説明

ワーク搭載用テーブル

【課題】ワーク搭載用テーブルのワーク搭載面に対するワークの貼りつきを防止する。
【解決手段】ワークが搭載されるワーク搭載面16cが研削されポリッシングされたガラス製のワーク搭載用テーブル16であって、前記ワーク搭載面16cの前記ワークが搭載される領域に溝18が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットパネルディスプレイに用いられるガラス基板等のワークを搭載するワーク搭載用テーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶パネルや有機ELパネル等のフラットパネルディスプレイに用いられるガラス基板に形成された回路パターンの形状や寸法、基準マークの位置等を測定する座標測定機が存在する。この座標測定機を用いて測定を行う場合には、ワーク搭載用テーブルにワークであるガラス基板が搭載される。ワーク搭載用テーブルには一体構造のものや分割構造のものが存在するが、ワーク搭載用テーブルのワーク搭載面は、座標測定機の測定精度の向上のため精密に研削され且つポリシング加工され高精度の平面度を有している。
【0003】
ここでワーク搭載用テーブルは枠体により周縁部が支持される構造であるため、自重により撓みワーク搭載用テーブルのワーク搭載面の平面度が悪化することがあった。従ってこれを回避するために、ワーク搭載面の平面度を調整する平面度調整機構を備えるワーク搭載用テーブルが存在する(例えば、特許文献1参照)。このワーク搭載用テーブルによれば、ワーク搭載面の平面度を平面度調整機構を用いて調整することにより高精度に維持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−33207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで近年上述のような座標測定機を用いて測定を行なうガラス基板の大型化が進んでおり、これに伴い座標測定機に設けられるワーク搭載用テーブルも大型化している。ワーク搭載用テーブルのワーク搭載面に液晶パネルや有機ELパネルに用いられる大型の薄板ガラス基板等のワークを搭載した場合には、ワーク搭載面の平面度が高精度に維持されているため、ワーク搭載用テーブルとワークとがオプティカルコンタクト等により貼りつくことがあった。ワーク搭載用テーブルにワークが貼りついた場合には、その部分においてワークが変形して、座標測定機の測定精度の悪化の要因になることがあった。また、ワーク搭載用テーブルからワークを搬出する際に、ワークをワーク搭載面から円滑に剥がすことができず破損することがあった。
【0006】
本発明の目的は、ワーク搭載用テーブルのワーク搭載面に対するワークの貼りつきを防止することができるワーク搭載用テーブルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のワーク搭載用テーブルは、ワーク搭載面が研削されポリッシングされたガラス製のワーク搭載用テーブルであって、前記ワーク搭載面の前記ワークが搭載される領域に溝が形成されていることを特徴とする。
【0008】
また本発明のワーク搭載用テーブルは、前記溝が格子状に形成されていることを特徴とする。
【0009】
また本発明のワーク搭載用テーブルは、前記溝が渦巻状に形成されていることを特徴とする。
【0010】
また本発明のワーク搭載用テーブルにおいて、前記溝は該溝が延びる方向と直交する面における断面形状が矩形形状であることを特徴とする。
【0011】
また本発明のワーク搭載用テーブルにおいて、前記溝は該溝が延びる方向と直交する面における断面形状がV字形状であることを特徴とする。
【0012】
また本発明のワーク搭載用テーブルは、前記ワーク搭載面と前記溝の側面との境界部に曲面部が設けられていることを特徴とする。
【0013】
また本発明のワーク搭載用テーブルは、前記ワーク搭載面の平面度を調整する平面度調整機構を備えることを特徴とする。
【0014】
また本発明のワーク搭載用テーブルは、前記溝内に設けられた、エアを噴出しまたは吸引するエア噴出吸引口と、該ワーク搭載用テーブルの下部に配置され前記エア噴出吸引口に連通接続される配管とを備え、前記溝は、前記ワーク搭載面の前記配管に対応する位置に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のワーク搭載用テーブルによれば、ワーク搭載用テーブルのワーク搭載面に対するワークの貼りつきを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態に係る二次元座標測定機の外観を示す斜視図である。
【図2】実施の形態に係るワーク搭載用テーブルの斜視図である。
