説明

ワークの移動軌跡表示方法及び表示装置

【課題】ジョブショップ型の生産現場において、ワークの所在が不明になったとしても、捜索に費やす時間を少なく抑え得るワークの移動軌跡表示方法及び表示装置を提供する。
【解決手段】データベース2と、複数のワークWに添付されたICタグ3と、作業エリアA1〜A6毎に設置されて、搬入されたワークWの名前や作業終了時刻などの情報をデータベース2に固有のIDを付して送信する作業実績報告用PC4と、3本の搬送路R1〜R3の適宜箇所に配置されて、ワークWが近傍を通過した時点で、ワークW添付のICタグ3内の情報をデータベース2に通過時刻とともに自己保有のIDを付して送信するICタグリーダ5と、データベース2に登録された作業実績報告用PC4及びICタグリーダ5からの各情報に基づいて、ワークWの移動軌跡を作業エリアA1〜A6のレイアウト図上に表示する表示部9を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに異なる作業を行う複数の作業エリアが設置されて、施される複数の作業の内容及び順序がそれぞれ異なる複数のワークが上記複数の作業エリアを流れる所謂ジョブショップ型の生産現場において、ワーク個々の移動軌跡を把握するのに用いられるワークの移動軌跡表示方法及び表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記した施される複数の作業の内容及び順序がそれぞれ異なる複数のワークが流れるジョブショップ型の生産現場では、ワークに対する加工時間や検査時間などの作業時間を把握したり、ワークの居場所などの状況を認識したりする必要がある。
このような場合、複数のワーク個々にICタグを添付し、作業エリア毎に設置したICタグリーダに各ワークのICタグのデータを読み取らせることによって、ワークの搬入,作業開始,作業終了及び搬出の各時間を取得するのが一般的である。
ここで、例えば、特許文献1に開示された情報管理システムでは、複数の作業エリアを結ぶ各搬送路の適宜箇所にICタグリーダをそれぞれ配置し、搬送台車が上記ICタグリーダ近傍を通過する際に、この搬送台車にまとめて積まれた次工程や作業完了品置き場を目指すワーク添付の各ICタグのデータを読み取ることで、複数のワーク個々の移動軌跡を把握するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−170579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記した従来の情報管理システムにおいて、作業エリア間の搬送路上でワークの所在がつかめなくなった場合には、搬送路に配置したICタグリーダの各読み取り履歴を解析することで、ワークの所在を突き止めることができるものの、このワーク探しには、多くの時間が費やされてしまうという問題があり、この問題を解決することが従来の課題となっていた。
【0005】
本発明は、上記した従来の課題に着目してなされたもので、ジョブショップ型の生産現場において、ワークの移動軌跡をリアルタイムにそして詳細に把握することができ、その結果、ワークの所在が不明になったとしても、捜索に費やす時間を少なく抑えることが可能であり、加えて、ワークの滞留の軽減及びリードタイムの短縮にも貢献することができるワークの移動軌跡表示方法及び表示装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る発明は、互いに異なる作業を行う複数の作業エリアが設置されるジョブショップ型の生産現場において、施される複数の作業の内容及び順序がそれぞれ異なる複数のワーク個々の前記複数の作業エリア間における移動軌跡を表示するワークの移動軌跡表示方法であって、前記複数のワークに固有のIDを付したICタグをそれぞれ添付し、データベースに送信可能で且つ固有のIDを持つ作業実績報告用PCを複数の作業エリアにそれぞれ設置すると共に、データベースに送信可能で且つ固有のIDを持つICタグリーダを前記複数の作業エリアを結ぶ各搬送路の複数箇所にそれぞれ配置し、前記複数の作業エリアでは、各作業エリア毎の