説明

ワーク搬送方法および装置

【課題】姿勢矯正手段を用いる必要なしに、ワークを常に適正に、かつ十分強固に把持して、所期した通りの姿勢で所定の作業ステーションまで、ワークを常に確実に搬送することができるワーク搬送方法を提供する。
【解決手段】中空もしくは中実の軸部3と、軸部3の中間部に設けられたフランジ部4とを具え、基準面1上に載置されるワーク2の、フランジ部4を基準面1と直交する向きに押圧して、該フランジ部4の周面を基準面1上に線もしくは面接触させて、前記軸部3の中心軸線を基準面1に平行にした状態で、開閉駆動される一対のフィンガー12,12により、ワーク2のフランジ部4の周面を把持して、該ワーク2を所定の作業ステーションまで搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、中空もしくは中実の軸部と、軸部の中間部もしくは端部分に設けられた一以上のフランジ部とを具え、たとえば、床面、コンベアベルト搬送面等とすることができる基準面上に載置されて自重によって姿勢を乱すことの多いワークの姿勢を矯正して、そのワークの、フランジ部の周面を把持してワークを所定の作業ステーションまで搬送する方法および、その方法の実施に用いる装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば、中空もしくは中実の軸部と、軸部の中間部に設けたフランジ部とを具えるワークを、床面等の基準面上に載置する場合は、ワークの重量バランスとの関連の下で、ワークは、図6に例示するように、基準面Bで、ワークWのフランジ部fの一個所を支点として、軸部sが傾斜した姿勢で延在することがしばしばあり、ワークWの姿勢にこのような乱れが発生した状態の下では、図7に例示するように、ハンドHをワークWのフランジ部fに対して下降変位させるとともに、ハンドHの一対のフィンガーfiを閉止作動させて、そのフランジ部fの周面を把持すると、ワークWの軸部sの、基準面Bに対する傾斜姿勢の矯正なしに、ワークWがフィンガーfiに把持されることになるため、その後のハンドHの搬送作動に基いて、ワークWを所定の作業ステーションまで搬送し、そこでたとえば、ワークWの軸部sをチューブの中空部へ差し込んだり、孔部に嵌め込んだりする場合、軸部sの傾斜姿勢の故に、所要の作業を適正に行い得ないという問題があった。
【0003】
そしてまた、軸部sの傾斜姿勢でワークWが把持されることに起因して、フランジ部fがフィンガーfiに対して傾いた姿勢となることから、フィンガーfiをもって、フランジ部fを十分強固に把持できない場合があり、ハンドHによるワークWの搬送途中、ワークWに対する作業の途中等にワークWが落下するおそれもあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような問題の発生を防止するべく、図8に例示するように、ワークWの軸部sが常に水平姿勢となるような矯正手段cを用いることが提案されているが、矯正手段c上に各個のワークWを配置するに当っては多くの作業工数が必要になり、また、基準面B上に多数の矯正手段cを配置するためには大きな占有スペースの確保が不可避になるという問題がある他、矯正手段cそれ自体が設備コストの増加を余儀なくし、さらには、軸部sを支持する治具の高さを変更する必要から、多数種類の矯正手段cを予め準備等が必須になるという問題があった。
【0005】
この発明は、矯正手段cを用いる必要なしに、ワークを常に適正に、かつ十分強固に把持して、所期した通りの姿勢で所定の作業ステーションまで、ワークを常に確実に搬送することができるワーク搬送方法および、それに用いるワーク搬送装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明のワーク搬送方法は、中空もしくは中実の軸部と、軸部の中間部もしくは端部分に設けられた、たとえば、厚み方向の全体にわたって均一な寸法を有する一以上のフランジ部とを具え、基準面上に載置されるワークの、最大フランジ部を、たとえば、床面、コンベアベルトの搬送面等からなる基準面と直交する向きに、分力もしくは合力をもって押圧して、最大フランジ部の周面を前記基準面上に線もしくは面接触させて、たとえば、フランジ部に対して同心はもちろん、偏心させて配設されるを可とする前記軸部の中心軸線を基準面に並行とした状態で、開閉駆動される一対のフィンガーにより、ワークの、いずれかのフランジ部の周面を把持して、該ワークを所定の作業ステーションまで搬送するにある。
