説明

ワーク反転装置

【課題】ワークを上下移動させる手段を設けずに、ワークの厚みの相違に関わらず受け渡し時に衝撃を生じさせることなくスムーズに反転させる。
【解決手段】鋼材反転装置は、鋼材wを保持する第一のパレット8と第二のパレット16を互いに回転させてそれぞれ起立させて、鋼材wを第二のパレット16から第一のパレット8に受け渡す。第一のパレット8は油圧シリンダ18によって回動させて起立させる。第二のパレット16は油圧シリンダ22によって回動させて起立させる。起立前の傾斜角度85°に回動させた第二のパレット16と第一のパレット8との隙間を調整するために、第一のパレット8をレールに沿って摺動する摺動板7に取り付け、油圧シリンダ26で水平移動させる移動機構28を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば鋼材等の重量のあるワークを反転させるためのワーク反転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工作機械等で板状の鋼材の表裏両面を切削加工する場合、まず一方の面、例えば表面を切削加工し、ついで鋼材を表裏反転させて他方の面、即ち裏面を切削加工するようにしている。
例えば、鋼材の表面を加工後に、裏面を加工するために鋼材を反転させる際、マグネットチャックで水平状態に置かれた鋼材を吸着保持し、クレーンによって鋼材を90°の位置まで起立させて反対側に倒し込むという方法をとっていた。しかし、鋼材の寸法が大きいと重量も大きいため、起立と倒し込みの作業に危険を伴っていた。
【0003】
そのため、このような鋼材を反転させる装置として、例えば特許文献1乃至3に記載されたような鋼材反転装置が提案されている。
特許文献1に記載されたワーク反転装置では、板材加工機のテーブル上に水平方向に搬入される鋼材等の板状のワークを、略U字状に対面させた一対の反転枠の内部に受け入れ可能な反転支持具を設ける。そして、反転支持具を反転枠の内奧部に設けた回転軸を中心に上方に向けて略180°回転させて別のテーブル上に載置させる。そして、反転支持具の上側の一方の反転枠を180°反転させると共に、反転支持具を若干降下させてワークを別のテーブル上に置き去りにする。このようにしてワークを反転させて別のテーブルに載置できる。
【0004】
次に、特許文献2に記載された反転機では、搬送ベルトで搬送された板材を反転支軸に取り付けられた吸着具で吸着し、昇降駆動装置によって反転支軸と共に吸着具と板材を上昇させる。そして、上昇位置で反転支軸回りに板材を180°反転させて降下させた後に吸着具から板材を外すようにしている。
また、特許文献3に記載された反転装置では、搬入側と搬出側にスラブを載置可能なパレットを備え、これらパレットで板材を保持して互いに180°回転させることによって板材を反転させて受け渡すようになっている。そして、スラブを保持する移送コンベアを移送方向に移動させるコンベア前後用移動手段と、スラブを移送させる移送コンベアを上下方向に移動させることでパレットにスラブを受け渡す上下用移動手段とが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平5−64130号公報
【特許文献2】実開平6−25246号公報
【特許文献3】特開平10−157838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたワーク反転装置は、ワークの厚みが異なる場合にワークを把持する一対の反転枠に厚み方向の調整機能が備えられていない。そのため、厚みの薄いワークを反転させる際、一対の反転枠内にワークとの間に隙間が生じて、隙間の分だけワークが自重で回転移動する際に荷重による衝撃が反転枠に付与され、ワークに傷が付いたり装置を損傷したりするおそれがあった。
また、特許文献2に記載された反転機では、板材を昇降させる昇降装置が必要になり、しかも板材の重量が大きくなると吸着具で吸着して上昇させたり反転させたりすることが困難になるという不具合があった。
また、特許文献3に記載された反転装置では、板材の受け渡しのためにコンベアの上下用移動手段が必要であるため、反転装置の機構が複雑になる欠点があった。
