説明

一ポート型弾性波共振子及び弾性波フィルタ装置

【課題】共振周波数よりも低周波数側の周波数側におけるリップルを小さくすることができる、1ポート型弾性波共振子を得る。
【解決手段】圧電基板1上に、IDT電極3と、IDT電極3が交叉幅重み付けされており、IDT電極3の中心OよりもIDT電極の弾性波伝搬方向一端である第1の端部3a側の領域であってかつ交叉幅重み付けにより規定される包絡線で囲まれた領域と、中心OよりもIDT電極の弾性波伝搬方向他端である第2の端部3b側の領域であってかつ交叉幅重み付けにより規定される包絡線で囲まれた領域とが非対称とされている、一ポート型弾性波共振子1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一ポート型弾性波共振子及び該弾性波共振子が用いられた弾性波フィルタ装置に関し、より詳細には、IDT電極に交叉幅重み付けがされている一ポート型弾性波共振子及び該弾性波共振子を用いた弾性波フィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な弾性波フィルタ装置において、直列トラップまたは並列トラップを形成するために、弾性波フィルタ部に直列または並列に一ポート型の弾性波共振子が接続されている。このような用途に用いられる弾性波共振子の一例として、下記の特許文献1には、図10に示す一ポート型弾性表面波共振子1001が開示されている。一ポート型弾性表面波共振子1001は、LiTaO基板1002と、LiTaO基板1002上に設けられたIDT電極1003と、反射器1004,1005とを有する。
【0003】
ここでは、IDT電極1003におけるメタライゼーション比が0.55〜0.85の範囲とされており、かつIDT電極1003が交叉幅重み付けされている。それによって、周波数ばらつきの低減と、反共振周波数におけるQ値の改善を図り得るとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2005/011117号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記一ポート型弾性表面波共振子1001では、周波数ばらつきを低減することができるものの、共振特性上において、共振周波数よりも低周波数側の周波数域に大きなリップルが現れることが分かった。
【0006】
そのため、このような一ポート型弾性表面波共振子1001を、帯域フィルタに直列接続し、直列トラップとして用いた場合、フィルタの通過帯域内における挿入損失が劣化するという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、上述した従来技術の欠点を改善し、共振周波数よりも低周波数側の領域におけるリップルが小さく、良好な共振特性を有する一ポート型弾性共振子、並びに該一ポート型弾性共振子を直列トラップとして備えた弾性波フィルタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、圧電基板と、前記圧電基板上に設けられたIDT電極と、前記IDT電極が交叉幅重み付けされている、一ポート型弾性波共振子であって、前記IDT電極の中心よりも前記IDT電極の弾性波伝搬方向一端である第1の端部側の領域であってかつ交叉幅重み付けにより規定される包絡線で囲まれた領域が、IDT電極の中心よりも前記IDT電極の弾性波伝搬方向他端である第2の端部側の領域であってかつ交叉幅重み付けにより規定される包絡線で囲まれた領域と非対称とされている、一ポート型弾性波共振子が提供される。
【0009】
本発明に係る一ポート型弾性波共振子のある特定の局面では、前記IDT電極の包絡線で囲まれた領域の形状が、前記IDT電極の前記第1の端部において第1の角部を有しており、かつ第2の端部において第2の角部を有する。
【0010】
また、本発明の一ポート型弾性波共振子の他の特定の局面によれば、前記第1の角部の弾性波伝搬方向と直交する方向に沿う位置と、前記第2の角部の弾性波伝搬方向に直交する方向に沿う位置とがIDT電極の中心に対し非対称とされている。
【0011】
本発明に係る一ポート型弾性波共振子の別の特定の局面では、前記第1の角部の内角と、前記第2の角部の内角とが異なっている。
【0012】
本発明に係る一ポート型弾性波共振子においては、第1,第2の角部のうち少なくとも一方の角部が複数設けられていてもよい。
【0013】
本発明に係る一ポート型弾性波共振子のさらに他の特定の局面では、前記第1の端部の弾性波伝搬方向外側に配置された第1の反射器と、前記第2の端部の弾性波伝搬方向外側に設けられた第2の反射器とがさらに備えられている。このように、本発明では、第1,第2の反射器が設けられていてもよい。
【0014】
