説明

ワーク搬送装置

【課題】重量物のワークでも、簡易な構成の搬送装置を用いて円滑に搬送することができるようになし、しかも作業エリアは実質的に平らな表面として、ワークへの部品の組み付け等の作業性を良好にする。
【解決手段】建設機械の上部構造体をワークとする搬送装置の搬送経路は、スラットコンベア10及びレール20を備え、スラットコンベア10の搬送面及びレール20の転動面は作業エリアの床面とほぼ同一平面Fとなり、2台の台車30の車輪34がレール20上を転動し、これら各台車30のワーク載置部33に上部構造体が設置され、台板31にはピン挿通孔35が設けられ、スラットコンベア10を構成する各スラット板11に係合孔14が穿設されて、連結ピン36を上部側から挿通させることにより、台車30を牽引し、上部構造体1の重力はレール20から構造部材21に支承される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型の機械装置等の重量物からなるワークを搬送し、その間にワークに部品の組み付け等の必要な作業を行うための生産ラインに装備されるワーク搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種の車両等からなるワークの組み立て作業を行うための生産ラインでは、ワークを微速で搬送する間に作業が行われる。このために、作業エリアにはコンベアを備えたワーク搬送装置が装備される。ここで、コンベアとしては、ベルト,チェーン等を用いたものもあるが、例えば特許文献1に示されているように、スラットコンベアを用いたものがある。この特許文献1では、スラットコンベアは自動車の組み立てラインに設けられるものである。この組み立てラインのワークとしての自動車には後輪が装着されており、この状態で、幅の狭いスラットコンベアに設けた牽引用係止部材を自動車の車体の前方下面に係合させ、スラットコンベアに牽引させて組み立てライン上を進行させる構成としている。
【特許文献1】特開平7−257452号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1においては、自動車の組み立てラインであることから、この自動車に後輪を装着した状態でコンベアに沿って搬送させることができるが、走行用の車輪が備わっていないワークの場合には、かかる構成を採用することができない。また、自動車は後輪だけが接地しており、前輪は装着されていないので、車両の前部側はスラットコンベア上に載置されることになる。このために、後輪の接地面よりスラットコンベアの搬送面を高くしなければならず、スラットコンベアの搬送面と作業エリアの床面との間に段差が生じることになり、各種の部品の供給や作業者の活動による作業に支障を来たし、作業性が悪くなるという問題点がある。また、車両の前部側はスラットコンベアに載置されることになり、このためにスラットコンベアに大きな荷重が作用することから、スラットコンベアに作用する重力に応じてスラットコンベアの強度を高める必要がある等といった問題点もある。
【0004】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、構成が簡単かつコンパクトで、高い作業効率が得られるワーク搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述した目的を達成するために、本発明は、床面がほぼフラットな作業エリアで重量物のワークを搬送するものであって、前記床面とほぼ同一面を搬送面とするスラットコンベアと、前記スラットコンベアと平行に設置され、転動面が前記床面とほぼ同一面とした少なくとも一対のレールと、前記ワークの載置部を有し、前記各レールの転動面上を転動する車輪と、前記スラットコンベアに接離可能に連結され、このスラットコンベアにより牽引される台車とから構成したことをその特徴とするものである。
【0006】
ワークの搬送経路にワークを牽引するためのスラットコンベアとワークの荷重を支承するためのレールとが設けられる。スラットコンベアは1列または2列設け、レールは少なくとも2本設け、スラットコンベアと平行に配設する。ワークを牽引するスラットコンベアは1列であっても良いが、搬送方向の制御の安定性を確保するには、左右に2列のスラットコンベアを設ける。従って、好ましくは、2列のスラットコンベアと、2本のレールとを設ける。レールは両スラットコンベアの外側に配置するか、または両スラットコンベア間に配置する。スラットコンベアの搬送面及びレールの転動面は作業エリアの床面と実質的に同じ高さ位置とする。また、スラットコンベア及びレールと床面との間はできるだけ隙間がないようにする方が望ましい。ただし、工具等が入り込まない程度であれば、それらの間の隙間があっても差し支えない。
【0007】
