説明

ワーク温度調整装置およびこれを備えた耐食試験装置

【課題】ワークの温度分布を精度良く且つ物理的に制御することができるワーク温度調整装置およびこれを備えた耐食試験装置を提供すること。
【解決手段】板状のワークWを間接的に加熱する内部ヒータ49と、ワークWがセットされるワークホルダ2と、ワークホルダ2の伝熱接触面に対し離接自在に構成され、加熱装置53から吸熱しワークホルダ2に伝熱する複数の伝熱加熱突起54と、ワークホルダ2に対し複数の伝熱加熱突起54を個々に離接させる離接機構61と、を備え、複数の伝熱加熱突起54は、伝熱接触面50の全域に分布しているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを加熱あるいは冷却するワーク温度調整装置およびこれを備えた耐食試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のワーク温度調整装置を適用したランプアニール装置として、高温・高圧下でウェーハ(ワーク)に対してアニール処理を行うものが知られている(特許文献1参照)。このランプアニール装置は、ウェーハを収容する処理室と、ウェーハの上方に配設され、ウェーハの分割されたゾーンをそれぞれ加熱するランプ部と、ウェーハの下方に配設され、各ゾーンのウェーハの温度を測定する温度計と、これらを統括的に制御する制御部と、有している。
このランプアニール装置では、ウェーハをランプ部により加熱し、温度計により、その温度を計測してランプ部にフィードバックする。これにより、ウェーハの各ゾーンにおける温度を個別に制御している。
【特許文献1】特開2001−156010号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような高圧アニール装置では、温度計の計測結果に基づいて各ゾーンに対するランプ部を個別に制御しているため、制御系が複雑になるという問題があった。また、ランプ部は、放射熱によってウェーハを加熱しているため、ランプ部に対するウェーハの温度応答性が悪く、且つランプ部のゾーニングにも限界があり、ウェーハの温度分布を精度よく制御することができないという問題があった。
【0004】
本発明は、ワークの温度分布を精度良く且つ物理的に制御することができるワーク温度調整装置およびこれを備えた耐食試験装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のワーク温度調整装置は、板状のワークを間接的に加熱する加熱手段と、ワークがセットされるワークホルダと、ワークホルダの伝熱接触面に対し離接自在に構成され、加熱手段から吸熱しワークホルダに伝熱する複数の伝熱加熱突起と、ワークホルダに対し複数の伝熱加熱突起を個々に離接させる離接手段と、を備え、複数の伝熱加熱突起は、伝熱接触面の全域に分布していることを特徴とする。
【0006】
この構成によれば、加熱手段により加熱され、ワークの伝熱接触面の全域に分布された複数の伝熱加熱突起を、離接手段により、ワークの伝熱接触面に離接させることで、ワークを局所的に且つ所望の温度に加熱することができる。この場合、離接手段は、複数の伝熱加熱突起を個々に離接させる構造であるため、加熱手段が、一括して複数の伝熱加熱突起を一定の温度に加熱するものであっても、ワークを局所的に精度良く加熱、或いは全体を均一に精度良く加熱することができる。したがって、ワークの温度分布を精度良く且つ物理的に制御することができ、ワークの温度分布を自在に制御することができる。
【0007】
この場合、離接手段は、伝熱接触面に対し各伝熱加熱突起の離間寸法を調整することにより、各伝熱加熱突起によるワークホルダへの伝熱熱量を調整可能に構成されていることが、好ましい。
【0008】
この構成によれば、離接手段の離接動作(ON−OFFに相当)により各伝熱加熱突起のワークへの熱伝導加熱を制御するだけでなく、各伝熱加熱突起との離間寸法による放熱加熱によっても、ワークの温度を制御することができる。したがって、高い精度でワークの温度分布を自在に制御することができる。
