説明

ワークの搬送装置および搬送方法

【課題】液体への投入・排出時におけるワークへの負荷を低減して、ワークの折損や装置からの脱落を防止できると共に、貯留槽からリークする液体の量を削減でき、また、装置全長を短縮することができる搬送装置を提供する。
【解決手段】この搬送装置1は、板状のワークWを貯留槽の液体に対して投入・排出を行う搬送装置において、前記ワークWの保持を行う保持部11、12、21、22を有すると共に回転可能に支持されたワーク保持手段10、20を備え、前記ワークWを保持させた前記ワーク保持手段10、20を回転させて該ワークWを前記貯留槽30の液体Lに対して投入・排出を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの搬送装置および搬送方法に関し、さらに詳細には、薄い板状のワークを貯留槽の液体に対して投入・排出を行う搬送装置および搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、プリント基板、リードフレーム等の薄い板状のワークは、一連の製造工程において、めっき工程、洗浄工程等のように貯留槽の液体に対して投入・排出される工程が設けられている。
【0003】
ここで、ワークを貯留槽の液体に対して投入・排出を行う搬送装置の従来例を以下に示す。図6、7は、水平レール方式の搬送装置100(特許文献1参照)の例である。図8は、傾斜レール方式の搬送装置200(特許文献2参照)の例である。図9は、レール昇降方式の搬送装置300(特許文献3参照)の例である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−208993号公報
【特許文献2】特開平8−199398号公報
【特許文献3】実開平6−38274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1記載の搬送装置100は、ワーク(ここでは、プリント基板102)の端部102a、102aが、基板設置部101a、101bの搬送面上に保持される。そしてプリント基板102が、搬送プッシャー103によりガイドレール101、101に沿って横方向つまり次工程へ移動される構成を備える(図6、7参照)。なお、図7(a)は搬送装置100の正面図(概略図)であり、図7(b)は側面図(概略図)である。当該搬送装置100に例示される水平レール方式の搬送装置の場合、図7のように、液体Lを貯留している貯留槽104の出入り口104a、104bにおいて、ワーク(プリント基板102)が貯留槽104に出入するための隙間が必要である。したがって、ワークの撓みを考慮すると出入り口104a、104bの開口形状を大きく設計するため、液体のリーク量(図7中、L1、L2で図示)が多いという課題があった。またリークした液体がワーク上に載ると液体の質量によりワークの撓みが増大し、ガイドレール101、101から脱落する危険があるという課題があった。
【0006】
また、特許文献2記載の搬送装置200は、貯留槽(ここでは、電着槽201)内に液体(ここでは、電着材202)が貯留されている。この貯留槽(電着槽201)に対して、傾斜レール203を用いてワークWを貯留槽(電着槽201)に投入する。次いで、該ワークWを貯留槽(電着槽201)内の液体(電着材202)に浸漬しながら移動させる。次いで、傾斜レール204を用いてワークWを貯留槽(電着槽201)から排出する構成を備える(図8参照)。当該搬送装置200に例示される傾斜レール方式の搬送装置の場合、上記水平レール方式の搬送装置と比較して、液体のリーク量を削減でき、徐々に投入・排出することで薄い板状のワークへのストレスが軽減できる。しかしながら、傾斜レールを設ける構成によって装置全長が長くなってしまうという課題があった。
【0007】
