説明

ワンチップ漏洩表面弾性波装置

【課題】製造の容易さを有し、かつ通過周波数帯域での損失が小さいワンチップ漏洩表面弾性波分波器を提供する。
【解決手段】直列腕共振器102−7、102−8、102−9と並列腕共振器103−5,103−6から成る梯子型バンドパスフィルタ107−1、および多重モード型共振器104−1、104−2,104−3、104−4から成る多重モード結合型バンドパスフィルタ107−2から構成される分波器101−1において、直列腕共振器102−7、102−8、102−9のメタライゼーションレシオを多重モード型共振器104−1、104−2,104−3、104−4のメタライゼーションレシオまたは並列腕共振器103−5,103−6のメタライゼーションレシオより大きい値に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば携帯電話機の高周波段の分波器に用いられている、櫛型電極を主たる構成要素とした共振器を複数形成したワンチップ漏洩表面弾性波装置に関し、特に、送信周波数より受信周波数の方が高周波である携帯電話システム向け携帯電話機のRF段の分波器に用いられているワンチップ漏洩表面弾性波装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
漏洩表面弾性波装置に代表される弾性波装置は、高周波の共振器、フィルタ等の固体回路素子として通信機器等に使用されている。特に、周波数分割方式の携帯電話機では、一本のアンテナが送信信号の送信と受信信号の受信を行うため、アンテナ直下に受信フィルタと送信フィルタを備えた分波器が必要であるが、そのフィルタとして漏洩表面弾性波装置が広く利用されている。
【0003】
特許文献1には、共振器構造におけるカット角と電極膜厚の最適値が開示されている。また、メタライゼーションレシオ(以下、M比と略す。)が0.5以上であることが開示されている。
【0004】
特許文献2には、受信フィルタとして多重モード結合型共振器(以下、DM型共振器と略す。)型表面弾性波フィルタを、送信フィルタとして3個の直列腕共振器と2個の並列腕共振器で構成された梯子型共振器型表面弾性波フィルタを用い、それらを同一チップ上に集積した分波器が開示されている。さらにDM型共振器のM比と波長換算した電極膜厚が開示されている。
【0005】
特許文献3には、漏洩表面弾性波共振器のシミュレーション手法が開示されている。
【0006】
特許文献4には、漏洩表面弾性波(LSAW)と非漏洩表面弾性波(RSAW)の違いが開示されている。
【0007】
特許文献5には、共通の基板上に、直列共振器および並列共振器を有し、フィルタとして機能する電気音響素子において、直列共振器と並列共振器とは、組成および/または層厚が互いに異なることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−167936号公報
【特許文献2】国際特許公開WO 2008/108113号パンフレット
【特許文献3】国際特許公開WO 98/052279号パンフレット
【特許文献4】国際特許公開WO 03/088483号パンフレット
【特許文献5】特表2008−508821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般に、DM型共振器、直列腕共振器、並列腕共振器には、製造の容易さと高い品質係数(Q値)と大きい帯域幅(=(反共振周波数―共振周波数)÷反共振周波数)が要求される。また、分波器では、この3種類の共振器は互いに共振周波数が異なるため、異なる電極周期(λo)を有する。これらを同一チップ上に集積した場合、上記特許文献1、2に開示された表面弾性波共振器には以下のような問題点がある。
【0010】
特許文献1には、最適な波長換算膜厚が示されている。また図11に帯域幅(結合係数の半分)が、3%以上になる条件が記載されている。これらに従うと、3種類の共振器は、全て異なる膜厚にする必要がある。しかし3種類の共振器の各膜厚に関する指針は開示されていない。一方、ひとつのλoにあわせて膜厚を1種類に設定すると、製造が容易になるが、しかし他の2種類の共振器のQ値または帯域幅が著しく小さくなるという問題がある。
【0011】
特許文献2には、DM型共振器のM比と波長換算膜厚が開示されているが、そのときのQ値や帯域幅、さらに直列腕共振器、並列腕共振器のM比と波長換算膜厚は開示されていない。
【0012】
さらに、漏洩表面弾性波を用いた共振器では、Q値が周波数に依存して変化する。携帯電話器のRF段に用いられている分波器やフィルタでは、広い周波数範囲でフィルタリングするため、Q値の周波数特性を考慮する必要がある。しかし特許文献1、2ではこの点が考慮されていない。
【0013】
また、特許文献5には、直列共振器の特性と並列共振器の特性をどのように組み合わせてフィルタを構成するかは示されておらず、また、DM型共振器の記載はなく、延いてはDM型共振器と直列腕共振器や並列腕共振器との関係は何ら記載されていない。
【0014】
本発明の目的は、分波器に適した共振器を提供することである。別の言葉で表現すると、製造の容易さを有し、かつQ値を劣化させずに帯域幅の大きい直列腕共振器と並列腕共振器とDM型共振器から成る漏洩表面弾性波装置を提供することである。
【0015】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願において開示される発明のうち、代表的なものを挙げれば、次のとおりである。
【0017】
本発明のワンチップ漏洩表面弾性波装置は、圧電性を有する基板の同一面上に、直列腕共振器として機能する第一の漏洩弾性波共振器と、並列腕共振器として機能する第二の漏洩弾性波共振器とを形成し、前記直列腕共振器として機能する第一の漏洩表面弾性波共振器は、共振周波数を通過帯域に、また反共振周波数を通過帯域の高周波側の減衰帯域にほぼ一致させ、前記並列腕共振器として機能する第二の漏洩表面弾性波共振器は、反共振周波数を通過帯域に、また共振周波数を通過帯域の低周波側の減衰帯域にほぼ一致させ、前記第一の漏洩表面弾性波共振器と前記第二の漏洩表面弾性波共振器とはひとつのバンドパスフィルタの一部として機能するワンチップ漏洩表面弾性波装置において、前記直列腕共振器として機能する第一の漏洩表面弾性波共振器の電極指の膜厚が、前記並列腕共振器として機能する第二の漏洩表面弾性波共振器の電極指の膜厚より大きい値に設定されているか、または、前記直列腕共振器として機能する第一の漏洩表面弾性波共振器の櫛型電極のメタライゼーションレシオが、前記並列腕共振器として機能する第二の漏洩表面弾性波共振器の櫛型電極のメタライゼーションレシオより大きい値に設定されていることを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明のワンチップ漏洩表面弾性波装置は、圧電性を有する基板の同一面上に、直列腕共振器として機能する第一の漏洩弾性波共振器と、並列腕共振器として機能する第二の漏洩弾性波共振器と、多重モード結合型共振器として機能する第三の漏洩弾性波共振器とを形成し、前記直列腕共振器として機能する第一の漏洩表面弾性波共振器は、共振周波数を通過帯域に、また反共振周波数を通過帯域の高周波側の減衰帯域にほぼ一致させ、前記並列腕共振器として機能する第二の漏洩表面弾性波共振器は、反共振周波数を通過帯域に、また共振周波数を通過帯域の低周波側の減衰帯域にほぼ一致させ、前記第一の漏洩表面弾性波共振器と前記第二の漏洩表面弾性波共振器とは、ひとつのバンドパスフィルタの一部として機能するとともに、前記第一の漏洩表面弾性波共振器の共振周波数は、前記第三の漏洩表面弾性波共振器の共振周波数より小さく設定され、前記バンドパスフィルタと前記多重モード結合型共振器として機能する第三の漏洩表面弾性波共振器とが、ひとつの分波器として機能するワンチップ漏洩表面弾性波装置において、前記直列腕共振器として機能する第一の漏洩表面弾性波共振器の電極指の膜厚が、前記並列腕共振器として機能する第二の漏洩表面弾性波共振器の電極指の膜厚より大きい値に設定されているか、または、前記直列腕共振器として機能する第一の漏洩表面弾性波共振器の櫛型電極のメタライゼーションレシオが、前記並列腕共振器として機能する第二の漏洩表面弾性波共振器の櫛型電極のメタライゼーションレシオより大きい値に設定されていることを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明のワンチップ漏洩表面弾性波装置は、圧電性を有する基板の同一面上に、直列腕共振器として機能する第一の漏洩弾性波共振器と、並列腕共振器として機能する第二の漏洩弾性波共振器と、多重モード結合型共振器として機能する第三の漏洩弾性波共振器とを形成し、前記直列腕共振器として機能する第一の漏洩表面弾性波共振器は、共振周波数を通過帯域に、また反共振周波数を通過帯域の高周波側の減衰帯域にほぼ一致させ、前記並列腕共振器として機能する第二の漏洩表面弾性波共振器は、反共振周波数を通過帯域に、また共振周波数を通過帯域の低周波側の減衰帯域にほぼ一致させ、前記第一の漏洩表面弾性波共振器と前記第二の漏洩表面弾性波共振器とは、ひとつのバンドパスフィルタの一部として機能するとともに、前記第一の漏洩表面弾性波共振器の共振周波数は、前記第三の漏洩表面弾性波共振器の共振周波数より小さく設定され、前記バンドパスフィルタと前記多重モード結合型共振器として機能する第三の漏洩表面弾性波共振器とが、ひとつの分波器として機能するワンチップ漏洩表面弾性波装置において、前記直列腕共振器として機能する第一の漏洩表面弾性波共振器の電極指の膜厚が、前記多重モード結合型共振器として機能する第三の漏洩表面弾性波共振器の電極指の膜厚より大きい値に設定されているか、または、前記直列腕共振器として機能する第一の漏洩表面弾性波共振器の櫛型電極のメタライゼーションレシオが、前記多重モード結合型共振器として機能する第三の漏洩表面弾性波共振器の櫛型電極のメタライゼーションレシオより大きい値に設定されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下の通りである。