【0009】
この場合、離接手段は、各伝熱加熱突起に対応する複数のモータと、各モータの動力を離接動作に変換して各伝熱加熱突起に伝達する複数の離接機構と、を有していることが、好ましい。
【0010】
この構成によれば、簡単な機構で、伝熱加熱突起の離接動作および離間位置の制御を行うことができる。
【0011】
この場合、ワークの平面内における温度分布を検出する温度検出手段と、温度検出手段の検出結果に基づいて、離接手段の駆動を制御する制御手段と、を更に備えたことが、好ましい。
【0012】
この構成によれば、温度検出手段と離接手段が、制御手段を介してリンクしているため、温度検出手段の検出結果を離接手段にフィードバックすることにより、ワークの温度分布を高い精度をもって制御することができる。
【0013】
この場合、温度検出手段が、非接触の温度センサアレイで構成されていることが、好ましい。
【0014】
この構成によれば、ワークを破損することなく、ワークの温度分布を容易に把握することができ、さらに精度よくワークの温度分布を調整することができる。
【0015】
この場合、ワークを間接的に冷却する冷却手段と、ワークホルダに対し離接自在に構成され、ワークホルダから吸熱し冷却手段に伝熱する複数の伝熱冷却突起と、ワークホルダに対し複数の伝熱冷却突起を個々に離接させる離接手段と、を更に備え、複数の伝熱冷却突起は、伝熱接触面の全域に分布していることが、好ましい。
【0016】
この構成によれば、局所的にワークを冷却する場合には、温度を降下させたい箇所に対応した冷却突起を、離接手段によりワークホルダの伝熱接触面に当接させる。すなわち、一部の冷却突起が、ワークホルダに当接することで、ワークを局所的に冷却することができる。また、すべての冷却突起をワークホルダの伝熱接触面に同時に当接させることで、ワークを全体的に冷却することができる。したがって、ワークの温度分布を高い精度で自在に制御することができる。
【0017】
この場合、板状のワークを間接的に加熱または冷却する加熱・冷却手段と、ワークがセットされるワークホルダと、ワークホルダの伝熱接触面に対し離接自在に構成され、加熱・冷却手段とワークホルダとの相互間で伝熱を行う複数の伝熱突起と、ワークホルダに対し複数の伝熱突起を個々に離接させる離接手段と、を備え、複数の伝熱突起は、伝熱接触面の全域に分布し、加熱・冷却手段は、複数の伝熱突起に接触するコイルと、コイルに熱媒および冷媒を選択的に供給するチラーユニットと、を有していることが、好ましい。
【0018】
この構成によれば、伝熱突起およびコイルが、ワークの加熱手段および冷却手段を兼ねているため、ワークの温度分布を自在に制御することができると共に、加熱・冷却手段を小型化することができる。
【0019】
本発明の耐食試験装置は、ワークの平面内における温度分布を均一に保つ上記のワーク温度調整装置と、容器本体と容器本体を開閉する容器蓋とから成り、内部にワーク温度調整装置を収容した圧力容器と、容器本体の外面に添設され、圧力容器内を加熱する外部加熱手段と、を備え、圧力容器に試験薬液を導入すると共に試験薬液を飽和蒸気圧状態に加熱および加圧し、ワークを試験薬液の雰囲気に曝してワークの耐腐食の加速試験を行うことを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、ワークの耐腐食の加速試験を行う場合において、ワークの温度が均一になるように高い精度を持って加熱することができる。したがって、ワーク全体に対し、その加熱および加圧条件を一定にすることができ、ワークの耐食加速試験における信頼性を格段に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付した図面を参照して、本発明の第1実施形態に係るワーク温度調整装置およびこれを備えたワークの耐食試験装置について説明する。この耐食試験装置は、表面に被膜処理を施した穴明きのワークの耐腐食試験を行うものであり、このワークが部品として装置に組み込まれたときに接する液体を試験薬液とし、この試験薬液を加熱して飽和蒸気圧状態とした薬液雰囲気に、一定時間ワークを曝すことで加速試験を行うものである。ここでは、先ずワークおよびワーク廻りの構造から説明する。
