説明

一体化された可撓性スリーブを有しているアクセスポート

【課題】複数の外科手術器具が単一の切開を通して挿入されることを可能にする外科手術装置を提供すること。
【解決手段】下にある体腔にアクセスする組織路内に位置決めされる外科手術装置であって、該外科手術装置は、少なくとも1つの長手方向ポートを含む係留部材であって、該長手方向ポートは、物体の受け取りのための通路を規定する、係留部材と、該係留部材に取り付けられている可撓性スリーブとを含み、該可撓性スリーブは、シースに取り付けられているリング部材を含み、該リング部材は、巻かれるように適合されており、該シースが該リング部材の周りに巻かれ得ることによって、該可撓性スリーブを第一の長さから第二の長さに移行させる、外科手術装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2011年3月25日に出願された米国仮特許出願第61/467,428号の利益および優先権を主張する。その全内容は、本明細書において、参照することによって援用される。
【0002】
(背景)
(技術分野)
本開示は、概して、内視鏡および/または腹腔鏡処置のような低侵襲外科手術処置における使用のための外科手術装置に関する。より具体的には、複数の外科手術器具が単一の切開を通して挿入されることを可能にする外科手術装置に関する。
【背景技術】
【0003】
(関連技術の説明)
今日、患者に対する外傷を減少させ、患者の回復時間を減少させる努力の下、多くの外科手術処置が、伝統的な処置において一般的に必要とされる大きな切開と比較して、小さい皮膚における切開を通して行われている。一般的に、そのような処置は、患者の腹に対して行われない限りは、「内視鏡」処置と呼ばれる。患者の腹に対して行われる場合には、処置は「腹腔鏡」処置と呼ばれる。本開示を通して、「低侵襲」という用語は、内視鏡および腹腔鏡処置の両方を包含するものとして理解されたい。
【0004】
一般的な低侵襲処置中に、内視鏡、把持器、ステープラーおよび鉗子のような外科手術物体が組織の切開を通して患者の身体の中に挿入される。一般的に、患者の身体の中への外科手術物体の導入の前に、吹き込みガスが目標外科手術部位に供給されることによって、周りの範囲を拡大し、より大きく、よりアクセス可能な作業範囲を作り出す。このことは、目標外科手術部位を膨張させるのに十分な圧力で吹き込みガスを維持する、実質的に流体密な密閉によって達成される。
【0005】
異なる患者または異なる目標外科手術部位は、異なる組織の厚さを有している。この理由のために、異なる組織の厚さを受け入れるように適合可能な実質的に流体密な密閉を有することが望ましい。目標外科手術部位に器具類を挿入し、実質的に流体密な密閉を用いることによって、吹き込みガスの圧力を維持することも望ましい。さらに、実質的に流体密な密閉を通して同時に動作される複数の器具の使用の容易さを増加させること、または操作性を増加させることが望ましい。
【0006】
創傷開創器のような先行技術における既存のアクセスデバイスは、上に述べられる1つの目的を達成し得るが、他の全ての目的を達成することはできない。例えば、創傷開創器は、一般的には、複数の器具を創傷開創器を通して動作させることを可能にすることで既知であるが、吹き込みガスの流出を妨げられないこと、設置の難しさ、使用の難しさのような欠点も既知である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上に述べたものに基づいて、より自由な動きの外科手術器具に、向上した密閉および収縮特徴を提供し、異なる厚さの組織を受け入れる増加した可撓性を提供するアクセスデバイスに対する継続した必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(概要)
下にある体腔にアクセスする組織路内に位置決めされる外科手術装置が、本明細書において開示される。外科手術装置は、係留部材を含む。係留部材は、物体を受け取るための少なくとも1つの長手方向ポートを規定する。外科手術装置は、可撓性スリーブをさらに有している。可撓性スリーブは、係留部材に取り付けられている。外科手術装置は、調節可能な挿入長さを規定する。
【0009】
一実施形態において、可撓性スリーブは、概ね円筒形構成であり、調節可能な長さを有しているシースを含む。可撓性スリーブは、シースに取り付けられているリング部材を含み得る。リング部材は、シースを巻き取るように適合されていることによって、可撓性スリーブを第一の長さから第二の長さまで移行させる。シースは、可撓性スリーブの第一の長さに対応する展開された状態と可撓性スリーブの第二の長さに対応する巻かれた状態とを規定する。第一の長さは、第二の長さとは異なる。