また、特許文献3記載の搬送装置300は、昇降可能なプラットフォーム303にアーム304を介して、回転用シャフト305が取り付けられている。ワーク保持部(ここではプリント基板ホルダ307)が回転用シャフト305の周りで回転可能な軸受け306上に搭載されており、ワーク(ここではプリント基板)が挿着される。これによって、ワークが液体Lの中へ浸漬され、洗浄の後、取り出される構成を備える(図9参照)。当該搬送装置300に例示される昇降レール方式の搬送装置の場合、昇降の際に薄い板状のワーク全面に液質量・液抵抗がかかるため、ワークの撓みが増大して、折損する、あるいは、ワーク保持部から脱落する危険があるという課題があった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものである。すなわち、液体への投入・排出時におけるワークへの負荷を低減して、ワークの折損や装置からの脱落を防止できると共に、貯留槽からリークする液体の量を削減でき、また、装置全長を短縮することができる搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態として、以下に開示するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0010】
開示の搬送装置は、板状のワークを貯留槽の液体に対して投入・排出を行う搬送装置において、前記ワークの保持を行う保持部を有すると共に回転可能に支持されたワーク保持手段を備え、前記ワークを保持させた前記ワーク保持手段を回転させて該ワークを前記貯留槽の液体に対して投入・排出を行うことを要件とする。
【発明の効果】
【0011】
開示の搬送装置によれば、液体への投入・排出時におけるワークへの負荷を低減して、ワークの折損や装置からの脱落を防止することができる。また、貯留槽からリークする液体の量を削減できると共に、装置全長を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る搬送装置の例を示す概略図(正面図)である。
【図2】図1に示す搬送装置の第1のワーク保持手段の例を示す概略図(斜視図)である。
【図3】図1に示す搬送装置の第1のワーク保持手段を回転させたときの軌跡を示す説明図である。
【図4】本発明の第二の実施形態に係る搬送装置の例を示す概略図(正面図)である。
【図5】図4に示す搬送装置の水平レールの例を示す概略図(断面図)である。
【図6】従来の実施形態に係る搬送装置の例を示す概略図である。
【図7】図6に示す搬送装置の概略図(正面図)である。
【図8】従来の実施形態に係る搬送装置の他の例を示す概略図である。
【図9】従来の実施形態に係る搬送装置の他の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第一の実施形態)
以下、図面を参照して、本発明の第一の実施形態について詳しく説明する。図1(a)は、本実施形態に係る搬送装置1の例を示す正面図(概略図)であり、図1(b)は、その側面図(概略図)である。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0014】
本実施形態に係る搬送装置1は、薄い板状のワークWを貯留槽30の液体Lに対して投入・排出を行う装置である。ここでは、薄い板状のワークWとしてプリント基板を例に挙げて説明を行う。また、搬送装置1として、プリント基板の製造ラインにおいて当該プリント基板をめっき槽のめっき液に対して投入・排出を行う装置あるいは当該プリント基板を洗浄槽の洗浄液に対して投入・排出を行う装置の場合を例に挙げて説明を行う。
【0015】
本実施形態に係る搬送装置1は、図1に示すように、ワーク保持手段として第1のワーク保持手段10と第2のワーク保持手段20とを備えている。ここで、第1のワーク保持手段10の拡大図(斜視図)を図2に示し、その構成および作用について説明する。
【0016】
図2に示すように、第1のワーク保持手段10は、ワークWを挟み込んで保持する一対の対向する保持面10a、10bを有すると共に当該保持面10a、10bの面内方向すなわち矢印Tの方向に回転可能に回転軸13によって支持されている。ワークWを保持する構成の例として、第1のワーク保持手段10には、二つの保持部(第1の保持部11および第2の保持部12)が回転軸13に対して軸対象の位置に設けられている。この第1の保持部11および第2の保持部12は、いずれもワークWの対向する二辺を差し込んで保持可能な溝状に形成されている。これによれば、ワークWの中央部分に接触することなく、辺の部分のみ(すなわち端部のみ)の接触によって当該ワークWの保持が可能となる。
【0017】
