説明

ワックス分散液

本発明は、平均粒子径が0.5〜100μmの範囲内であるワックス分散液に関する。当該分散液は、(a)融点が25℃よりも高く、ジアルキル(ジアルキレン)エーテル、ジアルキル(ジアルキレン)カーボネート、ジカルボン酸もしくはヒドロキシル化された脂肪アルコールもしくはこれら物質の任意の混合物から選択される少なくとも1種の油成分またはワックス成分と、少なくとも1種の乳化剤とを含むワックス相、および(b)水相を含有する。本発明の分散液は、紙またはサージのコーティングに特に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧品調製物のベースとして、特に、個人衛生および身体ケアのために使用される含浸用および湿潤用ならびに衛生用のワイプ(拭い物品)のベースとして使用することができる特別のワックス分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な用語の「紙」には、それらの用途およびそれらの性質の点で、時には相当に異なり得る約3,000の異なる種類および物品が含まれる。これらの製造には多くの添加剤の使用が必要とされ、その中で特に重要なものは、充填剤(例えば白亜またはカオリン)およびバインダー(例えばデンプン)である。ヒトの肌と比較的密接して接触するティッシュペーパーおよび衛生紙については、繊維を注意深く選択することによって、特に機械加工したばかりの木材パルプまたはセルロースの割合を高くすることによって、紙に与えられるのが普通である快適な柔らかい感触が特に必要である。しかし、経済的な紙の製造のために、および環境的な観点から、多量の品質に劣る脱インクした廃棄紙を用いることが望ましい。残念なことに、このことは、紙の柔らかさが相当に低下し、実際には問題であり、特に頻繁に用いた場合に肌の刺激を導くこともあることを意味する。
【0003】
従って、過去において、より快適な感覚上の印象が達成されるように、含浸、コーティングまたは他の表面処理によってティッシュペーパーを処理する試みが少なくなかった。これには、一方では紙に容易に適用することができ、他方ではその構造に悪影響を与えない特別なローションおよびエマルジョンを開発する必要がある。多くの場合、非イオン界面活性剤、または非イオン界面活性剤とアニオン界面活性剤の組合せを用いることによって、柔らかさが改善されている。また、ポリシロキサンおよびカチオン性ポリマーもこの目的に用いられている。
【0004】
特許文献1は、20〜80重量%の水を含まない軟化剤(鉱油、脂肪酸エステル、脂肪アルコールエトキシレート、脂肪酸エトキシレート、脂肪アルコールおよびこれらの混合物)、5〜95重量%の軟化剤用「固定化剤」(脂肪成分中に12〜22個の炭素原子を含む脂肪アルコール、脂肪酸エトキシレートまたは脂肪アルコールエトキシレート)ならびに1〜50重量%のHLB値が好ましくは4〜20である界面活性剤を含む柔軟化配合物でコーティングされたティッシュペーパーに関する。この文献の実施例はすべて、軟化剤としてペトロラタムを含む。特許文献2は、(a)鉱油、(b)脂肪アルコールまたは脂肪酸および(c)脂肪アルコールエトキシレートの水を含まない混合物を柔軟化剤として用いる同様のティッシュペーパーを開示している。特許文献3は、鉱油、脂肪アルコールエトキシレートおよび非イオン界面活性剤(ソルビタンエステル、グルカミド)を含むティッシュペーパーのための柔軟化配合物を記載している。さらに、特許文献4(Kaysersberg)は、合計して少なくとも24個の炭素原子を有する長鎖飽和脂肪アルコールおよびワックスエステルに基づく、水分含有量が極めて多い、紙ハンカチのための液体の柔軟化配合物を記載している。特許文献5は、ヤシ油脂肪酸のグリセリドおよび/または部分グリセリドでコーティングされた衛生用の吸収材を記載している。また、個人衛生用製品のためのコーティングが、非特許文献1に記載されている。
【0005】
しかし、性能の観点からは、処理された紙およびティッシュペーパーの感覚特性には、なお改善の必要がある。現時点で用いられているコーティングは、それらの皮膚ケア効果において満足できるものではなく、多くの場合に、肌の感覚がベタベタしすぎであり、場合によっては活性成分の放出が過度に遅いことによって区別される。特に乳幼児の衛生の分野においては、活性成分の効果的な放出、ケア効果の改善および比較的良好な感覚特性が極めて重要な要件である。コーティングされたワイプの保存時の長期安定性にも改善の必要がある。長期保存した場合にも、このコーティングは保存容器の底部に沈むべきではない。製造の観点からは、この組成物の適用挙動では満足できるものではない。特に、低温で適用することができ、従って、より低いコストで製造でき、より臭いの少ないコーティングを開発する必要性が存在する。
【0006】
【特許文献1】国際公開第95/35411号パンフレット
【特許文献2】国際公開第95/35412号パンフレット
【特許文献3】国際公開第95/16824号パンフレット
【特許文献4】国際公開第97/30216号パンフレット
【特許文献5】独国特許出願公開第3309530号明細書
【非特許文献1】R.E.Mathis、Nonwovens World 1999、p.59-65
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、感覚特性が改善されたことによって、特に、肌においてケア効果があり、問題がなく、ベタベタ感が比較的少ないことによって区別される湿潤ワイプおよび乾燥ワイプの製造用のティッシュペーパーをコーティングするための組成物を提供することであった。さらに、この組成物は基材に極めて容易に適用することができるであろう。コーティングされた紙/ワイプは優れたケア特性を持ち、活性成分の効果的な放出および特に低刺激性と皮膚適合性によって区別されるであろう。さらに、容易に生分解され得る助剤のみが用いられ、調製物はティッシュペーパーの中に容易に浸透し、均一に分散し、そして容易に加工できるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
特別の油成分またはワックス成分を含み、マイクロメートル範囲の粒子径を有するワックス分散液が、優れた感覚特性およびケア特性を有し、基材に適用するのが極めて容易であり、それゆえに、身体ケア分野のための含浸用の紙およびワイプに特に適していることがわかった。
【0009】
即ち、本発明は、
(a)25℃を超える融点を有するワックス相であって、ジアルキル(ジアルキレン)エーテル、ジアルキル(ジアルキレン)カーボネート、ジカルボン酸もしくはヒドロキシ脂肪アルコールもしくはこれら物質の混合物から選択される少なくとも1種の油成分またはワックス成分と、少なくとも1種の乳化剤とを含むワックス相、
(b)水相、
を含む、平均粒子径が0.5〜100μmであるワックス分散液に関する。
【0010】
好ましい態様においては、本発明によるワックス分散液は、全組成を基準として、(a)1〜75重量%の25℃を超える融点を有するワックス相であって、ジアルキル(ジアルキレン)エーテル、ジアルキル(ジアルキレン)カーボネート、ジカルボン酸もしくはヒドロキシ脂肪アルコールもしくはこれら物質の混合物から選択される少なくとも1種の油成分またはワックス成分と、少なくとも1種の乳化剤とを含むワックス相、および(b)25〜99重量%の水相を含む。本発明による好ましいワックス分散液は、ワックス分散液を基準として5〜30重量%の上記ワックス相を含み、10〜25重量%のワックス相含有量が特に好ましい。
【0011】
製造方法において、本発明によるワックス分散液を、微細に分布した状態で、冷却処理が可能な形態で、ワックス溶融物よりも容易に、紙やティッシュペーパーのような基材に適用することができる。これらは、水分含有量がわずか25重量%という濃縮物の形態および高度に希釈した形態、例えばわずか1重量%の濃度の形態の両方で適用することができる。本発明によるワックス分散液は、ジアルキル(ジアルキレン)エーテル、ジアルキル(ジアルキレン)カーボネート、ジカルボン酸もしくはヒドロキシ脂肪アルコールまたはこれらの混合物から選択される特別の油成分およびワックス成分を組合せることによって、その感覚特性が最適化される。より具体的には、これらは、同等の既知の組成物よりもケア効果があり、感触が軽く、べたつきが少なく、優れた皮膚ケア特性を示すと同時にベタベタ感のなく乾いた感じを肌に残すことがわかった。
【0012】
本発明はさらに、身体ケア調製物の製造のための、本発明によるワックス分散液の使用に関する。これを、化粧品および化粧水に通常見られる助剤および添加剤の添加によって行う。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
ワックスは通常、次の性質を有する天然物質または合成物質およびその混合物であると理解される:固体〜脆くて硬い粘度を有し、粗い結晶〜微細な結晶であり、透明〜不透明であり、通常は30℃を超える温度で分解せずに溶解する。それらの融点をわずかにでも超えると、粘度が低くなり、糸を引くことがなくなり、その粘度および溶解度において温度依存性が高い。25℃を超える融点により区別されるワックス様組成物またはワックス相、即ち25℃をわずかに超えると完全に液化するものを、本発明に従って用いてよい。換言すれば、これらのワックス様組成物またはワックス相は、特定割合の液体成分または比較的低融点の成分を含んでいてもよい。
【0014】
本発明による組成物のワックス相は、10重量%未満の水、好ましくは6重量%未満の水、より好ましくは3重量%未満の水を含む。特に好ましい態様においては、ワックス相は水を含まない。本発明において、水を含まないとは、ワックス相がその原料にのみ由来する少量の水分を含んでいてもよいが、添加された水を全く含まないことを意味する。それゆえに、組成物のワイプへの加工および適用の際に、ワックス分散液が溶解することなく、水/界面活性剤含有溶液を用いてワイプを後処理することができる。水相は、水溶性活性成分、例えば、尿素およびヒダントイン、水溶性または水膨潤性ポリマー、保湿剤などを含んでいてもよい。
