクルーズトリパノソーマ(T. cruzi)を含む;ギアルジア(Giardia)種、これはジアルジア(G. lamblia)を含む;リーシュマニア(leishmania)種、これはL. majorを含む;ニューモシスティス(Pneumocystis)種、これはカリニ肺炎(P. carinii)を含む;トリコモナス(Trichomonas)種、これは膣トリコモナス(T. vaginalis)を含む;シゾストマ(Schisostoma)種、これはマンソン住血吸虫(S. mansoni)を含む;あるいは酵母、例えば、カンジダ(Candida)種、これはカンジダ菌(C. albicans)を含む;クリプトコッカス(Cryptococcus)種、これはクリプトコッカス-ネオフォルマンス(C. neoformans)を含む。
【0055】
さらなる細菌性抗原には、ストレプトコッカス(Streptococcus)種(これは、S. pneumoniae(PsaA、PspA、ストレプトリジン、コリン結合タンパク質)を含む)に由来する抗原、およびタンパク質抗原 肺炎球菌溶血素(Biochem Biophys Acta、1989、67、1007;Rubinsら、Microbial Pathogenesis、25、337-342)、およびその突然変異解毒誘導体(国際公開第90/06951号;国際公開第99/03884号)が含まれる。他の細菌性抗原には、ヘモフィリス(Haemophilus)種に由来する抗原、B型のH. influenzae (例えば、PRPおよびそのコンジュゲート)、分類できないインフルエンザ菌(H. influenzae)に由来する抗原、例えば、OMP26、高分子量付着因子、P5、P6、プロテインDおよびリポプロテインD、ならびにフィンブリンおよびフィンブリン由来ペプチド(米国特許第5843464号)またはその複数コピー変異体または融合タンパク質が含まれる。
【0056】
特に、本発明の方法または組成物を用いて、ウイルス疾患、例えば、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、または単純ヘルペスウイルスによって引き起こされる疾患;細菌性疾患、例えば、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)(TB)またはクラミジア(Chlamydia)種によって引き起こされる疾患;ならびに原生動物感染、例えばマラリア、から保護するか、またはこれらを処置することができる。
【0057】
これらの特定の疾患状態、病原体および抗原は、例示の目的でのみ言及したものであり、本発明の範囲の限定を意図するものではないことを認識すべきである。
【0058】
TB抗原
病原体は、例えば、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)であってよい。
結核菌(M. tuberculosis)由来の例示抗原は、例えば、α-クリスタリン(HspX)、HBHA、Rv1753、Rv2386、Rv2707、Rv2557、Rv2558、RPF:Rv0837c、Rv1884c、Rv2389c、Rv2450、Rv1009、aceA(Rv0467)、ESAT6、Tb38-1、Ag85A、-Bまたは-C、MPT44、MPT59、MPT45、HSP10、HSP65、HSP70、HSP75、HSP90、PPD 19kDa[Rv3763]、PPD 38kDa[Rv0934]、PstS1、(Rv0932)、SodA(Rv3846)、Rv2031c 16kDa、Ra12、TbH9、Ra35、Tb38-1、Erd14、DPV、MTI、MSL、DPPD、mTCC1、mTCC2、hTCC1(国際公開第99/51748号)およびhTCC2、特に、Mtb32a、Ra35、Ra12、DPV、MSL、MTI、Tb38-1、mTCC1、TbH9(Mtb39a)、hTCC1、mTCC2およびDPPDである。また、結核菌(M. tuberculosis)由来の抗原には、結核菌(M. tuberculosis)の少なくとも2つまたは例えば3つのポリペプチドが、より大きいタンパク質に融合した融合タンパク質およびその変異体も含まれる。このような融合体は、Ra12-TbH9-Ra35、Erd14-DPV-MTI、DPV-MTI-MSL、Erd14-DPV-MTI-MSL-mTCC2、Erd14-DPV-MTI-MSL、DPV-MTI-MSL-mTCC2、TbH9-DPV-MTI(国際公開第99/51748号)、Ra12-Tbh9-Ra35-Ag85BおよびRa12-Tbh9-Ra35-mTCC2からなるか、またはこれらを含んでなることができる。挙げることができる特定のRa12-Tbh9-Ra35配列は、国際公開第2006/117240号の配列番号6により、該配列のSer 704がセリン以外(例えば、Ala)に突然変異した変異体、および適当な長さのN末端Hisタグを導入したその誘導体(例えば、国際公開第2006/117240号の配列番号2または4)とともに規定されている。また、所望による開始Mおよび所望によるN末端His-Hisタグ(2および3位)を含む配列であり、野生型Serに対して突然変異したAlaが706位にある配列番号10をも参照。
【0059】
クラミジア(Chlamydia)抗原
病原体は、例えばクラミジア(Chlamydia)種、例えばトラコーマクラミジア(C. trachomatis)であってよい。
クラミジア(Chlamydia)種、例えばトラコーマクラミジア(C. trachomatis)由来の例示抗原は、CT858、CT089、CT875、MOMP、CT622、PmpD、PmpGおよびこれらのフラグメント、SWIBおよびこれらのいずれかの免疫原性フラグメント(例えば、PmpDpdおよびPmpGpd)およびこれらの組合せから選択される。抗原の好ましい組合せには、CT858、CT089およびCT875が含まれる。使用しうる特定の配列および組合せは、国際公開第2006/104890号に記載されている。
【0060】
マラリア(Plasmodium)抗原
病原体は、例えばマラリアを引き起こす寄生生物、例えばマラリア(Plasmodium)種、例えば熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)または三日熱マラリア原虫(P. vivax)であってよい。
【0061】
例えば、熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)由来の抗原には、スポロゾイト周囲タンパク質(CSタンパク質)、PfEMP-1、Pfs16抗原、MSP-1、MSP-3、LSA-1、LSA-3、AMA-1およびTRAPが含まれる。挙げることができる特定のハイブリッド抗原はRTSである。RTSは、B型肝炎ウイルスの表面(S)抗原に、B型肝炎表面抗原のpreS2部分の4個のアミノ酸を介して結合した熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)のスポロゾイト周囲(CS)タンパク質の実質的に全てのC末端部分を含んでなるハイブリッドタンパク質である。酵母において発現されるときに、RTSはリポタンパク質粒子として産生され、HBV由来のS抗原と同時発現されるときに、それはRTS,Sとして知られる混合粒子を産生する。RTSおよびRTS,Sの構造は、国際公開第93/10152号に開示されている。TRAP抗原は、国際公開第90/01496号に記載されている。他のマラリア(Plasmodium)抗原には、熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)のEBA、GLURP、RAP1、RAP2、セクエストリン、Pf332、STARP、SALSA、PfEXP1、Pfs25、Pfs28、PFS27/25、Pfs48/45、Pfs230および他のマラリア(Plasmodium)種におけるこれらの類似体が含まれる。本発明の1つの態様は、RTS,SまたはCSタンパク質またはこれらのフラグメント、例えば、RTS,SのCS部分を、1つまたはそれ以上のさらなるマラリア抗原(これは、例えば、MSP-1、MSP-3、AMA-1、Pfs16、LSA-1またはLSA-3からなる群から選択することができる)と組合せて含んでなる組成物である。P. vivax由来の可能な抗原には、スポロゾイト周囲タンパク質(CSタンパク質)およびDuffy抗原結合タンパク質およびこれらの免疫原性フラグメント、例えばPvRIIが含まれる(例えば、国際公開第02/12292号を参照)。
【0062】
即ち、本発明の1つの好適な態様において、第1および第2の免疫原性ポリペプチドは、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)および/または三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)由来の抗原から選択される。
例えば、第1および/または第2の免疫原性ポリペプチドは、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)および/または三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)由来の抗原から選択され、また、RTS(例えば、RTS,Sとして)、スポロゾイト周囲(CS)タンパク質、MSP-1、MSP-3、AMA-1、LSA-1、LSA-3およびこれらの免疫原性誘導体またはこれらの免疫原性フラグメントから選択される。
【0063】
挙げることができる1つの特定の誘導体は、RTSとして知られるハイブリッドタンパク質、特に、RTS,Sとして知られる混合粒子の形態で供されるときのものである。
例示のRTS配列を、配列番号14に示す。
【0064】
例示のP. falciparum CSタンパク質由来抗原を、配列番号12に示す。この特定の配列は、P. falciparum(3D7株)のCSP配列に対応し、これは、7G8株由来の19aa挿入(81〜100)をも含んでいる。
【0065】
本発明の1つの特定の態様において、第1の免疫原性ポリペプチドはRTS,Sであり、第2の免疫原性ポリペプチドは、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)由来のCSタンパク質またはその免疫原性フラグメントである。
【0066】
HPV抗原
病原体は、例えば、ヒトパピローマウイルス(HPV)であってよい。
即ち、本発明において使用する抗原は、例えば、陰部疣贅の原因であると考えられているヒトパピローマウイルス(HPV6またはHPV11など)および/または子宮頸癌の原因であると考えられているHPVウイルス(HPV16、HPV18、HPV33、HPV51、HPV56、HPV31、HPV45、HPV58、HPV52など)に由来していてよい。1つの態様において、陰部疣贅の予防または治療組成物の形態は、L1粒子またはカプソマー、および融合タンパク質(HPVタンパク質E1、E2、E5、E6、E7、L1、およびL2から選択される1つまたはそれ以上の抗原を含む)を含んでなる。1つの態様において、融合タンパク質の形態は、国際公開第96/26277号に開示されているL2E7、および国際出願PCT/EP98/05285に開示されているプロテインD(1/3)-E7である。
【0067】
好ましいHPV子宮頸感染または癌の予防または治療組成物は、HPV16または18抗原を含んでなることができる。例えば、L1またはL2抗原モノマー、あるいはウイルス様粒子(VLP)として一緒に供されるL1またはL2抗原、あるいはVLPまたはカプソマー構造において単独で供されるL1タンパク質である。このような抗原、ウイルス様粒子およびカプソマーは自体既知である。例えば、国際公開第94/00152号、国際公開第94/20137号、国際公開第94/05792号、および国際公開第93/02184号を参照。追加の初期タンパク質が、単独でまたは融合タンパク質として含まれていてもよく(例えば、E7、E2、または好ましくはE5など)、本発明の特に好ましい態様は、L1E7融合タンパク質(国際公開第96/11272号)を含んでなるVLPを含んでいる。1つの態様において、HPV16抗原は、初期タンパク質E6またはE7をプロテインD担体と融合して含んでなり、HPV16由来のプロテインD-E6またはE7融合、またはその組合せを形成する;あるいはE6またはE7とL2との組合せ(国際公開第96/26277号)を形成する。また、HPV16または18初期タンパク質E6およびE7は、単一分子、好ましくはプロテインD-E6/E7融合において存在することができる。このような組成物は、所望により、HPV18由来のE6およびE7タンパク質の一方または両方を、好ましくはプロテインD-E6またはプロテインD-E7融合タンパク質またはプロテインD-E6/E7融合タンパク質の形態で供することができる。さらに、他のHPV株由来の抗原、好ましくはHPV31または33株由来の抗原を使用することができる。
【0068】
HIV抗原