【0007】
なおこの場合、ワークの最大フランジ部は、基準面の物性との関連において、基準面に対して強直に押圧することも可能であるが、好ましくは、前記基準面に対して弾性的に押圧する。
【0008】
またここで、基準面は、机上面、作業台面等をも含む床面または、スラットコンベア、ベルトコンベア等の搬送コンベアのワーク搬送面とすることができ、また、一対のフィンガーは、それらを、基準面と直交する方向に、または、基準面と平行となる方向に変位させて開閉作動させることで、ワークを把持することができる。
【0009】
ところで、一対のフィンガーでは、いずれかのフランジ部の周面を握持することが、軸部に対するその後の処理ないしは加工等を容易かつ円滑なものとする上で好ましいが、把持力および把持の安定性を高めるためには、一対のフィンガーにより、ワークの最大フランジ部の周面を把持することが好ましい。
【0010】
また、この発明のワーク搬送装置は、中空もしくは中実の軸部と、軸部の中間部もしくは端部分に配設された一以上のフランジ部とを具え、基準面上に載置されたワークを所定の姿勢で把持して搬送するものであって、開閉駆動されて、ワークのいずれかのフランジ部の周面を握持する一対のフィンガーと、ワークの最大フランジ部を、基準面と直交する向きに押圧する押圧部材と、一対のフィンガーを、それらの開放姿勢でワークに対して近接変位させるフィンガー移動手段と、ワークを把持したフィンガー対を、ワークとともに所定の作業ステーションまで搬送する搬送手段とを具えてなるものである。
【0011】
ここで好ましくは、前記押圧部材を、基準面に対して、ワークの最大フランジ部を弾性的に押圧する、たとえばばね材料からなる押圧手段と、この押圧手段に取付けられて最大フランジ部の周面に当接する、金属板、プラスチック板等の剛性板もしくは低摩擦板とを具えるものとする。
【0012】
また、押圧部材は、最大フランジ部に、基準面と直交する向きの押圧力を、合力として、もしくは分力として作用させるものとすることができ、そして、このような押圧部材は、一対のフィンガーの把持中心線上、すなわち、把持姿勢の一対のフィンガーの中央部を通って両フィンガー間に延在する中心線上に配設することができる。
【0013】
なお、前記フィンガー移動手段は、基準面と直交する方向もしくは、基準面と平行となる方向に一対のフィンガーを並進運動させる、シリンダー、歯車駆動機構等とすることができる。
またここでは、押圧部材を、一対のフィンガーの間に配設するとともに、フィンガー移動手段を、一対のフィンガーとともに該押圧部材をも昇降変位させる昇降駆動手段とすることが、装置構造の簡素化、および、装置の小型化を図る上で好ましい。
【発明の効果】
【0014】
この発明のワーク搬送方法では、軸部と、軸部の中間部もしくは端部分に設けられた一以上のフランジ部とを具えるワークが、重量バランス等との関連の下で、基準面上で、姿勢を乱すことがあっても、押圧部材をもって最大フランジ部を基準面と直交する向きに押圧して、最大フランジ部の周面を基準面上に線もしくは面接触させて、前記軸部の中心軸線を基準面に平行にした状態で、開閉作動される一対のフィンガーで、ワークの、いずれかのフランジ部の周面を把持することで、特別のワーク姿勢矯正手段を用いることなしに、一対のフィンガーで、ワークを所期した通りの姿勢にて常に確実に握持することができるので、そのワークを、フィンガーによる把持状態で、所定の作業ステーションへ搬送することにより、ワークに対する所要の作業を簡易に、かつ適正に行うことができるとともに、ワークに対する作業の途中、ワークの搬送中等における、ワークの意図しない落下のおそれを十分に取り除くことができる。
