説明

ワックス安定製剤

【課題】血小板凝集抑制作用を有する、下記一般式(I)の化合物又はその薬理上許容される塩を含有する、貯蔵安定性の改善された医薬組成物の提供。
【解決手段】(A)下記一般式(I)


を有する化合物又はその薬理上許容される塩及び(B)融点40〜150℃の硬化油、植物性若しくは動物性油脂、高級アルコール、高級脂肪酸、グリセリン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上のワックス状物質を含有する医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
(A)下記式(I)
【化1】

【0002】
を有する化合物又はその薬理上許容される塩及び
(B)ワックス状物質を含有する医薬組成物、並びに、当該医薬組成物及び薬理上許容される添加物を含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
上記式(I)を有する化合物又はその薬理上許容される塩は、血小板凝集抑制作用を有する化合物として知られている(特許文献1又は2)。
【0004】
特許文献2乃至12に、上記式(I)を有する化合物又はその薬理上許容される塩の製剤に使用しうる添加剤が多数例示されており、その一つとしてビーズワックス、ゲイ蝋、ステアリン酸及びショ糖脂肪酸エステルが一行記載されているが、多数の使用しうる添加剤の中の一つとして例示されているにすぎず、具体的に製剤例において使用されていない。さらに当該特許文献には、上記式(I)を有する化合物又はその薬理上許容される塩を含有する医薬組成物にワックス状物質を含有することにより貯蔵安定性が改善されることは、記載も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−41139号公報
【特許文献2】特開2002−145883号公報
【特許文献3】特開平10−310586号公報
【特許文献4】特開2002−255814号公報
【特許文献5】特開2004−51639号公報
【特許文献6】国際公開番号WO2007/114526号パンフレット
【特許文献7】国際公開番号WO2008/069262号パンフレット
【特許文献8】国際公開番号WO2008/072532号パンフレット
【特許文献9】国際公開番号WO2008/072533号パンフレット
【特許文献10】国際公開番号WO2008/072534号パンフレット
【特許文献11】国際公開番号WO2008/072535号パンフレット
【特許文献12】国際公開番号WO2008/108291号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、上記式(I)を有する化合物又はその薬理上許容される塩を含有する、貯蔵安定性に優れた医薬組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、ワックス状物質を含有することにより、上記式(I)を有する化合物又はその薬理上許容される塩を含有する医薬組成物が優れた貯蔵安定性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1) (A)上記式(I)を有する化合物又はその薬理上許容される塩及び(B)ワックス状物質を含有する医薬組成物であり、好適には、
(2) (A)上記式(I)を有する化合物又はその薬理上許容される塩及び(B)ワックス状物質を溶融混合した医薬組成物、
(3) (A)上記式(I)を有する化合物又はその薬理上許容される塩及び(B)ワックス状物質を溶融造粒した医薬組成物、
(4) 式(I)を有する化合物又はその薬理上許容される塩が、下記式(Ia)
【0009】
【化3】