病原体は、例えばHIV、例えばHIV-1であってよい。
即ち、抗原を、HIV由来抗原、特にHIV-1由来抗原から選択することができる。
HIVのTatおよびNefタンパク質が初期タンパク質である。即ち、これらは、感染の初期に、および構造タンパク質の不存在下で発現される。
【0069】
Nef遺伝子は、いくつかの活性を保持することが示された初期付属HIVタンパク質をコードする。例えば、Nefタンパク質は、細胞表面からのCD4(即ち、HIV受容体)の除去を引き起こすことが知られているが、この機能の生物学的重要性は議論されている。また、Nefは、T細胞のシグナル経路と相互作用し、活性状態を誘導し、次いでこれがより効率的な遺伝子発現を促進することができる。一部のHIV単離体は、この領域において突然変異または欠失を有しており、これが機能的タンパク質をコードしないことをもたらし、インビボにおけるその複製および発症が大きく損なわれる。
【0070】
Gag遺伝子は、完全長RNAから翻訳されて前駆体ポリタンパク質を与え、次いでこれが3〜5個のカプシドタンパク質;マトリックスタンパク質p17、カプシドタンパク質p24および核酸結合タンパク質に切断される(Fundamental Virology、Fields BN、Knipe DMおよびHowley M、1996 2、Fields Virology、vol 2、1996)。
【0071】
Gag遺伝子は、スプライスされていないウイルスmRNAから発現される55キロダルトン(Kd)Gag前駆体タンパク質(p55とも称される)を生じさせる。翻訳中に、p55のN末端はミリストイル化され、それと細胞膜の細胞質側との結合の引き金となる。この膜結合したGagポリタンパク質は、ウイルスゲノムRNAの2つのコピーを、感染細胞表面からのウイルス粒子の出芽の引き金となる他のウイルスおよび細胞タンパク質とともに補充する。出芽の後、p55は、ウイルスによりコードされたプロテアーゼ(Pol遺伝子の産物)によって、ウイルス成熟の過程中に、MA(マトリックス[p17])、CA(カプシド[p24])、NC(ヌクレオカプシド[p9])、およびp6と称される4つの比較的小さいタンパク質に切断される。
【0072】
3つの主要Gagタンパク質(p17、p24およびp9)に加えて、全てのGag前駆体は、いくつかの他の領域を含んでおり、これらは切断され、様々なサイズのペプチドとしてビリオン中に残存する。これらのタンパク質は異なる役割を有しており、例えば、p2タンパク質は、プロテアーゼ活性の調節において提案された役割を有し、タンパク質分解プロセシングの正しいタイミングに寄与する。
【0073】
MAポリペプチドは、p55のN末端ミリストイル化末端に由来する。大部分のMA分子は、ビリオン脂質二重層の内側表面に結合して残存し、該粒子を安定化する。MAのサブセットは、ビリオンの比較的深い層の内部に補充され、そこで、ウイルスDNAを核に送り届ける複合体の一部になる。これらのMA分子は、MA上の核親和性シグナルが細胞の核輸入装置によって認識されるので、ウイルスゲノムの核輸送を容易にする。この現象は、HIVが非分裂細胞に感染することを可能にする(これはレトロウイルスにとっては異常な性質である)。
【0074】
p24(CA)タンパク質は、ウイルス粒子の円錐コアを形成する。シクロフィリンAは、p55のp24領域と相互作用して、HIV粒子へのその導入を導くことが示されている。GagとシクロフィリンAの間の相互作用は必須であるが、これは、シクロスポリンによるこの相互作用の破壊がウイルス複製を阻害するためである。
【0075】
GagのNC領域は、いわゆるHIVのパッケージシグナルを特異的に認識するのに関与する。このパッケージシグナルは、ウイルスRNAの5'末端近くに位置する4つのステムループ構造からなり、HIV-1ビリオンへの異種RNAの導入を媒介するのに十分である。NCは、2つの亜鉛フィンガーモチーフによって媒介される相互作用により、パッケージシグナルに結合する。また、NCは逆転写を容易にする。
【0076】
p6ポリペプチド領域は、p55 Gagと付属タンパク質Vprの間の相互作用を媒介し、組立て中のビリオンへのVprの導入を導く。また、p6領域は、感染細胞からの出芽ビリオンの効率的な放出に必要ないわゆる後期ドメインをも含んでいる。
【0077】
Pol遺伝子は、初期感染においてウイルスによって必要とされる活性を有する3つのタンパク質、逆転写酵素RT、プロテアーゼ、および細胞DNAへのウイルスDNAの組込みに必要なインテグラーゼタンパク質をコードする。Polの一次産物は、ビリオンプロテアーゼによって切断されて、DNA合成に必要な活性を含むアミノ末端RTペプチド(RNAおよびDNA指向性DNAポリメラーゼ、リボヌクレアーゼH)およびカルボキシ末端インテグラーゼタンパク質を生じる。HIV RTは、完全長RT(p66)および切断産物(p51)のヘテロダイマーであり、カルボキシ末端RNアーゼHドメインを欠いている。
【0078】
RTは、レトロウイルスゲノムによってコードされている最も高度に保存されたタンパク質の1つである。RTの2つの主要な活性は、DNA PolおよびリボヌクレアーゼH活性である。RTのDNA Pol活性は、RNAおよびDNAを鋳型として交換可能に使用し、既知の全てのDNAポリメラーゼと同様、DNA合成を初めから開始することができず、プライマーとして働く既存の分子(RNA)を必要とする。
【0079】
全てのRTタンパク質に固有のRNアーゼH活性は、DNA合成が進行するにつれてRNAゲノムを除去する複製の初期において必須の役割を果たす。それは、全てのRNA-DNAハイブリッド分子からRNAを選択的に分解する。構造的に、ポリメラーゼおよびリボHは、Pol内の別々の重なり合わないドメインを占め、Polのアミノの3分の2に及ぶ。
【0080】
p66触媒サブユニットは、5つの別個のサブドメインに折り畳まれている。これらのアミノ末端の23はRT活性を有する部分を有する。これらのカルボキシ末端はRNアーゼHドメインである。
【0081】
宿主細胞の感染後に、レトロウイルスRNAゲノムは、感染粒子中に存在する逆転写酵素によって線状二本鎖DNAにコピーされる。インテグラーゼ(Skalka AM '99 Adv in Virus Res 52 271-273に概説されている)は、ウイルスDNAの末端を認識し、該末端を整え、該ウイルスDNAを宿主染色体部位まで送り届けて、組込みを触媒する。宿主DNA中の多くの部位が、組込みのための標的となりうる。インテグラーゼはインビトロで組込みを触媒するのに十分であるが、インビボでウイルスDNAに随伴する唯一のタンパク質ではない:感染細胞から単離された大きいタンパク質-ウイルスDNA複合体がプレ組込み複合体と称されている。これは、子孫ウイルスゲノムによる宿主細胞遺伝子の獲得を容易にする。
【0082】
インテグラーゼは、3つの別個のドメイン、即ち、N末端ドメイン、触媒コアおよびC末端ドメインから構成される。この触媒コアドメインは、ポリヌクレオチジル移動の化学のために必要なものの全てを含んでいる。
【0083】
即ち、本発明において使用するためのHIV-1由来抗原は、例えば、Gag(例えば、完全長Gag)、p17(Gagの一部)、p24(Gagの別の一部)、p41、p40、Pol(例えば、完全長Pol)、RT(Polの一部)、p51(RTの一部)、インテグラーゼ(Polの一部)、プロテアーゼ(Polの一部)、Env、gp120、gp140またはgp160、gp41、Nef、Vif、Vpr、Vpu、Rev、Tatおよびこれらの免疫原性誘導体およびこれらの免疫原性フラグメント、特に、Env、Gag、NefおよびPolおよびこれらの免疫原性誘導体およびこれらの免疫原性フラグメント(p17、p24、RTおよびインテグラーゼを含む)から選択することができる。HIVワクチンは、複数の異なるHIV抗原、例えば、2つまたは3つまたは4つまたはそれ以上のHIV抗原(これらを上記リストから選択することができる)に対応するポリペプチドおよび/またはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでなることができる。いくつかの異なる抗原を、例えば、単一の融合タンパク質に含ませることができる。それぞれがHIV抗原であるか、または1つを超える抗原の融合体である1つを超える第1の免疫原性ポリペプチドおよび/または1つを超える第2の免疫原性ポリペプチドを使用することができる。
【0084】
例えば、抗原は、RTまたはその免疫原性誘導体もしくは免疫原性フラグメントに融合した、Nefまたはその免疫原性誘導体もしくは免疫原性フラグメントに融合した、Gagまたはその免疫原性誘導体もしくは免疫原性フラグメントを含んでなることができる(この融合タンパク質のGag部分は、ポリペプチドの5'末端に存在する)。
【0085】
本発明に従って使用するGag配列は、Gag p6ポリペプチドをコードする配列を除外していてよい。本発明において使用するためのGag配列の特定の例は、p17および/またはp24をコードする配列を含んでなる。
【0086】
RT配列は、あらゆる逆転写酵素活性を実質的に不活性化するために突然変異を含んでいてもよい(国際公開第03/025003号を参照)。
【0087】
RT遺伝子は、HIVゲノム中の比較的大きいpol遺伝子の成分である。本発明に従って使用するRT配列が、Polまたは少なくともRTに対応するPolのフラグメントとの関連で存在しうることは理解されるであろう。このようなPolのフラグメントは、Polの主要CTLエピトープを保持している。1つの特定の例において、RTは、RTのまさにp51またはまさにp66フラグメントとして含まれている。
【0088】
本発明による融合タンパク質または組成物のRT成分は、所望により、原核発現系において内部開始部位として働く部位を除去するための突然変異を含んでなる。
【0089】
所望により、本発明において使用するためのNef配列は、N末端領域をコードする配列を除去するために先端切除(truncated)されている。即ち、30〜85のアミノ酸、例えば60〜85のアミノ酸、特にN末端の65アミノ酸が除去されている(後者の先端切除を、本明細書中ではtrNefと称する)。別法としてまたは追加的に、Nefを修飾してミリスチル化部位を除去することができる。例えば、Gly2ミリスチル化部位を、欠失または置換によって除去することができる。別法としてまたは追加的に、Leu174およびLeu175のジロイシンモチーフを、一方または両方のロイシンの欠失または置換によって変化させるように、Nefを修飾することができる。CD4下方調節におけるジロイシンモチーフの重要性は、例えば、Bresnahan P.Aら、(1998)、Current Biology、8(22):1235-8に記載されている。
【0090】
Env抗原は、gp160としてその完全長で、あるいはgp140またはそれより短いものとして先端切除されて存在することができる(所望により、gp120とgp41の間の切断部位モチーフを破壊するための適当な突然変異を有する)。また、Env抗原は、その天然のプロセシング形態で、gp120およびgp41として存在することもできる。gp160のこれら2つの誘導体を、個々にまたは組合せて一緒に使用することができる。さらに、上記したEnv抗原は、欠失(特に、可変ループの欠失)および先端切除を提示することができる。Envのフラグメントを同様に使用することができる。
【0091】
例示のgp120配列を配列番号8に示す。例示のgp140配列を配列番号6に示す。
【0092】
本発明による免疫原性ポリペプチドは、Gag、Pol、EnvおよびNefを含んでなることができ、この際、これら天然抗原のCTLエピトープの少なくとも75%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、例えば96%が存在する。
【0093】
上で定義したp17/p24 Gag、p66 RT、および先端切除Nefを含んでなる本発明による免疫原性ポリペプチドにおいては、天然のGag、PolおよびNef抗原のCTLエピトープの96%が適切に存在する。
【0094】
本発明の1つの態様は、p17,p24Gag、p66RT、先端切除Nef(末端アミノ酸1〜85をコードするヌクレオチドを欠く:「trNef」)を、Gag、RT、Nefの順序で含む免疫原性ポリペプチドを供する。本発明の免疫原性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドにおいて、適切には、P24GagおよびP66RTはコドン最適化されている。
【0095】
本発明による特定のポリヌクレオチド構築物および対応するポリペプチド抗原には、以下のものが含まれる:
1.p17,p24(コドン最適化)Gag−p66 RT(コドン最適化)−先端切除Nef;
2.先端切除Nef−p66 RT(コドン最適化)−p17,p24(コドン最適化)Gag;
3.先端切除Nef−p17,p24(コドン最適化)Gag−p66 RT(コドン最適化);
4.p66 RT(コドン最適化)−p17,p24(コドン最適化)Gag−先端切除Nef;
