説明

ワクチン

【課題】新規ワクチン製剤、それらを製造する方法および治療におけるそれらの使用の提供。
【解決手段】本発明は、単一の変異株または実質的に単一の変異株を含む弱毒化したロタウィルス集団を提供するもので、それはVP4およびVP7と呼ばれる少なくとも1種類の主要なウィルスタンパク質をコード化するヌクレオチド配列によって規定される。本発明はさらに、舌の上に置かれたとき直ぐに溶解するような急速溶解性錠剤の形態のロタウィルスワクチン用の新奇な調合物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なワクチン製剤、それらを製造する方法および治療におけるそれらの使用に関するものである。特に本発明は新規なロタウイルスワクチン製剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
急性の感染性下痢症は、世界の多くの地域において疾病と死亡の主たる原因である。発展途上国では下痢性疾患の影響力は圧倒的である。アジア、アフリカおよびラテンアメリカに関しては、下痢の症例が毎年30-40億例あり、うち約500-1000万例が死に至ると見積もられている(Walsh,J.A.et al.:N.Engl.J.Med.、301:967-974(1979))。
【0003】
ロタウイルスは、乳幼児の重篤な下痢の最も重要な原因の一つであると認識されている(Estes,M.K. Rotaviruses and Their Replication in Fields Virology、第3版、Fields et al.編、Raven Publishers、フィラデルフィア、1996)。ロタウイルスの疾患は毎年100万人以上の死の原因であると見積もられている。ロタウイルスの誘発する病気は、最も一般的には生後6ないし24ヶ月の小児を襲い、概してこの疾病の流行のピークは、温暖な気候では寒い時季であり、熱帯地域では通年である。ロタウイルスは、典型的には糞便-経口経路により人から人へ伝染し、潜伏期間は約1ないし約3日間である。生後6ヶ月ないし24ヶ月の群への感染とは異なり、新生児は一般に無症候であるか、軽度の疾患であるに過ぎない。幼児が通常遭遇するこの重篤な疾患とは対照的に、殆どの成人は過去のロタウイルス感染の結果として防御されており、したがって殆どの成人の感染は軽度または無症候性である(Offit,P.A.et al. Comp.Ther.、8(8):21-26、1982)。
【0004】
ロタウイルスは一般に球形であり、その名称は、それらの特徴的な外側および内側または二重殻カプシド構造に由来する。典型的には、ロタウイルスの二重殻カプシド構造は、ゲノムを内包する内部蛋白殻またはコアを取り巻いている。ロタウイルスのゲノムは、少なくとも11の明瞭なウイルス蛋白をコードしている二本鎖RNAの11のセグメントで構成されている。これらウイルス蛋白のうち、VP4およびVP7と命名されている2個は、二重殻カプシド構造の外側に位置している。ロタウイルスの内側のカプシドは1個の蛋白を示し、これはVP6と命名されたロタウイルス蛋白である。ロタウイルス感染に続く免疫反応の誘導におけるこれら3種の特別なロタウイルス蛋白の相対的重要性は未だ明らかでない。にも拘わらず、VP6蛋白はこの群および亜群の抗原を決定し、VP4およびVP7蛋白は血清型特異性の決定要因である。
【0005】
VP7蛋白は、菌株にもよるがゲノムセグメント7、8または9の翻訳産物である38000MW糖蛋白(非グリコシル化時は34000MW)である。この蛋白は、ロタウイルス感染後の主要中和抗体の形成を刺激する。VP4蛋白は、およそ88000MWの非グリコシル化蛋白であって、ゲノムセグメント4の翻訳産物である。この蛋白もまたロタウイルス感染後の中和抗体を刺激する。
【0006】
VP4およびVP7蛋白はこれらに対して中和抗体が導かれるウイルス蛋白であるため、ロタウイルス疾患に対する防御を提供するロタウイルスワクチンの開発のための第一候補物質であると考えられる。
【0007】
小児期初期の自然のロタウイルス感染は防御的免疫を導くことが分かっている。したがって、生きている弱毒化ロタウイルスワクチンは極めて望ましい。経口経路がこのウイルスの自然の感染経路であることから、好ましくはこれは経口ワクチンとすべきである。
【0008】
ロタウイルス感染を防ぐための初期のワクチン開発は、このウイルスの発見後1970年代に始まった。最初は動物および人間由来の弱毒菌株が研究され、いろいろな、または失望させる結果となった。より最近の努力はヒト-動物再構築物に的が絞られ、これはよりうまくいっている。
【0009】
89-12として知られるロタウイルス菌株がWard(米国特許第5474773号を参照されたい)およびBernstein,D.L.et al、Vaccine、16(4)、381-387、1998により記載されている。89-12菌株は、1988年に自然的ロタウイルス疾患の14ヶ月齢小児から採取した糞便標本から単離された。米国特許第5474773号によれば、このHRV 89-12ヒトロタウイルスは、Ward、J.Clin.Microbiol.、19、748-753、1984に記載のように、その後一次アフリカミドリザル腎(AGMK)細胞での2継代、そしてMA-104細胞での4継代により、培養に適合させた。次いでこれをMA-104細胞で3回プラーク精製し(継代9まで)、これらの細胞中でさらに2継代生育させた。受理番号ATCC VR 2272の下でATCCに寄託するため、さらに1継代を行った(継代12)。寄託された菌株は89-12C2として知られる。
【0010】
Bernstein et al.によるVaccineに掲載の1998年の論文は、以降、Vaccine(1998)論文と称する。この論文は、経口投与された生きているヒトロタウイルスワクチン候補物質の安全性と免疫原性を記載している。このワクチンは、プラーク精製せずに一次AGMK細胞で26回、次いで、確立されたAGMKセルラインでさらに7回継代することにより(合計33継代)弱毒化した菌株89-12から取得した。
【0011】
以後、26回連続継代した上記物質をP26と称し、33回連続継代した物質をP33と称する。一般に89-12をn回継代することにより誘導されたロタウイルスをPnと称する。
【0012】
後の実施例中、P33物質はVero細胞上でさらに5回継代した。これをP38と称する。
【0013】
Vaccine(1998)論文中に記載のP26およびP33はカルチャーコレクションに寄託されず、これらの遺伝的性質を確立するために分析されることもなかった。
【0014】
この度、この文献に記載のP26集団が変異体の混合物を含むことが判明した。この事は後述する遺伝的特性決定によって確立された(実施例を参照されたい)。故にP26は、さらなる継代、特にワクチンロットの生産のための、信頼し得る程度に一定品質の集団ではない。同様に、P33もまた変異体の混合物であり、ワクチンロットの生産にとって信頼し得る程度に一定品質のものではない。
【0015】
P26物質は、少なくとも3種のVP4遺伝子変異体の混合物であることが判明した。同様にP33およびP38は2種の変異体の混合物である。これらの変異体は、これらの変異体に対して、P33でワクチン処置された乳児由来の血清の中和抗体価を評価する時、ATCCに寄託された89-12C2菌株に対し、中和エピトープの点で、抗原性が異なっているように見える。これを図3に示す。
【0016】
さらに、P33物質を乳児に投与する時、同定されている2種の変異体が複製および排出されることが判明した。100人のワクチン接種された乳児のうち、2人だけがロタウイルス感染に起因する胃腸炎の徴候を示し、プラセボ群の20%が感染した。これらの発見は、同定された変異体がロタウイルス疾患からの防御に関わっていることを示唆している。本発明は、ロタウイルス変異体を分離する方法、および、クローニングされた(均質な)ヒトロタウイルス菌株から誘導された、改良弱毒ロタウイルス生ワクチンを提供する。