【0010】
を有する化合物である(1)〜(3)のいずれか1つに記載の医薬組成物、
(5) ワックス状物質が、融点40〜150℃のワックス状物質である、(1)〜(4)のいずれか1つに記載の医薬組成物、
(6) ワックス状物質が、硬化油、植物性若しくは動物性油脂、高級アルコール、高級脂肪酸、グリセリン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上である(1)〜(5)のいずれか1項に記載の医薬組成物、
(7) ワックス状物質が、高級アルコール又はグリセリン脂肪酸エステルである(1)〜(5)のいずれか1つに記載の医薬組成物、
(8) ワックス状物質が、ステアリルアルコール又はモノステアリン酸グリセリンである(1)〜(5)のいずれか1つに記載の医薬組成物、
(9) (1)〜(8)のいずれか1つに記載の医薬組成物及び薬理上許容される添加物を含有する医薬組成物、
(10) 医薬組成物が、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤又は錠剤である(1)〜(9)のいずれか1つに記載の医薬組成物、
(11) 医薬組成物が、錠剤である(1)〜(9)のいずれか1つに記載の医薬組成物、
(12) ワックス状物質の配合量が、医薬組成物全量に対して0.2〜52重量%である、(1)〜(11)のいずれか1つに記載の医薬組成物。
(13) ワックス状物質の配合量が、医薬組成物全量に対して0.5〜16重量%である、(1)〜(11)のいずれか1つに記載の医薬組成物、
(14) 上記式(I)を有する化合物又はその薬理上許容される塩及びワックス状物質を溶融混合することを特徴とする、(2)又は(4)〜(13)のいずれか1つに記載の医薬組成物の製造方法、
(15) 上記式(I)を有する化合物又はその薬理上許容される塩及びワックス状物質を溶融造粒することを特徴とする、(3)〜(13)のいずれか1つに記載の医薬組成物の製造方法、
(16) 上記式(I)を有する化合物又はその薬理上許容される塩及びワックス状物質を含有することを特徴とする、(1)〜(13)のいずれか1つに記載の医薬組成物の安定化方法、
(17) 上記式(I)を有する化合物又はその薬理上許容される塩及びワックス状物質を溶融混合することを特徴とする、(2)又は(4)〜(13)のいずれか1つに記載の医薬組成物の安定化方法、及び、
(18) 上記式(I)を有する化合物又はその薬理上許容される塩及びワックス状物質を溶融造粒することを特徴とする、(3)〜(13)のいずれか1つに記載の医薬組成物の安定化方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、上記式(I)を有する化合物又はその薬理上許容される塩を含有する、貯蔵安定性に優れた医薬組成物を提供することが可能となる。
【0012】
本発明の医薬組成物は、例えば、血栓症又は塞栓症(好適には、血栓症)等の治療及び/又は予防(好適には、血栓症の治療薬及び/又は予防薬である)に有効である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の医薬組成物の有効成分である、上記式(I)を有する化合物、すなわち2−アセトキシ−5−(α−シクロプロピルカルボニル−2−フルオロベンジル)−4,5,6,7−テトラヒドロチエノ[3,2−c]ピリジン、又はその薬理上許容される塩は、特開平6−41139号公報又は特開2002−145883号公報に記載されており、製造することができる。
【0014】
本発明の「その薬理上許容される塩」としては、例えば、フッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩若しくはヨウ化水素酸塩のようなハロゲン化水素酸塩;硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩若しくはリン酸塩のような無機酸塩;メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩若しくはエタンスルホン酸塩のような低級アルキルスルホン酸塩;ベンゼンスルホン酸塩若しくはp−トルエンスルホン酸塩のようなアリールスルホン酸塩;酢酸塩、リンゴ酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩若しくはマレイン酸塩のような有機酸塩;又は、グリシン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩、グルタミン酸塩若しくはアスパラギン酸塩のようなアミノ酸塩等を挙げることができ、好適には、ハロゲン化水素酸塩又は有機酸塩であり、更に好適には、塩酸塩又はマレイン酸塩であり、最も好適には、塩酸塩である。
【0015】
式(I)で表される化合物において、ベンジル基のα位は不斉炭素であり、それに基づく光学活性体が存在するが、その異性体及びそれらの混合物も本発明の化合物に包含される。同様に、式(I)で表される化合物の薬理上許容される塩(例えば塩酸塩)の異性体及びそれらの混合物も、本発明の化合物の薬理上許容される塩(例えば塩酸塩)に包含される。
【0016】