5.p66 RT(コドン最適化)−先端切除Nef−p17,p24(コドン最適化)Gag;
6.p17,p24(コドン最適化)Gag−先端切除Nef−p66 RT(コドン最適化)。
【0096】
例示の融合体は、Gag、RTおよびNefの融合体、特に、Gag-RT-Nefの順序の融合体である(例えば、配列番号2を参照)。別の例示融合体は、p17、p24、RTおよびNefの融合体、特に、p24-RT-Nef-p17の順序の融合体である(例えば、配列番号16を参照;本明細書中の他の場所では「F4」と称する)。
【0097】
別の態様において、免疫原性ポリペプチドは、Gag、RT、インテグラーゼおよびNefを、特に、Gag-RT-インテグラーゼ-Nefの順序で含んでいる(例えば、配列番号4を参照)。
【0098】
他の態様において、HIV抗原は、Nefまたはその免疫原性誘導体もしくはその免疫原性フラグメント、並びにp17 Gagおよび/もしくはp24 Gagまたはその免疫原性誘導体もしくはその免疫原性フラグメントを含んでなる融合ポリペプチドであることができ、この際、p17およびp24 Gagの両方が存在するときには、それらの間に少なくとも1つのHIV抗原または免疫原性フラグメントが存在する。
【0099】
例えば、Nefは、適切には完全長Nefである。
例えば、p17 Gagおよびp24 Gagは、適切にはそれぞれ完全長のp17およびp24である。
【0100】
1つの態様において、免疫原性ポリペプチドは、両方のp17およびp24Gagまたはこれらの免疫原性フラグメントを含んでなる。このような構築物において、p24Gag成分およびp17Gag成分は、少なくとも1つのさらなるHIV抗原または免疫原性フラグメント、例えば、Nefおよび/またはRTあるいはこれらの免疫原性誘導体またはこれらの免疫原性フラグメントによって分離されている。さらなる詳細については、国際公開第2006/013106号を参照。
【0101】
p24およびRTを含んでなる融合タンパク質において、p24は、構築物においてRTの前にあるのが好ましいこともあるが、これは、これらの抗原が大腸菌において単独で発現されるときに、RTの発現よりも良好なp24の発現が観察されるためである。
【0102】
本発明によるいくつかの構築物には、以下のものが含まれる:
1.p24−RT−Nef−p17
2.p24−RT*−Nef−p17
3.p24−p51RT−Nef−p17
4.p24−p51RT*−Nef−p17
5.p17−p51RT−Nef
6.p17−p51RT*−Nef
7.Nef−p17
8.Nef−p17(リンカーを有する)
9.p17−Nef
10.p17−Nef(リンカーを有する)
*は、RTメチオニン592のリジンへの突然変異を示す。
【0103】
別の側面において、本発明は、少なくとも4つのHIV抗原または免疫原性フラグメントを含んでなるHIV抗原の融合タンパク質であって、該4つの抗原またはフラグメントがNef、PolおよびGagであるか、またはこれらに由来する融合タンパク質を提供する。好ましくは、Gagは、融合体において少なくとも1つの他の抗原によって分離された2つの分離した成分として存在する。好ましくは、Nefは完全長Nefである。好ましくは、Polはp66またはp51RTである。好ましくは、Gagはp17およびp24Gagである。本発明のこの側面における融合体の抗原成分の他の好ましい特徴および性質は、本明細書中に記載した通りである。
【0104】
本発明のこの側面の好ましい態様は、既に上で挙げた4成分融合体である:
1.p24−RT−Nef−p17
2.p24−RT*−Nef−p17
3.p24−p51RT−Nef−p17
4.p24−p51RT*−Nef−p17
【0105】
本発明の免疫原性ポリペプチドは、Gag、RTおよびNefなどの特定の抗原に対応する配列の間に存在するリンカー配列を有することができる。このようなリンカー配列は、例えば、長さが20個までのアミノ酸であってよい。特定の例において、これらは、1〜10個のアミノ酸、または1〜6個のアミノ酸、例えば4〜6個のアミノ酸であってよい。
【0106】
このような好適なHIV抗原のさらなる記載を、国際公開第03/025003号に見ることができる。
【0107】
本発明のHIV抗原は、任意のHIV分岐群、例えば、分岐群A、分岐群Bまたは分岐群Cから得ることができる。例えば、HIV抗原は、分岐群AまたはB、特にBから得ることができる。
【0108】
本発明の1つの特定の態様において、第1の免疫原性ポリペプチドは、Gagおよび/もしくはPolおよび/もしくはNefまたはこれらのいずれかのフラグメントもしくは誘導体を含んでなるポリペプチドである(例えば、p24-RT-Nef-p17)。本発明の1つの特定の態様において、第2の免疫原性ポリペプチドは、Gagおよび/もしくはPolおよび/もしくはNefまたはこれらのいずれかのフラグメントもしくは誘導体を含んでなるポリペプチドである(例えば、Gag-RT-NefまたはGag-RT-インテグラーゼ-Nef)。
【0109】
即ち、1つの特定の態様において、Gagおよび/もしくはPolおよび/もしくはNefまたはこれらのいずれかのフラグメントもしくは誘導体を含んでなるポリペプチド(例えば、p24-RT-Nef-p17)が第1の免疫原性ポリペプチドであり、Gagおよび/もしくはPolおよび/もしくはNefまたはこれらのいずれかのフラグメントまたは誘導体を含んでなるポリペプチド(例えば、Gag-RT-NefまたはGag-RT-インテグラーゼ-Nef)が第2の免疫原性ポリペプチドである。
【0110】
本発明の別の特定の態様において、第1の免疫原性ポリペプチドは、Envまたはそのフラグメントもしくは誘導体、例えば、gp120、gp140またはgp160(特にgp120)である。本発明の1つの特定の態様において、第2の免疫原性ポリペプチドは、Gagおよび/もしくはPolおよび/もしくはNefまたはこれらのいずれかのフラグメントもしくは誘導体を含んでなるポリペプチド(例えば、p24-RT-Nef-p17)である。
【0111】
即ち、1つの特定の態様において、Envまたはそのフラグメントもしくは誘導体、例えば、gp120、gp140もしくはgp160(特にgp120)が第1の免疫原性ポリペプチドであり、Gagおよび/もしくはPolおよび/もしくはNefまたはこれらのいずれかのフラグメントもしくは誘導体を含んでなるポリペプチド(例えば、p24-RT-Nef-p17)が第2の免疫原性ポリペプチドである。
【0112】
本発明の別の特定の態様において、第1の免疫原性ポリペプチドは、Gagおよび/もしくはPolおよび/もしくはNefまたはこれらのいずれかのフラグメントまたは誘導体を含んでなるポリペプチド(例えば、p24-RT-Nef-p17)である。本発明の1つの特定の態様において、第2の免疫原性ポリペプチドは、Envまたはそのフラグメントもしくは誘導体、例えば、gp120、gp140またはgp160(特にgp120)である。
【0113】
即ち、1つの特定の態様において、Gagおよび/もしくはPolおよび/もしくはNefまたはこれらのいずれかのフラグメントもしくは誘導体を含んでなるポリペプチド(例えば、p24-RT-Nef-p17)が第1の免疫原性ポリペプチドであり、Envまたはそのフラグメントもしくは誘導体、例えば、gp120、gp140またはgp160(特にgp120)が第2の免疫原性ポリペプチドである。
【0114】
抗原の免疫原性誘導体および免疫原性フラグメント
上記した抗原を、全抗原よりむしろその免疫原性誘導体または免疫原性フラグメントの形態で使用することができる。
【0115】
本明細書中で使用する場合、天然起源の抗原に関連する用語「免疫原性誘導体」は、その天然の対応物に対して限定された様式で修飾されていることもある抗原を指す。それは、例えば、原核生物系における発現の改善によって、または望ましくない活性(例えば、酵素活性)の除去によって、タンパク質の特性を変えうる点突然変異を含むことができる。しかし、免疫原性誘導体は、天然抗原に十分に似ており、従って、その抗原特性を保持し、天然抗原に対する免疫応答を惹起することができる。所与の誘導体がこのような免疫応答を惹起するか否かを、ELISAなどの適当な免疫学的アッセイ(抗体応答に対して)または細胞マーカーのための適当な染色を用いるフローサイトメトリー(細胞応答に対して)によって測定することができる。
【0116】
免疫原性フラグメントは、少なくとも1つのエピトープ、例えばCTLエピトープ、通常は少なくとも8個のアミノ酸のペプチドをコードするフラグメントである。長さが少なくとも8個、例えば8〜10個のアミノ酸あるいは20、50、60、70、100、150または200個までのアミノ酸のフラグメントが、このポリペプチドが抗原性を示す限り、即ち、主要エピトープ(例えばCTLエピトープ)がこのポリペプチドによって保持されている限り、本発明の範囲内にあると考えられる。
【0117】
ウイルスベクター
本発明のウイルスベクターは、1つまたはそれ以上の免疫原性ポリペプチドをコードする1つまたはそれ以上の異種ポリヌクレオチドを含んでなる。
【0118】
ウイルスベクターは任意のウイルスベクターであってよいが、1つの側面において、アデノウイルスベクターは、本発明の範囲から除外される。
【0119】
ウイルスベクターは、任意の適当なウイルス型に由来することができる。ウイルス型には、以下のものが含まれる:
・dsDNAウイルス(例えば、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス)
・ssDNAウイルス(+)センスDNA(例えば、パルボウイルス)
・dsRNAウイルス(例えば、レオウイルス)
・(+)ssRNAウイルス(+)センスRNA(例えば、ピコルナウイルス、トガウイルス)
・(−)ssRNAウイルス(−)センスRNA(例えば、オルソミクソウイルス、ラブドウイルス)
・ssRNA-RTウイルス(+)センスRNA(ライフサイクル中にDNA中間体を有する)(例えば、レトロウイルス)
・dsDNA-RTウイルス(例えば、肝炎ウイルス)
【0120】
DNAウイルス型には、以下のものが含まれる:アデノウイルス科;パピローマウイルス科;パルボウイルス科;ヘルペスウイルス科、例えば、単純ヘルペスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス;ポックスウイルス科、例えば、天然痘ウイルス、ワクシニアウイルス;ヘパドナウイルス科、例えば、B型肝炎ウイルス;ポリオーマウイルス科、例えば、ポリオーマウイルス、JCウイルス(進行性多巣性白質脳症);シルコウイルス科、例えば、輸血伝達性ウイルス。
【0121】
RNAウイルス型には、以下のものが含まれる:レオウイルス科、例えば、レオウイルス、ロタウイルス;ピコルナウイルス科、例えば、エンテロウイルス、ライノウイルス、ヘパトウイルス、カルジオウイルス、アフトウイルス、ポリオウイルス、パレコウイルス、エルボウイルス、コブウイルス、テッショウウイルス、コクサッキー;カリシウイルス科、例えば、ノーウォークウイルス、E型肝炎;トガウイルス科、例えば、風疹ウイルス;アレナウイルス科、例えば、リンパ球脈絡髄膜炎ウイルス;フラビウイルス科、例えば、デング熱ウイルス、C型肝炎ウイルス、黄熱病ウイルス;オルソミクソウイルス科、例えば、インフルエンザウイルスA、インフルエンザウイルスB、インフルエンザウイルスC、イサウイルス、トゴトウイルス;パラミクソウイルス科、例えば、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、呼吸器合胞体ウイルス;ブニヤウイルス科、例えば、カリフォルニア脳炎ウイルス、ハンタウイルス;ラブドウイルス科、例えば、狂犬病ウイルス;フィロウイルス科、例えば、エボラウイルス、マルブルグウイルス;コロナウイルス科、例えば、コロナウイルス;アストロウイルス科、例えば、アストロウイルス;ボルナウイルス科、例えば、ボルナ病ウイルス。
【0122】
RTウイルス型には、以下のものが含まれる:メタウイルス科;シュードウイルス科;レトロウイルス科、例えば、HIV;ヘパドナウイルス科、例えば、B型肝炎ウイルス;カリモウイルス科、例えば、カリフラワーモザイクウイルス。
【0123】
例示として、ウイルスベクターは、プラス鎖RNAウイルス、例えば、レトロウイルス科、例えば、マウス白血病ウイルス、ネコ白血病ウイルス、成人T細胞白血病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ネコ免疫不全ウイルスおよび類人猿免疫不全ウイルス;トガウイルス科、例えば、セムリキ森林ウイルス(SFV)、シンドビスウイルスおよびベネズエラウマ脳炎ウイルスを含むアルファウイルス;黄熱病ウイルスおよび風疹ウイルスを含むフラビウイルス;およびピコルナウイルス科、例えばピコルナウイルスであってよい。
【0124】