【図3】実施の形態に係るワーク搭載用テーブルの溝の断面形状を示す図である。
【図4】実施の形態に係るワーク搭載用テーブルの斜視図である。
【図5】実施の形態に係るワーク搭載用テーブルの溝の断面形状を示す図である。
【図6】実施の形態に係るワーク搭載用テーブルの溝の形成状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態に係る二次元座標測定機のワーク搭載用テーブルについて説明する。図1は、実施の形態に係る二次元座標測定機の外観を示す斜視図である。なお、以下の説明においては、図中に示したXYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。XYZ直交座標系は、X軸及びY軸が水平面に対して平行となるように設定され、Z軸が水平面と直交する方向に設定されている。
【0018】
図1に示すように、二次元座標測定機2は、基台4と、基台4上のX軸方向の両端部にY軸方向に平行に設けられた一対のガイドレール6と、ガイドレール6にガイドされてY軸方向にスライド可能に設けられたX軸フレーム8と、X軸フレーム8をガイドレール6に沿って移動させるY軸駆動部12と、X軸フレーム8の長手軸方向にスライド可能に設けられたCCDカメラ10と、CCDカメラ10をX軸フレーム8に沿って移動させるX軸駆動部14とを備えている。
【0019】
X軸フレーム8は、断面凹形状に形成され、X軸フレーム8の上面には2本のガイドレール8aがX軸方向に平行に設けられている。また、ガイドレール8aにガイドされてX軸方向にスライド可能に載置台18が設けられ、載置台18にはワークを図示しない顕微鏡を介して撮影するCCDカメラ10が固定されている。従って、CCDカメラ10はワーク搭載用テーブル16上の任意の位置へ移動可能となり、照明装置(図示せず)から射出される照明光により上方または下方から照明される測定対象部の撮影を行なう。
【0020】
Y軸駆動部12は、モータにより回転駆動されるボールねじと、このボールねじに螺合され且つX軸フレーム8の下部に設けられた連結板とを備えている。Y軸駆動部12によりボールねじが回転駆動されると連結板がY軸方向に移動し、X軸フレーム8がガイドレール6に沿って移動する。なお、Y軸駆動部12を使用せずX軸フレーム8の両端部にリニアモータ等のサーボモータを設置して、サーボモータの駆動によりX軸フレーム8をガイドレール6に沿って移動させるようにしてもよい。
【0021】
X軸駆動部14は、モータにより回転駆動されるボールねじと、このボールねじに螺合され且つ載置台18の下部に設けられた連結板とを備えている。X軸駆動部14によりボールねじが回転駆動されると連結板がX軸方向に移動し載置台18がガイドレール8aに沿って移動する。
【0022】
基台4の上部には、ワークを搭載する透明なガラス製のワーク搭載用テーブル16が設置されている。ワーク搭載用テーブル16の下部には複数のリフトピンをZ軸方向に昇降させるリフトピン昇降機構(図示せず)、及びワーク搭載用テーブル16に対してエアを供給しまたは吸引するエア配管が配設されている。なお、基台4の内部にはCCDカメラ10、Y軸駆動部12、X軸駆動部14、リフトピン昇降機構、及びワーク搭載用テーブル16に対するエアの供給及び吸引を行なうエア制御部(図示せず)を制御するコントローラ(図示せず)が収容されている。
【0023】
図2に示すワーク搭載用テーブル16は、矩形形状の上ガラス板16a及び下ガラス板16bを重ね合わせて構成されている。上ガラス板16aと下ガラス板16bの間には複数の平面度調整機構(図示せず)が配設されている。ここで平面度調整機構は、上ガラス板16aを上下方向に移動させるものである。平面度調整機構によりワーク搭載用テーブル16の上ガラス板16aを部分的に上下動させることによりワーク搭載面16cの平面度を高精度に調整する。
【0024】
図2に示すように、ワーク搭載用テーブル16の上ガラス板16aの上面、即ちワーク搭載面16cには溝18が格子状に形成されている。図3はワーク搭載面16cに形成された溝18の断面形状を示す図である。図3に示すように、溝18は溝が延びる方向と直交する面における断面形状が矩形形状を有している。またワーク搭載面16cと溝18の側壁との境界部には所定の曲面部18aが形成されている。なお、溝18の底部には、上述のエア配管に連通接続されエアを噴出または吸引するエア噴出吸引口(図示せず)が所定の間隔で形成されている。また溝18の溝が延びる方向と直交する面における溝の幅、及び溝の深さはワーク搭載面16cに搭載されるワークの大きさ及び厚さ等により適宜定められる。
【0025】