ここで、第1のワーク保持手段10を回転させたときの軌跡(特に、第1の保持部11の軌跡)を図3に示す。同図3に示すように、第1のワーク保持手段10を矢印T方向に所定角度(ここでは、180[°])回転させたとき、第1の保持部11は液体Lの外から中へと移動して回転前の第2の保持部12と同じ配置となる。一方、第2の保持部12は液体Lの中から外へと移動して回転前の第1の保持部11と同じ配置となる。このように、第1のワーク保持手段10は、第1の保持部11もしくは第2の保持部12の一方が液体Lの中に位置するとき、他方が液体Lの外に位置するように配設されている。なお、回転軸13は、液体Lの液面レベルよりも高い位置となるように配設されている。
【0018】
この構成によれば、第1のワーク保持手段10を矢印T方向に所定角度(ここでは、180[°])回転させることによって、保持されたワークWが貯留槽30の液体Lの中へ投入される作用が得られる。このとき、ワークWを、保持されていない前方の一辺側から、液体Lの液面に対して0[°]より大きく180[°]より小さい角度を持たせて当該液体に対して投入・排出を行うことができる。したがって、ワークWにかかる液質量と抵抗を低減でき、ワークWへの負荷を低減することができるため、ワークWの折損や装置(レール、保持部等)からの脱落といった課題を解決することができる。また、ワーク搬送面を貯留槽内・外で高低差による区分けが可能となり、貯留槽にワークを出入させる開口部を設ける必要がないため、液体のリーク量を削減することができる。さらに、貯留槽にワークを出入させる傾斜レールを設ける必要がないため、従来の傾斜レール方式の装置と比較して、装置全長を短縮することができる。
【0019】
一方、第2のワーク保持手段20は、第1のワーク保持手段10と対向するように配設されている。より具体的には、図1に示すように、液体Lの中で、第1のワーク保持手段10における第2の保持部12の開口部12aと、第2のワーク保持手段20における第1の保持部21の開口部21aとが対向するように(向かい合うように)配設されている。なお、回転軸13に対して軸対称のため、第1のワーク保持手段10において第2の保持部12を第1の保持部11に代えても同様の作用・効果が得られる。また、回転軸23に対して軸対称のため、第2のワーク保持手段20において第1の保持部21を第2の保持部22に代えても同様の作用・効果が得られる。
【0020】
なお、第2ワーク保持手段20の構成および作用については、第1のワーク保持手段10と同様であるため、説明を省略する。
【0021】
続いて、図1を参照して、上記構成を備える搬送装置1を用いて薄い板状のワークWを貯留槽30の液体Lに対して投入・排出を行う搬送方法について説明する。
【0022】
先ず、第1のワーク保持手段10における第1の保持部11にワークW(説明の都合上、「ワークW1」と称する)を保持させるステップを実行する(ステップA1)。より具体的には、搬送レールR1によって左右の両辺部が支持されたワークW1を、後方の一辺側からプッシャ(不図示)によって押動する(図1、2における矢印S1方向)。これによって、第1のワーク保持手段10における第1の保持部11の開口部11aから溝内へワークWを進入させ、当該第1の保持部11によって保持させる。なお、ここでは第1の保持部11であるが、第2の保持部12としてもよい。
【0023】
前記ステップA1の後に、第1のワーク保持手段10を所定角度(ここでは、180[°])回転させて(矢印T方向)、第1の保持部11によって保持されるワークW1を液体Lの中へ投入するステップを実行する(ステップA2)。このとき、第1の保持部11は液体Lの外から中へと移動し、第2の保持部12は液体Lの中から外へと移動する。
【0024】
前記ステップA2の後に、液体Lの中において、ワークW1を、第1のワーク保持手段の保持部から、対向する第2のワーク保持手段20の保持部へ移し変えて保持させるステップを実行する(ステップA3)。なお、上記第1のワーク保持手段の保持部は、第1の保持部11であるが、第2の保持部12としてもよい。また、上記第2のワーク保持手段20の保持部は、第1の保持部21であるが、第2の保持部22としてもよい。
【0025】