例示として、ウイルスベクターは、マイナス鎖RNAウイルス、例えば、パラミクソウイルス科、例えば、センダイウイルス、ニューキャッスル病ウイルス、ムンプスウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、および特に、麻疹ウイルス;オルソミクソウイルス科、例えば、インフルエンザウイルス;またはラブドウイルス科、例えば、水疱性口炎ウイルスおよび狂犬病ウイルスであってよい。
【0125】
例示として、ウイルスベクターは、パルボウイルス科に属する一本鎖DNAウイルス、例えば、アデノ関連ウイルスであってよい。
【0126】
例示として、ウイルスベクターは、ヘルペスウイルス科に属する二本鎖DNAウイルス、例えば、エプスタイン・バーウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV);ポックスウイルス科、例えば、ワクシニアウイルスおよび誘導体、例えば、修飾ワクシニアアンカラ(MVA)、カナリア痘および鳩痘であってよい。
【0127】
本発明の1つの側面において、ベクターは麻疹ウイルスである。麻疹ウイルス(MV)は、パラミクソウイルス科の麻疹ウイルス属に属する。MVのエドモンストン株は、1954年に単離され、一次ヒト腎臓および羊膜細胞において連続継代され、次いでニワトリ胚線維芽細胞(CEF)に順応させて、エドモンストンAおよびB子孫が得られた。エドモンストンBは、1963年に最初のMVワクチンとして認可された。CEFにおけるエドモンストンAおよびBのさらなる継代は、より弱毒化されたSchwarzおよびMoratenウイルスを与え、最近になってこれらの配列が同一であることが示された。反応原性であるので、エドモンストンBワクチンは1975年に放棄され、Schwarz/Moratenワクチンに取って代わられた。現在、これが最も普通に使用されている麻疹ワクチンである。現在までに、MVワクチンは、数十億の人々に投与されており、安全かつ有効である。これは、104の50%組織培養感染用量(TCID50)の1回注射後に、非常に効率的な長寿命のCD4、CD8、および体液性免疫を誘導する。その安全性は、ゲノムが非常に安定であること(これが、病原性への逆戻りが決して観察されないことを説明する)、およびウイルス複製が専ら細胞質性であるためそれが宿主染色体に組込まれることができないことによる。
【0128】
例示として、麻疹ウイルスベクターは、国際公開第2008/078198号、国際公開第2006/136697号、国際公開第2004/001051号および国際公開第2004/000876号;Journal of Virology、2003年11月、p.11546-11554、Vol.77、No.21、「麻疹ウイルスワクチンの分子クローニングしたSchwarz株はマカクおよびトランスジェニックマウスにおいて強力な免疫応答を誘導する」と題する発表(Chantal Combredetら)に開示されている(これらの全てが参考として本明細書中に完全に組み入れられる)。
【0129】
1つの側面において、ウイルスベクターは、例えば上記刊行物に開示されているような弱毒化Schwartz麻疹株である。
【0130】
1つの側面において、本発明は、HIV抗原と組合せた麻疹ベクター、特に、1つまたはそれ以上のNef、Env、Gag、またはRT(完全長またはこれらの免疫原性フラグメントもしくは誘導体のいずれか)を含んでなるHIVポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでなる麻疹ベクターの使用に関する。
【0131】
本発明のウイルスベクターは、複製欠損であってよい。これは、野生型ウイルスと比較して、非相補細胞において複製する能力が低下していることを意味する。これは、ウイルスを突然変異させることによって、例えば、複製に関与する遺伝子を欠失させることによって成すことができる。
【0132】
ウイルスベクターは、ウイルスが複製可能である任意の好適なセルラインにおいて生成させることができる。ウイルスが、因子を失っていることにより複製を損傷しているときには、ウイルスベクターから失われた因子(これが複製特性の損傷を与える)を供する相補セルラインを使用することができる。
【0133】
免疫原性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、哺乳動物細胞用にコドン最適化されていてよい。このようなコドン最適化の原理は、国際公開第05/025614号に詳しく記載されている。さらに、ある種のHIV配列のためのコドン最適化が、国際公開第03/025003号に記載されている。
【0134】
本発明の1つの態様において、ポリヌクレオチド構築物は、N末端リーダー配列を含んでなる。シグナル配列、膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインは、個々に全てが所望により存在するか、または削除されている。本発明の1つの態様において、これら全ての領域が存在するが、修飾されている。
【0135】
本発明によるウイルスベクターにおいて使用するためのプロモーターは、HCMV IE遺伝子由来のプロモーター、例えば、国際公開第02/36792号に記載されているような、エクソン1を含んでなるHCMV IE遺伝子の5'非翻訳領域は含まれているが、イントロンAが完全にまたは部分的に除外されているプロモーターであってよい。
【0136】
いくつかの抗原が融合タンパク質に融合されているときには、該タンパク質は、単一のプロモーターの制御下にあるポリヌクレオチドによってコードされているであろう。
【0137】
本発明の別の態様において、いくつかの抗原は、個々のプロモーター(これらプロモーターのそれぞれは同一または異なっていてよい)によって別々に発現されてよい。本発明のさらに別の態様において、ある種の抗原は、第1のプロモーターに連結して融合体を形成してよく、他の抗原が第2のプロモーター(これは、第1のプロモーターと同一または異なっていてよい)に連結されていてよい。
【0138】
即ち、ウイルスベクターは、それぞれが1つのプロモーターの制御下にある1つの抗原をコードする1つまたはそれ以上の発現カセットを含んでなることができる。別法としてまたは追加的に、該ベクターは、それぞれが1つのプロモーターの制御下にある1つを超える抗原をコードする1つまたはそれ以上の発現カセットを含んでなることができる(これにより該抗原は融合体として発現される)。それぞれの発現カセットは、ウイルスベクター中の1つを超える遺伝子座に存在していてよい。
【0139】
ポリヌクレオチドまたは発現させるべき免疫原性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、ウイルスベクターの任意の適する領域に、例えば、削除された領域に挿入することができる。
【0140】
2つまたはそれ以上の免疫原性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを融合体として連結することができるが、得られるタンパク質は、融合タンパク質として発現させるか、またはそれを別々のタンパク質産物として発現させるか、またはそれを融合タンパク質として発現させ、次いでより小さいサブユニットに分解することができる。
【0141】
1つの側面において、ウイルスベクターは、それが供給される宿主生物において適切に複製コンピテントである。
【0142】
さらなる側面において、ウイルスベクターは、アジュバントの存在によって影響を受けないか、またはそれによって最小にしか影響を受けない。1つの側面において、アジュバントによって引き起こされるウイルス価のありうる低下は、50%以下、例えば、40%、30%、20%、15%、10%、5%以下であり、さらなる側面においては、力価の低下は全く存在しない。
【0143】
アジュバント
アジュバントは、例えば、「ワクチン設計−サブユニットおよびアジュバントアプローチ」(Powell and Newman、Plenum Press、ニューヨーク、1995)において一般的に記載されている。
【0144】
適するアジュバントには、水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウムなどのアルミニウム塩が含まれるが、カルシウム、鉄または亜鉛の塩であることもできるか、あるいは不溶性懸濁物のアシル化チロシン、またはアシル化糖、カチオン誘導またはアニオン誘導した多糖、またはポリホスファゼンであることができる。
【0145】
本発明の処方物において、アジュバント組成物は、Th1応答を優先的に誘導するのが好ましい。しかし、他の体液性応答を含む他の応答が排除されないことは理解されるであろう。
【0146】
ある種のワクチンアジュバントが、Th1型またはTh2型のいずれかのサイトカイン応答の刺激に特に適していることが知られている。伝統的に、ワクチン接種または感染後の免疫応答のTh1:Th2バランスの最良の指標には、抗原による再刺激後のインビトロにおけるTリンパ球によるTh1またはTh2サイトカインの産生の直接測定、および/または抗原特異的抗体応答のIgG1:IgG2a比の測定が含まれる。
【0147】
即ち、Th1型アジュバントは、単離されたT細胞集団を刺激して、高レベルのTh1型サイトカインを生体内(血清において測定される)または生体外(細胞がインビトロで抗原により再刺激されたときに測定されるサイトカイン)で産生させ、Th1型アイソタイプに付随する抗原特異的な免疫グロブリン応答を誘導するアジュバントである。
【0148】
本発明において使用するのに適するアジュバントを与えるように処方する好ましいTh1型免疫刺激物質には、以下のものが含まれるが、これらに限定はされない:
Toll様受容体(TLR)4リガンド、特にリピドA誘導体などのアゴニスト、特にモノホスホリルリピドA、あるいは、特に3-脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL)。
【0149】
3D-MPLは、GlaxoSmithKlineにより商標MPLのもとで販売されており、IFN-γの産生によって特徴付けられるCD4+ T細胞応答を主に促進する(Th1細胞、即ち、1型表現型を有するCD4 Tヘルパー細胞)。これは、英国特許出願公開第2220211号に開示されている方法に従って得ることができる。化学的には、これは、3、4、5または6アシル化鎖を有する3-脱アシル化モノホスホリルリピドAの混合物である。好ましくは、本発明の組成物において小粒子3D-MPLを使用する。小粒子3D-MPLは、0.22μmフィルターを通って滅菌濾過されうるような粒子サイズを有する。このような調製物は、国際特許出願公開第94/21292号に記載されている。
【0150】
リピドAの合成誘導体は既知であり、TLR4アゴニストであると考えられており、以下のものを含むが、これらに限定はされない:
OM174(2-デオキシ-6-o-[2-デオキシ-2-[(R)-3-ドデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]-4-o-ホスホノ-β-D-グルコピラノシル]-2-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]-α-D-グルコピラノシルリン酸二水素塩)(国際公開第95/14026号);
OM294DP(3S,9R)-3-[(R)-ドデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]-4-オキソ-5-アザ-9(R)-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]デカン-1,10-ジオール, 1,10-ビス(リン酸二水素塩)(国際公開第99/64301号および国際公開第00/0462号);
OM197MP-AcDP(3S,9R)-3-[(R)-ドデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]-4-オキソ-5-アザ-9-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]デカン-1,10-ジオール, 1-リン酸二水素塩 10-(6-アミノヘキサノエート)(国際公開第01/46127号)。
【0151】
使用しうる他のTLR4リガンドは、アルキルグルコサミニドホスフェート(AGP)、例えば国際公開第98/50399号または米国特許第6303347号に開示されているもの(AGPの製造方法も開示されている)、あるいは米国特許第6764840号に開示されているようなAGPの医薬的に許容しうる塩である。一部のAGPはTLR4アゴニストであり、一部はTLR4アンタゴニストである。両方がアジュバントとして有用であると考えられる。
【0152】
