説明

ワークの内Rを溶接するためのシーム溶接機

【課題】円形または曲線のワークの内Rを、又、内Rが小さい場合でも容易に溶接をすることが出来るシーム溶接機を提供すること。
【解決手段】シーム溶接機の上部のシリンダの下部に角度プレートが設けられ、当該角度プレートと当該上部のハウジングとの間に角度調整プレートが設けられ、当該上部のハウジングにフランジ付スペーサが設けられ、当該フランジ付スペーサに電極が設けられていること,下部のフレームと下部のハウジングとの間に角度調整プレートが設けられ、当該下部のハウジングにはフランジ付スペーサが設けられ、当該フランジ付スペーサに電極が設けられていることからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接対象物(ワーク)の内R(内側の径)を溶接するためのシーム溶接機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、シーム溶接機は2枚の板に電流を流すことによって0.24IRt=Qの原理で発熱し溶接する方法である(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。電極はワークの上下に配置される2枚の回転円盤電極であり、回転軸は上下電極で平行である。シーム溶接においては、円形又は曲線のワークの外R(外側の径)、直線のワークの外Rについては特に問題なく溶接が可能である。
【0003】
しかしながら、円形または曲線の内R(内側の径)を溶接することは非常に難しく、内Rの曲線ががきつい場合や内Rが小さい場合には不可能であった。
その理由は、内Rの曲線ががきつい場合や内Rが小さい場合には円盤電極自体がワークに当たって邪魔になってしまい、溶接部分に電極をあてることができないということからである。また、たとえ内Rが広い場合や曲線がゆるやかな場合でも、電極自体が邪魔になり適切に溶接することは大変難しかったからである。
【0004】
【特許文献1】特開平10−202369号公報(図1〜5)
【特許文献1】特開平11−309585号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、円形または曲線のワークの内Rを、又、内Rの曲線や内Rが小さい場合でも容易に溶接をすることが出来るシーム溶接機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明の内R向けシーム溶接機は、
シーム溶接機において、
シーム溶接機の上部のシリンダと電極のハウジングが角度調整可能に取り付けられ、下部のフレームと電極のハウジングが角度調整可能に取り付けられており,上下電極の回転軸が平行でないことからなる。
さらに、本発明の内R向けシーム溶接機は、シーム溶接機において、
シーム溶接機の上部のシリンダの下部に角度プレートが設けられ、当該角度プレートと当該上部のハウジングとの間に角度調整プレートが設けられ、当該上部のハウジングにフランジ付スペーサが設けられ、当該フランジ付スペーサに電極が設けられていること,
下部のフレームと下部のハウジングとの間に角度調整プレートが設けられ、当該下部のハウジングにはフランジ付スペーサが設けられ、当該フランジ付スペーサに電極が設けられていることからなる。
又、前記フランジ付スペーサ及び電極の直径がハウジングよりも小さいことが好適である。
【0007】
すなわち、従来の技術のように電極の回転軸を平行にしておらず、角度を付けて挟むように電極を配置したものである。
その結果、ワークの内Rを溶接するにあたり、電極自体がワークに当たってしまい邪魔することがなくなったものである。このため、内Rの曲線や内Rが小さい場合でも容易に電極をワークの溶接部分にあてることができる。
シリンダと電極のハウジングは、例えば間に角度調整プレートを設けたり、シリンダとハウジング間に可動機構を設けて互いを接続することで、個々のワークに対応して電極の角度を調整することができるものである。
また、フランジ付スペーサ及び電極の直径がハウジングより小さい場合には、電極により容易にワークの溶接部分をあてることができる。
【0008】
さらに、前記電極が円筒形であることが好適である。
本発明においては、電極として従来の円板形の電極も使用することが出来る。しかしながら、従来の円盤形の電極を使用すると、電極は使用により摩耗していくため、徐々に電極の径が小さくなっていくことになる(図3a参照)。そのため寿命が短く、また溶接点も変化してしまい、その時の直径にあわせて角度等の設定をしなおす必要が生じてしまう。
そこで、電極を円筒形にすると、たとえ電極が使用により摩耗していっても、電極の直径が変化することはない(図3b参照)。そのため、寿命も長く、溶接点も変化しない、という利点がある。
【発明の効果】
【0009】
本発明は以上の構成を有するので、円形または曲線のワークの内Rを、さらに、内Rが小さい場合でも容易に溶接をすることが出来る。
かつ電極を円筒形の電極にした場合、電極が摩耗しても直径が変わらず、したがって、電極の寿命が長くなり、溶接点も変化しないものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施の形態の例を図面にしたがって説明する。
図1は本発明の内R向けシーム溶接機を示す図である。
シーム溶接機の上部に設けられているシリンンダ1の下部に角度プレート2が設けられ、当該角度プレート2と当該上部のハウジング3との間に角度調整プレート4が設けられている。上部のハウジング3にはフランジ付スペーサ5が設けられ、フランジ付スペーサ5の上部には円筒形の電極6が設けられている。