ここで、第1のワーク保持手段10の保持部から第2のワーク保持手段20の保持部への移し変えは、ワークW1を、後方の一辺側からプッシャ(不図示)によって押動して行う(図2における矢印S2方向)。したがって、移し変えが行われる第1のワーク保持手段10の保持部と第2のワーク保持手段20の保持部とを、ワーク搬送面が同一高さとなるように配設することが好適である。
【0026】
一方、前記ステップA2の後に、液体Lの外において、他のワークW(説明の都合上、「ワークW2」と称する)を第1のワーク保持手段10の保持部(ここでは、第2の保持部12)で保持させるステップを実行する(ステップA4)。
【0027】
次いで、前記ステップA3の後で、且つ、前記ステップA4の後に、第1のワーク保持手段10を所定角度(ここでは、180[°])回転させて(矢印T方向)、第2の保持部12によって保持されるワークW2を液体Lの中へ投入するステップを実行する(ステップA5)。
【0028】
一方、前記ステップA3の後に、第2のワーク保持手段20を所定角度(ここでは、180[°])回転させて(矢印T方向)、第1の保持部21によって保持されたワークW1を液体Lの外へ排出するステップを実行する(ステップB1)。このとき、第1の保持部21は液体Lの中から外へと移動し、第2の保持部22は液体Lの外から中へと移動する。
【0029】
前記ステップB1の後に、ワークW1を第2のワーク保持手段20の第1の保持部21から取り出すステップを実行する(ステップB2)。より具体的には、第2のワーク保持手段20における第1の保持部21によって保持されたワークW1を、後方の一辺側からプッシャ(不図示)によって押動して(図1における矢印S3方向)、当該第1の保持部21から進出させる。これによって、ワークW1は、搬送レールR2へ移動されて、当該搬送レールR2によって左右の両辺部が支持された状態となる。さらに、ワークW1は、搬送レールR2によって支持され、後方の一辺側からプッシャ(不図示)によって押動されて、次の製造工程へと移動する。
【0030】
次いで、前記ステップA5の後で、且つ、前記ステップB1の後に、液体Lの中において、ワークW2を第1のワーク保持手段10の保持部(ここでは、第2の保持部12)から、第2のワーク保持手段20の保持部(ここでは、第2の保持部22)へ移し変えて保持させるステップを実行する(ステップA6)。なお、本ステップは上記ステップA3と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0031】
次いで、前記ステップA6の後で、且つ、前記ステップB2の後に、第2のワーク保持手段20を所定角度(ここでは、180[°])回転させて(矢印T方向)、第2の保持部22によって保持されたワークW2を液体Lの外へ排出するステップを実行する(ステップB3)。
【0032】
前記ステップB3の後に、ワークW2を第2のワーク保持手段20の第2の保持部22から取り出すステップを実行する(ステップB4)。より具体的には、第2のワーク保持手段20における第2の保持部22によって保持されたワークW2を、後方の一辺側からプッシャ(不図示)によって押動して(図1における矢印S3方向)、当該第2の保持部22から進出させる。これによって、ワークW2は、搬送レールR2へ移動されて、当該搬送レールR2によって左右の両辺部が支持された状態となる。さらに、ワークW2は、搬送レールR2によって支持され、後方の一辺側からプッシャ(不図示)によって押動されて、次の製造工程へと移動する。
【0033】
(第二の実施形態)
以下、図面を参照して、本発明の第二の実施形態について詳しく説明する。図4は、本実施形態に係る搬送装置1の例を示す正面図(概略図)である。なお、側面図については、図1(b)と同様であるため、記載を省略する。
【0034】
第二の実施形態に係る搬送装置1は、前述の第一の実施形態と基本的な構成は同様であるが、特に水平レール31(詳細は後述)を備える点において相違する。以下、図面を参照して、本実施形態について当該相違点を中心に詳しく説明する。
【0035】