また、サポニンも本発明において好ましいTh1免疫刺激物質である。サポニンは周知のアジュバントであり、Lacaille-Dubois, MおよびWagner H(サポニンの生物学的および薬理学的活性の概説;Phytomedicine、vol 2、p.363-386、1996)により教示されている。例えば、Quil-A(南アメリカの樹木Quillaja Saponaria Molinaの樹皮から得られる)およびその分画が、米国特許第5057540号および「ワクチンアジュバントとしてのサポニン」(Kensil, C. R.、Crit Rev Ther Drug Carrier Syst、1996、12 (1-2):1-55);および欧州特許第0362279号に記載されている。溶血性サポニンQS21およびQS17(Quil-AのHPLC精製した分画)が、強力な全身性アジュバントとして記載されており、その製造方法が、米国特許第5057540号および欧州特許第0362279号に開示されている。また、これらの参照文献に記載されているのは、全身性ワクチンのための強力なアジュバントとして働くQS7(Quil-Aの非溶血性分画)の使用である。QS21の使用は、Kensilら(1991、J. Immunology、vol 146、431-437)がさらに記載している。また、QS21とポリソルベートまたはシクロデキストリンの組合せも知られている(国際公開第99/10008号)。Quil-Aの分画(例えば、QS21およびQS7)を含んでなる微粒子アジュバント系が、国際公開第96/33739号および国際公開第96/11711号に記載されている。1つのこのような系が、イスコム(Iscom)として知られ、1つまたはそれ以上のサポニンを含むことができる。
【0153】
本発明のアジュバントは、特にToll様受容体(TLR)4リガンド、特に3D-MPLを、サポニンと組合せて含んでなることができる。
【0154】
他の適するアジュバントには、TLR9リガンド(アゴニスト)が含まれる。即ち、別の好ましい免疫刺激物質は、メチル化されていないCpGジヌクレオチド(「CpG」)を含む免疫刺激性オリゴヌクレオチドである。CpGは、DNA中に存在するシトシン-グアノシンジヌクレオチドモチーフの省略形である。CpGは、全身および粘膜の両経路によって投与したときにアジュバントであるとして当分野で知られている(国際公開第96/02555号、欧州特許第468520号;Davisら、J.Immunol、1998、160(2):870-876;McCluskieおよびDavis、J.Immunol.、1998、161(9):4463-6)。歴史的に、BCGのDNA分画は抗腫瘍効果を発揮しうることが観察された。さらなる研究において、BCG遺伝子配列に由来する合成オリゴヌクレオチドは、免疫刺激効果を誘導しうることが示された(インビトロおよびインビボの両方において)。これら研究の著者は、ある種の回文配列(中心CGモチーフを含む)がこの活性を担持していると結論した。免疫刺激におけるCGモチーフの中心的役割は、後に刊行物において明らかにされた(Krieg、Nature 374、p.546、1995)。詳細な分析は、CGモチーフがある種の配列前後関係になければならないこと、また、このような配列は細菌DNAにおいては普通であるが脊椎動物DNAにおいては希であることを示した。免疫刺激性配列は、[プリン、プリン、C、G、ピリミジン、ピリミジン](この際、CGモチーフはメチル化されていない)であることが多いが、他のメチル化されていないCpG配列が免疫刺激性であることが知られており、本発明において使用することができる。
【0155】
6個のヌクレオチドのある種の組合せにおいて、回文配列が存在する。これらモチーフのいくつかは、1つのモチーフの繰り返しまたは異なるモチーフの組合せのいずれかとして、同一オリゴヌクレオチド中に存在することができる。1つまたはそれ以上のこれら免疫刺激性配列を含むオリゴヌクレオチドの存在は、天然キラー細胞(これはインターフェロンγを産生し、細胞溶解活性を有する)およびマクロファージを含む様々な免疫サブセットを活性化することができる(Wooldrigeら、Vol.89、No.8、1977)。また現在では、このコンセンサス配列を有していない配列を含む他のメチル化されていないCpGも、免疫調節性であることが示されている。
【0156】
通常、ワクチンに配合されるときのCpGは、遊離抗原と一緒に自由溶液中で投与されるか(国際公開第96/02555号;McCluskieおよびDavis、上記)、または抗原に共有コンジュゲート化されるか(国際公開第98/16247号)、または水酸化アルミニウムなどの担体と一緒に配合される[(肝炎表面抗原)、Davisら、上記;Brazolot-Millanら、Proc.Natl.Acad.Sci.、米国、1998、95(26)、15553-8]。
【0157】
潜在的に重要な他のTLR9アゴニストには、免疫刺激性CpRモチーフを含むオリゴヌクレオチドおよびYpGモチーフを含むオリゴヌクレオチド(Idera)が含まれる。
【0158】
上記したような免疫刺激物質を、担体、例えば、リポソーム、水中油エマルション、および/または金属塩(アルミニウム塩、例えば水酸化アルミニウムを含む)などと一緒に処方することができる。例えば、3D-MPLは、水酸化アルミニウム(欧州特許第0689454号)または水中油エマルション(国際公開第95/17210号)と一緒に処方することができ;QS21は、コレステロール含有リポソーム(国際公開第96/33739号)、水中油エマルション(国際公開第95/17210号)またはミョウバン(国際公開第98/15287号)と一緒に有利に処方することができ;CpGは、ミョウバン(Davisら、上記;Brazolot-Millan、上記)または他のカチオン担体と一緒に処方することができる。
【0159】
また、免疫刺激物質の組合せ、特に、モノホスホリルリピドAとサポニン誘導体の組合せ(国際公開第94/00153号;国際公開第95/17210号;国際公開第96/33739号;国際公開第98/56414号;国際公開第99/12565号;国際公開第99/11241号)、さらに特に、QS21と3D-MPLの組合せ(国際公開第94/00153号に開示)も好ましい。別法によれば、CpGとサポニン(例えばQS21)の組合せも、本発明において使用するための強力なアジュバントを形成する。別法によれば、サポニンを、リポソーム中またはIscorn中に配合し、免疫刺激性オリゴヌクレオチドと混合することができる。
【0160】
即ち、好適なアジュバント系には、例えば、モノホスホリルリピドA(好ましくは3D-MPL)とアルミニウム塩の組合せが含まれる(例えば、国際公開第00/23105号に記載)。
【0161】
増強された系には、モノホスホリルリピドAとサポニン誘導体の組合せ、特に、QS21と3D-MPLの組合せ(国際公開第94/00153号に開示)、またはQS21がコレステロール含有リポソーム(DQ)中で抑制されている比較的低い反応原性の組成物(国際公開第96/33739号に開示)が含まれる。この組合せは、さらに免疫刺激性オリゴヌクレオチドを含んでなることができる。
【0162】
即ち、例示のアジュバントは、QS21および/またはMPLおよび/またはCpGを含んでなる。
水中油エマルション中にQS21、3D-MPLおよびトコフェロールを含む特に強力なアジュバント処方物が、国際公開第95/17210号に記載されており、本発明において使用するための別の好ましい配合物である。
別の好ましい処方物は、CpGオリゴヌクレオチドを単独でまたはアルミニウム塩と一緒に含んでなる。
【0163】
本発明のさらなる側面において、本明細書中に記載されるワクチン処方物の製造方法であって、本発明による1つまたはそれ以上の第1の免疫原性ポリペプチドを適当なアジュバントと混合することを含んでなる方法が提供される。
【0164】
本発明の処方物において使用するための特に好ましいアジュバントは、以下の通りである:
(i)3D-MPL+QS21(リポソーム中)(例えば、後記アジュバントBを参照)
(ii)ミョウバン+3D-MPL
(iii)ミョウバン+QS21(リポソーム中)+3D-MPL
(iv)ミョウバン+CpG
(v)3D-MPL+QS21+水中油エマルション
(vi)CpG
(vii)3D-MPL+QS21(例えば、リポソーム中)+CpG
(viii)QS21+CpG
【0165】
好ましくは、アジュバントは、リポソーム、ISCOMまたは水中油型エマルションの形態で供される。本発明の1つの例示態様において、アジュバントは水中油型エマルションを含んでなる。本発明の別の例示態様において、アジュバントはリポソームを含んでなる。
【0166】
適切には、アジュバント成分はウイルスを全く含まない。即ち適切には、本発明において使用するための組成物は、病原体由来の1つまたはそれ以上の第2の免疫原性ポリペプチドをコードする1つまたはそれ以上の異種ポリヌクレオチドを含んでなる1つまたはそれ以上のウイルスベクター以外に、ウイルスを全く含まない。
【0167】
組成物、用量および投与
本発明の方法において、免疫原性ポリペプチド、ウイルスベクターおよびアジュバントは同時投与される。
通常、アジュバントは、免疫原性ポリペプチドと共処方されるであろう。適切には、アジュバントは、いずれかの他の投与すべき免疫原性ポリペプチドとも共処方されるであろう。
【0168】
即ち、本発明の1つの態様において、免疫応答を惹起する方法であって、
(i)アジュバントと共処方した1つまたはそれ以上の第1の免疫原性ポリペプチド;および
(ii)1つまたはそれ以上の第2の免疫原性ポリペプチドをコードする1つまたはそれ以上の異種ポリヌクレオチドを含んでなる1つまたはそれ以上のウイルスベクター;
を投与することを含んでなり、この際、1つまたはそれ以上の第1の免疫原性ポリペプチドとアジュバント、および1つまたはそれ以上のウイルスベクターを同時投与する方法が提供される。
【0169】
「共処方(co-formulated)」とは、第1の免疫原性ポリペプチドとアジュバントとが、同一の組成物、例えば医薬組成物中に含まれることを意味する。
通常、ウイルスベクターは、組成物、例えば医薬組成物中に含まれる。
【0170】
別法によれば、1つまたはそれ以上の第1の免疫原性ポリペプチド、1つまたはそれ以上のウイルスベクター、およびアジュバントを共処方する。
即ち、1つまたはそれ以上の免疫原性ポリペプチド、1つまたはそれ以上のウイルスベクター、およびアジュバントを含んでなる本発明による組成物が提供される。
【0171】
本発明による組成物および方法は、1つを超える免疫原性ポリペプチドおよび/または1つを超えるウイルスベクターの使用を含むことができる。複数抗原の使用は、ある種の病原体、例えば、HIV、結核菌(M. tuberculosis)およびマラリア(Plasmodium)種に対する防御免疫応答を惹起する際に特に有利である。本発明による組成物は、1つを超えるアジュバントを含んでなることができる。
【0172】
通常、本発明により使用される組成物および方法は、担体、例えば、水性緩衝担体を含んでなることができる。糖などの保護成分が含まれていてよい。
【0173】
標的細胞に形質導入し、十分なレベルの遺伝子移送および発現を与え、それによって病原体特異的な免疫応答が現れるのを可能にして、医学分野の専門家によって決定されうる過度の不都合な生理学的効果を伴わないかまたは医学的に許容しうる生理学的効果を伴って予防的または治療的利益を与えるのに十分な量で、組成物を投与すべきである。通常の医薬的に許容しうる投与経路には、網膜への直接供給および他の眼内供給方法、肝臓への直接供給、吸入、鼻内、静脈内、筋肉内、気管内、皮下、皮内、表皮、直腸、経口および他の非経口投与経路が含まれるが、これらに限定はされない。所望により、遺伝子産物または状態に依存して、投与経路を組合せるかまたは調節することができる。投与経路は、主に、処置される状態の性質に依存するであろう。最も適切には、経路は筋肉内、皮内または表皮である。
【0174】
標的にする好ましい組織は、筋肉、皮膚および粘膜である。皮膚および粘膜は、多くの感染性抗原が普通に出会う生理学的部位である。
【0175】
第1の免疫原性ポリペプチド、アジュバントおよびウイルスベクターを共処方しないときには、異なる処方物(例えば、ポリペプチド/アジュバントおよびウイルスベクター処方物)を、同じ投与経路または異なる投与経路で投与することができる。
【0176】
本方法における組成物の用量は、主に、処置される状態、対象の年齢、体重および健康などの因子に依存し、従って対象の間で変化するであろう。例えば、治療的に有効な成人ヒトまたは獣医学用量は、通常、濃度が約1×103〜約1×1015粒子、例えば、1×106〜約1×1015粒子、約1×1011〜1×1013粒子、または約1×109〜1×1012粒子のウイルスを、約1〜1000ug、または約2〜100ug、例えば約4〜40ugの免疫原性ポリペプチドと一緒に含む、約100μL〜約100mLの担体の範囲内である。麻疹ウイルスベクターについては、1×103〜1×106粒子の用量範囲を使用することができる。用量は、動物の大きさおよび投与経路に依存して変動するであろう。例えば、筋肉内注射のための適するヒトまたは獣医学用量(約80kgの動物に対して)は、単一部位に対して、1mLあたり約1×109〜約5×1012ウイルス粒子および4〜40ugタンパク質の範囲内である。当業者なら、投与経路および本組成物を使用する治療またはワクチン用途に依存して、これらの用量を調節することができる。