ワーク搭載用テーブル16のワーク搭載面16cに溝18を形成する場合には、ワーク搭載面16cにサンドブラストまたは研削により格子状に溝18を形成し、その後ワーク搭載面16cをポリッシングすることにより、ワーク搭載面16cと溝18の側壁との境界部の面取りを行ない所定の曲面部18aを形成する。このように所定の曲面18aを形成することによりワーク搭載面16cにワークを搭載した場合にワークに傷がつくのを防止することができる。
【0026】
二次元座標測定機2において、液晶パネルまたは有機ELパネル等に用いる大型の薄板ガラス基板の回路パターンの形状や寸法を測定する場合、まずワーク搬送装置(図示せず)のアームにより薄板ガラス基板を保持し二次元座標測定機2のワーク搭載用テーブル16の上方に搬送する。次にリフトピン昇降機構によりワーク搭載面16c上にリフトピンを突出させた状態で、ワーク搬送装置のアームを降下させてリフトピンにより薄板ガラス基板を支持させる。そしてワーク搬送装置のアームをワーク搭載用テーブル16上から退避させリフトピンを降下させることにより薄板ガラス基板をワーク搭載用テーブル16のワーク搭載面16cに搭載する。次に、エア制御部を制御してエア噴出吸引口からエアの吸引を行い薄板ガラス基板をワーク搭載用テーブル16のワーク搭載面16cに吸着させる。次に、二次元測定機2は、照明装置(図示せず)によりワーク搭載用テーブル16の上方または下方から照明光を薄板ガラス基板に対して照射し、CCDカメラ10により測定対象部の撮影を行なって、薄板ガラス基板に形成されている回路パターンの形状や寸法等を測定する。測定結果は、薄板ガラス基板に形成されている回路パターンの形状や寸法が設計図面と正確に一致しているか否かの検査に用いられる。
【0027】
測定が終了するとエア制御部を制御してエア噴出吸引口からエアの噴出を行い薄板ガラス基板をワーク搭載面16cから浮き上がらせながらリフトピン昇降機構によりワーク搭載面16c上にリフトピンを突出させてリフトピンにより薄板ガラス基板を支持する。そしてワーク搭載用テーブル16上の薄板ガラス基板がワーク搬送装置のアームに受け渡されワーク搭載用テーブル16上から搬出され次の工程に送られる。
【0028】
この実施の形態に係るワーク搭載用テーブルによれば、ワーク搭載面16cに溝18が形成されているため、ワーク搭載面16cと薄板ガラス基板との接触面積がワーク搭載用テーブルに溝が形成されていない場合と比較して小さくなる。従って、ワーク搭載面16cと薄板ガラス基板とがオプティカルコンタクト等により貼りつくことを防止することができる。特にこの実施の形態に係るワーク搭載用テーブル16は、平面度調整機構を備えているためワーク搭載面16cの平面度が高精度に維持されている。従って、ワーク搭載面16cに薄板ガラス基板が貼りつきやすくなるが、ワーク搭載面に溝18が形成されているため、ワーク搭載面16cに薄板ガラス基板が貼りつくことを防止することができる。
【0029】
またこの実施の形態に係るワーク搭載用テーブルによれば、仮にワーク搭載面16cと薄板ガラス基板とが一部の領域において貼りついた場合においても、溝18が格子状に形成されているため貼りついた領域の広がりを防止することができる。
【0030】
また、この実施の形態に係るワーク搭載用テーブルによれば、溝18の底部にエア噴出吸引口が設けられているため、エアの吸引を行なう場合に吸引面積が大きくなり薄板ガラス基板を吸着させる力を増大させることができる。またエアの噴出を行なう場合に噴出面積が大きくなり薄板ガラス基板を浮き上がらせやすくすることができる。
【0031】
また、この実施の形態に係るワーク搭載用テーブルによれば、ワーク搭載用テーブル16とワークの貼りつきを防止することができるため、ワークを破損させずにワーク搭載用テーブル16から搬出することができる。また、ワーク搭載用テーブル16にワークが貼りつくことによるワークの変形を防止することができるため、高精度の測定を行なうことができる。
【0032】
なお、上述の実施の形態においては、ワーク搭載用テーブル16の上ガラス板16aの上面、即ちワーク搭載面16cに格子状の溝18を形成しているが、図4に示すように、ワーク搭載用テーブル16のワーク搭載面16cに渦巻状の溝20を形成するようにしてもよい。この場合においても、ワーク搭載面16cと薄板ガラス基板との接触面積をワーク搭載用テーブル16に溝が形成されていない場合と比較して小さくでき、ワーク搭載面16cと薄板ガラス基板とが貼りつくことを防止することができる。また仮にワーク搭載面16cと薄板ガラス基板とが一部の領域において貼りついた場合においても、溝20が渦巻状に形成されているため貼りついた領域の広がりを防止することができる。
【0033】
