説明

ワクチン製剤

【課題】肺炎球菌抗原血清型の抗原決定基を保護および/または安定化する少なくとも1つの保存剤を含む最適化された製剤の提供。
【解決手段】担体タンパク質とコンジュゲートされている肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19Fおよび23F由来の複数の莢膜多糖を含み、少なくとも1つの保存剤、好ましくは、2−フェノキシエタノール(2−PE)をさらに含む免疫原性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
【背景技術】
【0002】
細菌の肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)(肺炎球菌としても知られている)により引き起こされる肺炎球菌疾患は、世界中でより重要な細菌性病原体のうちの1つである。疾患の負担は、ワクチンが入手できない5歳未満の小児で発展途上国において高い。肺炎球菌疾患は、複雑な疾病群であり、菌血症/敗血症、髄膜炎、肺炎および中耳炎などの侵襲的感染を包含し、それらは、小児と成人の両方に影響を及ぼす。プレブナー13(「プレベナー13」としても知られており、本明細書では「プレブ(ベ)ナー13」と称する)は、CRM197(ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)の変異株由来の交差反応性物質(Cross Reactive Material))と個別にコンジュゲートされている13の肺炎球菌血清型(1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19Fおよび23F)由来の多糖の製剤である。プレブ(ベ)ナー13は、あらゆる肺炎球菌コンジュゲートワクチンのうちで最も幅広い血清型範囲を提供するための乳幼児および幼児の積極的な予防接種に推奨される。特に、プレブ(ベ)ナー13中の血清型19Aは、世界の多くの地域に広まっており、抗生物質抵抗性を伴うことが多い。例えば、WO2006/110381、WO2008/079653、WO2008/079732、WO2008/143709およびその中に引用されている参考文献を参照されたい。
【0003】
チメロサール(チオマーサル、メルチオレートとしても知られている)は、1930年代の初め頃から、曝露中および複数の対象に投与される場合の潜在的な汚染から製剤を保護するために多くの複数回投与の注射用製剤および局所用液剤に添加されてきたエチル水銀含有保存剤である。チメロサールは、米国および世界のその他の国々における義務化されている予防接種の一部としておよび他の医薬製品中で投与され続けている。チメロサールは、ワクチンの抗原構造および特性との相互作用を最小限にとどめながら、現場における製品の複数回使用中に潜在的な汚染細菌を排除するのに有効な保存剤であると主張されている。乳幼児および若年者における脳の発達に対するエチル水銀の潜在的な安全性の問題および有害作用に関する論争が高まっているため、ある種の機関は、安全性リスクがより低いか無視できる代替保存剤を特定するべきであると提言し始めた。1999年、米国議会により委任された米国食品医薬品局の審査により、一部の乳幼児が、ある種の国内指針に従って許容できると考えられているよりも多くの水銀をワクチンから摂取していることが判明した。米国小児科学会(AAP)および米国公衆衛生局(USPHS)は、ワクチン中のチメロサールに関する共同声明を発表し、次いで、AAPは、できる限り速やかにワクチンからチメロサールを除去する一方で、安全性に影響を与えずに世界中で高レベルのワクチン接種を引き続き確実に実施する努力を維持することを提言する中間報告書を臨床医に公表した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2006/110381
【特許文献2】WO2008/079653
【特許文献3】WO2008/079732
【特許文献4】WO2008/143709
【特許文献5】米国特許第4,673,574号
【特許文献6】米国特許第4,902,506号
【特許文献7】米国特許第5,614,382号
【特許文献8】WO2004/083251
【特許文献9】WO90/14837
【特許文献10】米国特許第4,912,094号
【特許文献11】米国特許第5,057,540号
【特許文献12】米国特許第6,113,918号
【特許文献13】米国特許第6,207,646号
【特許文献14】WO00/18434
【特許文献15】WO02/098368
【特許文献16】WO02/098369
【特許文献17】WO93/13302
【特許文献18】WO92/19265
【特許文献19】WO94/00153
【特許文献20】WO96/33739
【特許文献21】WO95/17210
【特許文献22】WO2007/127668
【特許文献23】WO2009/109550
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Drainら、Bull World Health Organ 81(10):726〜731(2003)
【非特許文献2】Wilson、The Hazards of Immunization、Athlone Press、London、75〜78頁(1967)
【非特許文献3】Paolettiら、2001、Vaccine、19:2118
【非特許文献4】Gennaro、2000、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第20版、ISBN:0683306472
【非特許文献5】Sharmaら、Biologicals36(1):61〜63(2008)
【非特許文献6】Fernsten P、ら、Hum Vaccin.2011年1月1日、7:75〜84
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ワクチンに保存剤を添加する必要性は、単回投与ワクチン製剤のみを製造および使用することにより軽減されるか不要にすることができる。しかし、単回投与保存剤非含有製剤の使用は、ワクチン接種の総経費を押し上げ、発展途上国における予防接種プログラムの効力を脅かす。さらに、複数回投与バイアルから保存剤を完全に除去することは、特に、低温貯蔵が制限され保健医療の基準が最適とはいえない国々において、好ましい選択肢とは見なされない(Drainら、Bull World Health Organ81(10):726〜731(2003))。1928年、汚染されたジフテリアワクチンを接種された小児21人のうち12人が、複数のブドウ球菌性膿瘍および毒素血症で死亡した(Wilson、The Hazards of Immunization、Athlone Press、London、75〜78頁(1967))。したがって、複数回投与バイアルは、より安価なワクチンの製造に最も適しているように見えるが、少なくとも1つの保存剤と共に複数回投与ワクチンを製剤化し、複数回使用中または1回もしくは複数回の非無菌事象後、ワクチン中に不注意により導入される微生物から対象を保護することが望ましい。しかし、細菌および他の微生物の汚染に抵抗する際の保存剤の効力は、最適な免疫原性組成物中の各々の異なる抗原決定基の免疫原性ならびに長期安定性に対して特定の保存剤が有する効果と釣り合いがとれていなければならない。プレブ(ベ)ナー13製剤と保存剤との適合性は、これまで取り組まれてこなかった。プレブ(ベ)ナー13中に存在する肺炎球菌抗原血清型の抗原決定基を保護および/または安定化する少なくとも1つの保存剤を含む最適化された製剤を有することが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一の態様において、本発明は、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型由来の複数の莢膜多糖および2−フェノキシエタノール(2−PE)を含む多価免疫原性組成物を提供する。ある種の実施形態において、莢膜多糖は、1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19Fおよび23Fから選択される肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型のうちの1つまたは複数由来である。ある種の実施形態において、莢膜多糖は、1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19Fおよび23Fから選択される肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型のうちの7つ以上に由来する。ある種の実施形態において、莢膜多糖は、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19Fおよび23Fに各々由来する。
【0008】
本発明のある種の実施形態において、組成物は、7mg/mL〜15mg/mLの間、約10mg/mL、7mg/mL以上、10mg/mL以上、または15mg/mL以上の濃度で2−PEを含む。
【0009】
本発明の免疫原性組成物は、ある種の実施形態において、アジュバント、緩衝液、凍結防止剤、塩、二価陽イオン、非イオン性洗剤、およびフリーラジカル酸化の阻害剤のうちの1つまたは複数をさらに含み得る。ある種の実施形態において、アジュバントは、リン酸アルミニウムである。
【0010】
本発明の好ましい多価免疫原性組成物は、CRM197と個別にコンジュゲートされている、血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19Fおよび23F由来の肺炎球菌莢膜多糖の製剤であり、多価免疫原性組成物は、約8.8μg/mLの6Bを除いて各多糖約4.4μg/mL、CRM197担体タンパク質約58μg/mL、リン酸アルミニウムの形態で元素アルミニウム約0.25mg/mL、塩化ナトリウム約0.85%、ポリソルベート80約0.02%、pH5.8のコハク酸ナトリウム緩衝液約5mM、および2−フェノキシエタノール約10mg/mLを含むように無菌液体中で製剤化される。
【0011】
本発明のある種の実施形態において、免疫原性組成物の抗原性は、2〜8℃、20〜25℃、または37℃の温度において1年、1.5年、2年または2.5年以上にわたって安定である。
【0012】
本発明のある種の実施形態において、1つまたは複数の微生物の免疫原性組成物への播種後、前記微生物の濃度は、経時的に減少する。ある種の実施形態において、1つまたは複数の細菌株の播種後、組成物は、24時間で初期微生物数からの少なくとも1.0logの減少を示し、7日で前回測定値からの少なくとも3.0logの減少を示し、および28日後に前回測定値からの0.5logを超える増加を示さない。ある種の実施形態において、1つまたは複数の細菌株の播種後、組成物は、播種後6時間で初期算出数からの少なくとも2.0logの減少、24時間で前回測定値からの少なくとも3.0logの減少および28日で回復なしを示す。微生物株は、緑膿菌(P.aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、大腸菌(E.coli)および枯草菌(B.subtilis)から選択される1つまたは複数の株を包含する。
【0013】
ある種の実施形態において、免疫原性組成物は、複数回播種される。ある種の実施形態において、2回目播種は、初回播種の6時間後に行われ、3回目播種は、初回播種の24時間後に行われ、4回目播種は、初回播種の7日後に行われ、5回目播種は、初回播種の14日後に行われる。
【0014】