本発明のワックス状物質は、融点40〜150℃のものが好ましい。本発明の「ワックス状物質」としては、例えば、硬化ヒマシ油、硬化大豆油、硬化ナタネ油、硬化綿実油のような硬化油;カルナウバロウ、サラシミツロウ、牛脂のような植物性若しくは動物性油脂;ステアリルアルコール、セタノールのような高級アルコール;ステアリン酸、パルミチン酸のような高級脂肪酸;モノステアリン酸グリセリン等のモノ脂肪酸グリセリン、トリ脂肪酸グリセリンのようなグリセリン脂肪酸エステル;又は、ショ糖脂肪酸エステル等を挙げることができ、好適には高級アルコール又はグリセリン脂肪酸エステルであり、より好適にはステアリルアルコール又はモノステアリン酸グリセリンである。本発明においては、1種のワックス状物質を用いることもできるし、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。また、薬物の安定化効果の点から、ワックス状物質の融点は、薬物の融点よりも低いものが好ましい。
【0017】
使用するワックス状物質の配合量は、式(I)を有する化合物又はその薬理上許容される塩とワックス状物質の重量比は、好適には1:0.2〜1:5、より好適には1:0.4〜1:3の範囲である。
【0018】
また、使用するワックス状物質の配合量は、医薬組成物全重量に対して、好適には0.2〜52重量%であり、より好適には0.5〜16重量%である。
【0019】
本発明における溶融混合とは、ワックス状物質を加温融解し、そこに目的の化合物を分散又は溶解させた後、当該分散液又は溶液を用いて一次造粒する方法であり、一次造粒手段としては、噴霧造粒、溶融造粒及び分散液若しくは溶液を冷却固化後粉砕する方法が挙げられる。
【0020】
本発明の医薬組成物は、更に必要に応じて、適宜の薬理学的に許容されるワックス状物質以外の、賦形剤、滑沢剤、結合剤、乳化剤、安定剤、矯味矯臭剤及び/又は崩壊剤等の添加剤を含むことができる。
【0021】
使用される「賦形剤」としては、例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、マンニトール、若しくはソルビトールのような糖誘導体;トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、α−デンプン若しくはデキストリンのようなデンプン誘導体;結晶セルロースのようなセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;又は、プルラン等の有機系賦形剤;或いは、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム若しくはメタケイ酸アルミン酸マグネシウムのようなケイ酸塩誘導体;リン酸水素カルシウムのようなリン酸塩;炭酸カルシウムのような炭酸塩;又は、硫酸カルシウムのような硫酸塩等の無機系賦形剤を挙げることができ、好適には、セルロース誘導体及び糖誘導体から選択される一つ以上の賦形剤であり、更に好適には、乳糖、マンニトールの他の結晶及び結晶セルロースから選択される一つ以上の賦形剤であり、最も好適には、乳糖及び/又は結晶セルロースである。
【0022】
使用される「滑沢剤」としては、例えば、ステアリン酸カルシウム若しくはステアリン酸マグネシウムのようなステアリン酸金属塩;タルク;コロイドシリカ;ホウ酸;アジピン酸;硫酸ナトリウムのような硫酸塩;グリコール;フマル酸ステアリルナトリウム;ショ糖脂肪酸エステル;安息香酸ナトリウム;D,L−ロイシン;ラウリル硫酸ナトリウム若しくはラウリル硫酸マグネシウムのようなラウリル硫酸塩;無水ケイ酸若しくはケイ酸水和物のようなケイ酸類;又は、上記デンプン誘導体等を挙げることができ、好適には、ステアリン酸金属塩である。また、ビーズワックス、ゲイ蝋又はステアリン酸を滑沢剤として使用することもできる。
【0023】
使用される「結合剤」としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、又は、前記賦形剤と同様の化合物等を挙げることができ、好適にはヒドロキシプロピルセルロース又はヒプロメロースである。
【0024】
使用される「乳化剤」としては、例えば、ベントナイト若しくはビーガムのようなコロイド性粘土;水酸化マグネシウム若しくは水酸化アルミニウムのような金属水酸化物;ラウリル硫酸ナトリウム若しくはステアリン酸カルシウムのような陰イオン界面活性剤;塩化ベンザルコニウムのような陽イオン界面活性剤;又は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル若しくはショ糖脂肪酸エステルのような非イオン界面活性剤を挙げることができる。
【0025】
使用される「安定剤」としては、例えば、メチルパラベン若しくはプロピルパラベンのようなパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール若しくはフェニルエチルアルコールのようなアルコール類;塩化ベンザルコニウム;フェノール若しくはクレゾールのようなフェノール類;チメロサール;デヒドロ酢酸;又は、ソルビン酸等を挙げることができる。
【0026】
使用される「矯味矯臭剤」としては、例えば、サッカリンナトリウム若しくはアスパルテームのような甘味料;クエン酸、リンゴ酸若しくは酒石酸のような酸味料;又は、メントール、レモン若しくはオレンジのような香料等を挙げることができる。
【0027】
使用される「崩壊剤」としては、例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム若しくは内部架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムのようなセルロース誘導体;架橋ポリビニルピロリドン;又は、カルボキシメチルスターチ若しくはカルボキシメチルスターチナトリウムのような化学修飾された水溶性高分子類等を挙げることができる。
【0028】
医薬組成物中の上記式(I)を有する化合物又はその薬理上許容される塩の配合量には特に制限はないが、例えば、医薬組成物全重量に対して1.0〜30.0重量%(好適には、1.3〜20.0重量%)配合することが好ましい。