【発明の開示】
【0017】
したがって、第一の態様によれば、本発明は、単一の変異体または実質上単一の変異体[ここでこの変異体は、VP4およびVP7と呼ばれる主要ウイルス蛋白の少なくとも一つをコードしているヌクレオチド配列によって定義される]を含むことを特徴とする、弱毒ロタウイルス集団(単離物)を提供する。
【0018】
好ましくは本発明に係るロタウイルス集団はクローニングされた変異体である。
【0019】
単一の変異体、または実質上単一の変異体を含む集団とは、10%以上の異なる変異体または変異体群を含まない、好ましくは5%未満の、そして最も好ましくは1%未満の異なる変異体もしくは変異体群を含むロタウイルス集団を意味する。ウイルス集団は、適当な細胞型上で継代することによって、または一連の、1またはそれ以上のクローニング工程を実施することによって、均質または実質上均質になるまで精製することができる。
【0020】
本発明の利点は、単一の変異体を含む集団が、一定のワクチンロットの製剤化にとって、より適切であるということである。主要ウイルス蛋白をコードしているヌクレオチド配列により定義される特定の変異体は、ロタウイルス感染の防止における有効性の増強にも関係している。
【0021】
一つの好ましい態様では、本発明に係るロタウイルス集団の単一または実質上単一の変異体は、VP4遺伝子が以下のもののうち少なくとも一つを含むヌクレオチド配列を含む変異体である:開始コドンから788位のアデニン塩基(A)、802位のアデニン塩基(A)および501位のチミン塩基(T)。
【0022】
さらなる態様では、本発明に係る集団中の単一または実質上単一の変異体は、VP7遺伝子が以下のもののうち少なくとも一つを含むヌクレオチド配列を含む変異体である:開始コドンから605位のチミン(T)、897位のアデニン(A)、または897位のグアニン(G)。好ましくは897位にはアデニン(A)がある。
【0023】
好ましい態様では、本発明に係る集団中の単一の変異体は、VP4遺伝子配列の開始コドンから788位および802位にアデニン(A)を、そして501位にチミン(T)を有する。
【0024】
別の好ましい態様では、本発明に係る集団中の単一の変異体は、VP7配列の開始コドンから605位にチミン(T)を、そして897位にアデニン/グアニン(A/G)を有する。最も好ましくは、VP7配列には897位にアデニン(A)がある。
【0025】
特に好ましい態様では、本発明に係る集団中の単一の変異体は、VP4遺伝子配列の開始コドンから788位および802位にアデニン(A)を、そして501位にチミン(T)を有し、VP7配列の開始コドンから605位にチミン(T)を、そして897位にアデニン/グアニン(A/G)を有する。最も好ましくは、VP7配列には897位にアデニン(A)がある。
【0026】
別の態様では、単一の変異体は、VP4蛋白をコードしているヌクレオチド配列[ここでこのヌクレオチド配列は図1に示されるものである]、および/またはVP7蛋白をコードしているヌクレオチド配列[ここでこのヌクレオチド配列は図2に示されるものである]を含む。
【0027】
本発明はさらに、実質上単一の変異体を含むロタウイルス集団を生成する方法であって、その方法が、
ロタウイルス調製物を適当な細胞型上で継代し;
所望により、
a) 限界希釈;または、
b) 個別プラーク単離;
のいずれかの工程を用いて均質な培養を選択し;そして、
VP4および/またはVP7遺伝子配列の適当な領域を配列決定することにより、実質上単一の変異体の存在を調査する、
ことを含む方法を提供する。
【0028】
配列決定は、ドットブロットハイブリダイゼーションまたはプラークハイブリダイゼーションのような定量的または半定量的ハイブリダイゼーション技術により好適に実施できる。
【0029】
好ましくは、選択された変異体は、最初のロタウイルス調製物が人間の患者、特に小児に投与された時に複製および排出される変異体である。
【0030】
本発明に係る方法から導かれて生成したクローニングされたウイルス集団は、適当なセルライン上でさらに継代することにより増幅できる。
【0031】
上記の方法でのロタウイルス集団の継代にとって好適な細胞型はアフリカミドリザル腎(AGMK)細胞を包含し、これは確立されたセルラインまたは一次AGMK細胞であってよい。好適なAGMKセルラインは、例えば、Vero(ATCC CCL-81)、DBS-FRhL-2(ATCC CL-160)、BSC-1(ECACC 85011422)およびCV-1(ATCC CCL-70)を包含する。MA-104(アカゲザル)およびMRC-5(ヒト-ATCC CCL-171)セルラインもまた好適である。Vero細胞は増幅目的にとって特に好ましい。Vero細胞上での継代は高収量のウイルスを与える。
【0032】
この方法から得られたウイルス集団中に単一の変異体があるかどうかを調査するための、そしてその単一変異体の性質を決定するための技術は、当分野で周知の標準的配列決定またはハイブリダイゼーション法を含み、以下に記載されている。
【0033】
好ましい態様では、本発明方法は、適当なロタウイルス、特に89-12菌株の性質を有するロタウイルスまたはその継代誘導体を用いて実施する。
【0034】
特に好ましい単一変異体集団はP43であり、これは、一連の終点希釈クローニング工程と、そのクローニングされた物質を、引き続きVero細胞上で増幅のために継代することによって、P33(適当な細胞型上で培養中33回継代した、単離ヒトロタウイルス)から得られた。
【0035】
P43集団は、ブダペスト条約の約定の下に、1999年8月13日、寄託番号99081301の下でEuropean Collection of Animal Cell Cultures(ECACC)、Vaccine Research and Production Laboratory、Public Health Laboratory Service、Centre for Applied Microbiology and Research、ポートンダウン、ソールズベリー、ウィルトシャー、SP4 0JG、英国、に寄託された。
【0036】
この事は、一般的入手可能性がヒトロタウイルスP43を取得する最も簡単な方法であることを示しているが、類似の且つ機能の点で実質上同一のロタウイルスを、本発明の教示を考慮してこれらのまたはその他の方法により製造することが、全く不可能またはあり得ないという訳ではない。係る、機能の点で実質上同一のロタウイルスは、本発明に係るヒトロタウイルスP43と生物学的に等価であると考えられ、故に本発明の一般的範囲内にある。よって、本発明は、本明細書に記載のP43変異体の性質を有するロタウイルス集団を包含する、ということが理解されるであろう。
【0037】
本発明は、寄託されたP43 ECACC 99081301を、さらなる加工に付す、例えばさらなる継代、クローニング、または生きているウイルスを使用するその他の方法によりこれを増殖させることによって、または遺伝子工学技術もしくは再構築技術を包含する任意の方法によりP43を修飾することによって、P43から誘導される物質を包含することもまた理解できよう。このような工程および技術は当分野で周知である。
【0038】