【0010】
好ましい実施形態において、リング部材は、ホールを規定し、ホールは、ホールを通して、縫合糸を受け取る。
【0011】
ある実施形態において、外科手術装置は縫合糸を有し、外科手術装置を所望の挿入長さに維持する。
【0012】
別の実施形態において、可撓性スリーブは、接着剤、縫合糸またはオーバーモールド処理によって、係留部材に取り付けられている。
【0013】
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
下にある体腔にアクセスする組織路内に位置決めされる外科手術装置であって、
該外科手術装置は、
少なくとも1つの長手方向ポートを含む係留部材であって、該長手方向ポートは、物体の受け取りのための通路を規定する、係留部材と、
該係留部材に取り付けられている可撓性スリーブと
を含み、該可撓性スリーブは、シースに取り付けられているリング部材を含み、該リング部材は、巻かれるように適合されており、該シースが該リング部材の周りに巻かれ得ることによって、該可撓性スリーブを第一の長さから第二の長さに移行させる、外科手術装置。
(項目2)
前記外科手術装置は、異なる厚さの組織路に対応する調節可能な挿入長さを規定する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術装置。
(項目3)
前記可撓性スリーブは、概ね円筒形形状のシースを含む、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術装置。
(項目4)
前記可撓性スリーブは、調節可能な長さを規定する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術装置。
(項目5)
前記リング部材は、非円形断面形状を有しており、該非円形断面形状は、前記シースを巻かれた位置に維持し、該シースが展開されるのを妨げる助けをする、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術装置。
(項目6)
前記シースは、前記可撓性スリーブの第一の長さに対応する展開された状態と該可撓性スリーブの第二の長さに対応する巻かれた状態とを規定し、該第一の長さは、該第二の長さとは異なる、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術装置。
(項目7)
前記可撓性スリーブは、接着剤、縫合糸またはオーバーモールド処理によって、前記係留部材に取り付けられている、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術装置。
(項目8)
前記係留部材は、前記組織路の内側への配置のために適合されている、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術装置。
(項目9)
前記リング部材は、前記組織路の外側への配置のために適合されている、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術装置。
(項目10)
長手方向軸を規定する外科手術装置であって、該外科手術装置は、下にある体腔にアクセスする織路内に位置決めされ、
該外科手術装置は、
近位端部、遠位端部を規定し、少なくとも1つの長手方向ポートを含む係留部材であって、該少なくとも1つの長手方向ポートは、該近位端部と遠位端部との間を延在する通路を規定し、該通路は、物体の受け取りのために構成されている、係留部材と、
該係留部材の近位端部から該長手方向軸に沿って延在するシースであって、該シースは、該シースの端部に取り付けられている巻き取り可能なリングを有している、シースと
を含む、外科手術装置。
(項目11)
前記シースは、該シースを前記長手方向軸に沿って巻き取るように構成されている、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術装置。
(項目12)
前記外科手術装置は、調節可能な長さを規定する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術装置。
(項目13)
前記シースは、前記外科手術装置の第一の長さに対応する展開された状態と該外科手術装置の第二の長さに対応する巻かれた状態とを規定し、該第一の長さは、該第二の長さとは異なる、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術装置。
(項目14)