第二の態様において、本発明は、本発明の多価免疫原性組成物を含有するバイアルも提供する。バイアルは、単回投与量または複数回投与量の免疫原性組成物を含有することができる。本発明は、本発明の多価免疫原性組成物を含む充填済みワクチン送達装置も提供する。ある種の実施形態において、充填済みワクチン送達装置は、注射器であるか注射器を含む。本発明のワクチン送達装置は、二室もしくは多室の注射器もしくはバイアルまたはそれらの組合せを含むことができる。ある種の実施形態において、充填済みワクチン送達装置は、筋肉内注射または皮下注射のために製剤化された多価免疫原性組成物を含む。
【0015】
第三の態様において、本発明は、本発明の多価免疫原性組成物を調製するためのキットであって、(i)組成物の凍結乾燥形態中の複数の莢膜多糖、および(ii)水性組成物を提供するために構成成分(i)を再構成するための水性材料を含むキットも提供する。
【0016】
第四の態様において、本発明は、バイアル中に4回投与量のワクチンを含む複数回投与ワクチンを提供し、各投与量は、2−フェノキシエタノール4から20mg/mLまで、好ましくは、10mg/mLを含み、投与量は、ワクチン0.5mLである。
【0017】
第五の態様において、本発明は、ワクチン組成物の免疫原性および非免疫原性の構成成分の一部またはすべての存在下で1つまたは複数の選択保存剤を含むワクチン製剤の効力を測定するための方法であって、試験が、試験組成物に選択微生物集団を播種すること、および経時的なかつ特定の環境条件(例えば、温度)下での、播種された1つまたは複数の微生物のlog減少を、1つまたは複数の試験保存剤を欠く対照組成物におけるlog減少と比較することの少なくとも2つのステップを含む方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】様々な製剤におけるワクチン保存剤としてのチメロサールの効力を示す図である。
【図2】様々な製剤および様々な濃度におけるワクチン保存剤としての2−フェノキシエタノール(2−PE)の効力および安定性を示す図である。
【図3】微生物の単回チャレンジ後の20〜25℃における保存剤を含まないプレブ(ベ)ナー13ワクチン製剤における微生物コロニー数減少の時間経過を示す図である(t=0、6時間、24時間、7日、14日および28日におけるチャレンジ時と比較した平均log10変化として表される)。
【図4】微生物の単回チャレンジ後の20〜25℃における0.01%チメロサールを含むプレブ(ベ)ナー13ワクチン製剤における微生物コロニー数減少の時間経過を示す図である(t=0、6時間、24時間、7日、14日および28日におけるチャレンジ時と比較した平均log10変化として表される)。
【図5】微生物の単回チャレンジ後の20〜25℃における0.02%チメロサールを含むプレブ(ベ)ナー13ワクチン製剤における微生物コロニー数減少の時間経過を示す図である(t=0、6時間、24時間、7日、14日および28日におけるチャレンジ時と比較した平均log10変化として表される)。
【図6】微生物の単回チャレンジ後の20〜25℃における0.02%チメロサールを含む塩水における微生物コロニー数減少の時間経過を示す図である(t=0、6時間、24時間、7日、14日および28日におけるチャレンジ時と比較した平均log10変化として表される)。
【図7】微生物の単回チャレンジ後の20〜25℃における5mg/0.5mL 2−フェノキシエタノールを含むプレブ(ベ)ナー13ワクチン製剤における微生物コロニー数減少の時間経過を示す図である(t=0、6時間、24時間、7日、14日および28日におけるチャレンジ時と比較した平均log10変化として表される)。
【図8】t=0、6時間、24時間、7日および14日における微生物の複数回チャレンジ後の(A)22〜24℃または(B)2〜8℃における保存剤を含まないプレブ(ベ)ナー13ワクチン製剤における微生物コロニー数減少の時間経過を示す図である(t=0、6時間、24時間、7日、14日および28日におけるチャレンジ時と比較した平均log10変化として表される)。
【図9】t=0、6時間、24時間、7日および14日における微生物の複数回チャレンジ後の(A)22〜24℃または(B)2〜8℃における0.01%チメロサールを含むプレブ(ベ)ナー13ワクチン製剤における微生物コロニー数減少の時間経過を示す図である(t=0、6時間、24時間、7日、14日および28日におけるチャレンジ時と比較した平均log10変化として表される)。
【図10】t=0、6時間、24時間、7日および14日における微生物の複数回チャレンジ後の(A)22〜24℃または(B)2〜8℃における0.02%チメロサールを含むプレブ(ベ)ナー13ワクチン製剤における微生物コロニー数減少の時間経過を示す図である(t=0、6時間、24時間、7日、14日および28日におけるチャレンジ時と比較した平均log10変化として表される)。
【図11】t=0、6時間、24時間、7日および14日における微生物の複数回チャレンジ後の(A)22〜24℃または(B)2〜8℃における0.02%チメロサールを含む塩水における微生物コロニー数減少の時間経過を示す図である(t=0、6時間、24時間、7日、14日および28日におけるチャレンジ時と比較した平均log10変化として表される)。
【図12】様々なチャレンジ試験における黄色ブドウ球菌(S.aureus)減衰の非線形回帰分析を示す図である。
【図13】微生物の単回または複数回チャレンジに対するワクチン保存剤としての2−PEおよびチメロサールの比較を示す図である:EP5.1.3基準Bの合格または不合格。
【図14】5mg 2−PEと共に製剤化されたプレブ(ベ)ナー13中の各血清型由来の肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)多糖調製物の抗原性の長期安定性を示す図である。
【図15】プレブ(ベ)ナー13ワクチン製剤における2−PEの長期安定性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
百分率濃度は、本出願において使用されている場合、重量対体積(w/v)または重量対重量(w/w)である。
【0020】
特別の定めのない限り、「投与量」は、0.5mLのワクチン投与量を指す。
【0021】
「複数回投与」という用語は、異なる投与ステップにおいておよび経時的に1つの対象または複数の対象に投与されることがある、複数回投与量のワクチンを含む組成物を指す。
【0022】
本発明は、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)(肺炎球菌としても知られている)血清型由来の複数の莢膜多糖および保存剤を含む多価免疫原性組成物を提供する。この組成物は、ワクチンとも呼ばれ、対象、例えば、ヒト対象、好ましくは、ヒトの小児または乳幼児において肺炎球菌に対する免疫応答を誘導し、感染から保護するために使用することができる。
【0023】
複数の任意の肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)莢膜多糖は、本発明の組成物に適している。本発明のある種の実施形態において、多価免疫原性組成物は、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)の血清型4、6B、9V、14、18C、19Fおよび23Fから調製される莢膜多糖を含む。ある種の実施形態において、莢膜多糖は、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)の血清型4、6B、9V、14、18C、19F、23Fおよび少なくとも1つの追加の血清型から調製される。ある種の実施形態において、莢膜多糖は、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)の血清型1、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19Fおよび23Fから選択される少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、または少なくとも9個の血清型から調製される。ある種の実施形態において、莢膜多糖は、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)の血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19Fおよび23Fから調製される。本発明の莢膜多糖は、知られている技法を使用して肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)の血清型から調製される。例えば、それらの各々が参照により本明細書に組み込まれている国際特許出願WO2006/110381、WO2008/079653、WO2008/079732およびWO2008/143709を参照されたい。
【0024】
本発明のある種の実施形態において、莢膜多糖は、担体タンパク質とコンジュゲートされている。これらの肺炎球菌コンジュゲートは、別々に調製することができる。例えば、一実施形態において、各肺炎球菌多糖血清型は、大豆ベースの培地中で成育される。次いで、個別の多糖を、遠心分離、沈殿、限外濾過およびカラムクロマトグラフィーによって精製する。精製された多糖は、糖質が、選択された担体タンパク質と反応して肺炎球菌コンジュゲートを形成することができるように化学的に活性化される。
【0025】
活性化されると、各莢膜多糖は、担体タンパク質と別々にコンジュゲートされ、グリココンジュゲートを形成する。ある種の実施形態において、各々の異なる莢膜多糖は、同じ担体タンパク質とコンジュゲートされる。そのような実施形態において、コンジュゲーションは、例えば、還元アミノ化により行うことができる。
【0026】
多糖の化学的活性化およびその後の担体タンパク質とのコンジュゲーションは、従来の手段により行われる。例えば、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第4,673,574号および第4,902,506号を参照されたい。
【0027】
担体タンパク質は、無毒性でかつ非反応原性(non−reactogenic)であり、十分な量および純度で得られるタンパク質であることが好ましい。担体タンパク質は、標準的なコンジュゲーション手順に適しているべきである。本発明のある種の実施形態において、CRM197が担体タンパク質として使用される。
【0028】
CRM197(Pfizer、Sanford、NC)は、カザミノ酸および酵母エキスベースの培地中で成育させたジフテリア菌(Corynebacterium diphtheria)C7株(CRM197)の培養物から単離されるジフテリア毒素の無毒性変異体(すなわち、トキソイド)である。CRM197は、限外濾過、硫酸アンモニウム沈殿、およびイオン交換クロマトグラフィーによって精製される。あるいは、CRM197は、例えば、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5,614,382号に従って組換え技術により調製される。他のジフテリアトキソイドも、担体タンパク質として使用するのに適している。
【0029】
他の適当な担体タンパク質は、破傷風トキソイド、百日咳トキソイド、コレラトキソイド(例えば、国際特許出願WO2004/083251に記載されている)、大腸菌(E.coli)LT、大腸菌(E.coli)ST、および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)由来の外毒素Aなどの不活化細菌毒素を包含する。外膜複合体c(OMPC)などの細菌外膜タンパク質、ポーリン、トランスフェリン結合タンパク質、ニューモリシン、肺炎球菌表面タンパク質A(PspA)、肺炎球菌アドヘシンタンパク質(PsaA)、A群もしくはB群連鎖球菌由来のC5aペプチダーゼ、またはインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)タンパク質Dも使用することができる。オボアルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ウシ血清アルブミン(BSA)またはツベルクリンの精製タンパク質誘導体(PPD)などの他のタンパク質も担体タンパク質として使用することができる。
