説明

ワーク搬送装置

【発明の詳細な説明】
A.発明の目的(1) 産業上の利用分野 本発明は、コンベアによって移動するパレットにワークを載置して搬送するワーク搬送装置に関し、特に、共通のパレットによって複数の異なる形状のワークを搬送することを可能としたワーク搬送装置に関する。
(2) 従来の技術 従来、ワークを載置したパレットを搬送する一対のコンベアの両端部をパレット移載装置で接続した閉じた搬送路を構成し、その搬送路の途中に複数の作業ステーションを設けたワーク搬送装置が知られている(例えば、特開昭61−252054号公報参照)。このような閉じた搬送路によってパレットを循環させれば、ワークの払い出しが済んだ空のパレットが自動的にワーク投入ステーションに戻されるため、効率的なワークの搬送が可能となる。
(3) 発明が解決しようとする課題 しかしながら、上記従来のワーク搬送装置では、搬送するワークの形状が変更される度にワーク載置面の形状が異なる異種のパレットに交換する必要があり、その作業が極めて繁雑であるばかりか、複数種のワークがランダムに搬入される場合には実質的に対応が不可能となるという問題があった。
本発明は、前述の事情に鑑みてなされたもので、共通のパレットによって形状の異なる複数種のワークを効率的に搬送することが可能なワーク搬送装置を提供することを目的とする。
B.発明の構成(1) 課題を解決するための手段 前記目的を達成するために、本発明は、少なくともワークの投入ステーションと払い出しステーションを有するコンベア群と、ワークを載置して前記コンベア群で搬送されるパレットとを備えたワーク搬送装置において、前記パレットの外周に形状の異なる複数のワーク載置面を形成するとともに、前記コンベア群の投入ステーション上流位置に、所望のワーク載置面を使用可能とすべく前記パレットを回転させるパレット回転機構を設けたことを第1の特徴とする。
また本発明は、上記第1の特徴に加えて、前記コンベア群は下段コンベアと上段コンベアから成り、下段コンベア、上段コンベア、および前記下段コンベアと上段コンベアの両端部を接続する一対の昇降機構によって閉じた搬送路を構成するとともに、上段コンベアの始端と終端にそれぞれ前記投入ステーションと払い出しステーションを設け、下段コンベアの終端に前記パレット回転機構を設けたことを第2の特徴とする。
(2) 作用 前述の本発明の第1の特徴によれば、搬送するワークの形状に対応するワーク載置面が使用可能になるように、予めパレット回転機構によってパレットが回転される。コンベア群に設けた投入ステーションにおいてワークが載置されたパレットは、該コンベア群に沿って払い出しステーションまで搬送され、そこでパレットからワークが取り出される。
また、本発明の第2の特徴によれば、パレット始端と終端に投入ステーションと払い出しステーションを備えた上段コンベア、昇降機構、終端にパレット回転機構を設けた下段コンベア、および他の昇降機構によって構成される閉じた搬送路を循環するので、払い出しステーションにおいて空になったパレットが自動的に投入ステーションに戻される。しかも、上段コンベアと下段コンベアが上下に重ね合わされて配置されるので、その設置スペースが削減される。
(3) 実施例 以下、図面に基づいて本発明の実施例を説明する。
第1図〜第6図は本発明の一実施例を示すもので、第1図1図はそのワーク搬送装置の全体側面図、第2図は第1図R>図のII部拡大図、第3図は第2図のIII方向矢視図、第4図4図は第3図のIV−IV線断面図、第5図は第1図のV部拡大図、第6図はパレットの斜視図である。
第1図に示すように、このパレット搬送装置は、上下に重ね合わせた状態で配設した下段コンベアC1と上段コンベアC2、下段コンベアC1の終端と上段コンベアC2の始端を接続する昇降機構L1、および上段コンベアC2の終端と下段コンベアC1の始端を接続する昇降機構L2を備えている。上段コンベアC2の始端と終端にはマニピュレータ1を備えた投入ステーションS1とマニピュレータ2を備えた払い出しステーションS2が設けられており、投入ステーションS1においてマニピュレータ1でパレットP上に載置されたワークWは上段コンベアC2によって図中右方向に搬送され、払い出しステーションS2においてマニピュレータ2でパレットP上のワークWが取り出される。空になったパレットPは昇降機構L2によって下段コンベアC1の始端に移載されて図中左方向に搬送され、その終端から昇降機構L1によって再び上段コンベアC2に移載されて循環する。そして、下段コンベアC1の終端には、投入ステーションS1において形状の異なるワークWをパレットPに載置するために、該パレットPを所定の姿勢に回転させるパレット回転機構Rが設けられている。