【0021】
漏洩表面弾性波装置において、直列腕共振器、並列腕共振器、DM型共振器の膜厚またはM比を所定の値にすることにより、分波器に適した共振器を提供することができる。別の言葉で表現すると、製造の容易さを有し、かつQ値を劣化させずに帯域幅の大きい直列腕共振器と並列腕共振器とDM型共振器から成る漏洩表面弾性波装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例1の漏洩表面弾性波装置を模式的に示す平面図である。
【図2】図1の直列腕共振器と並列腕共振器の電極構造を説明する平面図である。
【図3】図2のI1−I1’線断面図である。
【図4】図2に示した電極指の膜厚h、電極指の幅L、スペースS、電極指周期λoのそれぞれの定義を説明する図である。
【図5】梯子型バンドパスフィルタの入出力間の通過特性を説明する図である。
【図6】実施例1の直列腕共振器と並列腕共振器の帯域幅の膜厚依存性を、圧電基板として42°YX LiTaO基板を用いた場合を例として説明する図である。
【図7】実施例1の直列腕共振器と並列腕共振器のQ値の膜厚依存性を、圧電基板として42°YX LiTaO基板を用いた場合を例として説明する図である。
【図8】実施例1の直列腕共振器と並列腕共振器の帯域幅の膜厚依存性を、圧電基板として38°YX LiTaO基板を用いた場合を例として説明する図である。
【図9】実施例1の直列腕共振器と並列腕共振器のQ値の膜厚依存性を、圧電基板として38°YX LiTaO基板を用いた場合を例として説明する図である。
【図10】実施例1の直列腕共振器と並列腕共振器の帯域幅の膜厚依存性を、圧電基板として50°YX LiTaO基板を用いた場合を例として説明する図である。
【図11】実施例1の直列腕共振器と並列腕共振器のQ値の膜厚依存性を、圧電基板として50°YX LiTaO基板を用いた場合を例として説明する図である。
【図12】実施例1の直列腕共振器と並列腕共振器の帯域幅の膜厚依存性を、圧電基板として46°YX LiTaO基板を用いた場合を例として説明する図である。
【図13】実施例1の直列腕共振器と並列腕共振器のQ値の膜厚依存性を、圧電基板として46°YX LiTaO基板を用いた場合を例として説明する図である。
【図14】実施例1の直列腕共振器と並列腕共振器の帯域幅の膜厚依存性を、圧電基板として46°YX LiTaO基板を用いた場合を例として説明する図である。
【図15】実施例1の直列腕共振器と並列腕共振器のQ値の膜厚依存性を、圧電基板として46°YX LiTaO基板を用いた場合を例として説明する図である。
【図16】本発明の実施例2の漏洩表面弾性波装置を模式的に示す平面図である。
【図17】実施例2の直列腕共振器の直列Qと並列腕共振器の反共振QのM比依存性を、膜厚7.5%λoの場合を例として説明する図である。
【図18】実施例2の直列腕共振器と並列腕共振器の帯域幅のM比依存性を、膜厚7.5%λoの場合を例として説明する図である。
【図19】実施例2の直列腕共振器の直列Qと並列腕共振器の反共振QのM比依存性を、膜厚6.0%λoの場合を例として説明する図である。
【図20】実施例2の直列腕共振器と並列腕共振器の帯域幅のM比依存性を、膜厚6.0%λoの場合を例として説明する図である。
【図21】実施例2の直列腕共振器の直列Qと並列腕共振器の反共振QのM比依存性を、膜厚6.5%λoの場合を例として説明する図である。
【図22】実施例2の直列腕共振器と並列腕共振器の帯域幅のM比依存性を、膜厚6.5%λoの場合を例として説明する図である。
【図23】実施例2の直列腕共振器の直列Qと並列腕共振器の反共振QのM比依存性を、膜厚6.9%λoの場合を例として説明する図である。
【図24】実施例2の直列腕共振器と並列腕共振器の帯域幅のM比依存性を、膜厚6.9%λoの場合を例として説明する図である。
【図25】実施例2の直列腕共振器の直列Qと並列腕共振器の反共振QのM比依存性を、膜厚8.5%λoの場合を例として説明する図である。
【図26】実施例2の直列腕共振器と並列腕共振器の帯域幅のM比依存性を、膜厚8.5%λoの場合を例として説明する図である。
【図27】実施例2の直列腕共振器の直列Qと並列腕共振器の反共振QのM比依存性を、膜厚10.0%λoの場合を例として説明する図である。
【図28】実施例2の直列腕共振器と並列腕共振器の帯域幅のM比依存性を、膜厚10.0%λoの場合を例として説明する図である。
【図29】本発明の実施例3の漏洩表面弾性波装置を模式的に示す平面図である。
【図30】図29のDM型共振器の電極構造を説明する平面図である。
【図31】図30のI2−I2’線断面図である。
【図32】DM型共振器の入出力間の通過特性を説明する図である。
【図33】本発明の実施例4の漏洩表面弾性波装置を模式的に示す平面図である。
【図34】実施例4の直列腕共振器の直列QとDM型共振器の共振QのM比依存性を、膜厚8.1%λoと8.5%λoとの場合を例として説明する図である。
【図35】実施例4の直列腕共振器の直列QとDM型共振器の共振QのM比依存性を、膜厚6.8%λoと7.2%λoとの場合を例として説明する図である。
【図36】実施例4の直列腕共振器の直列QとDM型共振器の共振QのM比依存性を、膜厚9.6%λoと10.0%λoとの場合を例として説明する図である。
【図37】本発明の実施例5の漏洩表面弾性波装置を模式的に示す平面図である。
【図38】各電極膜厚で、M比を0から1に変化させたときの最大の帯域幅、およびそのときのM比を示した図である。
【図39】図38に示したM比と最大帯域幅を横軸と縦軸に記した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、実施の形態では、特に必要なときを除き、同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。さらに、実施の形態を説明する図面においては、構成を分かり易くするために、断面図であってもハッチングを省略する場合がある。
【実施例1】
【0024】
図1は、本実施例1の漏洩表面弾性波装置(以下弾性波装置と略す)を模式的に示す平面図である。少なくとも入出力端子105、入出力端子間に直列に接続された直列腕共振器102、入出力端子間の信号経路からアースに向かって接続された並列腕共振器103が同一チップ1上に集積化されている。またそれらを接続する電気配線、位相調整を行う共振器、入出力端子105−1と105−2との間のアイソレーションを高めるためのコンデンサとインダクタ等も同一チップ上に集積化されているが、図面では省略されている。
直列腕共振器102と並列腕共振器103は、いずれも一開口共振器の構造を有している。
【0025】
図2〜4は、本実施例1の弾性波装置100の直列腕共振器102と並列腕共振器103に用いている一開口共振器の電極構造を説明した図である。図2は、模式的に示す上面、図3は、図2のI1−I1’線の断面、図4は、櫛形電極5の電極指2の膜厚h、電極指2の幅L、スペースS、電極指周期(電極ピッチ)λo(励振される漏洩表面弾性波の伝搬波長と実質的に同一)のそれぞれの定義を説明する図である。圧電基板1上に1個の櫛形電極5と2個の反射器4が設けられている。櫛形電極5は多数の電極指2と2個のバスバー3で構成されている。ひとつの櫛形電極5に属する全ての電極指2は、ほぼ同じ膜厚に設定されている。反射器4は櫛形電極5を挟む位置に配置されている。櫛形電極5上に絶縁膜を形成する場合、また多層膜を形成する場合もあるが、図面では省略している。またバスバーには電気配線が接続されるが、図面では省略している。
【0026】
図5は、本実施例1の弾性波装置の入出力端子105−1と105−2との間の通過特性を説明した図である。一開口共振器において、バスバー3−1と3−2との間のインピーダンス特性は、共振周波数で低インピーダンスを、反共振周波数で高インピーダンスを示す。また、直列腕共振器102は、共振周波数を通過帯域51−1に、反共振周波数を通過帯域51−1の高周波側の減衰帯域50−2におおよそ一致させている。並列腕共振器103は、反共振周波数を通過帯域51−1に、共振周波数を通過帯域51−1の低周波側の減衰帯域50−1とおおよそ一致させている。それらを梯子型に接続しているため、本実施の形態1の弾性波装置100は、梯子型バンドパスフィルタとして機能する。
【0027】