【0015】
本発明によるワックス分散液のワックス相は、ワックス様の粘度を有するジアルキル(ジアルキレン)エーテル、ジアルキル(ジアルキレン)カーボネート、ジカルボン酸もしくはヒドロキシ脂肪アルコールまたはこれらの混合物のみから調製してもよいが、必要条件プロフィールに従って、他のワックス様脂質成分および油を含むことが好ましい。組成物全体の溶融範囲は25℃を超えなければならない。従って、ワックス相が25℃よりも高い必要な融点を有する場合には、液体のジアルキル(ジアルキレン)エーテル、ジアルキル(ジアルキレン)カーボネート、ジカルボン酸またはヒドロキシ脂肪アルコールを、本発明に従って用いてもよい。本発明によるワックス分散液の好ましい態様は、35〜50℃の範囲で、好ましくは35〜45℃の範囲で、より好ましくは37〜42℃の範囲で溶融するワックス相を含む。このことは、ワイプのコーティング後に、ワックス相が微粒子の形態で存在すること、および体温での利用の際にのみ液化することを保証する。このようなワックス分散液でコーティングされたティッシュペーパーおよびワイプは保存の際に安定しており、相の混合が避けられる。さらに、ティッシュペーパーが肌に利用された場合にのみ、微細な液滴のワックス相が溶融する。
【0016】
本発明の特に有利な態様は、平均粒子径が1〜50μm、より好ましくは5〜30μmの粒子を含むワックス分散液である。
【0017】
ジアルキル(ジアルキレン)エーテルは、対称的または非対称であっても、分岐または非分岐であっても、飽和または不飽和であってもよい。本発明の目的に特に適しているジアルキル(ジアルキレン)エーテルは、ワックス様の飽和のC16-30ジアルキルエーテルであり、好ましくはC16-24ジアルキルエーテルである。C16-20ジアルキルエーテルが特に好ましく、ジステアリルエーテルおよびジベヘニルエーテルが最も適している。ワックス相が必要な融点を有する場合には、比較的短鎖のジアルキルエーテル、例えば、ジ-n-オクチルエーテル、ジ(2-エチルヘキシル)エーテル、ラウリルメチルエーテルまたはオクチルブチルエーテル、ジドセイルエーテルを、本発明に従って用いてもよい。ジアルキル(ジアルキレン)エーテルは、一般的に知られている方法によって、酸性触媒の存在下に脂肪アルコールから製造することができる(例えば、独国特許出願公開第19511668号、第19831705号および第19943585号明細書を参照)。このようなエーテルの典型的な例は、カプロンアルコール、カプリルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、カプリンアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、パルミトレイルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、エライジルアルコール、ペトロセリニルアルコール、リノリルアルコール、リノレニルアルコール、オレイルアルコール、リシノリルアルコール、エラエオステアリルアルコール、アラキジルアルコール、ガドレイルアルコール、ベヘニルアルコール、エルシルアルコールおよびブラシジルアルコール、ゲルベ(Guerbet)アルコール、ならびに、例えば油脂に基づく工業用メチルエステルの高圧水素化において得られるこれらの工業用混合物のエーテル化によって得られる生成物である。25℃で固体のジアルキル(ジアルキレン)エーテルが特に適している。
【0018】
ジアルキル(ジアルキレン)カーボネートは、対称的または非対称であっても、分岐または非分岐であっても、飽和または不飽和であってもよい。ジアルキルカーボネートの中で、ワックス様の直鎖または分岐鎖の飽和または不飽和のC14-30ジアルキル(ジアルキレン)カーボネートが、本発明の目的に好ましい。C16-24ジアルキル(ジアルキレン)カーボネートが特に好ましく、これらの中で、直鎖で飽和のC16-22ジアルキルカーボネートが特に適している。ジステアリルカーボネートが最も好ましい。しかし、ワックス分散液のワックス相が必要な融点を有する場合には、液体のジアルキル(ジアルキレン)カーボネート、例えばジヘキシル、ジオクチル、ジ-(2エチルヘキシル)またはジオレイルカーボネートを、本発明に従って用いてもよい。これらの化合物は、既知の方法によるジメチルまたはジエチルカーボネートの対応するヒドロキシ化合物とのエステル交換によって得ることができる。関連の概説を、Chem.Rev. 96、951 (1996)に見い出すことができる。ジアルキル(ジアルキレン)カーボネートの典型的な例は、カプロンアルコール、カプリルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、カプリンアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、パルミトレイルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、エライジルアルコール、ペトロセリニルアルコール、リノリルアルコール、リノレニルアルコール、オレイルアルコール、リシノリルアルコール、エラエオステアリルアルコール、アラキジルアルコール、ガドレルイルアルコール、ベヘニルアルコール、エルシルアルコールおよびブラシジルアルコール、ゲルベアルコール、ならびに、例えば油脂に基づく工業用メチルエステルの高圧水素化において得られるこれらの工業用混合物によるジメチルおよび/またはジエチルカーボネートのエステル交換生成物である。25℃で固体のジアルキル(ジアルキレン)カーボネートが特に適している。
【0019】
本発明によれば、C9-34ジカルボン酸をジカルボン酸として用いることができる。このような酸としては、例えばオクタデカン二酸、テトラトリデカン酸などが挙げられる。本発明によれば、アゼライン酸、即ちCジカルボン酸が特に適している。
【0020】
ヒドロキシ脂肪アルコールの中で、飽和または不飽和の分岐または非分岐の化合物が好ましい。C12-30脂肪アルコールが好ましく、ヒドロキシ置換の位置は合成経路および用いる抽出物に依存する。このような脂肪アルコールとしては、例えば、デカン-1,10-ジオール[Speziol 10/2 (は登録商標を表す)]、ヘキサデカン-1,2-ジオール、12-ヒドロキシステアリルアルコールまたはヒドロキシゲルベアルコールが挙げられる。本発明によれば、25℃で固体のヒドロキシ脂肪アルコールが特に適しているが、ワックス相が必要な融点を有する場合には、液体のヒドロキシ脂肪アルコールを用いてもよい。Cognis France S.A.からSpeziol 18/2という名称で市販されている12-ヒドロキシステアリルアルコールが特に好ましい。ヘキサデカン-1,2-ジオールは、対応するα-エポキシドを開環することによって得られる。
【0021】
ジアルキルエーテル、ジアルキルカーボネートおよびジカルボン酸ならびにヒドロキシアルコールは、組成物全体を基準として、好ましくは1〜30重量%、より好ましくは0.5〜20重量%、最も好ましくは0.5〜10重量%の合計量で存在する。
【0022】
本発明による組成物は、実質的に無臭であり、環境毒物学的に安全であり、かつ容易に生分解される。これらは油脂を含む低刺激性の化粧品調製物として適しており、これらを化粧品用の個人衛生および身体ケア調製物、例えばクリーム、ローション、噴霧可能なエマルジョン、日焼け止め製品、発汗抑制剤などにベースとして導入することもできる。これらをケア成分として、衛生分野およびケア分野で用いられるティッシュペーパー、紙およびワイプ(乳幼児の衛生および乳幼児のケアのための湿潤ワイプ、清浄用ワイプ、顔面用ワイプ、皮膚ケア用ワイプ、肌の老化に対抗する活性成分を含むワイプ、日焼け止め配合物および防虫剤を含むワイプならびに美容化粧品のためまたは日焼け後の手入れのためのワイプ、化粧室用の湿潤ワイプ、発汗抑制用ワイプ)に適用することもできる。
【0023】
乳化剤
乳化剤を添加すると、微細な液滴のワックス分散液の安定性が向上する。適切な乳化剤は、イオン性乳化剤および非イオン性乳化剤であり、非イオン性乳化剤が本発明の目的に好ましい。さらに、少量の水溶性物質および活性成分、水、ならびに保湿剤を導入することもできる。
【0024】
本発明の好ましい態様において存在する非イオン性乳化剤は、その皮膚学的な適合性および穏やかさによって、ならびにその環境毒物学的に好ましい性質によって区別される。さらに、これらは微細な液滴のワックス分散液を安定化させるのに特に適している。非イオン性のw/o乳化剤およびo/w乳化剤を組合せて用いることによって、安定性が改善された組成物が得られる。本発明によるワックス分散液は、乳化剤を、ワックス分散液の総重量を基準として、0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜7重量%、特に1〜5重量%の量で含む。
【0025】
非イオン性乳化剤
非イオン性乳化剤の群としては、例えば、以下のものが挙げられる:
(1)8〜40個の炭素原子を含む直鎖脂肪アルコール上、12〜40個の炭素原子を含む脂肪酸上、または8〜15個の炭素原子をアルキル基内に含むアルキルフェノール上に2〜50モルのエチレンオキシドおよび/または1〜20モルのプロピレンオキシドが付加した生成物;
(2)グリセロール上に1〜50モルのエチレンオキシドが付加した生成物の、C12/18脂肪酸モノエステルおよびジエステル;
(3)6〜22個の炭素原子を含む飽和および不飽和脂肪酸のグリセロールモノエステルおよびジエステルならびにソルビタンモノエステルおよびジエステルのエチレンオキシド付加生成物ならびにそのエチレンオキシド付加生成物;