前記リング部材は、前記シースが前記巻かれた状態から前記展開された状態に移行するのを妨げるために、非円形断面形状を有している、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術装置。
(項目15)
前記リング部材は、ホールを規定し、該ホールは、該ホールを通して縫合糸を受け取る、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術装置。
(項目16)
前記外科手術装置は、前記シースを前記巻かれた状態に固定するために、縫合糸をさらに含む、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術装置。
(項目17)
前記シースは、概ね円筒形構成を規定する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術装置。
(項目18)
前記外科手術装置は、砂時計構成を示す、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術装置。
(項目19)
前記係留部材は、スポンジまたはゴム様の材料から作られている、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術装置。
(項目20)
前記シースは、接着剤、縫合糸またはオーバーモールド処理によって、前記係留部材に取り付けられている、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術装置。
【0014】
(摘要)
下にある体腔にアクセスする組織路内に位置決めされる外科手術装置は、異なる厚さを有している組織に適合されている。外科手術装置は、係留部材と、係留部材に一体化された可撓性スリーブとを含む。係留部材は、外科手術器具を受け取るための少なくとも1つの長手方向ポートを規定する。外科手術装置は、異なる厚さを有している組織を受け入れるように調節可能な長さを規定する。
【0015】
本開示の上記および他の局面、特徴および利点は、添付の図面に関連して以下の詳細な説明に照らした場合に、より明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本開示の原理に従う外科手術装置の正面透視図であり、組織に対して位置決めされる外科手術装置を例示する。
【図2】図2は、図1の外科手術装置の分解組立て図であり、シースおよび係留部材を例示する。
【図3】図3は、図1の外科手術装置の側面断面図であり、展開された状態のシースを例示する。
【図4】図4は、図1の外科手術装置の側面断面図であり、完全に巻かれた状態のシースを例示する。
【図5】図5は、図1の外科手術装置の側面断面図であり、途中まで巻かれた状態のシースを例示する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(詳細な説明)
本開示の特定の実施形態が、本明細書において、添付の図面を参照して説明される。図面において示され、以下の説明を通して説明され、物体に対する相対的な位置決めを参照する際に伝統的であるが、「近位」または「後端」という用語は、ユーザーに、より近い装置の端部を指す。「遠位」または「前端」という用語は、ユーザーからより遠い装置の端部を指す。以下の説明において、周知の機能または構造は、不必要な詳細で本開示を不鮮明にすることを避けるために、詳細には説明されない。
【0018】
本明細書において説明される1つのタイプの低侵襲外科手術は、単一の切開を通した複数の器具のアクセスを容易にするデバイスを採用する。これは、ユーザーが単一の入口点(一般的には患者の臍)を通して動作することを可能にする低侵襲外科手術処置である。さらに、本開示のデバイスは、自然に生じた開口(例えば、膣または肛門)が外科手術部位への入口点である処置においても用いられ得る。開示される処置は、体腔を吹き込むことと、ポータル部材を、例えば、患者の臍内に位置決めすることとを含む。内視鏡ならびに把持器、ステープラー、鉗子などのようなさらなる器具を含む器具がポータル部材内に導入され得ることによって、外科手術処置を行う。そのような外科手術ポータルの例は、米国特許出願第12/244,024号および2008年10月2日に出願された米国特許出願公開第2009/0093752号に開示されている。その全内容は、これによって、参照することで本明細書において援用される。
【0019】
ここで図面を参照すると、類似の参照数字は、複数の図を通して、同一または実質的に類似する部分を同定する。図1は、本開示の原理に従う外科手術装置10を例示する。外科手術装置10は、例えば、腹腔鏡外科手術処置に関連して、腹膜または腹腔被膜を通した組織路105内の組織開口部106への挿入のために適合されている。外科手術装置10は、下でより詳細に説明される。
