説明

ワークの複合面取り加工装置および面取り加工方法

【課題】円筒状サファイアインゴットブロックの外周面を円筒研削加工およびオリフラ研削加工する際の生産時間を短くしたい。
【解決手段】 XRD機600を挟んで同一タイプの円筒研削装置500と700を設け、双方の円筒研削装置500と700のワークの面取り加工作業が同時になすことができるように、ワークの搬送ロボット200を付随させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サファイア・インゴットブロック(ワーク)の円筒外周面を円筒研削した後にオリフラをワーク外周面の結晶方位に研削加工する面取り加工装置およびワークの複合面取り加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LED基板用のサファイア基板の原材料の円柱状サファイア・インゴットブロック(ワーク)は、チョクラルスキー法(CZ法)あるいはベルニューイ法で育成したインゴットを適当な長さ(例えば、250mm、500mm、1,000mm)に結晶方向に切断してインゴットブロックとなしている。サファイア・インゴットの結晶方位は、a面、r面、m面およびc面配向を有する。円柱状インゴットブロックの直径は、2インチ、4インチ、および6インチのものが市場より入手できる。
【0003】
特開2009−298676号公報(特許文献1)の0008段落は、「円柱状インゴットブロックは、その外周面をカップホイール型砥石により円筒研削され、さらに、オリエンテーションフラット(通称「オリフラ」と言う)またはインデックスフラット(通称「インフラ」と言う)が研削または切削された後、インゴットブロックのワイヤーカットソウによる厚み200〜900μmの厚みにスライス加工されウエハを製造している。」と記載する。さらに、段落0020−0023は、「オリフラとは、円形の半導体基板の外周の一部を結晶方位と平行な方向にきり欠いて結晶方位を特定されるものであり、インフラとはオリフラと共に円形の半導体基板の外周に形成され、表裏を判別するためのものである。ただし、半導体基板の表裏を判別するためには、オリフラとインフラが半導体基板の中心に対して非対称となる位置に形成される必要がある。サファイア基板のオリフラは、結晶方位(11−20方向)を特定する。」と記載する。
【0004】
また、特開2008−207992号公報(特許文献2)は、段落0002から0004において、「サファイアは、六方晶の結晶構造を有する酸化アルミニウムの単結晶(融点:約2050℃)である。サファイア単結晶は、例えば、青色LED用のGaN成膜基板などの基板材料として使用される。サファイア単結晶は異方性を有する材料であり、サファイア単結晶のインゴットからGaN成膜用のウエハを切り出す場合、ウエハの主面がサファイア単結晶のc軸<0001>に垂直な面(c面)となるように切り出すことが一般的である。また、サファイアは光学的に一軸性の透明材料であることから液晶プロジェクタ用フィルムなどの光学材料としても使用される。光学材料として使用する場合、着色がなく透明であることが要求される。また、サファイア単結晶の偏光特性から、上記の基板材料の場合と同様、c軸に垂直な面を主面とするc面基板が主に使用される。
【0005】
サファイア単結晶のインゴットからc面基板を切り出す場合、材料をなるべく無駄にしないためには、c軸方向に結晶を育成して略円柱状のインゴットを得るとともに、このインゴットをc軸方向(インゴットの軸方向)に対して垂直に切断することが望ましい。しかしながら、c軸方向に結晶を育成した場合、泡欠陥が生じやすいことが知られている。インゴット内に泡欠陥があると、加工時に割れが生じやすく、また、基板材料や光学材料として使用した場合にそれらの特性が不十分となりやすい。泡欠陥の発生を低減する方法として、サファイア単結晶の育成方向をc軸から所定角度ずらした方向としたり、c軸に垂直なa軸又はm軸方向とすることが知られている(例えば、特開2004−83316号公報参照)。」と記載する。
【0006】
また、サファイア・インゴットブロックは、特開2008−971号公報(特許文献3
)に開示されるように、大きな厚い板状のサファイア結晶からボーリングコアビット(刃物)で型抜き切り出しして製造されているのもある。
【0007】
さらに、特表2010−514581号公報(特許文献4)は、インゴットブロックをスライス加工されたサファイア基板の表面加工方法を開示し、a面、r面、m面、及びc面配向からなる群から選択される結晶配向を有し且つ約0.037μm/cm2以下のn
TTVを有する概ね平坦な表面を含むサファイア基板であって、nTTVが該概ね0平坦な表面の表面積で規格化された総厚みばらつきであり、該基板は約9.0cm以上の直径を有するサファイア基板を得ると開示する。その実施態様として、段落0005から0009において、「第1の固定研磨材を用いてサファイア基板の第1表面を研削加工すること、及び第1の固定研磨材よりも小さい平均粒径を有する第2の固定研磨材を用いてサファイア基板の第1表面を研削加工することを含むサファイア基板の機械加工方法を対象とする。他の実施態様は、第1表面がc面配向を有するように研磨材を用いてそれぞれのサファイア基板の第1表面を研削加工することを含む複数のサファイア基板を含むサファイア基板ロットを提供する方法を対象とし、サファイア基板ロットは少なくとも20個のサファイア基板を含む。それぞれのサファイア基板は(i)c面配向、(ii)結晶のm面ミスオリエンテーション角度(θm)、及び(iii)結晶のa面ミスオリエンテーショ
ン角度(θa)を有する第1表面を有し、ここでは、(a)ミスオリエンテーション角度
θmの標準偏差σmが約0.0130以下、及び(b)ミスオリエンテーション角度θa
標準偏差σaが約0.0325以下のうち少なくとも1つが成り立つ。他の実施態様は、
少なくとも20個のサファイア基板を含むサファイア基板ロットを対象とする。それぞれのサファイア基板は(i)c面配向、(ii)結晶のm面ミスオリエンテーション角度(θm)、及び(iii)結晶のa面ミスオリエンテーション角度(θa)を有する第1表面を有し、ここでは、(a)ミスオリエンテーション角度θmの標準偏差σmが約0.0130以下、及び(b)ミスオリエンテーション角度θaの標準偏差σaが約0.0325以下のうち少なくとも1つが成り立つ。」と記載する。
【0008】