(4)8〜22個の炭素原子をアルキル基内に含むアルキルモノグリコシドおよびアルキルオリゴグリコシドならびにそのエトキシル化類似体;
(5)ヒマシ油および/または水素化ヒマシ油上に7〜60モルのエチレンオキシドが付加した生成物;
(6)ポリオールエステル、とりわけポリグリセロールエステル、例えばポリオールのポリ-12-ヒドロキシステアレート、ポリグリセロールポリリシノレエート、ポリグリセロールジイソステアレートまたはポリグリセロールジメレートなど。これら群のいくつかの化合物の混合物も適している;
(7)ヒマシ油および/または水素化ヒマシ油上に2〜15モルのエチレンオキシドが付加した生成物;
(8)直鎖、分岐鎖、不飽和または飽和のC6-22脂肪酸、リシノール酸および12-ヒドロキシステアリン酸、ならびに、グリセロール、ポリグリセロール、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、糖アルコール(例えばソルビトール)、アルキルグルコシド(例えば、メチルグルコシド、ブチルグルコシド、ラウリルグルコシド)およびポリグルコシド(例えばセルロース)に基づく部分エステルまたは混合エステル、例えばステアリン酸クエン酸グリセリルおよびステアリン酸乳酸グリセリルなど;
(9)ポリシロキサン/ポリアルキル/ポリエーテルコポリマーおよび対応する誘導体;
(10)ペンタエリトリトール、脂肪酸、クエン酸および脂肪アルコールの混合エステルおよび/またはC6-22脂肪酸、メチルグルコースおよびポリオールの混合エステル、好ましくはグリセロールまたはポリグリセロール;
(11)ポリアルキレングリコール。
【0026】
脂肪アルコール、脂肪酸、アルキルフェノール、脂肪酸のグリセロールモノエステルおよびジエステルならびにソルビタンモノエステルおよびジエステル上に、またはヒマシ油上にエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドが付加した生成物は、既知の市販製品である。これらは同族体混合物であり、その平均のアルコキシル化の程度は、付加反応を行うエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドと基質の量の間の比率に対応している。これらの乳化剤は、エトキシル化の程度に依存して、w/o乳化剤またはo/w乳化剤である。グリセロール上にエチレンオキシドが付加した生成物のC12/18脂肪酸モノエステルおよびジエステルは、化粧品調製物の脂質層の増強剤として知られている。
【0027】
本発明によれば、特に適する穏やかな乳化剤は、「Dehymuls PGPH」(w/o乳化剤)または「Eumulgin VL 75」(1:1の重量比にあるヤシ油グルコシドとの混合物、o/w乳化剤)または「Dehymuls SBL」(w/o乳化剤)の名称でCognis Deutschland GmbHから市販されているポリオール ポリ-12-ヒドロキシステアレートおよびこれらの混合物である(特に、欧州特許第0766661号明細書を参照)。これらの乳化剤のポリオール成分は、少なくとも2個、好ましくは3〜12個、より好ましくは3〜8個のヒドロキシル基と2〜12個の炭素原子とを含む物質に由来していてよい。
【0028】
原則的に、適切な親油性w/o乳化剤は、1〜8のHLB値を持つ乳化剤であり、多くの表に列挙されており、専門家には周知である。これら乳化剤のいくつかは、例えば、Kirk-Othmerの「Encyclopedia of Chemical Technology」、第3版、1979年、第8巻、913頁に列挙されている。また、エトキシル化生成物のHLB値を、次の式に従って算出することができる:HLB=(100−L):5、ここで、Lは親油性基の重量パーセント、即ち、エチレンオキシド付加物における脂肪アルキル基または脂肪アシル基の重量パーセントである。
【0029】
w/o乳化剤の群の中で特に有用な乳化剤は、ポリオールの部分エステルであり、例えば、ペンタエリトリトールの部分エステルもしくは糖エステル、例えば、スクロースジステアレート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンセスキイソステアレート、ソルビタンジイソステアレート、ソルビタントリイソステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンジオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンモノエルケート、ソルビタンセスキエルケート、ソルビタンジエルケート、ソルビタントリエルケート、ソルビタンモノリシノレエート、ソルビタンセスキリシノレエート、ソルビタンジリシノレエート、ソルビタントリリシノレエート、ソルビタンモノヒドロキシステアレート、ソルビタンセスキヒドロキシステアレート、ソルビタンジヒドロキシステアレート、ソルビタントリヒドロキシステアレート、ソルビタンモノタルトレート、ソルビタンセスキタルトレート、ソルビタンジタルトレート、ソルビタントリタルトレート、ソルビタンモノシトレート、ソルビタンセスキシトレート、ソルビタンジシトレート、ソルビタントリシトレート、ソルビタンモノマレエート、ソルビタンセスキマレエート、ソルビタンジマレエート、ソルビタントリマレエートおよびこれらの工業用混合物である。対応するエチレンオキシド付加物も適切な乳化剤である。
【0030】
水溶性活性成分および/または少量の水が導入される場合には、非イオン性のo/w乳化剤(HLB値:8〜18)からなる群よりの少なくとも1種の乳化剤および/または可溶化剤をさらに用いるのが有利になることもある。このような乳化剤の例は、初めの部分に記載したエチレンオキシド付加物であって、相応にエトキシル化の程度が高い付加物、例えば、o/w乳化剤については10-20のエチレンオキシド単位のもの、およびいわゆる可溶化剤については20-40のエチレンオキシド単位のものである。本発明の目的に特に有利なo/w乳化剤は、Ceteareth-12およびPEG-20 Stearateである。特に適する可溶化剤は、Eumulgin HRE 40(INCI名:PEG-40水素化ヒマシ油)、Eumulgin HRE 60(INCI名:PEG-60水素化ヒマシ油)、Eumulgin L(INCI名:PPG-1-PEG-9ラウリルグリコールエーテル)およびEumulgin SML 20(INCI名:Polysorbat-20)である。
【0031】
アルキルオリゴグリコシドの群からの非イオン性乳化剤は、特に肌との適合性が良く、従ってo/w乳化剤として特に適している。C8-22アルキルモノグリコシドおよびオリゴグリコシド、これらの製造および使用は、従来技術から知られている。とりわけ、これらはグルコースまたはオリゴ糖と、8〜22個の炭素原子を含む第一アルコールとの反応によって製造される。グリコシド成分に関する限り、環状の糖単位がグリコシド結合によって脂肪アルコールと結合しているモノグリコシドと、オリゴマー化の程度が好ましくは約8以下のオリゴマーグリコシドの両方が適切である。オリゴマー化の程度は、統計的平均値であり、このような工業用製品に典型的な同族体分布はこれに基づいている。Plantacareの名称で入手可能な製品は、平均のオリゴマー化の程度が1〜2であるオリゴグルコシド単位に、グルコシド結合によって結合したC8-16アルキル基を含む。グルカミンに由来するアシルグルカミドも、適切な非イオン性乳化剤である。Cognis Deutschland GmbHからEmulgade PL 68/50の名称で市販されている製品(これは、アルキルポリグルコシドと脂肪アルコールとの1:1混合物である)が本発明の目的に好ましい。本発明によれば、Eumulgin VL 75として市販されている、ラウリルグルコシド、ポリグリセリル-2-ジポリヒドロキシステアレート、グリセロールおよび水の混合物も、本発明に従って有利に用いることができる。
【0032】
他の界面活性剤/乳化剤
本発明によるワックス分散液は、ワイプおよびティッシュペーパーに考えられる適用に応じて、アニオン界面活性剤、双性イオン界面活性剤、両性界面活性剤またはカチオン界面活性剤をさらに含むことができる。
【0033】
アニオン界面活性剤/乳化剤をワックス分散液に添加することも、本発明の目的に適している。アニオン界面活性剤は、水に可溶性のアニオン基、例えばカルボキシル基、スルフェート基、スルホネート基またはホスフェート基と、親油性残基とに特徴がある。皮膚適合性のアニオン界面活性剤は、関連の手引書から多数のものが専門家に知られており、市販されている。より具体的には、これらは、アルカリ金属塩、アンモニウム塩またはアルカノールアンモニウム塩の形態にあるアルキルスルフェート、アルキルエーテルスルフェート、アルキルエーテルカルボキシレート、アシルイセチオネート、アシルサルコシネート、アシルタウリン(直鎖のC12-18アルキル基またはアシル基を有する)、ならびに、アルカリ金属塩またはアンモニウム塩の形態にあるスルホスクシネートおよびアシルグルタメートである。
【0034】
双性イオン界面活性剤は、少なくとも1つの第四アンモニウム基および少なくとも1つの-COO(-)基または-SO(-)基を分子内に含む界面活性化合物である。特に適する双性イオン界面活性剤は、いわゆるベタイン、例えばN-アルキル-N,N-ジメチルアンモニウムグリシネート、例えばヤシ油アルキルジメチルアンモニウムグリシネート、N-アシルアミノプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムグリシネート、例えばヤシ油アシルアミノプロピルジメチルアンモニウムグリシネート、および2-アルキル-3-カルボキシメチル-3-ヒドロキシエチルイミダゾリン(アルキル基またはアシル基に8〜18個の炭素原子を含む)、ならびにヤシ油アシルアミノエチルヒドロキシエチルカルボキシメチルグリシネートなどである。Cocamidopropyl BetaineのINCI名で知られている脂肪酸アミド誘導体が、特に好ましい双性イオン界面活性剤である。