【0015】
なおここで、押圧部材をもって最大フランジ部を押圧することとしたのは、押圧部材のフランジ部接触面積等との関連において、押圧部材をもって、最大フランジ部より寸法の小さいフランジ部だけを押圧できない場合があること、および、多くの場合は、最大フランジ部がワークの、基準面に対する支点となることを考慮したものである。
ところで、押圧部材によって、最大フランジ部を基準面と直交する向きに押圧する場合には、押圧部材で、その最大フランジ部を基準面と直交する向きに、押圧力の合力をもって直接的に押圧する場合のみならず、押圧力の分力をもって基準面と直交する向きに押圧する場合、すなわち、押圧部材の、最大フランジ部との当接面が基準面と平行にならずに幾分傾くことになる場合をも含むものとする。
【0016】
また、一以上のフランジ部の平面輪郭形状は円形その他の閉曲線形状、多角形形状等とすることができ、そして、たとえば最大フランジ部の厚み方向の寸法は、その全体にわたって均一なものとすることの他、線もしくは面をもって基準面に接触して、軸部の中心軸線を基準面と平行にできる領域を有する限りにおいて、該領域から外れた部分の形態は、所要に応じて適宜のものとすることができる。
【0017】
このようなワーク搬送方法において、最大フランジ部を、押圧部材をもって基準面に対して弾性的に押圧するときは、基準面の物性のいかんにかかわらず、押圧部材で最大フランジ部を押圧してワークを適正姿勢とする場合の衝撃等を有効に取り除いて、ワークおよびワーク搬送装置への損傷の発生を有効に防止することができる。
なおここにおける弾性力は、スプリング、ゴム等の公知の弾性材料によって発生させることができ、この場合、その弾性材料は、大寸法のフランジ部に所要の押圧力を及ぼしてなお、収縮代を残すような寸法を有するものとすることが、押圧部材による、装置への突き上げ衝撃等の発生を防ぐ上で好ましい。
【0018】
ところで、基準面は、水平面とされることが一般的な床面とすることができる他、水平面に対して傾斜させて配置される、搬送コンベアのワーク搬送面とすることもでき、これによれば、傾斜搬送面上のワークをも適正に把持して、所定の作業ステーションまで正確に搬送することができる。
【0019】
なお、基準面上のワーク、なかでもそれのフランジ部の、開閉作動される一対のフィンガーによる適正なる把持は、一対のフィンガーを、基準面と直交する方向に、たとえば下降変位させることによって行うことができる他、基準面と平行となる方向に、たとえば水平変位させることによっても行うことができ、これらのいずれの場合にも、フィンガーの閉止駆動に基いて、ワーク、ひいては、目的とするフランジ部を所期した通りに適正に把持することができる。
【0020】
ここで、一対のフィンガーにより、ワークの最大フランジ部の周面を把持する場合は、他のフランジ部の配設態様のいかんにかかわらず、フランジ部の適正なる把持をより簡易にかつ確実に行うことができる。
【0021】
そしてまた、この発明のワーク搬送装置は、それを、開閉駆動されていずれかのフランジ部の周面を把持する一対のフィンガーと、最大フランジ部を基準面と直交する向きに押圧する押圧部材と、開放姿勢の一対のフィンガーをワークに対して近接変位させるフィンガー移動手段と、閉止作動によってワークを把持したフィンガー対を、ワークとともに所定の作業ステーションまで搬送する搬送手段とを具えるものとすることで、前述したワーク搬送方法を所期した通りに実現することができる。
【0022】