【0030】
莢膜多糖の担体タンパク質とのコンジュゲーションの後に、多糖−タンパク質コンジュゲートは、様々な技法により精製される(すなわち、多糖−タンパク質コンジュゲートの量に関して富化される)。これらの技法は、濃縮/透析濾過操作、沈殿/溶出、カラムクロマトグラフィー、および深層濾過を包含する。
【0031】
下記でさらに詳細に議論されるように、本発明の免疫原性組成物は、多価肺炎球菌莢膜多糖−タンパク質コンジュゲートの1つまたは複数の抗原決定基の長期安定性に関する有利な特性を有する複数回投与ワクチン製剤を製造するのに有用であり、それを必要としている対象への投与に先立って1つまたは複数の微生物に対する抵抗性を与えることにより汚染から組成物を有利に保護する少なくとも1つの保存剤を含む。
【0032】
本発明の保存剤含有免疫原性組成物の追加製剤化は、当技術分野において知られている方法を使用して行うことができる。例えば、13の個々の肺炎球菌コンジュゲートを、生理学的に許容できるビヒクルと共に製剤化し、組成物を調製することができる。そのようなビヒクルの例は、下記にさらに詳細に記載されているように、水、緩衝塩水、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)およびブドウ糖溶液を包含するが、それらに限定されるものではない。
【0033】
本発明の免疫原性組成物は、複数の肺炎球菌莢膜多糖−タンパク質コンジュゲートに加えて1つまたは複数の保存剤を含む。FDAは、複数回投与(multiple−dose)(複数回投与(multi−dose))バイアル中の生物学的製品が、ほんのわずかな例外はあるものの、保存剤を含有することを要求している。保存剤を含有するワクチン製品は、塩化ベンゼトニウム(炭疽病)、2−フェノキシエタノール(DTaP、HepA、Lyme、Polio(非経口の))、フェノール(Pneumo、Typhoid(非経口の)、Vaccinia)およびチメロサール(DTaP、DT、Td、HepB、Hib、Influenza、JE、Mening、Pneumo、Rabies)を含有するワクチンを包含する。注射薬における使用が認可されている保存剤は、例えば、クロロブタノール、m−クレゾール、メチルパラベン、プロピルパラベン、2−フェノキシエタノール、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、ベンジルアルコール、フェノール、チメロサールおよび硝酸フェニル水銀を包含する。
【0034】
プレブ(ベ)ナー13免疫原性組成物の高められた効力および安定性のために保存剤を含む様々な潜在的に適当な製剤を試験して、本明細書に開示されている発明は、約2.5〜10mg/投与量(0.5〜2%)の濃度で2−フェノキシエタノール(2−PE)を含むそのような肺炎球菌免疫原性組成物を提供する。ある種の実施形態において、2−PEの濃度は、約3.5〜7.5mg/投与量(0.7〜1.5%)である。ある種の実施形態において、2−PEの濃度は、約5mg/投与量(1%)である。ある種の実施形態において、2−PEの濃度は、3.5mg/投与量(0.7%)以上、4.0mg/投与量(0.8%)以上、4.5mg/投与量(0.9%)以上、5.0mg/投与量(1%)以上、5.5mg/投与量(1.1%)以上、6.0mg/投与量(1.2%)以上、6.5mg/投与量(1.3%)以上、7.0mg/投与量以上、7.5mg/投与量(1.5%)以上、8.0mg/投与量(1.6%)以上、9.0mg/投与量(1.8%)以上または10mg/投与量(2%)以上である。
【0035】
本発明のある種の実施形態において、肺炎球菌免疫原性組成物は、チメロサールおよびホルマリンを包含するがそれらに限定されない1つまたは複数の追加保存剤を含有する。
【0036】
ある種の実施形態において、免疫原性組成物は、1つまたは複数のアジュバントを含むことができる。本明細書で定義されるように、「アジュバント」は、本発明の免疫原性組成物の免疫原性を高める役割を果たす物質である。すなわち、アジュバントは、免疫応答を高めるために与えられることが多く、当業者にはよく知られている。組成物の効力を高めるのに適しているアジュバントは、
(1)水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムなどのアルミニウム塩(ミョウバン)、
(2)水中油型エマルジョン製剤(ムラミルペプチド(下で定義される)または細菌細胞壁構成成分などの他の特異的免疫刺激剤を含むまたは含まない)、例えば、
(a)モデル110Yマイクロフルイダイザー(Microfluidics、Newton、MA)などのマイクロフルイダイザーを使用してサブミクロン粒子に製剤化された、スクアレン5%、Tween80 0.5%、およびSpan85 0.5%(様々な量のMTP−PEを含有してもよい(下を参照、必要とされないにしても))を含有するMF59(PCT出願WO90/14837)、
(b)サブミクロンエマルジョンにマイクロ流動化されるか、より大きい粒径のエマルジョンを作成するためにボルテックスされた、スクアレン10%、Tween80 0.4%、プルロニック−ブロックドポリマーL121 5%、およびthr−MDP(下を参照)を含有するSAF、ならびに
(c)スクアレン2%、Tween80 0.2%、ならびに米国特許第4,912,094号(Corixa)に記載されている3−O−脱アシル化モノホスホリル脂質A(MPL)、トレハロースジミコレート(TDM)、および細胞壁骨格(CWS)からなる群からの1つまたは複数の細菌細胞壁構成成分、好ましくは、MPL+CWS(Detox)を含有するRibiアジュバント系(RAS)、(Corixa、Hamilton、MT)、
(d)ポリソルベート80(Tween 80)、
(3)Quil AまたはSTIMULON QS−21(Antigenics、Framingham、MA)などのサポニンアジュバント(米国特許第5,057,540号)が使用されることがあり、またはISCOM(免疫刺激複合体)などのそれらから作成される粒子、
(4)Corixaから入手可能であり、米国特許第6,113,918号に記載されている、細菌性リポ多糖、アミノアルキルグルコサミンホスフェート化合物(AGP)、またはそれらの誘導体もしくは類似体などの合成脂質A類似体、1つのそのようなAGPは、529(以前は、RC529として知られている)としても知られており、水性形態または安定なエマルジョンとして製剤化される2−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]エチル 2−デオキシ−4−O−ホスホノ−3−O−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイル]−2−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]−β−D−グルコピラノシド、1つまたは複数のCpGモチーフを含有するオリゴヌクレオチドなどの合成ポリヌクレオチド(米国特許第6,207,646号)であり、
(5)インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−12、IL−15、IL−18など)、インターフェロン(例えば、γインターフェロン)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、腫瘍壊死因子(TNF)、共刺激分子B7−1およびB7−2などのサイトカイン、
(6)野生型か、例えば、アミノ酸29位のグルタミン酸が、公開済み国際特許出願第WO00/18434号(WO02/098368およびWO02/098369も参照)に従って別のアミノ酸、好ましくは、ヒスチジンにより置き換えられている突然変異形態のどちらかのコレラ毒素(CT)、百日咳毒素(PT)、または大腸菌(E.coli)易熱性毒素(LT)、特に、LT−K63、LT−R72、CT−S109、PT−K9/G129(例えば、WO93/13302およびWO92/19265を参照)などの細菌性ADP−リボシル化毒素の無毒化突然変異体、ならびに
(7)カルシウム塩、鉄、亜鉛、アシル化チロシン懸濁液、アシル化糖、誘導体化された糖/糖質、ポリホスファゼン、生分解性ミクロスフェア、モノホスホリル脂質A(MPL)、脂質A誘導体(例えば、軽減毒性の)、3−O−脱アシル化MPL、キルA、サポニン、QS21、トコール、フロイント不完全アジュバント(Difco Laboratories、Detroit、MI)、メルクアジュバント65(Merck and Company,Inc.、Rahway、NJ)、AS−2(Smith−Kline Beecham、Philadelphia、PA)、CpGオリゴヌクレオチド(好ましくは、非メチル化)、生体付着剤および粘膜付着剤、ミクロ粒子、リポソーム、ポリオキシエチレンエーテル製剤、ポリオキシエチレンエステル製剤、およびムラミルペプチドまたはイミダゾキノロン化合物などの、組成物の効力を高めるための免疫刺激剤として作用する他の物質を包含するが、それらに限定されるものではない。ムラミルペプチドは、N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニン−2−(1’,2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(MTP−PE)などを包含するが、それらに限定されるものではない。
【0037】
ある種の実施形態において、アジュバント組成物は、TH2型サイトカインを超える程度までTH1型サイトカイン(例えば、IFN−γ、TNFα、IL−2およびIL−12)を誘導しやすいものであり、投与された抗原に対する細胞性免疫応答を誘導しやすいことがある。主にTH1応答を促進する特定のアジュバント系は、モノホスホリル脂質A(MPL)またはその誘導体などの脂質A誘導体、例えば、3−O−脱アシル化MPL(3D−MPL)、MPLおよび/または3D−MPLとアルミニウム塩および/またはサポニン誘導体の組合せ(例えば、WO94/00153に開示されているような3D−MPLとの組合せでQS21、またはWO96/33739に開示されているようなQS21およびコレステロール)、トリテルペノイド、ならびにトコフェロールを含むものなどの水中油型エマルジョン(WO95/17210に開示されているような)を包含するが、それらに限定されるものではない。
【0038】
アジュバントは、任意選択により、本発明の貯蔵ワクチン製剤の免疫原性構成成分のうちの1つまたは複数により吸着されているかそれらと混ぜ合わせられていてもよい。本明細書で使用されるように、「吸着抗原」という用語は、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%を超える抗原がアジュバントに吸着されている混合物を指す。ある種の実施形態において、アジュバントは、吸着されたリン酸アルミニウム(Al+)またはヒドロキシリン酸アルミニウムである。典型的には、総アルミニウム含有量は、0.5mL投与量当たりAl+200〜1000μg、300〜900μg、400〜800μg、500〜700μg、または約630μgであり、それらは、すべて水酸化アルミニウムまたはすべてリン酸アルミニウムであってよい。あるいは、Al+含有量は、様々な比、例えば、リン酸アルミニウム:水酸化アルミニウム1:8〜8:1、1:4〜4:1、3:8〜8:3、1:2〜2:1または1:1で水酸化アルミニウムとリン酸アルミニウムの混合物由来であってよい。大部分のアルミニウムは、組合せワクチンを形成するための混合の前に予め吸着された抗原により提供されるが、一部のアルミニウムは、本発明の組合せワクチンの製剤化中に、例えば、本明細書に記載されているpH調整ステップの前に遊離形態で添加することができる。典型的には、0.5mL投与量当たりの遊離アルミニウム含有量は、Al3+0〜300μg、50〜250μg、75〜200μg、100〜150μgまたは約120μgであってよい。遊離Al3+は、すべてAl(OH)もしくはすべてAlPO、または様々な比のAl(OH)とAlPOの混合物であってよい。