特開2009−186181号公報(特許文献5)は、図2に円柱状インゴットの結晶方位を測定するX線回析結晶方位測定装置を、および図6においてX線回析結晶方位測定装置を備えた円柱状インゴットの円筒研削装置を示し、段落0070から0077および段落0085から0089記載で円柱状インゴットの結晶方位hを測定した後に、第一搬送ロボットでインゴットを図3に示すカット面取り機に移動させ、そこで、軸方向結晶方位hに対し垂直に第一カット面Waを研削して新たな第一カット面Waとし、反対方向の第二カット面Waを研削して新たな第二カット面Waとし、ついで、第一搬送ロボットで垂直カット面W,Wを有するインゴットを円筒研削装置のクランプ装置に移送し、円柱状砥石を用いて円柱状インゴットの外周面を円筒研削する方法が記載されている。さらに、特許文献5の図10および段落0090記載において、前記円筒研削加工されたインゴットの半径方向結晶方位kを前記X線回析結晶方位測定装置で測定し、前記円筒研削装置でインゴットの半径方向結晶方位kを基準としてオリフラ面を加工形成させることを開示する。
【0009】
一方、半導体基板にノッチやレーザー加工できるX線回析結晶方位測定器付きレーザー装置(XRD機)も基板やインゴットの結晶方位を測定するのに利用されている。例えば、JST−CRESTの田中 義人は、「放射光時間分解X線回折測定による光記録媒体の相変化構造計測」先端磁性材料研究会100316@東工大発表論文(非特許文献1)でXRD機の構造およびその利用方法を開示する。
【0010】
また、成蹊大学院の菊田 進作らは、「XRD結晶方位データベースを応用したレーザ加工材のスプリングバック量の推定」成蹊大学および株式会社アマダ共同発表論文(非特許文献2)でXRD機の構造およびその利用方法を開示する。
【0011】
さらに、特開2000−158123号公報(特許文献6)は、インゴット搬送用ロボットおよびインゴットの搬送方法を開示する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】田中 義人、“放射光時間分解X線回折測定による光記録媒体の相変化構造計測”先端磁性材料研究会100316@東工大発表PDF論文、[online]、平成23年7月6日検索]、インターネット<URL:www.spring8.or.jp/ext/ja/iuss/htm/text/06file/.../tanaka.pdf>
【非特許文献2】菊田 進作、外3名、“XRD結晶方位データベースを応用したレーザ加工材のスプリングバック量の推定”、[online]、平成23年7月6日検索]、インターネット<URL:www.sd.seikei.ac.jp/lab/zairiki/_.../2011zairyo_powerpoint_kikuta.pdf>
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2009−298676号公報
【特許文献2】特開2008−207992号公報
【特許文献3】特開2008−971号公報
【特許文献4】特表2010−514581号公報
【特許文献5】特開2009−186181号公報
【特許文献6】特開2000−158123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
麻生首相のアース・グリーン・インダストリー政策およびオバマ大統領のグリーン・ニューデイル政策の一環からLED基板が注目され、サファイア基板製造メーカーからは、研削屑の発生量が少ない円柱状インゴットブロック用の面取り加工装置の出現が望まれている。
【0015】
円筒研削装置を利用する半導体基板メーカーは、円柱状インゴットブロック(ワーク)の面取り加工代(t)を0.5〜1.5mmと少なく面取り加工プログラムに設定し、この加工プログラムをコントローラー(数値制御装置)のメモリー部に記憶させ、加工業者が前記ワークのC軸両端をクランプ装置に挟持させたのち、円柱状インゴットブロックの面取り加工作業者は金槌でワークを叩いてクランプ装置のワーク支持軸に対するワークのC軸位置を研削砥石の研削砥石開始位置高さに合わせてから、研削砥石によるワークの面取り加工を開始している。
【0016】
このワークのクランプ装置への挟持(支架)位置の補正方法は、再生に利用される研削屑の発生量が減量される利点がある。しかし、金槌で円柱状インゴットブロックを叩く手作業で挟持位置が補正されるので、研削面取り加工されたワークの中には、C軸補正位置が正確ではなく、外周寸法が不足の加工ワークが見出され、これがロス基板発生原因となるので、再生加工品として廻されるので基板生産率低下の原因となっている。例えば、サファイア基板においては、ワイヤーカット法により円柱状インゴットブロックをスライス加工した厚み0.2〜1.0mmのサファイア基板のオリフラに対する基板中心を直角に結ぶ角度結晶配位方向角度が90度より0.5度を越えるとサファイア基板としては不良品扱いとなるからである。
【0017】
よって、ワークの円筒研削ステージにおいても、円筒研削加工されたワークのオリフラ加工においてもX線回析結晶方位測定器付きレーザー装置(XRD機)を用いてワークの
結晶方向を測定し、レーザー光により結晶配向方向をワークにマーキングすることが行われている。ワークのオリフラ加工時間は、円筒研削加工時間と比較して極めて短い。XRD機は2,000〜3,000万円/台と高価であるので、円筒研削装置を利用する半導体基板メーカーは、ワークの円筒研削加工とワークのオリフラ加工が1台の面取り加工機で行える1台のXRD機を備える複合加工機の出現を要望する。
【0018】
前記特許文献5記載のX線回析結晶方位測定装置、カット面取り機および円筒研削装置を備える円柱状インゴットの複合面取り加工装置は、円筒研削装置を利用する半導体基板メーカーの要望を満たすものである。しかし、円柱状インゴットの結晶方位hを測定した後に、第一搬送ロボットでインゴットをカット面取り機に移動させ、そこで、軸方向結晶方位hに対し垂直に第一カット面Waを研削して新たな第一カット面Waとし、反対方向の第二カット面Waを研削して新たな第二カット面Waとし、ついで、第一搬送ロボットで垂直カット面W,Wを有するインゴットを円筒研削装置のクランプ装置へ移送し、円筒研削を行っている。しかしながら、現在、半導体基板メーカー用に市場に出回っているインゴットブロックは、前記の円筒研削加工される前のものであり、第一カット面Waと第二カット面Waを有し、C軸マーカーが施されている外周表面に皺のあるワークである。