このようなワーク搬送装置において、押圧部材を、基準面に対して、ワークの最大フランジ部を弾性的に押圧する押圧手段と、この押圧手段に取付けられて最大フランジ部の周面に当接する、剛性板もしくは低摩擦板とを具えるものとしたときは、押圧手段の作用により、ワークの最大フランジ部の姿勢、ひいては、ワークの姿勢を矯正するに当っての衝撃の発生を有効に防止することができ、また、最大フランジ部の周面に当接する剛性板もしくは低摩擦板の作用により、最大フランジ部の、支点の周りでの回動変位、いいかえれば、押圧部材の押圧変位に伴う、最大フランジ部の、剛性板もしくは低摩擦板に対する擦れ変位を容易にして、その最大フランジ部の姿勢の矯正を円滑なものとすることができる。
いいかえれば、ワークの最大フランジ部への当接部を軟質板で構成したときは、押圧力の作用下で、最大フランジ部がその当接部内に埋まり込むことになり、また、該当接部を高摩擦板で構成したときは、押圧力の作用下での、最大フランジ部の、適正姿勢への回動変位が、高摩擦板によって拘束されることになって、いずれも、ワーク、直接的には最大フランジ部の姿勢の矯正が困難になる。
【0023】
またこの装置では、最大フランジ部に、基準面と直交する向きに作用させる押圧力は、最大フランジ部の乱れた姿勢を矯正して、ワークを所定の姿勢にもたらし得る限りにおいて、押圧部材に作用させる押圧力の合力とすることができる他、作用押圧力の分力とすることもできる。
【0024】
なお、装置の押圧部材を、一対のフィンガーの把持中心線上に配設したときは、一の押圧部材で、最大フランジ部を基準面と直向する向きに押圧した状態で、一対のフィンガーをもって、その最大フランジ部の周面を所要の方向から把持することができる。
【0025】
ところで、フィンガー移動手段を、基準面と直交する方向に一対のフィンガーを並進運動させる手段とした場合は、フィンガー移動手段をもって、前記押圧部材の押圧変位をももたらすことで、装置の構造を簡易なものとすることができる。
この一方で、フィンガー移動手段を、基準面と平行する方向に一対のフィンガーを並進運動させる手段としたときは、押圧部材によって押下された最大フランジ部に対し、一対のフィンガーを任意の方向から近接変位させてその最大フランジ部の周面を把持することができるので、他の設置物等との干渉のおそれを十分に取り除くことができる。
【0026】
そしてまた、押圧部材を、一対のフィンガーの間に配設するとともに、フィンガー移動手段を、一対のフィンガーとともに該押圧部材をも昇降変位させる昇降駆動手段とした場合は、装置の構造を一層簡易なものとし、併せて、装置全体の小型化を容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の対象ワークを、基準面上で姿勢を乱した状態で例示する側面図である。
【図2】最大フランジ部の、基準面へ接触姿勢を例示する正面図である。
【図3】ワーク搬送方法の工程およびワーク搬送装置の作用を例示する正面図および側面図である。
【図4】ワーク搬送方法の工程およびワーク搬送装置の作用を例示する正面図および側面図である。
【図5】適正に把持したワークの搬送工程を例示する正面図および側面図である。
【図6】従来のワーク搬送工程を例示する正面図および側面図である。
【図7】従来のワーク搬送工程を例示する正面図および側面図である。
【図8】姿勢矯正手段を例示する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
この発明の対象となるワークは、図1に例示するように、床面、搬送コンベアのワーク搬送面等とすることができる基準面1上で重量バランスを崩して姿勢を乱したものであって、図1(a)に側面図で示すワーク2は、中空もしくは中実の軸部3と、この軸部3の一端部分に設けられた、図に実線で示す一のフランジ部4とを具えるものであって、ほぼボルト状の形態を示するものであり、図1(b)に示すワーク2は、同様の軸部3と、軸部3の延在方向の中間部に設けられた、図に実線で示す一のフランジ部4とを具えるものであって、軸部3の、基準面1から離隔した側の、フランジ部4からの突出端部分を、基準面1側の部分より寸法の大きい、たとえば大径部3aとしたものである。