また、上述の実施の形態においては、溝18は溝が延びる方向と直交する面における断面形状が矩形形状を有しているが、図5に示すように溝が延びる方向と直交する面における断面形状がV字形状の溝22を形成するようにしてもよい。このように溝の断面形状をV字形状とすることにより、研削により溝を形成する場合などには効率よく溝の形成を行うことができる。また、断面形状がV字形状の溝22を形成する場合においても、ワーク搭載面16cに研削等により溝22を形成した後に、ワーク搭載面16cをポリッシングすることにより、ワーク搭載面16cと溝22の側壁との境界部の面取り処理を行ない所定の曲面部22aを形成する。このように所定の曲面部22aを形成することによりワーク搭載面16cにワークを搭載した場合にワークに傷がつくのを防止することができる。
【0034】
また、上述の実施の形態においては、図6に示すように、ワーク搭載用テーブル16に複数の平面度調整機構30が配設されており、ワーク搭載用テーブル16の下部には、ワーク搭載用テーブル16に形成されたエア噴出吸引口32に対してエアを供給し、または吸引するためのエア配管34が配設されている。従って、ワーク搭載用テーブル16のワーク搭載面16cのエア配管34に対応する位置であって、平面度調整機構30が存在しない位置に上述の断面矩形形状の溝18または断面V字形状の溝22を形成するようにしても良い。このようにワーク搭載面16cのエア配管34に対応する位置に断面矩形形状の溝18または断面V字形状の溝22を形成することにより、ワーク搭載用テーブル16の下方から照明を行なって測定を行なう場合に、測定ができない領域を最小限とすることができる。
【0035】
また、上述の実施の形態に係るワーク搭載用テーブルは、ワーク搭載用テーブル上をX軸方向及びY軸方向にCCDカメラが移動する二次元座標測定機に備えられているが、上述の実施の形態に係るワーク搭載用テーブルを、X軸方向にCCDカメラが移動しY軸方向にワーク搭載用テーブルが移動する二次元座標測定機、またはCCDカメラが固定されておりX軸方向及びY軸方向にワーク搭載用テーブルが移動する二次元座標測定機に備えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0036】
2…二次元座標測定機、4…基台、8…X軸フレーム、10…CCDカメラ、12…Y軸駆動部、14…X軸駆動部、16…ワーク搭載用テーブル,16c…ワーク搭載面、18,22…溝、30…平面度調整機構、32…エア噴出吸引口、34…エア配管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを搭載するワーク搭載面が研削されポリッシングされたガラス製のワーク搭載用テーブルであって、
前記ワーク搭載面の前記ワークが搭載される領域に溝が形成されていることを特徴とするワーク搭載用テーブル。
【請求項2】
前記溝は、格子状に形成されていることを特徴とする請求項1記載のワーク搭載用テーブル。
【請求項3】
前記溝は、渦巻状に形成されていることを特徴とする請求項1記載のワーク搭載用テーブル。
【請求項4】
前記溝は、該溝が延びる方向と直交する面における断面形状が矩形形状であることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか一項に記載のワーク搭載用テーブル。
【請求項5】
前記溝は、該溝が延びる方向と直交する面における断面形状がV字形状であることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか一項に記載のワーク搭載用テーブル。
【請求項6】
前記ワーク搭載面と前記溝の側面との境界部に曲面部が設けられていることを特徴とする請求項4または請求項5記載のワーク搭載用テーブル。
【請求項7】
前記ワーク搭載面の平面度を調整する平面度調整機構を備えることを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか一項に記載のワーク搭載用テーブル。
【請求項8】
前記溝内に設けられた、エアを噴出しまたは吸引するエア噴出吸引口と、
該ワーク搭載用テーブルの下部に配置され前記エア噴出吸引口に連通接続される配管と
を備え、
前記溝は、前記ワーク搭載面の前記配管に対応する位置に形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項7の何れか一項に記載のワーク搭載用テーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−24823(P2013−24823A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162794(P2011−162794)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(510281944)新東エスプレシジョン株式会社 (2)
【Fターム(参考)】