【0029】
また、医薬組成物全量中の添加剤の配合量には特に制限はないが、例えば、医薬組成物全重量に対して、賦形剤を10.0〜93.5重量%(好適には、44.0〜90.0重量%)、滑沢剤を0.5〜5.0重量%(好適には、0.5〜3.0重量%)、結合剤を0.0〜15.0重量%(好適には、2.5〜10.0重量%)、崩壊剤を2.5〜40.0重量%(好適には、5.0〜30.0重量%)配合することが好ましい。
【0030】
本発明の医薬組成物は、例えば、錠剤(舌下錠、口腔内崩壊剤を含む)、カプセル剤(ソフトカプセル、マイクロカプセルを含む)、顆粒剤、細粒剤、散剤、丸剤、チュワブル剤又はトローチ剤等の固形製剤;注射剤;懸濁剤;液剤などが挙げられ、好適には、固形製剤であり、より好適には、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤又は錠剤であり、最も好適には、錠剤である。
【0031】
本発明における製剤の製造方法としては、Powder Technology and Pharmaceutical Process (D. Chulia他,Elservier Science Pub Co(December 1, 1993))のような刊行物に記載されている一般的な方法を用いて製造すればよい。
【0032】
本発明の医薬組成物をコーティングする場合は、例えば、フィルムコーティング装置を用いて行われ、フィルムコーティング基剤としては、例えば、糖衣基剤、水溶性フィルムコーティング基剤、腸溶性フィルムコーティング基剤又は徐放性フィルムコーティング基剤等を挙げることができる。
【0033】
糖衣基剤としては、白糖が用いられ、更に、タルク、沈降炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、ゼラチン、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン及びプルラン等より選ばれる1種または2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0034】
水溶性フィルムコーティング基剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース若しくはカルボキシメチルセルロースナトリウムのようなセルロース誘導体;ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アミノアルキルメタクリレートコポリマー若しくはポリビニルピロリドンのような合成高分子;又は、プルランのような多糖類等を挙げることができる。
【0035】
腸溶性フィルムコーティング基剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース若しくは酢酸フタル酸セルロースのようなセルロース誘導体;(メタ)アクリル酸コポリマーL、(メタ)アクリル酸コポリマーLD若しくは(メタ)アクリル酸コポリマーSのようなアクリル酸誘導体;又は、セラックのような天然物等を挙げることができる。
【0036】
徐放性フィルムコーティング基剤としては、例えば、エチルセルロースのようなセルロース誘導体;又は、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS若しくはアクリル酸エチル・メタクリル酸メチル・共重合体乳濁液のようなアクリル酸誘導体等を挙げることができる。
【0037】
上記コーティング基剤は、その2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。また、さらに必要に応じて、適宜の薬理学的に許容される可塑剤、賦形剤、滑沢剤、隠蔽剤、着色剤及び/又は防腐剤等の添加剤を含むことができる。
【0038】
本発明に使用できる可塑剤の種類は特に限定されず、当業者が適宜選択可能である。そのような可塑剤としては、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン及びソルビトール、グリセリントリアセテート、フタル酸ジエチル及びクエン酸トリエチル、ラウリル酸、ショ糖、デキストロース、ソルビトール、トリアセチン、アセチルトリエチルチトレート、トリエチルチトレート、トリブチルチトレート又はアセチルトリブチルチトレート等を挙げることができる。
【0039】
本発明に使用できる隠蔽剤としては、例えば、酸化チタン等を挙げることができる。
【0040】
本発明に使用できる着色剤としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄又は黄色5号アルミニウムレーキタルク等を挙げることができる。
【0041】
本発明に使用できる防腐剤としては、例えば、パラベン等を挙げることができる。
【0042】
本発明の医薬組成物の有効成分である上記式(I)を有する化合物又はその薬理上許容される塩の投与量は、薬剤の活性、患者の症状、年齢又は体重等の種々の条件により変化し得る。その投与量は、経口投与の場合には、各々、通常は成人に対して1日、下限として0.01mg(好適には、1mg)であり、上限として200mg(好適には、100mg)を投与することができる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例、比較例及び試験例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0044】
なお、実施例及び比較例において使用されている「化合物A」は、下記構造式(Ia)
【化4】