前記作業実績報告用PCにより、搬入されたワークの名前や作業開始時刻や作業終了時刻などの情報を前記データベースに対して該作業実績報告用PC固有のIDを付して送信し、前記複数の作業エリアを結ぶ複数の搬送路では、各々の適宜箇所の前記ICタグリーダ近傍を搬送中の前記ワークが通過した時点で、このICタグリーダにより該ワークに添付したICタグ内の固有のIDを含む情報を読み取って前記データベースに対して通過時刻とともに該ICタグリーダ固有のIDを付して送信し、前記データベースに登録された前記作業実績報告用PC及び前記ICタグリーダからの各情報に基づいて、前記ワークの移動軌跡を前記複数の作業エリアのレイアウト図上に表示する構成としたことを特徴としており、このワークの移動軌跡表示方法の構成を前述した従来の課題を解決するための手段としている。
【0007】
また、本発明の請求項2に係るワークの移動軌跡表示方法は、前記ワークの移動軌跡が、時系列的に矢印により表示される構成としている。
さらに、本発明の請求項3に係るワークの移動軌跡表示方法は、前記ワークの移動軌跡が、動画により表示される構成としている。
さらにまた、本発明の請求項4に係るワークの移動軌跡表示方法は、前記ワークの移動軌跡のうちの最新の移動区間が、それ以前と異なるパターンで表示される、例えば、異なる色や線種で表示される構成としている。
【0008】
さらにまた、本発明の請求項5に係るワークの移動軌跡表示方法において、前記複数の作業エリアを結ぶ各搬送路の適宜箇所にそれぞれ配置されたICタグリーダを、前記ワークに添付したICタグ内の情報を読み取るアンテナと、読み取ったICタグ内の情報を前記データベースに送信する移動把握用PCとから構成すると共に、これらの移動把握用PC及び前記複数の作業エリア毎にそれぞれ設置された作業実績報告用PCとは別に管理用PCを設置し、この管理用PCから前記移動把握用PC及び作業実績報告用PCに定期的に順次接続して、該移動把握用PC及び作業実績報告用PCの各々の起動状態に続いて所定のアプリケーションの起動状態を順次確認し、所定のアプリケーションまで起動している場合には、固有のIDを付した前記移動把握用PC及び作業実績報告用PCからのデータがそれぞれ前記データベースに登録されているか否かを確認し、起動状態又は所定のアプリケーションの起動状態が確認できない場合、所定のアプリケーションが起動していてもその正常起動状況を出力する専用のログファイルの不備が確認された場合、及び、データベースに該移動把握用PC及び作業実績報告用PCのデータが登録されていない場合には、前記移動把握用PC及び作業実績報告用PCに自動発信メールにより状況を伝えると共に、前記データベースに該移動把握用PC及び作業実績報告用PCのデータが登録されていない場合を除いて前記所定のアプリケーションを起動させ、前記複数の作業エリアのレイアウト図上に前記移動把握用PC及び作業実績報告用PCの稼働状況を表示する構成としている。
【0009】
一方、本発明の請求項6に係る発明は、互いに異なる作業を行う複数の作業エリアが設置されるジョブショップ型の生産現場において、施される複数の作業の内容及び順序がそれぞれ異なる複数のワーク個々の前記複数の作業エリア間における移動軌跡を表示するワークの移動軌跡表示装置であって、データベースと、前記複数のワークにそれぞれ添付されたICタグと、複数の作業エリア毎にそれぞれ設置されて、搬入されたワークの名前や作業開始時刻や作業終了時刻などの情報を前記データベースに対して該作業エリア固有のIDを付して送信する作業実績報告用PCと、前記複数の作業エリアを結ぶ各搬送路の適宜箇所にそれぞれ配置されて、前記ワークが近傍を通過した時点で、該ワークに添付したICタグ内の情報を前記データベースに対して通過時刻とともに自己保有のIDを付して送信するICタグリーダと、前記データベースに登録された前記作業実績報告用PC及び前記ICタグリーダからの各情報に基づいて、前記ワークの移動軌跡を前記複数の作業エリアのレイアウト図上に表示する表示部を備えている構成としたことを特徴としており、このワークの移動軌跡表示装置の構成を前述した従来の課題を解決するための手段としている。