【0039】
ワクチン抗原構成成分は、混合するのに先立って個別にアルミニウム塩上に予め吸着させることができる。別の実施形態において、抗原のミックスは、さらなるアジュバントと混合するのに先立って予め吸着させることができる。あるいは、本発明のワクチンのある種の構成成分は、アジュバント上に意図的に吸着させるのではなく製剤化することができる。
【0040】
本発明の製剤は、緩衝液、塩、二価陽イオン、非イオン性洗剤、糖などの凍結防止剤、およびフリーラジカル捕捉剤またはキレート化剤などの抗酸化剤、またはそれらの任意の複数組合せのうちの1つまたは複数をさらに含むことができる。任意の1つの構成成分、例えば、キレート剤の選択は、別の構成成分(例えば、捕捉剤)が望ましいかどうかを決定することができる。投与のために製剤化された最終組成物は、無菌および/またはパイロジェンフリーであるべきである。当業者は、これらおよび他の構成成分のどの組合せが、必要とされる特定の貯蔵および投与条件などの様々な因子に応じて本発明の保存剤含有ワクチン組成物への包含に最適であるかを経験的に決定することができる。
【0041】
ある種の実施形態において、非経口投与に適合している本発明の製剤は、Tris(トリメタミン)、リン酸塩、酢酸塩、ホウ酸塩、クエン酸塩、グリシン、ヒスチジンおよびコハク酸塩から選択されるがそれらに限定されない1つまたは複数の生理学的に許容できる緩衝液を含む。ある種の実施形態において、製剤は、約6.0〜約9.0、好ましくは、約6.4から約7.4までのpH範囲内に緩衝される。
【0042】
ある種の実施形態において、本発明の免疫原性組成物または製剤のpHを調整することが望ましいことがある。本発明の製剤のpHは、当技術分野における標準的な技法を使用して調整することができる。製剤のpHは、3.0〜8.0の間であるように調整することができる。ある種の実施形態において、製剤のpHは、3.0〜6.0、4.0〜6.0、または5.0〜8.0の間であってよいか、3.0〜6.0、4.0〜6.0、または5.0〜8.0の間であるように調整することができる。他の実施形態において、製剤のpHは、約3.0、約3.5、約4.0、約4.5、約5.0、約5.5、約5.8、約6.0、約6.5、約7.0、約7.5、または約8.0であってよいか、約3.0、約3.5、約4.0、約4.5、約5.0、約5.5、約5.8、約6.0、約6.5、約7.0、約7.5、または約8.0であるように調整することができる。ある種の実施形態において、pHは、4.5から7.5まで、または4.5から6.5まで、5.0から5.4まで、5.4から5.5まで、5.5から5.6まで、5.6から5.7まで、5.7から5.8まで、5.8から5.9まで、5.9から6.0まで、6.0から6.1まで、6.1から6.2まで、6.2から6.3まで、6.3から6.5まで、6.5から7.0まで、7.0から7.5までまたは7.5から8.0までの範囲であってよいか、4.5から7.5まで、または4.5から6.5まで、5.0から5.4まで、5.4から5.5まで、5.5から5.6まで、5.6から5.7まで、5.7から5.8まで、5.8から5.9まで、5.9から6.0まで、6.0から6.1まで、6.1から6.2まで、6.2から6.3まで、6.3から6.5まで、6.5から7.0まで、7.0から7.5までまたは7.5から8.0までの範囲であるように調整することができる。具体的な実施形態において、製剤のpHは、約5.8である。
【0043】
ある種の実施形態において、非経口投与に適合している本発明の製剤は、約0.1mMから約10mMまでの範囲であり、最高で約5mMまでが好ましい濃度で、MgCl、CaClおよびMnClを包含するがそれらに限定されない1つまたは複数の二価陽イオンを含む。
【0044】
ある種の実施形態において、非経口投与に適合している本発明の製剤は、非経口投与の際には対象に対して生理学的に許容できるイオン強度で存在し、最終製剤において選択されるイオン強度または容積モル浸透圧濃度を生じる最終濃度で包含される、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、および硫酸カリウムを包含するがそれらに限定されない1つまたは複数の塩を含む。製剤の最終イオン強度または重量モル浸透圧濃度は、複数の構成成分(例えば、1つまたは複数の緩衝化合物および他の非緩衝塩由来のイオン)により決定されるであろう。好ましい塩、NaClは、最高で約250mMまでの範囲から存在し、塩濃度は、製剤の最終総容積モル浸透圧濃度が、非経口投与(例えば、筋肉内または皮下注射)に適合しており、様々な温度範囲にわたってワクチン製剤の免疫原性構成成分の長期安定性を促進するように、他の構成成分(例えば、糖)を補完するように選択される。無塩製剤は、望ましい最終容積モル浸透圧濃度レベルを維持するために増加した範囲の1つまたは複数の選択された凍結防止剤を許容するであろう。
【0045】
ある種の実施形態において、非経口投与に適合している本発明の製剤は、二糖(例えば、ラクトース、マルトース、スクロースまたはトレハロース)およびポリヒドロキシ炭化水素(例えば、ズルシトール、グリセロール、マンニトールおよびソルビトール)から選択されるがそれらに限定されない1つまたは複数の凍結防止剤を含む。
【0046】
ある種の実施形態において、製剤の容積モル浸透圧濃度は、約200mOs/Lから約800mOs/Lまでの範囲であり、好ましい範囲は、約250mOs/Lから約500mOs/Lまで、または約300mOs/L〜約400mOs/Lである。無塩製剤は、例えば、スクロース約5%から約25%まで、好ましくは、スクロース約7%から約15%まで、または約10%〜約12%を含有することができる。あるいは、無塩製剤は、例えば、ソルビトール約3%から約12%まで、好ましくは、ソルビトール約4%から約7%まで、または約5%〜約6%を含有することができる。塩化ナトリウムなどの塩が添加される場合、スクロースまたはソルビトールの有効範囲は相対的に減少する。これらおよび他のそのような重量モル浸透圧濃度および容積モル浸透圧濃度に対する配慮は、当業者の技術範囲内に十分ある。
【0047】
ある種の実施形態において、非経口投与に適合している本発明の製剤は、1つまたは複数のフリーラジカル酸化阻害剤および/またはキレート化剤を含む。様々なフリーラジカル捕捉剤およびキレート剤が当技術分野において知られており、本明細書に記載されている製剤および使用方法に当てはまる。例は、エタノール、EDTA、EDTA/エタノール組合せ、トリエタノールアミン、マンニトール、ヒスチジン、グリセロール、クエン酸ナトリウム、イノシトール六リン酸、トリポリリン酸塩、アスコルビン酸/アスコルビン酸塩、コハク酸/コハク酸塩、リンゴ酸/マレート、デスフェラール、EDDHAおよびDTPA、ならびに上のうちの2つ以上の様々な組合せを包含するが、それらに限定されるものではない。ある種の実施形態において、少なくとも1つの非還元性フリーラジカル捕捉剤は、製剤の長期安定性を有効に高める濃度で添加することができる。1つまたは複数のフリーラジカル酸化阻害剤/キレート剤も、捕捉剤と二価陽イオンなどの様々な組合せで添加することができる。キレート剤の選択は、捕捉剤の添加が必要とされるかどうかを決定するであろう。
【0048】
ある種の実施形態において、非経口投与に適合している本発明の製剤は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート−80(Tween 80)、ポリソルベート−60(Tween 60)、ポリソルベート−40(Tween 40)およびポリソルベート−20(Tween 20)、Brij 58、Brij 35を包含するがそれらに限定されないポリオキシエチレンアルキルエーテル、ならびにTriton X−100、Triton X−114、NP 40、Span 85およびPluronicシリーズの非イオン性界面活性剤(例えば、Pluronic 121)などの他のものを包含するがそれらに限定されない1つまたは複数の非イオン性界面活性剤を含み、好ましい構成成分は、約0.001%から約2%までの濃度(最高で約0.25%までが好ましい)のポリソルベート−80または約0.001%から1%までの濃度(最高で約0.5%までが好ましい)のポリソルベート−40である。
【0049】
ある種の実施形態において、本発明の製剤は、非経口投与に適している1つまたは複数の追加安定化剤、例えば、少なくとも1つのチオール(−SH)基を含む還元剤(例えば、システイン、N−アセチルシステイン、還元グルタチオン、チオグリコール酸ナトリウム、チオ硫酸塩、モノチオグリセロール、またはそれらの混合物)を含む。あるいはまたは場合により、本発明の保存剤含有ワクチン製剤は、貯蔵容器から酸素を除去すること、光から製剤を保護すること(例えば、琥珀色のガラス容器を使用することにより)によりさらに安定化することができる。
【0050】
本発明の保存剤含有ワクチン製剤は、それ自体が免疫応答を誘導しない任意の賦形剤を包含する1つまたは複数の薬学的に許容できる担体または賦形剤を含むことができる。適当な賦形剤は、タンパク質、糖質、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー、スクロース(Paolettiら、2001、Vaccine、19:2118)、トレハロース、ラクトースおよび脂質凝集体(油滴またはリポソームなど)などの高分子を包含するが、それらに限定されるものではない。そのような担体は、当業者によく知られている。薬学的に許容できる賦形剤は、例えば、Gennaro、2000、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第20版、ISBN:0683306472で議論されている。
【0051】
本発明の組成物は、凍結乾燥されるか、水性形態、すなわち、液剤または懸濁剤であってよい。液体製剤は、それらの包装された形態から直接、有利に投与することができるため、さもなければ本発明の凍結乾燥組成物にとって必要とされるような水性媒体における再構成を必要とすることなく注射にとって理想的である。
【0052】
本発明の特定の実施形態において、ワクチンは、CRM197と個別にコンジュゲートされている、血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19Fおよび23Fから選択される1つまたは複数の肺炎球菌莢膜多糖を含む多価免疫原性組成物である。ワクチンは、各多糖1から5μgまで、好ましくは、約4.4μg/mLであるが、6Bを好ましくは約8.8μg/mL、CRM197担体タンパク質20から100μg/mLまで、好ましくは、約58μg/mL、リン酸アルミニウムの形態で元素アルミニウム0.02から2mg/mLまで、好ましくは、0.25mg/mL、塩化ナトリウム0.5から1.25%まで、好ましくは、約0.85%、ポリソルベート80 0.002から0.2%まで、好ましくは、約0.02%、4から7までのpH、好ましくは、5.8のpHのコハク酸ナトリウム緩衝液1から10mMまで、好ましくは、約5mM、および2−フェノキシエタノール4から20mg/mLまで、好ましくは、約10mg/mLを含むように製剤化される。
【0053】