【0045】
を有し、特開2002−145883号公報に記載の方法に準じて製造することができる。
【0046】
(実施例1)
約80℃で融解したステアリルアルコール(322g)に化合物A(138g)を加え、1時間撹拌した。これを室温に冷却することで得られた溶融混合物を粉砕し、溶融粉砕品を得た。溶融粉砕品(22.87g)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(75g)、ヒドロキシプロピルセルロース(37.5g)、乳糖水和物(309.6g)及び結晶セルロース(50g)をV型混合機で30分間混合した。得られた混合末を篩過した後、ステアリン酸マグネシウム(5g)を添加し、再度V型混合機で混合することにより、打錠用混合末を得た。
【0047】
次に得られた混合末をロータリー式打錠機にて、錠剤質量が約100mgになるよう打錠した。得られた素錠に、ヒプロメロース、酸化チタン、タルク及び水からなるコーティング液を、パンコーティング機中で噴霧することにより、化合物Aを含有する錠剤を得た。得られた錠剤について安定性試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0048】
(実施例2)
約70℃で融解したモノステアリン酸グリセリン(90g)に化合物A(45g)及びタルク(15g)を加え、1時間撹拌した。これを室温に冷却することで得られた溶融混合物を粉砕し、溶融粉砕品を得た。溶融粉砕品(22.87g)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(75g)、ヒドロキシプロピルセルロース(37.5g)、乳糖水和物(309.6g)及び結晶セルロース(50g)をV型混合機で30分間混合した。得られた混合末を篩過した後、ステアリン酸マグネシウム(5g)を添加し、再度V型混合機で混合することにより、打錠用混合末を得た。
【0049】
次に得られた混合末をロータリー式打錠機にて、錠剤質量が約100mgになるよう打錠した。得られた素錠に、ヒプロメロース、酸化チタン、タルク及び水からなるコーティング液を、パンコーティング機中で噴霧することにより、化合物Aを含有する錠剤を得た。得られた錠剤について安定性試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0050】
(実施例3)
化合物A(75g)、モノステアリン酸グリセリン(30g)及びタルク(45g)の混合物を約65−70℃で流動層造粒機を用いて溶融造粒した後、目開き300μmの篩で篩過し、溶融造粒品を得た。溶融造粒品(13.72g)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(75g)、ヒドロキシプロピルセルロース(37.5g)、乳糖水和物(322.9g)及び結晶セルロース(50g)をV型混合機で30分間混合した。得られた混合末を篩過した後、ステアリン酸マグネシウム(5g)を添加し、再度V型混合機で混合することにより、打錠用混合末を得た。
【0051】
次に得られた混合末をロータリー式打錠機にて、錠剤質量が約100mgになるよう打錠した。得られた素錠に、ヒプロメロース、酸化チタン、タルク及び水からなるコーティング液を、パンコーティング機中で噴霧することにより、化合物Aを含有する錠剤を得た。得られた錠剤について安定性試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0052】
(比較例1)
化合物A(13.72g)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(150g)、ヒドロキシプロピルセルロース(75g)、乳糖水和物(651.3g)及び結晶セルロース(100g)をV型混合機で30分間混合した。得られた混合末を篩過した後、ステアリン酸マグネシウム(10g)を添加し、再度V型混合機で混合することにより、打錠用混合末を得た。
【0053】
次に得られた混合末をロータリー式打錠機にて、錠剤質量が約100mgになるよう打錠した。得られた素錠に、ヒプロメロース、酸化チタン、タルク及び水からなるコーティング液を、パンコーティング機中で噴霧することにより、化合物Aを含有する錠剤を得た。得られた錠剤について安定性試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0054】
(試験例1)安定性試験
実施例1〜3及び比較例1で得られた錠剤を褐色ガラス瓶に入れ、密閉状態40℃/75%相対湿度下で静置し、6ヶ月経過後に、試験錠剤中の化合物Aの類縁物質を高速液体クロマトグラフィーにより測定し、得られたピークの面積(%)から、類縁物質の総含量(%)を得た。高速液体クロマトグラフィーの測定条件は、次の通りである。
カラム:Synergi 4u MAX−RP 80A(4.6 mmID×150 mm,Phenomenex社製)
移動相A:25 mmol/L リン酸緩衝液(pH 4.0)/アセトニトリル混液(9:1)(V/V)
移動相B:アセトニトリル/水混液(9:1)(V/V)
グラジエント:
時間(分) 0 2 30 37 38 45
移動相A:100 100 0 0 100 100
移動相B: 0 0 100 100 0 0
カラム温度:45℃付近の一定温度
検出波長:210 nm
流量:1.50 mL/分
【0055】
(表1)40℃、75%相対湿度下、6ヶ月経過後の類縁物質の総含量
―――――――――――――――――――――――――――――
試験錠剤 測定時の化合物Aに対する類縁物質の総含量(%)
―――――――――――――――――――――――――――――
実施例1 2.16
実施例2 2.50
実施例3 2.36
― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―
比較例1 4.96
―――――――――――――――――――――――――――――
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明によれば、上記式(I)を有する化合物又はその薬理上許容される塩、及びワックス状物質を含有する貯蔵安定性の改善された医薬組成物が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(I)
【化1】