図4に示すように、本実施形態に係る搬送装置1は、第1のワーク保持手段10と第2のワーク保持手段20との間に、ワークWが通過する水平レール31が設けられている。ここで、水平レール31の断面図(拡大図)を図5に示す。同図5のように、水平レール31は、ワークWの左右の両辺部を支持可能なように、断面略L字状の部材を対向させて配設する構成となっている。当該対向する部材間をプッシャ(不図示)が長手方向に移動可能に配設される。水平レール31の支持面31cの高さは、回転によって液体Lの中に位置したときの、第1のワーク保持手段10における第1の保持部11もしくは第2の保持部12の高さと同一となるように構成されている。さらに、支持面31cの高さは、回転によって液体Lの中に位置したときの、第2のワーク保持手段20における第1の保持部21もしくは第2の保持部22の高さと同一となるように構成されている。
【0036】
この構成によれば、ワークWを、第1のワーク保持手段10から水平レール31へ移し変えて保持させることができる。また、ワークWを、水平レール31上を移動させながら保持させることができる。さらに、ワークWを、水平レール31から第2のワーク保持手段20へ移し変えて保持させることができる。また、水平レール31の長さを所望の長さに設定することによって、タクトタイムを長くすることなく、ワークWを液体Lの中に浸漬させる時間を所望の長さに設定することができるという顕著な効果が得られる。
【0037】
続いて、図4を参照して、上記構成を備える搬送装置1を用いて薄い板状のワークWを貯留槽30の液体Lに対して投入・排出を行う搬送方法について説明する。ここで、第二の実施形態に係る搬送装置1を用いたワークの搬送方法は、前述の第一の実施形態に係る搬送装置1を用いたワークの搬送方法と基本的な構成は同様であるため、相違点を中心に詳しく説明する。
【0038】
先ずステップA1を実行する。当該ステップA1は、第一の実施形態に係るステップA1と同様である。
【0039】
前記ステップA1の後に、ステップA2を実行する。当該ステップA2は、第一の実施形態に係るステップA2と同様である。
【0040】
前記ステップA2の後に、液体Lの中において、ワークW1を、第1のワーク保持手段10の保持部から、水平レール31へ移し変えて支持させるステップを実行する(ステップA3’)。なお、上記第1のワーク保持手段10の保持部は、一例として第1の保持部11であるが、第2の保持部12としてもよい。
【0041】
ここで、第1のワーク保持手段10の保持部から水平レール31への移し変えは、ワークW1を、後方の一辺側からプッシャ(不図示)によって押動して行う(前述の第一の実施形態における図2の矢印S2方向と同様)。したがって、移し変えが行われる第1のワーク保持手段10の保持部と水平レール31の支持部(ここでは、支持面31c)とを、ワーク搬送面が同一高さとなるように配設することが好適である。
【0042】
前記ステップA3’の後に、ワークW1を水平レール31によって支持させて、当該水平レール31上を、始端部31aから終端部31bに向けて、所定速度で移動させるステップを実行する(ステップC1)。当該移動は、ワークW1を、後方の一辺側からプッシャ(不図示)によって押動して行う(図4における矢印S2方向)。ここで、ワークW1の移動速度は、製造ラインにおけるタクトタイムに応じて設定されることとなる。一方、水平レール31の長さを適宜設定することによって、ワークW1を、液体Lの中に浸漬させておく時間の調整が可能となる。すなわち、タクトタイムを長くすることなく、ワークWを液体Lの中に浸漬させる時間を所望の長さに設定することができるという顕著な効果が得られる。
【0043】
前記ステップC1の後に、液体Lの中において、ワークW1を水平レール31から、第2のワーク保持手段20の保持部へ移し変えて保持させるステップを実行する(ステップC2)。なお、上記第2のワーク保持手段20の保持部は、一例として第1の保持部21であるが、第2の保持部22としてもよい。
【0044】
ここで、水平レール31から第2のワーク保持手段20の保持部への移し変えは、ワークW1を、後方の一辺側からプッシャ(不図示)によって押動して行う(図4における矢印S2方向)。したがって、移し変えが行われる水平レール31の支持部(ここでは、支持面31c)と第2のワーク保持手段20の保持部とを、ワーク搬送面が同一高さとなるように配設することが好適である。
【0045】
前記ステップC2の後に、ステップB1を実行する。当該ステップB1は、第一の実施形態に係るステップB1と同様である。
【0046】
前記ステップB1の後に、ステップB2を実行する。当該ステップB2は、第一の実施形態に係るステップB2と同様である。