【0010】
本発明に係るワークの移動軌跡表示方法及び表示装置において、ワークに添付するICタグとしては、パッシブタグ及びアクティブタグのいずれのICタグを用いてもよく、電磁波の伝達方式も電磁誘導方式及び電波式のいずれであってもよい。
また、ワークに添付したICタグ内の情報を読み取ってデータベースに送信するICタグリーダは、搬送路が交差する箇所や、搬送路が二股に分岐する箇所に配置することが望ましい。この際、ICタグリーダの搬送路における配置間隔は、ワークに添付するICタグの通信可能範囲に応じた間隔とすることが望ましい。例えば、通信可能範囲が2〜3mのUHF帯のパッシブタグを使用する場合には、ICタグリーダを5m程度の間隔で配置することが望ましい。
【0011】
本発明に係るワークの移動軌跡表示方法及び表示装置では、まず、作業エリアに搬入されたワークに対する作業が終了した時点において、この作業エリアの担当者が、作業実績報告用PCにより作業終了の報告を行うと、ワークの名前や作業終了時刻などの情報がこの作業実績報告用PC固有のIDとともにデータベースに登録される、すなわち、移動軌跡の起点がデータベースに登録される。
【0012】
次に、このようなジョブショップ型の生産現場では、ワーク搬送者が各作業エリアにおいて作業が終了したワークを受け取って次の作業エリアへ搬送する。
この搬送の間、作業エリアを結ぶ搬送路の適宜箇所に配置したICタグリーダの近傍をワークが通過した時点で、このワークに添付したICタグ内の固有のIDを含む情報及び通過時刻をICタグリーダにより固有のIDを付して報告すると、このワークの位置情報がデータベースに登録される、すなわち、上記起点からこのICタグリーダの設置点までの移動軌跡がデータベースに登録される。
【0013】
そして、ワークに対する作業が終了して次の作業エリアに搬送する度に、上記した作業エリアでの作業実績報告用PCによる作業終了報告及び搬送路上でのICタグリーダによる通過報告を行うと、データベースに登録された作業実績報告用PC及びICタグリーダからの各情報に基づいて、該当するワークがいつ何処を通って搬送されたかを把握し得ることとなり、この情報を複数の作業エリアのレイアウト図上にワークの移動軌跡として表示することで、ワークの移動経路をリアルタイムで且つ詳細に把握し得ることとなる。
【0014】
この際、ワークの移動軌跡が、時系列的に矢印により表示されるようにしたり、動画により表示されるようにしたりすれば、ワークの移動経路がより判り易くなり、ワークの移動軌跡のうちの最新の移動区間が、それ以前の移動区間と異なるパターンの色や線種で表示されるようにすれば、ワークの所在がつかめなくなった場合に、ワークの捜索がし易くなる。
【0015】
また、アンテナとともにICタグリーダを構成する移動把握用PC及び作業実績報告用PCとは別に設置した管理用PCから、移動把握用PC及び作業実績報告用PCに定期的に順次接続して、これらのPCの各々の起動状態に続いて所定のアプリケーションの起動状態を順次確認するようにし、例えば、所定のアプリケーションの起動状態が確認できない場合に、移動把握用PC及び作業実績報告用PCに自動発信メールにより状況を伝えたうえで、所定のアプリケーションを起動させるようになせば、上記したワークの移動軌跡表示システムにおける移動把握用PCや作業実績報告用PCの正常稼働率を高め得ることとなる。
【0016】
そして、複数の作業エリアのレイアウト図上に移動把握用PC及び作業実績報告用PCの稼働状況を表示するようになせば、多数あるPCすべての稼働状況をリアルタイムで且つ詳細に把握し得ることとなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の請求項1に係るワークの移動軌跡表示方法及び請求項6に係る表示装置は、上記した構成としていることから、ジョブショップ型の生産現場において、ワークの移動軌跡をリアルタイムにそして詳細に把握することができ、したがって、ワークの所在がわからなくなった場合であったとしても、捜索に費やす時間を少なく抑えることが可能であり、加えて、ジョブショップ型の生産現場で有りがちな、行く先の異なるワークをまとめて搬送することで生じる無駄むらなどの弊害や、作業エリアのレイアウト上の不備が一目瞭然となるので、このような問題点を踏まえて搬送の仕方やレイアウトを適切に変更することで、ワークの滞留の軽減及びリードタイムの短縮にも貢献することができるという非常に優れた効果がもたらされる。