【0035】
両性界面活性剤も、特に共界面活性剤として適している。両性界面活性剤は、C8/18アルキル基またはアシル基に加えて、少なくとも1つの遊離アミノ基と少なくとも1つの-COOH基または-SOH基を分子内に含み、内部塩を形成することができる界面活性化合物である。適する両性界面活性剤の例は、N-アルキルグリシン、N-アルキルプロピオン酸、N-アルキルアミノ酪酸、N-アルキルイミノジプロピオン酸、N-ヒドロキシエチル-N-アルキルアミドプロピルグリシン、N-アルキルタウリン、N-アルキルサルコシン、2-アルキルアミノプロピオン酸、およびアルキルアミノ酢酸(アルキル基に約8〜18個の炭素原子を含む)である。特に好ましい両性界面活性剤は、N-ヤシ油アルキルアミノプロピオネート、ヤシ油アシルアミノエチルアミノプロピオネートおよびC12/18アシルサルコシンである。
【0036】
特に適するカチオン界面活性剤は、第四アンモニウム化合物であり、好ましくはアンモニウムハライド、より具体的にはクロリドおよびブロミドであり、例えば、アルキルトリメチルアンモニウムクロリド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロリドおよびトリアルキルメチルアンモニウムクロリド、例えばセチルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド、ラウリルジメチルアンモニウムクロリド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロリドならびにトリセチルメチルアンモニウムクロリドである。さらに、容易に生分解される第四エステル化合物、例えば、Stepantexの名称で市販されているジアルキルアンモニウムメトスルフェートおよびメチルヒドロキシアルキル ジアルコイルオキシアルキルアンモニウムメトスルフェート、ならびにDehyquartシリーズの対応する製品を、カチオン界面活性剤として用いることができる。「エステルクアット(Esterquat)」は、第四級化された脂肪酸トリエタノールアミンのエステル塩であると一般に理解されている。これらは、本発明による組成物に特別の柔軟性を付与することができる。これらは、有機化学の関連方法によって調製される既知物質である。本発明に従って使用するのに適する他のカチオン界面活性剤は、第四級化タンパク質加水分解物である。
【0037】
他のワックス様脂質成分
別の好ましい態様においては、ワックス分散液のワックス相は、少なくとも1種の他のワックス様脂質成分を含む。他のワックス様脂質成分の添加により、ワックス分散液の感覚特性および安定性をさらに最適化し、所望のプロフィールに適合させることができる。「ワックス様」化合物は、25℃を超える融点を有するワックス様の粘度(上記を参照)を持つ化合物である。
【0038】
本発明によれば、ワックス様の粘度を持つ任意の脂肪および脂肪様物質を、他の脂質成分(その定義については、CD Roempp Chemie Lexikon-Version 1.0.、Stuttgart/New York: Georg Thieme Verlag 1995を参照)として用いることができる。これらとして、特に油脂(トリグリセリド)、モノおよびジグリセリド、ワックス、脂肪アルコールおよびワックスアルコール、脂肪酸、脂肪アルコールのエステルならびに脂肪酸アミドまたはこれら物質の混合物が挙げられる。これらは、本発明による組成物中に、全体としてのワックス分散液を基準として、0.1〜45重量%、好ましくは5〜30重量%、より好ましくは10〜25重量%の合計量で存在することができる。
【0039】
脂肪
本発明における脂肪とは、トリアシルグリセロール、即ち脂肪酸のグリセロールとのトリプルエステルと理解される。トリアシルグリセロールの中で、35〜50℃、好ましくは35〜45℃、より好ましくは37〜42℃で溶融するものが、脂質成分として好ましい。これらは、好ましくは飽和の未分岐および未置換の脂肪酸成分を含む。これらは、混合エステル、即ちグリセロールと種々の脂肪酸とのトリプルエステルであってもよい。部分的水素化によって得られるいわゆる硬化油脂を本発明に従って用いることもでき、稠度因子として特に適している。植物性の硬化油脂、例えば、硬化ヒマシ油、ピーナツ油、ダイズ油、ナタネ油、メンジツ油、ダイズ油、ヒマワリ油、パーム油、パーム核油、アマニ油、アーモンド油、コーン油、オリーブ油、ゴマ油、カカオ脂およびヤシ油が好ましい。
【0040】
適する脂肪は、特にグリセロールとC12-60脂肪酸とのトリプルエステルであり、C12-36脂肪酸とのトリプルエステルがとりわけ好ましい。これらには、水素化ヒマシ油、グリセロールとヒドロキシステアリン酸とのトリプルエステルが挙げられ、これは、例えばCutina HRという名称で市販されている。ワックス相の融点が25℃を超える場合、好ましくは35〜50℃の範囲内である場合には、グリセロールトリステアレート、グリセロールトリベヘネート(例えばSyncrowax HRC)、グリセロールトリパルミテートまたはSyncrowax HGLCの名称で知られているトリグリセリド混合物も適している。
【0041】
トリグリセリドに加えて、他の適する脂質成分は、モノおよびジグリセリドならびにグリセリドの混合物である。本発明によれば、好ましいグリセリド混合物としては、Cognis Deutschland GmbH and Co. KGから市販されているNovata ABおよびNovata B(C12-18モノ、ジおよびトリグリセリドの混合物)ならびにCutina MDまたはCutina GMS(ステアリン酸グリセリル)という製品が挙げられる。グリセリド(混合物)は、ワックス分散液を基準として、0.1〜45重量%、好ましくは0.1〜15重量%、より好ましくは1〜12重量%の量で存在することができる。
【0042】
混合エステルならびにモノ、ジおよびトリグリセリドの混合物は、本発明の目的に特に適している。その理由は、これらが、比較的結晶化しにくい傾向を有し、それゆえに本発明による組成物の性能を改善するためである。
【0043】
脂肪アルコールおよび脂肪酸
本発明に従って使用するのに適するワックス様の粘度を持つ脂肪アルコールとしては、C12-60脂肪アルコール、より具体的には、天然の脂肪、油およびワックス、例えば、ミリスチルアルコール、1-ペンタデカノール、セチルアルコール、1-ヘプタデカノール、ステアリルアルコール、1-ノナデカノール、アラキジルアルコール、1-ヘネイコサノール、ベヘニルアルコール、ブラシジルアルコール、リグノセリルアルコール、セリルアルコールまたはミリシルアルコールおよびワックス様ゲルベアルコールから得られるC12-24脂肪アルコールが挙げられる。本発明によれば、飽和の分岐または未分岐の脂肪アルコールが好ましい。他の適する脂肪アルコールは、天然の油脂、例えば、牛脂、ピーナツ油、ナタネ油、メンジツ油、ダイズ油、ヒマワリ油、パーム核油、アマニ油、ヒマシ油、コーン油、ナタネ油、ゴマ油、カカオ脂およびヤシ油の還元において得られるワックス様脂肪アルコール分である。しかし、ワックス様の合成アルコール、例えばZiegler合成からの直鎖の偶数の脂肪アルコール(Alfols)またはオキソ合成からの部分的に分岐したアルコール(Dobanols)を用いることもできる。例えば、Cognis Deutschland GmbH & Co. KGからLanette 16(C16アルコール)、Lanette 14(C14アルコール)、Lanette O(C16/18アルコール)およびLanette 22(C18/22アルコール)の名称で市販されているC14-18脂肪アルコールが、本発明の目的に適している。脂肪アルコールは、トリグリセリドよりも肌の上で乾いた感触を組成物に与え、それゆえに好ましく用いられる。脂肪アルコールは、ワックス分散液を基準として、0.1〜45重量%、好ましくは1〜25重量%、特に5〜20重量%の量で存在することができる。
【0044】
14-40脂肪酸またはその混合物を、さらなるワックス様脂質成分として用いることができる。これらとしては、例えば、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、エルカ酸およびエレオステアリン酸ならびに置換された脂肪酸、例えば12-ヒドロキシステアリン酸、ならびに、脂肪酸アミドまたは脂肪酸モノエタノールアミドが挙げられる。このリストは単なる例示を意味し、限定のためのものではない。
【0045】
ワックス
本発明に従ってさらなる脂質成分として用いるのに適する他のワックスは、例えば、天然の植物性ワックス、例えばカンデリラワックス、カルナウバワックス、木蝋、アフリカハネガヤワックス、コルクワックス、グアルマワックス、コメヌカ油ワックス、サトウキビワックス、オーリキュリーワックス、モンタンワックス、ヒマワリワックス、果実ワックス、例えばオレンジワックス、レモンワックス、グレープフルーツワックス、ヤマモモワックス、ならびに、動物性ワックス、例えば、蜜蝋、セラック蝋、鯨蝋、羊毛脂および尾羽脂肪である。本発明によれば、水素化ワックスまたは硬化ワックスを用いることが有利となることもある。本発明に従って用いることができる天然ワックスとしては、無機ワックス、例えばセレシンおよびオゾケライト、または石油化学系ワックス、例えばワセリン、パラフィンワックスおよびマイクロワックスも挙げられる。他の適するワックス成分は、化学的に修飾されたワックス、より具体的には、ハードワックス、例えばモンタンエステルワックス、サソルワックスおよび水素化ホホバワックスなどである。本発明に従って用いることができる合成ワックスとしては、例えば、ワックス様ポリアルキレンワックスおよびワックス様ポリエチレングリコールワックスが挙げられる。植物性ワックスが本発明の目的に好ましい。
