説明

ワーク搬送装置

【課題】ワークを順に1つずつ下流側へと搬送するワーク搬送装置の構造を簡素化する。
【解決手段】ワーク2の搬送経路においてワーク2を順に1つずつ下流側へと搬送するワーク搬送装置1において、搬送経路の下流側へ向けて傾斜し、ワーク2が自重によってスライド可能なワーク載置部3と、ワーク載置部3の下流端部においてワーク2に当接してワーク2のスライドを規制するストッパ4と、ストッパ4に当接するワーク2を上方へリフトさせるリフト手段5と、ストッパ4に揺動可能に装着され、ストッパ4の延長部をなす初期位置と初期位置から揺動してリフト手段5によってリフトされたワーク2を排出する排出位置との間を揺動するシュート手段7と、排出位置から初期位置へと揺動する方向にシュート手段7を復帰する復帰手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを順に1つずつ下流側へと搬送するワーク搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一方向へと傾斜して設けられるコンベア上にワークを一列に載置し、下流側のコンベア上へと順に1つずつワークを送るワーク搬送装置が知られている。例えば特許文献1には、第1のストッパと第1のストッパより上流側に設けられる第2のストッパとを設け、第1のストッパ及び第2のストッパを順次作動させることでコンベア上を流れるワークを順に1つずつ下流側のコンベアへと搬送する装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−297537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし上記従来の技術では、ワークを順に1つずつ下流側へと搬送するために2つのストッパを必要とするので、ワーク搬送装置の構造が複雑化するという問題があった。
【0005】
本発明は、ワークを順に1つずつ下流側へと搬送するワーク搬送装置の構造を簡素化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ワークの搬送経路においてワークを順に1つずつ下流側へと搬送するワーク搬送装置において、搬送経路の下流側へ向けて傾斜し、ワークが自重によってスライド可能なワーク載置部と、ワーク載置部の下流端部においてワークに当接してワークのスライドを規制するストッパと、ストッパに当接するワークを上方へリフトさせるリフト手段と、ストッパに揺動可能に装着され、ストッパの延長部をなす初期位置と初期位置から揺動してリフト手段によってリフトされたワークを排出する排出位置との間を揺動するシュート手段と、排出位置から初期位置へと揺動する方向にシュート手段を復帰する復帰手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ストッパに当接した状態で保持されるワークをリフト手段によってリフトさせることでワークを下流側へと自重によって横転させ、ストッパに揺動可能に装着されるシュート手段によってワークを下流側へと搬送することができるので、ストッパを2つ設ける必要がなく、1つのストッパによってワークを順に1つずつ下流側へと搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態におけるワーク搬送装置の構成を示す構成図である。
【図2】ワーク搬送装置の動作を示す概略図である。
【図3】シュート部が初期位置に戻るまでの過程を示す概略図である。
【図4】ショックアブソーバの動作を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では図面を参照して本発明の実施の形態について詳しく説明する。
【0010】
図1は本実施形態におけるワーク搬送装置の構成を示す構成図であり、図1(a)はワーク搬送装置の側面図、図1(b)は図1(a)のワーク搬送装置を矢印A方向から見た正面図である。なお、図1(b)ではストッパ及びシュートについては省略する。
【0011】
ワーク搬送装置1は、ワーク2が一列に載置されるコンベア3と、コンベア3の下流端においてワーク2のスライドを規制するストッパ4と、コンベア3の下流端においてワーク2を上方へと押圧してリフトさせるリフト機構5と、リフト機構5によって上昇したワーク2を下流側のコンベア6へと搬送するシュート7とから構成される。
【0012】
なお、本実施形態では円柱形状のワーク2が、ワーク2の軸方向とコンベア3の流れ方向とが一致するようにコンベア上に載置される場合について説明するが、ワーク2の形状及びコンベア3に載置される向きはその他の形状及び向きであってもよい。
【0013】
コンベア3は、一対のコンベア31、32から構成され、各コンベア31、32がワーク2の流れ方向に対して両側斜め下方からワーク2を支持するように互いに離間した状態で略逆ハの字型に配置される。また各コンベア31、32は、ワーク2が自重によって搬送経路の下流方向にスライド可能なように下流側へ向けて傾斜して設けられる。
【0014】
ストッパ4は、コンベア3の下流端部においてワーク2の搬送経路を遮断する方向に延設され、ワーク2の側面に当接することでワーク2の水平方向へのスライドを規制する。
【0015】
リフト機構5は、コンベア3の下流端部の下方に設けられ、ストッパ4に当接するワーク2に下方から当接してワーク2を支持するワーク支持部51と、ワーク支持部51を上下方向に駆動可能なシリンダ52とから構成される。