【0019】
特許文献5記載のX線回析結晶方位測定装置の代わりに、前述のXRD機を用いれば、XRD機より照射されるレーザー光でオリフラ加工される結晶方位のマーキングができ、特許文献5記載のカット面取り機は不要となる。また、XRD機で円柱状インゴットブロックのC軸心から外周面に到る半径の距離も測定できる。
【0020】
本発明の第一の目的は、現在、半導体基板メーカー用に市場に出回っているサファイア・インゴットブロック(ワーク)の円筒研削加工とワークのオリフラ加工を1台の複合面取り加工装置で行えるXRD機を備える複合面取り加工装置の提供にある。
【0021】
本発明の第二の目的は、この複合加工機を用い、芯出し機能を備えた主軸台と心押台よりなる第一クランプ装置へのブロック搬送ロボットによるサファイア・インゴットブロック(ワーク)のローディング工程、XRD機でワークのC軸心までの距離を読み取り、円筒研削取り代(t)を引いた目的とする半径(R/2)の円柱状インゴットブロックが得られるカップホイール型砥石の研削開始点位置を算出する工程、前記カップホイール型砥石によるワークの円筒研削加工工程、ワークの芯出し機能を備えた主軸台と心押台よりなる第二クランプ装置への第一クランプ装置に支架されたワークを前記ブロック搬送ロボットにより受け渡す工程、および、XRD機でワークのオリフラ加工される結晶方位を測定しレーザー光でマーキングする工程、前記第二クランプ装置の主軸台の支持軸を回転させてオリフラ加工される結晶方位に芯出しする工程、カップホイール型砥石によるワークのオリフラ研削加工工程、および、前記搬送ロボットを用いて第二クランプ装置に支架されたオリフラ加工されたワークをアンローディングする工程を含むインゴットブロックの面取り加工方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の請求項1は、
左右方向に延びた第一案内レール上を滑走できる搬送ロボット、
上記第一案内レールの右端に設けられたサファイア・インゴットブロック(ワーク)の第一貯蔵棚、
上記第一案内レールの左端に設けられたオリフラ加工されたワーク(最終加工製品)の第二貯蔵棚、
前記搬送ロボットの滑走用第一案内レールに対し、後ろ側に平行に設けられた右端より左端側に向かって、第一円筒研削装置、X線回析結晶方位測定器付きレーザー装置(XR
D機)および第二円筒研削装置を間隔空けて併設した面取り加工装置群、
より構成されるワークの複合面取り加工装置であって、
上記第一円筒研削装置および第二円筒研削装置は、同一種の円筒研削装置であって、前後方向に延びる第二案内レール上を滑走できる芯出し機能を備えた主軸台と心押台よりなるクランプ装置を載置する移動テーブルを設けとともに、前記クランプ装置の支持軸に支架されるワークのC軸に対し直角方向に、かつ、C軸を挟んで一対の円筒研削用カップホイール型砥石軸を前進後退可能に設けるとともに、オートローダー機器およびワークストッカーを備え、前記ワークストッカーと前記オートローダー機器と前記クランプ装置とでワークローディング/アンローディングステージを構成し、前記クランプ装置と前記一対の円筒研削用カップホイール型砥石軸とでワークの円筒研削ステージおよびオリフラ研削加工ステージを構成する、
ことを特徴とする複合面取り加工装置を提供するものである。
【0023】
本発明の請求項2の発明は、請求項1記載の複合面取り加工装置を用い、つぎの工程を経てサファイア・インゴットブロック(ワーク)を円筒研削加工およびオリフラ形成加工する方法を提供するものである。
(1)第一貯蔵棚に保管されているワークをブロック搬送ロボットで把持し、ついで把持されたワークを前記X線回析結晶方位測定器付きレーザー装置(XRD機)前に移送し、X線回析結晶方位測定器付きレーザー装置(XRD機)でワークの両端のC軸方位を検出し、レーザー光でマーキングする。
(2)ブロック搬送ロボットに把持されたC軸マーキングされたワークを、円筒研削装置のワークストッカーに移送し、ついで、オートローダー機器のハンド爪にワークを抱かえ込み、クランプ装置の主軸台の支持軸と心押台の支持軸間にワークのマーキングされたC軸心がこのクランプ装置の主軸台の支持軸と心押台の支持軸を結ぶC軸心一致するようにワークを支架させる、ワークのローディング工程。
(3)前記クランプ装置に支架されているワークを主軸台のサーボモータによりクランプ装置のC軸廻りに回転させ、前記カップホイール型砥石軸を回転させ、回転するこのカップホイール型砥石を前記C軸廻りに回転しているワークの円周面に当接するよう前進(左方向移動)させて円筒研削加工を開始し、前記カップホイール型砥石を円筒研削取り代(t)を引いた目的とする半径(R/2)の円筒研削加工ワークが得られる距離まで前進(左方向移動)させる切込み加工を行った後、前記クランプ装置を前記カップホイール型砥石側へさらに前進させ、通過させて前記クランプ装置に支架されているワークの外周面を円筒研削加工する、円筒研削加工する工程。
(4)前記クランプ装置に支架された円筒研削加工されたワークをオートローダー機器のハンド爪に抱き、ついで、円筒研削装置のワークストッカーに円筒研削加工されたワークを移送する、ワークのアンローディング工程。
(5)円筒研削加工されたワークを前記ブロック搬送ロボットで受け取り、ついで、受け取ったワークを前記X線回析結晶方位測定器付きレーザー装置(XRD機)前に移送し、XRD機でワークのオリフラ結晶方位を検出した後、ワークにオリフラ結晶方位をレーザー光でマーキングする、オリフラマーキング工程。
(6)前記ブロック搬送ロボットに把持されたオリフラ結晶方位がマーキングされたワークを前記円筒研削加工装置のワークストッカーに移送し、ついで、オートローダー機器のハンド爪にワークを抱かえ込み、前記クランプ装置の主軸台の支持軸と心押台の支持軸間にワークのマーキングされたC軸心がこの第二クランプ装置の主軸台の支持軸と心押台の支持軸を結ぶC軸心と一致するようにワークを支架させる、ワークの受け渡しローディング工程。
(7)前記クランプ装置の主軸台の支持軸を回転させてオリフラ加工される結晶方位に前記研削加工されたワークを芯出しする、芯出し工程。
(8)前記円筒研削装置の一対のカップホイール型砥石軸の内のワークがオリフラ加工される位置に近い側にあるカップホイール型砥石を軸承する砥石軸を回転させ、回転する
