説明

ワーク移送路付き運搬台車

【課題】 ワークストッパの機能無効によるワークの落下及び、台車走行中に於いてワーク移送路の長さよりも短いワークの静止保持が出来ないことによるワークの荷崩れの危険を防止し、且つ、その機能を無効に出来ないワーク移送路付き運搬台車を提供する。
【解決手段】 互いに平行な複数のローラによって構成されるワーク移送路を備え、ワーク移送路を構成するローラの少なくとも1つが、正方向、逆方向どちらか一方向のみの回転制御機構を有するローラである、ワーク移送路付き運搬台車。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク移送路付き運搬台車に関する。
【背景技術】
【0002】
製造現場では、一般的に、製造物の運搬にはコンベアを利用する。このコンベアは、複数のローラが平行に備えられており、製造物を運搬する。このコンベア上を流れてきた製造物(積載物またはワークと呼ぶこともある)を受け取り、それとは別のコンベアに移し替える時、ワーク移送路付き運搬台車が用いられる。従来のワーク移送路付き運搬台車は、平行に並んだローラを備え、下部にキャスターを有し、床と台車を固定するストッパを有するものがあった。また、前記ワーク移送路の末端にワークに当接して該ワークの落下を防止するワークストッパを備えたものがあった。
【0003】
さらに、従来のワーク移送路付き運搬台車は、コンベアの搬出口に対向に配置され、そのコンベアから送られてきたワークをローラ上に沿って移送しながら受取り、ワークを受取った後はワークストッパをワーク移送路上に突出させ、ワークが該運搬台車から落下するのを防止させた状態で他のコンベアまで運搬し、該他のコンベアに対向配置された後、ワークストッパのストッパ状態を解除し、該ワークがローラ上を沿って移送することで、該ワークを該他のコンベア上に移し替えることが出来るものである。しかし、運搬の際、ワークが台車上の移送路よりも短い小型のワークである場合、移送路の中で前後に動くため、荷崩れを起す危険があった。また、ワークストッパの掛け忘れ等によるストッパの無効化でワークが落下する危険があった。また、該ワークを該他のコンベア上に移し替える時、該他のコンベアが該台車の移送路より高い時、該ワークが逆送してしまう危険もあった。さらに、ワークの端部が鋭利な場合、運搬者の手などを創傷する危険性があった。
【0004】
特許文献1には、ワークストッパの機能無効を防止する為に台車ストッパと連動させ移送中のワークの落下事故防止をする台車が開示されており、また、特許文献2には、搬送コンベアに於いてラチェット機構を用いて搬入方向のみ回動するように構成された台車が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−53309
【特許文献2】特開平6−329240
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のワーク移送路付き運搬台車に於けるワークストッパは、ワーク移送路の端末に配しワーク移送路上に積載されたワークが当接して該ワークの落下を防止する物であり、ワーク移送路の長さよりも短いワークの静止保持が出来ないことによるワークの荷崩れの可能性があった。本発明は、ワークストッパの機能無効による該ワークの落下及び、前記台車走行中に於いてワーク移送路の長さよりも短いワークの静止保持が出来ないことによる該ワークの荷崩れの危険を防止し、且つ、その機能を無効に出来ないワーク移送路付き運搬台車を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下部にキャスターと台車本体に下方に向けて出没自在に設けられ下方へ突出された状態の時に床面に当接して台車本体の移動を規制する台車ストッパを備え、上部に互いに平行な複数のローラによって構成されるワーク移送路を備えた運搬台車に関する。
また、本発明は、さらに前記ワーク移送路を構成するローラの少なくとも1つが、正方向、逆方向どちらか一方向のみの回転制御機構を有したストッパ(以下、ローラ型ワークストッパ)をである上記運搬台車に関する。
また、本発明は、さらにローラ型ワークストッパのローラの表面に、高摩擦材層を有する上記運搬台車に関する。
また、本発明は、正方向、逆方向どちらか一方向のみの回転制御機構が正方向、逆方向の回転方向が切替え可能である上記運搬台車に関する。
また、本発明は、さらに前記運搬台車のワーク移送路の移送路終端部に、背当てと運搬台車操作用取手を有する上記運搬台車に関する。
また、本発明は、さらにワーク移送路の端部に前記ローラ上に積載されたワークが当接して該ワークの落下を防止するワークストッパを有する上記運搬台車に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、前記ローラ型ワークストッパ装備することによって、運搬台車へのワーク受取時に受取方向へのみローラの回動を制御する事によるワークの静止保持を行うことが出来、さらにその効果によりワークの落下防止を図る。また、ローラの回動を受取方向側へ制御しておかなければ受取る事が出来ない為、ワークストッパの機能を無効化することはない。また、移送路の終端部に背当てを備える事でより確実にワークのストッパ効果と荷崩れ抑制の効果を得ることが出来る。ローラ型ワークストッパのローラの表面に高摩擦材層を有する事で、ローラとワークとの摩擦係数が上がり、より確実にワークのストッパ効果を上げる事が出来る。また、ローラ型ワークストッパとは別に、前記ワーク移送路の背当てとは反対側端末に出没自在に設けられ上方へ突出したときにワークに当接して該ワークの落下を防止するワークストッパを備える事により、2重のワーク落下防止効果がある。ワークの引渡し時に於いてはローラの回動を引渡し方向側へ制御しておかなければ引渡す事が出来ない為、引渡し先のコンベアと該台車の移送路の高さ違いによる逆送を防止する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のワーク移送路付き運搬台車の一実施例の全体の斜視図である。