梯子型バンドパスフィルタには、通過帯域51−1と減衰帯域50が広いこと、及び周波数選択性が高いことが要求される。帯域幅は用いる共振器の帯域幅に、また周波数選択性は用いる共振器のQ値に依存する。そのため、帯域幅が広く、且つQ値の高い共振器を用いる必要がある。
【0028】
本発明者等は、漏洩表面弾性波を用いた共振器では、RSAWに代表される非漏洩表面弾性波を用いた共振器とは異なり、Q値が周波数に依存して変化することを考慮し、特許文献3に記載された漏洩表面弾性波共振器シミュレーション技術を拡張し、漏洩表面弾性波に特有の遅い横波バルク波へのエネルギー漏洩効果を取り入れることにより、初めに電極指2の断面形状等、全ての効果を考慮して漏洩表面弾性波共振器の電気特性を詳細に検討した。
【0029】
図6と図7は、基板材料1として、LiTaO単結晶の42°回転Yカット板において漏洩表面弾性波の伝搬方向をX軸とした42°YX LiTaO基板上にアルミニウムを主成分とする金属で作成した櫛形電極2で構成された一開口共振器の基本共振特性(帯域幅とQ値)を説明した図である。いずれも、M比(=L/(L+S))は0.5である。またQ値は周波数依存性を有することを考慮し、共振周波数でのQ値(共振Q値)と反共振周波数でのQ値(反共振Q値)を分けて検討した。
電極膜厚hが波長の10.3%のとき、帯域幅は最も大きくなるが、共振Q値と反共振Q値は劣化している。
電極膜厚hが波長の8.3%のとき、共振Q値は最も大きくなるが、帯域幅と反共振Q値は劣化している。
電極膜厚hが波長の6.0%のとき、反共振Q値は最も大きくなるが、帯域幅と共振Q値は劣化している。
これらのことから、Q値の周波数依存性を考慮すると、従来の方法では、一開口共振器の基本共振特性である帯域幅と共振Q値と反共振Q値を同時に良好な値を得ることはできないことが分かった。
【0030】
次に梯子型バンドパスフィルタの周波数特性と漏洩表面弾性波共振器の関係を詳細に検討した。上記と同様に、Q値は周波数依存性を有することを考慮し、共振Qと反共振Qに分けて検討した。
梯子型バンドパスフィルタの低周波側の減衰帯域50−1は、並列腕共振器103の共振現象、コンデンサ、インダクタ、及び寄生のインピーダンス成分が干渉しあって形成される。減衰の深さは、これらが相乗して生じる共振のQ値で決まる。並列腕共振器103の共振Qと比較すると、コンデンサ、インダクタ、及び寄生のインピーダンス成分のQ値は小さく、またこれらが減衰帯域50−1の減衰の深さに与える影響は、それぞれ並列腕共振器103、コンデンサ、インダクタ、及び寄生のインピーダンス成分のQ値の逆数に比例するため、結局、並列腕共振器103の共振Qは、減衰の深さに影響しない。
梯子型バンドパスフィルタの高周波側の減衰帯域50−2は、直列腕共振器102の反共振現象、コンデンサ、インダクタ、及び寄生のインピーダンス成分が干渉しあって形成される。減衰の深さは、これらが相乗して生じる共振のQ値で決まる。直列腕共振器102の反共振Qと比較すると、コンデンサ、インダクタ、及び寄生のインピーダンス成分のQ値は小さく、またこれらが減衰帯域50−2の減衰の深さに与える影響は、それぞれ直列腕共振器102、コンデンサ、インダクタ、及び寄生のインピーダンス成分のQ値の逆数に比例するため、結局、直列腕共振器102の反共振Qは、減衰の深さに影響しない。
梯子型バンドパスフィルタの通過帯域51−1の損失は、直列腕共振器102の共振現象、並列腕共振器103の反共振現象、及び電極指2と電気配線の抵抗が干渉しあって形成される。損失の大きさは、これらの損失の和であるが、電気配線は通常低抵抗な金属を用いるため、結局、直列腕共振器102の共振Q、並列腕共振器103の反共振Qが影響を与える。また損失に与える影響量は、Q値の逆数に比例するため、直列腕共振器102の共振Qと並列腕共振器103の反共振Qとを比較して、値が小さい方がより強く影響を与える。
梯子型バンドパスフィルタの通過帯域51−1の帯域幅は、直列腕共振器102の共振現象、並列腕共振器103の反共振現象、及び直列腕共振器102と並列腕共振器103の帯域幅で決まる。直列腕共振器102の共振Qが大きいと、通過帯域51−1の高周波側の角が尖り、また並列腕共振器103の反共振Qが大きいと通過帯域51−1の低周波側の角が尖るため、帯域幅が広くなる。一方直列腕共振器102または並列腕共振器103の帯域幅が小さくなると、通過帯域51−1の中心部分の損失が劣化するが、しかし直列腕共振器の共振Q、並列腕共振器の反共振Qが十分大きい場合は、その劣化量を小さくすることができる。
【0031】
これらのことから、梯子型バンドパスフィルタ用共振器に要求される性能は、直列腕共振器102の共振Qおよび並列腕共振器103の反共振Qが共に大きいこと、次に直列腕共振器102と並列腕共振器103の帯域幅が広いことである。
【0032】
【表1】

【0033】
以上のことから、Q値の周波数依存性を考慮すると、直列腕共振器102と並列腕共振器103共に、電極膜厚hは、10.3%λoを超えない範囲で厚くした方がよいが、しかし10.3%λoに近づくに従い、Qが劣化すること、特に反共振Qが著しく劣化すること、さらに並列腕共振器103の反共振Qの劣化は、バンドパスフィルタの損失を大きく劣化させることが分かる。つまり、直列腕共振器102は、共振Q値の劣化が許容される電極膜厚の範囲内で、帯域幅が最大になる電極膜厚hに設定し、また、並列腕共振器103は、反共振Q値の劣化が許容される電極膜厚の範囲内で、帯域幅が最大になる電極膜厚hに設定することで、最も優れた格子型バンドパスフィルタを実現することが出来る。
【0034】
別の言葉で説明すると、並列腕共振器103の電極膜厚hを、直列腕共振器102の電極膜厚hと同じ値にした場合より、直列腕共振器102の電極膜厚hより薄くした場合の方が、並列腕共振器103の反共振Q値を良くすることが出来る、または、直列腕共振器102の電極膜厚hを、並列腕共振器103の電極膜厚hと同じ値にした場合より、並列腕共振器103の電極膜厚hより厚くした場合の方が、直列腕共振器102の共振Q値を良くすることが出来る。
【0035】
本実施例1の弾性波装置である図1の梯子型バンドパスフィルタでは、直列腕共振器102の電極膜厚hを395nm(9.0%λo、λo=4396nm)、並列腕共振器103の電極膜厚hを320nm(7.0%λo、λo=4560nm)に設定されている。このことにより、直列腕共振器102と並列腕共振器103を同じ電極膜厚395nmに設定した場合より、並列腕共振器103の反共振Qを10倍大きくすることができるため、損失の小さい梯子型バンドパスフィルタが実現できている。
【0036】
なお、直列腕共振器102と並列腕共振器103の電極膜厚hは、上記厚さに限定されない。直列腕共振器102の電極膜厚hと並列腕共振器103の電極膜厚hを同じ値にした場合より、直列腕共振器102の電極膜厚hより並列腕共振器103の電極膜厚hを薄くした場合の方が、直列腕共振器102の共振Qが優れるため、または並列腕共振器103の反共振Qが優れるため、損失の小さい梯子型バンドパスフィルタが実現できていることは明らかである。たとえば、直列腕共振器102の電極膜厚hと並列腕共振器103の電極膜厚hを共に400nm(直列腕共振器:9.1%λo、並列腕共振器8.8%λo)に設定した場合より、直列腕共振器102の電極膜厚hを400nm、並列腕共振器103の電極膜厚hを395nm(8.7%λo)に設定した場合の方が、並列腕共振器103の反共振Qが1.07倍向上するため、梯子型バンドパスフィルタの損失は低減する。
【0037】
図8と図9は、38°YX LiTaO基板上にアルミニウムを主成分とする金属で作成した電極指2で構成された一開口共振器の基本共振特性を説明した図である。いずれも、M比は0.5である。
図8に示すように、電極膜厚hが波長の10.3%のとき、帯域幅は最も大きくなる。一方、図9に示すように、共振Qが最大を示す電極膜厚hは、反共振Qが最大を示す電極膜厚hより大きい。そのため、直列腕共振器102の電極膜厚hと並列腕共振器103の電極膜厚hを同じ値にした場合より、直列腕共振器102の電極膜厚hより並列腕共振器103の電極膜厚hを薄くした場合の方が、直列腕共振器102の共振Qが優れるため、または並列腕共振器103の反共振Qが優れるため、損失の小さい梯子型バンドパスフィルタが実現できることは明らかである。
【0038】
図10と図11は、50°YX LiTaO基板上にアルミニウムを主成分とする金属で作成した電極指2で構成された一開口共振器の基本共振特性を説明した図である。いずれも、M比は0.5である。
図10に示すように、電極膜厚hが波長の10.0%のとき、帯域幅は最も大きくなる。一方、図11に示すように、共振Qが最大を示す電極膜厚hは、反共振Qが最大を示す電極膜厚hより大きい。そのため、直列腕共振器102の電極膜厚hと並列腕共振器103の電極膜厚hを同じ値にした場合より、直列腕共振器102の電極膜厚hより並列腕共振器103の電極膜厚hを薄くした場合の方が、直列腕共振器102の共振Qが優れるため、または並列腕共振器103の反共振Qが優れるため、損失の小さい梯子型バンドパスフィルタが実現できることは明らかである。
【0039】
図12〜15は、46°YX LiTaO基板上にアルミニウムを主成分とする金属で作成した電極指2で構成された一開口共振器の基本共振特性を説明した図である。いずれも、M比は0.5である。