【0022】
図1に示すように、ワークWは、複数の小孔を有する金属製の方形プレートで、金属めっきが施されており、その複数個をワークホルダ2に載置された状態で、試験薬液を含浸させた不織布3(図2参照)と共に、耐食試験装置1に導入される。試験薬液による耐腐食試験は、主としてこの金属めっきの剥離および亀裂に対する耐性を試験する。ワークホルダ2は、熱伝導性の高いアルミニウム等で格子枠状に形成されており、各ワークWは、各枠内に内向きに突設した支持突起5により支持されるようにして、各枠内に保持されている。すなわち、複数のワークWは、ワークホルダ2の上面からマトリクス状にセットされる。
【0023】
図2に示すように、耐食試験装置1は、容器本体21および容器本体21を開閉する容器蓋22とから成る圧力容器11と、容器本体21の外周面に添設され、圧力容器11内を加熱する外部ヒータ12と、外部ヒータ12の外側を覆う断熱材(図示省略)と、容器蓋22を開閉する蓋開閉機構13と、を備えている。また、耐食試験装置1は、圧力容器11内に収容され、ワークWの温度を調整するワーク温度調整装置18と、外部ヒータ12、蓋開閉機構13およびワーク温度調整装置18を制御する制御装置(制御手段)15と、を備えている。詳細は後述するが、この耐食試験装置1では、外部ヒータ12により圧力容器11内を加熱すると共に、ワーク温度調整装置18によりワークW全体が均一な加熱温度となるように微調整して、加速試験を行うようになっている。
【0024】
圧力容器11は、法上の小型圧力容器であり、容器本体21と容器蓋22との間にはリング状のシール部材23が介設され、容器本体21の上部に設けロック金具(図示省略)により容器本体21を閉止した容器蓋22が強固に閉塞されるようになっている。容器本体21は、厚肉の金属材により有底の略筒状に形成されており、上部がフランジ状に形成されている。そして、このフランジ状の上部に上記のロック金具が組み込まれている。容器蓋22を取り付けた状態の容器本体21の下部が、容器室24となっており、この容器室24に上記のワークホルダ2に収容されたワークWが投入される。また、容器室24には、圧力を抜くためのバルブを有する大気開放装置16が連通している。容器本体21に対し容器蓋22は深く嵌入され、この嵌入封止部25の中部に上記のシール部材23が装着されている。
【0025】
容器蓋22は、厚肉の金属材により形成されており、容器本体21の開口端を覆う蓋本体31と、開口端から容器本体21の嵌入封止部25に深く嵌入される封止蓋部32と、から構成されている。蓋本体31は、容器本体21のフランジ状の上部に対応してフランジ状に形成され、閉塞時に容器本体21の上面にフランジ接合様に密接する。封止蓋部32は、その外周面が嵌入封止部25と相補的形状に形成されており、平坦に形成された下面には、ワークWの平面内における温度分布を検出する温度検出装置35と、ワークホルダ2を着脱自在に装着するためのホルダセット部33と、が設けられている。ホルダセット部33は、詳細は図示しないが、例えば一対の係止爪を有し、ワークホルダ2を水平にセット可能に構成されている。容器蓋22を閉塞すると、封止蓋部32の外周面が上記のシール部材23に密接することよって、容器本体21内が気密に封止されると共に、ワークホルダ2が容器本体21の容器室24に収容される。
【0026】
蓋開閉機構13は、例えば容器蓋22の上端に連結したリンクやリードねじ等の昇降機構20と、昇降機構20を駆動するモータ19で構成されている。容器蓋22の開放に際し制御装置15は、上記の大気開放装置16を駆動して容器室24内を大気圧まで降圧させた後、モータ19を駆動して容器蓋22を上昇させ、容器本体21を開放する。また、逆の手順で容器本体21を閉塞する。蓋開閉機構13による容器蓋22の上昇端位置は、容器蓋22に装着されているワークWが、容器本体21の開口端から十分に引き上げられた容器本体21の直上位置となっており、この状態で容器蓋22に対しワークWが着脱されるようになっている。