カップホイール型砥石を前記オリフラ加工される結晶方位に芯出しされたワークの円周面に当接するよう前進(左方向移動)させてオリフラ研削加工を開始し、さらに前記カップホイール型砥石を前進させてオリフラ研削取り代(tof)を研削する距離まで前進(左方向移動)させる切込み加工を行った後、前記クランプ装置を前記カップホイール型砥石側へ移動させて円柱状インゴットブロックの外周面にオリフラを形成する、オリフラ研削加工工程。
および、
(9)前記クランプ装置に支架されたオリフラ研削加工されたワークを前記オートローダー機器のロボット爪で把持し、前記ワークロッカーに移送した後、前記搬送ロボットがワークを受け取って第二貯蔵棚に移送する、アンローディング工程。
【発明の効果】
【0024】
本発明の複合面取り加工装置は、1台のXRD機の使用であって、1台の円筒研削装置でインゴットブロックの円筒研削加工およびオリフラ研削加工できるので、従来のインゴットブロックの円筒研削加工機およびインゴットブロックのオリフラ研削加工機の2台を使用する研削加工方法と比較してXRD機の使用を1台減らすことができる。
【0025】
また、オリフラ研削加工時間は、円筒研削加工時間と比較すると極めて短い時間である。よって、XRD機を挟んでその両隣りに2台の円筒研削装置を配置させたことにより、それぞれの円筒研削装置によるワークの円筒研削開始時間をずらして行うことが可能であり、面取り加工されるワークの単位時間当たりの生産量を多くすることができる。あるいは、第一の円筒研削装置でワークの円筒研削加工を、第二の円筒研削装置でワークのオリフラ加工を行わせることも可能である。
【0026】
カップホイール型砥石一対を同時に用いてワークを円筒研削加工できるので、円筒研削加工時間を短縮できる。
【0027】
さらに、XRD機でワークのC軸心から外周面に到るワーク半径の最大値と最小値を測定すると、円筒研削取り代(t)した際に所望の直径(R)の円筒研削加工されたワークが得られるか否か判定することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は複合面取り加工装置の平面図である。
【図2】図2は円筒研削装置の側面面である。
【図3】図3は円筒研削装置の平面面である。
【図4】図4はオートローダー機器の背面図である。
【図5】図5は円筒研削装置の平面図で、オートローダー機器は省略されている。
【図6】図6はワークのクランプ装置での芯出し作業および円筒研削作業を示す側面図である。
【図7】図7はワークのクランプ装置での芯出し工程および円筒研削工程に到る工程フロー図である。
【図8】図8はワーク外周面を面取り加工している作業図であり、ワークの端面方向から見た図である。図8aは円筒研削加工作業を、図8bはオリフラ加工作業を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1に示される本願発明の複合面取り加工装置1は、左右方向に延びた第一案内レール100上を滑走できる搬送ロボット200、第一案内レールの右端に設けられたワークの第一貯蔵棚300、前記第一案内レール100の左端に設けられたオリフラ加工されたワークの第二貯蔵棚400、前記搬送ロボットの滑走用第一案内レール100に対し、後ろ側に平行に設けられた右端より左端側に向かって、第一円筒研削装置500a,500b
、XRD機600、および、第二円筒研削装置700a,700bの5機が間隔空けて併設した複合面取り加工装置1である。
【0030】
第一円筒研削装置500と第二円筒研削装置700は、同一型の円筒研削装置であり、第一円筒研削装置500aおよび第二円筒研削装置700aにはカップホイール型粗研削砥石10gが、第一円筒研削装置500bおよび第二円筒研削装置700bにはカップホイール型仕上げ研削砥石11gが取り付けられている。用いるカップホイール型砥石の砥番、および、円筒研削加工されたワークの表面の所望の平滑性の程度によっては円筒研削装置500b,700aの双方、または、一方の設置が本来不要となることもある。
【0031】
図1に示す第一円筒研削装置500a,500bの2台、および、第二円筒研削装置700a,700bの2台の代りに図2、図3に示すカップホイール型粗研削砥石10gおよびカップホイール型仕上げ研削砥石11gを備える円筒研削装置500,700を用いてもよい。
【0032】
図2、図3および図5に示すように、第一円筒研削装置500および第二筒研削装置700は、機枠(ベース)2に左右方向に延びて敷設された一対の案内レール3,3上を左右方向に往復移動できるように設けられたワークテーブル4を設けてある。このワークテーブル4の左右往復移動は、サーボモータ5による回転駆動をボールネジ6が受けて回転し、このボールネジに螺合された固定台(図示されていない)が左方向または右方向に前進することにより、この固定台表面にワークテーブル4の裏面が固定されているワークテーブル4が左方向または右方向に前進する。ワークテーブル4の左方向または右方向の前進は、サーボモータ5の回転軸が時計廻り方向か、逆時計廻り方向かに依存する。
【0033】
このワークテーブル4上に前後に分離して搭載された主軸台7aと心押台7bの一対よりなるクランプ装置7が搭載されている。よって、ワークテーブル4の前方向または後ろ方向の移動に付随してこのクランプ装置7も前方向または後ろ方向に移動し、クランプ装置7の主軸台センター支持軸7aと心押台センター支持軸7bにより支架(挟持)されて宙吊り状態となったワークwは、第一円筒研削ステージ10、第二円筒研削ステージ11、またはロードポート8位置へと移動することが可能となっている。
【0034】
クランプ装置7は公知のチャック機構であり、シリコンインゴットの円筒研削盤でよく使用されている。主軸台7aは主軸台センター支持軸7aをサーボモータ7aで回転させることによりワークwを360度回転させる機能を有する。心押台7bは空気シリンダー7e駆動でガイドレール上を左右に移動できる移動台7b上に設けられ、ワークをクランプ機構7で支架したのち、レバーを押し下げることにより固定し、ワークテーブル4の移動により心押台7bを搭載する移動台7bが移動するのを防ぐ。
【0035】
前記第一円筒研削ステージ10、第二円筒研削ステージ11、およびロードポート8の位置関係は、前記ワークテーブル4を側面側から直角に見る方向であって、かつ、前側方向より後ろ側方向へ向かって、第一円筒研削ステージ10、第二研削ステージ11、ロードポート8を設ける。第一円筒研削ステージ10および第二円筒研削ステージ11は密閉カバー12で覆われている。また、ロードポート8は片手横スライド扉12aにより閉じられる。密閉カバー12で覆われた各研削10,11の空間には排気ダクト18が接続され、この空間内に浮遊するミストや研削屑を外部へ排出する。