【0177】
アジュバントの量は、アジュバントおよび免疫原性ポリペプチドの性質、処置される状態ならびに対象の年齢、体重および健康に依存するであろう。通常、ヒト投与に対しては、1回用量あたり1〜100ug、例えば10〜50ugのアジュバント量が適するであろう。
【0178】
本発明の方法における本発明の組成物の1回の同時投与によって、十分な免疫応答が適切に達成される。しかし、第2のまたは後の機会(例えば、1ヶ月または2ヶ月後)において、さらなる用量の第1の免疫原性ポリペプチド、アジュバントおよびウイルスベクターの投与によって免疫応答をさらに増強する場合には、そのようなプロトコールが本発明に包含される。
【0179】
我々は、本発明の方法における本発明の組成物の1回の同時投与後に、良好な病原体特異的なCD4+および/またはCD8+ T細胞応答を典型的に惹起しうることを見いだした。しかし、我々は、良好な病原体特異的な抗体応答は、本発明の組成物の第2のまたはさらなる同時投与を必要とすることもあることを見いだした。
【0180】
本発明の成分を、任意の適する医薬賦形剤、例えば、水、緩衝液などと混合するか、または処方することができる。
【0181】
本発明の1つの側面において、特許請求の範囲に記載される組成物の共処方または同時投与は、例えば本明細書中に開示したアッセイ方法を用いて測定されるように、得られるCD4および/またはCD8応答において付加的効果または相乗的増加を与える。
【0182】
本願において言及した全ての参照文献(特許および特許出願を含む)は、可能な限りその最大限で、参考として本明細書中に組み入れられる。
【0183】
本明細書および後記の特許請求の範囲の全体にわたり、文脈が他のことを要求しなければ、語句「含んでなる」およびその変形は、言及した整数、工程、整数群または工程群の包含を意味するが、いずれかの他の整数、工程、整数群または工程群の排除を意味するものではないことが理解されるであろう。
【0184】
本記載および特許請求の範囲が部分を構成する本願は、いずれかの後の出願に対する優先権の基礎として使用されることもある。そのような後の出願の特許請求の範囲は、本願に記載したいずれかの特徴または特徴の組合せに関するものであろう。それらは、生成物、組成物、方法、または使用に関する特許請求の範囲の形態を採っていてよく、例示の目的で限定されることなく、本願に添付した特許請求の範囲を含んでいることもある。
【実施例】
【0185】
以下に挙げる実施例およびデータは、本発明を説明するものであり、本発明を限定するものではない。
【0186】
1.アジュバント調製物
1-1.国際公開第95/17210号に記載されるプロトコールに従う水中油エマルションの調製
このエマルションは、42.72mg/mlのスクアレン、47.44mg/mlのトコフェロール、19.4mg/mlのTween 80を含んでいる。得られた油滴は、約180nmのサイズを有している。Tween80をリン酸緩衝食塩水(PBS)に溶解して、PBS中の2%溶液を得た。100mlの2倍濃縮物を得るために、DL-α-トコフェロールのエマルション(5g)およびスクアレン(5ml)を、完全に混合するまで渦撹拌した。PBS/Tween溶液(90ml)を加え、完全に混合した。次いで、得られたエマルションを注射器に通し、最後にM110Sマイクロ流体機を用いてマイクロ流体化した。得られた油滴は、約180nmのサイズを有する。
【0187】
1-2.QS21およびMPLを含む水中油エマルションの調製
滅菌した大量のエマルションをPBSに加えて、500μlエマルション/ml(v/v)の最終濃度にした。次いで、3D-MPLを加えた。次いで、QS21を加えた。成分の各添加の間に、中間生成物を5分間撹拌した。15分後に、pHをチェックし、必要ならNaOHまたはHClを用いて6.8±0.1に調節した。3D-MPLおよびQS21の最終濃度は、それぞれ100μg/mlであった。
【0188】
1-3.リポソームMPLの調製
有機溶媒中の脂質(例えば、卵黄または合成のいずれかに由来するホスファチジルコリン)およびコレステロールおよび3D-MPLの混合物を、真空下(または別法によれば不活性ガス流下)に乾燥した。次いで、水性溶液(例えば、リン酸緩衝食塩水)を加え、全ての脂質が懸濁状態になるまで容器を撹拌した。次いで、この懸濁液を、リポソームサイズが約100nmまで低下するまでマイクロ流体化し、次いで0.2μmフィルターにより滅菌濾過した。押出または超音波処理によって、この工程を置き換えることもできる。
【0189】
通常、コレステロール:ホスファチジルコリンの比は1:4(w/w)であり、水性溶液を加えて10mg/mlの最終コレステロール濃度を得た。
MPLの最終濃度は2mg/mlである。
リポソームは約100nmのサイズを有しており、これをSUVと称する(小さい単ラメラ小胞に対して)。リポソームはそれ自体が長期に安定であり、融合能力を有していない。
【0190】
1-4.アジュバントB(「adjB」)の調製
滅菌した大量のSUVをPBSに加えた。PBSの組成は、Na2HPO4(9mM);KH2PO4(48mM);NaCl(100mM)、pH6.1であった。水性溶液中のQS21をSUVに加えた。3D-MPLおよびQS21の最終濃度は、それぞれ100μg/mlであった。この混合物をアジュバントBと称することもある。成分の各添加の間に、中間生成物を5分間撹拌した。pHをチェックし、必要ならNaOHまたはHClを用いて6.1±0.1に調節した。
【0191】
2.HIV抗原の調製
2-1.p24-RT-Nef-p17タンパク質(「F4」)
F4は、国際公開第2006/013106号、実施例1、コドン最適化法に記載されるように調製した。
【0192】
3.麻疹ウイルスベクターの調製
3-1.MV1-F4ウイルスのレスキュー
Combredet C、Labrousse V、Mollet L、Lorin C、Delebecque F、Hurtrel B、McClure H、Feinberg MB、Brahic M、およびTangy F、(2003)、「麻疹ウイルスワクチンの分子クローニングしたSchwarz株はマカクおよびトランスジェニックマウスにおいて強力な免疫応答を誘導する」(J Virol、77、11546-11554)に記載されるように、ヘルパーセルラインを用いてMV1-F4ウイルスをレスキューし、ベラ(Vera)細胞において増幅した。
【0193】
4.F4/adjBおよびMV1-F4の両方を用いる同時投与および共処方戦略
F4タンパク質は、adjBアジュバントと一緒に筋肉内投与したときに、マウス、アカゲザルおよびヒトにおいて強力なHIV特異的なCD4T細胞を誘導することが示されている。
このF4/adjBワクチン候補に加えて、MV1-F4が、F4抗原を用いる別のワクチン候補を構成する。
【0194】
マウスモデルにおけるF4特異的なT細胞応答の性質および強さに対する、同時投与および共処方戦略においてF4/adjBおよびMV1-F4の両方を用いることの付加価値を評価した。アジュバントBを、本明細書中においてはAS01Bと称することもある。
【0195】
マウスにおける研究
4-1.マウスおよび免疫
hCD46移入遺伝子に対してヘテロ接合性であるFVBマウス(F. Grosveldからの贈呈品、Erasmus University、ロッテルダム、オランダ国)を、I型IFN受容体を欠く129sv IFN-α/α R −/− マウス(M. Aguetからの贈呈品、Swiss Institute for Experimental Cancer Research、Epalinges、スイス国)と交配した。そのF1子孫をPCRによってスクリーニングし、CD46 +/− 動物を、再び129sv IFN-α/α R −/− マウスと交配した。IFN-α/α R −/− CD46 +/− を選択し、免疫付与実験に用いた。これらのマウスはMV感染に対して感受性である。マウスを、特定の病原体のない条件下でPasteur Institute動物施設に収容した。10〜12週齢の雌性CD46 +/− IFN-α/α R −/− (CD46/IFNAR)マウスに、腹腔内または筋肉内で様々な用量のMV1-F4を、そして筋肉内でadjB(100μl)に混合した組換えF4タンパク質(9または18μg)を接種した。免疫付与の7日後に、マウスを安楽死させ、脾臓細胞を集めた。全ての実験が、“Pasteur InstituteのOffice of Laboratory Animal Care”の指針に従って是認され、そして行われた。
【0196】
4-2.細胞媒介の免疫応答の分析
免疫したマウス由来の脾臓細胞を、フローサイトメトリーによる特異的な刺激に対してIFN-γを分泌する能力について試験した。脾臓細胞を、48ウエルプレート(Costar)において、F4配列をカバーするペプチドのプール(1μg/mlの各ペプチド最終濃度)を含むかまたは含まない0.4ml容量の完全培地(5%ウシ胎仔血清、50mM 2-メルカプトエタノール、非必須アミノ酸、ピルビン酸ナトリウムおよび抗生物質を追加したRPMI1640/グルタマックス培地)中、2.106細胞/ウエルの濃度で6時間培養した。次いで、ブレフェルジンA(10μg/ml)を一晩加えた。細胞を収穫し、1%ウシ血清アルブミンおよび0.1%アジ化ナトリウムを含むリン酸緩衝食塩水(FACS緩衝液)中で洗浄し、Fcブロック化Abと共に10分間インキュベートし、暗所において4℃で30分間、FACS緩衝液中で抗CD4-PEおよび抗CD8-PerCPにより表面染色した。未結合の抗体を洗浄した後、Cytofix/Cytopermキットを製造元の指示(BD)に従って用いて、細胞内サイトカイン染色のために細胞を固定し、透過性にした。次いで、細胞を、暗所において45分間、パームウォッシュ(permwash)緩衝液(BD)中に希釈した抗IFNγ-APC/抗IL2-FITCの混合物においてインキュベートした。パームウォッシュ緩衝液およびFACS緩衝液で洗浄した後、細胞を、PBS中の1%ホルムアルデヒドで最終的に固定した。CD8ゲートにおける20000回の事象がFACSCaliburフローサイトメーター(Becton Dickinson)を用いて捕捉された。データを、CELLQuestソフトウエア(Becton Dickinson)を用いて分析し、CD4またはCD8集団の中でIL-2およびIFNγを発現しているCD4またはCD8細胞の%として表した。以下の抗体を用いた:フルオレセインイソチオシアネート(FITC)-コンジュゲート化したラット抗マウスIL2 mAb(クローンJES6-5H4)、フィコエリトリン(PE)-コンジュゲート化したラット抗マウスCD4 mAb(クローンRM4-5)、ペリジニンクロロフィルタンパク質(PerCP)-コンジュゲート化したラット抗マウスCD8β mAb(クローン53-6.7)、アロフィコシアニン(APC)-コンジュゲート化したラット抗マウスIFNγ(クローンXMG1.2)およびFcブロック化CD16/32(クローン2.4G2)(これらをPharMingenから購入した)。
【0197】
4-3.同時投与プロトコール
F4特異的なT細胞応答に対する、F4/adjBおよびMV1-F4の両方で同時に免疫することの付加価値を評価するために、両候補を、CD46/IFNARマウスの2つの異なる部位に同時投与した。
【0198】
第1組の実験において、マウスに高用量のF4/adjB(18μg、im)およびMV1-F4(106CCID50、ip)の1回注射を行い、F4特異的なT細胞応答を、免疫付与の7日後に分析した(図1A)。
【0199】
結果は、F4/adjB単独が主にF4特異的なCD4T細胞を誘導し、MV1-F4単独がF4特異的なCD4およびCD8 T細胞の両方を誘導することを示す。興味深いことに、F4特異的なCD4およびCD8 T細胞応答の両方の強さは、両候補を同時投与されたマウスにおいて増大する(図1B)。
【0200】
第2組の実験において、マウスに1ヶ月間隔で比較的低用量のF4/adjB(9μg)およびMV1-F4(105CCID50)の2回注射を行い、両候補を2つの異なる部位に筋肉内注射した。F4特異的なT細胞応答を、第2免疫付与の7日後に分析した(図2A)。
【0201】
結果は、F4特異的なCD4およびCD8 T細胞応答の強さは、F4/adjBおよびMV1-F4の同時投与を受けたマウスの方が、各候補単独で受けたマウスよりも高いことを示す。
【0202】
総合して、これらの結果は、F4/adjBおよびMV1-F4の両方の同時投与が、F4特異的なCD4およびCD8 T細胞応答の強さに対して相乗効果を供することを示唆する。しかし、F4特異的なT細胞のサイトカイン産生のプロフィールは、候補が単独注射されるか同時投与で注射されるかを問わず、変化することがないようである。
【0203】
4-4.共処方プロトコール