【0007】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、ワークを上下移動させる手段を設けることなく、しかもワークの厚みの相違に関わらず反転時に隙間による衝撃を生じさせないで反転できるようにしたワーク反転装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるワーク反転装置は、ワークを保持する第一のパレットと第二のパレットを互いに回転させて起立させることで、ワークを第二のパレットから第一のパレットに受け渡して反転させるようにしたワーク反転装置であって、第一のパレットと第二のパレットをそれぞれ回転させる回転軸と、ワークの厚みに応じて第一のパレットと第二のパレットの隙間を調整するために第一のパレットまたは第二のパレットを移動させる移動機構とを備えたことを特徴とする。
本発明によるワーク反転装置によれば、ワークを第二のパレットに保持させた状態で、第一のパレットと第二のパレットを回転軸回りに起立方向に回転させ、ワークの受け渡し前の段階で移動機構によって第二のパレットに載置したワークと第一のパレットとの隙間を微小になるように第一のパレットまたは第二のパレットを移動させ、その後に第一のパレットと第二のパレットの少なくとも一方を回転させることでワークを第二のパレットから第一のパレットに受け渡す。このとき、第二のパレットに保持されたワークは第一のパレットとの隙間が最小に設定されているから、ワークを第二のパレットから第一のパレットに受け渡す際にワークの移動による衝撃は生じない。そして、ワークを受け渡された第一のパレットが反対方向に倒されることで、ワークは反転状態になる。
【0009】
また、第一のパレットには、第二のパレットに保持されたワークとの距離を検知する検知センサーが設けられており、検知センサーによってワークの受け渡し時における第二のパレットのワークと第一のパレットとの隙間を設定するようにしてもよい。
起立状態において、検知センサーで第一のパレットのワークと第二のパレットとの隙間の距離を検知し、この隙間の距離がワーク受け渡し時に衝撃が生じない予め設定された距離となるように、検知センサーで隙間の距離を検知しつつ第一のパレットまたは第二のパレットの少なくとも一方を互いに接近する方向に回転させる。
【0010】
また、第一のパレットと第二のパレットは、ワークの面を支持する支持部とワークの端面を支持する受け部とをそれぞれ備えており、起立状態で第一のパレットの受け部と第二のパレットの受け部は互い違いに嵌合されることが好ましい。
第一のパレットと第二のパレットがワークを挟んで互いに起立状態に保持された状態で、第二のパレットの受け部に支持されたワークは第一のパレットを回転させることで第一のパレットに受け渡される。
【0011】
また、第一のパレット及び第二のパレットの起立状態において、第一のパレットの受け部は第二のパレットの受け部より高い位置にあることが好ましい。
これにより、第一のパレットと第二のパレットが向かい合うように回転してワークを挟んで互いに起立状態に保持されると、ワークは第二のパレットの受け部から第一のパレットの受け部に受け渡された状態になり、ワークの受け渡しによる反転が容易になる。
【0012】
また、第二のパレットを回転させて起立させる駆動手段と、第二のパレットを所定の傾斜角度まで起立方向に回転させる回転速度より当該所定の傾斜角度から起立状態までの回転速度を小さく設定する制御手段とを備えていることが好ましい。
ワークを保持する第二のパレットを所定の傾斜角度まで起立方向に回転させる回転速度を比較的高速に設定することで、迅速にワークを起立方向に回転させ、次いで、所定の傾斜角度から起立状態までの第二のパレットの回転速度を比較的低速に設定することで、第二のパレットから第一のパレットにワークを受け渡す際に衝撃を小さくできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によるワーク反転装置によれば、ワークを第二のパレットに保持させた状態で、第一のパレットと第二のパレットを起立方向に回転させ、ワークの受け渡し前の段階で移動機構によって第一のパレットまたは第二のパレットを互いに接近するように移動させて最小の隙間に位置させることで、ワークの厚みが相違していてもこれに対応して第一及び第二のパレットで隙間を最小にできるから、ワークの受け渡し時にワークの移動による衝撃は発生せず、ワークや第一及び第二のパレットの損傷等を防止できる。そして、ワークをその厚みや重量にかかわらずスムーズに反転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態による鋼材反転装置の要部側面図である。