【0046】
また、ワックス成分を、飽和および/または不飽和の分岐および/または未分岐のアルカンカルボン酸と、飽和および/または不飽和の分岐および/または未分岐のアルコールとのエステルの群から、芳香族カルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸およびヒドロキシカルボン酸(例えば12-ヒドロキシステアリン酸)と、飽和および/または不飽和の分岐および/または未分岐のアルコールとのエステルの群から、さらには長鎖ヒドロキシカルボン酸のラクチドの群から選択することもできる。これらのワックス成分としては、例えば、C16-40アルキルステアレート、C20-40アルキルステアレート(例えばKesterwachs K82H)、ダイマー酸のC20-40ジアルキルエステル、C18-38アルキルヒドロキシステアロイルステアレートまたはC20-40アルキルエルケートが挙げられる。有利に用いることができる他の適するワックス成分は、C30-50アルキル蜜蝋、クエン酸トリステアリル、クエン酸トリイソステアリル、ヘプタン酸ステアリル、オクタン酸ステアリル、クエン酸トリラウリル、エチレングリコールジパルミテート、エチレングリコールジステアレート、エチレングリコールジ(12-ヒドロキシステアレート)、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸パルミチル、ベヘン酸ステアリル、セチルエステル、ベヘン酸セテアリルおよびベヘン酸ベヘニルである。とりわけ乳酸ミリスチル(Cegesoft C17)が、皮膚ケア用ワイプに特に適している。その理由は、肌への密着性が高いためである。シリコーンワックスも有利に用いることができる。
【0047】
本発明の好ましい態様においては、C12-24脂肪アルコール、グリセロールとC12-24脂肪酸とのモノエステル、ジエステルもしくはトリエステル、エチレングリコールとC12-24脂肪酸とのモノエステルもしくはジエステル、またはこれらの混合物から選択される少なくとも1種の他の脂質成分が存在する。C12-24脂肪アルコール、または少なくとも1種のC12-24脂肪アルコールと、グリセロールもしくはエチレングリコールとC12-24脂肪酸とのモノエステルもしくはジエステルとの組合せが、本発明の目的に特に好ましい。
【0048】
12-24脂肪酸またはC12-24ヒドロキシ脂肪酸のアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩ならびにアルミニウム塩の少量を、必要に応じてさらなる稠度因子として用いてもよく、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、とりわけステアリン酸亜鉛が好ましい。
【0049】
油成分
別の好ましい態様においては、本発明による組成物は少なくとも1種の油成分を含む。本発明において油成分とは、20℃で液体であって、25℃で水と混和しない物質または物質の混合物である。このような物質としては、請求項1に記載のジアルキル(ジアルキレン)エーテル、ジアルキル(ジアルキレン)カーボネート、ジカルボン酸またはヒドロキシ脂肪アルコール以外の任意の油成分、即ち、例えば20℃で液体のグリセリド、炭化水素、シリコーン油、エステル油、またはこれらの混合物が挙げられる。この油成分は、本発明による組成物中にワックス分散液を基準として、通常は30重量%未満、好ましくは0.5〜10重量%、特に0.5〜5重量%の量で存在する。導入される油の量は、ワックス相の融点が25℃を超えなければならないという条件によって制限される。このような最適化は、専門家にとって通常の最適化の範疇である。
【0050】
本発明に従って油成分として適するグリセリドとしては、20℃で液体のグリセロールの脂肪酸エステルが挙げられ、これは天然起源(動物性および植物性)または合成起源であってよい。グリセリドはモノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドに分けられる。これらは、製造有機化学の関連の方法によって得られる既知の物質である。合成グリセリドは、通常、対応するトリグリセリドとグリセロールとのエステル交換によって、または脂肪酸の選択的なエステル化によって得られる、モノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドの混合物である。本発明の目的に好ましい脂肪酸はC6-24脂肪酸であり、これらの中でC6-18脂肪酸、特にC8-18脂肪酸が好ましい。脂肪酸は、分岐鎖または未分岐鎖、飽和または不飽和であってよい。本発明によれば、20℃で液体の植物起源のグリセリドを用いるのが好ましく、特に、C8-18脂肪酸とのジグリセリドおよびトリグリセリドが大部分を占める混合物であるヤシ油グリセリドを用いるのが好ましい。これは、Cognis Deutschland GmbHからMyritol 331の名称で市販されている。また、適用後に特に好ましいケア特性を組成物に付与するMyritol 312(C8/10トリグリセリド)、Cegesoft PS 17、Cegesoft GPO、Cegesoft PFOおよびCegesoft PS 6を用いるのも好ましい。
【0051】
他の適する油成分は、6〜18個の炭素原子、好ましくは8〜10個の炭素原子を含む脂肪アルコールに基づく20℃で液体のゲルベアルコールであり、例えばEutanol Gなどである。直鎖の飽和または不飽和のC6-22脂肪酸と、直鎖または分岐鎖の飽和または不飽和のC6-22脂肪アルコールとの液体エステル、または分岐鎖のC6-13カルボン酸と、直鎖または分岐鎖の飽和または不飽和のC6-22脂肪アルコールとのエステルも、本発明に従って油成分として用いることができる。
【0052】
液体ワックスエステルの例としては、次の典型的な代表例が挙げられる:オレイン酸デシル(Cetiol V)、ヤシ油カプリレート/カプレート(Cetiol SN)、ラウリン酸ヘキシル(Cetiol A)、イソステアリン酸ミリスチル、オレイン酸ミリスチル、イソステアリン酸セチル、オレイン酸セチル、イソステアリン酸ステアリル、オレイン酸ステアリル、ミリスチン酸イソステアリル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸イソステアリル、イソステアリン酸イソステアリル、オレイン酸イソステアリル、ミリスチン酸オレイル、イソステアリン酸オレイル、オレイン酸オレイル、エルカ酸オレイル(Cetiol J 600)、イソステアリン酸ベヘニル、イソステアリン酸エルシル、オレイン酸エルシル。また適するのは、直鎖C6-22脂肪酸と分岐鎖アルコール、より具体的には2-エチルヘキサノール(Cetiol 868)とのエステル、分岐鎖C6-22脂肪酸と直鎖アルコールとのエステル、C18-38アルキルヒドロキシカルボン酸と直鎖または分岐鎖C6-22脂肪アルコールとのエステル、直鎖および/または分岐鎖の脂肪酸と多価アルコール(例えばプロピレングリコール、ダイマージオールまたはトリマートリオール)および/またはゲルベアルコールとのエステル、ならびに、C6-22脂肪アルコールおよび/またはゲルベアルコールと芳香族カルボン酸、より具体的には安息香酸とのエステル、C2-12ジカルボン酸と直鎖または分岐鎖の1〜22個の炭素原子を含むアルコールとのエステル(例えばマレイン酸ジオクチル)である。
【0053】
本発明に従って用いるのに適する他の油成分は、20℃で液体である天然および合成の脂肪族および/またはナフテン系の炭化水素であり、例えばスクアラン、スクアレン、パラフィン油、イソヘキサデカン、イソエイコサンまたはポリデカンおよびジアルキルシクロヘキサン(Cetiol)である。
【0054】
本発明によれば、他の適する油成分は液体シリコーン油である。これらとしては、例えば、ジアルキルシロキサンおよびアルキルアリールシロキサン、例えばシクロメチコーン、ジメチルポリシロキサンおよびメチルフェニルポリシロキサンならびにそのアルコキシル化および第四級化類似体が挙げられる。適する不揮発性シリコーン油は、例えば、ポリアルキルシロキサン、ポリアルキルアリールシロキサンおよびポリエーテルシロキサンコポリマーである。シリコーン化合物の添加によって、肌上での特に軽快な感触が付与される。
【0055】
好ましい態様においては、本発明によるワックス分散液は、ワックス分散液の全組成を基準として、
(a1)0.1〜30重量%の、C14-30ジアルキル(ジアルキレン)エーテル、C14-30ジアルキル(ジアルキレン)カーボネート、C9-34ジカルボン酸もしくはC12-30ヒドロキシ脂肪アルコールもしくはこれら物質の混合物から選択される少なくとも1種の油成分またはワックス成分、
(a2)0.1〜10重量%の少なくとも1種の油、
(a3)0.1〜10重量%の少なくとも1種の非イオン性乳化剤、
(a4)0.1〜40重量%の少なくとも1種の他のワックス様脂質成分、
を含む1〜50重量%のワックス相、および、ワックス分散液の全組成を基準として、
(b)50〜99重量%の水相、
を含む。
【0056】
ポリマー
別の好ましい態様においては、本発明による組成物は、少なくとも1種のポリマーを、好ましくは水相中に含む。このポリマーは、分散液の粒子の微細さのさらなる改善に寄与する。ポリマーは、ワックス分散液を基準として、好ましくは0.01〜5重量%、より好ましくは0.05〜3重量%、最も好ましくは0.1〜2重量%の量で存在する。
【0057】