を有する化合物又はその薬理上許容される塩及び
(B)ワックス状物質を含有する医薬組成物。
【請求項2】
(A)下記式(I)
【化2】


を有する化合物又はその薬理上許容される塩及び
(B)ワックス状物質を溶融混合した医薬組成物。
【請求項3】
(A)下記式(I)
【化2】


を有する化合物又はその薬理上許容される塩及び
(B)ワックス状物質を溶融造粒した医薬組成物。
【請求項4】
式(I)を有する化合物又はその薬理上許容される塩が、下記式(Ia)
【化4】


を有する化合物である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
ワックス状物質が、融点40〜150℃のワックス状物質である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
ワックス状物質が、硬化油、植物性若しくは動物性油脂、高級アルコール、高級脂肪酸、グリセリン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
ワックス状物質が、高級アルコール又はグリセリン脂肪酸エステルである請求項1乃至5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
ワックス状物質が、ステアリルアルコール又はモノステアリン酸グリセリンである請求項1乃至5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の医薬組成物及び薬理上許容される添加物を含有する医薬組成物。
【請求項10】
医薬組成物が、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤又は錠剤である請求項1乃至9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
医薬組成物が、錠剤である請求項1乃至9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
ワックス状物質の配合量が、医薬組成物全量に対して0.2〜52重量%である、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
ワックス状物質の配合量が、医薬組成物全量に対して0.5〜16重量%である、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の医薬組成物、
【請求項14】
下記式(I)
【化5】


を有する化合物又はその薬理上許容される塩及びワックス状物質を溶融混合することを特徴とする、請求項2又は請求項4乃至13のいずれか1項に記載の医薬組成物の製造方法。
【請求項15】
下記式(I)
【化6】


を有する化合物又はその薬理上許容される塩及びワックス状物質を溶融造粒することを特徴とする、請求項3乃至13のいずれか1項に記載の医薬組成物の製造方法。
【請求項16】
下記式(I)
【化7】


を有する化合物又はその薬理上許容される塩及びワックス状物質を含有することを特徴とする、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の医薬組成物の安定化方法。
【請求項17】
下記式(I)
【化7】


を有する化合物又はその薬理上許容される塩及びワックス状物質を溶融混合することを特徴とする、請求項2又は請求項9乃至13のいずれか1項に記載の医薬組成物の安定化方法。
【請求項18】
下記式(I)
【化8】


を有する化合物又はその薬理上許容される塩及びワックス状物質を溶融造粒することを特徴とする、請求項3乃至13のいずれか1項に記載の医薬組成物の安定化方法。


【公開番号】特開2013−32289(P2013−32289A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−247929(P2009−247929)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(307010166)第一三共株式会社 (196)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】