【0027】
外部ヒータ12は、マントルヒータやラバーヒータで構成した上部ヒータ41、下部ヒータ42および底部ヒータ43から成り、圧力容器11全体を加熱する。この場合、制御装置15内には、試験開始時の昇温および試験終了時の降温を含む試験温度および試験時間に関する制御テーブルが用意されており、制御装置15は、この制御テーブルに倣って外部ヒータ12を制御する。これにより、容器室24が所定の温度に昇温されると、不織布3に浸み込ませた試験薬液が飽和蒸気圧状態となり薬液雰囲気に変化する。そして、薬液雰囲気は、加熱されたワークWに対し反応する。
【0028】
図3に示すように、ワーク温度調整装置18は、複数のワークWがセットされる上記のワークホルダ2と、ワークWを間接的に加熱する内部ヒータ(加熱手段)49と、ワークホルダ2の伝熱接触面50に対し離接自在に構成され、内部ヒータ49から吸熱しワークホルダ2に伝熱する複数の伝熱加熱突起54と、ワークホルダ2に対し複数の伝熱加熱突起54を個々に離接させる離接機構(離接手段)61と、を備えている。この場合、複数の伝熱加熱突起54は、ワークホルダ2に下方から離接するようになっており、ワークホルダ2の伝熱接触面50は、格子枠状に形成されたワークホルダ2の下面で構成されている。
【0029】
内部ヒータ49は、耐腐食試験時に、ワークホルダ2の直下に位置するように、加熱支持部材55により容器本体21の底部に設置されており、ワークホルダ2に倣った格子枠状のセラミックヒータや電熱線ヒータで構成されている。この場合、各枠材に相当する部分は、ワークホルダ2のそれより広幅に形成されており、ワークホルダ2には、複数の伝熱加熱突起54を昇降自在に支持する複数の貫通孔56が分散するように、すなわち伝熱接触面50の全体に略均一に分布するように形成されている(図3(a)参照)。
【0030】
各伝熱加熱突起54は、上端面57を平坦に形成したストレートな棒状に形成されており、ワークホルダ2の伝熱接触面50に対し、突き上げるように当接する当接位置と、伝熱接触面50から下方に退避する退避位置と、の間で上下方向にスライド移動自在に構成されている。各伝熱加熱突起54は、熱伝導率の高い金属材料等で形成されており、各伝熱加熱突起54のスライドをガイドする内部ヒータ49の貫通孔56も熱伝導率の高い金属材料等のスリーブで形成されている。また、各伝熱加熱突起54は、内部ヒータ49に対し着脱可能に構成されており、上端面57の面積が異なるものに交換できるようになっている。具体的には、内部ヒータ49の温度が一定であっても、当接面積を大きくすることで、ワークWの温度上昇率を高くすることができ、一方当接面積を減らすことで、ワークWの温度上昇率を低くすることができる。
【0031】
離接機構61は、各伝熱加熱突起54に対応する小型昇降モータ62と、小型昇降モータ62の正逆回転動力を伝熱加熱突起54の昇降動に変換する動力伝達機構63と、を備えている(図3(b)参照)。小型昇降モータ62が正転すると、動力伝達機構63を介して伝熱加熱突起54が上昇し、逆転すると、動力伝達機構63を介して伝熱加熱突起54が下降する。この場合、小型昇降モータ62は、ステッピングモータ、或いはエンコーダ付のDCモータで構成されており、伝熱加熱突起54がワークホルダ2の伝熱接触面50に当接する位置の他、伝熱接触面50に対する伝熱加熱突起54放熱ギャップ(離間寸法)を連続的に、或いは複数段に亘って、調整できるようになっている。
【0032】
すなわち、各伝熱加熱突起54は、ワークホルダ2の伝熱接触面50に当接して、直接熱伝導してワークホルダ2を昇温する場合と、ワークホルダ2の伝熱接触面50に微小な放熱ギャップを存して対峙するにより、放熱によりワークホルダ2を昇温する場合と、で伝熱形態を適宜調整できるようになっている。前者の伝熱形態では、ワークWの温度上昇率を高くする調整することができ、後者の伝熱形態では、ワークWの温度上昇率を低く調整することができる。
