説明

ワニス組成物、それを用いたプリプレグ及び金属箔張積層板

【課題】本発明は、ドリル加工性の良好な金属箔張積層板及びそれに用いるプリプレグを提供する。
【解決手段】熱硬化性樹脂と無機充填剤を含むワニスをガラス織布またはガラス不織布に含浸、乾燥して半硬化状態としたプリプレグにおいて、該無機充填剤の充填率が前記のワニスの全樹脂成分の40〜70重量%であり、前記無機充填剤の中の50重量%以上が平均粒径0.4〜0.7μmの合成球状シリカであるおよび金属箔張積層板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリプレグ、及びそれを用いた金属箔張積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型・軽量化、高性能化に伴い、それらに用いられているプリント配線板の高多層化、高密度化、配線回路の細線化が進んでいる。このような状況において、多層プリント配線板のスルーホールの小径化が進み、0.2mmφ以下のドリル径でドリル加工されている。しかし、従来の金属箔張積層板では、樹脂組成物/ガラス補強材が内部に不均一に分布しているために、比較的硬度の低い樹脂組成物がえぐれた状態で加工されてしまい、良好なスルホール形状を得ることが出来なかった。また、積層板の内部構造が不均一なために、ドリルの穴位置精度の向上を図るには限界があった。特開平6−188531号公報及び特開平6−216483号公報には電界銅箔の粗面に溶解シリカ或いはシリカ粉末を含む絶縁層が形成された低熱膨張金属箔の開示がある。また、特開平10−212336号公報には特定のシラン化合物で処理したシリカ粉末を1〜10重量部配合したエポキシ樹脂組成物により形成された絶縁抵抗の優れた絶縁層を有するプリプレグ及び積層板の開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−188531号公報
【特許文献2】特開平6−216483号公報
【特許文献3】特開平10−212336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来の技術の問題点を解消し、ドリル加工性の良好な金属箔張積層板及びそれに用いるプリプレグを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、[1]熱硬化性樹脂と無機充填剤を含むワニス組成物において、該無機充填剤が前記ワニス組成物の全樹脂成分の40〜70重量%であり、前記無機充填剤の中の50重量%以上が平均粒径0.4〜0.7μmの合成球状シリカであるワニス組成物である。
[2]熱硬化性樹脂と無機充填剤を含むワニス組成物をガラス織布またはガラス不織布に含浸、乾燥して半硬化状態としたプリプレグにおいて、該無機充填剤が前記ワニス組成物の全樹脂成分の40〜70重量%であり、前記無機充填剤の中の50重量%以上が平均粒径0.4〜0.7μmの合成球状シリカであるプリプレグである。
[3]前記項[2]において、合成球状シリカの含水率が、0.04重量%以下であるプリプレグである。
「4」前記項[2]又は[3]に記載のプリプレグを所定枚数重ね、その主面の片側又は両側に金属箔を配置し加熱加圧して得られる金属箔張積層板である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のプリプレグを積層して得られる金属箔張積層板は、ドリル加工性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明について詳述する。本発明において、熱硬化製樹脂とは特に限定されず、例えばエポキシ樹脂系、ポリイミド樹脂系、トリアジン樹脂系、フェノール樹脂系、メラミン樹脂系、これらの変性系等が用いられる。また、これらの樹脂は2種類以上を併用してもよく、必要に応じて各種の硬化剤、硬化促進剤等を使用し、これらを溶剤溶液として配合しても構わない。例えばエポキシ樹脂を用いる場合には硬化剤としては、従来公知のジシアンジアミド、ジアミノフェニルメタン、ジアミノフェニルスルフォン、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、フェノールノボラックやクレゾールノボラック等の多官能性フェノール等を用いることができる。これら硬化剤は何種類かを併用することもできる。また、硬化促進剤の種類や配合量は、特に制限するものではなく、例えばイミダゾール系化合物、有機リン系化合物、第3級アミン、第4級アンモニウム塩等が用いられ、2種類以上を併用しても良い。