【0011】
シーム溶接機の下部のフレーム7と下部のハウジング3’との間に、角度調整プレート4’が設けられ、下部のハウジング3’の上部にはフランジ付スペーサ5’が設けられ、フランジ付スペーサ5’に円筒形の電極6’が設けられている。
【0012】
ハウジング3,3’にフランジ付スペーサ5,5’を設けることにより、ハウジング3,3’の大きさより円筒形の電極6,6’が小さくなり、内Rの小さい円形又は曲線ワーク10を電極に、より容易に接触させることが出来るものである。
【0013】
又、角度調整プレート4,4’は角度プレート2,フレーム7にボルト等で取り着けるものであるが、この角度調整プレートの角度を変えることにより、上下の電極の回転軸を平行でなくすることが出来、種々の角度を付けることが可能である。その結果、種々の大きさや角度を持ったワークの内Rの溶接を可能にすることが出来るものである。
【0014】
図2は本発明の円筒形の電極を示す図である。
ハウジング3(及び3’)の上部にフランジ付スペーサ5(及び5’)が設けられ、フランジ付スペーサ5(及び5’)の上部には円筒形の電極6(及び6’)が設けられている。
【0015】
図3aは円板形の電極の摩耗する状態を示す図であり、
図3bは円筒形の電極の摩耗する状態を示す図である。
従来の電極9は円板形であり、この円板形の電極でも本発明の円形又は曲線のワークの内Rの溶接に使用することが出来るが、斜線8のように摩耗するため、電極9の電極の直径が摩耗し、変化していくことになる。しかし、円筒形の電極6(及び6’)を使用すると、電極6(及び6’)が斜線8’のように摩耗するため縦の矢印の方向に摩耗し、変化するが、電極の直径は横の矢印に示されるように摩耗せず変化しない。そのため、電極の寿命が長くなり、溶接点も変化しないものである。
【0016】
図4は円筒形の電極が回転してワークの内Rを溶接する軌跡を示す図である。
曲線のワーク10の内側の径を円筒形の電極6(及び6’)が溶接していく状態(軌跡)を示している。
【0017】
図5はワークの内Rが小さい場合の内Rを溶接する軌跡を示す拡大図である。
ワーク10の内Rが小さい場合の円筒形の電極の軌跡を分かりやすく拡大した図であり、曲線のワーク10の小さな内側の径を円筒形の電極6(及び6’)が溶接していく状態(軌跡)を示している。矢印は回転方向を示している。
【0018】
図6及び図7は本願の発明により可能となる製品図の一例である。
これら製品の内Rは、従来のシーム溶接機では溶接不可能であったものである。本願の発明により、ワークの内Rを電極にあてることが可能となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の内R向けシーム溶接機を示す図である。
【図2】本発明の円筒形の電極を示す図である。
【図3a】円板形の電極の摩耗する状態を示す図である。
【図3b】円筒形の電極の摩耗する状態を示す図である。
【図4】円筒形の電極が回転してワークの内Rを溶接する軌跡を示す図である。
【図5】ワークの内Rが小さい場合の内Rを溶接する軌跡を示す図である。
【図6】本発明により外Rだけでなく内Rも溶接されたパイプの例を示す図である。
【図7】本発明により外Rだけでなく内Rも溶接された製品の例を示す図である。
【符号の説明】
【0020】
1 シリンダ
2 角度プレート
3,3’ ハウジング
4,4’ 角度調整プレート
5,5’ フランジ付スペース
6,6’ 円筒形の電極
7 下部のフレーム
8,8’ 摩耗を示す斜線
9 従来の電極
10 ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シーム溶接機において、
シーム溶接機の上部のシリンダと電極のハウジングが角度調整可能に取り付けられ、下部のフレームと電極のハウジングが角度調整可能に取り付けられ,上下両電極の回転軸が互いに平行でないことを特徴とするワークの内Rを溶接するためのシーム溶接機。
【請求項2】
シーム溶接機において、
シーム溶接機の上部のシリンダ(1)の下部に角度プレート(2)が設けられ、当該角度プレート(2)と当該上部のハウジング(3)との間に角度調整プレート(4)が設けられ、当該上部のハウジング(3)にフランジ付スペーサ(5)が設けられ、当該フランジ付スペーサ(5)に電極(6)が設けられていること,
下部のフレーム(7)と下部のハウジング(3’)との間に角度調整プレート(4’)が設けられ、当該下部のハウジング(3’)にはフランジ付スペーサ(5’)が設けられ、当該フランジ付スペーサ(5’)に電極(6’)が設けられていること,
からなることを特徴とするワークの内Rを溶接するためのシーム溶接機。
【請求項3】
前記フランジ付スペーサ(5,5’)及び電極(6,6’)がハウジング(3,3’)よりも小さいことを特徴とするワークの内Rを溶接するためのシーム溶接機。
【請求項4】
前記電極(6,6’)が円筒形であることを特徴とする請求項1又は2記載のワークの内Rを溶接するためのシーム溶接機。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−196287(P2007−196287A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−143648(P2006−143648)
【出願日】平成18年5月24日(2006.5.24)
【出願人】(591146697)愛知産業株式会社 (19)