【0018】
また、本発明の請求項2〜4に係るワークの移動軌跡表示方法では、それぞれ上記した構成としていることから、ワークの移動経路がより判り易くなると共に、ワークの所在がつかめなくなった場合に、ワークの捜索がし易くなるという効果が得られる。
さらに、本発明の請求項5に係るワークの移動軌跡表示方法では、上記した構成としていることから、このシステムにおける移動把握用PCや作業実績報告用PCの正常稼働率を高めることができるという非常に優れた効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例によるワークの移動軌跡表示装置をジョブショップ型の生産現場に設置した状態を示す平面説明図である。
【図2】図1におけるワークの移動軌跡表示装置のデータベースに対する作業実績報告用PC及びICタグリーダの通信要領説明図である。
【図3】図1におけるワークの移動軌跡表示装置のICタグに対する作業実績報告用PC及びICタグリーダの通信要領説明図である。
【図4】図1におけるワークの移動軌跡表示装置の稼働状況の一表示例を示す稼働状況確認図である。
【図5】図1に示したワークの移動軌跡表示装置の稼働状況を確認する際のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るワークの移動軌跡表示装置を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係るワークの移動軌跡表示装置の一実施例を示しており、図1に示すように、このワークの移動軌跡表示装置1は、互いに異なる作業を行う複数(本実施例では6箇所)の作業エリアA1〜A6を有するジョブショップ型の生産現場において、施される複数の作業の内容及び順序がそれぞれ異なる複数のワークW個々の作業エリアA1〜A6間における移動軌跡を表示する装置である。
【0021】
この移動軌跡表示装置1は、図2にも示すように、データベース2と、複数のワークWにそれぞれ添付されたICタグ3と、作業エリアA(A1〜A6)毎にそれぞれ設置されて、搬入されたワークWの名前や作業開始時刻や作業終了時刻などの情報をデータベース2に対して作業エリアA1〜A6固有のIDを付して送信する作業実績報告用PC4(41〜46)と、作業エリアA1〜A6を結ぶ複数(本実施例では3本)の搬送路R1〜R3の適宜箇所にそれぞれ配置されて、ワークWが近傍を通過した時点で、このワークWに添付したICタグ3内の情報をデータベース2に対して通過時刻とともに自己保有のIDを付して送信するICタグリーダ5(51〜56)と、データベース2に登録された作業実績報告用PC4及びICタグリーダ5からの各情報に基づいて、ワークWの移動軌跡を作業エリアA1〜A6のレイアウト図上に表示する表示部9を備えている。
【0022】
この場合、複数のワークWには、図3に示すように、作業実績報告用ICタグ3A及び移動実績把握用ICタグ3Bの2種類のICタグ3がそれぞれ添付されるようになっており、それぞれのICタグ3A,3BにワークWに関する名前などの情報が格納されるようになっている。
作業実績報告用ICタグ3Aは、作業エリアAの各作業実績報告用PC4と対をなすトレー型リーダ6(61〜66)に置くことで、データが繰り返し読み取られるようになっている。
【0023】
一方、移動実績把握用ICタグ3Bは、移動把握用PC7(71〜76)とともにICタグリーダ5を構成するアンテナ8(81〜86)の近傍を通過した時点で、データが読み取られるようになっている。
また、表示部9では、ワークWの移動軌跡Tが、順を追って矢印により表示される(実際には、動画により矢印T1〜T4が順次表示される)ようになっており、この際、ワークWの移動軌跡Tのうちの最新の移動軌跡T4が、線種がそれ以前の移動軌跡T1〜T3と異なる破線で表示されるようになっている。