【0008】
本発明の樹脂ワニス中の樹脂成分の総量に対する無機充填剤の充填率が40〜70重量%(以下、wt%という)であり、充填剤のうち50wt%以上が平均粒径0.4〜0.7μmの合成球状シリカであることが好ましい。充填率が40wt%未満ではドリル加工性が劣る傾向にあり、また、70wt%を超えると樹脂の流動性が小さくなり、プレス時の成形性が低下する。
【0009】
本発明に用いる合成シリカは、公知の合成方法、例えば特開昭61−17416号公報に記載された方法等により得ることができる。また、株式会社アドマテックス製、電気化学工業株式会社製、マイクロン株式会社製、東燃株式会社製などから合成シリカが市販されており、これらの中から平均粒径0.5μm、含水率0.06wt%の合成球状シリカを選択して用いることができる。
【0010】
前記の無機充填剤は特に制限はなく、例えば炭酸カルシウム、アルミナ、マイカ、炭酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、シリカ、ガラス短繊維やホウ酸アルミニウムや炭化ケイ素等の各種ウィスカ等が用いられる。また、これらを数種類併用しても良い。更に無機充剤としては、ガラス繊維と同様の硬度を有するシリカを50wt%以上とすることが好ましい。更に、シリカの平均粒径を0.4〜0.7μmとすることが好ましい。平均粒径が0.4μm未満ではワニスの増粘が著しく、作業性が極端に低下する、平均粒径が0.7μmを超えるとドリル加工時にドリル刃のチッピング等の問題が発生する。
【0011】
また、使用するシリカの含水率は、0.04wt%以下であることが好ましい。含水率が0.04wt%を超えるとシリカの凝集が発生しやすく金属箔張積層板の外観上の問題や耐熱性が劣る。無機充填剤の配合方法としては、従来公知の技術を用いることができ、例えば混練機を用いる方法やWO97−01595号公報に開示された方法を用いることができる。
【0012】
本発明においては前記の熱硬化性樹脂と前記の無機充填剤を含む組成物を有機溶媒に溶解しワニス組成物として用いることが好ましい。有機溶媒としては、例えばアセトン、キシレン、メチルセルソルブ、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、キノリン、シクロペンタノン、m−クレゾール、クロロホルムなどのうち、少なくとも1種が用いられる。
【0013】
本発明のワニス組成物の作成時の作業性及び使用時の塗布作業性をより良好ならしめるため、必要に応じて希釈剤を添加することができる。このような希釈剤としては、ブチルセロソルブ、カルビトール、酢酸ブチルセロソルブ、酢酸カルビトール、エチレングリコールジエチルエーテル、α−テルピネオール等の比較的沸点の高い有機溶剤、PGE(日本化薬社製)、PP−101(東都化成社製)、ED−502、503、509(旭電化社製)、YED−122(油化シェルエポキシ社製)、KBM−403、LS−7970(信越化学工業社製)、TSL−8350、TSL−8355、TSL−9905(東芝シリコーン社製)等の1分子中に1〜2個のエポキシ基を有する反応性希釈剤等の公知の化合物が挙げられる。
【0014】
本発明で得られるワニス組成物は、ガラス織布、ガラス不織布、紙、あるいはガラス繊維以外を成分とする布等の繊維基材に塗布、含浸させ、80〜200℃で半乾燥させた状態、或いは半硬化させた状態とすることにより、プリプレグを得ることができる。また、積層板用材料の用途には、無機繊維としてEガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、Qガラス等の各種ガラスクロス、有機繊維としてアラミド繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維等やアラミド,芳香族ポリエステル不識布等が用いられる。また、熱硬化性樹脂がそれ自身液状の場合には無溶剤型ワニスとしてそれぞれの繊維に塗布した後、有機溶媒を加熱乾燥してプリプレグあるいは積層板用材料を得ることができる。
【0015】
また、本発明の前記で得られるプリプレグは、150〜200℃、1.0〜8.0MPa程度の範囲で加熱加圧して金属箔張積層板となる。また同様に、金属箔張積層板を回路形成した内層基材と金属箔の間にプリプレグを所定枚数配し、加熱加圧してプリント配線板を製造することができる。
【0016】