【0047】
前記ステップA2の後に、ステップA4を実行する。当該ステップA4は、第一の実施形態に係るステップA4と同様である。
【0048】
前記ステップA3’の後で、且つ、前記ステップA4の後に、ステップA5を実行する。当該ステップA5は、第一の実施形態に係るステップA5と同様である。
【0049】
前記ステップA5の後で、且つ、前記ステップC1の後に、液体Lの中において、ワークW2を第1のワーク保持手段10の保持部(ここでは、第2の保持部12)から、水平レール31へ移し変えて支持させるステップを実行する(ステップA6’)。なお、本ステップは上記ステップA3’と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0050】
前記ステップA6’の後に、ワークW2を水平レール31によって支持させて、当該水平レール31上を、始端部31aから終端部31bに向けて、所定速度で移動させるステップを実行する(ステップC3)。なお、本ステップは上記ステップC1と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0051】
前記ステップC3の後に、液体Lの中において、ワークW2を水平レール31から、第2のワーク保持手段20の保持部(ここでは、第2の保持部22)へ移し変えて保持させるステップを実行する(ステップC4)。なお、本ステップは上記ステップC2と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0052】
前記ステップB2の後で、且つ、前記ステップC4の後に、ステップB3を実行する。当該ステップB3は、第一の実施形態に係るステップB3と同様である。
【0053】
前記ステップB3の後に、ステップB4を実行する。当該ステップB4は、第一の実施形態に係るステップB4と同様である。
【0054】
以上説明した通り、開示の搬送装置によれば、特に従来の水平レール方式の搬送装置と比較して、貯留槽に出入りする水平レールを配設するための開口部を設ける必要がないため、貯留槽からリークする液体の量を削減することができる。
【0055】
また、特に従来の傾斜レール方式の搬送装置と比較して、傾斜レールを設ける必要がないため、装置全長を短縮することができる。
【0056】
また、特に従来の水平レール方式の搬送装置およびレール昇降方式の搬送装置と比較して、液体への投入・排出時におけるワークへの負荷を低減して、ワークの折損やレール、保持部等からのワークの脱落を防止することができる。
特に、薄い板状のワークの場合、ワークの折損が発生し易いため、効果が顕著である。
【0057】
さらに、プリント基板に例示されるワークの搬送中(旋回中)の姿勢変化により、プリント基板上にある液が流れ落ちるため、次工程に行くまでに設けられる液切工程におけるエア使用量を削減することができる。したがって、液切工程において使用されるエネルギーを削減することが可能となる。
【0058】
なお、本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。特に、ワークとしてプリント基板を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、リードフレーム等、様々な板状のワーク、あるいはその他の形状のワークに対しても適用が可能である。
【0059】
また、ワーク保持手段における保持部として、第1の保持部と第2の保持部とを備える構成を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、一つの保持部によって構成することも可能である。あるいはワーク保持手段に三つ以上の保持部を備える構成とすることも可能である。
【0060】
また、ワーク保持手段として第1のワーク保持手段と第2のワーク保持手段とを備える構成を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、一つのワーク保持手段によって構成することも可能である。一例として、当該ワーク保持手段を、所定角度回転させたときに、保持するワークが貯留槽の液体の中へ投入され、さらに所定角度回転させたときに、保持するワークが貯留槽の液体の外へ排出されるように配設する構成が考えられる。これによれば、ワーク保持手段を所定角度回転させて、保持するワークを貯留槽の液体の中へ投入するステップと、ワーク保持手段をさらに所定角度回転させて、保持するワークを貯留槽の液体の外へ排出するステップとを備える搬送方法が実現できる。