この場合でも図13と図15に示すように、共振Qが最大を示す電極膜厚hは、反共振Qが最大を示す電極膜厚hより大きいため、直列腕共振器102の電極膜厚hと並列腕共振器103の電極膜厚hを同じ値にした場合より、直列腕共振器102の電極膜厚hより並列腕共振器103の電極膜厚hを薄くした場合の方が、直列腕共振器102の共振Qが優れるため、または並列腕共振器103の反共振Qが優れるため、損失の小さい梯子型バンドパスフィルタが実現できることは明らかである。
【0040】
以上に示したように、異なる圧電基板を用いた場合であっても、直列腕共振器102の電極膜厚hを並列腕共振器103の電極膜厚hより大きくすることで、損失の小さい梯子型バンドパスフィルタを実現することができるという効果が得られる。またM比が0.5と異なる場合においても、また電極指がアルミニウムとは異なる材料を用いた場合においても、同様の効果が得られる。
【0041】
なお、以下の実施例3で述べるような、梯子型バンドパスフィルタとDM型バンドパスフィルタを備え、梯子型バンドパスフィルタを送信フィルタとし、DM型バンドパスフィルタを受信フィルタとした分波器においても、梯子型バンドパスフィルタを構成する直列腕共振器の電極膜厚を並列腕共振器の電極膜厚より大きくすることで、本実施例の作用効果が得られることは、明らかである。
【実施例2】
【0042】
図16は、本実施例2の弾性波装置を模式的に示す上面図である。5個の共振器(102と、103)の電極膜厚hがすべて等しいことを除くと、さらに、少なくとも1個以上の共振器が他の共振器と異なるM比を有することを除くと、図1に示した本実施例1の弾性波装置100と同じである。
【0043】
図17と18は、42°YX LiTaO基板上にアルミニウムを主成分とする金属で作成した電極指2(膜厚h=7.5%λo)で構成された一開口共振器の重要度の高い基本共振特性を説明した図である。直列腕共振器102と並列腕共振器103ではλoが若干異なるため、波長換算電極膜厚h/λoも若干異なるが、説明を簡単にするため、同一の波長換算膜厚の直列腕共振器102の共振Q値、並列腕共振器103の反共振Q値、及び帯域幅を示してある。
図17に示すように、M比を大きくした方が直列腕共振器102の共振Q値は大きくなる。また、M比を小さくした方が並列腕共振器103の反共振Q値は大きくなる。さらに、図18に示すように、帯域幅はM比が0.53の時、最大になる。
【0044】
本実施例2の弾性波装置100−2では、直列腕共振器102のM比は0.53に、並列腕共振器103のM比は0.49に設定されているため、直列腕共振器102のM比と並列腕共振器103のM比を共に0.50に設定した場合より、直列腕共振器102の共振Q値は1.34倍、並列腕共振器103の反共振Q値は1.19倍向上している。
なお、直列腕共振器102と並列腕共振器103のM比は、上記値に限定されない。直列腕共振器102のM比と並列腕共振器103のM比を同じ値に設定した場合より、直列腕共振器102のM比より並列腕共振器103のM比を小さく設定した場合の方が、直列腕共振器102の共振Q、または並列腕共振器103の反共振Qが優れる。たとえば、直列腕共振器102のM比と並列腕共振器103のM比を共に0.53に設定した場合より、直列腕共振器102のM比を0.53、並列腕共振器103のM比を0.52に設定した場合の方が、並列腕共振器103の反共振Qが1.05倍向上する。そのため、損失の小さい梯子型バンドパスフィルタを実現することができる。
【0045】
図19〜28は、さまざまな電極膜厚で電極指2で構成された一開口共振器の重要度の高い基本共振特性を説明した図である。
図19と図20は、電極膜厚h=0.06λoに設定した本実施例2の弾性波装置100−2を構成する開口共振器の直列腕共振器102の共振Q値と並列腕共振器103の反共振Q値、及び帯域幅を説明した図である。この実施例の弾性波装置100−2では、直列腕共振器102のM比は0.56に、並列腕共振器103のM比は0.54に設定されている。
図19に示すように、電極膜厚h=0.06λoの場合、直列腕共振器102の共振Q値はM比を大きくした方が、大きくなる。一方、並列腕共振器103の反共振Q値はM比にあまり依存しない。また、図20に示すように、帯域幅はM比が0.54の時、最大になる。
【0046】
本実施例の弾性波装置100−2では、直列腕共振器102のM比は0.56に、並列腕共振器103のM比は0.54に設定されているため、直列腕共振器102のM比と並列腕共振器103のM比を共に0.54に設定した場合より、直列腕共振器102の共振Q値は1.03倍向上している。
なお、直列腕共振器102と並列腕共振器103のM比は、上記値に限定されない。直列腕共振器102のM比と並列腕共振器103のM比を同じ値に設定した場合より、直列腕共振器102のM比より並列腕共振器102のM比を小さく設定した場合の方が、直列腕共振器102の共振Qが優れる。たとえば、直列腕共振器102のM比と並列腕共振器103のM比を共に0.50に設定した場合より、直列腕共振器102のM比を0.51、並列腕共振器103のM比を0.50に設定した場合の方が、直列腕共振器103の共振Qが1.03倍向上する。そのため、損失の小さい梯子型バンドパスフィルタを実現することができる。
【0047】
図21と図22は、電極膜厚h=0.065λoに設定した本実施例2の弾性波装置100−2を構成する直列腕共振器102の共振Q値と並列腕共振器103の反共振Q値、及び帯域幅を説明した図である。この実施例の弾性波装置100−2では、直列腕共振器102のM比は0.56に、並列腕共振器103のM比は0.52に設定されている。
図21に示すように、電極膜厚h=0.065λoの場合、直列腕共振器102の共振Q値はM比を大きくした方が、一方、並列腕共振器103の反共振Q値はM比を小さくした方が大きくなる。また、図22に示すように、帯域幅はM比が0.54の時、最大になる。
【0048】
本実施形態の弾性波装置100−2では、直列腕共振器102のM比は0.56に、並列腕共振器103のM比は0.52に設定されているため、直列腕共振器102のM比と並列腕共振器103のM比を共に0.54に設定した場合より、直列腕共振器102の共振Q値は1.05倍、並列腕共振器103の反共振Q値は1.17倍向上している。
なお、直列腕共振器102と並列腕共振器103のM比は、上記値に限定されない。直列腕共振器102のM比と並列腕共振器103のM比を同じ値に設定した場合より、直列腕共振器102のM比より並列腕共振器103のM比を小さく設定した場合の方が、直列腕共振器102の共振Qが優れる、または並列腕共振器103の反共振Qが優れる。たとえば、直列腕共振器102のM比と並列腕共振器103のM比を共に0.50に設定した場合より、直列腕共振器102のM比を0.51、並列腕共振器103のM比を0.50に設定した場合の方が、直列腕共振器102の共振Qが1.03倍向上する。そのため、損失の小さい梯子型バンドパスフィルタを実現することができる。
【0049】
図23と図24は、電極膜厚h=0.069λoに設定した本実施例2の弾性波装置100−2を構成する直列腕共振器102の共振Q値と並列腕共振器103の反共振Q値、及び帯域幅を説明した図である。この実施例の弾性波装置100−2では、直列腕共振器102のM比は0.54に、並列腕共振器103のM比は0.46に設定されている。
図23に示すように、電極膜厚h=0.069λoの場合、直列腕共振器102の共振Q値はM比を大きくした方が、一方、並列腕共振器103の反共振Q値はM比を小さくした方が大きくなる。また、図24に示すように、帯域幅はM比が0.54の時、最大になる。
【0050】
本実施例の弾性波装置100−2では、直列腕共振器102のM比は0.54に、並列腕共振器103のM比は0.46に設定されているため、直列腕共振器102のM比と並列腕共振器103のM比を共に0.54に設定した場合より、直列腕共振器102の共振Q値は変わらず、並列腕共振器103の反共振Q値は2.08倍向上している。
なお、直列腕共振器102と並列腕共振器103のM比は、上記値に限定されない。直列腕共振器102のM比と並列腕共振器103のM比を同じ値に設定した場合より、直列腕共振器102のM比より並列腕共振器103のM比を小さく設定した場合の方が、直列腕共振器102の共振Qが優れる、または並列腕共振器103の反共振Qが優れる。たとえば、直列腕共振器102のM比と並列腕共振器102のM比を共に0.50に設定した場合より、直列腕共振器102のM比を0.51、並列腕共振器103のM比を0.50に設定した場合の方が、直列腕共振器102の共振Qが1.06倍向上する。そのため、損失の小さい梯子型バンドパスフィルタを実現することができる。
【0051】
図25と図26は、電極膜厚h=0.085λoに設定した本実施例2の弾性波装置100−2を構成する直列腕共振器102の共振Q値と並列腕共振器103の反共振Q値、及び帯域幅を説明した図である。この実施例の弾性波装置100−2では、直列腕共振器102のM比は0.52に、並列腕共振器103のM比は0.40に設定されている。