【図2】開放状態にある第一のパレットと第二のパレットを示す要部平面図である。
【図3】図2に示す鋼材反転装置のA−A線断面図である。
【図4】図2に示す鋼材反転装置のB−B線中央断面図である。
【図5】(a)、(b)は第一及び第二のパレットによる鋼材受け渡し状態を示す部分断面図である。
【図6】(a)、(b)、(c)は実施形態による鋼材反転装置における鋼材反転工程を示す概略図である。
【図7】(d)、(e)、(f)は鋼材反転工程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態による鋼材反転装置について、図1乃至図7に基づいて説明する。
図1及び図2に示す本発明の実施形態による鋼材反転装置1は、ワークとして例えば板状の鋼材wの一方の面である表面w1を加工した後、反転させた他方の面である裏面w2を加工するための鋼材の反転装置である。
この鋼材反転装置1は、基板2の上側中央部に空間kが設けられ、その両側に鋼材反転部3、4がそれぞれ設けられている。搬出側(図1で左側)の鋼材反転部3では、図3に示すように、基板2上に一対のガイドレール5,5が設けられ、これらガイドレール5,5には摺動可能に嵌合するレール受け部6,6を介して摺動板7が搬入側(図1で右側)の鋼材反転部4に向けて進退可能に配設されている。
【0016】
図1及び図3に示す搬出側の鋼材反転部3において、摺動板7には鋼材wを載置させるための第一のパレット8が回転軸9回りに回転可能に支持されている。回転軸9は空間k側の端部近傍で両側に一対配設され、第一のパレット8から下方に延びる軸部11と摺動板7から上方に延びる軸受部12とを軸体13が水平方向に挿通されている。また、摺動板7の回転軸9とは反対側の端部近傍には例えば一対の支柱14が取り付けられている。
そのため、第一のパレット8を支柱14に支持された水平状態から回転軸9を中心に空間k内に時計回りに略90°回転させると、第一のパレット8は支柱14から離間して図1で二点鎖線で示す起立状態となり、逆に起立状態から反時計回りに略90°逆回転させると、第一のパレット8は支柱14に着座する水平状態になる。第一のパレット8は偏心した位置に配設された回転軸9回りに正逆回転可能とされている。
また、第一のパレット8は、図2に示すように、水平状態で鋼材wを載置させる略長方形状の支持面8aと受け部8bとを備えた断面略L字形状とされている。受け部8bは所定の間隙d1を開けて複数個(図では5個)に分割して設けられている。
【0017】
また、図1に示す鋼材反転装置1において、搬入側の鋼材反転部4は、上述した搬出側の鋼材反転部3とほぼ線対称に同様な各部材が配設されており、同一部分には同一の符号を用いて説明する。
即ち、搬入側の鋼材反転部4の基板2上には、鋼材wを載置させるための第二のパレット16が回転軸9回りに回転可能に支持されている。回転軸9は空間k側の端部近傍で両側に一対配設され、第二のパレット16から下方に延びる軸部11と基板2から上方に延びる軸受部12とを軸体13が水平方向に挿通されている。
また、基板2の回転軸9とは反対側の端部近傍には例えば一対の支柱14が取り付けられている。
そのため、第二のパレット16を支柱14に支持された水平状態から回転軸9回りに空間k内に反時計回りに略90°回転させると、第二のパレット16は支柱14から離間して図1で二点鎖線で示す起立状態となり、逆に起立状態から時計回りに略90°逆回転させると、第二のパレット16は支柱14に着座する水平状態になる。
【0018】
また、第二のパレット16は、図2に示すように、水平状態で鋼材wを載置させる略長方形状の支持板16aと受け部16bとを備えた断面略L字形状とされている。受け部16bは所定の間隙d2を開けて複数個(図では6個)に分割して設けられている。
しかも、第一のパレット8と第二のパレット16が空間k内で共に起立状態になったとき、第一のパレット8の受け部8bは第二のパレット16の受け部16bの間隙d2内に嵌入し、第二のパレット16の受け部16bは第一のパレット8の受け部8bの間隙d1内に嵌入することで、互い違いに保持される。しかも第一のパレット8と第二のパレット16とによって略U字状に形成される。
【0019】