なお、図1(a),(b)に示すところにおいて、軸部3に、図に仮想線で示すように、フランジ部4より寸法の小さい他のフランジ部5を設けることも可能である。
【0029】
また、図1(c)に示すワーク2は、全長にわたって均一寸法の軸部3と、軸部3の延在方向の中間部に設けられたフランジ部4とを相互に偏心させて設けたものである。
なおこの図に示すところにおいて、軸部3の、フランジ部4に対する偏心方向は、フランジ部4の中心軸線CLの周りで所要に応じて適宜に選択することができ、たとえば、図に仮想線で示すように、図示の軸部3とは、中心軸線CLの反対側に偏心させることもできる。
【0030】
図1(d)に示すワーク2は、均一寸法の軸部3の延在方向の中間部に、ともに基準面1に接触する大小に種類の寸法のそれぞれのフランジ部4,6を設けたものである。
【0031】
ところで、以上に述べたフランジ部4,5,6のそれぞれは、図示の側面視では、厚み方向の全体にわたって均一の寸法を有するものとしているが、フランジ部は、基準面1に対する所定の接触域および、後述する、一対のフィンガーによる、所定の周面把持域を有する限りにおいて、側面形態を適宜変更することができる。
図1(e)はその例を示すものであり、これは、均一寸法の軸部3の延在方向の中間部に、同一の側面形態を有する二個のフランジ部7,7を相互の対向姿勢で設けたものである。
ここにおける各個のフランジ部7は、それの厚み方向となる中心軸線方向にみて、基準面1への所定の接触域となるとともに、フィンガーによる掴み代となる均一寸法域7aと、この均一寸法域7aから、軸部3の各一端に向けて次第に寸法が小さくなる寸法変化域7bとを有する。
【0032】
なお図に示すところでは、寸法変化域7bを、均一寸法域7aの一方側にだけ設けることとしているも、均一寸法域7aの両側に設けることもできる。また、図に示すところでは、二個のフランジ部7を、均一寸法域7aの隣接姿勢で設けているが、図に示すところから、いずれか一方のフランジ部7を省くことも可能である。
【0033】
またここで、フランジ部の平面輪郭形状は、図2(a),(b),(c)のそれぞれに例示するような、円形、楕円形または長円形とすることができる他、図2(d),(e)に示すような多角形輪郭形状その他とすることもできる。
そして、これらの場合にあって、各フランジ部が、たとえば、厚み方向の全体にわたって一定の寸法を有するものとすると、円形および楕円形の平面輪郭形状を有するフランジ部は、後述する姿勢の矯正によって、図2(a),(b)に示すように、基準面1に線接触することになり、長円形および多角形の平面輪郭形状を有するフランジ部は、姿勢の矯正状態で、図2(c)〜(e)に示すように基準面1に面接触することになる。
【0034】
図1に示すように姿勢を乱したワーク2に対するこの発明の方法および装置の適用例を、図1(b)に示すワーク2を例にとって以下に説明する。
【0035】
ここでは、図3(a),(b)に正面図および側面図で示すように、ハンド11に、並進運動をもって開閉駆動される一対のフィンガー12,12を設けるとともに、それらのフィンガー12,12の中央部に押圧部材13を設ける。そしてこの発明に係る装置では、ハンド11を、基準面1に対して昇降変位させる、フィンガー移動手段の一例としての、図示しない昇降駆動手段および、ハンド11、ひいてはフィンガー対を、それが発明対象物としての、姿勢を乱したワーク2と対応する位置と、所定の作動ステーションとの間で移動させる、これも図示しない搬送手段のそれぞれを設ける。
【0036】
なおここで、一対のフィンガー12,12の開閉駆動は、リンク機構その他を用いた回動運動によって行わせることもでき、また、押圧部材13は、一対のフィンガー12,12の把持中心線上で、図3(b)に示す側面図で、フィンガー12,12の左方側もしくは右方側に配設することもできる。
そしてここで好ましくは、押圧部材13を、基準面1に対して、ワーク2、なかでも、最大寸法を有することになるフランジ部である、最大フランジ部4,7を弾性的に押圧するものとする。