図25に示すように、電極膜厚h=0.085λoの場合、直列腕共振器102の共振Q値はM比によってあまり変化しないが、並列腕共振器103の反共振Q値はM比を小さくした方が大きくなる。また、図26に示すように、帯域幅はM比が0.52の時、最大になる。
【0052】
本実施例の弾性波装置100−2では、直列腕共振器102のM比は0.52に、並列腕共振器103のM比は0.40に設定されているため、直列腕共振器102のM比と並列腕共振器103のM比を共に0.52に設定した場合より、直列腕共振器102の共振Q値は変わらず、並列腕共振器103の反共振Q値は3.75倍向上している。
なお、直列腕共振器102と並列腕共振器103のM比は、上記値に限定されない。直列腕共振器102のM比と並列腕共振器103のM比を同じ値に設定した場合より、直列腕共振器102のM比より並列腕共振器103のM比を小さく設定した場合の方が、直列腕共振器102の共振Qが優れる、または並列腕共振器103の反共振Qが優れる。たとえば、直列腕共振器102のM比と並列腕共振器103のM比を共に0.50に設定した場合より、直列腕共振器102のM比を0.50、並列腕共振器103のM比を0.49に設定した場合の方が、並列腕共振器103の反共振Qが1.05倍向上する。そのため、損失の小さい梯子型バンドパスフィルタを実現することができる。
【0053】
図27と図28は、電極膜厚h=0.10λoに設定した本実施例2の弾性波装置100−2を構成する直列腕共振器102の共振Q値と並列腕共振器103の反共振Q値、及び帯域幅を説明した図である。この実施例の弾性波装置100−2では、直列腕共振器102のM比は0.50に、並列腕共振器103のM比は0.40に設定されている。
図27に示すように、電極膜厚h=0.10λoの場合、直列腕共振器102の共振Q値はM比を小さくすると若干大きくなり、また並列腕共振器103の反共振Q値はM比を小さくした方が大きくなる。また、図28に示すように、帯域幅はM比が0.50の時、最大になる。
【0054】
本実施例の弾性波装置100−2では、直列腕共振器102のM比は0.50に、並列腕共振器103のM比は0.40に設定されているため、直列腕共振器102のM比と並列腕共振器103のM比を共に0.50に設定した場合より、直列腕共振器102の共振Q値は変わらず、並列腕共振器103の反共振Q値は1.54倍向上している。
なお、直列腕共振器102と並列腕共振器103のM比は、上記値に限定されない。本実施例1の弾性波装置100−1で説明したように、、直列腕共振器102の共振Q値と並列腕共振器103の反共振Q値では、値が小さい方が、格子型バンドパスフィルタの通過帯域に強く悪影響を与える。つまり直列腕共振器102の共振Q値より並列腕共振器103の反共振Q値の方が小さいため、並列腕共振器103のM比を小さくすることが最も効果的である。そのことで、損失の小さい梯子型バンドパスフィルタが実現できていることは明らかである。たとえば、直列腕共振器102のM比と並列腕共振器103のM比を共に0.50に設定した場合より、直列腕共振器102のM比を0.50、並列腕共振器103のM比を0.49に設定した場合の方が、並列腕共振器103の反共振Qが1.03倍向上する。
【0055】
以上に示したように、任意の電極膜厚hを用いた場合であっても、直列腕共振器102のM比を並列腕共振器103のM比より大きくすることで、損失の小さい梯子型バンドパスフィルタを実現することができるという効果が得られる。また本実施例1で説明したように、圧電基板が異なる場合においても同様の効果が得られる。さらに、直列腕共振器102の電極膜厚hと並列腕共振器103の電極膜厚hが同じであるため、同時に成膜できる。そのため製造が容易であるとの効果も有する。
【0056】
なお、以下の実施例4で述べるような、梯子型バンドパスフィルタとDM型バンドパスフィルタを備え、梯子型バンドパスフィルタを送信フィルタとし、DM型バンドパスフィルタを受信フィルタとした分波器においても、梯子型バンドパスフィルタを構成する直列腕共振器の櫛形電極のM比を並列腕共振器の櫛形電極のM比より大きくすることで、本実施例の作用効果が得られることは、明らかである。
【実施例3】
【0057】
図29は、本実施例3の弾性波装置101−1を模式的に示す上面図である。少なくても入出力端子105、直列腕共振器102、並列腕共振器103、及びDM型共振器104が同一チップ1上に集積化されている。またそれらを接続する電気配線、位相調整を行う共振器106、入出力端子105−3〜6の間のアイソレーションを高めるためのコンデンサとインダクタ等も同一チップ1上に集積化されているが、図面では一部省略されている。なお、直列腕共振器102とDM型共振器104のM比は0.5に設定されている。
【0058】
直列腕共振器102と並列腕共振器103は、膜厚とM比を除くと、本実施例1の一開口共振器と同じ構造を有している。そのため本実施例3の弾性波装置101−1の左半分は梯子型バンドパスフィルタ107−1として機能する。一方、DM型共振器104は、三電極型縦結合共振器の構造を有している。4個のDM型共振器104は、結合部6を入力とし、入出力端子105−5と105−6との間を差動出力とするDM型バンドパスフィルタ107−2として機能する。梯子型バンドパスフィルタ107−1とDM型バンドパスフィルタ107−2は、位相調整を行う共振器106を介して入出力端子105−3に接続されている。そのため、本実施例3の弾性波装置101−1は、分波器として機能する。
入出力端子105−3は、直接、または整合回路、スイッチ、ダイプレクサ等を経由してアンテナに接続される。入出力端子105−4は、直接、または整合回路、スイッチ等を経由して送信用増幅器の出力端子に接続される。入出力端子105−5と105−6は、直接、または整合回路、スイッチ等を経由して、受信用増幅器の入力端子に接続される。そのため、本実施例3の弾性波装置101−1は、アンテナ共用機として機能する。
【0059】
図30と図31は、本実施例3の弾性波装置101−1のDM型共振器104の電極構造を説明した図である。図30は、模式的に示す上面、図31は、図30のI2−I2’線の断面を説明する図である。圧電基板1上に3個の櫛形電極5と2個の反射器4が設けられている。各櫛形電極5は多数の電極指2と2個のバスバー3で構成されている。3個の櫛形電極5に属する全ての電極指2は、ほぼ同じ膜厚に設定されている。反射器4は櫛形電極5を挟む位置に配置されている。櫛形電極上に絶縁膜を形成する場合、また多層膜を形成する場合もあるが、図面では省略している。またバスバー3には電気配線が接続されるが、図面では省略している。
【0060】
図32は、本実施例3の弾性波装置101−1に用いているDM型共振器104の通過特性を説明した図である。バスバー3−2、3−4、3−6を接地し、バスバー3−1と3−3を出力とし、バスバー3−5を入力とした。
DM型共振器104では、電極指2に直交する方向に生じる3個の弾性的な定在波(基本漏洩表面弾性波、非調和型縦3次漏洩表面弾性波、非調和型縦5次漏洩表面弾性波)の弾性的な共振現象を利用する。3個の共振周波数を通過帯域51−2の下端、中央、上端に並べることにより、ほぼ平坦な通過帯域51−2を形成すことが出来る。そのため、本実施例3のDM型共振器104は、単体でも、DM型バンドパスフィルタとして機能する。
【0061】
DM型バンドパスフィルタは、上記3個の共振周波数で形成される通過帯域51−2以外の周波数帯域では、電気信号を通過させないため、原理的に、減衰帯域幅を広く取ることが出来る。そのため、本発明者等は、漏洩表面弾性波を用いた共振器では、Q値が周波数に依存して変化することを考慮し、DM型バンドパスフィルタの通過帯域51−2の特性と漏洩表面弾性波共振器の基本共振器特性の関係を詳細に検討した。本実施例1の弾性波装置と同様に、Q値は周波数依存性を有することを考慮し、共振Q値と反共振Q値に分けて検討した。
【0062】
DM型バンドパスフィルタの通過帯域51−2の通過損失は、DM型共振器104の3個の共振現象、及び電気配線の抵抗が干渉しあって形成される。損失の大きさは、これらの損失の和であるが、電気配線は通常低抵抗な金属を用いるため、結局、DM型共振器104の共振Q値が最も強く影響を与える。なお、DM型共振器104の共振Q値は、図7に開示した一開口共振器の共振Q値と一致する。
DM型バンドパスフィルタの通過帯域51−2の帯域幅は、上記基本漏洩表面弾性波と非調和型縦3次漏洩表面弾性波の帯域幅の和で決まる。これらの帯域幅は、図6等に開示した一開口共振器の帯域幅に比例する。DM型共振器104の帯域幅が小さくなると、通過帯域51−2に2箇所ディップが発生し、そのため損失が低下するが、しかしDM型共振器104の共振Q値が十分大きい場合は、その低下量を小さくすることができる。
【0063】
これらのことから、DM型バンドパスフィルタ用DM型共振器に要求される性能の重要度は、DM型共振器104の共振Q値が大きいこと、次にDM型共振器104の帯域幅が広いことである(表1)。
【0064】
以上のこと、及び図6と図7から、Q値の周波数依存性を考慮すると、DM型共振器104では、電極膜厚hは、8%λo以上、且つ10.3%λoを超えない範囲で厚くした方がよく、ただし10.3%λoに近づくに従い、Qが劣化すること、さらにDM型共振器104の共振Qの劣化は、DM型バンドパスフィルタの損失を劣化させること、及びDM型共振器104の反共振Qの劣化は、DM型バンドパスフィルタの損失を劣化させないことが明らかである。