また、本発明に係る弾性波フィルタ装置は、縦結合共振子型弾性波フィルタ部と、該縦結合共振子型弾性波フィルタ部に直列に接続されており、かつ本発明に従って構成された一ポート型弾性波共振子とを備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る一ポート型弾性波共振子では、IDT電極の交叉幅重み付けにおいて、IDT電極の中心よりもIDT電極の弾性波伝搬方向一端である第1の端部側の領域であってかつ交叉幅重み付けにより規定される包絡線で囲まれた領域と、IDT電極の中心よりもIDT電極の弾性波伝搬方向他端である第2の端部側の領域であってかつ交叉幅重み付けにより規定される包絡線で囲まれた領域とが非対称とされているため、共振特性上における共振周波数よりも低周波数側の周波数域におけるリップルを非常に小さくすることができる。
【0016】
本発明に係る弾性波フィルタ装置では、縦結合共振子型弾性波フィルタ部に直列に本発明の一ポート型弾性波共振子が接続されているため、通過帯域内における挿入損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)は、本発明の第1の実施形態に係る一ポート型弾性波共振子の平面図であり、(b)は交叉領域の形状を示す模式的平面図であり、(c)は2個の第1の実施形態の一ポート型弾性波共振子が直列に接続されている構成を示す回路図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の一ポート型弾性波共振子が縦結合共振子型弾性波フィルタ部に直列に接続されている、本発明の第2の実施形態としての弾性波フィルタ装置を示す模式的回路図である。
【図3】比較のために用意した、従来の交叉幅重み付けが施されたIDT電極を示す模式的平面図である。
【図4】本発明の変形例に係る一ポート型弾性波共振子のIDT電極を示す模式的平面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態及び比較のために用意した従来の一ポート型弾性波共振子のリターンロス特性を示す図である。
【図6】本発明の変形例に係る一ポート型弾性波共振子及び比較のために用意した従来の弾性波共振子のリターンロス特性を示す図である。
【図7】第1の実施形態の一ポート型弾性波共振子のさらに他の変形例を説明するためのIDT電極を示す平面図である。
【図8】第1の実施形態の一ポート型弾性波共振子のさらに別の変形例を示す平面図である。
【図9】弾性境界波共振子を説明するための模式的正面図である。
【図10】従来の一ポート型弾性表面波共振子を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0019】
図1(a)は、本発明の第1の実施形態に係る一ポート型弾性波共振子の平面図である。本実施形態の一ポート型弾性波共振子は、弾性表面波を利用した一ポート型弾性表面波共振子である。
【0020】
一ポート型弾性波共振子1は、圧電基板2を有する。圧電基板2は、本実施形態では、42°YカットLiTaOからなる。圧電基板2を構成する圧電材料は、42°YカットLiTaOに限らず、LiTaO、LiNbOもしくは水晶などの圧電単結晶、またはPZTなどの圧電セラミックスなどの適宜の圧電材料を用いることができる。
【0021】
圧電基板2上に、IDT電極3が形成されている。本実施形態では、IDT電極3は、AlCu(Al主成分)とTiの積層構造からなる。IDT電極3の弾性波伝搬方向一端を第1の端部3a、他端を第2の端部3bとする。
【0022】
IDT電極3を構成する金属は、AlCu(Al主成分)とTiの積層構造に限らず、Au、Pt、Cu、W、Ta、Alなどの適宜の金属もしくは合金を用い得る。また、これらの電極は、複数の金属膜を積層してなる積層金属膜により形成されていてもよい。
【0023】
一ポート型弾性波共振子1の特徴は、IDT電極3の重み付けにある。これを、より詳細に説明する。
【0024】
IDT電極3は、第1のバスバー3cと、第1のバスバー3cと対向するように配置された第2のバスバー3dとを有する。第1のバスバー3cに、複数本の第1の電極指3eの一端が接続されている。複数本の第1の電極指3eの他端は第2のバスバー3d側に位置している。同様に、第2のバスバー3dに複数本の第2の電極指3fの一端が接続されている。複数本の第2の電極指3fの他端は第1のバスバー3c側に位置している。
【0025】
複数本の第1,第2の電極指3e,3fは弾性波伝搬方向と直交する方向に延びている。そして、複数本の第1の電極指3eの先端とギャップを隔てて、複数本の第1のダミー電極指3gが形成されている。複数本の第1のダミー電極指3gは、第2のバスバー3dに接続されている。同様に、複数本の第2の電極指3fの先端とギャップを隔てて、複数本の第2のダミー電極指3hが形成されている。複数本の第2のダミー電極指3hは、第1のバスバー3cに接続されている。なお、第1,第2のダミー電極指3g,3hは設けられずともよい。もっとも、複数本の第1,第2のダミー電極指3g,3hを設けることにより、横モードの励振を抑制することができる。