ワークの載置面を有する台車に設けられる車輪は、好ましくは前後及び左右の各位置に設け、合計4個の車輪を備える構成とする。また、1つのワークに対して台車は1台であっても良いが、2台以上の台車で1つのワークを搬送するように構成することができる。台車はスラットコンベアと接離可能に連結されて、このスラットコンベアにより牽引されるが、この台車とスラットコンベアとの連結構造としては、スラットコンベア側には少なくとも搬送面側には突起物を設けないようにする。例えば、スラットコンベアのスラット板に係合孔を形成し、また台車には、この係合孔に係入可能な連結ピンを設ける構成とすることができる。そして、連結ピンの係合孔への挿脱は駆動手段により行うことができるが、手動操作によって連結ピンを適宜のスラット板に設けた係合孔に係入させることにより台車とスラットコンベアとを着脱可能に連結する構成とすることもできる。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、ワークの重力は台車の車輪を介してレールに受承され、スラットコンベアは台車を牽引することから、重量物のワークでも、簡易な構成の搬送装置を用いて円滑に搬送することができ、しかも作業エリアは実質的に平らな表面としているので、ワークへの部品の組み付け等の作業性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。まず、図1及び図2において、ワーク搬送装置により搬送されるワークとしては、大型の建設機械の上部構造体1とする。なお、ワークはこれに限定されるものではないことはいうまでもない。
【0010】
ワーク搬送装置は、建設機械の上部構造体1の組み立てラインを構成する作業エリア2に装備される。図1において、3は待機ステージ、4は作業ライン、5は搬出ステージである。上部構造体1の搬送装置はスラットコンベア10及びレール20と、複数の台車30とを有するものであり、作業ライン4に配設される。作業ライン4の始端位置には待機ステージ3が接続されている。この待機ステージ3には1台の台車30が待機できるようになっており、この待機ステージ3から所定のタイミングで台車30が作業ライン4に送り込まれる。本実施の形態では、2台の台車30上にワークとしての建設機械の上部構造体1が搬入されて、スラットコンベア10により矢印A方向に搬送されることになる。作業ライン4の終端位置には搬出ステージ5が設けられている。建設機械の上部構造体1は作業ライン4に沿って進行する間に部品の組み付け等の所定の作業が行われ、作業が終了すると、この上部構造体1が作業ライン4から搬出され、台車30は搬出ステージ5に移行することになる。このように、搬出ステージ5に搬出された台車30は待機ステージ3に復帰されることになる。
【0011】
スラットコンベア10は、図3に示したように、多数のスラット板11をほぼ隙間なく無端状に配列したものであり、スラット板11は金属薄板やFRP(Fiber Reinforced Plastics)その他の樹脂板等から構成され、チェーン12によって順次連結されている。このようにして形成したスラット板11の連結体は、図4に示したように、チェーン12がスプロケット13に巻回して設けられており、このスプロケット13を回転させることによって、スラットコンベア10が駆動されることになる。このスラットコンベア10は建設機械の上部構造体1の搬送経路に沿って左右一対配設されている。そして、スラットコンベア10の搬送面は作業エリア2の床面2aとほぼ同一平面となっている。ここで、床面2aは、後述する基礎21の部位と、床板を敷設した部位とがあり、スラットコンベア10を設けた部位の両側には床板が敷設されている。
【0012】
レール20は、左右のスラットコンベア10間における内側の位置に2本配置されている。レール20はワークとしての建設機械の上部構造体1の荷重を支承するためのものであって、従って図4に示したように、レール20は基礎21上に設置されている。そして、このレール20の上面、つまり後述する台車30の車輪34の転動面20aは作業エリア2の床面2aとほぼ同一平面を構成している。
【0013】
従って、作業エリア2においては、床面2a,スラットコンベア10における搬送面及びレール20の転動面20aが位置しているが、これらの各面はほぼ同一平面Fを形成しており、段差や突出部等が存在しないようになっている。また、床面2aと、スラットコンベア10及びレール20との間にほぼ隙間が生じないようにしている。
【0014】
図5にも示したように、台車30は台板31を有し、この台板31には複数本(本実施の形態においては2本)の柱32が立設されており、これら柱32の上面にはワーク載置部33が固定して設けられている。一方、台板31には前後及び左右の4箇所に車輪34が設けられており、これらの車輪34は各々2本設けたレール20の転動面20aにそれぞれ2個ずつ設置されており、これら転動面20a上を転動するようになっている。
【0015】