【0024】
この実施例において、移動把握用PC71〜76及び作業実績報告用PC41〜46は、これらのPCとは別に遠隔に設置された図示しない管理用PCにより、各々の起動状態に続いて所定のアプリケーションの起動状態が順次確認されるようになっており、例えば、図4に示すように、作業エリアA5における作業実績報告用PC45の所定のアプリケーションの起動状態が確認できない場合に、この作業実績報告用PC45に自動発信メールにより状況を伝えたうえで、所定のアプリケーションを起動させるようになっている。
【0025】
上記したワークの移動軌跡表示装置1では、まず、例えば、作業エリアA2に搬入されたワークWに対する作業が終了した時点において、この作業エリアA2の担当者が、作業実績報告用PC42により作業終了の報告を行うと、ワークWの名前や作業終了時刻などの情報がこの作業実績報告用PC42固有のIDとともにデータベース2に登録される、すなわち、移動軌跡T(T1)の起点がデータベース2に登録される。
【0026】
次に、このようなジョブショップ型の生産現場では、ワーク搬送者が作業エリアA2において作業が終了したワークWを受け取って次の作業エリアA1へ搬送する。
この搬送の間、作業エリアA2,A1を結ぶ搬送路R2に配置したICタグリーダ51の近傍をワークWが通過した時点で、このワークWに添付した移動実績把握用ICタグ3B内の固有のIDを含む情報及び通過時刻をICタグリーダ51の移動把握用PC71により固有のIDを付して報告すると、このワークWの位置情報がデータベース2に登録される。
【0027】
次いで、ワークWが作業エリアA1へ搬入されるのに続いて作業がなされ、この作業エリアA1の担当者が、作業実績報告用PC41により作業終了の報告を行うと、ワークWの名前や作業終了時刻などの情報がこの作業実績報告用PC41固有のIDとともにデータベース2に登録される、すなわち、上記起点から作業エリアA1までの移動軌跡T(T1)がデータベース2に登録される。
【0028】
そして、ワークWに対する作業が順次終了して次の作業エリアA6,A4,A2に搬送する度に、上記した作業エリアA6,A4,A2での作業実績報告用PC46,44,42による作業終了報告及び搬送路R1〜R3上でのICタグリーダ54,56,55,53による通過報告を行うと、データベース2に登録された作業実績報告用PC46,44,42及びICタグリーダ54,56,55,53からの各情報に基づいて、該当するワークWがいつ何処を通って搬送されたかを把握し得ることとなり、この情報を表示部9の作業エリアA1〜A6のレイアウト図上にワークの移動軌跡Tとして表示することで、ワークの移動経路をリアルタイムで且つ詳細に把握し得ることとなる。
【0029】
この実施例において、表示部9が、ワークWの移動軌跡Tを、矢印T1〜T4が順次表示される動画により示すようにしているうえ、ワークWの移動軌跡Tのうちの最新の移動区間の軌跡T4の線種を、それ以前の移動軌跡T1〜T3とは異なる破線で表示するようにしているので、ワークWの移動経路がより判り易くなると共に、ワークWの所在がつかめなくなった際の捜索がし易くなる。
【0030】
次に、上記したワークの移動軌跡表示装置1による表示システムを充実したものとするための稼働状況の確認要領を説明する。
まず、図5のフローチャートに示すように、ステップS1,S2において管理用PCから移動把握用PC7及び作業実績報告用PC4に定期的に順次接続して、該当するPC4,7の起動状態に続いてこのPC4,7のタスクマネージャに所定のアプリケーションが表示されているか(所定のアプリケーションが起動されているか)を順次確認する。
【0031】
次いで、所定のアプリケーションまで起動している場合(ステップS1,S2においていずれもYesの場合)には、ステップS3において所定のアプリケーションの正常起動を示すログが専用のログファイルに出力されているかを確認するのに続いて、ステップS4において該当するPC4,7からのデータがデータベース2に登録されているか否かを確認し、ステップS5において移動把握用PC7及び作業実績報告用PC4のすべてのPCの確認が終了するまで、ステップS1〜S5の処理を繰り返す。