本発明により包含される、寄託されたP43から誘導した物質は、蛋白および遺伝物質を含む。特に重要なものは、少なくとも1つの抗原またはP43の少なくとも1つのセグメントを含む再構築ロタウイルス、例えば、11のゲノムセグメントのうち1個またはその1個のうちの一部がP43のゲノムセグメントまたはその一部に置き換わっているロタウイルスの悪性菌株を含む再構築物である。具体的には、NSP4をコードしているセグメントまたは部分セグメントがP43セグメントまたは部分セグメントであるロタウイルス再構築物が、有用な性質を有し得る。再構築ロタウイルスおよびそれらを製造する技術は周知である(Foster,R.H.およびWagstaff,A.J. Tetravalent Rotavirus Vaccine、総説。ADIS薬物評価、BioDrugs, Gev, 9(2)、155-178、1998)。
【0039】
P43の子孫およびP43の免疫学的に活性な誘導体が特に重要な物質である。免疫学的に活性な誘導体とは、P43ウイルス(特に、宿主動物内に注入された場合にロタウイルスに対して反応性の免疫反応を導くことのできる当該ウイルスの抗原)から、またはこれを用いて得られる物質を意味する。
【0040】
ロタウイルスを適当なセルライン、例えばVero細胞に適合させる際、存在し得る汚染物質、例えば存在するかも知れず、取り除かなければ汚染を惹起するであろう偶発的物質、を取り除くよう、ウイルスを処理する必要がある。エーテル感受性偶発性ウイルスの場合、これは以下に記載のエーテル処理によって実施できる。本発明はさらに、弱毒化生存ロタウイルスまたはこれを用いて製剤化されたワクチンを取得するための方法全体に、自由選択工程としてこのようなエーテル処理を含めることに関するものである。
【0041】
P43とその他のロタウイルス変異体、例えば他のクローニングされた変異体、またはその他のウイルス、特にその他の弱毒化ウイルスとの混合物もまた本発明の範囲内にある。このような混合物は、以下に記載の本発明に係るワクチンにおいて有用である。
【0042】
本発明はさらに、適当なアジュバントまたは薬用担体と混合した実質上単一の変異体集団を含む、弱毒ロタウイルス生ワクチンを提供する。
【0043】
好ましくは、本発明に係るロタウイルスワクチンは、単一のロタウイルス菌株を含む一価のロタウイルスワクチンである。
【0044】
本発明は、その生存弱毒ロタウイルスがヒトロタウイルスであり、重積を惹起しないロタウイルス生ワクチンの提供においてとりわけ有利である。
【0045】
本発明に係るワクチンへの使用にとって好適な薬用担体は、特に乳児への経口投与のために好適であることが当分野で知られている担体を包含する。このような担体は、炭水化物、多価アルコール、アミノ酸、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、タルク、酸化チタン、水酸化鉄、ステアリン酸マグネシウム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶性セルロース、ゼラチン、植物性ペプトン、キサンタン、カラギーナン、アラビアゴム、β-シクロデキストリンを包含するが、これらに限定される訳ではない。
【0046】
本発明はさらに、例えば適当な安定剤の存在下で該ウイルスを凍結乾燥することにより、または、本発明に係るウイルスを適当なアジュバントもしくは薬用担体と混合することによる、ロタウイルスワクチンを製造するプロセスを提供する。脂質を基礎とする媒質、例えばウィロソームまたはリポソーム中に、または水中油エマルジョン中に、または担体粒子と共に本発明に係るウイルスを製剤化することもまた有利である。別法として、またはこれに加えて、免疫刺激剤、例えば経口ワクチン用として当分野で周知のものを製剤に含有させることもできる。このような免疫刺激剤には、細菌毒素、特に、ホロトキシン(分子全体)もしくはB鎖のみ(CTB)の形のコレラ毒素(CT)、およびE.coliの熱不安定性エンテロトキシン(LT)が包含される。天然LTよりも活性型に変換されにくい突然変異LT(mLT)がWO96/06627、WO93/13202およびUS5182109に記載されている。
【0047】
有利に含有させることのできるさらなる免疫刺激剤は、QS21のようなサポニン誘導体およびモノホスホリルリピドA、特に3-デ-O-アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL)である。経口アジュバントとしての精製サポニンはWO98/56415に記載されている。サポニンおよびモノホスホリルリピドAは個別にまたは組み合わせて使用でき(例えばWO94/00153)、そして他の物質と共にアジュバント系に調合できる。3D-MPLはRibi Immunochem(モンタナ)により製造される周知のアジュバントであり、その製造はGB2122204に記載されている。
【0048】
経口的免疫形成のための媒質およびアジュバントについての一般的議論は、Vaccine Design, The Subunit and Adjuvant Approach、PowellおよびNewman編、Plenum Press、ニューヨーク、1995に見出すことができる。
【0049】
本発明はさらに、本発明に係るワクチン組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与することにより、人間対象、特に乳児を予防接種するための方法を提供する。好ましくは、この弱毒生ワクチンは経口投与によって投与する。
【0050】
好ましい態様では、本発明に係るワクチン組成物は、胃内の酸によるワクチンの不活性化を最小とするための制酸薬と共に製剤化する。好適な制酸薬成分は、無機制酸薬、例えば水酸化アルミニウムAl(OH)3および水酸化マグネシウムMg(OH)2を包含する。本発明での使用に好適な入手し得る市販の制酸薬は、水酸化アルミニウムと水酸化マグネシウムを含有するMylanta(商標)を包含する。これらは水不溶性であり、懸濁液で投与される。
【0051】
水酸化アルミニウムは制酸効果のみならずアジュバント効果をも備えているため、本発明に係るワクチン組成物の特に好ましい成分である。
【0052】
有機酸カルボン酸の塩のような有機制酸薬もまた、本発明に係るワクチン中の制酸薬としての使用に好適である。本発明に係るワクチン組成物において好ましい制酸薬は有機酸カルボン酸の塩、好ましくはクエン酸の塩、例えばクエン酸ナトリウムまたはクエン酸カリウムを含む。
【0053】
本発明に係るワクチン組成物で使用できる特に好ましい制酸薬は、不溶性無機塩、炭酸カルシウム(CaCO3)である。炭酸カルシウムはロタウイルスと結合することができ、ロタウイルスの活性は炭酸カルシウムとの結合中維持される。
【0054】
充填工程中の炭酸カルシウムの沈殿を防止するため、好ましくは製剤中に粘性物質を存在させる。
【0055】
使用できる可能性のある粘性物質は偽塑性賦形剤を包含する。偽塑性溶液とは、動揺時の粘度に比して静止時により高い粘度を有する溶液として定義される。この型の賦形剤は、天然ポリマー、例えばアラビアゴム、トラガカントゴム、寒天、アルギン酸塩、ペクチン、または、半合成ポリマー、例えばカルボキシメチルセルロース(Tyloses C(登録商標))、メチルセルロース(Methocels A(登録商標)、Viscotrans MC(登録商標)、Tylose MH(登録商標)およびMB(登録商標))、ヒドロキシプロピルセルロース(Klucels(登録商標))およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(Methocels E(登録商標)およびK(登録商標)、Viscontrans MPHC(登録商標))である。一般にこれらの偽塑性賦形剤はチキソトロピー物質と共に使用する。これらに代わる使用可能な粘性物質は、低流動能を有する偽塑性賦形剤である。これらのポリマーは、充分な濃度では、構造流体配置を生じ、その結果、静止時には低流動能を有する高い粘性の溶液となる。流動と移動がこの系に可能となるには、或る量のエネルギーを与える必要がある。流体溶液を得るためには、この構造流体配置を一時的に破壊する外部エネルギー(動揺)が必要である。このようなポリマーの例はCarbopols(登録商標)およびキサンタンガムである。