【0016】
ワーク支持部51は、上面の一部に縦断面がV字形状となるような切り欠き53を有し、当該切り欠き53によってワーク2の外周面下方側を支持するようにワーク2に当接する。
【0017】
シリンダ52はエアシリンダであり、シリンダ52の側面上方に設けられる上部連通孔54にエアが供給されることで下方へと駆動され、下部連通孔55にエアが供給されることで上方へと駆動される。なお、シリンダ52はエアシリンダに代えて油圧シリンダであってもよい。また、電気的に駆動されるアクチュエータによって上下方向に駆動される構造であってもよい。
【0018】
シリンダ52がワーク支持部51を上方へと駆動することで、ワーク支持部51は一対のコンベア31、32の間から上方へと伸長し、ワーク2を上方へと押圧する。
【0019】
シュート7は、ストッパ4の上部に回転中心としての一端71がヒンジ連結され、連結部73を中心として揺動可能である。シュートは他端72が一端71の上方に位置するように鉛直上方を向いた、ストッパ4の延長部をなす状態である初期位置から、下流側のコンベア6に当接してワーク2をシュートする排出位置までの間でのみ揺動する。
【0020】
コンベア上には多数載置されたワーク2の最上流部におもり8が載置される。おもり8はワーク2と略同径の円柱形状であり、直径よりも軸方向長さの方が長くなるように形成される。これにより、おもり8はその自重によってワーク2を常にコンベア3の下流方向へと付勢するとともに、最上流部のワーク2の転倒を防止する。おもり8は例えばMCナイロンなどの素材によって形成され、ワーク2に当接したときにワーク2に傷がつかない程度の硬さであればその他の素材であってもよい。
【0021】
次に、ワーク搬送装置の作動過程について図2を参照しながら説明する。図2はワーク搬送装置の作動の過程を(a)、(b)、(c)、(d)の順に示す側面図である。なお、図2ではワークの流れを明確に示すため一対のコンベア31、32については省略する。
【0022】
図2(a)に示すように、一列に整列したワーク2はおもり8によって下流側へと付勢され、最下流側のワーク2がストッパ部4に当接した状態で保持されている。この状態でシリンダ5の下部連通孔55にエアを供給してシリンダ52を上方へ駆動すると、図2(b)に示すようにワーク支持部51は最下流側のワーク2に当接してワーク2を上方へと押圧する。このとき、上昇したワーク2に隣接する次のワーク2はワーク支持部51の側面に当接してそのスライドが規制される。すなわち、ワーク支持部51がストッパとなってワーク2の下流側へのスライドが規制される。
【0023】
ワーク2の下端がストッパ4とシュート7との連結部73より上側に位置するまでワーク2が上昇すると、ワーク2が自重によって横転し、ワーク2に押されたシュート7が連結部73を中心として横倒し状態に揺動する。シュート7の揺動に伴って、図2(c)に示すようにシュート7の上端が下流側のコンベア6に当接し、さらにワーク2がシュート上を滑り落ちる。これにより、図2(d)に示すように、ワーク2は略90度回転して横転状態となり、下流側のコンベア6へと搬送される。
【0024】
その後、シリンダ5の上部連通孔54にエアを供給してシリンダ52を初期位置まで下降させるとワーク支持部51が下降し、ワーク支持部51によってスライドが規制されていた次のワーク2がストッパ部4に当接する位置までスライドする。
【0025】
次に、ワーク2を下流側のコンベア6に搬送した後にシュート7が初期位置に戻るまでの過程について図3を参照しながら説明する。図3(a)、(b)はワーク搬送装置の側面図、図3(c)、(d)はそれぞれ図3(a)、(b)を反対方向から見たワーク搬送装置の側面図である。なお、図3では構成を明確にするためリフト機構については省略する。
【0026】
図3(a)、(b)に示すように、ストッパ4とシュート7との連結部73には、連結部73と同軸上に滑車74が設けられ、当該滑車74にはワイヤ75が巻き掛けられる。ワイヤ75の一端は滑車74に固定され、他端にはスプリング76を介してウェイト77が設けられる。一方、図3(c)、(d)に示すように、連結部73の滑車74と反対側にはウェイト78が固設されており、シュート7の揺動に伴ってウェイト78もともに揺動する。ウェイト78はシュート7が初期位置にあるとき重心が連結部73より下方に位置し、シュート7の揺動に伴って重心が上昇するように設けられる。
【0027】
ワーク2が自重によってシュート7とともに揺動すると、図3(a)に示すように、滑車74がともに回転してワイヤ75が滑車74に巻き付くことでウェイト77が上方へと持ち上げられる。このとき、ウェイト77がコンベア3の下面に衝突するが、ウェイト77の上部にはスプリング76が設けられているので、衝撃はスプリング76によって吸収される。またウェイト78は、図3(c)に示すようにシュート7とともに揺動し、ウェイト78の重心位置が上昇する。
【0028】
ワーク2がシュート7から下流側のコンベア6へ搬送されると、図3(b)に示すようにウェイト77に作用する重力によって滑車74が回転し、さらに図3(d)に示すように、ウェイト78は重心位置を下げるように連結部73を中心として回転し、これに伴ってシュート7が持ち上げられるように揺動し、図3(d)に示すように初期位置まで戻る。
【0029】