【0033】
温度検出装置35は、ワークWから放射される赤外線量を検出する温度センサアレイで構成された検出部64(図2参照)と、測定結果を表示するディスプレイ付の装置本体(図示省略)と、から構成されている。装置本体は、ワークWの温度に依存して放射される赤外線量を、ワークWの温度変化として可視化するものであり、測定した赤外線量は、ディスプレイにサーモグラフィとして色分けして表示される。また、温度検出装置35は、制御装置15を介して上記の離接機構61とリンクしており、検出部64の検出信号は、逐次、制御装置15に入力し、制御装置15は、上記の制御テーブルを考慮しつつ、ワークWの温度分布が均一になるように、複数の離接機構61を制御する。これにより、ワークWの各部位における温度状況を簡単に把握することができると共に、ワークWの温度分布を精度よく調整することができる。
【0034】
以上のように、第1実施形態によれば、ワークホルダ2の伝熱接触面50に対し、内部ヒータ49により一律に加熱された複数の伝熱加熱突起54を、個々に接触させ或いは放熱ギャップを存して昇温させるようにしているため、ワークホルダ2を介して、ワークを局所的に自在に昇温させることができる。したがって、ワークWを所望の温度に均一に加熱することができる。
【0035】
次に、図4を参照して、第1変形例に係る耐食試験装置1ついて説明する。第1変形例に係る耐食試験装置1は、第1実施形態の耐食試験装置1に加え、ワークWを間接的に加熱する冷却素子(冷却手段)71と、ワークホルダ2の伝熱接触面50に対し離接自在に構成され、ワークホルダ2から吸熱し冷却素子71に伝熱する複数の伝熱冷却突起72と、ワークホルダ2に対し複数の伝熱冷却突起72を個々に離接させる離接機構(離接手段)61と、をさらに備えている(図4(b)参照)。
【0036】
冷却素子71は、内部ヒータ49の直上に位置するように、冷却支持部材74により容器本体21の底面に固定されており、ペルチェ素子等で構成されている。また、冷却素子71には、伝熱冷却突起72を昇降自在に支持する複数の冷却貫通孔74および伝熱加熱突起54を昇降自在に支持する複数の加熱貫通孔75が、分散するように、すなわち伝熱接触面50の全体に略均一に分布するようにそれぞれ形成されている(図4(a)参照)。伝熱冷却突起72は、伝熱加熱突起54と同一の構造を有しており、離接機構61は第1実施形態と同様である(説明は省略する。)。なお、冷却素子71と内部ヒータ49とは、上下逆に配設されていてもよい。
【0037】
以上のように、第1変形例によれば、ワークWを均一に加熱することができることに加え、ワークホルダ2の伝熱接触面50に対し、冷却素子71により一律に冷却された複数の伝熱冷却突起72を、個々に接触させ或いは放熱ギャップを存して降温させるようにしているため、ワークホルダ2を介して、ワークを局所的に自在に降温させることができる。したがって、ワークWを所望の温度に均一に調整することができる。
【0038】
次に、図5を参照して、第2実施形態に係る耐食試験装置1ついて説明する。この耐食試験装置1は、ワーク温度調整装置18の構造が第1実施形態および第1変形例と異なる。すなわち、ワークWがセットされるワークホルダ2と、ワークWを間接的に加熱または冷却する加熱・冷却装置(加熱・冷却手段)100と、ワークホルダ2の伝熱接触面50に対し離接自在に構成され、加熱・冷却装置100とワークホルダ2との相互間で伝熱を行う複数の伝熱突起82と、ワークホルダ2に対し複数の伝熱突起82を個々に離接させる離接機構(離接手段)61と、を備えている。
【0039】