しかも、第一及び第二のパレット8,16が略U字状をなすように共に起立状態に保持された状態で、図5に示すように、第二のパレット16の受け部16bは第一のパレット8の受け部8bより若干下側に位置するように形成されている。そのため、第一及び第二のパレット8,16が共に起立状態に保持されると、鋼材wは第二のパレット16から第一のパレット8に受け渡されて保持される。
【0020】
次に、鋼材反転装置1の駆動機構について、図4に基づいて説明する。
搬出側の鋼材反転部3において、摺動板7の空間kとは反対側の後端部に第一のパレット8の回動装置として例えば第一の油圧シリンダ18が支軸19を中心に揺動可能に設けられている。そして、第一の油圧シリンダ18の先端側に筒体部から出没可能に設けられたロッド20の先端は第一のパレット8における回転軸9の取り付け部近傍に支持されている。
第一の油圧シリンダ18を駆動させてロッド20を伸張させることで、押された第一のパレット8は水平状態から回転軸9を中心に時計回りに回動して起立状態に保持され、ロッド20を収縮させることで第一のパレット8を起立状態から回転軸9を中心に反時計回りに回動させて支柱14に着座させることになる。
また、搬入側の鋼材反転部4においても、基板2の搬入側の後端部に第二のパレット16を起立させるための回動装置として例えば第二の油圧シリンダ22が、支軸23を中心に揺動可能に設けられている。そして、第二の油圧シリンダ22の先端側に出没可能に設けられたロッド24の先端は第二のパレット16における回転軸9の取り付け部近傍に支持されている。
【0021】
また、図4において、搬入側の鋼材反転部3における基板2上には、水平方向に配設された摺動用の油圧シリンダ26が駆動手段として取り付けられている。この油圧シリンダ26は、例えばロッド27が空間kとは反対側に(空間k側でもよい)延びて摺動板7の下面に連結されている。
そして、ONさせることでロッド27が油圧シリンダ26内に収縮して摺動板7を空間k側に向けて適宜の距離だけ水平移動させ、OFFさせることで摺動板7を空間kから離間する方向に水平移動させて基準位置に戻すことになる。なお、摺動板7は鋼材wの厚みに応じて任意の位置に静止できる。
また、摺動板7とガイドレール5とレール受け部6と油圧シリンダ26とは、第一のパレット8を水平方向に微小距離往復移動させる移動機構28を構成する。
【0022】
また、図4及び図5に示すように、第一のパレット8の鋼材wを受け取る支持面8aには受け部8b近傍に検知センサー29が設けられており、検知センサー29は制御手段30に電気的に接続されている。この制御手段30には、第一及び第二の油圧シリンダ18、22と油圧シリンダ26も接続されている。
検知センサー29は所定の傾斜角度まで起立した第二のパレット16に保持された鋼材wとの距離を測定し、予め設定された微小距離になるまで摺動板7を移動させる。
そして、油圧シリンダ22によって第二のパレット16が起立状態に向けて回動され、例えば基板2から約85°をなす所定の傾斜角度に保持されるまでは比較的高速で回動し、その後の90°までは比較的低速で回動するように制御手段30によって制御される。そして、第二のパレット16が約85°の傾斜角度に至ると、受け部16b上の鋼材wが第一のパレット8に近づくために検知センサー29で検知される。
【0023】
検知センサー29は、例えば発光部と受光部で構成され、第二のパレット16に保持された鋼材wとの距離を測定して、鋼材wと第一のパレット8の支持面8aとの距離が最小の間隙になるまで、移動機構28によって摺動板7を接近方向に移動させて停止させるようになっている。
これによって、厚みの異なる鋼材wであっても、検知センサー29と油圧シリンダ26によって起立させた鋼材wの受け渡し時に、鋼材wが第一のパレット8に衝突するのを防止して、隙間を持たせずに第一及び第二のパレット8,16で鋼材wを受け渡すことができる。
【0024】
なお、図4に示す搬入側の鋼材反転部3において、第一の油圧シリンダ18は例えば第一のパレット8の下面で紙面に直交する方向に一対配設され、その中間に油圧シリンダ26が配設されていてもよい。また、同様に、第二の油圧シリンダ22は例えば第二のパレット16の下面で紙面に直交する方向に一対配設されていてもよい。
【0025】
本実施の形態による鋼材反転装置1は上述の構成を備えており、次にその作用を図6及び図7の概略図に沿って説明する。