【0032】
そして、ステップS1においてPCの起動状態が確認できない場合(ステップS1においてNoの場合)は、ステップS7においてそのPCの担当者に自動発信メールにより状況を伝えてPCの起動を促し、ステップS2において所定のアプリケーションの起動状態が確認できない場合(ステップS2においてNoの場合)や、ステップS3において所定のアプリケーションが起動していてもその正常起動状況を出力する専用のログファイルの不備が確認された場合(ステップS3においてNoの場合)は、ステップS6において所定のアプリケーションを起動させると共に、ステップS7においてそのPCの担当者に自動発信メールにより状況を伝える。
【0033】
一方、ステップS4において該当するPC4,7からのデータがデータベース2に登録されていない場合(ステップS4においてNoの場合)は、ステップS7においてそのPCの担当者に自動発信メールにより状況を伝えて、ネットワークの接続状態の確認を促す。
このように、所定のアプリケーションの起動状態が確認できない場合などに、移動把握用PC7及び作業実績報告用PC4に自動発信メールにより状況を伝えたうえで、所定のアプリケーションを起動させるようになせば、上記したワークの移動軌跡表示装置1による表示システムにおける移動把握用PC7や作業実績報告用PC4の正常稼働率を高め得ることとなる。
【0034】
加えて、複数の作業エリアA1〜A6のレイアウト図上に、図4に示すように、移動把握用PC71〜76及び作業実績報告用PC41〜46に対して、起動状態を表す○印,未起動状態を表す×,所定アプリケーションの起動状態を表す○印及び未起動状態を表す×印のいずれかを付した吹き出しを表示するようになせば、多数あるPCすべての稼働状況を(例えば、作業エリアA5の作業実績報告用PC45が未起動状態であることを)リアルタイムで且つ詳細に把握し得ることとなる。
【0035】
上記した実施例では、ワークWに作業実績報告用ICタグ3A及び移動実績把握用ICタグ3Bの2種類のICタグ3を添付するようにしたうえで、作業エリアA1〜A6に作業実績報告用PC4と対をなすトレー型リーダ6を設置して作業実績報告用ICタグ3Aのデータを読み取るようにしているが、これに限定されるものではなく、作業実績報告用PC4さえあれば、作業実績報告用ICタグ3A及びトレー型リーダ6は必ずしも必要ない。
【0036】
本発明に係るワークの移動軌跡表示方法及び表示装置の構成は、上記した実施例の構成に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0037】
1 ワークの移動軌跡表示装置
2 データベース
3A(3) 作業実績報告用ICタグ(ICタグ)
3B(3) 移動実績把握用ICタグ(ICタグ)
4(41〜46) 作業実績報告用PC
5(51〜56) ICタグリーダ
6(61〜66) トレー型リーダ
7(71〜76) 移動把握用PC
8(81〜86) アンテナ
9 表示部
A(A1〜A6) 作業エリア
R1〜R3 搬送路
T ワークの移動軌跡
T1〜T4 矢印(ワークの移動軌跡)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる作業を行う複数の作業エリアが設置されるジョブショップ型の生産現場において、施される複数の作業の内容及び順序がそれぞれ異なる複数のワーク個々の前記複数の作業エリア間における移動軌跡を表示するワークの移動軌跡表示方法であって、
前記複数のワークに固有のIDを付したICタグをそれぞれ添付し、
データベースに送信可能で且つ固有のIDを持つ作業実績報告用PCを複数の作業エリアにそれぞれ設置すると共に、データベースに送信可能で且つ固有のIDを持つICタグリーダを前記複数の作業エリアを結ぶ各搬送路の複数箇所にそれぞれ配置し、
前記複数の作業エリアでは、各作業エリア毎の前記作業実績報告用PCにより、搬入されたワークの名前や作業開始時刻や作業終了時刻などの情報を前記データベースに対して該作業実績報告用PC固有のIDを付して送信し、