適するアニオン性ポリマー、双性イオン性ポリマー、両性ポリマーおよび非イオン性ポリマーは、例えば、酢酸ビニル/クロトン酸コポリマー、ビニルピロリドン/アクリル酸ビニルコポリマー、酢酸ビニル/マレイン酸ブチル/アクリル酸イソボルニルコポリマー、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸コポリマーおよびこれらのエステル、未架橋およびポリオール架橋ポリアクリル酸、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド/アクリレートコポリマー、オクチルアクリルアミド/メタクリル酸メチル/メタクリル酸tert-ブチルアミノエチル/メタクリル酸2-ヒドロキシプロピルコポリマー、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、ビニルピロリドン/メタクリル酸ジメチルアミノエチル/ビニルカプロラクタムターポリマーであり、必要に応じて、誘導体化されたセルロースエーテルおよびシリコーンである。多糖類、特にキサンタンゴム、グアール、寒天、アルギン酸塩およびチロース、カルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリレート(例えばNoveon社のCarbopolsまたは3v/Sigma社のSynthalens)、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコールならびに比較的高分子量のポリエチレングリコール脂肪酸モノエステルおよびジエステルが、本発明の目的に適している。
【0058】
適するカチオン性ポリマーは、例えば、カチオン性セルロース誘導体、例えばPolymer JR 400という名称でAmerchol社から入手可能な第四級化ヒドロキシエチルセルロースなど、カチオン性デンプン、ジアリルアンモニウム塩とアクリルアミドとのコポリマー、第四級化ビニルピロリドン/ビニルイミダゾールポリマー、例えばLuviquat(BASF社)など、ポリグリコールとアミンとの縮合生成物、第四級化コラーゲンポリペプチド、例えばラウリルジモニウムヒドロキシプロピル加水分解コラーゲン(Lamequat L、Gruenau社)など、第四級化コムギポリペプチド、ポリエチレンイミン、カチオン性シリコーンポリマー、例えばアモジメチコーンなど、アジピン酸とジメチルアミノヒドロキシプロピルジエチレントリアミンとのコポリマー(Cartaretine、Sandoz社)、アクリル酸とジメチルジアリルアンモニウムクロリドとのコポリマー(Merquat 550、Chemviron社)、ポリアミノポリアミド、カチオン性キチン誘導体、例えば、第四級化キトサン(必要に応じて微結晶分布している)など、ジハロアルキル(例えばジブロモブタン)とビス-ジアルキルアミン(例えばビス-ジメチルアミノ-1,3-プロパン)との縮合生成物、カチオン性グアールゴム、例えば、Celanese社のJaguar CBS、Jaguar C-17、Jaguar C-16など、第四級化アンモニウム塩ポリマー、例えば、Miranol社のMirapol A-15、Mirapol AD-1、Mirapol AZ-1などである。
【0059】
水に可溶性のポリマーまたは水で膨潤するポリマー、特に非イオン性およびアニオン性ポリマーが本発明の目的に好ましい。ポリアクリレート、多糖類、ポリアクリルアミドまたはこれらの混合物からなる群より選択されるポリマーが特に好ましい。
【0060】
活性成分
本発明による組成物の好ましい態様は、少なくとも1種の活性成分をさらに含む。本発明における活性成分とは、肌の保護および皮膚障壁の強化に寄与し、刺激鎮静作用、抗菌作用または肌保湿作用を有する物質であると理解される。本発明による好ましい活性成分は、肌の炎症過程または赤化した傷んだ肌を鎮静化する成分であり、例えば亜鉛化合物および硫黄などを含む。この活性成分は、その種類に応じて、通常は0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜7重量%、特に1〜5重量%の量で存在する。油溶性の活性成分が本発明の目的に好ましいが、限定量の水溶性活性成分を乳化剤および/または可溶化剤の添加を介して導入することもできる。この活性成分は、相互に組合せて存在させることができる。
【0061】
さらに適するのは、傷治癒/刺激鎮静物質の相乗的な組合せを含むことが多い植物抽出物である。これらの抽出物は、通常、全植物の抽出によって得られる。しかし、個々の場合においては、植物の花および/または葉のみから抽出物を調製するのが好ましいこともある。
【0062】
本発明によれば、とりわけ、カモミール、アロエ、ハマメリス、ライムの花、セイヨウトチノキ、緑茶、カシの樹皮、イラクサ、ホップ、ゴボウの根、ホースウィロー、サンザシ、アーモンド、松葉、ビャクダン、ビャクシン、ココナツ、マンゴー、アンズ、レモン、コムギ、キウイ、メロン、オレンジ、グレープフルーツ、セージ、ローズマリー、カバノキ、ゼニアオイ、ハナタネツケバナ、ヨウシュイブキジャコウソウ、ノコギリソウ、タイム、コウスイハッカ、レストハロー、フキタンポポ、ハイビスカス、メリステム、チョウセンニンジンおよびショウガの根の抽出物が適している。
【0063】
記載した植物抽出物を調製するのに適する抽出用溶媒は、水、アルコールおよびこれらの混合物である。アルコールの中では低級アルコール、例えばエタノールおよびイソプロパノール、特に多価アルコール、例えばエチレングリコールおよびプロピレングリコールが、単独の抽出用溶媒としておよび水との混合物の形態の両方で好ましく用いられる。1:10〜10:1の比率の水/プロピレングリコールに基づく植物抽出物が特に適することがわかった。
【0064】
抗菌剤/生物起源の活性成分
微生物阻害剤の典型的な例は、特にグラム陽性細菌に対して作用する防腐剤であり、例えば、2,4,4'-トリクロロ-2'-ヒドロキシジフェニルエーテル、クロルヘキシジン[1,6-ジ-(4-クロロフェニル-ビグアニド)-ヘキサン]またはTCC(3,4,4'-トリクロロカルバニリド)などが挙げられる。多くの香油および精油も抗菌剤の性質を有する。典型的な例は、チョウジ、ミントおよびタイム油に含まれる活性物質オイゲノール、メントールおよびチモールである。重要な天然の脱臭剤は、ライム花油に存在し、スズランの香りがするテルペンアルコールであるファルネソール(3,7,11-トリメチル-2,6,10-ドデカトリエン-1-オール)である。グリセロールモノラウレート、グリセロールステアレート、グリセロールオレエートおよびグリセロールジオレエートも、微生物阻害活性を示すことがわかっており、これらを、特に穏やかかつ無害であることから、乳幼児衛生および乳幼児ケアに特に有利に用いることができる。本発明における生物起源の物質とは、例えば、トコフェロール、酢酸トコフェロール、パルミチン酸トコフェロール、アスコルビン酸、デオキシリボ核酸、レチノール、ビサボロール、アラントイン、フィタントリオール、パンテノール、α-ヒドロキシカルボン酸、アミノ酸、セラミド、偽セラミド、精油、植物抽出物およびビタミン複合体である。本発明によれば、好ましい活性成分は、油溶性のビタミンおよびビタミン前駆体である。トコフェロール(ビタミンE)およびトコフェロール誘導体が最も好ましい。
【0065】
微生物阻害剤の含有割合は、ワックス分散液を基準として、通常は約0.1〜2重量%である。グリセロールエステルを、比較的多量に用いてもよい(上記を参照)。
【0066】
保湿剤/肌用水分調節剤
別の好ましい態様においては、本発明による組成物は、少なくとも1種の保湿剤をも含む。この活性成分は、組成物の感覚特性の改善に寄与し、肌の水分レベルの調節に役立つ。さらに、ワイプにおける組成物の浸透挙動の改善に寄与することもできる。この保湿剤は、ワックス分散液を基準として、通常は0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜10重量%、特に0.5〜5重量%の量で存在する。
【0067】
本発明によれば、適する保湿剤は、特にアミノ酸、ピロリドンカルボン酸、乳酸およびこれらの塩、ラクチトール、尿素および尿素誘導体、尿酸、グルコサミン、クレアチニン、コラーゲンの分解生成物、キトサンまたはキトサンの塩/誘導体であり、とりわけ、ポリオールおよびポリオール誘導体(例えば、グリセロール、ジグリセロール、トリグリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、エリトリトール、1,2,6-ヘキサントリオール、ポリエチレングリコール、例えば、PEG-4、PEG-6、PEG-7、PEG-8、PEG-9、PEG-10、PEG-12、PEG-14、PEG-16、PEG-18、PEG-20)、糖および糖誘導体(特にフルクトース、グルコース、マルトース、マルチトール、マンニトール、イノシトール、ソルビトール、ソルビチルシランジオール、スクロース、トレハロース、キシロース、キシリトール、グルクロン酸およびその塩)、エトキシル化ソルビトール(Sorbeth-6、Sorbeth-20、Sorbeth-30、Sorbeth-40)、ハチミツおよび水素化ハチミツ、水素化デンプン加水分解物ならびに水素化コムギタンパク質およびPEG20-アセテートコポリマーの混合物である。本発明によれば、特に好ましい保湿剤はグリセロール、ジグリセロールおよびトリグリセロールである。
【0068】
方法
また、本発明は、平均粒子径が0.5〜100μmであるワックス分散液の製造方法であって、水相を含むワックス相の予備的なエマルジョンを調製し、ワックスの溶融範囲を超える温度(通常は40〜90℃を超える温度)を有する得られた熱い予備的なエマルジョンを、1〜30℃の温度を有する冷たいポリマー含有の水相に導入することを特徴とする方法に関する。水相の温度は25℃以下が好ましく、5〜25℃の温度が特に好ましい。この冷たい水相の温度は、「より温かい」予備的エマルジョンの添加中に、用いられるワックスの溶融範囲に到達すべきではなく、それゆえに、相応に冷却されるべきである。ワックス成分は、上記のワックス成分のいずれかから選択することができる。