【0056】
チキソトロピー賦形剤は静止時にはゲル構造となり、動揺時には流体溶液を形成する。チキソトロピー賦形剤の例は、Veegum(登録商標)(珪酸マグネシウム-アルミニウム)およびAvicel RC(登録商標)(約89%の微結晶性セルロースおよび11%のカルボキシメチルセルロースNa)である。
【0057】
本発明に係るワクチン組成物は好ましくはキサンタンガムまたは澱粉から選ばれる粘性物質を含む。
【0058】
したがって、本発明に係るワクチン組成物は好ましくは炭酸カルシウムおよびキサンタンガムの組み合わせを用いて調合する。
【0059】
本発明に使用する組成物のその他の成分は、糖、例えば蔗糖および/または乳糖を含むのが好適である。
【0060】
本発明に係るワクチン組成物は、例えば香料(特に経口ワクチンのために)および静菌剤を包含するさらなる成分を含み得る。
【0061】
本発明に係るワクチン組成物の、異なる態様が想定される。
【0062】
一つの好ましい態様では、このワクチンを液体製剤として投与する。好ましくはこの液体製剤は、少なくとも以下の二つの成分:
i) ウイルス成分
ii) 液体成分
から、投与前に再構成する。
【0063】
この態様では、ウイルス成分と液体成分は通常別々の容器に入っており、それは、簡便に単一容器の個別区分であってよく、または最終的ワクチン組成物が空気に暴露することなく再構成されるよう、連結できる個別容器群であってもよい。
【0064】
再構成の前にウイルスは乾燥形態であっても液体形態であってもよい。好ましくはウイルス成分は凍結乾燥する。凍結乾燥ウイルスは水溶液中のウイルスより安定である。凍結乾燥ウイルスは液体制酸組成物を用いて適切に再構成して液体ワクチン製剤を生成することができる。別法として、凍結乾燥ウイルスは水または水溶液で再構成でき、この場合、凍結乾燥ウイルス組成物は好ましくは制酸成分を含有している。
【0065】
好ましくは、ワクチン製剤は、一方の区分または容器に炭酸カルシウムおよびキサンタンガムと調合したウイルス成分を含み、これを、第二の区分または容器中に存在する水または水溶液で再構成する。
【0066】
もう一つの好ましい態様では、ワクチン組成物は、固体製剤、好ましくは口に入った時に直ちに溶解するのに適した凍結乾燥ケークである。凍結乾燥製剤は、薬用ブリスターパックに入った錠剤の形で簡便に提供できる。
【0067】
別の態様では、本発明は、経口投与のための迅速溶解錠剤の形のロタウイルスワクチンを提供する。
【0068】
別の態様では、本発明は、生存弱毒ロタウイルス菌株、特にヒトロタウイルス菌株を含む組成物[ここでこの組成物は、口に入った時に直ちに溶解可能な凍結乾燥固体である]を提供する。
【0069】
好ましくは、本発明に係る迅速溶解錠剤は、対象の口中で十分速やかに溶解して、溶解していない錠剤の燕下を防止する。このアプローチは小児用ロタウイルスワクチンのために特に有利である。
【0070】
好ましくはこのウイルスは、炭酸カルシウムのような無機制酸薬およびキサンタンガムのような粘性物質と共に製剤化される、生存弱毒ヒトロタウイルスである。
【0071】
本発明のさらなる態様は、ウイルス成分が、炭酸カルシウムおよびキサンタンガムと共に製剤化される任意のロタウイルス菌株である、凍結乾燥製剤を提供することである。
【0072】
本発明のワクチンは、一般的なワクチンのもつ重大で有害な副作用なしにロタウィルスの感染に対して効果的な保護を与えるように適切な量の生ウィルスを用いて既に知られている手法によって調合し、投与することができる。適切な量の生ウィルスは普通、1用量当たり104と107 ffuの間にあるはずである。ワクチンの典型的な用量は、1用量当たり105〜106 ffuを含み、またある期間にわたって数用量、例えば2ヶ月の間隔をおいて2用量を与えることができる。しかしながら、特に発展途上国では2用量を超える、例えば3または4用量の型の投与によって利益を得ることができる。投与の間の間隔は、2ヶ月よりも長くてもまた短くてもよい。1回投与法の場合、または複数回の投与法の場合の生ウィルスの最適な量は、被験者の抗体価およびその他の応答の観察を伴う標準的な試験によって確かめることができる。
【0073】
本発明のワクチンはまた別の病、例えばポリオウィルスから保護するのために別の適切な生ウィルスを含むこともできる。別法では、経口投与用の他の適切な生ウィルスワクチンを別の用量で、本発明によるロタウィルスワクチン組成物と同じ機会に与えることができる。
【0074】
図3に関する図面の凡例:
Vaccine (1998) の論文に記載されたP33物質を予防接種した12人の生まれて4から6ヶ月の乳児由来の血清をP33、P38、P43、および89-12C2の中和について試験した。
【0075】
試験された血清すべての中和力価の範囲は、P33、P38、およびP43に関して同様である。統計分析では、3種類すべてのウィルスに対する全中和力価は有意差を示さない。これは、P33、P38、およびP43の高次構造および非高次構造の中和エピトープがP33を予防接種した乳児の抗P33血清によって等しく十分認識されることを示唆している。この観察は、このインビトロ検定において明らかにされた中和エピトープがP33、P38、およびP43の間で変わらなかったことを間接的に示唆している。
【0076】
しかしながらP89-12C2の中和力価の範囲は、P33、P38、およびP43とは著しく異なる。この観察は、P33、P38、およびP43の高次構造および非高次構造の中和エピトープがP33を予防接種した乳児の抗P33血清によって等しく十分認識されないことを示唆している。この観察は、このインビトロ検定においてこの中で明らかにされた中和エピトープが89-12C2とP33、P38、およびP43との間で変わらなかったことを間接的に示唆している。
【0077】
下記の実施例は本発明を例示するものである。
【実施例】
【0078】
実施例
実施例1.26継代(P26)の株89-12が変異株の混合物であることの証明:
1.1.異なる継代ロット由来のVP4およびVP7遺伝子の配列決定:
継代P26(一次AGMK細胞)、継代P33(樹立(一次とは全く異なる)AGMK細胞系)、継代P41、および継代P43由来のVP4およびVP7遺伝子の配列決定を行なった。全RNA抽出物を逆転写し、1管/1ステップでPCRにより増幅した。
【0079】
プライマーRota 5bisおよびRota 29bisがVP4遺伝子全体を増幅し、またプライマーRota 1およびRota 2bisがVP7遺伝子全体を増幅した。PCR材料は別のプライマー(表1参照)を用いて配列が決められている。
【0080】
継代P26の配列は、VP4中の3塩基(出発コドンから501、788、および802 bpの位置で)だけ、またVP7中の3塩基(出発コドンから108、605、および897 bpの位置で)だけ継代P33と異なっていた。
【0081】
VP4およびVP7の継代P26の配列の走査によれば、変異した位置で背景として継代P33配列の存在を示している。したがって継代P26が少なくとも2種類の変異株の混合物であることを知ることができる。
【0082】
継代P33の配列の走査によればVP4では同質であり、VP7については異質であるように見える(表2参照)。
【0083】
継代P38(継代P33から得られる)をベロ細胞上で5回継代し、継代P33(AGMK細胞系)と同一のVP4およびVP7配列の組が表示された。したがってP33とP38の間で集団の大きな変化はなかった。
【0084】
【表1】