【0065】
本実施例3の弾性波装置である図29の分波器101−1では、共振Q値の劣化量を許容範囲に抑えつつ、帯域幅を最大にするため、直列腕共振器102の電極膜厚hを395nm(9.0%λo、λo=4396nm)、DM型共振器104の電極膜厚hを375nm(9.0%λo、λo=4186nm)に設定されている。このことにより、直列腕共振器102とDM腕共振器104を同じ電極膜厚395nmに設定した場合より、DM型共振器104の共振Q値を2.94倍大きくすることができるため、損失の小さい梯子型バンドパスフィルタとDM型バンドパスフィルタが同時に実現できている。
なお、直列腕共振器102とDM型共振器104の電極膜厚hは、上記厚さに限定されない。直列腕共振器102の電極膜厚hとDM型共振器104の電極膜厚hを同じ値にした場合より、直列腕共振器102の電極膜厚hよりDM型共振器104の電極膜厚hを薄くした場合の方が、直列腕共振器102の共振Qが優れるため、またはDM型共振器104の共振Qが優れるため、損失の小さい梯子型バンドパスフィルタ、または損失の小さいDM型バンドパスフィルタが実現できていることは明らかである。たとえば、直列腕共振器102の電極膜厚hとDM型共振器104の電極膜厚hを共に400nm(直列腕共振器:9.1%λo、DM型共振器:9.6%λo)に設定した場合より、直列腕共振器102の電極膜厚hを400nm、DM型共振器104の電極膜厚hを395nm(9.4%λo)に設定した場合の方が、DM型共振器104の共振Qが1.43倍向上する。そのため、損失の小さい分波器を実現することができる。
【0066】
また、本実施例1の弾性波装置100−1で説明したように、異なる圧電基板を用いた場合であっても、直列腕共振器102の電極膜厚hをDM型共振器104の電極膜厚hより大きくすることで、損失の小さい分波器を実現することができるという効果が得られる。またM比が0.5とは異なる場合においても同様の効果が得られる。
【0067】
なお、梯子型バンドパスフィルタを構成する直列腕共振器および並列腕共振器については、直列腕共振器の電極膜厚が、並列腕共振器の電極膜厚より小さくない値に設定されていれば、さらに良い。
【実施例4】
【0068】
図33は、本実施例4の弾性波装置101−2を模式的に示す上面図である。7個の共振器102、104の電極指の膜厚がすべてほぼ等しいこと、さらに、少なくても1個以上の共振器が他の共振器と異なるM比を有することを除くと、図29に示した本実施例3の弾性波装置101−1と同じである。
【0069】
図34は、42°YX LiTaO基板上にアルミニウムを主成分とする金属で作成した電極指2(膜厚h=365nm)で構成された直列腕共振器102とDM型共振器104の共振Q値を説明した図である。直列腕共振器102とDM型共振器104では電極膜厚が等しくてもλoが異なるため、波長換算電極膜厚は、直列腕共振器8.1%λo、DM型共振器8.5%λoと異なることを考慮されている。
図34に示すように、直列腕共振器102の共振Q値はM比=0.54に近づけた方が、DM型共振器の共振Q値はM比=0.46に近づけた方が大きくなる。
【0070】
本実施例4の弾性波装置101−2では、直列腕共振器102のM比は0.56に、DM型共振器104のM比は0.46に設定されているため、直列腕共振器102のM比とDM型共振器104のM比を共に0.50に設定した場合より、直列腕共振器102の共振Q値とDM型共振器104の共振Q値は格段に向上している。
なお、直列腕共振器102とDM型共振器104のM比は、上記値に限定されない。直列腕共振器102の共振Q値が最大を示すM比は、DM型共振器104の共振Q値が最大を示すM比より大きいため、直列腕共振器102のM比を、DM型共振器104のM比と同じ値にした場合より、DM型共振器104のM比より小さくした場合の方が、直列腕共振器102の共振Qが優れる、またはDM型共振器104の共振Qが優れる。たとえば、直列腕共振器102のM比とDM型共振器104のM比を共に0.50に設定した場合より、直列腕共振器102のM比を0.51、DM型共振器104のM比を0.49に設定した場合の方が、直列腕共振器102の共振Qが2.23倍、DM型共振器104の共振Qが2.46倍向上する。そのため、損失の小さい分波器を実現することができる。
【0071】
図35は、42°YX LiTaO基板上にアルミニウムを主成分とする金属で作成した電極指2(膜厚h=300nm)で構成された直列腕共振器102とDM型共振器104の共振Q値を説明した図である。波長換算電極膜厚は、直列腕共振器6.8%λo、DM型共振器7.2%λoである。
図35に示すように、直列腕共振器102の共振Q値とDM型共振器104の共振Q値は、共に、M比を大きくした方が大きくなる。
【0072】
本実施例4の弾性波装置101−2では、直列腕共振器102のM比は0.60に、DM型共振器104のM比は0.52に設定されているため、直列腕共振器102のM比とDM型共振器104のM比を共に0.50に設定した場合より、直列腕共振器102の共振Q値は1.39倍、DM型共振器104の共振Q値は1.17倍向上している。
なお、直列腕共振器102とDM型共振器104のM比は、上記値に限定されない。本実施例1の弾性波装置100−1で説明したように、Q値が小さい方の共振器が強く悪影響を与えるのと同様に、分波器の場合でも、Q値が小さい方の共振器が強く悪影響を与える。つまりDM型共振器104の共振Q値より直列腕共振器102の共振Q値の方が小さいため、直列腕共振器102のM比を大きくすることが最も効果的である。たとえば、直列腕共振器102のM比とDM型共振器104のM比を共に0.50に設定した場合より、直列腕共振器102のM比を0.51、DM型共振器のM比を0.50に設定した場合の方が、直列腕共振器の共振Q値が1.05倍向上する。そのため、損失の小さい分波器を実現することができる。
【0073】
図36は、42°YX LiTaO基板上にアルミニウムを主成分とする金属で作成した電極指2(膜厚h=420nm)で構成された直列腕共振器102とDM型共振器104の共振Q値を説明した図である。波長換算電極膜厚は、直列腕共振器9.6%λo、DM型共振器10.0%λoである。
図36に示すように、直列腕共振器102の共振Q値とDM型共振器104の共振Q値は、共に、M比を小さくした方が大きくなる。
【0074】
本実施例4の弾性波装置101−2では、直列腕共振器102のM比は0.50に、DM型共振器104のM比は0.44に設定されているため、直列腕共振器102の電極膜厚とDM型共振器104のM比を共に0.50に設定した場合より、直列腕共振器102の共振Q値は変わらず、DM型共振器104の共振Q値は1.36倍向上している。
なお、直列腕共振器102とDM型共振器104のM比は、上記値に限定されない。本実施例1の弾性波装置100−1で説明したように、Q値が小さい方の共振器が強く悪影響を与えるのと同様に、分波器の場合でも、Q値が小さい方の共振器が強く悪影響を与える。つまり直列腕共振器102の共振Q値よりDM型共振器104の共振Q値の方が小さいため、DM型共振器104のM比を小さくすることが最も効果的である。たとえば、直列腕共振器102のM比とDM型共振器104のM比を共に0.46に設定した場合より、直列腕共振器102のM比を0.46、DM型共振器104のM比を0.45に設定した場合の方が、DM型共振器104の共振Q値が1.09倍向上する。そのため、損失の小さい分波器を実現することができる。
【0075】
以上に示したように、任意の電極膜厚hを用いた場合であっても、直列腕共振器102のM比をDM型共振器104のM比より大きくすることで、損失の小さい分波器を実現することができるという効果が得られる。また本実施例1で説明したように、圧電基板が異なる場合においても同様の効果が得られる。さらに、直列腕共振器102の電極膜厚hとDM型共振器104の電極膜厚hが同じであるため、同時に成膜できる。そのため製造が容易であるとの効果も有する。
【0076】
なお、梯子型バンドパスフィルタを構成する直列腕共振器および並列腕共振器については、直列腕共振器の櫛型電極のM比が、並列腕共振器の櫛型電極のM比より小さくない値に設定されていれば、さらに良い。
【実施例5】
【0077】
図37は、本実施例5の弾性波装置101−3を模式的に示す上面図である。9個の共振器102〜104の電極指2の膜厚hがすべてほぼ等しいこと、さらに、少なくても1個以上の共振器が他の共振器と異なるM比を有することを除くと、図28に示した本実施例3の弾性波装置101−1と同じである。本実施例1の弾性波装置100−1と本実施例3の弾性波装置101−1で説明したように、分波器では、並列腕共振器103の反共振Qと帯域幅、直列腕共振器102の共振Qと帯域幅、DM型共振器104の共振Qと帯域幅の重要度が高い(表1)。この中で、共振Qと反共振Qは、ある程度大きくなると、これらに起因する通過帯域51の損失は、電極指2と電気配線の抵抗に起因する損失より充分小さくなる。つまり、並列腕共振器103の反共振Qと、直列腕共振器102の共振Qが充分に大きい場合、それらをさらに向上させるより、それらを劣化させずに、並列腕共振器103、直列腕共振器102、DM型共振器104の帯域幅を大きくした方が優れた分波器を実現することができる。本実施例5の弾性波装置101−3では、並列腕共振器103の反共振Qを5000以上、直列腕共振器102の共振Qを10000以上、DM型共振器104の共振Qを10000以上、且つ各共振器の帯域幅が最大になるように、電極指2の膜厚h、並列腕共振器103のM比、直列腕共振器102のM比、及びDM型共振器104のM比は最適値に設定されている。