ここでのこの弾性的な押圧のためには、押圧部材13を、たとえば、ばね材料からなる図示しない押圧手段と、この押圧手段にプランジャ等を介して取付けられて、最大フランジ部4の周面に、たとえば真上から当接する、剛性板もしくは低摩擦板からなる当接板14とを具えるものとすることもできる。
なおここにおける当接板14の、最大フランジ部4に対する押圧力は、その最大フランジ部4に、基準面1と直交する向きの押圧力を分力として作用させるものとすることもできる。
【0037】
この発明方法の実施に当っては、図示しない搬送手段の作用下で、ハンド11を、前回の作業の終了位置から、基準面1上のワーク2と対応する位置まで移動させ、そこで、これもまた、図示しない昇降手段により、対をなすフィンガー12,12の開閉姿勢で、ワーク2に対して下降変位させる。
なお、対をなすフィンガー12,12の開閉駆動は、ハンド11に収納した、図示しないシリンダーその他の作動によって行うことができる。
【0038】
そしてハンド11のこのような下降変位によって、対をなすフィンガー12,12間に配設した押圧部材13の当接板14が、ワーク2の最大フランジ部4に垂直上方から、好ましくは弾性的に当接すると、その最大フランジ部4は、基準面1と直交する向きの押圧力を受けて、最大フランジ部4の、図3(b)に示す側面図では右端に位置することになる支点Fの周りに揺動され、その最大フランジ部4は、ついには、周面を基準面1上に線もしくは面接触されて、軸部3は、それが偏心配置されていると否とにかかわらず、中心軸線が基準面1と平行になる、図3(c),(d)に示すような、ワーク2の矯正姿勢がもたらされる。
【0039】
ここで、押圧部材13の当接板14を、最大フランジ部4に弾性的に当接させる場合は、基準面1ないしは、基準面素材の物性のいかんにかかわらず、当接板14の最大フランジ部4への当接衝撃を十分に吸収ないしは抑制することができる。
そして、この緩衝機能等をより効果的に発揮させるためには、当接板14を、寸法のとくに大きい最大フランジ部に当接させてワーク2の姿勢を矯正した場合にも、弾性的な余力を残存させることが好ましい。
【0040】
その後は、図4(a),(b)に正面図および側面図で示すように、ハンド11に設けたシリンダー等の作用の下で、一対のフィンガー12,12を閉作動させて、姿勢を矯正されたワーク2の最大フランジ部の周面を、フィンガー対12,12で十分強固に、かつ適正に把持する。
ワーク2をこのように適正に把持した場合は、ワーク2の不測の脱落はもちろん、その把持中の、ワーク2の姿勢の意図しない変化を十分に防止することができる。
【0041】
しかる後は、図示しない昇降駆動手段によって、図5(a),(b)に正面図および側面図で示すように、ハンド11、ひいては、一対のフィンガー12,12をワーク2とともに所要の高さまで持ち上げ、続いて、これも図示しない搬送手段の作用下で、ハンド11、フィンガー対12,12およびワーク2を基準面1上から、所定の作業ステーションまで搬送し、そこで、ワーク2に対する所定の作業の開始等を待機する。
【0042】
以上、図3〜図5に示すところに基いて、この発明の方法を説明したが、一対のフィンガー12,12による、姿勢を矯正されたワーク2のフランジ部の把持は、図1(a),(b),(d)に示すような小寸法のフランジ部5,6の周面に対しても行うことができる。
【0043】
また図に示すところでは、一対のフィンガー12,12を、基準面1と直交する方向に昇降変位させることとしているも、一対のフィンガー12,12を、基準面1と平行となる方向に変位させ、姿勢を矯正されたワーク2のいずれかのフランジ部をそれらのフィンガー12,12によって把持することもできる。
【0044】
そしてさらに、図に示すところでは当接板14を、真上から垂直下方に変位させて、最大フランジ部4を、基準面1と直交する向きに直接押圧することとしているも、当接板14は、図1(b)に仮想線で示すように、斜め下方に向けて変位させることもでき、これによれば、基準面1と直交する向きの分力をもって、最大フランジ部を支点Fの周りに揺動させることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 基準面