以上で述べた本発明によれば、樹脂中の無機充填剤の充填率が40〜70wt%であり、充填剤のうち50wt%以上が平均粒径0.4〜0.7μmの合成球状シリカであるとすることにより、金属箔張積層板での樹脂とガラス補強材との強度、密度等の偏差を低減することができる。このため、ドリル穴あけ時、樹脂とガラス補強材のドリル加工性の差を低減することができ、穴壁粗さが小さく、穴位置精度を向上させることができる。
【実施例】
【0017】
以下、本発明の実施例について説明する。
[実施例1]
攪拌装置、コンデンサおよび温度計を備えたガラスフラスコに、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:シランカップリング剤A−187、日本ユニカー株式会社製)とメチルエチルケトンを加えて、固形分10重量%の溶液を作製した。この溶液3重量部にエチレングリコールモノエチルエーテルを50重量部、平均粒径0.5μm、含水率0.06wt%の合成球状シリカを80重量部、タルクを40重量部配合して室温で1時間攪拌し、処理充填剤入り溶液を作製した。この溶液を50℃に加温し、溶剤中のシランカップリング剤1重量部に対し、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量:530、東都化成株式会社製、YDB−500)100重量部、ジシアンジアミド4重量部、2−エチル−4−メチルイミダゾール0.5重量部の割合になるように配合し、メチルエチルケトンを加えて充填剤を含む樹脂分が70重量%のワニス組成物を作製した。このワニス組成物を単位面積当たりの重量が105g/m2のガラス織布に含浸後、140℃で5分加熱乾燥して樹脂分60重量%のプリプレグを得た。このプリプレグ4枚を重ね、その主面の両側に12μmの銅箔を重ね、170℃、90分、4.0MPaのプレス条件で銅張積層板を作製した。
【0018】
[実施例2]
シリカの含水率が0.02wt%である以外は、実施例1と同様に銅張積層板を得た。
【0019】
[比較例1]
単位面積当たりの重量が105g/m2のガラス織布を用いたプリプレグ(日立化成工業株式会社製、GEA−67N)を用い、実施例1と同様にして、銅張積層板を得た。
【0020】
[比較例2]
シリカの配合量を15重量部にした以外は、実施例1と同様にして、銅張積層板を得た。
【0021】
[比較例3]
シリカの配合量を240重量部にした以外は、実施例1と同様にして、銅張積層板を得た。
【0022】
以上作製した銅張積層板を用い、ドリル加工性、エッチング外観を評価した。
ドリル加工条件:ドリル径φ0.1、回転数160,000rpm、送り速度1.6m/min、重ね枚数2枚、エントリーボード150μmアルミ板
【0023】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂と無機充填剤を含むワニス組成物において、該無機充填剤が前記ワニス組成物の全樹脂成分の40〜70重量%であり、前記無機充填剤の中の50重量%以上が平均粒径0.4〜0.7μmの合成球状シリカであることを特徴とするワニス組成物。
【請求項2】
熱硬化性樹脂と無機充填剤を含むワニス組成物をガラス織布またはガラス不織布に含浸、乾燥して半硬化状態としたプリプレグにおいて、該無機充填剤が前記ワニス組成物の全樹脂成分の40〜70重量%であり、前記無機充填剤の中の50重量%以上が平均粒径0.4〜0.7μmの合成球状シリカであることを特徴とするプリプレグ。
【請求項3】
請求項2において、合成球状シリカの含水率が、0.04重量%以下であることを特徴とするプリプレグ。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のプリプレグを所定枚数重ね、その主面の片側又は両側に金属箔を配置し加熱加圧して得られる金属箔張積層板。

【公開番号】特開2011−236430(P2011−236430A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136694(P2011−136694)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【分割の表示】特願2001−204932(P2001−204932)の分割
【原出願日】平成13年7月5日(2001.7.5)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】