【0036】
第一円筒研削ステージ10は、サーボモータ10m,10mの回転駆動により前後移動可能なツールテーブル10t,10t上に設けられた砥石軸の一対10a,10aに軸承されたカップホイール型砥石の一対10g,10gをその研削砥石面10g,10gが相対向するようにワークテーブル4を挟んでワークテーブル4前後に対称にかつ砥石軸
芯10,10が同一線上となる位置に設け、これら砥石軸10a,10aはサーボモータ10,10の回転駆動により回転される構造となっている。
【0037】
サーボモータ10m,10mによる回転駆動をボールネジが受けて回転し、このボールネジに螺合された固定台が前方向または後方向に前進または後退することにより、この固定台表面にツールテーブル10t,10tの裏面が固定されているツールテーブル10t,10tが前進移動または後退移動する。このツールテーブルの前進または後退の移動方向は、サーボモータ10m,10mの回転軸が時計廻り方向か、逆時計廻り方向かに依存する。
【0038】
第二円筒研削ステージ11は、サーボモータ11m,11mの回転駆動により前後移動可能なツールテーブル11t,11t上に設けられた砥石軸の一対11a,11aに軸承されたカップホイール型砥石の一対11g,11gをその研削砥石面11g,11gが相対向するようにワークテーブル4を挟んでワークテーブル4前後に対称にかつ砥石軸芯11,11が同一線上となる位置に設け、これら砥石軸11a,11aはサーボモータ11,11の回転駆動により回転される構造となっている。
【0039】
サーボモータ11m,11mによる回転駆動をボールネジが受けて回転し、このボール
ネジに螺合された固定台が前方向または後方向に前進移動または後退移動することにより、この固定台表面にツールテーブル11t,11tの裏面が固定されているツールテーブル11t,11tが前進または後退する。このツールテーブルの前進または後退の移動方向は、サーボモータ11m,11mの回転軸が時計廻り方向か、逆時計廻り方向かに依存する。
【0040】
第二円筒研削ステージ11は、前記第一円筒研削ステージ10の後ろ側に平行に設けられる。即ち、両ステージ10,11の砥石軸芯10,11が平行である。
【0041】
カップホイール型円筒研削砥石10g,10g,11g,11gおよびオリフラ研削加工用カップホイール型砥石のカップホイール型砥石直径は、ワークが2〜6インチのサファイア基板用円柱状インゴットブロックであるときは、100〜240mmである。カップ砥石片の幅は3〜10mm、リング状砥石幅は5〜15mmであるのがワークの研削焼け防止の観点から好ましい。
【0042】
カップホイール型円筒研削砥石10g,11gの砥粒は、ダイヤモンド砥粒、CBN砥粒が好ましく、結合剤(ボンド)はメタルボンド、ビトリファイドボンド、エポキシレジンボンドがよい。例えば、カップホイール型円筒研削砥石は特開平9−38866号公報、特開2000―94342号公報や特開2004−167617号公報等に開示される有底筒状砥石台金の下部環状輪に砥石刃の多数を研削液が散逸する隙間間隔で環状に配置したカップホイール型砥石で、台金の内側に供給された研削液が前記隙間から散逸する構造のものが好ましい。このカップホイール型円筒研削砥石の環状砥石刃の直径は、ワーク直径の1.2〜1.5倍の直径であることが好ましい。前記カップホイール型粗研削砥石10gの環状砥石刃は、砥番100〜280番のダイヤモンドレジンボンド砥石、またはダイヤモンドビトリファイドボンド砥石が好ましい。また、カップホイール型仕上げ研削砥石11gの環状砥石刃は、砥番300〜1,200番のダイヤモンドレジンボンド砥石、ダイヤモンドビトリファイドボンド砥石、またはダイヤモンドメタルボンド砥石が好ましい。
【0043】
研削液としては、純水、コロイダルシリカ水分散液、セリア水分散液、SC−1液、SC−2液、あるいは、これら水分散液に有機リン化合物を配合した水分散液を利用するのが好ましい。
【0044】
ロードポート8は、第二円筒研削ステージ11の後ろ側であってワークテーブル4の前側に位置するハウジング材にワークwを前記クランプ装置7への移出入を可能とする開口部を設けることにより形成される。
【0045】
ワークのオリフラ研削加工時には、前記第一円筒研削ステージ10は、第一オリフラ研削ステージと呼び変えられ、前記第二円筒研削ステージ11は、第二オリフラ研削ステージと呼び変えられる。
【0046】
図2において符号20は制御装置を、符号21は操作盤を示す。また、図3において、符号9cは研削液供給管を示す。
【0047】
図1、図2、図3および図4に示すように、円筒研削装置500,700は、前記ワークテーブル4の前側であって前記ロードポート8と前記第二研削ステージ11との空間部にオートローダー(ワークローディング/アンローディング装置)13およびインゴットブロク3本を貯えるワークストッカー14を機枠2上に並設している。符号15は、脚立車を備えた運搬台車16のテーブル上に載置された予備のワークストッカー(保管棚)である。この予備のワークストッカー15は、第一案内レールの両端に備え付けられる既述の貯蔵棚300,400として利用してもよい。
【0048】
ワークストッカー(保管棚)14,15は、ワーク3本w,w,wを45度傾斜して収納できる断面が逆2等辺三角形状のV字棚段を備え、機枠から突き出した位置決めピン16上に載置されている。
【0049】
前記オートローダー機器(ワークローディング/アンローディング装置)13は、ワークストッカー14V字棚段に保管されているワーク1本を1対の爪13a,13bで挟持し、両爪を上昇させることによりワークを吊り上げ、ついで、後退、右方向への移動、下降してロードポート8前に位置させ、さらに後退させることによりこのロードポート8からワークをクランプ装置7の主軸台7aと心押台7b間へと搬送する。ワークの一端を主軸台7aのセンター支持軸7a1に当接させた後、心押台7bを空気シリンダー7eで右方向に移動させてセンター支持軸7b1に他端を当接させワークを45度V傾斜させかつ4面を宙吊り状態に支架する。ついで、前記爪13a,13bを離間させてワークの把持を開放し、ついで、両爪13a,13bを支持する固定台13fを上昇させ、左方向に移動させ、さらに、前方向に後退させ両爪13a,13bを待機位置へと戻る。