加熱・冷却装置100は、複数の伝熱突起82に接触するコイル85が内蔵された放熱・吸熱ブロック84と、コイル85に熱媒および冷媒を選択的に供給するチラーユニット95と、を有している。放熱・吸熱ブロック84は、耐腐食試験時に、ワークホルダ2の直下に位置するように、支持部材87により容器本体21の底部に設置されており、ワークホルダ2に倣った格子枠状に形成されている。ワークホルダ2には、複数の伝熱突起82を昇降自在に支持する複数の伝熱貫通孔86が分散するように、すなわち伝熱接触面50の全体に略均一に分布するように形成されている(図5(a)参照)。また、チラーユニット95は、容器本体21外に配設されており、往流路91および返流路92を介して、熱媒あるいは冷媒を容器本体21内のコイル85に供給する。すなわち、コイル85を介して伝熱突起82との間で熱伝導が行われる。
【0040】
チラーユニット95は、ユニット本体93と、ユニット本体93の熱媒または冷媒を放熱・吸熱ブロック84に供給する往流路91と、放熱・吸熱ブロック84からの熱媒または冷媒をユニット本体93に返還する返流路92と、から構成されている。往流路91は、そのユニット本体93側が、熱媒を供給する熱媒往流路91aと、冷媒を供給する冷媒往流路91bと、に分岐している。また、返流路92は、そのユニット本体93側が、熱媒を返還する熱媒返流路92aと、冷媒を返還する冷媒返流路92bと、に分岐している。さらに、上記の熱媒往流路91a、冷媒往流路91b、熱媒返流路92aおよび冷媒返流路92bには、それぞれ開閉バルブ94が設けられており、加熱あるいは冷却によって切り替えるようになっている。具体的には、熱媒を供給する場合には、熱媒往流路91aおよび熱媒返流路92aに設けられた開閉バルブ94を「開」とし、冷媒往流路91bおよび冷媒返流路92bに設けられた開閉バルブ94を「閉」とすることで、熱媒を放熱・吸熱ブロック84に供給する。また、各開閉バルブ94を逆操作することで冷媒を放熱・吸熱ブロック84に供給する。
【0041】
そして、熱媒を放熱・吸熱ブロック84に供給した状態で伝熱突起82をワークホルダ2に接触あるいは放熱ギャップを存して対峙させることにより、ワークWを均一に加熱させることができるようになっている。同様に、冷媒を放熱・吸熱ブロック84に供給した状態で伝熱突起82をワークホルダ2に接触あるいは放熱ギャップを存して対峙させることにより、ワークWを均一に冷却させることができるようになっている。
【0042】
以上のように、第2実施形態によれば、伝熱突起82およびコイル85によって、ワークWを加熱および冷却することができるため、ワークWの温度分布を自在に制御することができると共に、加熱・冷却手段を小型化することができる。
【0043】
以上の構成によれば、加熱したい箇所に対応する伝熱加熱突起54(伝熱突起82)をワークホルダ2に当接させることで、内部ヒータ49の熱が、伝熱加熱突起54(伝熱突起82)およびワークホルダ2を介してワークWに伝熱される。よって、ワークWを局所的に加熱することができ、ワークWの温度が均一になるように加熱することができる。また、冷却したい箇所に対応する伝熱冷却突起72(伝熱突起82)をワークホルダ2に当接させることで、ワークWの熱が、ワークホルダ2および伝熱冷却突起72(伝熱突起82)を介して冷却素子71(放熱・吸熱ブロック84)に伝熱されることで、ワークWが冷却される。よって、ワークWを局所的に冷却することができ、ワークWの温度が均一になるように冷却することができる。
【0044】
なお、本発明に係る耐食試験装置1は、ワークWの温度を均一にする必要があるものであれば、成膜装置、エッチング装置、アッシング装置等に適用することが可能である。また、過剰に試験温度が高くない場合や反応系に気密性を要求しない場合などは、容器本体21および容器蓋22が、気密に接合されていなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】ワークを載置したワークホルダの(a)平面図(b)断面図である。
【図2】第1実施形態に係る耐食試験装置の断面図である。
【図3】ワーク温度調整装置の断面図である。
【図4】第1変形例に係る耐食試験装置の断面図である。
【図5】第2実施形態に係る耐食試験装置の断面図である。
【符号の説明】
【0046】