【0078】
表2と表3は、本実施例5の弾性波装置101−3である分波器を構成する並列腕共振器103、直列腕共振器102、DM型共振器104の帯域幅を説明した表である。一例として、圧電基板として38°YX LiTaO基板を用いている。
【0079】
【表2】

【0080】
【表3】

【0081】
表2は、送信周波数帯域は1920〜1980MHzに、受信周波数は2110〜2170MHzに設定されている場合(以下この送受周波数配置をバンド1と略す)の、及び送信周波数帯域は1850〜1910MHzに、受信周波数は1930〜1990MHzに設定されている場合(以下この送受周波数配置をバンド2と略す)の、及び送信周波数帯域は880〜915MHzに、受信周波数は925〜960MHzに設定されている場合(以下この送受周波数配置をバンド8と略す)の、電極指2の膜厚h、並列腕共振器103のM比、直列腕共振器102のM比、DM型共振器104のM比、及び各共振器の帯域幅を記している。
【0082】
表3は、比較のため、並列腕共振器103のM比、直列腕共振器102のM比、DM型共振器104のM比を全て一定(0.5)とし、並列腕共振器103の反共振Qを5000以上、直列腕共振器102の共振Qを10000以上、DM型共振器104の共振Qを10000以上、且つ各共振器の帯域幅が最大になるよう、電極指2の膜厚hを選んだ場合の各共振器の帯域幅を記している。
【0083】
表2と表3から明らかなように、送信周波数より受信周波数の方が高周波側に設定されている場合、本実施例5の弾性波装置101−3では、送受周波数配置にかかわらず、直列腕共振器102のM比はDM型共振器104のM比より大きい値に、且つ直列腕共振器102のM比は並列腕共振器103のM比より大きい値に設定されているため、全てのM比が0.50に設定された場合より、直列腕共振器102とDM型共振器104の帯域幅は優れている。
【0084】
表4と表5は、本実施例5の弾性波装置101−3である別の分波器を構成する並列腕共振器103、直列腕共振器102、DM型共振器104の帯域幅を説明した表である。一例として、圧電基板として42°YX LiTaO基板を用いている。
【0085】
【表4】

【0086】
【表5】

【0087】
表4と表5から明らかなように、送信周波数より受信周波数の方が高周波側に設定されている場合、本実施例5の弾性波装置101−3では、送受周波数配置にかかわらず、直列腕共振器102のM比はDM型共振器104のM比より大きい値に、且つ直列腕共振器102のM比は並列腕共振器103のM比より大きい値に設定されているため、全てのM比が0.50に設定された場合より、直列腕共振器102とDM型共振器104の帯域幅は優れている。
【0088】
表6と表7は、本実施例5の弾性波装置101−3である、さらに別の分波器を構成する並列腕共振器103、直列腕共振器102、DM型共振器104の帯域幅を説明した表である。一例として、圧電基板として46°YX LiTaO基板を用いている。
【0089】
【表6】

【0090】
【表7】

【0091】
表6と表7から明らかなように、送信周波数より受信周波数の方が高周波側に設定されている場合、本実施例5の弾性波装置101−3では、送受周波数配置にかかわらず、直列腕共振器102のM比はDM型共振器104のM比より大きい値に、且つ直列腕共振器102のM比は並列腕共振器103のM比と同じ値に設定されているため、全てのM比が0.50に設定された場合より、1種類以上の共振器の帯域幅は優れている。
【0092】
表8と表9は、本実施例5の弾性波装置101−3である、さらに別の分波器を構成する並列腕共振器103、直列腕共振器102、DM型共振器104の帯域幅を説明した表である。一例として、圧電基板として50°YX LiTaO基板を用いている。
【0093】
【表8】

【0094】
【表9】

【0095】
表8と表9から明らかなように、送信周波数より受信周波数の方が高周波側に設定されている場合、本実施例5の弾性波装置101−3では、送受周波数配置にかかわらず、直列腕共振器102のM比はDM型共振器104のM比より大きい値に、且つ直列腕共振器102のM比は並列腕共振器103のM比より大きい値に設定されているため、全てのM比が0.50に設定された場合より、全ての腕共振器の帯域幅は優れている。
【0096】
以上に示したように、任意の電極膜厚hを用いた場合であっても、また任意の圧電基板を用いた場合であっても、直列腕共振器102のM比をDM型共振器104のM比より大きくすることで、損失の小さい分波器を実現することができるという効果が得られる。なおこの場合、直列腕共振器のM比を並列腕共振器のM比よりも小さくない値とすれば良い。さらに、直列腕共振器102の電極膜厚hと並列腕共振器103の電極膜厚hとDM型共振器104の電極膜厚hが同じであるため、同時に成膜できる。そのため製造が容易であるとの効果も有する。
【0097】
実施例5では、図37の9個の共振器102〜104の電極指2の膜厚hがほぼ等しく、異なるM比を有する場合を検討したが、9個の共振器102〜104の櫛形電極のM比がほぼ等しく、膜厚hが異なる場合でも、同様の効果が得られることが明らかである。すなわち、直列腕共振器102の電極指の膜厚をDM共振器104の電極指の膜厚より大きくすることで、損失の少ない分波器を実現することができる。この場合は、直列腕共振器の電極指の膜厚を並列腕共振器の電極指の膜厚よりも小さくない値とすれば良い。
【実施例6】
【0098】
実施例6は、実施例1または実施例2に記載した梯子型バンドパスフィルタを、実施例3〜5に記載した、梯子型バンドパスフィルタとDM型バンドパスフィルタを備え、梯子型バンドパスフィルタを送信フィルタとし、DM型バンドパスフィルタを受信フィルタとした分波器に組み込んだものである。
【0099】
すなわち、実施例1のバンドパスフィルタに対応して、梯子型バンドパスフィルタとDM型バンドパスフィルタを備え、梯子型バンドパスフィルタを送信フィルタとし、DM型バンドパスフィルタを受信フィルタとした分波器において、梯子型バンドパスフィルタを構成する直列腕共振器の電極指の膜厚を、並列腕共振器の電極指の膜厚よりも大きくすることにより、損失の小さい分波器を実現することができる。なおこの場合は、直列腕共振器の電極指の膜厚をDM共振器の電極指の膜厚よりも小さくない値とすれば良い。
【0100】
また、実施例2のバンドパスフィルタに対応して、梯子型バンドパスフィルタとDM型バンドパスフィルタを備え、梯子型バンドパスフィルタを送信フィルタとし、DM型バンドパスフィルタを受信フィルタとした分波器において、梯子型バンドパスフィルタを構成する直列腕共振器の櫛形電極のM比を、並列腕共振器の櫛形電極のM比よりも大きくすることにより、損失の小さい分波器を実現することができる。この場合は、直列腕共振器の櫛形電極のM比をDM共振器の櫛形電極のM比よりも小さくない値とすれば良い。
【0101】
本実施例1から6の弾性波装置の効果は、用いる圧電基板を限定されない。圧電性を有する材料を含む基板を用い、且つ漏洩表面弾性波を利用した弾性波装置に対して有効であるが、損失の小さい弾性波装置を実現するには、圧電性を有する材料として、圧電効果の大きいLiTaOまたはLiNbOを用いることが望ましい。
【0102】
特許文献1に記載があるように、実用上、帯域幅は3%以上である必要がある。この値が小さいと通過帯域幅が減少したり、通過帯域内にリップルが生じたりする問題が生じる。そのため、本実施例1から5の弾性波装置の効果は、実用上、電極膜厚とM比に上限値と下限値を有する。図38と図39は、本実施例1〜6の弾性波装置を構成する各共振器の電極膜厚とM比の範囲を説明した図である。一例として、圧電基板として46°YX LiTaO基板を用いている。図38は、各電極膜厚で、M比を0から1に変化させたときの最大の帯域幅、及びそのときのM比を示した図である。図39は、図38に示したM比と最大帯域幅を横軸と縦軸に記した図である。
【0103】
図38より、電極膜厚は0.04λoから0.15λoに設定する必要がある。また図39より、M比は0.38から0.55にする必要がある。電極膜厚とM比がこの範囲から外れた場合、本発明の効果は生じない。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、高周波の共振器、フィルタ等の固体回路素子として通信機器等に使用される弾性波装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0105】
1 基板
2 電極指
3 バスバー