MV1-F4を、アジュバントadjBまたは培地と混合し、室温で様々な時間にわたってインキュベートして、ベクターに対するアジュバントの影響を評価した。次いで、MV1-F4をベロ(Vero)細胞において滴定した。結果は、MV1-F4をadjBと一緒にインキュベートしたときに、培地と比較して、感染性のわずかな低下(約0.5対数)が観察されることを示す。
【0204】
結果を図3に示す。MV1-F4ウイルスを、室温で表示した時間にわたり、adjBアジュバントまたは培地(OptiMEM)と一緒にインキュベートした。次いで、ウイルス価を、終点段階希釈アッセイによってベロ細胞において評価した。ウイルス価をTCID50/mlで表す。
【0205】
サルにおける研究
4-5.NHPにおけるワクチン処方の免疫原性
カニクイザル(Cynomolgus macaque)(N=10/群)を、以下のワクチン処方を用いて0日目と28日目に2回免疫した:(1)10μgのF4co/AS01B(P)、(2)4.2対数のCCID50 MV1-F4(M)、および(3)両ワクチン候補の同時投与(Co-ad)。各ワクチン処方の免疫原性を、最後の注射の3ヵ月後まで長期にわたりモニターした。
【0206】
4-5-1.様々なワクチン処方によって誘導されるF4特異的なCD4+およびCD8+ T細胞応答
F4co/AS01Bの1回注射は、末梢血において検出したときに、有意レベルのF4特異的なCD4+ T細胞(Iの14日後における10動物の中央値:全CD4+ T細胞の0.48%)を誘導し、第2の注射は、非常に高頻度の特異的なCD4+ T細胞(IIの14日後における中央値が1.04%である)を誘導した(図4Aを参照)。全ての動物が、第1用量からF4co抗原に対して応答性であった(カットオフ=0.05%)(図4Bを参照)。興味あることに、特異的なCD4+ T細胞応答は、最後の免疫付与の3ヵ月後になお検出可能であった(10動物の中央値:0.16%)。F4特異的なCD8+ T細胞は、このワクチン処方を用いては観察されなかった(図5Aおよび5Bを参照)。
【0207】
4.2対数のCCID50 MV1-F4の第1注射は、検出可能なF4特異的なCD4+ T細胞応答を誘導したが、その強さ(Iの14日後における10動物の中央値:全CD4+ 細胞の0.18%)は、F4co/AS01B媒介のF4特異的なCD4+ T細胞応答の強さよりも低かった(図4Aを参照)。第1免疫付与の14日後において、10動物のうち8匹だけがF4特異的なCD4+ T細胞応答を惹起し、2匹の非応答性サルは、Iの28日後に検出可能であったF4特異的なCD4+ T細胞応答を惹起した。結果として、全ての動物が、個体間で変化する速度論を伴ってF4特異的なCD4+ T細胞応答を現した。F4特異的なCD8+ T細胞は、第1注射の14日後に、10動物のうち4匹において検出され(カットオフ=0.06%)(図5Bを参照)、1匹の追加の動物が、Iの28日後に特異的なCD8+ T細胞応答を惹起した。4.2対数のCCID50 MV1-F4の第2注射は、F4特異的なCD4+またはCD8+ T細胞応答の頻度を増大させなかった。
【0208】
同時投与処方を用いて免疫したサルは、IおよびIIの免疫付与の14日後に、F4co/AS01Bワクチン候補を用いて免疫した動物において惹起されるものと同等のF4特異的なCD4+T細胞応答を現した(Iの14日後における10動物の中央値:全CD4+ T細胞の0.73%;およびIIの14日後において:0.55%)(図4Aを参照)。全ての動物が、第1用量からF4co抗原に対して応答性であり(図4Bを参照)、この特異的なCD4+T細胞応答が、最後の免疫付与の3ヵ月後になお検出可能であった(10動物の中央値:0.13%)(図4A)。興味あることに、F4特異的なCD8+T細胞が、Iの注射の14日後に10動物のうち7匹において観察され、その頻度は、これら応答動物のうち3匹において高かった(F4特異的なCD8+T細胞の%=0.82、1および1.7)(図5Bを参照)。同時投与処方を用いて免疫したこれら3匹のサルにおいて検出されたF4特異的なCD8+T細胞の頻度は、MV1-F4単独を用いて免疫したサルにおいて観察される頻度よりも高かった(Iの14日後における「M」群の中央値:0.052%;およびIの14日後における「Co-ad」群の中央値:0.1%)(図5Bを参照)。同時投与処方を用いる第2の免疫付与は、F4特異的なCD8+T細胞応答の強さを増大させなかった。
【0209】
まとめると、同時投与処方を用いて免疫したサルは、強さの点でF4co/AS01B媒介のCD4+T細胞応答と同等の強力なF4特異的なCD4+T細胞応答を惹起し、この特異的な応答が、第2免疫付与の3ヵ月後までなお検出可能であった。興味深いことに、10動物のうち7匹がF4特異的なCD8+ T細胞応答を惹起し、高頻度のF4特異的なCD8+T細胞がこれら動物のうち3匹において観察された。同時投与プロトコールを用いる第2の免疫付与は、応答動物の数またはF4特異的なCD8+T細胞応答のレベルを増大させなかった。結果として、同時投与処方は、CD4+およびCD8+ T細胞の両方の誘導に好都合である。
【0210】
4-5-2.サイトカイン同時発現プロフィール
F4特異的なCD4+およびCD8+T細胞のサイトカイン同時発現プロフィールを、3種類のワクチン処方について、1回および2回の免疫付与の14日後に評価した。
【0211】
第1用量のF4co/AS01Bの後に、F4特異的なCD4+T細胞は、主にIL-2を単独で、またはTNF-αと組合せて分泌した(図4Cを参照)。第2用量のF4co/AS01Bは、少なくとも2つまたは3つのサイトカインを産生する多機能性CD4+T細胞の割合を増大させる傾向がある。興味深いことに、少なくとも3つのサイトカインを産生するF4特異的なCD4+ T細胞の割合は、F4co/AS01Bの単独を受けた動物において観察される割合(10動物の平均:Iの14日後において3%、およびIIの14日後において14%)と比較して、同時投与プロトコールを受けた動物においてより高くなる傾向がある(10動物の平均:Iの14日後において13%、およびIIの14日後において24%)(図4Cを参照)。
【0212】
MV1-F4単独または同時投与プロトコールによって誘導したF4特異的なCD8+T細胞は、主にIFNγを単独で、またはTNF-αと組合せて産生した。第2用量の同時投与プロトコールは、多機能性のF4特異的なCD8+T細胞の割合を増大させる傾向があるが、全体的なF4特異的なCD8+ T細胞応答の強さに対する影響は観察されなかった(図5Aおよび5Cを参照)。
【0213】
全般的に、それぞれのワクチン処方の第2免疫は、少なくとも3つのサイトカインを分泌するF4特異的なT細胞の割合を増大させる傾向がある。興味深いことに、多機能性のF4特異的なCD4+T細胞の割合に対する、F4co/AS01Bの単独を超える同時投与処方の付加価値が、第1免疫から観察される。
【0214】
4-5-3.様々なワクチン処方によって誘導される体液性応答
MV1-F4候補単独または同時投与処方を受けた全ての動物が、第1用量後に抗MV体液性応答を現し、MV1-F4ワクチン候補の取込みを示した。第2用量は、両群において抗MV抗体のレベルを増大させた。MV1-F4単独または同時投与処方によって誘導される抗MV体液性応答の強さは同等であった(図6Aを参照)。
【0215】
F4特異的な体液性応答に関して、2回用量のF4co/AS01Bワクチン候補および同時投与処方を用いて免疫した動物だけが、有意レベルの抗F4co抗体を惹起した。2回免疫付与の28日後に、抗F4coの中間点力価は、両群において同等であった(10動物の幾何平均は、「P」群において20384であり、「Co-ad」群において20365であった)(図6Bを参照)。4.2対数のCCID50 MV1-F4を受けた動物において、抗F4co体液性応答は低く、検出不可能であった。
【0216】
結論として、本明細書中に記載した前臨床データは、非ヒト霊長類におけるF4co/AS01BおよびMV1-F4候補ワクチンを組合せた同時投与処方の免疫原性を示す。同時投与処方は、良好な持続性およびサイトカイン分泌の多機能性プロフィールを有する非常に高い特異性のCD4+T細胞応答を誘導した。同時投与プロトコールによって誘導されるF4特異的なCD4+T細胞応答の強さは、F4co/AS01Bの単独によって誘導される強さと同等であったが、多機能性のF4特異的なCD4+T細胞の割合は、同時投与処方を用いてより高くなる傾向がある。興味深いことに、同時投与処方は、動物のかなりの割合において、F4特異的なCD4+ T細胞応答に加えて、F4特異的なCD8+ T細胞の誘導を誘発する。
【図面の簡単な説明】
【0217】
【図1】1回の同時投与の7日後のF4特異的なCD4+およびCD8+T細胞応答を示す。 A:筋肉内(im)でF4co/AS01B(18μg)および腹腔内(ip)でMV1-F4(106 TCID50)を用いて、マウスを1回免疫した。 B:免疫付与の7日後に、F4配列(p24、RT、Nefおよびp17)をカバーする4プールのペプチドを用いて、脾臓細胞を生体外刺激し(ブレフェルジンの一晩添加の6時間前)、サイトカイン産生をICSによって測定した。HIV特異的応答は、p24-、RT-、Nef-およびp17-特異的応答の加算である。IFN-γおよび/またはIL-2を分泌するHIV特異的なCD4+およびCD8+T細胞の%を、各マウスについて示す。
【図2】2回の同時投与の7日後のF4特異的なCD4+およびCD8+T細胞応答を示す。 A:0日目および28日目に2つの異なる部位において筋肉内で、F4co/AS01B(9μg)およびMV1-F4(105 TCID50)を用いて、マウスを2回免疫した。 B:免疫付与の7日後に、F4配列(p24、RT、Nefおよびp17)をカバーする4プールのペプチドを用いて、脾臓細胞を生体外刺激し(ブレフェルジンの一晩添加の6時間前)、サイトカイン産生をICSによって測定した。HIV特異的応答は、p24-、RT-、Nef-およびp17-特異的応答の加算である。IFN-γおよび/またはIL-2を分泌するHIV特異的なCD4+およびCD8+T細胞の%を、各マウスについて示す。
【図3】AS01Bアジュバントと一緒にインキュベートしたときのMV1-F4のインビトロ感染性を示す。 MV1-F4ウイルスを、室温で表示した時間にわたり、AS01Bアジュバントまたは培地(OptiMEM)と一緒にインキュベートした。次いで、ウイルス価を、終点段階希釈アッセイによってベロ細胞において評価した。ウイルス価をTCID50/mlで表す。
【図4】独立してまたは同時投与でF4co/AS01BおよびMV1-F4により、カニクイザルにおいて誘導されたF4特異的なCD4+T細胞応答 A:カニクイザルにおいて誘導されたF4特異的なCD4+ T細胞の速度論および頻度。10μgのF4co/AS01B(P)、または4.2対数のCCID50 MV1-F4(M)、または両候補の同時投与を用いて、0および28日目に2回、サルを免疫した。新鮮なPBMCを、F4配列をカバーするペプチドのプールを用いて一晩刺激し、サイトカイン産生を、細胞内染色(7色ICS)によって測定した。10匹のサル/群の中央値を、時間に対してプロットした。 B:1回注射の14日後におけるそれぞれ個々の動物のF4特異的なCD4+T細胞の頻度。1回注射の14日後に各動物において誘導されたF4特異的なCD4+T細胞の頻度を、各ワクチン処方(P、MまたはCo-ad)に対して示す。 C:第1および第2免疫付与の14日後におけるF4特異的なCD4+T細胞のサイトカイン同時発現プロフィール。少なくとも1つ、2つまたは3つのサイトカイン(IL2、IIFN-γおよびTNF-α)を発現するF4特異的なCD4+CD40L+T細胞の頻度を、1回および2回の免疫付与の14日後にICSによって評価した。それぞれのパイは10動物の平均を示す。
【図5】独立してまたは同時投与でF4co/AS01BおよびMV1-F4により、カニクイザルにおいて誘導されたF4特異的なCD8+T細胞応答 A:カニクイザルにおいて誘導されたF4特異的なCD8+T細胞の速度論および頻度。10μgのF4co/AS01B(P)、または4.2対数のCCID50 MV1-F4(M)、または両候補の同時投与を用いて、0および28日目に2回、サルを免疫した。新鮮なPBMCを、F4配列をカバーするペプチドのプールを用いて一晩刺激し、サイトカイン産生を、細胞内染色(7色ICS)によって測定した。10匹のサル/群の中央値を、時間に対してプロットした。 B:1回注射の14日後におけるそれぞれ個々の動物のF4特異的なCD8+T細胞の頻度。1回注射の14日後に各動物において誘導されたF4特異的なCD8+T細胞の頻度を、各ワクチン処方(P、MまたはCo-ad)に対して示す。 C:第1および第2免疫付与の14日後におけるF4特異的なCD8+ T細胞のサイトカイン同時発現プロフィール。少なくとも1つ、2つまたは3つのサイトカイン(IL2、I IFN-γおよびTNF-α)を発現するF4特異的なCD8+T細胞の頻度を、1回および2回の免疫付与の14日後にICSによって評価した。それぞれのパイは10動物の平均を示す。