【0069】
ポリマーは、水に可溶性であるかまたは水で膨潤するのが好ましい。このポリマーは、長期貯蔵したときであっても分離しない極めて微細な液滴の安定なワックス分散液が得られることを可能にする。好ましい態様においては、予備的なエマルジョンもポリマーを含む。適するポリマーは既に記載されている(上記を参照)。本方法の別の好ましい態様においては、ポリマーは、ポリアクリレート、多糖類、ポリアクリルアミドまたはこれら物質の混合物からなる群より選択される。
【0070】
専門家には周知である通常の方法のいずれかによって、「熱い」予備的なエマルジョンを「冷たい」水相に導入する。特別に微細な液滴を得るために、この予備的なエマルジョンを、水相に導入する前に、少なくとも1回ホモジナイズするのが好ましい。このホモジナイズを、例えば、高圧ホモジナイズとして行うことができる。別の好ましい態様においては、この予備的なエマルジョンを、水相に導入する前に、熱交換器において好ましくは50℃以下の温度まで冷却する。この予備的なエマルジョンを、圧力下にノズルを経由して水相に噴霧するのが好ましい。正確な圧力条件は、特定の装置に応じて調節する。
【0071】
本方法の別の好ましい態様においては、ワックス相は、ジアルキル(ジアルキレン)エーテル、ジアルキル(ジアルキレン)カーボネート、ジカルボン酸もしくはヒドロキシ脂肪アルコールまたはこれら物質の混合物から選択される少なくとも1種の油成分またはワックス成分と少なくとも1種の乳化剤とを含む。これらの物質についても、初めの部分に詳細に開示した。ワックスの融点は25℃を超えるのが好ましい。
【0072】
本発明によれば、使用量は、本発明による方法が、全組成を基準として(a)1〜75重量%のワックス相および(b)25〜99重量%の水相を含むワックス分散液を与えるように選択するのが好ましい。
【0073】
他の助剤および添加剤
本発明による組成物は、その意図する用途に応じて、多数の他の助剤および添加剤を含むことができる。これらとしては、例えば、過脂肪化剤、他の増粘剤、粉剤、生物起源の物質、脱臭剤、膜形成剤、UV保護因子、酸化防止剤、ヒドロトロープ、防腐剤、防虫剤、セルフタンニング剤、可溶化剤、香油、染料などが挙げられる。
【0074】
好ましいUV保護因子(例えば日焼け止めワイプのための因子)は、ベンゾフェノンの誘導体であり、例えば、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-4'-メチルベンゾフェノンおよび/または2,2'-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノンである。
【0075】
好ましい酸化防止剤は、カロチノイド、カロチン(例えば、α-カロチン、β-カロチン、リコピン)およびこれらの誘導体、α-ヒドロキシ酸(例えば、クエン酸、乳酸、リンゴ酸)、EDTA、ビタミンCおよび誘導体(例えば、パルミチン酸アスコルビル、リン酸アスコルビルMg、酢酸アスコルビル)、トコフェロールおよび誘導体(例えばビタミンEアセテート)、ブチルヒドロキシトルエンならびにブチルヒドロキシアニソールである。
【実施例】
【0076】
製造方法
1,000kgプラントにおけるワックス分散液の製造
ジステアリルカーボネート(20kg)、ジステアリルエーテル(20kg)、Lorol C12(50kg)、Lanette 14(20kg)、Lanette 16(20kg)、Lanette 18(10kg)、パラフィン油 perl.DAB(20kg)、乳化剤Eumulgin B2の一部(3.0kg)、Dehymuls PGPH(1.0kg)、ポリマーSepigel 305の一部(1.0kg)および脱イオン水の一部(430.0kg)を、加熱可能な撹拌タンクリアクター1(3m)中に導入した。次いで、このリアクターを、用いるワックスの融点よりも高温(この場合は約80〜90℃)に加熱し、均一に分散した予備的なエマルジョンが得られるまで、激しく撹拌した(プロペラ型スターラーで約200rpm)。次いで、この予備的なエマルジョンを、撹拌タンクリアクター1から、約2バールの圧力を生じさせる遠心力ポンプによりSupratonホモジナイザーを経由して送り出した。最初に、予備的なエマルジョンを約30分間循環させた。即ち、遠心力ポンプの後に、Supratonホモジナイザー(製造元:Supraton)を経由してポンプ送りし、次いで撹拌タンクリアクター1に戻した。30分間の循環の後、予備的なエマルジョンを、撹拌タンクリアクター1に戻すのではなく、プレート型熱交換器(W.Schmidt GmbH)を経由してSupratonからポンプ送りした。このプレート型熱交換器を、冷水の循環(約7℃)により冷却した。このようにして、ホモジナイズした予備的なエマルジョンを、プレート型熱交換器により約50℃まで冷却し、次いで約2バールの圧力下に撹拌タンクリアクター2に導入した。予備的なエマルジョンを、液体のレベルより下に位置するノズルから、即ち空気が導入されないようにして、撹拌タンクリアクターに導入した。
【0077】
残りの脱イオン水(396.0kg)、溶解させた非イオン性乳化剤Eumulgin B2の残り(1.0kg)およびポリマーSepigel 305の残り(3.0kg)を、撹拌タンクリアクター2(1m)、即ち回収用容器に導入し、約5℃まで冷却した。25℃以下の温度が予備的なエマルジョンの導入に対して保証されるように、予備的なエマルジョンを、効率的に撹拌しながら(プロペラ型スターラー、約120rpm)および撹拌タンクリアクター2の外部ジャケット冷却を行いながら添加しなければならない。次いで、フェノキシエタノール(5.0kg)を、防腐剤として激しく撹拌しながら添加した。
【0078】
このワックス分散液の粘度は、ブルックフィールドRVF、スピンドル5、10rpmで測定したときに、23℃で30,000mPa・sであった。粒子径の測定を、フラウンホーファー回折(Mastersizer 2000、Malvern Instruments Ltd.)によって行い、10マイクロメートルにてd(0.5)および30マイクロメートルにてd(0.9)の粒子径分布を得た。即ち、分散した物質の50%が10マイクロメートルより小さく、90%が30マイクロメートルより小さかった。
【0079】
その性能特性を評価するために、本発明による組成物の安定性の試験を行い、その感覚特性を査定した。55g/mの重量の市販のワイプ(基材)を、本発明によるワックス分散液により165g/mの量でコーティングした。本発明による組成物は、既知の組成物よりも有利に適用することができ、感覚特性および貯蔵安定性の点で既知の組成物よりも優れている。
【0080】
以下の実施例に記載した量は、特に指定のない限り、全体(ワックス分散液)としての組成物中の市販物質の重量%に基づいている。実施例1〜5は本発明に対応する配合物であり、C1は比較例である。
【0081】
【表1】

【0082】
1) Cegesoft HF 52
INCI:水素化植物油
製造元:Cognis Deutschland GmbH & Co. KG
2) Cegesoft PS 6
INCI:植物油
製造元:Cognis Deutschland GmbH & Co. KG
3) Cegesoft SH
INCI:Shorea Stenoptera
製造元:Cognis Deutschland GmbH & Co. KG
4) Cetiol CC
INCI:ジカプリリルカーボネート
製造元:Cognis Deutschland GmbH & Co. KG
5) Cetiol OE
INCI:ジカプリリルエーテル
製造元:Cognis Deutschland GmbH & Co. KG
6) Cetiol 868
INCI:オクチルステアレート
製造元:Cognis Deutschland GmbH & Co. KG
7) Copherol F 1300
INCI:トコフェロール
製造元:Cognis Deutschland GmbH & Co. KG
8) Cosmedia SP
INCI:ポリアクリル酸ナトリウム
製造元:Cognis Deutschland GmbH & Co. KG
9) Cutina AGS
INCI:グリコールジステアレート
製造元:Cognis Deutschland GmbH & Co. KG
10) Cutina MD
INCI:グリセリルステアレート
製造元:Cognis Deutschland GmbH & Co. KG
11) Dehymuls PGPH
INCI:ポリグリセリル-2 ジポリヒドロキシステアレート
製造元:Cognis Deutschland GmbH & Co. KG
12) Emulgade PL 68/50
INCI:セテアリルグルコシド、セテアリルアルコール
製造元:Cognis Deutschland GmbH & Co. KG
13) Eumulgin B1
INCI:Ceteareth-12
製造元:Cognis Deutschland GmbH & Co. KG
14) Eumulgin B2
INCI:Ceteareth-20
製造元:Cognis Deutschland GmbH & Co. KG
15) Eumlugin VL 75
INCI:ラウリルグルコシド、ポリグリセリル-2 ジポリヒドロキシステアレート、グリセリン、水;水中で約75%の活性物質
製造元:Cognis Deutschland GmbH & Co. KG
【0083】
16) Hibiscin HP LS 9198