【0026】
IDT電極3では、図1(a)に示すように、複数本の第1の電極指3eと、複数本の第2の電極指3fとが弾性波伝搬方向において交叉している部分の長さ、すなわち重なり合っている部分の長さである交叉幅が、弾性波伝搬方向において変化している。このようにして、交叉幅重み付が施されている。第1,第2の電極指3e,3fが交叉している交叉領域は、図示の破線で示す第1,第2の包絡線A,Bにより囲まれている。ここで、第1の包絡線Aは、複数本の第の2電極指3fの先端を結ぶ仮想線であり、第2の包絡線Bは、複数本の第1の電極指3eの先端を結ぶ仮想線である。
【0027】
従って、交叉領域の平面形状は、図1(b)に示すように表される。本実施形態では、第1,第2の包絡線A,Bが、第1の端部3aで合一しており、第1の端部3aから遠ざかるにつれて、第1,第2の包絡線A,B間の距離が連続的に長くされており、IDT電極3の中央部においては、第1,第2の包絡線A,Bは、バスバー3c,3dとほぼ平行とされている。また、第2の端部3b側においても、第1,第2の包絡線A,Bが合一しており、第2の端部3bから内側にいくにつれ、第1,第2の包絡線A,B間の距離が順次長くされている。
【0028】
従って、図1(b)に示すように、第1、第2の電極指3e、3fが交叉している交叉領域を囲む平面形状は、第1,第2の包絡線A,Bで囲まれており、第1の端部3a側に角部Xを有し、第2の端部3b側において角部Yを有する。
【0029】
本実施形態では、角部Xは、第1,第2のバスバー3c,3dを結ぶ方向の中心に位置しており、角部Yも第1,第2のバスバー3c,3dを結ぶ方向において中心に位置している。すなわち、弾性波伝搬方向と直交する方向において、角部Xと角部Yとは等しい位置にある。
【0030】
本実施形態の特徴は、上記交叉領域において、第1の角部Xの内角θと、角部Yの内角θとが異なっていることにあり、それによってIDT電極3の中心Oよりも第1の端部3a側の交叉領域と、中心Oよりも第2の端部3b側の交叉領域が非対称とされていることにある。その結果、後述の実験例で示すように、共振周波数よりも低周波数側の周波数域に現れるリップルを小さくすることができる。
【0031】
第1の実施形態の一ポート型弾性波共振子1を2個用意し、図1(c)に示すように直列に接続した。この2個の一ポート型弾性波共振子1が直列接続された構造のリターンロス特性を図5に実線で示す。
【0032】
比較のために、図3に示すIDT電極1101を有することを除いては、上記と同様にして構成された2個の一ポート型弾性波共振子が直列接続された弾性波共振子装置を用意した。この弾性波共振子装置のリターンロス特性を図5に破線で示す。
【0033】
用意した弾性波共振子の設計パラメータは以下の通りである。
【0034】
圧電基板2 :42°カットLiTaO
IDT電極3:材料はAlCu(Al主成分)とTiの積層構造。厚みはAlCu=218nm、Ti=10nm。電極指の対数=75対。角部Xの内角θ=72°、角部Yの内角θ=53°、電極指ピッチ=1.0427μm。第1,第2の端部3a,3b間の距離=155.8037μm。
【0035】
図5から明らかなように、比較のために用意した弾性波共振子に比べ、本実施形態の一ポート型弾性波共振子を用いた場合には、矢印Cで示す周波数域におけるリップルが小さくなっていることがわかる。すなわち、共振周波数である1835MHzよりも低周波数側の周波数域においてリップルを小さくすることが可能とされている。これは、IDT電極3における交叉幅重み付けにおいて、中心Oよりも第1の端部3a側の交叉領域と、第2の端部3b側の交叉領域とが非対称とされていることによる。一般に、グレーティング構造を用いた反射器ではストップバンド外では反射特性に周期性が現れ、リップルが発生する。重み付けを施した場合、ダミー電極も反射器として動作するため、同様に、ストップバンド外でこのダミー電極に起因するリップルが発生する。重み付けを左右非対称とすることで、左右からの反射の周波数特性がずれるためリップルを分散させることが出来たものと考えられる。
【0036】
従って、例えば図2に示す実施形態の弾性波フィルタ装置11において、縦結合共振子型弾性波フィルタ部12に直列に一ポート型弾性波共振子1を接続することにより、直列トラップを構成した場合、弾性波フィルタ装置11の通過帯域内における損失を効果的に低減することができる。
【0037】