2 ワーク
3 軸部
3a 大径部
4,7 フランジ部(最大フランジ部)
5,6 フランジ部
11 ハンド
12 フィンガー
13 押圧部材
14 当接板
F 支点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空もしくは中実の軸部と、軸部の中間部もしくは端部分に設けられた一以上のフランジ部とを具え、基準面上に載置されるワークの、最大フランジ部を基準面と直交する向きに押圧して、該最大フランジ部の周面を基準面上に線もしくは面接触させて、前記軸部の中心軸線を基準面に平行にした状態で、開閉駆動される一対のフィンガーにより、ワークの、いずれかのフランジ部の周面を把持して、該ワークを所定の作業ステーションまで搬送するワーク搬送方法。
【請求項2】
最大フランジ部を、基準面に対して弾性的に押圧する請求項1に記載のワーク搬送方法。
【請求項3】
前記基準面を床面もしくは、搬送コンベアのワーク搬送面とする請求項1もしくは2に記載のワーク搬送方法。
【請求項4】
一対のフィンガーを、基準面と直交する方向に、または基準面と平行となる方向に変位させてワークを把持する請求1〜3のいずれかに記載のワーク搬送方法。
【請求項5】
一対のフィンガーにより、ワークの最大フランジ部の周面を把持する請求項1〜4のいずれかに記載のワーク搬送方法。
【請求項6】
中空もしくは中実の軸部と、軸部の中間部もしくは端部分に設けられた一以上のフランジ部とを具え、基準面上に載置されたワークを所定の姿勢で把持して搬送するワーク搬送装置であって、
開閉駆動されて、ワークのいずれかのフランジ部の周面を把持する一対のフィンガーと、ワークの最大フランジ部を基準面と直交する向きに押圧する押圧部材と、一対のフィンガーを、それらの開放姿勢でワークに対して近接変位させるフィンガー移動手段と、ワークを把持したフィンガー対を、ワークとともに所定の作業ステーションまで搬送する搬送手段とを具えてなるワーク搬送装置。
【請求項7】
前記押圧部材を、基準面に対して、ワークの最大フランジ部を弾性的に押圧する押圧手段と、この押圧手段に取付けられて最大フランジ部の周面に当接する剛性板とを具えるものとしてなる請求項6に記載のワーク搬送装置。
【請求項8】
前記押圧部材を、基準面に対して、ワークの最大フランジ部を弾性的に押圧する押圧手段と、この押圧手段に取付けられて最大フランジ部の周面に当接する、表面摩擦係数の小さい板とを具えるものとしてなる請求項6に記載のワーク搬送装置。
【請求項9】
押圧部材を、最大フランジ部に、基準面と直交する向きの押圧力を、合力として、もしくは分力として作用させるものとしてなる請求項6〜8のいずれかに記載のワーク搬送装置。
【請求項10】
押圧部材を、一対のフィンガーの把持中心線上に配設してなる請求項6〜9のいずれかに記載のワーク搬送装置。
【請求項11】
フィンガー移動手段と、基準面と直交する方向もしくは、基準面と平行となる方向に一対のフィンガーを並進運動させるものとしてなる請求項6〜10のいずれかに記載のワーク搬送装置。
【請求項12】
押圧部材を、一対のフィンガーの間に配設するとともに、フィンガー移動手段を、一対のフィンガーとともに該押圧部材をも昇降変位させる昇降駆動手段としてなる請求項6〜11のいずれかに記載のワーク搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−91923(P2012−91923A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242683(P2010−242683)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】