【0061】
また、ワーク保持手段として、第1のワーク保持手段と第2のワーク保持手段とを、並列に複数組、設ける構成とすることも可能である。これによれば、単位時間あたりのワーク搬送数(処理数)を増加させることが可能となる。
【符号の説明】
【0062】
1 搬送装置
10 第1のワーク保持手段
11 第1のワーク保持手段の第1の保持部
12 第1のワーク保持手段の第2の保持部
13 第1のワーク保持手段の回転軸
20 第2のワーク保持手段
21 第2のワーク保持手段の第1の保持部
22 第2のワーク保持手段の第2の保持部
23 第2のワーク保持手段の回転軸
30 貯留槽
31 水平レール
W ワーク
L 液体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のワークを貯留槽の液体に対して投入・排出を行う搬送装置において、
前記ワークの保持を行う保持部を有すると共に回転可能に支持されたワーク保持手段を備え、
前記ワークを保持させた前記ワーク保持手段を回転させて該ワークを前記貯留槽の液体に対して投入・排出を行うこと
を特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記ワーク保持手段は、所定角度回転させたときに、前記保持部が前記液体の中へ投入され、さらに所定角度回転させたときに、該保持部が前記液体の外へ排出されるように配設されていること
を特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【請求項3】
前記ワーク保持手段は、前記保持部として回転軸に対して軸対象の位置に第1の保持部と第2の保持部とを有し、該第1の保持部もしくは該第2の保持部の一方が前記液体の中に位置するとき、他方が前記液体の外に位置するように配設されていること
を特徴とする請求項2記載の搬送装置。
【請求項4】
前記ワーク保持手段として第1のワーク保持手段と第2のワーク保持手段とが設けられ、該第1のワーク保持手段における前記第1の保持部もしくは前記第2の保持部の一方と、該第2のワーク保持手段における前記第1の保持部もしくは前記第2の保持部の一方とが前記液体の中で対向すると共に、該第1のワーク保持手段における前記第1の保持部もしくは前記第2の保持部の他方と、該第2のワーク保持手段における前記第1の保持部もしくは前記第2の保持部の他方とが前記液体の中で対向するように配設されていること
を特徴とする請求項3記載の搬送装置。
【請求項5】
前記第1のワーク保持手段と前記第2のワーク保持手段との間に、前記ワークが通過する水平レールが設けられていること
を特徴とする請求項4記載の搬送装置。
【請求項6】
板状のワークを貯留槽の液体に対して投入・排出を行う搬送方法において、
前記ワークを保持させたワーク保持手段を回転させて該ワークを前記貯留槽の液体に対して投入・排出を行うステップ
を備えることを特徴とする搬送方法。
【請求項7】
板状のワークを貯留槽の液体に対して投入・排出を行う搬送方法において、
ワーク保持手段に前記ワークを保持させるステップと、
前記ワーク保持手段を所定角度回転させて、保持する前記ワークを前記液体の中へ投入するステップと、
前記ワーク保持手段をさらに所定角度回転させて、保持する前記ワークを前記液体の外へ排出するステップと、
を備えることを特徴とする搬送方法。
【請求項8】
板状のワークを貯留槽の液体に対して投入・排出を行う搬送方法において、
(A1)前記一のワークを第1のワーク保持手段の第1の保持部もしくは第2の保持部の一方で保持させるステップと、
(A2)前記ステップA1の後に、前記第1のワーク保持手段を所定角度回転させて、保持する前記一のワークを前記液体の中へ投入するステップと、
(A3)前記ステップA2の後に、前記液体の中において、前記一のワークを前記第1のワーク保持手段の前記第1の保持部もしくは前記第2の保持部の一方から、第2のワーク保持手段の第1の保持部もしくは第2の保持部の一方へ移し変えて保持させるステップと、