前記複数の作業エリアを結ぶ複数の搬送路では、各々の適宜箇所の前記ICタグリーダ近傍を搬送中の前記ワークが通過した時点で、このICタグリーダにより該ワークに添付したICタグ内の固有のIDを含む情報を読み取って前記データベースに対して通過時刻とともに該ICタグリーダ固有のIDを付して送信し、
前記データベースに登録された前記作業実績報告用PC及び前記ICタグリーダからの各情報に基づいて、前記ワークの移動軌跡を前記複数の作業エリアのレイアウト図上に表示する
ことを特徴とするワークの移動軌跡表示方法。
【請求項2】
前記ワークの移動軌跡が、時系列的に矢印により表示される請求項1に記載のワークの移動軌跡表示方法。
【請求項3】
前記ワークの移動軌跡が、動画により表示される請求項1又は2に記載のワークの移動軌跡表示方法。
【請求項4】
前記ワークの移動軌跡のうちの最新の移動区間が、それ以前の移動区間と異なるパターンで表示される請求項1〜3のいずれか一つの項に記載のワークの移動軌跡表示方法。
【請求項5】
前記複数の作業エリアを結ぶ各搬送路の適宜箇所にそれぞれ配置されたICタグリーダを、前記ワークに添付したICタグ内の情報を読み取るアンテナと、読み取ったICタグ内の情報を前記データベースに送信する移動把握用PCとから構成すると共に、これらの移動把握用PC及び前記複数の作業エリア毎にそれぞれ設置された作業実績報告用PCとは別に管理用PCを設置し、
この管理用PCから前記移動把握用PC及び作業実績報告用PCに定期的に順次接続して、該移動把握用PC及び作業実績報告用PCの各々の起動状態に続いて所定のアプリケーションの起動状態を順次確認し、
所定のアプリケーションまで起動している場合には、固有のIDを付した前記移動把握用PC及び作業実績報告用PCからのデータがそれぞれ前記データベースに登録されているか否かを確認し、
起動状態又は所定のアプリケーションの起動状態が確認できない場合、所定のアプリケーションが起動していてもその正常起動状況を出力する専用のログファイルの不備が確認された場合、及び、データベースに該移動把握用PC及び作業実績報告用PCのデータが登録されていない場合には、前記移動把握用PC及び作業実績報告用PCに自動発信メールにより状況を伝えると共に、前記データベースに該移動把握用PC及び作業実績報告用PCのデータが登録されていない場合を除いて前記所定のアプリケーションを起動させ、
前記複数の作業エリアのレイアウト図上に前記移動把握用PC及び作業実績報告用PCの稼働状況を表示する請求項1〜4のいずれか一つの項に記載のワークの移動軌跡表示方法。
【請求項6】
互いに異なる作業を行う複数の作業エリアが設置されるジョブショップ型の生産現場において、施される複数の作業の内容及び順序がそれぞれ異なる複数のワーク個々の前記複数の作業エリア間における移動軌跡を表示するワークの移動軌跡表示装置であって、
データベースと、
前記複数のワークにそれぞれ添付されたICタグと、
複数の作業エリア毎にそれぞれ設置されて、搬入されたワークの名前や作業開始時刻や作業終了時刻などの情報を前記データベースに対して該作業エリア固有のIDを付して送信する作業実績報告用PCと、
前記複数の作業エリアを結ぶ各搬送路の適宜箇所にそれぞれ配置されて、前記ワークが近傍を通過した時点で、該ワークに添付したICタグ内の情報を前記データベースに対して通過時刻とともに自己保有のIDを付して送信するICタグリーダと、
前記データベースに登録された前記作業実績報告用PC及び前記ICタグリーダからの各情報に基づいて、前記ワークの移動軌跡を前記複数の作業エリアのレイアウト図上に表示する表示部を備えている
ことを特徴とするワークの移動軌跡表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−244237(P2010−244237A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91004(P2009−91004)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】