4 反射器
5 櫛型電極
6 電気的な結合部
50 減衰帯域
51 通過帯域
100、101 漏洩表面弾性波装置
102 直列腕共振器
103 並列腕共振器
104 DM型共振器
105 入出力端子
106 共振器
107−1 梯子型バンドパスフィルタ
107−2 DM型バンドパスフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電性を有する基板の同一面上に、直列腕共振器として機能する第一の漏洩弾性波共振器と、並列腕共振器として機能する第二の漏洩弾性波共振器とを形成し、前記直列腕共振器として機能する第一の漏洩表面弾性波共振器は、共振周波数を通過帯域に、また反共振周波数を通過帯域の高周波側の減衰帯域にほぼ一致させ、前記並列腕共振器として機能する第二の漏洩表面弾性波共振器は、反共振周波数を通過帯域に、また共振周波数を通過帯域の低周波側の減衰帯域にほぼ一致させ、前記第一の漏洩表面弾性波共振器と前記第二の漏洩表面弾性波共振器とはひとつのバンドパスフィルタの一部として機能するワンチップ漏洩表面弾性波装置において、
前記直列腕共振器として機能する第一の漏洩表面弾性波共振器の電極指の膜厚が、前記並列腕共振器として機能する第二の漏洩表面弾性波共振器の電極指の膜厚より大きい値に設定されているか、または、前記直列腕共振器として機能する第一の漏洩表面弾性波共振器の櫛型電極のメタライゼーションレシオが、前記並列腕共振器として機能する第二の漏洩表面弾性波共振器の櫛型電極のメタライゼーションレシオより大きい値に設定されていることを特徴とするワンチップ漏洩表面弾性波装置。
【請求項2】
請求項1記載のワンチップ漏洩表面弾性波装置において、
前記直列腕共振器として機能する第一の漏洩表面弾性波共振器と、前記並列腕共振器として機能する第二の漏洩表面弾性波共振器とが梯子型フィルタを構成することを特徴とするワンチップ漏洩表面弾性波装置。
【請求項3】
請求項1記載のワンチップ漏洩表面弾性波装置において、
前記第一の漏洩表面弾性波共振器の櫛形電極と前記第二の漏洩表面弾性波共振器の櫛形電極とが、メタライゼーションレシオが0.38から0.55の間に設定されていることを特徴とする漏洩表面弾性波装置。
【請求項4】
圧電性を有する基板の同一面上に、直列腕共振器として機能する第一の漏洩弾性波共振器と、並列腕共振器として機能する第二の漏洩弾性波共振器と、多重モード結合型共振器として機能する第三の漏洩弾性波共振器とを形成し、前記直列腕共振器として機能する第一の漏洩表面弾性波共振器は、共振周波数を通過帯域に、また反共振周波数を通過帯域の高周波側の減衰帯域にほぼ一致させ、前記並列腕共振器として機能する第二の漏洩表面弾性波共振器は、反共振周波数を通過帯域に、また共振周波数を通過帯域の低周波側の減衰帯域にほぼ一致させ、前記第一の漏洩表面弾性波共振器と前記第二の漏洩表面弾性波共振器とは、ひとつのバンドパスフィルタの一部として機能するとともに、前記第一の漏洩表面弾性波共振器の共振周波数は、前記第三の漏洩表面弾性波共振器の共振周波数より小さく設定され、前記バンドパスフィルタと前記多重モード結合型共振器として機能する第三の漏洩表面弾性波共振器とが、ひとつの分波器として機能するワンチップ漏洩表面弾性波装置において、
前記直列腕共振器として機能する第一の漏洩表面弾性波共振器の電極指の膜厚が、前記並列腕共振器として機能する第二の漏洩表面弾性波共振器の電極指の膜厚より大きい値に設定されているか、または、前記直列腕共振器として機能する第一の漏洩表面弾性波共振器の櫛型電極のメタライゼーションレシオが、前記並列腕共振器として機能する第二の漏洩表面弾性波共振器の櫛型電極のメタライゼーションレシオより大きい値に設定されていることを特徴とするワンチップ漏洩表面弾性波装置。
【請求項5】
請求項4記載のワンチップ漏洩表面弾性波装置において、
前記直列腕共振器として機能する第一の漏洩表面弾性波共振器の電極指の膜厚が、前記多重モード結合型共振器として機能する第三の漏洩表面弾性波共振器の電極指の膜厚より小さくない値に設定されているか、または、前記直列腕共振器として機能する第一の漏洩表面弾性波共振器の櫛型電極のメタライゼーションレシオが、前記多重モード結合型共振器として機能する第三の漏洩表面弾性波共振器の櫛型電極のメタライゼーションレシオより小さくない値に設定されていることを特徴とするワンチップ漏洩表面弾性波装置。
【請求項6】
請求項4記載のワンチップ漏洩表面弾性波装置において、
前記直列腕共振器として機能する第一の漏洩表面弾性波共振器と、前記並列腕共振器として機能する第二の漏洩表面弾性波共振器とが梯子型フィルタを構成することを特徴とするワンチップ漏洩表面弾性波装置。
【請求項7】
請求項4記載のワンチップ漏洩表面弾性波装置において、
前記直列腕共振器として機能する第一の漏洩表面弾性波共振器と前記並列腕共振器として機能する第二の漏洩表面弾性波共振器とから構成されるバンドパスフィルタが送信フィルタを形成するとともに、前記多重モード結合型共振器として機能する第三の漏洩弾性波共振器が受信フィルタを形成することを特徴とするワンチップ漏洩表面弾性波装置。
【請求項8】
請求項4記載のワンチップ漏洩表面弾性波装置において、
前記第一の漏洩表面弾性波共振器の櫛形電極と前記第二の漏洩表面弾性波共振器の櫛形電極と前記第三の漏洩表面弾性波共振器の櫛形電極とが、メタライゼーションレシオが0.38から0.55の間に設定されていることを特徴とする漏洩表面弾性波装置。
【請求項9】
圧電性を有する基板の同一面上に、直列腕共振器として機能する第一の漏洩弾性波共振器と、並列腕共振器として機能する第二の漏洩弾性波共振器と、多重モード結合型共振器として機能する第三の漏洩弾性波共振器とを形成し、前記直列腕共振器として機能する第一の漏洩表面弾性波共振器は、共振周波数を通過帯域に、また反共振周波数を通過帯域の高周波側の減衰帯域にほぼ一致させ、前記並列腕共振器として機能する第二の漏洩表面弾性波共振器は、反共振周波数を通過帯域に、また共振周波数を通過帯域の低周波側の減衰帯域にほぼ一致させ、前記第一の漏洩表面弾性波共振器と前記第二の漏洩表面弾性波共振器とは、ひとつのバンドパスフィルタの一部として機能するとともに、前記第一の漏洩表面弾性波共振器の共振周波数は、前記第三の漏洩表面弾性波共振器の共振周波数より小さく設定され、前記バンドパスフィルタと前記多重モード結合型共振器として機能する第三の漏洩表面弾性波共振器とが、ひとつの分波器として機能するワンチップ漏洩表面弾性波装置において、
前記直列腕共振器として機能する第一の漏洩表面弾性波共振器の電極指の膜厚が、前記多重モード結合型共振器として機能する第三の漏洩表面弾性波共振器の電極指の膜厚より大きい値に設定されているか、または、前記直列腕共振器として機能する第一の漏洩表面弾性波共振器の櫛型電極のメタライゼーションレシオが、前記多重モード結合型共振器として機能する第三の漏洩表面弾性波共振器の櫛型電極のメタライゼーションレシオより大きい値に設定されていることを特徴とするワンチップ漏洩表面弾性波装置。
【請求項10】
請求項9記載のワンチップ漏洩表面弾性波装置において、
前記直列腕共振器として機能する第一の漏洩表面弾性波共振器の電極指の膜厚が、前記並列腕共振器として機能する第二の漏洩表面弾性波共振器の電極指の膜厚より小さくない値に設定されているか、または、前記直列腕共振器として機能する第一の漏洩表面弾性波共振器の櫛型電極のメタライゼーションレシオが、前記並列腕共振器として機能する第二の漏洩表面弾性波共振器の櫛型電極のメタライゼーションレシオより小さくない値に設定されていることを特徴とするワンチップ漏洩表面弾性波装置。
【請求項11】
請求項9記載のワンチップ漏洩表面弾性波装置において、
前記直列腕共振器として機能する第一の漏洩表面弾性波共振器と、前記並列腕共振器として機能する第二の漏洩表面弾性波共振器とが梯子型フィルタを構成することを特徴とするワンチップ漏洩表面弾性波装置。
【請求項12】
請求項9記載のワンチップ漏洩表面弾性波装置において、
前記直列腕共振器として機能する第一の漏洩表面弾性波共振器と前記並列腕共振器として機能する第二の漏洩表面弾性波共振器とから構成されるバンドパスフィルタが送信フィルタを形成するとともに、前記多重モード結合型共振器として機能する第三の漏洩弾性波共振器が受信フィルタを形成することを特徴とするワンチップ漏洩表面弾性波装置。
【請求項13】
請求項9記載のワンチップ漏洩表面弾性波装置において、
前記第一の漏洩表面弾性波共振器の櫛形電極と前記第二の漏洩表面弾性波共振器の櫛形電極と前記第三の漏洩表面弾性波共振器の櫛形電極とが、メタライゼーションレシオが0.38から0.55の間に設定されていることを特徴とする漏洩表面弾性波装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【公開番号】特開2013−81068(P2013−81068A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219974(P2011−219974)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000153535)株式会社日立メディアエレクトロニクス (452)
【Fターム(参考)】