本発明のある種の好ましい実施形態において、ワクチンは、CRM197と個別にコンジュゲートされている、血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19Fおよび23F由来の肺炎球菌莢膜多糖を含む多価免疫原性組成物である。ワクチンは、約8.8μg/mLの6Bを除いて、各糖質約4.4μg/mL、CRM197担体タンパク質約58μg/mL、リン酸アルミニウムの形態で元素アルミニウム約0.25mg/mL、塩化ナトリウム約0.85%、ポリソルベート80約0.02%、5.8のpHのコハク酸ナトリウム緩衝液約5mM、および2−フェノキシエタノール約10mg/mLを含むように製剤化される。
【0054】
本発明の組成物が含むことができる材料の多くの量は、重量/投与量、重量/体積、または%濃度(重量/体積または重量/重量として)として表すことができる。これらの値はすべて、次から次に変換することができる。重量/投与量単位へおよび重量/投与量単位からの変換については、投与量の体積が指定される。例えば、0.5mLの投与量を考えると、2−PE 5.0mg/投与量は、10mg/mLまたは1.0%(g/100mL)の濃度と同等である。
【0055】
ワクチンの製剤も、多糖:2−PEの比として表すことができる。例えば、8.8μg/mLの6Bを除いて、各糖質4.4μg/mL、および2−PE 10mg/mLの好ましい製剤の0.5mL投与量は、多糖30.8μg(2.2μg×12の血清型+血清型6Bの4.4μg)および2−PE 5000μgを有するであろう。したがって、多糖:2−PEの重量比は、30.8:5000である。
【0056】
本発明のある種の実施形態において、ワクチンの多糖:2−PE重量比は、5:5000から100:5000までである。本発明の好ましい実施形態において、前記多糖:2−PE重量比は、約30.8:5000である。
【0057】
ワクチン製剤の送達
ヒト対象などの哺乳類対象、好ましくは、小児または乳幼児において肺炎球菌に対する免疫応答を誘導し、それによって、感染から保護するために少なくとも1つの保存剤を含む開示されている医薬組成物および医薬製剤を使用する方法も提供される。本発明のワクチン製剤を使用し、全身経路または粘膜経路を介してワクチンを投与することにより、肺炎球菌感染を起こしやすいヒト対象を保護することができる。これらの投与は、例えば、非経口投与または口道/消化管、気道もしくは尿生殖路への粘膜投与を包含することができる。
【0058】
対象への本発明のワクチン調製物の直接送達は、非経口投与により(筋肉内に、腹腔内に、皮内に、皮下に、静脈内に、または組織の間質空間へ)、または直腸、経口、膣、局所、経皮、鼻腔内、眼、耳、肺または他の粘膜投与により行うことができる。好ましい実施形態において、非経口投与は、例えば、対象の大腿または上腕への筋肉内注射による。注射は、注射針(例えば、皮下注射針)を介してよいが、代替方法として、無針注射を使用することができる。典型的な筋肉内投与量は、0.5mLである。本発明の組成物は、例えば、液体の液剤か懸濁剤のどちらかとしての注射のため、様々な形態で調製することができる。ある種の実施形態において、組成物は、例えば、吸入器における肺投与のための粉末またはスプレーとして調製することができる。他の実施形態において、組成物は、坐剤もしくは膣坐剤として、鼻、耳もしくは眼投与のために、例えば、スプレー、点滴剤、ゲルもしくは粉末として調製することができる。
【0059】
一実施形態において、鼻内投与は、肺炎または中耳炎の予防のために使用することができる(肺炎球菌の鼻咽頭保菌をより効果的に予防し、したがってその最初期段階で感染を軽減することができるため)。
【0060】
各ワクチン投与量におけるコンジュゲートの量は、著しい有害作用なしに免疫防御応答を誘導する量として選択される。そのような量は、肺炎球菌血清型に応じて変わることがある。一般的に、各投与量は、多糖0.1〜100μg、詳細には、0.1〜10μg、より詳細には、1〜5μgを含むであろう。
【0061】
特定のワクチンについての構成成分の最適量は、対象における適切な免疫応答の観察が関わる標準的な試験により確定することができる。初回ワクチン播種の後に、対象は、十分に間隔をおいた1回または数回のブースター免疫化を受けることができる。
【0062】
プレブ(ベ)ナー13ワクチンに包含される血清型が原因で肺炎連鎖球菌(S.Pneumoniae)により引き起こされる侵襲性疾患に対する、乳幼児および幼児についての定期スケジュールは、2、4、6および12〜15カ月齢である。本発明の組成物は、熟練した専門家により決定されるように、同じまたは異なる定期スケジュールが当てはまり得る年長児、青年、十代および成人での使用にも適している。
【0063】
包装および剤形
本発明のワクチンは、単位投与量または複数回投与形態(例えば、2投与量、4投与量、またはそれ以上)で包装することができる。複数回投与形態については、バイアルが典型的であるが、必ずしも充填済み注射器より好ましいわけではない。適当な複数回投与フォーマットは、1投与量当たり0.1〜2mLで1容器当たり2〜10投与量を包含するが、それらに限定されるものではない。ある種の実施形態において、投与量は、0.5mL投与量である。例えば、参照により本明細書に組み込まれている国際特許出願WO2007/127668を参照されたい。組成物は、バイアルもしくは他の適当な貯蔵容器で提供することができ、または充填済み送達装置、例えば、注射針の有無に関わらず供給することができる単一または複数構成成分注射器で提供することができる。必ずしも要しないが、注射器は、典型的には、本発明の保存剤含有ワクチン組成物の単回投与量を含有するが、複数回投与充填済み注射器も想定されている。同様に、バイアルは、単回投与量を包含するが、代替方法として、複数回投与量を包含することができる。
【0064】
有効用量体積は、ルーチンに定めることができるが、注射のための組成物の典型的な投与量は、0.5mLの体積を有する。ある種の実施形態において、投与量は、ヒト対象への投与のために製剤化される。ある種の実施形態において、投与量は、成人、十代、青年、幼児または乳児(すなわち、1歳以下)のヒト対象への投与のために製剤化され、好ましい実施形態において、注射により投与することができる。
【0065】
本発明の液体ワクチンは、凍結乾燥形態で提供される他のワクチンを再構成するのにも適している。ワクチンが、そのような即時再構成のために使用されることになる場合、本発明は、2つ以上のバイアル、2つ以上の充填済み注射器、または各々のうちの1つもしくは複数を含むキットを提供し、注射器の内容物を使用し、注射に先立ってバイアルの内容物を再構成するか、その逆とする。
【0066】
あるいは、本発明のワクチン組成物は、例えば、それらを調製するのに使用される厳密な方法を変えることにより選択および制御することができる平均直径サイズなどの粒子特性を有するミクロペレットまたはミクロスフェアなどの乾燥した規則正しい形状の(例えば、球状の)粒子を形成するための当技術分野においてよく知られている凍結乾燥のための数多くの方法のうちの1つを使用し、凍結乾燥および再構成することができる。ワクチン組成物は、場合により、ミクロペレットまたはミクロスフェアなどの別々の乾燥した規則正しい形状(例えば、球状の)粒子と共に調製するか、それらの中に含有することができるアジュバントをさらに含むことができる。そのような実施形態において、本発明は、場合により本発明の1つまたは複数の保存剤をさらに含む安定化された乾燥ワクチン組成物を包含する第一構成成分、および第一構成成分の再構成のための無菌水溶液を含む第二構成成分を含むワクチンキットをさらに提供する。ある種の実施形態において、水溶液は、1つまたは複数の保存剤を含み、少なくとも1つのアジュバントを場合により含むことができる(例えば、参照により本明細書に組み込まれているWO2009/109550を参照)。
【0067】
さらに別の実施形態において、複数回投与フォーマットの容器は、一般的な実験室のガラス器具、フラスコ、ビーカー、メスシリンダー、発酵槽、バイオリアクター、管類、パイプ、袋、広口瓶、バイアル、バイアルクロージャー(例えば、ゴムストッパー、ねじ式キャップ)、アンプル、注射器、二室または多室の注射器、注射器ストッパー、注射器プランジャー、ラバークロージャー、プラスチッククロージャー、ガラスクロージャー、カートリッジおよび使い捨てペンなどからなるがそれらに限定されない群のうちの1つまたは複数から選択される。本発明の容器は、製造の材料により限定されず、ガラス、金属(例えば、スチール、ステンレススチール、アルミニウムなど)およびポリマー(例えば、熱可塑性プラスチック、エラストマー、熱可塑性プラスチック−エラストマー)などの材料を包含する。特定の実施形態において、このフォーマットの容器は、ブチルストッパー付きの5mL Schott 1型ガラスバイアルである。当業者は、上に記載されているフォーマットが、決して網羅的リストではなく、単に、本発明に使用可能である様々なフォーマットに関する当業者への指導の役割を果たすことを理解しているであろう。本発明における使用が企図されている追加フォーマットは、United States Plastic Corp.(Lima、OH)、VWRなどの実験装置の販売者および製造者からの公表されたカタログ中に見出すことができる。
【0068】
ワクチン組成物において保存効力を評価するための方法
本発明は、ワクチン組成物の免疫原性および非免疫原性構成成分の一部またはすべての存在下で1つまたは複数の選択保存剤を含むワクチン製剤の効力を測定するための新規な方法をさらに提供する。保存効力に関するWHOプロトコルは、USPおよびEP試験を利用し、ある種の試験を行う場合のOpen Vial Policy条件を包含する。典型的な保存効力試験は、試験組成物に、選択微生物集団を1回播種し、経時的にかつ特定の環境条件(例えば、温度)下で、播種された微生物のlog減少を、1つまたは複数の試験保存剤を欠く対照組成物中の播種された微生物のlog減少と比較する単回チャレンジ試験である。例えば、下の実施例2および3を参照されたい。しかし、複数の汚染に対して保存効力を対象とする、例えば、複数回同じバイアルに播種することによりバイアルおよびストッパーを対象とする追加試験は必要とされていない。
【0069】
したがって、本発明は、免疫原性組成物中の1つまたは複数の保存剤の効力を評価するための複数回チャレンジ試験であって、選択微生物集団を試験組成物に播種すること、および経時的にかつ特定の環境条件(例えば、温度)下で、播種された1つまたは複数の微生物の減少を、1つまたは複数の試験保存剤を欠く対照組成物における減少と比較することの少なくとも2つのステップを含む試験を提供する。下の実施例4および5を参照されたい。
【0070】
保存効力
本発明の保存剤含有ワクチン製剤は、例えば、非経口投与に適合する複数回投与ワクチンのバイアルまたは容器に充填するのに適しており、1つまたは複数の保存剤を欠く同じ製剤と比較した場合、2〜8℃、室温または37℃において長期間安定なままであり、活性の消失が低減されるか無視できるほどである。
【0071】
製剤中の保存剤の量は、米国(U.S.)、欧州もしくは世界保健機関(WHO)薬局方、またはそれらの組合せにより規定されているように、ワクチン安全性についての要件を満たす量であるように選択される。
【0072】
米国および欧州薬局方(それぞれ、USPおよびEP)に従って保存剤レベルを確認するため、ワクチン製剤に、
1.黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(細菌、ATCC#6538、「SA」)
2.緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(細菌、ATCC#9027、「PA」)
3.カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)(酵母、ATCC#10231、「CA」)