【0020】
図1に示されるように、外科手術装置10は、実質的に砂時計形状を規定し得る。しかし、外科手術装置10が、組織路105内への挿入の前とその後の両方で、他の構成を規定し得ることも想定される。
【0021】
図2を参照すると、外科手術装置10は、長手方向軸「L」を規定し、近位部分(または可撓性スリーブ)110および遠位部分(または係留部材)120を含む。近位部分(または可撓性スリーブ)110および遠位部分(または係留部材)120は、長手方向軸「L」に沿って、軸方向に整列されている。近位部分110は、遠位部分120の上部に搭載されるか、または遠位部分120に対して、近位方向に搭載される。近位部分110は、シースまたはライナー111を含む。シースまたはライナー111は、一実施形態において、概ね円筒形構成を示す。シース111が他の構成を示し得ることも想定される。シース111は、近位部分110の近位端部113と遠位端部114との間に配置される。シース111は、内面111aおよび外面111bを規定する。内面111aは、その中に長手方向通路111cを規定する。長手方向通路111cは、放射寸法で「D1」の直径を有している。一実施形態において、放射寸法「D1」は、シース111の長さに沿って均一である。シース111の全長さが組織開口部106の中に挿入可能であることも想定される。
【0022】
さらに図3を参照すると、近位部分110は、リング部材112をさらに含む。リング部材112は、近位部分110の近位端部113に搭載されており、近位端部113は、シース111に接続している。リング部材112は、内壁112a、外壁112b、近位表面112cおよび遠位表面112dを含む。リング部材112は、図3に例示されるように、2つ以上のホール115をさらに含む。ホール115は、リング部材112の円周に配置される。各ホール115は、内壁112aと外壁112bとの間に連絡している空洞な通路である。内壁112aは、長手方向通路111cの直径「D1」と同一である内径を規定する。リング部材112は、組織開口部106の外側に配置されるように構成されている。特に、外壁112bは、外径「D2」を有するように構成されている。外径「D2」は、「D1」よりも大きく、組織開口部106のサイズよりも有意に大きい。この大きな寸法によって、外壁112bは、リング部材112が組織開口部106に入ることを阻止し、また、図4および図5に例示されるように、組織開口部106の収縮を容易にする。
【0023】
リング部材112は、シース111の長手方向の長さに沿って巻くように構成されることによって、シース111がリング部材112の周りに巻かれるようにし、また、シース111がシース111自身に巻き取られるようにする。リング部材112がシース111に沿って遠位方向に巻くので、シース111は、図3に例示される展開された、または第一の状態から、図4に例示される完全に巻かれた、または第二の状態に移行する。
【0024】
近位部分110は、挿入長さを規定する。挿入長さは、組織開口部106の中に挿入され得る近位部分110の長さを表す。挿入長さは、近位部分110の遠位端部114からリング部材112の遠位縁112dまで測定された距離である。挿入長さは、シース111の巻き取り状態に応じて変わる。シース111が、図3に例示されるように、展開された場合には、近位部分110は、最大挿入長さ「H1」を有する。シース111が、図4に例示されるように、シース111自身を、近位端部113が遠位端部114に一致する程度まで巻き取った場合には、近位部分110は、最小挿入長さを有する。そのため、リング部材112は、シース111に沿って、遠位方向に巻くので、シース111の挿入長さは、最大値と最小値との間を移行する。図5は、シース111が半分巻かれた場合には、近位部分110が挿入長さ「H2」を有することを例示する。挿入長さ「H2」は、最大挿入長さよりも短いが、最小挿入長さよりも長い。
【0025】
縫合糸116がシース111の巻かれた部分111eを特に固定することによって、近位部分110を所望の挿入長さで固定するために用いられ得ることが想定される。例えば、図5に例示されるように、縫合糸116は、シース111の巻かれた部分111eをシース111の展開された部分111dに、リング部材112のホール115を通して接続する。縫合糸116は、1つの端部116aを有している。端部116aは、リング部材112の内壁112aを超えて延在し、シース111の展開された部分111dに対して固定されている。縫合糸116は、他の端部116bも有している。他の端部116bは、リング部材112の外壁112bを超えて延在し、シース111の巻かれた部分111eに対して固定されている。