【図2】本発明のワーク移送路付き運搬台車のワーク移送路にローラ型ワークストッパを取付ける構造を示す組図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明では、まず運搬台車のワーク移送路にワークを荷受する為に、一のコンベアの搬出口に対向に配置し、台車本体に下方に向けて出没自在に設けられ下方へ突出された状態の時に床面に当接して台車本体の移動を規制する台車ストッパにて台車を固定させる。この事によりワークを受取る時台車自体が動くことによるワークの落下を防ぐ事が出来る。
【0011】
本発明のワーク移送路付き運搬台車が備えるローラ型ワークストッパは、正方向、逆方向どちらか一方向のみの回転制御機構を備え、該回転制御機構が正方向、逆方向の回転方向を切替る機能を有することで、ワークの受取り時と、引渡し時のローラの相反する回転方向を制御させる。
【0012】
本発明のワーク移送路付き運搬台車が備えるローラ型ワークストッパは、ワークの受取りの時、回転の制御方向を受取り側に切替え、ワークを受取れる状態にすることにより、ワークストッパの機能を有効にさせる事になる。
【0013】
該運搬台車の移送路より短いワークを運搬台車の背当て部まで移送路上を移動させることでワークの静止保持機能をより高める事が出来る。
【0014】
本発明のワーク移送路付き運搬台車が備えるローラ型ワークストッパは、ワークの引渡し時に於いてローラの回動を引渡し方向側へ制御しておかなければ引渡す事が出来ない為、引渡し先のコンベアと該台車の移送路の高さ違いによる逆送を防止する事が出来る。
【0015】
本発明のワーク移送路付き運搬台車が備えるローラ型ワークストッパの材質はゴム等のような高摩擦材にて高摩擦層を有することが好ましい。また、ローラ芯は耐久性を考慮して丸鋼材を使用することが好ましい。ローラ型ワークストッパの直径は、他の互いに平行な複数のローラの直径よりも2mm程太い方が好ましい。これにより強力にワークのストッパ効果を得る事が出来る。
【0016】
本発明のワーク移送路付き運搬台車が備えるローラ型ワークストッパは軸受け金具2個を介してローラコンベアを編成するフレームに取付ける。このとき使う軸受け金具は耐久性と回転性を重視しベアリング付きの物が好ましい。また材質も金属製にすることが好ましい。
【0017】
本発明のワーク移送路付き運搬台車が備えるローラ型ワークストッパは保守・点検の為に簡単に脱着する事が出来る。またその特性から、互いに平行な複数のローラによって構成されるワーク移送路を備えた既存の運搬台車でも、前記ワーク移送路を構成するローラの少なくとも1つを、該ローラ型ワークストッパに交換することによりその効果を得る事が出来る。
【実施例】
【0018】
以下、本発明のワーク移送路付き運搬台車の一実施例の構成を、図面を参照して詳細に解説するが、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
図1はワーク移送路付き運搬台車の全体を示す斜視図である。図中符号1は台車本体であり、鋼材を溶接等の接続手段によって直方体形状に組付け更に上方へ背当て2を伸ばし、その後方上部に運搬台車操作用の取手3を組付けたものである。台車本体1の下部の四隅には前方側に直進方向に固定されたキャスター4を左右に取付け、後方側に進行方向を自在に変えられるキャスター5を左右に取付けた。下部キャスター5の中間に下方に出没自在に設けられた台車ストッパ6を取付けた。また、台車本体1の上部には複数のローラ7とローラ型ワークストッパ8が2本、互いに平行に設けられてワーク移送路9を形成している。ワーク移送路9の先端部分には、出没自在に設けられ上方へ突出したときにワークに当接して該ワークの落下を防止するワークストッパ10を取付けた。
【0019】
図2はワーク移送路9にローラ型ワークストッパ8を取付けた組図である。ローラ型ワークストッパ8は、高摩擦弾性体のローラ11と高剛性のシャフト12及び、正方向、逆方向どちらか一方向のみの回転制御の切替え機構を持ったM10ボルト用のラチェット13から成り、軸受け金具14でワーク移送路9を形成するフレーム15に固定した。ラチェット13はラチェット取付金具16と溶接等の接続手段により接続され、台車本体1の上部フレーム17にタップ加工を施し、ボルトを用いて設置した。
【0020】