鋼材反転装置1は、図1及び図2に示すように、第一及び第二のパレット8,16は基板2上に互いに水平状態に保持されている。そして、鋼材wの一方の面である表面を加工装置で加工した後、加工した表面を例えばマグネットチャックで吸着してクレーンで移動させ、図6(a)に示すように、鋼材反転装置1の第二のパレット16の支持面16aに載置する。鋼材wは第二のパレット16の支持面16aに載置させ、その端面を受け部16bに当接させておく。
【0026】
この状態で、鋼材反転装置1の自動運転を行う。
まず、図6(b)に示すように、第一の油圧シリンダ18を起動してロッド20を伸張させることで、水平状態の第一のパレット8を回転軸9を中心に時計回りに90°回転させて空間k内に起立状態に保持する。次に、第二の油圧シリンダ22を起動してロッド24を伸張させることで、図6(c)に示すように、第二のパレット16を回転軸9を中心に反時計回りに回転させて所定の傾斜角度、例えば約85°の傾斜角度まで起立させる。
【0027】
第二のパレット16の起立のための比較的高速の回動によって、鋼材wはその下端面が受け部16bに載った状態で約85°の傾斜角度の位置に至ると第一のパレット8の支持部8aに近接して若干傾斜した隙間のある状態になる。鋼材wが約85°の傾斜角度に至ると、図5(a)に示すように、鋼材wの下端部が第一のパレット8の支持面8aに設けた検知センサー29に対向する位置に至る。
この位置で、制御手段30によって、第二の油圧シリンダ22は若干停止させられる。或いは、停止することなく、その後の第二のパレット16の回動動作を比較的低速に制御してもよい。第二のパレット16が約85°の傾斜角度に至ると、検知センサー29によって鋼材wとの距離が検知され、検知センサー29の検知信号が制御手段30に入力される。
【0028】
ここで、第二のパレット16の受け部16bの長さに対して、これに支持される鋼材wの厚みが同等であれば、第一のパレット8と第二のパレット16との間隙を調整する必要はない。しかし、鋼材wの厚みが比較的小さい場合、鋼材wのスムーズな受け渡しのために、第一のパレット8と第二のパレット16との間隔を狭める調整を行う必要がある。
この場合、検知センサー29の検知信号が制御手段30に入力されると、制御手段30からの出力信号によって油圧シリンダ26が起動され、ロッド27が収縮することで第一のパレット8を支持する摺動板7が第二のパレット16に接近する方向に移動する。
そして、検知センサー29によって継続して鋼材wの下端部と第一のパレット8との距離を測定し、予め設定した小さな間隙に相当する距離になった時点で油圧シリンダ26をOFFする。
【0029】
そして、油圧シリンダ22を前回より低速で再度駆動させて(図6(d)参照)、85°から90°の起立状態まで第二のパレット16を回動させて停止させる。これによって、図7(a)に示すように、第一のパレット8と第二のパレット16の各支持面8a,16aが互いに平行な状態となり、第二のパレット16の受け部16bが第一のパレット8の受け部8bの間隙d1に嵌合される。
この状態で、鋼材wと第一のパレット8の支持部8aとの間には僅かな隙間しかない。しかも、図5(b)及び図7(a)に示すように、起立状態で、第一のパレット8の受け部8bは第二のパレット16の受け部16bより上側に位置するから、鋼材wは第二のパレット16から第一のパレット8の受け部8bに受け渡され、第一のパレット8に支持されたことになる。
【0030】
次に、第一のパレット8の油圧シリンダ18を駆動させてロッド20を収縮させることで、図7(b)に示すように、第一のパレット8を起立状態から回転軸9を中心に90°反時計回りに回転させて水平状態にする。この状態で、鋼材wは第一のパレット8に保持されて反転させられた状態になる。
そして、図7(b)において、油圧シリンダ26によって摺動板7と第一のパレット8を空間kから離間するよう水平方向に後退移動させる。さらに、油圧シリンダ22によって第二のパレット16を中心軸9回りに時計回りに90°回転させて水平状態に戻す。
その後、第一のパレット8に載置された鋼材wを次工程に搬送して裏面の加工を行うようにすればよい。
【0031】
上述のように本実施形態による鋼材反転装置1によれば、鋼材wを反転させるために第二のパレット16から第一のパレット8に移載させて反転させる際、移動機構28によって鋼材wの厚みに関わらず第一及び第二のパレット8,16間の隙間を調整して、隙間をなくしたり最小限に小さくしたりすることで、鋼材wを第二のパレット16から第一のパレット8に移動させるときの衝撃をなくすことができる。