【0026】
縫合糸116は、近位部分110の所望の挿入長さを維持する目的のために、シース111の所望の巻かれた状態を選択、固定および維持する1つの例示的手段を表す。シース111を所望の巻かれた状態に保持するクリップ、スナップまたはホックを含む他のファスナー留め手段も想定される。さらに、シース111の巻かれた状態は、三日月形状の断面などのような非円形な断面形状を有しているリング部材112によって、容易になり得るか、および/または維持され得る。
【0027】
図2に例示されるように、外科手術装置10の遠位部分120は、近位端部121および遠位端部122を規定する。近位端部121は、直径「D3」を規定する。直径「D3」は、近位部分110の直径「D1」よりも大きいか、または等しい。遠位端部122は、直径「D4」を規定する。直径「D4」は、外科手術装置を組織路105に対して内側に係留するために、「D3」よりも実質的に大きい。一実施形態において、遠位端部122は、図3に例示されるように、くぼみ構成を規定する。
【0028】
遠位部分120は、挿入長さ「H4」を規定する。挿入長さ「H4」は、外科手術装置10を任意のタイプの組織105内に係留するために必要とされる最小長さである。遠位部分120の挿入長さ「H4」は一定である。近位部分110は、遠位部分120の上部に搭載されるので、近位部分110および遠位部分120の挿入長さの合計は、全外科手術装置10の挿入長さに対応する。全外科手術装置10の挿入長さは、組織路105の中に挿入され得る外科手術装置10の長さを表す。遠位部分120の挿入長さは一定であり、近位部分110の挿入長さは、シース111の巻き取り状態に応じて変わるので、全外科手術装置10の挿入長さは、シース111の巻き取りによって、動的に変化する。近位部分110の挿入長さに類似して、外科手術装置10の挿入長さは、図3に例示されるように、シース111が展開された場合に最大である。外科手術装置10の挿入長さは、図4に例示されるように、シースが最大程度まで巻かれた場合に、最小である。
【0029】
外科手術装置10の挿入長さは、異なる厚さの組織路105を受け入れるように調節され得る。外科手術装置10の最大挿入長さが容易に組織路105に合う状況において、シース111は、巻き取られる必要がない。しかし、組織路105が、図3に例示されるように、外科手術装置10の最大挿入長さよりも短い厚さ「T」を有する状況においては、組織路105の長さに接近するように、リング部材112がシース111の長さに沿って、遠位方向に巻かれ得、外科手術装置10の挿入長さを、図5に例示されるように、組織路105の厚さ「T」に接近させる。
【0030】
遠位部分120は、少なくとも1つの長手方向ポート130をさらに含む。長手方向ポート130は、近位端部121と遠位端部122との間を長手方向軸「L」に沿って延在する。各長手方向ポート130は、1つ外科手術器具を受け取る。
【0031】
好ましい実施形態において、複数のポート130が遠位部分120内に配置される。長手方向ポート130は、長手方向軸「L」に対して対称的に構成されている。ポート130は、長手方向軸「L」から等距離に間隔をあけられている。各ポート130は、隣り合うポートから等距離に間隔をあけられ得る。各ポート130は、外科手術物体(例えば、外科手術器具(示されていない))を各ポート130を通して受け取るような寸法とされる。外科手術物体(示されていない)をポート130を通して導入すると、ポート130は、実質的に密閉された関係を外科手術物体の周りに確立および維持する。
【0032】
ある実施形態において、ポート130のうちの少なくとも1つは、ポート130における一体化された可撓性カニューレを含み、内視鏡、把持器およびステープラーのような器具を密閉して係合するための別個のカニューレをポート130に配置する必要性を退ける。
【0033】
リング部材112は、プラスチックまたはゴムのような硬質または半硬質材料から作られ得るが、好ましくは、使用において、概ね円形形状を維持するのに十分硬質であり、同時に、ユーザーがリング部材112の回りに巻くことを可能にするのに十分可撓性でもある材料から形成される。遠位部分120は、半弾力的であり、使い捨てであり、圧縮性であり、可撓性であるタイプの材料(例えば、適切な発泡体、ゲル材料、または1つ以上の外科手術物体の周りに密閉を形成し、組織路105と外科手術物体と密閉関係を確立するのにも十分な伸展性を有している軟質ゴム(例えば、ゴムまたはスポンジ))から作られ得るが、それらに限定されない。一実施形態において、発泡体は、ポリイソプレン材料を含む。遠位部分120の弾力的性質は、組織105を通した外科手術装置10の容易な挿入および取り除きを提供する。シース111は、組織路105との密閉関係を確立する能力も有している材料から作られる。