INCI:水およびHibiscus esculentus種子抽出物
製造元:Laboratoires Serobiologiques
17) Hispagel 200
INCI:グリセリン、グリセリルポリアクリレート
製造元:Cognis Iberia
18) Jaguar HP-105
INCI:ヒドロキシプロピルグアール
製造元:Rhodia
19) Lanette 14
INCI:ミリスチルアルコール
製造元:Cognis Deutschland GmbH & Co. KG
20) Lanette 16
INCI:セチルアルコール
製造元:Cognis Deutschland GmbH & Co. KG
21) Lanette 18
INCI:ステアリルアルコール
製造元:Cognis Deutschland GmbH & Co. KG
22) Lanette E
INCI:セテアリル硫酸ナトリウム
製造元:Cognis Deutschland GmbH & Co. KG
23) Lanette O
INCI:セテアリルアルコール
製造元:Cognis Deutschland GmbH & Co. KG
24) Lorol C12
INCI:ラウリルアルコール
製造元:Cognis Deutschland GmbH & Co. KG
25) Myritol 331
INCI:ヤシ油グリセリド
製造元:Cognis Deutschland GmbH & Co. KG
26) Natrosol 250 HR
INCI:ヒドロキシエチルセルロース
製造元:Hercules Inc.
27) Neo Heliopan, Type BB
INCI:ベンゾフェノン-3
製造元:Haarman & Reimer GmbH
28) Novata B
INCI:ヤシ油グリセリド
製造元:Cognis Deutschland GmbH & Co. KG
29) Sepigel 305
INCI:ポリアクリルアミド、C13-C14イソパラフィン、Laureth-7
製造元:SEPPIC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)25℃を超える融点を有するワックス相であって、ジアルキル(ジアルキレン)エーテル、ジアルキル(ジアルキレン)カーボネート、ジカルボン酸もしくはヒドロキシ脂肪アルコールもしくはこれら物質の混合物から選択される少なくとも1種の油成分またはワックス成分と、少なくとも1種の乳化剤とを含むワックス相、および
(b)水相、
を含む、0.5〜100μmの平均粒子径を有するワックス分散液。
【請求項2】
全組成を基準として、
(a)1〜75重量%の、ジアルキル(ジアルキレン)エーテル、ジアルキル(ジアルキレン)カーボネート、ジカルボン酸もしくはヒドロキシ脂肪アルコールもしくはこれら物質の混合物から選択される少なくとも1種の油成分またはワックス成分と、少なくとも1種の乳化剤とを含むワックス相、および
(b)25〜99重量%の水相、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載のワックス分散液。
【請求項3】
ワックス相が、非イオン性乳化剤の群から選択される少なくとも1種の乳化剤を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のワックス分散液。
【請求項4】
ワックス相が約35〜50℃で溶融することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のワックス分散液。
【請求項5】
ワックス分散液が、平均粒子径1〜50μm、好ましくは5〜30μmの粒子を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のワックス分散液。
【請求項6】
ワックス相が、少なくとも1種の他のワックス様脂質成分を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のワックス分散液。
【請求項7】
他のワックス様脂質成分が、C12-24脂肪アルコール、グリセロールとC12-24脂肪酸のモノ、ジもしくはトリエステル、およびエチレングリコールとC12-24脂肪酸のモノもしくはジエステルまたはこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項6に記載のワックス分散液。
【請求項8】
ワックス相が、少なくとも1種の他の油成分をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載のワックス分散液。
【請求項9】
ワックス分散液の全組成を基準として、
(a1)0.1〜30重量%の、C14-30ジアルキル(ジアルキレン)エーテル、C14-30ジアルキル(ジアルキレン)カーボネート、C9-34ジカルボン酸もしくはC12-30ヒドロキシ脂肪アルコールもしくはこれら物質の混合物から選択される少なくとも1種の油成分またはワックス成分、
(a2)0.1〜10重量%の少なくとも1種の油、
(a3)0.1〜10重量%の少なくとも1種の非イオン性乳化剤、
(a4)0.1〜40重量%の少なくとも1種の他のワックス様脂質成分、
を含む1〜50重量%のワックス相、および、ワックス分散液の全組成を基準として、
(b)50〜99重量%の水相、
を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のワックス分散液。
【請求項10】
少なくとも1種のポリマーを、好ましくはワックス分散液を基準として0.01〜5.0重量%の量でさらに含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載のワックス分散液。
【請求項11】
ポリマーが、ポリアクリレート、多糖類、ポリアクリルアミドまたはこれらポリマーの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載のワックス分散液。
【請求項12】
ワックス相が、少なくとも1種の活性成分をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載のワックス分散液。
【請求項13】
少なくとも1種の保湿剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載のワックス分散液。
【請求項14】
平均粒子径が0.5〜100μmであるワックス分散液の製造方法であって、水相を含むワックス相の予備的なエマルジョンを調製し、ワックスの溶融範囲を超える温度の得られた予備的なエマルジョンを、1〜30℃の温度のポリマーを含む水相に、圧力下に導入することを特徴とする方法。
【請求項15】
予備的なエマルジョンを、水相に導入する前に、中間工程において少なくとも1回ホモジナイズすることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
予備的なエマルジョンを、水相に導入する前に、熱交換器で冷却することを特徴とする、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
予備的なエマルジョンもポリマーを含むことを特徴とする、請求項14〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
ポリマーが、ポリアクリレート、多糖類、ポリアクリルアミドまたはこれらポリマーの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項14〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
予備的なエマルジョンを、圧力下にノズルを経由して水相に噴霧することを特徴とする、請求項14〜18のいずれかに記載のワックス分散液の製造方法。
【請求項20】
ワックス相が、ジアルキル(ジアルキレン)エーテル、ジアルキル(ジアルキレン)カーボネート、ジカルボン酸もしくはヒドロキシ脂肪アルコールもしくはこれら物質の混合物から選択される少なくとも1種の油成分またはワックス成分と、少なくとも1種の乳化剤とを含むことを特徴とする、請求項14〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
ワックス相が25℃を超える融点を有することを特徴とする、請求項14〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
得られるワックス分散液が、全組成を基準として、
(a)1〜75重量%のワックス相、および
(b)25〜99重量%の水相、
を含むことを特徴とする、請求項14〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
身体ケア調製物としての、または身体ケア調製物の製造のための、請求項1〜13のいずれかに記載のワックス分散液の使用。

【公表番号】特表2006−516029(P2006−516029A)
【公表日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−566002(P2004−566002)
【出願日】平成15年12月19日(2003.12.19)
【国際出願番号】PCT/EP2003/014596
【国際公開番号】WO2004/062630
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(505066718)コグニス・アイピー・マネージメント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (191)
【氏名又は名称原語表記】Cognis IP Management GmbH
【Fターム(参考)】