【0085】
【表2】

【0086】
表2において肉太の活字で示した塩基はVP4およびVP7に特異的な配列の変異部位である。
【0087】
【表3】

【0088】
註、生産ロットのレベルまで発育した3つのクローンの第二クローンにおいては、VP7の897bp位置のヌクレオチドはP43の選択されたクローンと同様にAよりはむしろGである。この結果、アミノ酸配列中のイソロイシンの代わりにメチオニンができる。選択されたP43クローン、および出発コドンから897番目のVP7中のGが存在するクローンの両者に対応する変異株は、P33物質を予防接種した乳児の便の中に排泄された。
【0089】
表3.1において特定の位置に2つの別の塩基がある場合、2つのうちの第一の塩基は主要な集団中に現れる塩基を表し、第二の塩基は小さい方の集団中に現れる塩基である。主要な変異株の集団と小さい方の変異株の集団は、配列決定中の信号の強さによって判断される。
【0090】
【表4】

【0091】
表3.2は変異株の間のヌクレオチドの違いによってもたらされるアミノ酸の変化を示す。
【0092】
【表5】

【0093】
1.2.スロットブロットハイブリッド形成:
AGMK細胞上の継代P26からP33までの間の集団の変化をさらにスロットブロットハイブリッド形成によって立証した。RT/PCRによって生じたVP4およびVP7遺伝子断片を各変異株に特異的なオリゴヌクレオチドプローブと雑種形成した(表3.1および3.2参照)。Rota15ではなく、Rota16、Rota35、およびRota36と雑種形成したP26とは対照的に、P33物質のVP4のPCR断片はRota15、Rota35、またはRota36のいずれでもなくRota16とのみ788および802番目の位置で雑種形成した。これらの結果はP26中に少なくとも3種類の変異株が存在することを証明した(表4参照)。
【0094】
P33物質のVP7のPCR断片に関しては、897番目の位置がrota41およびRota42と雑種形成した。これらの結果は、P33物質中に少なくとも2種類の変異株が存在することを証明した。
【0095】
実施例2.P43クローンの分離および特徴描写:
均質なウィルス集団としてP33成分を分離するためにベロ細胞上でP33/AGMKの3回の終点希釈を行ない、得られたウィルスを用いてベロ細胞に感染させた。
【0096】
ポジティブウェルは、伝統的に行なわれているように2つの基準、すなわちウェル中で検出された最多数の細胞増殖巣によって示される増殖、およびプレート上の最多数の分離されたポジティブウェルを用いて選択した。96ウェルの微量タイタープレート中で3回の終点希釈による継代の後、続いて10個のポジティブウェルをベロ細胞上で増幅し、それらの収率を評価した。
【0097】
収率に基づいて3つのクローンを生産ロットの継代レベルまで発育させた。多クローン抗体による免疫認識は、3つのクローンの間およびクローンとP33の間の双方で同様であることを示した。クローンの均質性をスロットブロットハイブリッド形成によって評価した。単一クローンの最終的選択は収率および配列に準拠した。
【0098】
選択されたクローンをベロ細胞上の連続的な継代によって増幅してマスター用種子、作業用種子、および最終生産ロットを生み出した。
【0099】
選択されたクローンを様々な継代レベルでVP4およびVP7の配列決定(同一性)によって、またPCR増幅した物質のVP4およびVP7の特異的なスロットブロットハイブリッド形成(均質性)によって遺伝学的な特徴描写を行なった。P43物質のVP4およびVP7遺伝子の配列はそれぞれ図1および2で与えられ、P41と同一である。
【0100】
P26/一次AGMKの配列決定において同定された各変異株について、選択したクローンの等質性を、VP4および/またはVP7領域のヌクレオチドの変化を認識するオリゴヌクレオチドプローブを用いて評価した(表4参照)。
【0101】
VP4断片をRota15、Rota35、またはRota36ではなくRota16と雑種形成した。
【0102】
VP7断片をRota42ではなくRota41と雑種形成した。
【0103】
これらの結果はP43が均質な集団であることを裏付けた。
【0104】
実施例3.潜在的な外来ウィルスの除去:
P33(AGMKで増殖した)にエーテルを1時間のあいだ最終濃度20%まで加えた。次いで35分のあいだN2を通気してエーテルを除いた。P33種子の力価に及ぼす影響は何も観察されなかった。
【0105】
実施例4.生の弱毒化したワクチンの調合:
下記の方法により上記生産ロットを乳児の経口投与用に調合した。
【0106】
4.1.凍結乾燥したウィルス:
標準的な技術をウィルスの用量の調製に用いた。凍結した精製ウィルスのバルクを解凍し、適切な培地組成物、この場合はDulbeccoの修飾イーグル培地で所望の標準ウィルス濃度、この場合は106.2 ffu/mlまで希釈した。次いで希釈したウィルスをさらに凍結乾燥安定剤(ショ糖4%、デキストラン8%、ソルビトール6%、アミノ酸4%)で目標ウィルス力価、この場合は105.6 ffu/用量まで希釈する。安定化したウィルス組成物の分割量0.5 mlを無菌状態で3 mlのガラス瓶に移した。次いで各ガラス瓶を一部分ゴム栓で閉じ、試料を真空下で凍結乾燥し、次いでガラス瓶を完全に閉じ、栓を定位置に保つためにその場でガラス瓶の周りにアルミニウムキャップをクリンピングする。
【0107】
使用する場合には下記の制酸還元剤の1つを用いてウィルスを元に戻す。
【0108】
(a)クエン酸塩還元剤
クエン酸ナトリウムを水に溶解し、濾過によって滅菌し、還元容器の中へ1.5 mlの量を用量1.5 ml当たりクエン酸Na3・2H2O 544 mgの濃度で無菌状態で移した。還元容器は、例えば3 mlのガラス瓶、4 mlのガラス瓶、2 mlのシリンジ、または経口投与用の軟質プラスチック製の搾り出すことが可能なカプセルでもよい。滅菌した成分を滅菌した状態に維持する別法として、最終容器を高圧滅菌することもできる。
【0109】
(b)Al(OH)3還元剤
無菌の水酸化アルミニウムのサスペンション(商標Mylanta)を無菌状態で滅菌した水で希釈し、各々Al(OH)3 48 mgを含有する量2 mlを無菌状態で還元容器(例えば2 mlのシリンジまたは軟質プラスチック製の搾り出すことが可能なカプセル)に移す。滅菌状態で滅菌した成分を用いる別法は、水酸化アルミニウムのサスペンションにγ線を照射する(好ましくは希釈した段階で)ことである。
【0110】
サスペンションの沈降を防ぐために標準的な成分が含まれる。このような標準的な成分には、例えばステアリン酸マグネシウム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微晶質セルロース、およびシリコーンポリマーがある。静菌剤、例えばブチルパラベン、プロピルパラベン、または食品に用いられる他の標準的な静菌剤、香味料もまた含むことができる。
【0111】
4.2.液状調合物中のAl(OH)3を伴う凍結乾燥したウィルス:
標準的な技術をウィルスの用量の調製に用いた。凍結した精製ウィルスのバルクを解凍し、適切な培地組成物、この場合はDulbeccoの修飾イーグル培地で所望の標準ウィルス濃度、この場合は106.2 ffu/mlまで希釈した。水酸化アルミニウムのサスペンションを最終量が48 mg/用量に達するまで加え、そのウィルス組成物を凍結乾燥安定剤(ショ糖4%、デキストラン8%、ソルビトール6%、アミノ酸4%)で目標ウィルス力価、この場合は105.6 ffu/用量まで希釈する。安定化したウィルス組成物の分割量0.5 mlを無菌状態で3 mlのガラス瓶に移した。次いでガラス瓶の凍結乾燥および封鎖を1.に記載のように行なう。
【0112】
4.3.ブリスタで提示するためのAl(OH)3を伴う凍結乾燥したウィルス:
標準的な技術をウィルスの用量の調製に用いた。凍結した精製ウィルスのバルクを解凍し、適切な培地組成物、この場合はDulbeccoの修飾イーグル培地で所望の標準ウィルス濃度、この場合は106.2 ffu/mlまで希釈した。水酸化アルミニウムのサスペンションを最終量が48 mg/用量に達するまで加え、そのウィルス組成物を4%のショ糖、デキストラン、もしくはアミノ酸、またはゼラチン、または植物ペプトン、またはキサンタンの凍結乾燥安定剤で目標ウィルス力価105.6 ffu/mlまで希釈する。無菌の充填操作を使用してブリスタの空洞へ用量0.5 ml、好ましくはそれ以下の量を移す。組成物を凍結乾燥し、ブリスタの空洞を熱シールによって密封する。
【0113】
任意選択で、サスペンションの沈降を防ぐために標準的な成分が含まれる。このような標準的な成分には、例えばステアリン酸マグネシウム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微晶質セルロース、およびシリコーンポリマーがある。香味料もまた含むことができる。
【0114】
実施例5.さまざまな調合物用のロタウィルスのウィルス力価:
【0115】
【表6】

【0116】
P43ロタウィルスを上記の表に示すようにショ糖または乳糖のどちらかと共に調合した。凍結乾燥前のウィルス力価は、凍結乾燥のステップなしの完全な調合液(ショ糖、デキストラン、ソルビトール、アミノ酸を含有する)の力価である。
【0117】
これらはよい結果を示し、凍結乾燥のステップにおける<0.5対数の低下、および「37℃で1週間」(加速安定性試験)中の<0.5対数の低下が達成される。 ウィルス力価の精度は約±0.2対数である。
【0118】
この結果は、乳糖の代わりにショ糖を用いることができることを示している。
【0119】
【表7】