本実施形態は、中心Oよりも第1の端部3a側の交叉領域と、第2の端部3b側の交叉領域とを非対称とすることにより、上記のように共振周波数よりも低周波数側におけるリップルを低減し得ることに特徴を有する。従って、上記重み付けの非対称構造は図1(a)及び(b)に示した形状に限定されるものではない。
【0038】
図4は、本発明の第1の実施形態の変形例のIDT電極の平面図である。本変形例の弾性波共振子では、IDT電極13の重み付けが異なることを除いては、第1の実施形態の一ポート型弾性波共振子1と同様とされている。図4に示すように、本変形例では、IDT電極13の包絡線A,Bで囲まれる交叉領域の平面形状において、第1の端部13a側に、第1の実施形態の場合と同様に角部Xが形成されている。他方、第2の端部13b側においては、第2の包絡線Bが第1のバスバー3c側に至っており、角部Yが第1のバスバー3cの内側の辺の近傍に位置している。
【0039】
従って、角部XとYはそれぞれの内角θ及びθが異なるだけでなく、角部Xの弾性波伝搬方向と直交する方向における位置と、角部Yの弾性波伝搬方向と直交する方向に沿う位置とが中心Oに対して非対称とされていることによっても、第1の端部13a側の交叉領域と、第2の端部13b側の交叉領域とが非対称とされている。
【0040】
図6において上記変形例の弾性波共振子を2個直列に接続した構造の弾性波共振子のリターンロス特性を実線で示す。比較のために、前述した図2に示す電極構造を示す2個の弾性波共振子を直列接続した構造のリターンロス特性を図6に破線で示す。
【0041】
なお、IDT電極13において、角部Xの内角θ=72°とし、角部Yの内角θYは45°とした。
【0042】
また、IDT電極13のパラメータは以下の通りである。
【0043】
電極指の対数=78対。電極指ピッチ=1.0427μm。第1,第2の端部3a,3b間の距離=161.0172μm。
【0044】
図6から明らかなように、本変形例の一ポート型弾性波共振子を用いた場合においても、比較のために用意した従来の弾性波共振子を用いた場合に比べて、Cで示す周波数域において、すなわち共振周波数よりも低周波数側の周波数域において、リップルを小さくすることが可能とされている。
【0045】
また、図5と図6とを比較すれば明らかなように、第1の実施形態に比べ、変形例によれば、共振周波数よりも低域側におけるリップルをより一層小さくすることができる。これは、角部X及び角部Yの内角が異なるだけでなく、角部X及び角部Yの位置も異なることにより、非対称性が高められたことによると考えられる。
【0046】
比較のために用意した弾性波共振子では、角部の内角θは第1の端部及び第2の端部のいずれの例においても、θ=70°とした。
【0047】
また、IDT電極13のパラメータは以下の通りである。
【0048】
電極指の対数=78対。電極指ピッチ=1.0427μm。第1,第2の端部3a,3b間の距離=162.0599μm。
【0049】
図7は、本発明の弾性波共振子のIDT電極のさらに他の変形例を示す平面図である。本変形例では、IDT電極23において、第1,第2の包絡線A,Bは、第1の端部及び第2の端部23a,23bにおいて合一していない。従って、交叉領域の外形は、第1,第2の包絡線A,Bと、図7に示す破線D,Eとにより形成されている。
【0050】
破線D,Eで示す部分は、それぞれ、第1,第2の端部23a,23bにおいて、離れている第1,第2の包絡線A,Bを弾性波伝搬方向と直交する方向において結ぶ仮想線部分である。第1,第2の包絡線A,Bが第1,第2の端部23a,23bで離れているため、交叉領域の外形は、第1の端部23a及び第2の端部23bにおいては、上記破線D,Eによりそれぞれ規定されることになる。
【0051】
よって破線Dと第1の包絡線Aとが合一している部分において、1つの第1の角部X1が形成され、第2の包絡線Bと破線Dとが合一している部分において、他の1つの第1の角部X2が形成されている。言い換えれば、第1の端部23a側において、複数の第1の角部X1,X2が形成されている。同様に、第2の端部23b側においても、破線Eの両側に複数の第2の角部Y1,Y2が形成されている。
【0052】
本変形例においても、第1の角部X1,X2の内角θX1,θX2と、第2の角部Y1,Y2の内角θY1,θY2とが異なっているため、中心Oよりも第1の端部23a側の交叉領域の形状と、第2の端部23b側の交叉領域の形状とが非対称とされている。従って、第1の実施形態と同様に、共振周波数よりも低周波数側におけるリップルを効果的に小さくすることができる。
【0053】
図7から明らかなように、本発明においては、第1の端部及び第2の端部において、角部の数は1個に限らず、複数であってもよい。すなわち、IDT電極の第1,第2の端部のうち少なくとも一方において、複数の角部が形成されていてもよい。
【0054】