しかも、鋼材wの自動反転作業を行うことができるから、作業の効率化と省力化を達成できる。
【0032】
なお、上述の実施形態では、第一のパレット8に移動機構28を設けて水平方向の微小移動を行って鋼材wを挟んだ第一及び第二のパレット8,16間の間隙を調整するようにしたが、これに代えて移動機構28を第二のパレット16に設けて第一及び第二のパレット8,16間の間隙を調整するようにしてもよい。
また、移動機構28として、油圧シリンダ26に代えて電動シリンダを設けてもよく、或いは電動モータ等を採用してもよい。また、回動装置として油圧シリンダ18,22に代えて、電動シリンダや電動モータ等を採用してもよい。
【0033】
また、第一及び第二のパレット8,16間の間隙を調整する際、上述の実施形態では第一のパレット8と第二のパレット16の間隙を狭めるように調整することとしたが、鋼材wが受け部8bより厚い場合には、移動機構28により第二のパレット16から離間する方向に摺動板7を移動させることで間隙を調整してもよい。
また、上述の実施形態では、起立状態にある第二のパレット16の受け部16bより第一のパレット8の受け部8bの方を高い位置に設置したが、受け部8b、16b同士を同じ高さに設定してもよく、或いは受け部16bの方が低い位置に設定されてもよい。これらの場合には、起立状態から第一のパレット8を水平方向に向けて回転させることで、受け部8bによって第二のパレット16の受け部16bから鋼材wを受け取ることになる。
なお、上述の実施形態では鋼材1を反転させるための鋼材反転装置1について説明したが、本発明はこのような構成に限定されることなく、鋼材以外の各種の板材等を含むワークを反転させてもよく、本発明は各種ワークを反転するためのワーク反転装置に適用できる。
【符号の説明】
【0034】
1 鋼材反転装置
2 基板
3 搬入側の鋼材反転部
4 搬出側の鋼材反転部
5 レール
7 摺動板
8 第一のパレット
8a,16a 支持部
8b、16b 受け部
9 回転軸
16 第二のパレット
18 第一の油圧シリンダ
22 第二の油圧シリンダ
26 油圧シリンダ
28 移動機構
29 検知センサー
30 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持する第一のパレットと第二のパレットを互いに回転させて起立させることで、ワークを第二のパレットから第一のパレットに受け渡して反転させるようにしたワーク反転装置であって、
前記第一のパレットと第二のパレットをそれぞれ回転させる回転軸と、
前記ワークの厚みに応じて前記第一のパレットと第二のパレットの隙間を調整するために前記第一のパレットまたは第二のパレットを移動させる移動機構と
を備えたことを特徴とするワーク反転装置。
【請求項2】
前記第一のパレットには、第二のパレットに保持されたワークとの距離を検知する検知センサーが設けられており、前記検知センサーによってワークの受け渡し時における第一のパレットのワークと第二のパレットとの隙間を設定するようにした請求項1に記載されたワーク反転装置。
【請求項3】
前記第一のパレットと第二のパレットは、ワークの面を支持する支持部とワークの端面を支持する受け部とをそれぞれ備えており、起立状態で前記第一のパレットの受け部と第二のパレットの受け部は互い違いに嵌合されることを特徴とする請求項1または2に記載されたワーク反転装置。
【請求項4】
前記第一のパレット及び第二のパレットの起立状態で、前記第一のパレットの受け部は前記第二のパレットの受け部より高い位置にあることを特徴とする請求項3に記載されたワーク反転装置。
【請求項5】
前記第二のパレットを回転させて起立させる駆動手段と、
前記第二のパレットを所定の傾斜角度まで起立方向に回転させる回転速度より当該所定の傾斜角度から起立状態までの回転速度を小さく設定する制御手段と
を備えていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載されたワーク反転装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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