台車30の台板31は、この台車30の各車輪34を2本のレール20に設置したときに、スラットコンベア10の途中位置までの上部を覆う寸法を有するものである。そして、台板31の左右両側部にはピン挿通孔35が設けられている。また、スラットコンベア10を構成する各スラット板11には、その走行方向の概略中央部の位置に係合孔14が穿設されている。連結ピン36を台車30の台板31に設けた各ピン挿通孔35の上部側から挿通させるようになっており、この連結ピン36はスラット板11に設けた係合孔14に係入できるようになっている。ここで、図3から明らかなように、各スラット板11に係合孔14が形成されている。ただし、係合孔14は必ずしも各スラット板11に形成する必要はなく、例えば1枚置き等間欠的に形成することもできる。また、台板31には、ピン挿通孔35に隣接する位置に連結ピン36が台板31の下面から突出しないように保持するピン保持孔37が設けられている。
【0016】
台車30を自由状態とするときには、連結ピン36は、台板31のピン保持孔37に挿嵌させておき、ピン挿通孔35内に連結ピン36が挿入させると、この連結ピン36は台板31の下端部から下方に突出して、スラットコンベア10におけるスラット板11に設けた係合孔14に挿入されることになる。そして、連結ピン36の上端部には作業者の手でピン挿通孔35に挿脱できるようにするために指掛け環36aが設けられており、この指掛け環36aはピン挿通孔35の孔径より大きい寸法を有するものである。従って、ピン挿通孔35に連結ピン36を挿通させると、指掛け環36aがストッパとなり、連結ピン36が吊下状態に保持される。さらに、スラット板11に設けた係合孔14には、その裏面側、つまり搬送面とは反対側の面に向けて所定長さを有するスリーブ14aが取り付けられている。従って、連結ピン36は、ピン挿通孔35に挿通させたときに、係合孔14からスリーブ14aに至る長さを有している。
【0017】
作業エリア2では、上部構造体1に装着される各種の部品を組み付けたり、ドア,建屋のカバー等を取り付けたりする等の作業が行われる。このために、作業ライン4に装備したスラットコンベア10は極めて微小な速度で駆動するようにしている。待機ステージ3からは、まず1台の台車30が作業ライン4に送り込まれる。この台車30は人手により、若しくはシリンダ等の押動手段により作業ライン4に送り込まれ、その車輪34をレール20上に位置させるが、この状態では台車30は動かない。スラットコンベア10のいずれかのスラット板11に設けた係合孔14が台車30の台板31のピン挿通孔35と一致する位置までスラットコンベア10が移送されると、若しくは手押しによって位置を調整した状態で、連結ピン35を台板31の左右に設けたピン挿通孔35に差し込んで、その下端部を係合孔14に係入させる。これによって、台車30はスラットコンベア10により駆動される状態となる。また、スラットコンベア10により駆動されている台車30が所定の位置まで進行すると、次の台車30を待機ステージ3から作業ライン4に送り込み、前述と同様にして、この台車30を連結ピン36によってスラットコンベア10のスラット板11と係合させる。
【0018】
以上の操作によって、前後に所定の間隔を置いて2台の台車30が作業ライン4に搬入される。そして、作業ライン4の始端側の所定の位置において、クレーン乃至ハンガ等からなるワーク移載手段(図示せず)によってワークである建設機械の上部構造体1を作業ライン4に搬入する。即ち、2台の台車30,30のワーク載置部33,33上にわたるようにして、上部構造体1を安定的に載置させる。ここで、2台の台車30,30間の間隔はできるだけ大きくする。これによって、上部構造体1の下部位置が大きく開放されることになり、この上部構造体1の下面に対する作業性を良好にすることができる。
【0019】
従って、建設機械の上部構造体1は作業ライン4に沿って搬送されることになる。ここで、台車30は、その車輪34がレール20上に位置していることから、この上部構造体1の重力は実質的に台車30の車輪34を介してレール20が受承することになる。レール20は高い強度を有する基礎21の上に設置されており、従って上部構造体1の荷重は最終的にはこの基礎21に伝達されることになる。台車30は連結ピン36を介してスラットコンベア10と係合しているが、この連結ピン36はピン挿通孔35及び係合孔14に差し込まれているだけで、台車30はこれ以外ではスラットコンベア10とに対して非接触状態に保たれているので、スラットコンベア10には上部構造体1の荷重は殆ど作用しない。このように、スラットコンベア10はワークの重力を受承するものではないので、このスラットコンベア10を構成するスラット板11は、上部から押圧すると容易に変形するような金属薄板や樹脂板等で構成することができる。
【0020】