【0050】
また、前記クランプ装置7に宙吊り状態に支架されている面取り加工および洗浄・風乾されたワークを両爪13a,13bで把持し、ついで、両爪13a,13bを支持する固定台13fを上昇させ、左方向に移動させ、さらに、前方向に後退させ両爪13a,13bをワークストッカー14,15の空棚上方へ移動したのち、下降させてワークを前記空棚に載置下後、両爪13a,13bを離間してワークを開放したのち、前記待機位置へと両爪13a,13bを戻す。
【0051】
両爪13a,13bを支持する固定台13fの前後方向の移動は、サーボモータ13mにより回転駆動されたボールネジ13kに裏面を螺合させた固定台13fの滑走面13sをコラム13c側面に設けられた案内レール13g上を滑走させることにより行われる。両爪13a,13bを支持する固定台13fの上下方向の移動は、エアーシリンダー13pにより行われる。両爪13a,13bの離間は、図4の円内に示されるマイクロウイークエアシリンダ13eを用いて両爪13a,13bを離間させる。両爪13a,13bの僅かな昇降の微調整は、マイクロウイークエアシリンダ13lを用いて行う。両爪13a,13bの僅かな前後移動の微調整は、マイクロウイークエアシリンダ13を用いて行
う。
【0052】
上記円筒研削装置に設置されたワークストッカー14,15に保管されたワークwをオートローダー機器13のロボット爪13a,13bを用い、クランプ装置7の支持軸7a,7bに自動挟持(支架)する工程は次ぎのように行われる。
【0053】
オートローダー機器13のロボット爪13a,13bで直径がRmm、研削取り代(t)設定がtmm厚みの円筒状インゴットブロック(ワーク)の中央部を把持する。S01
【0054】
前記ロボット爪に把持されたワークを主軸台7aの支持軸7aと心押台7bの支持軸7b間へ搬入し、前記心押台7bを前進させて前記ワークwの長手方向(C軸方向)の両端を前記クランプ装置7の支持軸7a,7bで支架させる。なお、支持軸7a,7bの両軸心を結ぶ線をクランプ装置7のC軸心と呼ぶ。S02
【0055】
オートローダー機器13のロボット爪13a,13bをワークwより遠ざける。S03
【0056】
クランプ装置7に支架させたワークwの両端近傍の外周位置高さ(H,H)を高さ測定機器HS(例えば、東京精密株式会社のタッチプローブセンサΣD(商品名)、ニコン株式会社のレーザー型変位センサー機器、または、CCDカメラを備えた画像撮像装置を用いて前記ワークを主軸台でC軸周りに360度回転させながら測定する。このワークwの両端近傍の外周位置高さ(H,H)測定は、XRD機でワークのC軸を検出するときに、C軸心からワーク外周に到るワーク半径を測定して求めることもできる。S04
【0057】
この測定された2点のC軸線上からの外周位置高さの最大値(H)と最小値(H)の値(H,H)が共に(R/2−t)mm以上であればワークのクランプ装置7への自動クランプ終了の信号を発信する後述するS12aに進み、次工程のカップホイール型砥石による円筒状インゴットブロックのインフィード面取り研削加工を開始する。S13
【0058】
S04工程で測定された2点のC軸線上からの外周位置高さの最大値(H)と最小値(H)の差(H−H)の1/2量を数値制御装置の演算部で算出する。S05
【0059】
また、クランプ装置7のC軸心とカップホイール型砥石10gの研削開始点位置間の距離(R/2−t)と前記最小値(H)の大小を数値制御装置の比較部で比較し、(R/2−t−H)の値が正となる方向であって、クランプ装置7のC軸心と高さ測定機器HSを含む平面上でワークのC軸心を移動させる方向を決める。S06
【0060】
前記ワークwの中央を前記オートローダー機器13のロボット爪13a,13bで把持した後、クランプ装置7の心押台7bを後退させてワークの挟持を開放する。S07
【0061】
前記オートローダー機器のロボット爪に把持されたワークを前記の算出された(H−H)の1/2量だけインゴットブロックのC軸位置を移動させる前記クランプ装置の支持軸心(C軸)への補正を行う。S08
【0062】
前記心押台7bを前進させて前記クランプ装置7の支持軸7a,7bに支架させる。S09
【0063】
ロボット爪13a,13bをワークwより遠ざける。S10
【0064】
支架させた前記ワークwの両端近傍の外周位置高さ(H,H)を前記高さ測定機器HSを用いて前記ワークwを主軸台7aのサーボモータでC軸周りに360度回転させながら測定する。S11
【0065】
この測定された2点のC軸線上からの外周位置高さの最大値(H)と最小値(H)の値(H,H)が共に(R/2−t)mm以上であればワークのクランプ装置7への自動クランプ終了の信号を発信しS12a、次工程のカップホイール型砥石による円筒状インゴットブロックのインフィード面取り研削加工を開始する。S13
【0066】
前記測定された2点のC軸線上からの外周位置高さの最大値(H)と最小値(H)の値(H,H)の少なくとも1点の外周位置高さの値が(R/2−t)mm未満であればワークのクランプ装置への自動クランプ不良の信号を発信しS12b、前記オートローダー機器13のロボット爪13a,13bでワークwの中央部を把持した後、前記心押台7bを後退させてワークのクランプ装置7による支架を開放し、次いでロボット爪13a,13bをワークストッカー14へ移動させる(ワークをクランプ装置7外へ搬送する)。S14
【0067】
上記S13工程のカップホイール型砥石10gによる円筒状インゴットブロックの面取り研削加工は、インゴットブロックを宙吊りに支架したクランプ機構7を左右方向に1〜15mm/分速度で移動させながら、かつ、主軸台のセンター支持軸7aを10〜300rpmの回転速度で回転させながら800〜3,000rpmの回転速度で回転しているカップホイール型砥石の一対10g,10gの砥石軸をクランプ装置7のC軸心側へ前進させてカップホイール型砥石10g,10gの刃先位置がクランプ装置7のC軸心から(R/2−t)の距離(研削開始点位置)までインフィードして研削加工を開始し、研削液を5〜100cc/分の量研削作業点に供給させながら前記カップホイール型砥石の一対10g,10gにより移動するインゴットブロック外周面厚みをtmmの取り代量除去するインフィード円筒研削加工である。
【0068】
カップホイール型円筒研削砥石10g,11gによるワークの研削取り代(t)は0.5〜1.0mmである。
【0069】