【0120】
この結果は、アルギニンの添加(これは凍結乾燥中のウィルスの安定性を改善し、また胃の酸性度を補償するための塩基性の媒体を提供することが知られている)がウィルス力価を維持することを示している。
【0121】
ソルビトールは、凍結乾燥したケークのガラス転移温度をきわめて大幅に低下させる傾向がある。これは、上記に示したようにソルビトールの代わりにマルチトールを用いることによって克服することができ、ウィルス力価は変わらずに維持される。
【0122】
5.3.さまざまな調合組成物:
この実験は多くの調合物が可能であることを実証する。
【0123】
【表8】

【0124】
【表9】

【0125】
Al(OH)3は制酸剤として使用される。ロタウィルスはAl(OH)3と一緒に遠心分離されるので、それが不溶性の無機塩Al(OH)3と結合していることを示している(上清のウィルス活性の低下)。
【0126】
【表10】

【0127】
ロタウィルスがAl(OH)3と結合すると、すべて(Al(OH)3を含む)凍結乾燥することが可能である。凍結乾燥後、クエン酸ナトリウム中でAl(OH)3を溶解することによってロタウィルスを回収することができる。このステップはロタウィルスに損傷を与えず、この溶解のステップ後もその活性を保持する。
【0128】
5.6.Al(OH)3−ロタウィルスの結合の解放後のロタウィルスの感染力:
ウィルス開放のメカニズム(キャリヤーの溶解による)はインビボできわめてよく起こる。事実pH6未満ではAl(OH)3は完全に可溶性になり、したがってロタウィルスは胃の中で開放されることになる。
【0129】
Al(OH)3 + 3H+ --- → Al+++(水溶性)+ 3H2O
胃の中ではAl+++イオンは吸収されない(J. J. PowellおよびR. P. H. Thompsonの論文、The regulation of mineral adsorption in the gastrointestinal track, Proceedings of the Nutrition Society, 58, 147-153 (1999))。胃の中ではpHの上昇により不溶性の形態のアルミニウムは沈殿(Al(OH)3またはAlPO4)し、自然の道筋を経由して除かれる。新たに形成されたAl(OH)3(またはAlPO4)の沈殿が遊離のロタウィルスと再結合することが可能かどうかは知られていない。これが、Al(OH)3−ロタウィルスの結合自体の感染力の問題を提起する。
【0130】
他のメカニズムによるAl(OH)3−ロタウィルスの結合からのロタウィルスの開放もまたあり得る。例えばリシンはAl(OH)3上へのウィルスの吸着を妨げる。ホウ酸塩、硫酸塩、炭酸塩、およびリン酸塩のような他のアニオンは特に水酸化アルミニウム上に吸着されることが知られており、したがって理論的にはAl(OH)3−ロタウィルスの結合からロタウィルスをはずす(吸着部位の奪い合い)ことが可能なはずである。
【0131】
【化1】

【0132】
こうしてロタウィルスはAl(OH)3−ロタウィルスの結合から開放され、開放されたロタウィルスは依然として活性のままである。この開放はAl(OH)3を溶解することにより(胃の中のHClにより、またはインビトロのクエン酸Na3により)、またはロタウィルスを塩基性アミノ酸(リシン)で置き換えることにより行なうことができる。
【0133】
5.7.Al(OH)3−ロタウィルスの結合の感染力:
凍結乾燥したロタウィルスの1回用量を水で戻し2部に分割した。第一部は参照用とみなされ、追加量の水を与えた。Al(OH)3 24 mgを与えられた第二部を水0.240 ml中に懸濁させた(臨床前のウィルスの滴定)。
【0134】
【化2】

【0135】
Al(OH)3が存在する場合、ロタウィルスは活性であり、ウィルスの滴定値は参照用試料と比べて高い。この実験は凍結乾燥した用量を分割せずに、またAl(OH)3 12 mgもしくはAl(OH)3 24 mgを加えることにより繰り返された。ここで参照用試料はクエン酸−炭酸水素酸緩衝液で戻したものである。したがってウィルス力価はAl(OH)3が存在するとさらに高くなる。
【0136】
【化3】

【0137】
上記実施例のように、ウィルスは遠心分離によって捨てることができるのでロタウィルスはAl(OH)3粒子と結合している。DRVC003A46は凍結乾燥した調合ロタウィルス(ショ糖2%、デキストリン4%、ソルビトール3%、アミノ酸2%)である。
【0138】
【化4】

【0139】
SDSAA=ショ糖2%、デキストリン4%、ソルビトール3%、アミノ酸2%
上清について行なったウィルスの滴定によれば、ロタウィルスを吸着するのに必要なAl(OH)3の量は低いようである(1凍結乾燥用量を5.7対数から始めてウィルスの滴定をスケールアップする)。
【0140】
【表11】

【0141】
Al(OH)3上にロタウィルスを吸着させるのに必要な時間は短いようである。 凍結乾燥したロタウィルスの1用量をAl(OH)3 24 mgの存在下で戻し、0分、15分、60分、24時間後に遠心分離した。「堆積物」はウィルスの滴定前にSDSAA中に懸濁させた。
【0142】
【表12】

【0143】
5.8.制酸剤としてCaCO3を使用すること:
ワクチン中のアルミニウムを回避するために制酸剤Al(OH)3 を別の不溶性無機塩CaCO3(炭酸カルシウム)で置き換えた。CaCO3で見られる現象はAl(OH)3に関して述べたものと同様であり、
ロタウィルスと無機塩の結合;
無機塩と結合した場合のロタウィルスの活性の維持;
酸による無機塩基の溶解によってロタウィルスを結合から開放する可能性;および
制酸剤およびロタウィルスの共凍結乾燥の可能性である。
【0144】
5.8.1.CaCO3とロタウィルスの結合:
最初の実験においては、凍結乾燥したロタウィルス(ウィルス力価5.7)を水に溶かしたCaCO3のサスペンション(1.5 ml中50 mg)で戻し、次いで遠心分離し上清のウィルス力価を堆積物のウィルス力価と比較した。
【0145】
【化5】

【0146】
これはロタウィルスの90%がCaCO3と結合していることを示している。 ウィルスが結合した場合、滴定を行ない、元のウィルス量を回収することもまた可能である。またウィルス力価はCaCO3なしに得られたものよりもわずかに高い。
【0147】
【化6】

【0148】
5.8.2.CaCO3とロタウィルスの結合量:
凍結乾燥したロタウィルスを、CaCO3 10 mg、50 mg、および100 mgを水に溶かしたサスペンション(1.5 ml)で戻し、次いで遠心分離し上清のウィルス力価を堆積物のウィルス力価と比較した。
【0149】
【表13】

【0150】
したがってCaCO3の結合、またロタウィルスの結合が多いほど、明らかにそれらの上清中に見出される量は少ない。しかしながら全部の用量は完全には回収されない(先に得られたように少なくとも5.3の合計、また5.8さえも予想される。上記を参照されたい)。
【0151】
5.8.3.乳児ロゼット−ライス制酸剤の滴定の間のロタウィルスのCaCO3による保護:
凍結乾燥したロタウィルス(DRVC003A46)10用量およびCaCO3 50 mgを用いて2種類の乳児ロゼット−ライス制酸剤の滴定を行なった。
【0152】
古典的なロゼット−ライス制酸剤の滴定においては制酸剤をロタウィルスと混ぜ、HClをこの媒質に注ぐ。
【0153】
「逆」乳児ロゼット−ライスにおいては状況は逆であり、制酸剤をHClプールに滴下する(インビボで起こるのと同様に)。
【0154】
【表14】

【0155】
したがってこのインビトロの実験において炭酸カルシウムはHClの存在からロタウィルスの約20%を保護することができるが、水酸化アルミニウムはできない。
【0156】
【表15】