4.黒麹菌(Aspergillus niger)(カビ、ATCC#16404、「AN」)
のおおよそ10〜10CFU/ml(CFU=コロニー形成単位)を時間0にて1回播種する。
【0073】
複数回投与提示の反復使用中に実際に起きることがある汚染の最悪の妥当なケースを示すため、WHOは、細菌株、緑膿菌(Pseudomonas Aeruginosa)(「PA」)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus Aureus)(「SA」)、大腸菌(Escherichia coli)(「EC」)および枯草菌(Bacillus subtilis)(「BS」)を使用する複数回汚染事象への計画的曝露による安全性試験を要求している。製剤に、初回チャレンジから0時点、6時間、24時間、7日および14日後に各微生物5×10CFU/mlを添加し、実際に潜在的な貯蔵条件を模倣するために2〜8℃または22〜24℃のどちらかにおいて貯蔵する。
【0074】
USP 29 NF 24 Supplement 2(USP)は、1つまたは複数の細菌性微生物の播種後に、7日で初期算出数(すなわち、播種時)からの少なくとも1.0logの減少、14日で前回測定値からの少なくとも3.0logの減少があり、28日で前回測定値と比較して増加がないことを要求している。表1を参照されたい。酵母および真菌については、USP要件は、播種時から7、14および28日まで増加がないことである。
【0075】
EP要件は、より厳格である。非経口および点眼用調製物についてのEP第5版5.6(5.1.3)要件は、2つの構成要素:カテゴリーAおよびカテゴリーBを有する。カテゴリーA(EP−A)は、細菌について、播種後6時間で初期算出数からの少なくとも2.0logの減少、24時間で、前回測定値からの少なくとも3.0logの減少および28日で回復なしを要求している。カテゴリーB(EP−B)は、細菌について、24時間で初期算出数からの少なくとも1.0logの減少、前回測定値からの7日で少なくとも3.0logの減少および28日で前回測定値からの0.5log以下の増加(すなわち、増加なし)を要求している。表1を参照されたい。酵母および真菌については、カテゴリーAは、初期算出数からの7日で少なくとも2.0logの減少および前回測定値からの28日で増加なしを要求しており、カテゴリーBは、14日で初期算出数からの少なくとも1.0logの減少および前回測定値からの28日で増加なしを要求している。
【0076】
【表1】

【0077】
本発明のある種の実施形態において、本発明の保存剤は、免疫原性製剤における微生物の濃度を低減するのに有効である。本発明のある種の実施形態において、少なくとも1つの保存剤を含むワクチン製剤は、1つまたは複数の保存剤を含まないワクチン製剤と比較して、前記微生物の播種後に1つまたは複数の微生物の濃度を低減する。本発明の特定の実施形態において、製剤は、24時間で初期微生物数からの少なくとも1.0logの減少を示し、前回測定値からの7日で少なくとも3.0logの減少を示し、および前回測定値からの28日で0.5logを超える増加を示さない。本発明の別の特定の実施形態において、製剤は、播種後6時間で初期算出数からの少なくとも2.0logの減少、前回測定値からの24時間で少なくとも3.0logの減少および初期微生物数と比較して、28日で回復なしを示す。本発明の別の実施形態において、製剤は、非経口および点眼用調製物についての欧州薬局方(EP)要件、特に、EP第5版5.6(5.1.3)要件のカテゴリーA(EP−A)および/またはカテゴリーB(EP−B)を満たす。本発明の別の実施形態において、製剤は、非経口調製物についての米国薬局方(USP) 29 NF 24 Supplement 2要件を満たす。
【0078】
本発明のある種の実施形態において、本発明の少なくとも1つの保存剤は、1つまたは複数の保存剤を欠く製剤と比較して、微生物をチャレンジした場合に製剤における微生物の濃度を低減するのに有効である。微生物は、下記の緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、黒麹菌(Aspergillus niger)などのうちの1つまたは複数であってよいが、それらに限定されるものではない。
【0079】
本発明のある種の実施形態において、微生物は、様々な間隔で1回または複数回ワクチンに導入または播種することができる。播種は、計画的実験的播種との関連か、複数回投与ワクチン製剤の容器に入る汚染された皮下注射針との関連で行われることがある。播種間の間隔は、1分と1カ月の間であってよい。特定の実施形態において、複数回播種は、初回播種後に、初回播種後6時間、初回播種後24時間、初回播種後7日および初回播種後14日に行われる。
【0080】
ワクチンおよび保存安定性についてのパラメーター
本発明のある種の実施形態において、ワクチン製剤における少なくとも1つの抗原決定基(すなわち、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型由来の多糖調製物)の抗原性は、ある範囲の貯蔵時間および温度にわたって安定である。抗原性は、当技術分野において知られている方法により測定することができる。例えば、総抗原性は、実施例3に記載されているように、型特異的抗血清を使用することにより決定することができる。
【0081】
本発明のある種の実施形態において、ワクチン製剤における少なくとも1つの抗原決定基の抗原性は、4週以上、6週以上、8週以上、10週以上、12週以上、18週以上、24週以上、48週以上、1年以上、1.25年以上、1.5年以上、1.75年以上、2年以上、2.25年以上、または2.5年以上にわたって安定である。好ましくは、製剤におけるワクチン中の抗原決定基のうちの複数の抗原決定基、例えば、少なくとも、50%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上の抗原性は、4週以上、6週以上、8週以上、10週以上、12週以上、18週以上、24週以上、48週以上、1年以上、1.25年以上、1.5年以上、1.75年以上、2年以上、2.25年以上、または2.5年以上にわたって安定である。
【0082】
本発明のある種の実施形態において、ワクチン製剤における少なくとも1つの抗原決定基の抗原性は、約−25℃〜約37℃、または−20〜−10℃、または2〜8℃、またはほぼ室温、または22℃〜28℃、または約37℃において貯蔵される場合に安定である。本発明の特定の実施形態において、ワクチン製剤における少なくとも1つの抗原決定基の抗原性は、2〜8℃の温度における2.5年以上にわたる貯蔵後に安定である。
【0083】
本発明のある種の実施形態において、本発明の保存剤の濃度は、上述の期間および貯蔵温度におけるワクチンの貯蔵後に安定である。本発明の特定の実施形態において、ワクチン製剤における保存剤の濃度は、2〜8℃の温度における2.5年以上にわたるワクチンの貯蔵後に安定である。保存剤の濃度は、当技術分野において知られている方法により測定することができる。例えば、チメロサールは、実施例3に記載されているように、冷蒸気原子吸光分析(Cold Vapor Atomic Absorption Spectrometry)(CVAAS)を使用して測定することができる。2−EP濃度は、やはり実施例3に記載されているように、逆相HPLCアッセイで測定することができる。逆相HPLCアッセイは、下記の方法で行うことができる:サンプルを、ボルテックスして塩水中の5mMコハク酸塩緩衝液中に1:10に希釈し、遠心分離して塩水中の5mMコハク酸塩緩衝液中に1:10に再び希釈する(試験サンプルの最終希釈率は、1:100である)。次いで、サンプルを、Agilent Eclipse XDB−C18 HPLCカラムおよびトリフルオロ酢酸を含有する水とアセトニトリルの直線グラジエントを利用してアッセイする。次いで、保存剤の定量化を、標準曲線と比較する。Sharmaら、Biologicals 36(1):61〜63(2008)も参照されたい。
【0084】
上の開示は、本発明について一般的に記載している。より完全な理解は、下記の具体例を参照することにより得ることができる。これらの実施例は、例示の目的のためにのみ記載され、本発明の範囲を限定することは意図されていない。
【実施例1】
【0085】
予備的保存剤スクリーニング試験
複数回投与プレブ(ベ)ナー13ワクチンの製剤開発は、プレブ(ベ)ナー13製剤におけるフェノール(0.25%)、2−フェノキシエタノール(5mg/mL)、メタ−クレゾール(0.3%)、メチルパラベンおよびプロピルパラベン(それぞれ、0.18%および0.12%)を包含する保存剤の予備的スクリーニングから始まった。
【0086】
保存効力について試験するために、ワクチンのアリコートに、下記の微生物
1.黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(細菌、ATCC#6538)
2.緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(細菌、ATCC#9027)
3.カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)(酵母、ATCC#10231)
4.黒麹菌(Aspergillus niger)(カビ、ATCC#16404)
を播種した。指示された濃度でチメロサールもしくは2−PEを含むおよび含まない各ワクチン製剤30ミリリットル(ml)または0.02%のチメロサールを含有する塩水に、各試験微生物の懸濁液を三つ組みで播種し、時間0にておよそ10〜10CFU/ml(CFU=コロニー形成単位)の播種密度を得た。各播種の体積は、各計画的チャレンジ中、製品の体積の1%を超えなかった。サンプルを混合し、チャレンジした微生物の均等な分布を確保した。別の30mlのワクチン(保存剤を含むおよび含まない)を三つ組みで陰性対照として使用し、培養培地のみを添加し、サンプルまたは培地中に存在する可能性のある固有の汚染を評価した。次いで、ワクチン、ならびに陽性および陰性対照の3シリーズの各々を20〜25℃において別々にインキュベートした。チャレンジされたサンプルおよび対照のアリコート(1ml)(または、それらの適切な連続10倍希釈液)を、時間0でならびに播種後6時間、24時間、7日、14日および28日の間をおいて二つ組で平板計数により数えた。
【0087】
USP29NF24Supplement2(USP)は、1つまたは複数の細菌性微生物の播種後に、7日で初期算出数(すなわち、播種時)からの少なくとも1.0logの減少、14日で前回測定値からの少なくとも3.0logの減少があり、28日で前回測定値からの増加がないことを要求している。表1を参照されたい。酵母および真菌について、USP要件は、播種時から7、14および28日まで増加がないことである。
【0088】
EP要件は、より厳格である。非経口および点眼用調製物についてのEP第5版5.6(5.1.3)要件は、2つの構成要素:カテゴリーAおよびカテゴリーBを有する。カテゴリーA(EP−A)は、細菌について、播種後6時間で初期算出数からの少なくとも2.0logの減少、24時間で前回測定値からの少なくとも3.0logの減少、および28日で回復なしを要求している。カテゴリーB(EP−B)は、細菌について、初期算出数からの24時間で少なくとも1.0logの減少、7日で前回測定値からの少なくとも3.0logの減少および28日で前回測定値からの0.5log以下の増加(すなわち、増加なし)を要求している。表1を参照されたい。酵母および真菌については、カテゴリーAは、7日で少なくとも2.0logの減少および28日で前回測定値からの増加なしを要求しており、カテゴリーBは、14日で少なくとも1.0logの減少および28日で前回測定値からの増加なしを要求している。