上述のS12b工程で自動クランプ不良と判定された円柱状インゴットブロックwは、円筒研削加工が行われずに回収されるので、研削量(t)を前記設定研削量(t)よりも大きい値とした円筒研削材料として再使用可能である。
【0070】
前述したように、第一案内レール100上を滑走する搬送ロボット200は、ワークロッカー14、貯蔵棚300,400、第一円筒研削装置500、XDR機600、第二円筒研削装置700間においてワークwを受け渡すのに使用される。
【0071】
X線回析結晶方位測定器付きレーザー装置(X-ray diffraction)600は、X線照射
器、X線回析器、レーザー光照射器、CCDカメラ、ワーク台、時間回路を有するコントローラ等を備える。ワークの撮像、ワークの結晶方位測定、ワークへのレーザーマーキングなどが可能である。
【0072】
CCDカメラでワークのC軸心(中心点)からワークの外周までの半径を測定できるので、ワークを回転させながらワークの半径をこのXRD機で測定し、半径の最大値(H)と最小値(H)を測定しておけば、本願明細書の段落0057で記載したように、この測定された2点のC軸線上からの外周位置高さの最大値(H)と最小値(H)の値(H,H)が共に(R/2−t)mm以上であればワークのクランプ装置7への自動クランプ終了の信号を発信する後述の工程S12aに進み、次工程のカップホイール型
砥石による円筒状インゴットブロックのインフィード面取り研削加工を開始する工程S13を行うことができる。
【0073】
本発明の複合面取り加工装置1を用い、円柱状サファイア・インゴットブロック(ワーク)に円筒研削加工およびオリフラ形成加工する工程は、次の工程を経て実施される。
【0074】
(1)第一貯蔵棚300に保管されているワークwをブロック搬送ロボット200で把持し、ついで把持されたワークを前記XRD機600前に移送し、XRD機でワーク両端のC軸方位を検出し、レーザー光でワークにC軸方位をマーキングする。(C軸方位検出工程。)
【0075】
(2)ブロック搬送ロボット200に把持されたC軸マーキングされたワークwを、円筒研削装置500,700のワークストッカー14に移送し、ついで、オートローダー機器13のハンド爪にワークを抱かえ込み、クランプ装置7の主軸台7aの支持軸と心押台7bの支持軸間にワークのマーキングされたC軸心がこのクランプ装置7の主軸台の支持軸と心押台の支持軸を結ぶC軸心一致するようにワークを支架させる。(ワークのローディング工程。)
【0076】
(3)前記クランプ装置7に支架されているワークwを主軸台7aのサーボモータ10M,11Mによりクランプ装置7のC軸廻りに回転させ、前記カップホイール型砥石軸10o,11oを回転させ、回転するこのカップホイール型砥石10gを前記C軸廻りに回転しているワークの円周面に当接するよう前進させて円筒研削加工を開始し、前記カップホイール型砥石10gを円筒研削取り代(t)を引いた目的とする半径(R/2)の円筒研削加工ワークが得られる距離まで前進させる切込み加工を行った後、前記クランプ装置7を一対のカップホイール型砥石10g,10g間を通過させてワークの外周面を円筒粗研削加工し、さらに前記クランプ装置7を一対の回転しているカップホイール型砥石11g,11g間に通過させてワークの外周面を円筒仕上げ研削加工する。(円筒研削加工工程)。
【0077】
(4)前記クランプ装置7に支架された円筒研削加工されたワークwをオートローダー機器13のハンド爪に抱き、ついで、円筒研削装置500,700のワークストッカー14に円筒研削加工されたワークを移送する。(円筒研削加工されたワークのアンローディング工程)。
【0078】
(5)円筒研削加工されたワークwを前記ブロック搬送ロボット200で受け取り、ついで、受け取ったワークを前記XRD機の前に移送し、XRD機でワークのオリフラ結晶方位を検出した後、ワークにオリフラ結晶方位をレーザー光でマーキングする。(オリフラマーキング工程。)
【0079】
(6)前記ブロック搬送ロボット200に把持されたオリフラ結晶方位がマーキングされたワークwを前記円筒研削加工装置500,700のワークストッカー14に移送し、ついで、オートローダー機器13のハンド爪にワークを抱かえ込み、前記クランプ装置7の主軸台7aの支持軸と心押台7bの支持軸間にワークのマーキングされたC軸心がこのクランプ装置7の主軸台の支持軸と心押台の支持軸を結ぶC軸心と一致するようにワークを支架させる。(ワークの受け渡しローディング工程。)
【0080】
(7)前記クランプ装置7の主軸台7aの支持軸を回転させてオリフラ加工される結晶方位に前記研削加工されたワークを芯出しする工程。(オリフラ芯出しする工程。)
【0081】
(8)前記円筒研削装置500,700の一対のカップホイール型砥石軸10o,10
oの内のワークがオリフラ加工される位置に近い側にあるカップホイール型砥石10gを軸承する砥石軸10oを回転させ、回転するカップホイール型砥石10gを前記オリフラ加工される結晶方位に芯出しされたワークの円周面に当接するよう前進させてオリフラ研削加工を開始し、さらに前記カップホイール型砥石を前進させてオリフラ研削取り代(tof)を研削する距離まで前進(左方向移動)させる切込み加工を行った後、前記クランプ装置7を一対のカップホイール型砥石10g,10g間を通過させてカップホイール型砥石10gによりワークの外周面を円筒粗研削加工してオリフラをワークに形成させ、さらに前記クランプ装置7を一対のカップホイール型砥石11g,11g間に通過させてカップホイール型砥石11gによりワークの外周面を円筒仕上げ研削加工してオリフラをワークに形成させる。(オリフラ研削加工工程)。
【0082】
および、
【0083】
(9)前記クランプ装置7に支架されたオリフラ研削加工されたワークwを前記オートローダー機器13のロボット爪で把持し、前記ワークロッカー14に移送した後、前記搬送ロボット200がワークwを受け取って第二貯蔵棚400に移送する。(アンローディング工程。)
【0084】
上記において、カップホイール型砥石10g,11gによるワークの研削取り代(t)は0.5〜1.0mmである。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の複合面取り加工装置は、1台のXRD機600、および円筒研削装置500の使用でインゴットブロックの円筒研削加工およびオリフラ研削加工できるので、従来のインゴットブロックの円筒研削加工機およびインゴットブロックのオリフラ研削加工機の2台を使用する研削加工方法と比較してXRD機の使用を1台減らすことができる。また、XRD機の利用により研削取り代(t)を小さく設定できるので、面取り加工屑(フロス)の発生量を少なくすることができる。さらに、2台の円筒研削装置500,700を併用することにより、同時に2個のワークを面取り加工できるので、時間当たりの面取り加工ワークの生産量を向上させることができる。