第6図に示すように、パレットPは概略三角柱状の本体部101と、この本体部101の両側に固着された三角形の端板102,103を備えている。本体部101の3個の面には、載置するワークWの種類に応じて形状を異ならせた位置決めブラケット104と位置決めピン105が各々2個ずつ設けられており、これら位置決めブラケット104と位置決めピン105によって形状の異なる3種類のワークWをそれぞれ載置可能な3個のワーク載置面が円周方向に120゜間隔で形成されている。パレットPの端板102,103の外側面には、下段コンベアC1および上段コンベアC2に設けた後述の側板に当接して案内される6個のガイドローラ106が軸支されている。また、両端板102,103の中央にはパレットPの回転中心となる三角形の角孔107と円形の丸孔108がそれぞれ形成されている。
第1図〜第5図に示すように、下段コンベアC1は一対のスプロケット3,4に巻掛けられてチェンガイド5に沿って走行する左右の無端チェン6を備えており、この無端チェン6には前記パレットPの端板102,103の下面に当接して該パレットPを支持する多数のトップローラ7が装着されている(第4図参照)。チェンガイド5の上部には、パレットPの各端板102,103に設けた下側の2個のガイドローラ106を案内すべく、細幅の側板8が平行に配設されている。そして、この下段コンベアC1の無端チェン6は駆動モータ9にチェン10を介して接続されて駆動され、ワークWを載置したパレットPを昇降機構L2から昇降機構L1に向けて図中左方向に搬送する。
上記下段コンベアC1には先端のパレットPを順次切り離すための2個の縁切り機構Dが設けられている。縁切り機構Dはシリンダ11によってパレットPの移動経路に下方から突出可能な左右一対の係止ピン12を備えており、この係止ピン12をパレットPの本体部101に当接させることにより該パレットPを無端チェン6上に所定間隔で停止させるとともに、該係止ピン12を所定のタイミングで出没させることにより先頭のパレットPを順次昇降機構L1に向けて送出する。なお、パレットPが縁切り機構Dの係止ピン12によって拘束されているとき、無端チェン6はそのトップローラ7が該パレットPの底面を転動することにより支障なく走行することができる。
下段コンベアC1の終端と上段コンベアC2の始端間に配設される昇降機構L1は、左右一対のガイドレール13に案内され、小ストロークの第1シリンダ14と大ストロークの第2シリンダ15を直列に接続した2段シリンダ16で昇降駆動される平面視コ字状の昇降台17を備えている。下段コンベアC1の終端には先頭のパレットPを該下段コンベアC1から昇降台17に移載するための押込み機構T1が設けられている。押込み機構T1はスライドガイド18に案内されて摺動するガイドバー19と、このガイドバー19の先端にピン20で枢支した一対のドグ21と、前記ガイドバー19とドグ21を駆動するシリンダ22(第3図参照)を備えており、前記ドグ21はスプリング23によって付勢されて下端がストッパ24に当接する垂直姿勢に保たれている。したがって、ドグ21が図中左方向に移動してパレットPの本体部101を押圧するとき、該ドグ21はストッパ24に当接して垂直姿勢に保たれる。逆に、ドグ21が図中右方向に戻る際に後読のパレットPに当接すると、該ドグ21はスプリング23に抗して反時計方向に揺動し、当接したパレットPの下面を通過する。
昇降台17には前記押込み機構T1によって搬入されたパレットPの端板102,103に当接可能なストッパボルト25と、中間部がピン26で揺動自在に枢支されてパレットPの本体部101に押圧するようにシリンダ27で駆動される位置決め部材28が設けられており、これらストッパボルト25と位置決め部材28によって昇降台17上でのパレットPの位置決めが行われる。
第2図および第3図から明らかなように、下段コンベアC1の左側のパレット回転機構Rには、パレットPの端板102に形成した三角形の角孔107に嵌合可能な角軸29が軸受30によって軸方向摺動自在に支持されている。角軸29の外端部はベルクランク31を介してシリンダ32に接続されており、このシリンダ32を収縮させることにより前記角軸29はパレットPの角孔107に挿入される。ガイドレール33に沿って進退するラック34は前記角軸29に相対回転不能かつ軸方向移動自在に装着したピニオン35に噛合しており、このラック34を小ストロークの第1シリンダ36と大ストロークの第2シリンダ37よりなる2段シリンダ38で駆動することにより前記角軸29が120゜または240゜回転する。一方、反対側のパレット回転機構Rには、パレットPの端板103に形成した丸孔108に嵌合可能な丸軸39が軸受40によって軸方向摺動自在に支持されており、この丸軸39はベルクランク41を介して接続したシリンダ42で収縮させることにより前記丸孔108に挿入される。