【0157】
これは、同じガラス瓶にロタウィルスと制酸剤(CaCO3)を「すべて一体に組み込んだ」凍結乾燥である。装填のステップにおけるCaCO3の沈降を防ぐには粘性物質が必要である。このような粘性物質の例にはキサンタンガムおよびデンプンがある。ロタウィルスの活性はキサンタンガムおよびデンプンの存在下でも維持される。
【0158】
5.10.口内に入れたとき急速に崩壊する凍結乾燥した錠剤:
下記の調合物は「lyoc」の概念、すなわち口内での凍結乾燥したケークの急速な溶解を実証する。
【0159】
【表16】

【0160】
「lyocの概念」においては、キサンタンおよびデンプンの両方を用いることができる(凍結乾燥したケークの急速な溶解特性を維持しつつ)。
【0161】
実施例6.ロタウィルスワクチン組成物用の制酸剤としての炭酸カルシウムの使用:
水に溶かしたCaCO3のサスペンションをロタウィルス用の制酸剤として用いる場合、その粉末密度の値が2.6に近く、平均粒径は30μmであるため、水に入れると炭酸カルシウムの粒子が急速に沈降するという問題がある。この沈降は、
(1) 取り巻く媒体の密度を増すこと、
(2) 取り巻く媒体の粘度を増すこと、
(3) 粒径を小さくすること、および
(4) 粒子を互いに離すこと、
によって遅くすることができる。
【0162】
6.1.取り巻く媒体の密度を増すこと:
CaCO3−水サスペンションを凍結乾燥したケーク(ショ糖2%、デキストラン4%、ソルビトール3%、アミノ酸2%を含有する)に注ぐ(シリンジに入れる場合)と、取り巻く媒体の密度は増すがCaCO3の沈降速度はCaCO3−水サスペンションとあまり違いがない。
【0163】
6.2.取り巻く媒体の粘度を増すこと:
6.2.1.擬塑性賦形剤:
擬塑性溶液は、撹拌時の粘度と比べて静置時の粘度が大きい溶液として定義される。この型の通常の賦形剤は、
天然のポリマー、例えば
アラビアガム
アドラガンテガム
カンテン
アルギン酸エステル類
ペクチン類、
半合成ポリマー、例えば
カルボキシメチルセルロース(Tyloses C(登録商標))
メチルセルロース(Methocels A(登録商標)、Viscotrans MC(登録商標)、Tylose MH(登録商標)およびMB(登録商標))
ヒドロキシプロピルセルロース(Klucels(登録商標))
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Methocels E(登録商標)およびK(登録商標)、Viscotrans MPHC(登録商標))である。
【0164】
一般にこれらの擬塑性賦形剤は、チキソトロピー物質と一緒に用いられる。
【0165】
6.2.2.低い流動能力を有する擬塑性賦形剤:
十分な濃度においてこれらのポリマーは、静置時に低い流動能力を示す高粘度溶液をもたらすことになる構造的流体配置を生じさせる。流動および移動を可能にするには系にある一定量のエネルギーを与える必要がある。流動性溶液を得るには一時的に構造的流体配置を破壊するために外部エネルギー(撹拌)が必要である。このようなポリマーの例は、Carbopols(登録商標)およびキサンタンガムである。
【0166】
6.2.3.チキソトロピー賦形剤:
これら賦形剤では、静置時にはゲル構造が得られ、一方撹拌時には流動性溶液が得られる。
【0167】
チキソトロピー賦形剤の例は、Veegum(登録商標)(ケイ酸マグネシウムアルミニウム)およびAvicel RC(登録商標)(微晶質セルロース約89%およびカルボキシメチルセルロースナトリウム11%)である。
【0168】
6.3. 粒径を小さくすること:
CaCO3の粒径を小さくすることにより化合物の制酸能力の低下をもたらした。
【0169】
6.4. 粒子を互いに離すこと:
これはVeegum(登録商標)およびAvicel RC(登録商標)のケースで、それは凝集を防ぐためにCaCO3粒子よりも小さな不溶性の粒子(約1μm)がCaCO3粒子の間に配置されている。
【0170】
実施例7.製品設計:
下記の方式は実行可能な製品設計の例を具体的に説明するものである。
【0171】
7.1. シリンジ内のCaCO3
凍結乾燥したガラス瓶内にロタウィルスの臨床的バッチがすでに入っている場合、制酸剤をシリンジ内に含まれている還元液に加えることができる。
【0172】
【化7】

【0173】
この製品を提示する場合はCaCO3の沈降が、装填のステップの間だけでなく製品の完全な貯蔵寿命の間(少なくとも2年間)ずっと制御されなければならない。
【0174】
7.2. 凍結乾燥したガラス瓶内のCaCO3
【0175】
【化8】

【0176】
7.3. ブリスタ内の凍結乾燥:
この場合にはロタウィルス、CaCO3、およびキサンタンガムがブリスタ中で一緒に直接凍結乾燥される。
【0177】
【化9】