1…耐食試験装置 2…ワークホルダ 11…圧力容器 12…外部ヒータ 15…制御装置 35…温度検出装置 50…伝熱接触面 54…伝熱加熱突起 61…離接機構 62…小型昇降モータ 72…伝熱冷却突起 82…伝熱突起 85…コイル 95…チラーユニット 98…冷却装置 100…加熱・冷却装置 W…ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のワークを間接的に加熱する加熱手段と、
前記ワークがセットされるワークホルダと、
前記ワークホルダの伝熱接触面に対し離接自在に構成され、前記加熱手段から吸熱し前記ワークホルダに伝熱する複数の伝熱加熱突起と、
前記ワークホルダに対し前記複数の伝熱加熱突起を個々に離接させる離接手段と、を備え、
前記複数の伝熱加熱突起は、前記伝熱接触面の全域に分布していることを特徴とするワーク温度調整装置。
【請求項2】
前記離接手段は、前記伝熱接触面に対し各伝熱加熱突起の離間寸法を調整することにより、各伝熱加熱突起による前記ワークホルダへの伝熱熱量を調整可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のワーク温度調整装置。
【請求項3】
前記離接手段は、前記各伝熱加熱突起に対応する複数のモータと、
前記各モータの動力を前記離接動作に変換して前記各伝熱加熱突起に伝達する複数の離接機構と、を有していることを特徴とする請求項2に記載のワーク温度調整装置。
【請求項4】
前記ワークの平面内における温度分布を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段の検出結果に基づいて、前記離接手段の駆動を制御する制御手段と、を更に備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のワーク温度調整装置。
【請求項5】
前記温度検出手段が、非接触の温度センサアレイで構成されていることを特徴とする請求項4に記載のワーク温度調整装置。
【請求項6】
前記ワークを間接的に冷却する冷却手段と、
前記ワークホルダに対し離接自在に構成され、前記ワークホルダから吸熱し前記冷却手段に伝熱する複数の伝熱冷却突起と、
前記ワークホルダに対し前記複数の伝熱冷却突起を個々に離接させる離接手段と、を更に備え、
前記複数の伝熱冷却突起は、前記伝熱接触面の全域に分布していることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のワーク温度調整装置。
【請求項7】
板状のワークを間接的に加熱または冷却する加熱・冷却手段と、
前記ワークがセットされるワークホルダと、
前記ワークホルダの伝熱接触面に対し離接自在に構成され、前記加熱・冷却手段と前記ワークホルダとの相互間で伝熱を行う複数の伝熱突起と、
前記ワークホルダに対し前記複数の伝熱突起を個々に離接させる離接手段と、を備え、
前記複数の伝熱突起は、前記伝熱接触面の全域に分布し、
前記加熱・冷却手段は、前記複数の伝熱突起に接触するコイルと、前記コイルに熱媒および冷媒を選択的に供給するチラーユニットと、を有していることを特徴とするワーク温度調整装置。
【請求項8】
前記ワークの平面内における温度分布を均一に保つ前記1ないし6のいずれかに記載のワーク温度調整装置と、
容器本体と前記容器本体を開閉する容器蓋とから成り、内部に前記ワーク温度調整装置を収容した圧力容器と、
前記容器本体の外面に添設され、前記圧力容器内を加熱する外部加熱手段と、
を備え、
前記圧力容器に試験薬液を導入すると共に前記試験薬液を飽和蒸気圧状態に加熱および加圧し、前記ワークを前記試験薬液の雰囲気に曝して前記ワークの耐腐食の加速試験を行うことを特徴とする耐食試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−71935(P2010−71935A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242498(P2008−242498)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】