上段コンベアC2の始端には昇降台17上のパレットPを該上段コンベアC2上に移載するための引出し機構T2が設けられている。引出し機構T2はスライドガイド43に摺動自在に係合するガイドバー44と、このガイドバー44の先端にピン45で枢支した一対のドグ46と、前記ガイドバー44とドグ46を駆動するシリンダ(図示せず)を備えている。そして、前記ドグ46はスプリング47によって付勢されて下端がストッパ48に当接した垂直姿勢に保たれており、ドグ46が図中右方向に移動してパレットPの本体部101を牽引するとき、該ドグ46はスイトッパ48に当接して垂直姿勢に保たれるが、ドグ46が図中左方向に戻る際に昇降台17上のパレットPに当接すると、該ドグ46はスプリング47に抗して時計方向に揺動し、該パレットPの下面を通過する。
第1図および第5図に示すように、上段コンベアC2の終端と下段コンベアC1の始端間を接続する昇降機構L2はガイドレール49に案内されてロッドッレスシリンダ50によって昇降駆動される昇降台51を備えている。そして、上段コンベアC2から昇降台51へのパレットPの移載は前述の下段コンベアC1に設けた押込み機構T1と同一の構造を有する押込み機構T1′によって行われるとともに、昇降台51から下段コンベアC1へのパレットPの移載は前述の上段コンベアC2に設けた引出し機構T2と同一の構造を有する引出し機構T2′によって行われる。
上段コンベアC2は前述の下段コンベアC1と搬送方向が異なるだけで実質的に同一の構造を備えているため、対応する構成要素に下段コンベアC1の構成要素と同一の符号を付すのみで,重複する説明は省略する。ただし、上段コンベアC2に設けられる縁切り機構D′は下段コンベアC1の縁切り機構Dと同一の構造を備えているが、多数のパレットPをストレージするためにその数が多数設けられている点と、パレットPに載置したワークWどうしの干渉を避けるためにその間隔が大きく設定されている点でのみ異なっている。
次に、前述の構成を備えた本発明の実施例の作用を説明する。
下段コンベアC1を図中左方向に搬送されて縁切り機構Dによって停止した先頭のパレットPは、該縁切り機構Dの係止ピン12をシリンダ11で下降させると同時に押込み機構T1のドグ21をシリンダ22で前進させることによって昇降機構L1の昇降台17上に移載される。昇降台17に移載されたパレットPはシリンダ27で駆動される位置決め部材28とストッパボルト25に挟持されて位置決めされる。このとき、パレットPの使用可能な載置面、すなわち上向きの載置面が次に載置するワークWの形状に対応していない場合には、パレット回転機構Rのシリンダ32,42によって角軸29と丸軸39がパレットPの角孔107と丸孔108に挿入される。続いて、昇降台駆動用の2段シリンダ16の第1シリンダ14を収縮させて昇降台17を僅かに下降させた状態で、パレット回転用の2段シリンダ38の第1シリンダ36あるいは第2シリンダ37を伸長させる。これにより、ラック34およびピニオン35を介して角軸29が回転駆動され、パレットPは120゜あるいは240゜回転して所望の載置面が上向きとなる。次に昇降台駆動用の2段シリンダ16の第1シリンダ14を伸長させて昇降台17を元の下段コンベアC1の高さに上昇させてパレットPを支持し、続いて角軸29と丸軸39をパレットPから引き抜いた後、2段シリンダ16の第2シリンダ15を伸長させて昇降台17を上段コンベアC2の高さまで上昇させる。なお、パレットPの載置面がワークWの形状に対応している場合には、パレット回転機構Rによる前述のパレットPの回転操作は行われない。
昇降台17が上段コンベアC2の高さに上昇すると投入ステーションS1に設けたマニピュレータ1によってワークWがパレットP上に載置されるが、パレット回転機構Rによって予めパレットPの載置面を選択したことにより、該ワークWはパレットPの上に正しく載置される。続いて引出し機構T2のドグ46によって昇降台17から上段コンベアC2に移載されたパレットPは図中右方向に搬送され、多数の縁切り機構D′によってワークWどうしが干渉しないように所定間隔でストレージされる。
上段コンベアC2の先頭のパレットPが押込み機構T1′によって昇降機構L2の昇降台51上に移載されると、ロッドレスシリンダ50によって昇降台51が下段コンベアC1の高さまで下降する。続いて引出し機構T2′によって下段コンベアC1に移載されたパレットPは図中左方向に搬送されて縁切り機構Dによって係止され、次のワークW載置に備えて待機する。