スラットコンベア10は重量物である上部構造体1の重力を支持するものではなく、前後に配置した台車30を搬送方向Aに向けて牽引するためのものである。つまり、スラットコンベア10は台車30を水平方向に駆動するためのものであり、スラット板11は、台車30及びそれに載置されている上部構造体1の重力を支持する必要はなく、台車30の牽引に要する僅かな力を受けるだけであり、金属薄板や樹脂板等で形成されていても、十分な強度を持たせることができる。しかも、スラット板11の係合孔14には所定の長さのスリーブ14aが設けられており、連結ピン36の係合孔14及びスリーブ14aへの接触面積が大きくなっているので、上部構造体1という重量物が載置されている台車30を作業ライン4の進行方向に円滑に移動させることができる。
【0021】
スラットコンベア10により台車30が牽引されて、台車30に載置した上部構造体1が作業ライン4の始端位置から終端位置に向けて進行することになり、この間に所定の順序に従って順次部品の組み付け等の作業が行われる。ここで、作業ライン4においては、作業エリア2の床面2aが平坦であり、スラットコンベア10を構成するスラット板11の表面及びレール20の転動面20aはこの床面2aと実質的に同じ平面Fとなっているので、部品運搬用手押し車やキャスタ付き作業テーブル等を搬送するのに都合が良く、部品の収納箱等を作業位置の直近にまで運び込むことができるので、効率的な作業が可能になる。また、台車30のワーク載置部33は柱32により台板31に支持されて、上部構造体1は高所に位置することになり、しかも前後の台車30,30間にはスペースがあることから、作業者は上部構造体1の下部に容易に潜り込むことができ、部品の装着等の作業を円滑に行うことができる。
【0022】
ここで、作業エリア2の床面2aとスラットコンベア10の搬送面及びレール20の転動面20aとほぼ同じ平面を形成するが、さらに床面2aとスラットコンベア10及びレール20との間の隙間もできるだけ小さくして、工具等が入り込まないようにする。より好ましくは、この隙間は上部構造体1に取り付けられる部品や工具等のうち、最小サイズのもの、例えばナットやその他の部品であっても、すり抜けて落下しない程度の隙間とする。
【0023】
車輪34がレール20上を転動することにより荷重を支承しながら、スラットコンベア10により牽引されて、作業ライン4に沿って進行する間に、所定の順序に応じて部品の組み付け等が行われ、この作業ライン4の終端位置まで到達すると、上部構造体1は図示しないクレーン乃至ハンガ等からなるワーク移載手段によって作業ライン4から取り出されることになる。その後に、連結ピン36をスラット板11の係合孔14から抜き出して、台板31のピン挿通孔35からピン保持孔37に移行させることによって、台車30とスラットコンベア10との間の連結が遮断され、台車30を手動操作により動かすことができるようになり、またシリンダ等の駆動手段により駆動することもできる。これによって、台車30は作業ライン4から搬出ステージ5に移行することになる。そして、このように搬出ステージ5に移行した台車30は待機ステージ3に帰還させる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】ワーク搬送装置が装備されている作業エリアを示す構成説明図である。
【図2】ワーク搬送装置によってワークを搬送している状態を示す側面図である。
【図3】ワーク搬送装置の要部外観図である。
【図4】図3のX−X断面図である。
【図5】台車の側面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 建設機械の上部構造体
2 作業エリア 2a 床面
3 待機ステージ 4 作業ライン
5 搬出ステージ 10 スラットコンベア
11 スラット板 14 係合孔
14a スリーブ 20 レール
20a 転動面 21 基礎
30 台車 31 台板
33 ワーク載置部 34 車輪
35 ピン挿通孔 36 連結ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面がほぼ平坦な作業エリアで重量物のワークを搬送するワーク搬送装置において、
前記床面とほぼ同一面を搬送面とするスラットコンベアと、
前記スラットコンベアと平行に設置され、転動面が前記床面とほぼ同一面とした少なくとも一対のレールと、
前記ワークの載置部を有し、前記各レールの転動面上を転動する車輪と、前記スラットコンベアに接離可能に連結され、このスラットコンベアにより牽引される台車と
から構成したことを特徴とするワーク搬送装置。
【請求項2】
前記スラットコンベアのスラット板には係合孔を形成し、また前記台車には、この係合孔に係入可能な連結ピンを設け、前記台車はこの連結ピンを介して前記スラットコンベアによる牽引を行わせる構成としたことを特徴とする請求項1記載のワーク搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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