【0089】
細菌については300CFU未満または酵母またはカビについては100CFU未満を含有するプレートを計数中に使用した。単回チャレンジ試験については、三つ組みで、および希釈した試料を加えた二つ組のプレートにおいて(1時点当たり6つの値)のすべての生存微生物の算術平均数を測定し、CFU/mlとして正規化した。結果は、平均log10CFU/ml減少(時間0と比較して)として表される。この場合、生存微生物数は、ベースラインとして時間0において評価され、6時間、24時間、7日、14日および28日のインキュベーション時間と比較される。
【0090】
試験された保存剤は、パラベン(メチルパラベンおよびプロピルパラベン)を除いて、プレブ(ベ)ナー13結合抗原性の減少を示すプレブ(ベ)ナー13の安定性に対する明白な影響を示さなかった。さらに、フェノール、メタクレゾール、メチルパラベンおよびプロピルパラベンは、変法ローリータンパク質アッセイを妨害した(ワクチンのタンパク質濃度は、市販の変法ローリータンパク質アッセイにより決定される)。
【0091】
保存効力試験(PET)結果は、試験した保存剤のすべてが、USP要件を満たすがEP基準(EP−AまたはEP−B)を満たさないことを示した。表2を参照されたい。2−PEは、より高用量で安全であることが知られている唯一の候補保存剤であった。したがって、より高投与量の2−PEで、保存効力のさらなる試験を続行した。
【0092】
【表2】

【実施例2】
【0093】
単回チャレンジ方法による保存効力試験:2−PEおよびチメロサール
0.01%濃度のチメロサールは、米国で認可されている主要なワクチンで一般に使用されている。保存剤としてのチメロサールの効力を、実施例1で上に記載されている同じ単回チャレンジ方法を使用して試験した。0.01%のチメロサール(0.5mL投与量当たり水銀25μgと同等である)を含有するプレブ(ベ)ナー13ワクチン製剤は、EPの保存抗菌効力方法により定められている欧州合格基準のEP−AもEP−Bも満たさなかった。しかし、EPで定められているものに比較して米国薬局方または日本薬局方の公定方法により定められている合格限界があまり厳格でないことから、米国薬局方または日本薬局方により定められている合格限界は合格した。図1を参照されたい。
【0094】
米国で認可されているワクチンの一部におけるチメロサールの推奨濃度の2倍と同等である0.02%(1投与量当たり水銀50μgを含有する)、または米国で認可されているワクチンの一部におけるチメロサールの推奨濃度の4倍と同等である0.04%(1投与量当たり水銀100μgを含有する)のチメロサールは、EP合格基準Bを満たしたが、より厳格なAの合格基準を満たさなかった(微生物の単回チャレンジで)。図1を参照されたい。
【0095】
2−PEは、チメロサールに比べて保存剤としてより有効であった。2.5mg/投与量の2−PEは、EP合格基準のAとBの両方を満たすことはできなかったが、3.5〜5.5mg/投与量の濃度の2−PEは、EP合格基準Bを満たした。6.0mg/投与量より高い濃度で、2−PEは、EP−AとEP−Bの抗菌効力合格基準の両方を満たした(図2)。
【実施例3】
【0096】
2−PEおよびチメロサールによる単回チャレンジ方法:汚染物レベルの変化
プレブ(ベ)ナー13ワクチン製剤中に保存剤がない場合、20〜25℃における28日のチャレンジ期間にわたって緑膿菌(P.aeruginosa)は緩慢に増殖し、カンジダ・アルビカンス(C.albicans)レベルおよび黒麹菌(A.niger)は変化せず、黄色ブドウ球菌(S.aureus)はコロニー形成単位が緩慢に減少した(図3)。
【0097】
0.01%チメロサール(1投与量当たり水銀25μgを含有する)の存在は、4つすべての播種微生物の汚染レベルを低下させた。しかし、黄色ブドウ球菌(S.aureus)およびカンジダ・アルビカンス(C.albicans)の阻害は、緑膿菌(P.aeruginosa)および黒麹菌(A.niger)の阻害よりも弱いものであった(図4)。プレブ(ベ)ナー13ワクチン製剤におけるチメロサールの抗菌効果の速度に対する投与量応答関係は、特に、カンジダ・アルビカンス(C.albicans)に対して見られ、汚染レベルの低下は、0.02%チメロサールでより顕著であった(図5)。0.02%チメロサール含有塩水製剤中にプレブ(ベ)ナー13がない場合、黄色ブドウ球菌(S.aureus)およびカンジダ・アルビカンス(C.albicans)に対するチメロサールの増殖阻害効力はわずかに改善した(図6)。
【0098】
2−PEは、チメロサールに比べて保存剤としてより有効であった。例えば、チメロサールについての黄色ブドウ球菌(S.aureus)の緩慢な減少とは対照的に、5.0mg/投与量2−PEの抗菌効力は、播種後24時間でベースラインまでの黄色ブドウ球菌(S.aureus)の減少をもたらした(図7)。2−PEは、黒麹菌(A.niger)に対して保存剤としてチメロサールよりも有効でなく(図7)、黒麹菌(A.niger)汚染の減少の速度は、チメロサール(図4および5)と比較してより緩慢であるが、他の株に関する2−PEの優れた効力は、3.5および5mg/投与量の濃度で保存合格基準EP−Bを満たし(図2)、一方、0.01%チメロサールは、満たさなかった(図1)。
【0099】
3.5〜5.0mg/投与量の2−PEの保存効力は、製剤を、1カ月にわたって37℃または2年半にわたって2〜8℃にて貯蔵した場合に維持されたままであった(図2)。製剤中の2−PEの濃度は、同様に安定であった(図15)。プレブ(ベ)ナー13製剤中に存在する13の血清型の各々の免疫学的活性(総抗原性)も、これらの貯蔵条件下で安定であった(図14)。
【0100】
総抗原性は、各血清型についてワクチン中に存在する結合多糖と非結合多糖の両方に由来する。型特異的抗原性は、型特異的抗血清を使用することにより決定した。アッセイに先立って、リン酸アルミニウムと共に製剤化された13価ワクチンをまず可溶化させた。次いで、溶液を中和し、アルカリ誘発性分解を回避した。比濁計を使用し、アッセイは、抗原−抗体複合体形成に由来する光散乱強度の変化速度を測定した。試験サンプルの抗原性は、サンプル分析の直前または直後に測定される標準曲線を使用する線形回帰により決定した。
【0101】
プレブ(ベ)ナー13ワクチンおよび塩水製剤のチメロサール含有量を確認するため、水銀の濃度を、冷蒸気原子吸光分析(CVAAS)の方法により製剤の一部において決定した。水銀の測定された濃度は、その予測値に極めて近く、これらの製剤におけるチメロサール濃度が、狙い通りであり、過小評価されていないことを示唆した。2−PEの測定された濃度も、その予測値に極めて近く、2〜8℃と37℃のどちらでも経時的にプレブ(ベ)ナー13製剤の貯蔵で変化しなかった。2−PE濃度は、逆相HPLCアッセイで測定した。サンプルをボルテックスして塩水中の5mMコハク酸塩緩衝液中に1:10に希釈し、遠心分離して塩水中の5mMコハク酸塩緩衝液中に1:10に再び希釈した。試験サンプルの最終希釈率は、1:100であった。アッセイは、Agilent Eclipse XDB−C18 HPLCカラムおよびトリフルオロ酢酸を含有する水とアセトニトリルの直線グラジエントを利用した。13vPnC複数回投与ワクチンサンプル中の2−PEを、2−PE標準曲線に対して定量化した。Sharmaら、Biologicals 36(1):61〜63(2008)も参照されたい。
【実施例4】
【0102】
複数回チャレンジ方法による保存効力試験:チメロサール
最長で4週にわたる複数回免疫化セッションにおけるワクチンのWHO複数回投与Open Vial Policyの適切性を評価するため、WHOにより提供された実験計画を実施した。この試験において、チメロサールの効力は、大部分の米国で認可されているワクチン中に存在する濃度(0.01%)、ならびに0.02%のより高濃度において評価した。複数回投与提示の反復使用中に実際に起きる可能性がある汚染の最悪の妥当なケースを示すため、およびWHO要件を試験するため、0.01もしくは0.02%チメロサールまたは2−PE 5.0mg/投与量を含むプレブ(ベ)ナー13ワクチン製剤を、WHO推奨細菌株、緑膿菌(P.aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、大腸菌(E.coli)および枯草菌(B.subtilis)を使用する複数回汚染事象へ計画的に曝露した。製剤に、時間0、初回チャレンジ後6時間、24時間、7日および14日に各微生物5×10CFU/mlを添加し、実際に潜在的な貯蔵条件を模倣するために2〜8℃または22〜24℃のどちらかで貯蔵した。0.02%チメロサールを含有する塩水製剤も対照として使用し、製剤におけるチメロサールの抗菌効力に対するプレブ(ベ)ナー13の潜在的影響を評価した。
【0103】
保存剤がない場合のプレブ(ベ)ナー13ワクチン製剤の複数回計画的汚染により、緑膿菌(P.aeruginosa)および大腸菌(E.coli)微生物のレベルは、試験を通して、特に、22〜24℃において貯蔵された場合に増加した(図8Aおよび8B)。22〜24℃において貯蔵された製剤における黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルは、単回チャレンジ試験中に観察されたものと同様に、緩慢に低下した(図8Aを図3と比較されたい)。枯草菌(B.subtilis)の生存率は、さらにより顕著に低下した(図8Aおよび8B)。これらの結果は、枯草菌(B.subtilis)が、WHOによるその推奨にも関わらず、保存効力試験におけるそのようなチャレンジ試験のモデルとして使用されるべきこの製剤における頑健な微生物ではないことを示唆している。
【0104】
プレブ(ベ)ナー13ワクチン製剤において、0.01%チメロサールの抗菌効力は、枯草菌(B.subtilis)と、続いて、緑膿菌(P.aeruginosa)で最高であった。しかし、黄色ブドウ球菌(S.aureus)および大腸菌(E.coli)の減少は、特に、製剤が2〜8℃において貯蔵された場合に緩慢であった(図9Aおよび9B)。
【0105】
図12に要約されている黄色ブドウ球菌(S.aureus)の生存率における減衰の非線形回帰分析に示されているように、黄色ブドウ球菌(S.aureus)の減衰速度は、22〜24℃において貯蔵されたもの(1日当たり−1.39log10の減衰、6.2日で50%の減衰)と比較して、製剤が2〜8℃において貯蔵された場合に実質的により緩慢であった(1日当たり−5.98log10の減衰、30.28日で50%の減衰)(図12)。これらの結果は、複数回投与送達中に現場で汚染され、冷蔵温度においてさらに貯蔵されるプレブ(ベ)ナー13ワクチン製剤中の0.01%チメロサールが、細菌汚染を軽減するのに有効ではないことを示している。
【0106】
チメロサールの効力は、濃度と温度の両方に依存していた(図9および10)。チメロサールは、0.02%のより高濃度においてより有効な保存剤であった。チメロサールは、22〜24℃のより高い貯蔵温度においてより有効な保存剤であった。しかし、上記で議論されているように、0.02%濃度および22〜24℃貯蔵をもってしても、チメロサールは、そのような基準を複数回チャレンジ試験中に当てはめた場合、EP−AとEP−BのどちらのEP要件も満たさなかった(図1)。
【0107】
ワクチン自体が、チメロサールの保存作用に影響を及ぼすかどうかを試験するため、複数回チャレンジによる0.02%チメロサールの効力を、塩水とプレブ(ベ)ナー13ワクチン製剤の間で比較した。0.02%チメロサールの存在下で、黄色ブドウ球菌(S.aureus)と大腸菌(E.coli)の両方の減衰速度は、ワクチン製剤におけるよりも塩水製剤においてより顕著であり(図11を図10および図12と比較されたい)、ワクチンの存在が、ある程度、保存剤としてのチメロサールの効力を阻害することを立証した。しかし、ワクチンを含有しない塩水対照製剤においてさえ、0.02%チメロサールは、複数回チャレンジされた場合に、EP−Aの合格基準もEP−Bの合格基準も依然として満たさなかった(図1)。