【0178】
実施例8.異なるロタウィルス株の凍結乾燥:
【0179】
【表17】

【0180】
株DS-1、PおよびVA70は、「Fields」(第2版、Raven press(1990))の1361頁にそれぞれ血清型G2、G3、およびG4に対するヒトロタウィルスの参照用の株として記述されている。
【0181】
この実験では、さまざまなロタウィルスの株が凍結乾燥された。やはり、ウィルス力価は凍結乾燥の間ずっと維持され、加速安定性(37℃で1週間)が示された。
【0182】
実施例9.ロタウィルスワクチンを1回経口投与した成人における第I相安全性試験:
18から45歳の健康な成人におけるP43ワクチンの単一経口用量106.0 ffuの安全性および反応原性(reactogenicity)を評価するために第I相試験を行なった。
【0183】
臨床試験は二重盲検かつ無作為で行なった。これはプラセボ対照で、自己完結的であった。試験はベルギー内の或る単一のセンターで行なった。
【0184】
9.1.試験集団
プラセボのグループ11名およびワクチンのグループ22名の合計33名の被験者が記録され、全員が試験を終えた。ボランティア全員がカフカス人であった。ワクチン注射時の彼等の平均年齢は35.3歳で、18から44歳の範囲にあった。試験は1月に始め、ちょうど1ヶ月間にわたって行なわれた。
【0185】
9.2.材料
9.2.1.ワクチン:
P43ワクチンの臨床用ロットは、製品製造手続き従って製造、精製、調合、および凍結乾燥された。そのロットは品質管理および品質保証に従って送り出された。ワクチンの各ガラス瓶には下記の成分が含まれている。
(a)活性成分
株P43 最低105.8 ffu
(b)賦形剤および安定剤
ショ糖 9 mg
デキストリン 18 mg
ソルビトール 13.5 mg
アミノ酸 9 mg
9.2.2.プラセボ:
プラセボのガラス瓶が調製され送り出された。プラセボの各ガラス瓶には下記の成分を含まれている。
(a)賦形剤および安定剤
ショ糖 9 mg
デキストリン 18 mg
ソルビトール 13.5 mg
アミノ酸 9 mg
9.2.3.希釈剤:
ワクチンおよびプラセボを戻すために注射用の水を希釈剤として用いた。
【0186】
9.3.投与
ワクチンおよびプラセボ投与の約10から15分前に両グループの被験者に口を通してMylanta(登録商標)10 mlを与えた。Mylanta(登録商標)は公認の制酸剤である。制酸剤は胃のpHを上昇させ、ロタウィルスが胃を通過する間に不活性化するのを防止する。
【0187】
ワクチンを調製するために凍結乾燥したP43を1つのガラス瓶当たり105.8 ffu含有する2つのガラス瓶を、注射用の希釈水1.5 mlで戻した。これは、計算されたウィルス力価1用量当たり106.1 ffuを達成した。戻したワクチンは1回の経口用量として直ちに投与された。
【0188】
プラセボを調製するために凍結乾燥したプラセボの2つのガラス瓶を注射用の希釈水1.5 mlで戻し、1回の用量として経口投与した。
【0189】
9.4. 安全性および反応原性
安全性および反応原性の下記基準が適用された。すなわち点検が求められる一般的な症状は、発熱、下痢、嘔吐、吐気、腹痛、および食欲の減退である。これらは投与後8日間ずっと記録された。求められていない症状は投与後30日間ずっと記録された。重大な不利な事象が試験の全期間中記録された。当然、下痢の試料は投与後8日間集められた。
【0190】
その結果、求められる症状、求められていない症状、および重大な不利な事象はそれぞれの観察期間中何も報告されなかった。
【0191】
下痢のケースは何も報告されなかった。
【0192】
9.5. 結論
SB Biologicals P43ワクチンは、18から44歳の健康な成人ボランティアに投与量106.1 ffuの1回用量として二重盲検のやり方で経口投与した場合、プラセボを基準として安全であった。
【図面の簡単な説明】
【0193】
【図1】P43のVP4配列。
【図2】P43のVP7配列。
【図3】P33由来ロタウィルス・クローンに対する、P33ワクチン接種小児から採取した血清の中和力価。
【図4】P33由来ロタウィルス・クローンに対する、P33ワクチン接種小児から摂取した血清の中和力価。
【図5】P33由来ロタウィルス・クローンに対する、P33ワクチン接種小児から摂取した血清の中和力価。
【図6】P33由来ロタウィルス・クローンに対する、P33ワクチン接種小児から摂取した血清の中和力価。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の変異株または実質的に単一の変異株を含み、前記変異株がVP4およびVP7と呼ばれる主要なウィルスタンパク質の内の少なくとも1種類をコード化するヌクレオチド配列によって規定されることを特徴とする弱毒化したヒト・ロタウィルス集団。
【請求項2】
クローン化された株である、請求項1に記載のロタウィルス集団。
【請求項3】
ヒトロタウィルス感染体から得られる、請求項1または請求項2に記載のロタウィルス集団。
【請求項4】
ヒト中で複製し、かつ、ヒトによって排泄される、請求項13のいずれか一項に記載のロタウィルス集団。
【請求項5】
実質的に単一の変異株が、前記VP4遺伝子が開始コドンから788番目の位置にアデニン塩基(A)、802番目の位置にアデニン塩基(A)、および501番目の位置にチミン塩基(T)のの少なくとも1つを含むヌクレオチド配列を備えた変異株である、請求項14のいずれか一項に記載のロタウィルス集団。
【請求項6】
VP4遺伝子が、開始コドンから788および802番目の位置にアデニン塩基(A)、そして501番目の位置にチミン塩基(T)を含むヌクレオチド配列を備える、請求項5に記載のロタウィルス集団。
【請求項7】
実質的に単一の変異株が、前記VP7遺伝子が開始コドンから605番目の位置にチミン(T)、897番目の位置にアデニン(A)、および897番目の位置にグアニン(G)のの少なくとも1つを含むヌクレオチド配列を備えた変異株である、請求項16のいずれか一項に記載のロタウィルス集団。
【請求項8】
VP7遺伝子が、開始コドンから605番目の位置にチミン(T)、そして897番目の位置にアデニン(A)またはグアニン(G)を含むヌクレオチド配列を備える、請求項7に記載のロタウィルス集団。
【請求項9】
VP4遺伝子が開始コドンから788および802番目の位置にアデニン(A)、および501番目の位置にチミン(T)を含むヌクレオチド配列を備え、かつVP7遺伝子が開始コドンから605番目の位置にチミン(T)、および897番目の位置にアデニン(A)を含むヌクレオチド配列を備えた変異株である、請求項58に記載のロタウィルス集団。
【請求項10】
VP4タンパク質をコードする図1で示されるヌクレオチド配列、および/またはそのヌクレオチド配列がVP7タンパク質をコードする図2で示されるヌクレオチド配列を含むロタウィルス。
【請求項11】
P43と呼ばれ、受番号ECACC 99081301で寄託されている、請求項110のいずれか一項に記載のロタウィルス集団。
【請求項12】
P43と呼ばれ、受番号99081301でECACCの託されているロタウィルス変異株、そのロタウィルスの子孫および免疫学的に活性なその誘導体、およびそれから得られる物質。
【請求項13】
請求項11または請求項12記載のロタウィルス変異株P43の少なくとも1つの抗原または少なくとも1つのセグメントを含むヒト・ロタウィルス再構築物。
【請求項14】
実質的に単一の変異株を含む精製したロタウィルス集団の製造方法であって、以下のステップ:
適な細胞系の上でロタウィルスの調製物を継代培養すること、
場合により、限界希釈または個別のプラークの分離のいずれかのステップを用いて均質な培養物を選択すること、および
VP4 およびVP7遺伝子配列の適な領域の配列を決めることにより実質的に単一の変異株が存在するかどうかを調べることを含む、前記方法。
【請求項15】
ロタウィルスの調製物をAGMK細胞上で継代培養する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ロタウィルスの調製物が株89-12またはその誘導体の特徴を有する、請求項14または請求項15に記載の方法。
【請求項17】
エーテルに敏感な外来性の汚染性物質を除去するためにエーテル処理の追加のステップを含む、請求項1416のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
適な薬剤用キャリヤーまたはアジュバントと混ぜ合わせた請求項113のいずれか一項に記載の生の弱毒化したウィルスを含むワクチン組成物。
【請求項19】
経口投与に適合させた、請求項18に記載のワクチン組成物。
【請求項20】
前記生の弱毒化したウィルスが制酸組成物とともに調合される、請求項19に記載のワクチン組成物。
【請求項21】
前記制酸組成物が有機制酸剤を含む、請求項20に記載のワクチン組成物。
【請求項22】
前記制酸剤がクエン酸ナトリウムである、請求項21に記載のワクチン組成物。
【請求項23】
前記制酸組成物が無機制酸剤を含む、請求項20に記載のワクチン組成物。
【請求項24】
前記制酸剤が水酸化アルミニウムである、請求項23に記載のワクチン組成物。
【請求項25】
前記制酸剤が炭酸カルシウムである、請求項23に記載のワクチン組成物。
【請求項26】
粘性物質をさらに含む、請求項25に記載のワクチン組成物。
【請求項27】
前記粘性物質がキサンタンガムである、請求項26に記載のワクチン組成物。
【請求項28】
前記生の弱毒化したウィルスが炭酸カルシウムおよびキサンタンガムとともに調合され、かつ水性溶液で戻される、請求項2527のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項29】
前記生の弱毒化したウィルスが制酸組成物とともに調合され、そしてブリスタパックで凍結乾燥される、請求項2028のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項30】
前記ウィルスが凍結乾燥された形態である、請求項1829のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項31】
前記生の弱毒化したウィルス制酸組成物が、投与の前に液状のワクチン組成物として調合されるように別々容器に存在する、請求項30に記載のワクチン組成物。
【請求項32】
前記生の弱毒化したウィルス制酸組成物が、投与の前に水性溶液で戻される凍結乾燥されたワクチン組成物として調合されるように同一の容器に存在する、請求項30に記載のワクチン組成物。
【請求項33】
弱毒化したヒトロタウィルスを好適な医薬担体又はアジュバントと混合することを含む請求項18〜32のいずれか1項に記載のロタウィルスワクチンの製造方法
【請求項34】
ヒト患者におけるロタウィルス感染を予防するための請求項18〜32のいずれか1項に記載のワクチンの製造における弱毒化したヒト・ロタウィルスの使用。
【請求項35】
医薬として使用するための請求項18〜32のいずれか1項に記載のワクチン製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−319164(P2007−319164A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−211282(P2007−211282)
【出願日】平成19年8月14日(2007.8.14)
【分割の表示】特願2001−517682(P2001−517682)の分割
【原出願日】平成12年8月15日(2000.8.15)
【出願人】(397062700)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (37)
【Fターム(参考)】