(A4)前記ステップA2の後に、前記他のワークを前記第1のワーク保持手段の前記第1の保持部もしくは前記第2の保持部の他方で保持させるステップと、
(A5)前記ステップA3、A4の後に、前記第1のワーク保持手段を所定角度回転させて、保持する前記他のワークを前記液体の中へ投入するステップと、
(B1)前記ステップA3の後に、前記第2のワーク保持手段を所定角度回転させて、保持する前記一のワークを前記液体の外へ排出するステップと、
(B2)前記ステップB1の後に、前記一のワークを前記第2のワーク保持手段の前記第1の保持部もしくは前記第2の保持部の一方から取り出すステップと、
(A6)前記ステップA5、B1の後に、前記液体の中において、前記他のワークを前記第1のワーク保持手段の前記第1の保持部もしくは前記第2の保持部の他方から、前記第2のワーク保持手段の前記第1の保持部もしくは前記第2の保持部の他方へ移し変えて保持させるステップと、
(B3)前記ステップA6、B2の後に、前記第2のワーク保持手段を所定角度回転させて、保持する前記他のワークを前記液体の外へ排出するステップと、
(B4)前記ステップB3の後に、前記他のワークを前記第2のワーク保持手段の前記第1の保持部もしくは前記第2の保持部の他方から取り出すステップと、
を備えることを特徴とする搬送方法。
【請求項9】
板状のワークを貯留槽の液体に対して投入・排出を行う搬送方法において、
(A1)前記一のワークを第1のワーク保持手段の第1の保持部もしくは第2の保持部の一方で保持させるステップと、
(A2)前記ステップA1の後に、前記第1のワーク保持手段を所定角度回転させて、保持する前記一のワークを前記液体の中へ投入するステップと、
(A3’)前記ステップA2の後に、前記液体の中において、前記一のワークを前記第1のワーク保持手段の前記第1の保持部もしくは前記第2の保持部の一方から、水平レールへ移し変えて支持させるステップと、
(C1)前記ステップA3’の後に、前記一のワークを前記水平レールによって支持させて、該水平レール上を移動させるステップと、
(C2)前記ステップC1の後に、前記液体の中において、前記一のワークを前記水平レールから、第2のワーク保持手段の第1の保持部もしくは第2の保持部の一方へ移し変えて保持させるステップと、
(B1)前記ステップC2の後に、前記第2のワーク保持手段を所定角度回転させて、保持する前記一のワークを前記液体の外へ排出するステップと、
(B2)前記ステップB1の後に、前記一のワークを前記第2のワーク保持手段の前記第1の保持部もしくは前記第2の保持部の一方から取り出すステップと、
(A4)前記ステップA2の後に、前記他のワークを前記第1のワーク保持手段の前記第1の保持部もしくは前記第2の保持部の他方で保持させるステップと、
(A5)前記ステップA3’、A4の後に、前記第1のワーク保持手段を所定角度回転させて、保持する前記他のワークを前記液体の中へ投入するステップと、
(A6’)前記ステップA5、C1の後に、前記液体の中において、前記他のワークを前記第1のワーク保持手段の前記第1の保持部もしくは前記第2の保持部の他方から、水平レールへ移し変えて支持させるステップと、
(C3)前記ステップA6’の後に、前記他のワークを前記水平レールによって支持させて、該水平レール上を移動させるステップと、
(C4)前記ステップC3の後に、前記液体の中において、前記他のワークを前記水平レールから、前記第2のワーク保持手段の前記第1の保持部もしくは前記第2の保持部の他方へ移し変えて保持させるステップと、
(B3)前記ステップB2、C4の後に、前記第2のワーク保持手段を所定角度回転させて、保持する前記他のワークを前記液体の外へ排出するステップと、
(B4)前記ステップB3の後に、前記他のワークを前記第2のワーク保持手段の前記第1の保持部もしくは前記第2の保持部の他方から取り出すステップと、
を備えることを特徴とする搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−246069(P2012−246069A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116916(P2011−116916)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】