【実施例5】
【0108】
複数回チャレンジ方法による保存効力試験:2−PE
保存剤としてのチメロサールの効力の欠如とは対照的に、特に、複数回播種されるか2〜8℃において貯蔵された場合、保存剤として2−PE 5mg/投与量を含有するプレブ(ベ)ナー13ワクチン製剤は、チャレンジ方法(すなわち、単回または複数回)または貯蔵温度に関係なく、黄色ブドウ球菌(S.aureus)生存率のより強い不活化をもたらす(図12)。
【0109】
実際、貯蔵温度に関係なく複数回チャレンジ方法について、および試験されたすべての微生物(緑膿菌(P.aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、大腸菌(E.coli)および枯草菌(B.subtilis))について、5mg/投与量2−PEは、0.01%チメロサールよりも保存剤として優れていた。様々なチャレンジ試験における黄色ブドウ球菌(S.aureus)減衰の非線形回帰分析において、2−PEを含むワクチン製剤は、50%減衰と減衰の平均勾配(log10減衰/日)の両方に関してチメロサールを含むものよりも早い微生物汚染物質減衰率を有していた。図12を参照されたい。さらに、5mg/投与量2−PEは、複数回チャレンジ下でEP−B基準を満たし、一方、同じ条件下でEP−B基準を満たすことができるチメロサールのバージョンはなかった(図13)。
【0110】
チメロサールは、調剤中に導入される可能性のある潜在的汚染に対して複数回投与製剤中のプレブ(ベ)ナー13を保護する際の有効な保存剤ではない。このことは、汚染が、複数回投与製剤で対象に投与している間に複数回導入される場合にはさらに明らかである。チメロサールは、特に、黄色ブドウ球菌(S.aureus)および大腸菌(E.coli)に対して緩慢な不活化速度を有し、一般開業医が、貧弱な衛生条件下で複数回投与バイアルからワクチンを抜き取る可能性がある場合に潜在的な汚染微生物を一掃するための即時効果が遅い。しかし、3.5〜5mg/投与量の2−PEは、チメロサールと比較してかなり高い率の抗菌効力と共に安定であり、したがって、対象に投与している間の不慮の汚染から製品を保護するであろう。
【実施例6】
【0111】
非ヒト霊長類における保存剤としての2−フェノキシエタノールを含むまたは含まないプレベナー13の免疫化により誘発される免疫応答
免疫応答を誘導するプレベナー13および2−フェノキシエタノールを含有するプレベナー13の能力を、カニクイザルで評価する。
【0112】
合計20匹のカニクイザルについて10匹のカニクイザルの2つの免疫化群を、表3で詳述されているような試験のために使用する。
【0113】
【表3】

【0114】
予めスクリーニングした動物を、それらの体重およびベースライン力価に基づいて群に無作為化する。
【0115】
カニクイザルに、保存剤として2−フェノキシエタノール0または5mgを含有する13vPnCの臨床投与量を与える。ワクチンは、各サルの大腿四頭筋中の単一部位において筋肉内で与える。送達される最終体積は、0.5mLである。
【0116】
すべてのカニクイザルには、3回投与量を投与し、2、4および8週目にワクチン接種する。
【0117】
採血スケジュール:末梢血を、0、6、8、10、12および16週目にサンプリングし、ワクチンに対する免疫応答の誘導をモニターする。
【0118】
ワクチン接種により誘発される免疫応答を、試験中に集められた血清に下記のアッセイを行うことによりモニターする。
・インビトロ結合および機能的抗体:
〇 ELISAによる血清型特異的IgG(例えば、Fernsten P、ら、Hum Vaccin.2011年1月1日、7:75〜84を参照)
〇 血清型特異的オプソニン化貪食作用アッセイ(OPA)(例えば、Fernsten P、ら、Hum Vaccin.2011年1月1日、7:75〜84を参照)
・乳幼児ラットチャレンジモデルにおけるインビボ防御(例えば、Fernsten P、ら、Hum Vaccin.2011年1月1日、7:75〜84を参照):
〇 プールしたカニクイザル血清を、血清型特異的防御について評価する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体タンパク質とコンジュゲートされている肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19Fおよび23F由来の複数の莢膜多糖を含み、2−フェノキシエタノール(2−PE)をさらに含む、多価免疫原性組成物。
【請求項2】
肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19Fおよび23F由来の7つ以上の莢膜多糖を含む、請求項1に記載の多価免疫原性組成物。
【請求項3】
7mg/mL〜15mg/mLの間の濃度で2−PEを含む、請求項1または2のいずれか一項に記載の多価免疫原性組成物。
【請求項4】
約10mg/mLの濃度で2−PEを含む、請求項3に記載の多価免疫原性組成物。
【請求項5】
7mg/mL以上の2−PEを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の多価免疫原性組成物。
【請求項6】
10mg/mL以上の2−PEを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の多価免疫原性組成物。
【請求項7】
15mg/mL以上の2−PEを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の多価免疫原性組成物。
【請求項8】
アジュバントをさらに含み、前記アジュバントが、リン酸アルミニウムである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の多価免疫原性組成物。
【請求項9】
免疫原性組成物の抗原性が、1年、1.5年、2年または2.5年以上にわたって安定である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の多価免疫原性組成物。
【請求項10】
1つまたは複数の微生物の播種後に、前記微生物の濃度が経時的に減少する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の多価免疫原性組成物。
【請求項11】
1つまたは複数の細菌株の播種後に、24時間で初期微生物数からの少なくとも1.0logの減少を示し、7日で前回測定値からの少なくとも3.0logの減少を示し、および28日で前回測定値からの0.5logを超える増加を示さない、請求項10に記載の多価免疫原性組成物。
【請求項12】
1つまたは複数の細菌株の播種後に、播種後6時間で初期算出数からの少なくとも2.0logの減少、24時間で前回測定値からの少なくとも3.0logの減少および28日で回復なしを示す、請求項10に記載の多価免疫原性組成物。
【請求項13】
微生物株が、緑膿菌(P.aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、大腸菌(E.coli)および枯草菌(B.subtilis)から選択される1つまたは複数の株である、請求項10〜12のいずれか一項に記載の多価免疫原性組成物。
【請求項14】
複数回播種される、請求項10〜13のいずれか一項に記載の多価免疫原性組成物。
【請求項15】
2回目播種が、初回播種の6時間後に行われ、3回目播種が、初回播種の24時間後に行われ、4回目播種が、初回播種の7日後に行われ、5回目播種が、初回播種の14日後に行われる、請求項13または14に記載の多価免疫原性組成物。
【請求項16】
緩衝液、凍結防止剤、塩、二価陽イオン、非イオン性洗剤、およびフリーラジカル酸化の阻害剤のうちの1つまたは複数をさらに含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の多価免疫原性組成物。
【請求項17】
CRM197と個別にコンジュゲートされている、血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19Fおよび23F由来の肺炎球菌莢膜多糖の多価免疫原性組成物製剤であって、前記多価免疫原性組成物が、約8.8μg/mLの6Bを除いて各多糖約4.4μg/mL、CRM197担体タンパク質約58μg/mL、リン酸アルミニウムの形態で元素アルミニウム約0.25mg/mL、塩化ナトリウム約0.85%、ポリソルベート80約0.02%、pH5.8のコハク酸ナトリウム緩衝液約5mM、および2−フェノキシエタノール約10mg/mLを含むように無菌液体中で製剤化される製剤。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の多価免疫原性組成物を含有するバイアル。
【請求項19】
複数回投与量の前記免疫原性組成物を含有する、請求項18に記載のバイアル。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか一項に記載の多価免疫原性組成物を含む、充填済みワクチン送達装置。
【請求項21】
注射器であるか注射器を含む、請求項20に記載の充填済みワクチン送達装置。
【請求項22】
二室もしくは多室の注射器もしくはバイアルまたはそれらの組合せであるか、二室もしくは多室の注射器もしくはバイアルまたはそれらの組合せを含む、請求項19に記載の充填済みワクチン送達装置。
【請求項23】
前記多価免疫原性組成物が、筋肉内注射または皮下注射のために製剤化される、請求項20〜22に記載の充填済みワクチン。
【請求項24】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の多価免疫原性組成物を調製するためのキットであって、(i)請求項1〜23のいずれか一項に記載の組成物の凍結乾燥形態中の前記複数の莢膜多糖、および(ii)水性組成物を提供するために構成成分(i)を再構成するための水性材料を含むキット。
【請求項25】
バイアル中に4回投与量のワクチンを含む複数回投与ワクチンであって、各投与量が、2−フェノキシエタノール4から20mg/mLまで、好ましくは、10mg/mLを含み、投与量が、ワクチン0.5mLであるワクチン。
【請求項26】
1回投与量当たり0.1〜2mLで2回投与量以上の、請求項1〜17のいずれか一項に記載の多価免疫原性組成物を含む容器。
【請求項27】
投与量が、0.5mL投与量である、請求項26に記載の容器。
【請求項28】
2〜10回投与量を含む、請求項26または27に記載の容器。
【請求項29】
ワクチン組成物の免疫原性および非免疫原性構成成分の一部またはすべての存在下で1つまたは複数の選択保存剤を含むワクチン製剤の効力を測定するための方法であって、試験が、試験組成物に選択微生物集団を播種すること、および経時的なかつ特定の環境条件(例えば、温度)下での、播種された1つまたは複数の微生物のlog減少を、1つまたは複数の試験保存剤を欠く対照組成物におけるlog減少と比較することの少なくとも2つのステップを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−256168(P2011−256168A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−124221(P2011−124221)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(309040701)ワイス・エルエルシー (181)
【Fターム(参考)】