【図6】カニクイザルにおける抗MVおよび抗F4co抗体応答の速度論 A:抗MV体液性応答。10μgのF4co/AS01B(P)、または4.2対数のCCID50 MV1-F4(M)、または両候補の同時投与を用いて、0および28日目に2回、サルを免疫した。非ヒト霊長類血清において抗MV抗体を測定するために開発したELISAによって、抗MV体液性応答を測定した。各動物に対して得られたOD値を、時間に対してプロットした。 B:抗F4体液性応答。抗F4co抗体の中間点力価を、時間に対してELISAにより測定した。各時間点あたりに、10匹のサル/群の幾何平均が示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
病原体に対する免疫応答を惹起する方法であって、
(i)該病原体に由来する1つまたはそれ以上の第1の免疫原性ポリペプチド;
(ii)該病原体に由来する1つまたはそれ以上の第2の免疫原性ポリペプチドをコードする1つまたはそれ以上の異種ポリヌクレオチドを含んでなる1つまたはそれ以上のウイルスベクター;および
(iii)アジュバント
を投与することを含んでなり、この際、該1つまたはそれ以上の第1の免疫原性ポリペプチド、該1つまたはそれ以上のウイルスベクター、および該アジュバントを同時投与する、方法。
【請求項2】
病原体に対する免疫応答を惹起する方法であって、
(i)アジュバントと共処方した該病原体に由来する1つまたはそれ以上の第1の免疫原性ポリペプチド;および
(ii)該病原体に由来する1つまたはそれ以上の第2の免疫原性ポリペプチドをコードする1つまたはそれ以上の異種ポリヌクレオチドを含んでなる1つまたはそれ以上のウイルスベクター
を投与することを含んでなり、この際、1つまたはそれ以上の免疫原性ポリペプチドとアジュバント、および1つまたはそれ以上のウイルスベクターを同時投与する、方法。
【請求項3】
哺乳動物において病原体特異的なCD4+および/またはCD8+ T細胞および/または抗体の産生を刺激する方法であって、該哺乳動物に、
(i)病原体に由来する1つまたはそれ以上の第1の免疫原性ポリペプチド;
(ii)該病原体に由来する1つまたはそれ以上の第2の免疫原性ポリペプチドをコードする1つまたはそれ以上の異種ポリヌクレオチドを含んでなる1つまたはそれ以上のウイルスベクター;および
(iii)アジュバント
を投与することを含んでなり、この際、該1つまたはそれ以上の第1の免疫原性ポリペプチド、該1つまたはそれ以上のウイルスベクター、および該アジュバントを、例えば、免疫学的有効量の上記組成物の投与によって同時投与する、方法。
【請求項4】
病原体に対する免疫応答を惹起する方法であって、
(a)(i)該病原体に由来する1つまたはそれ以上の第1の免疫原性ポリペプチド;(ii)該病原体に由来する1つまたはそれ以上の第2の免疫原性ポリペプチドをコードする1つまたはそれ以上の異種ポリヌクレオチドを含んでなる1つまたはそれ以上のウイルスベクター;および(iii)アジュバント、を投与し、この際、該1つまたはそれ以上の免疫原性ポリペプチド、該1つまたはそれ以上のウイルスベクター、および該アジュバントを同時投与し;そして
(b)所望により(a)の工程を繰り返す
ことからなる、方法。
【請求項5】
病原体に対する免疫応答を惹起する方法であって、
(i)該病原体に由来する1つまたはそれ以上の第1の免疫原性ポリペプチド;
(ii)該病原体に由来する1つまたはそれ以上の第2の免疫原性ポリペプチドをコードする1つまたはそれ以上の異種ポリヌクレオチドを含んでなる1つまたはそれ以上のウイルスベクター;および
(iii)アジュバント
を投与することを含んでなり、この際、該1つまたはそれ以上の第1の免疫原性ポリペプチド、該1つまたはそれ以上のウイルスベクター、および該アジュバントを同時投与し、かつ、いずれのプライミング用量の免疫原性ポリペプチドまたは免疫原性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの投与も含まない、方法。
【請求項6】
1つまたはそれ以上の免疫原性ポリペプチド、1つまたはそれ以上のウイルスベクター、およびアジュバントを共処方する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
病原体特異的なCD4+ T細胞およびCD8+ T細胞および抗体の産生を刺激する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
(i)病原体に由来する1つまたはそれ以上の第1の免疫原性ポリペプチド;
(ii)該病原体に由来する1つまたはそれ以上の第2の免疫原性ポリペプチドをコードする1つまたはそれ以上の異種ポリヌクレオチドを含んでなる1つまたはそれ以上のウイルスベクター;および
(iii)アジュバント
を含んでなる、ワクチン組成物。
【請求項9】
該1つまたはそれ以上の第1の免疫原性ポリペプチドの1つまたはそれ以上が、該1つまたはそれ以上の第2の免疫原性ポリペプチドの1つまたはそれ以上と実質的に同一である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法またはワクチン組成物。
【請求項10】
該1つまたはそれ以上の第1の免疫原性ポリペプチドの1つまたはそれ以上が、該1つまたはそれ以上の第2の免疫原性ポリペプチドの1つまたはそれ以上に含まれる抗原と実質的に同一である少なくとも1つの抗原を含んでいる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法またはワクチン組成物。
【請求項11】
1つまたはそれ以上の第1の免疫原性ポリペプチドが、少なくとも1つのT細胞エピトープを含んでなる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法またはワクチン組成物。
【請求項12】
1つまたはそれ以上の第1の免疫原性ポリペプチドが、少なくとも1つのB細胞エピトープを含んでなる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法またはワクチン組成物。
【請求項13】
該1つまたはそれ以上の第1の免疫原性ポリペプチドの1つまたはそれ以上と、該1つまたはそれ以上の第2の免疫原性ポリペプチドの1つまたはそれ以上とが、1つまたはそれ以上の同一のB細胞および/またはT細胞エピトープを共有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法またはワクチン組成物。
【請求項14】
該1つまたはそれ以上の第1の免疫原性ポリペプチドの1つまたはそれ以上のいずれもが、該1つまたはそれ以上の第2の免疫原性ポリペプチドの1つまたはそれ以上と実質的に同一ではないか、またはそれらと共通するいずれの抗原も含んでいない、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法またはワクチン組成物。
【請求項15】
病原体がHIVである、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法またはワクチン組成物。
【請求項16】
免疫原性ポリペプチドが、Env、Nef、GagおよびPol、ならびにこれらの免疫原性誘導体およびこれらの免疫原性フラグメントから選択されるHIV由来抗原を含む、請求項15に記載の方法またはワクチン組成物。
【請求項17】
第1の免疫原性ポリペプチドが、p24-RT-Nef-p17である、請求項16に記載の方法またはワクチン組成物。
【請求項18】
第2の免疫原性ポリペプチドが、Gag-RT-Nefである、請求項16または17に記載の方法またはワクチン組成物。
【請求項19】
病原体が、熱帯熱マラリア原虫および/または三日熱マラリア原虫である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法またはワクチン組成物。
【請求項20】
免疫原性ポリペプチドが、熱帯熱マラリア原虫および/または三日熱マラリア原虫に由来する抗原を含み、該抗原が、スポロゾイト周囲(CS)タンパク質、MSP-1、MSP-3、AMA-1、LSA-1、LSA-3、およびこれらの免疫原性誘導体またはこれらの免疫原性フラグメントから選択される、請求項19に記載の方法またはワクチン組成物。
【請求項21】
免疫原性ポリペプチドが、ハイブリッドタンパク質RTSである、請求項20に記載の方法またはワクチン組成物。
【請求項22】
RTSが、RTS,Sとして知られる混合粒子の形態で供される、請求項20に記載の方法またはワクチン組成物。
【請求項23】
ポリヌクレオチドによってコードされる免疫原性ポリペプチドが、熱帯熱マラリア原虫由来のCSタンパク質またはその免疫原性フラグメントもしくは誘導体である、請求項20〜22のいずれか一項に記載の方法またはワクチン組成物。
【請求項24】
病原体が結核菌である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法またはワクチン組成物。
【請求項25】
アジュバントが、Th1応答の優先的刺激物質を含んでなる、請求項1〜24のいずれか一項に記載の方法またはワクチン組成物。
【請求項26】
アジュバントが、QS21および/または3D-MPLおよび/またはCpGを含んでなる、請求項25に記載の方法またはワクチン組成物。
【請求項27】
アジュバントが、QS21および3D-MPLを含んでなる、請求項26に記載の方法またはワクチン組成物。
【請求項28】
アジュバントが、水中油型エマルションを含有する、請求項1〜27のいずれか一項に記載の方法またはワクチン組成物。
【請求項29】
アジュバントがリポソームを含有する、請求項1〜27のいずれか一項に記載の方法またはワクチン組成物。
【請求項30】
哺乳動物において免疫応答を刺激する方法であって、対象に、免疫学的有効量の請求項8〜29のいずれか一項に記載のワクチン組成物を投与することを含んでなる、方法。
【請求項31】
哺乳動物において免疫応答を刺激するための薬剤の製造における、請求項8〜31のいずれか一項に記載のワクチン組成物の使用。
【請求項32】
哺乳動物において免疫応答を刺激するために用いるための、請求項8〜31のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項33】
(i)病原体に由来する1つまたはそれ以上の第1の免疫原性ポリペプチド;
(ii)該病原体に由来する1つまたはそれ以上の第2の免疫原性ポリペプチドをコードする1つまたはそれ以上の異種ポリヌクレオチドを含んでなる1つまたはそれ以上のウイルスベクター;および
(iii)アジュバント
を含んでなる、キット。
【請求項34】
(i)病原体に由来する1つまたはそれ以上の第1の免疫原性ポリペプチドおよびアジュバント;および
(ii)該病原体に由来する1つまたはそれ以上の免疫原性ポリペプチドをコードする1つまたはそれ以上の異種ポリヌクレオチドを含んでなる1つまたはそれ以上の第2のウイルスベクター;
を含んでなる、キット。
【請求項35】
ウイルスベクターが、アデノウイルスベクターではない、請求項1〜34のいずれか一項に記載の方法またはワクチンまたはキットまたは使用。
【請求項36】
ウイルスベクターが、弱毒化麻疹ウイルスベクター、所望により、弱毒化Schwarz麻疹ウイルスである、請求項1〜35のいずれか一項に記載の方法またはワクチンまたはキットまたは使用。
【請求項37】
第1の免疫原性ポリペプチドが、p24-RT-Nef-p17を含んでなり、アジュバントが、3D-MPLおよびQS21を含んでなり、ウイルスベクターが、所望によりコドン最適化した免疫原性ポリペプチドGag-RT-Nefをコードするポリヌクレオチドを含んでなる、弱毒化Schwarz麻疹ウイルスなどのベクターを含んでなる、請求項36に記載の方法またはワクチンまたはキットまたは使用。
【請求項38】
ポリペプチド、ウイルスベクターおよびアジュバント成分の1つまたは2つまたは全てを、薬学上許容しうる賦形剤と混合する、請求項1〜37のいずれか一項に記載の方法またはワクチンまたはキットまたは使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−508160(P2012−508160A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−524389(P2011−524389)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【国際出願番号】PCT/EP2009/061105
【国際公開番号】WO2010/023260
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(305060279)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (169)
【出願人】(501173391)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT PASTEUR
【Fターム(参考)】