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく、種々の小設計変更を行うことが可能である。
例えば、パレットPに形成するワークWの載置面は3面に限らず、2面あるいは4面以上にすることができる。また、下段コンベアC1および上段コンベアC2はトップローラ7付の無端チェン6を用いたものに限らず、ロラーコンベア等の他のコンベアであってもよい。
C.発明の効果 以上のように本発明の第1の特徴によれば、パレットの外周に異なる形状のワークを載置可能な複数のワーク載置面を設け、このパレットを予めパレット回転機構によって所望のワーク載置面が使用可能になる姿勢に回転させているので、共通のパレットに異なる形状のワークを載置することができる。これにより、ワークの形状が変更されても、その都度パレットを交換する必要がなくなり、複数種のワークをランダムに搬送する場合にも容易に対応することが可能となる。
また、本発明の第2の特徴によれば、パレットが始端と終端に投入ステーションと払い出しステーションを備えた上段コンベア、昇降機構、終端にパレット回転機構を設けた下段コンベア、および他の昇降機構によって構成される閉じた搬送路を循環するので、払い出しステーションにおいて空になったパレットが自動的に投入ステーションに戻される。しかも、上段コンベアと下段コンベアが上下に重ね合わされて配置されるので、その設置スペースが削減される。
【図面の簡単な説明】
第1図〜第6図は本発明の一実施例を示すもので、第1図R>図はそのワーク搬送装置の全体側面図、第2図は第1図のII部拡大図、第3図は第2図のIII方向矢視図、第4図R>図は第3図のIV−IV線断面図、第5図は第1図のV部拡大図、第6図はパレットの斜視図である。
C1……下段コンベア、C2……上段コンベア、C1,C2……コンベア群、L1,L2……昇降機構、P……パレット、R……パレット回転機構、S1……投入ステーション、S2……払い出しステーション、W……ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】少なくともワーク(W)の投入ステーション(S1)と払い出しステーション(S2)を有するコンベア群(C1,C2)と、ワーク(W)を載置して前記コンベア群(C1,C2)で搬送されるパレット(P)とを備えたワーク搬送装置において、前記パレット(P)の外周に形状の異なる複数のワーク載置面を形成するとともに、前記コンベア群(C1,C2)の投入ステーション(S1)上流位置に、所望のワーク載置面を使用可能とすべく前記パレット(P)を回転させるパレット回転機構(R)を設けたことを特徴とする、ワーク搬送装置。
【請求項2】前記コンベア群(C1,C2)は下段コンベア(C1)と上段コンベア(C2)から成り、下段コンベア(C1)、上段コンベア(C2)、および前記下段コンベア(C1)と上段コンベア(C2)の両端部を接続する一対の昇降機構(L1,L2)によって閉じた搬送路を構成するとともに、上段コンベア(C2)の始端と終端にそれぞれ前記投入ステーション(S1)と払い出しステーション(S2)を設け、下段コンベア(C1)の終端に前記パレット回転機構(R)を設けたことを特徴とする、請求項■記載のワーク搬送装置。

【第1図】
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【第2図】
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【第3図】
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【第4図】
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【第5図】
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【第6図】
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【特許番号】第2779667号
【登録日】平成10年(1998)5月15日
【発行日】平成10年(1998)7月23日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平1−285247
【出願日】平成1年(1989)11月1日
【公開番号】特開平3−147618
【公開日】平成3年(1991)6月24日
【審査請求日】平成8年(1996)8月22日
【出願人】(999999999)本田技研工業株式会社
【参考文献】
【文献】実開 昭64−53123(JP,U)