以上のように、シュート7はウェイト77、78によって初期位置となる方向へ常に付勢されており、ワーク2をシュートするときはワーク2がシュート7を押し下げる力がウェイト77、78によってシュート7が初期位置に戻ろうとする力を上回るので排出位置へ向けて揺動し、ワーク2がシュート7から下流側のコンベア6へと移動すると、ウェイト77、78の重みによって初期位置へと戻る。
【0030】
次に、シュート7が揺動して下流側のコンベア6に当接する際のショックを緩和する構成について図4を参照しながら説明する。
【0031】
シュート4はワーク2を載せたまま揺動して下流側のコンベア6に衝突するので、衝突時にショックが発生する。そこで、シュート4とコンベア6との間に当該ショックを吸収するショックアブソーバ9が設けられる。
【0032】
ショックアブソーバ9は、上下方向に摺動可能なエアシリンダ91とエアシリンダ91を常に上方に付勢するスプリング92とによって構成される。なお、エアシリンダ91に代えて油圧シリンダを用いてもよい。
【0033】
シュート4が初期位置からコンベア6へ向けて左回りに揺動するとき、シュート4はワーク2に押されて勢いよく揺動する。図4(a)に示すように、シュート4がエアシリンダ91の上端に達すると、シュート4がエアシリンダ91を下方へと押し込むことでエアシリンダ91の減衰作用によってシュート4の揺動速度が抑制され、この状態で図4(b)に示すようにシュート4がコンベア6に当接する。これにより、シュート4がコンベア6に衝突する際のショックが軽減される。
【0034】
また、ワーク2がコンベア6にスライドした後、エアシリンダ91はスプリング92の弾性力によって所定量だけ押し上げられる。これにより、シュート4はエアシリンダ91に押圧されて押し上げられ、その後ウェイト77、78に作用する重力によって初期位置まで揺動する。
【0035】
以上のように本実施形態では、ストッパ4に当接した状態で保持されるワーク2をリフト機構5によってリフトさせることで当該ワーク2を下流側へと自重によって横転させ、ストッパ4に揺動可能に装着されるシュート7によって下流側へと搬送するので、ストッパ4を2つ設ける必要がなく、1つのストッパ4によってワーク2を順に1つずつ下流側へと搬送することができ、ワーク搬送装置1の構造を簡素化することができる(請求項1に対応)。
【0036】
また、コンベア3に載置されるワーク2はおもり8の自重によって下流側へ付勢されるので、最上流側のワーク2が上流側へと転倒することを防止することができる(請求項2に対応)。
【0037】
さらに、シュート3に下方から当接してシュート3の揺動を抑制するショックアブソーバ9が設けられるので、シュート4と下流側コンベア6との衝突時のショックを軽減することができる。また、ショックアブソーバ9にはワーク2がシュートされた後にシュート4を押し上げるスプリング92が設けられるので、ワーク2がシュートされた後にシュート4が初期位置へ向けて揺動する際、シュート4に勢いをつけることでより確実にシュート4を初期位置まで戻すことができる(請求項3に対応)。
【0038】
以上説明した実施形態に限定されることなく、その技術的思想の範囲内において種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 ワーク搬送装置
2 ワーク
3 コンベア(ワーク載置部)
4 ストッパ
5 リフト機構(リフト手段)
6 下流側コンベア(下流側ワーク載置部)
7 シュート(シュート手段)
8 おもり
9 ショックアブソーバ
77、78 ウェイト(復帰手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの搬送経路において前記ワークを順に1つずつ下流側へと搬送するワーク搬送装置において、
前記搬送経路の下流側へ向けて傾斜し、前記ワークが自重によってスライド可能なワーク載置部と、
前記ワーク載置部の下流端部において前記ワークに当接して前記ワークのスライドを規制するストッパと、
前記ストッパに当接する前記ワークを上方へリフトさせるリフト手段と、
前記ストッパに揺動可能に装着され、前記ストッパの延長部をなす初期位置と前記初期位置から揺動して前記リフト手段によりリフトされた前記ワークを排出する排出位置との間を揺動するシュート手段と、
前記排出位置から前記初期位置へと揺動する方向に前記シュート手段を復帰する復帰手段と、
を備えることを特徴とするワーク搬送装置。
【請求項2】
前記ワーク載置部に載置される前記ワークは、おもりにより下流側に付勢されることを特徴とする請求項1に記載のワーク搬送装置。
【請求項3】
前記シュート手段が前記排出位置へ揺動するとき、前記シュート手段に下方から当接して前記シュート手段の揺動を抑制するショックアブソーバと、
前記ショックアブソーバを上方へと付勢する付勢手段と、
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のワーク搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−16648(P2011−16648A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164091(P2009−164091)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(000231350)ジヤトコ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】