なお、上記実施形態では、反射器を設けられていなかったが、図8に示す変形例のように、IDT電極3の両側に反射器4,5を設けてもよい。具体的には、第1の端部3aの弾性波伝搬方向外側に第1の反射器4が形成されている。また、第2の端部3bの弾性波伝搬方向外側に第2の反射器5が形成されている。
【0055】
第1,第2の反射器4,5は、複数本の電極指を両端で短絡してなるグレーティング反射器である。第1,第2の反射器4,5は、AlCu(Al主成分)とTiの積層構造からなる。
【0056】
反射器4,5を構成する金属は、AlCu(Al主成分)とTiの積層構造に限らず、Au、Pt、Cu、W、Ta、Alなどの適宜の金属もしくは合金を用い得る。また、これらの電極は、複数の金属膜を積層してなる積層金属膜により形成されていてもよい。
【0057】
また、上記実施形態及び変形例の一ポート型弾性波共振子1は、弾性表面波を利用した弾性表面波共振子であったが、本発明は、弾性境界波を利用した一ポート型弾性境界波共振子であってもよい。図9は、一ポート型弾性境界波共振子を示す模式的正面断面図である。ここでは、一ポート型弾性境界波共振子31は、圧電基板32と、圧電基板32上に積層された誘電体層33とを有し、圧電基板32と誘電体層33との界面にIDT電極34及び反射器35,36が形成されている。反射器35、36はなくてもよい。本発明は、IDT電極の重み付けに特徴を有するものであるため、このような一ポート型弾性境界波共振子31においても、IDT電極34の重み付けを本発明に従って形成することにより、上記実施形態と同様に共振周波数よりも低周波数側におけるリップルを効果的に小さくすることができる。
【符号の説明】
【0058】
1 …一ポート型弾性波共振子
2 …圧電基板
3 …IDT電極
3a…第1の端部
3b…第2の端部
3c…第1のバスバー
3d…第2のバスバー
3e…第1の電極指
3f…第2の電極指
3g…第1のダミー電極指
3h…第2のダミー電極指
4 …第1の反射器
5 …第2の反射器
11 …弾性波フィルタ装置
12 …縦結合共振子型弾性波フィルタ部
13 …IDT電極
13a…第1の端部
13b…第2の端部
23 …IDT電極
23a…第1の端部
23b…第2の端部
31 …一ポート型弾性境界波共振子
32 …圧電基板
33 …誘電体層
34 …IDT電極
35 …反射器
36 …反射器
1001…一ポート型弾性表面波共振子
1002…基板
1003…IDT電極
1004…反射器
1005…反射器
1101…IDT電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、
前記圧電基板上に設けられたIDT電極と、
前記IDT電極が交叉幅重み付けされている、一ポート型弾性波共振子であって、
前記IDT電極の中心よりも前記IDT電極の弾性波伝搬方向一端である第1の端部側の領域であってかつ交叉幅重み付けにより規定される包絡線で囲まれた領域が、IDT電極の中心よりも前記IDT電極の弾性波伝搬方向他端である第2の端部側の領域であってかつ交叉幅重み付けにより規定される包絡線で囲まれた領域と非対称とされている、一ポート型弾性波共振子。
【請求項2】
前記IDT電極の包絡線で囲まれた領域の形状が、前記IDT電極の前記第1の端部において第1の角部を有しており、かつ第2の端部において第2の角部を有している、請求項1に記載の一ポート型弾性波共振子。
【請求項3】
前記第1の角部の弾性波伝搬方向と直交する方向に沿う位置と、前記第2の角部の弾性波伝搬方向に直交する方向に沿う位置とがIDT電極の中心に対し非対称とされている、請求項2に記載の一ポート型弾性波共振子。
【請求項4】
前記第1の角部の内角と、前記第2の角部の内角とが異なっている、請求項2または3に記載の一ポート型弾性波共振子。
【請求項5】
前記第1,第2の角部のうち、少なくとも一方の角部が複数設けられている、請求項2〜4のいずれか1項に記載の一ポート型弾性波共振子。
【請求項6】
前記第1の端部の弾性波伝搬方向外側に配置された第1の反射器と、
前記第2の端部の弾性波伝搬方向外側に設けられた第2の反射器とをさらに備える、請求項1〜5のいずれか1項に記載の一ポート型弾性波共振子。
【請求項7】
縦結合共振子型弾性波フィルタ部と、前記縦結合共振子型弾性波フィルタ部に直列に接続されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の一ポート型弾性波共振子とを備える、弾性波フィルタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−41082(P2011−41082A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−187791(P2009−187791)
【出願日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】