【符号の説明】
【0086】
1 複合面取り加工装置
w ワーク(円柱状サファイア・インゴットブロック)
100 第一案内レール
200 搬送ロボット
300,400 貯蔵棚
500 第一円筒研削装置
4 ワークテーブル
6 第二案内レール
7 クランプ機構
7a 主軸台
7b 心押台
8 ロードポート
10 第一研削ステージ
10g カップホイール型円筒研削砥石
11 第二研削ステージ
11g カップホイール型円筒研削砥石
HS 高さ測定機器
13 オートローダー機器
14 ワークストッカー
600 XRD機
700 第二円筒研削装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右方向に延びた第一案内レール上を滑走できる搬送ロボット、
上記第一案内レールの右端に設けられたサファイア・インゴットブロック(ワーク)の第一貯蔵棚、
上記第一案内レールの左端に設けられたオリフラ加工されたワークの第二貯蔵棚、
前記搬送ロボットの滑走用第一案内レールに対し、後ろ側に平行に設けられた右端より左端側に向かって、第一円筒研削装置、X線回析結晶方位測定器付きレーザー装置および第二円筒研削装置を間隔空けて併設した面取り加工装置群、
より構成されるワークの複合面取り加工装置であって、
上記第一円筒研削装置および第二円筒研削装置は、同一種の円筒研削装置であって、前後方向に延びる第二案内レール上を滑走できる芯出し機能を備えた主軸台と心押台よりなるクランプ装置を載置する移動テーブルを設けとともに、前記クランプ装置の支持軸に支架されるワークのC軸に対し直角方向に、かつ、C軸を挟んで一対の円筒研削用カップホイール型砥石軸を前進後退可能に設けるとともに、オートローダー機器およびワークストッカーを備え、前記ワークストッカーと前記オートローダー機器と前記クランプ装置とでワークローディング/アンローディングステージを構成し、前記クランプ装置と前記一対の円筒研削用カップホイール型砥石軸とでワークの円筒研削ステージおよびオリフラ研削加工ステージを構成する、
ことを特徴とする複合面取り加工装置。
【請求項2】
請求項1記載の複合面取り加工装置を用い、つぎの工程を経てワークを円筒研削加工およびオリフラ形成加工する方法。
(1)第一貯蔵棚に保管されているワークをブロック搬送ロボットで把持し、ついで把持されたワークを前記X線回析結晶方位測定器付きレーザー装置前に移送し、前記X線回析結晶方位測定器付きレーザー装置でワークの両端のC軸方位を検出し、レーザー光でマーキングする。
(2)ブロック搬送ロボットに把持されたC軸マーキングされたワークを、円筒研削装置のワークストッカーに移送し、ついで、オートローダー機器のハンド爪にワークを抱かえ込み、クランプ装置の主軸台の支持軸と心押台の支持軸間にワークのマーキングされたC軸心がこのクランプ装置の主軸台の支持軸と心押台の支持軸を結ぶC軸心一致するようにワークを支架させる。
(3)前記クランプ装置に支架されているワークを主軸台のサーボモータによりクランプ装置のC軸廻りに回転させ、前記カップホイール型砥石軸を回転させ、回転するこのカップホイール型砥石を前記C軸廻りに回転しているワークの円周面に当接するよう前進させて円筒研削加工を開始し、前記カップホイール型砥石を円筒研削取り代(t)を引いた目的とする半径(R/2)の円筒研削加工ワークが得られる距離まで前進させる切込み加工を行った後、前記クランプ装置を前記カップホイール型砥石側へさらに前進させ、通過させて前記クランプ装置に支架されているワークの外周面を円筒研削加工する。
(4)前記クランプ装置に支架された円筒研削加工されたワークをオートローダー機器のハンド爪に抱き、ついで、円筒研削装置のワークストッカーに円筒研削加工されたワークを移送する、ワークのアンローディング工程。
(5)円筒研削加工されたワークを前記ブロック搬送ロボットで受け取り、ついで、受け取ったワークを前記X線回析結晶方位測定器付きレーザー装置前に移送し、このX線回析結晶方位測定器付きレーザー装置でワークのオリフラ結晶方位を検出した後、ワークにオリフラ結晶方位をレーザー光でマーキングする。
(6)前記ブロック搬送ロボットに把持されたオリフラ結晶方位がマーキングされたワークを前記円筒研削加工装置のワークストッカーに移送し、ついで、オートローダー機器のハンド爪にワークを抱かえ込み、前記クランプ装置の主軸台の支持軸と心押台の支持軸間にワークのマーキングされたC軸心がこの第二クランプ装置の主軸台の支持軸と心押台
の支持軸を結ぶC軸心と一致するようにワークを支架させる、ワークの受け渡しローディング工程。
(7)前記クランプ装置の主軸台の支持軸を回転させてオリフラ加工される結晶方位に前記研削加工されたワークを芯出しする工程。
(8)前記円筒研削装置の一対のカップホイール型砥石軸の内のワークがオリフラ加工される位置に近い側にあるカップホイール型砥石を軸承する砥石軸を回転させ、回転するカップホイール型砥石を前記オリフラ加工される結晶方位に芯出しされたワークの円周面に当接するよう前進(左方向移動)させてオリフラ研削加工を開始し、さらに前記クランプ装置を前記カップホイール型砥石側へさらに前進させ、通過させて前記クランプ装置に支架されているワークの外周面をオリフラ研削加工してワークの外周面にオリフラを形成する。
および、
(9)前記クランプ装置に支架されたオリフラ研削加工されたワークを前記オートローダー機器のロボット爪で把持し、前記ワークロッカーに移送した後、前記搬送ロボットがワークを受け取って第二貯蔵棚に移送する。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−21146(P2013−21146A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153554(P2011−153554)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(391011102)株式会社岡本工作機械製作所 (161)
【Fターム(参考)】