ローラ型ワークストッパ8の直径は、ワーク移送路9を形成している複数のローラ7の直径が57mmである事から60mmにした。また、シャフト12の直径は、フレーム15の内寸法に合せた長さの部分を12mm、その両端は軸受け金具14の内径に合せ10mmとし、シャフト12が抜け落ちないようにした。フレーム15の加工としてシャフト12を通す部分に直径:12mmの穴加工を2ヶ所と、軸受け金具14を取付ける為の直径:8mmの穴加工4ヶ所を施した。尚、この軸受け金具14はM6タップ加工が2ヶ所施されているものを使用した。シャフト12とラチェット13の繋ぎ方は、シャフト12の片端にM10の雄ネジ加工を施し、M10用の長ナットにM4の留ネジ加工を2ヶ所施した接続金具18を取付け、ラチェット13と接続させた。尚、タップ加工及びネジ加工のネジの呼びは、JIS B 0123に規定されるメートル並目ネジの表し方を用いた。
【0021】
本発明のワーク移送路付き運搬台車の使用方法を、図1を参照して説明する。先ずはこの実施例で使用した台車等のサイズを簡単に記す。
本実施例の運搬台車1は、高さ(床〜ローラ7上面)が750mm、ワーク移送路9の巾が700mm、ワーク移送路9の長さが1,000mmのものである。本実施例に用いたワークは、敷板(厚さ15mm×巾700mm×長さ800mm)の上に銅箔(厚さ1mm×巾600mm×長さ600mm)を500枚積載させたものである。
【0022】
運搬台車1のワーク移送路9にワークを荷受する為に、一のコンベアの搬出口に対向に配置し、台車本体1に下方に向けて出没自在に設けられ下方へ突出された状態の時に床面に当接して台車本体1の移動を規制する台車ストッパ6にて台車を固定させた。この事によりワークを受取る時運搬台車1自体が動くことによるワークの落下を防ぐ事が出来た。
【0023】
次にラチェット13の切替レバー13aを受取り方向に切替え、前記コンベアから送られてきたワークを、ワーク移送路9上に沿って移送しながら受取った。この時、切替レバー13aを受取り方向に切替えなければ荷受が出来ない為、必ず切替える事になった。ワークの敷板が背当て2に当接するまでワーク移送路9上に沿って移送させた。ローラ型ワークストッパ8は受取り方向(背当て方向)にのみ回動するので、この状態でワークの静止状態を維持することになった。
【0024】
ワークを受取った後、ワークストッパ10をワーク移送路9上に突出させ、ワークが運搬台車1から落下するのを2重に防止させた状態で台車ストッパ6を解除し、他のコンベアまで運搬した。
【0025】
該他のコンベアに対向配置された後、台車本体1の移動を規制する台車ストッパ6にて台車を固定させたあと、ワークストッパ10のストッパ状態を解除し、ラチェット13の切替レバー13aを引渡し方向へ切替え、ワークを、ワーク移送路9上に沿って移送しながら、該他のコンベア上に移し替えた。この時、切替レバー13aを引渡し方向に切替えなければ移し替えが出来ない為、必ず切替える事になった。ローラ型ワークストッパ8は引渡し方向(方向)にのみ回動するので、ワークの逆送を防止することが出来た。
【0026】
運搬の際、ワークの敷板が台車本体1のワーク移送路9よりも200mm短かったが、ワーク移送路9の中で前後に動くことも無く、よって荷崩れを起す危険も全くなかった。
【0027】
また、仮にワークストッパ10の掛け忘れ等によりワークストッパ10を無効化しても、ローラ型ワークストッパ8がストッパ状態である為、ワークが落下する危険は無かった。
【0028】
また、該ワークを該他のコンベア上に移し替える時、該他のコンベアが台車本体1の移送路9よりも5mm程高い位置にある該他のコンベア上に移し替えたが、ワークが逆送することは無かった。
【符号の説明】
【0029】
1 台車本体
2 背当て
3 取手
4 固定キャスター
5 自在キャスター
6 台車ストッパ
7 コンベアローラ
8 ローラ型ワークストッパ
9 ワーク移送路
10 ワークストッパ
11 ストッパローラ
12 シャフト
13 ラチェット
13a 切替レバー
14 軸受け金具
15 移送路フレーム
16 取付金具
17 台車上部フレーム
18 接続金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行な複数のローラによって構成されるワーク移送路を備え、前記ワーク移送路を構成するローラの少なくとも1つが、正方向、逆方向どちらか一方向のみの回転制御機構を有するローラである、ワーク移送路付き運搬台車。
【請求項2】
正方向、逆方向どちらか一方向のみの回転制御機構を有するローラが、ローラの表面に高摩擦材層を有する請求項1に記載のワーク移送路付き運搬台車。
【請求項3】
正方向、逆方向どちらか一方向のみの回転制御機構が正方向、逆方向の回転方向が切替え可能である請求項1または2に記載のワーク移送路付き運搬台車。
【請求項4】
ワーク移送路の一方の端部に背当てと運搬台車操作用取手を有する請求項1〜3のいずれかに記載のワーク移送路付き運搬台車。
【請求項5】
請求項4に記載の端部に対する、他方の端部に、積載物の落下を防止するワークストッパを有する請求項1〜4のいずれかに記載のワーク移送路付き運搬台車。
【請求項6】
台車を制止する台車ストッパを備える請求項1〜5のいずれかに記載のワーク移送路付き運搬台車。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−35492(P2013−35492A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174887(P2011−174887)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】