【0034】
一実施形態において、近位部分110は、遠位部分120の一体化された一部である。近位部分110および遠位部分120は、1つのピースに形成される。あるいは、近位部分110は、接着剤、縫合糸またはオーバーモールド処理によって、外科手術装置の遠位部分120に永続的に取り付けられる。
【0035】
別の実施形態において、近位部分110は、外科手術装置10の遠位部分120に取り外し可能に接続される。
【0036】
動作において、組織路105の中への外科手術装置10の挿入の前に、外科医は、第一に、リング部材112をシース111の長さに沿って、近位方向に巻くことによって、シース111を展開された状態に展開する。第二に、外科医は、外科手術装置10の遠位部分120を組織路105の中に組織開口部106を通して導入し、遠位端部122が図3に例示される組織路105の下面に接するような態様で遠位部分120を位置決めする。遠位部分120は、遠位部分120と接触している組織路105(つまり、図3における組織107)と密閉関係を形成する。第三に、遠位部分120が組織路105に対して内側に係留されるが、外科医は、シース111をわずかに近位方向に引き、その結果、シース111が完全に広がり、シース111と接触している組織路105(つまり、図3においてみられる組織108)と密閉関係を形成する。しかし、図4においてみられるように、遠位部分120自体が組織の厚さを完全に受け入れた場合には、外科医は、第三の工程を飛ばし得、直接第四の工程に進む。第四の工程において、外科医は、リング部材112をシース111の長さに沿って、遠位方向に巻くことによって、シース111に張った状態を作り、それによって、組織開口部106を収縮させる。同じ巻き取り工程は、また、リング部材112に組織路105の上側に近付かせ、それは、次に、外科手術装置10の挿入長さを減少させ、組織路105の厚さ「T」に接近させる。最後に、外科医は、縫合糸116または別のファスナー留め機構を用いて、外科手術装置10を所望の挿入長さに維持するために、シース111の巻かれた部分111eを固定する。
【0037】
使用において、シース111によって規定された、相対的に幅広い開いた空間111cを複数のポート130の上に有している近位部分110は、ポート130の上に位置決めされた外科手術器具の一部を操作するための大きく、自由な空間を外科医に提供し、最終的には、外科手術装置10を通して挿入された外科手術器具の動きが有意に増加した範囲で可能となり、また、外科手術器具の軸外れの動きを容易にする。さらに、シース111を採用することによる近位部分110の構成は、外科手術装置10の全体の形状が容易に操作され得ることによって、組織開口部106を通した挿入を容易にするように、外科手術装置10の可撓性を増加させる。外科手術装置10は、シース111を折り畳むことによって容易に小さい寸法へ減少させることができるので、大きな切開開口部は、外科手術装置10が入ることを可能にするためには、もはや必要ない。そのため、切開のサイズを大いに減少させることができ、最終的には、切開の作成中に患者が受ける外傷を減少させ、患者の回復時間も減少させる。
【0038】
遠位部分110が切開内に配置された使用における外科手術装置10が示されたが、遠位部分110が概ね切開の下に位置決めされ、シース111の巻き取りを可能にすることによって、切開を収縮させるデバイスも用いられ得ることが想定されることも認識されたい。また、シース111が遠位部分110に対して近位方向に配置された使用における外科手術装置10が示されたが、反対の態様(例えば、リング部材112が切開を通して挿入されたり、例えば、ユーザーによって、切開を通して挿入される前に事前に巻かれ、圧縮性可能材料が切開の上に位置決めされ、再び、シース111の巻き取りを可能にすることによって、切開を収縮させる)でも用いられ得ることが想定されることを認識されたい。
【0039】
開示の複数の実施形態が図面において示され、および/または本明細書において述べられたが、開示がそれらに限定されることは意図されておらず、開示は、当分野が許容する限り広く、明細書もそのように読まれることが意図される。そのため、上の説明は、限定的と解釈されるのではなく、特定の実施形態の例示に過ぎないと解釈されるべきである。開示の異なる実施形態は、患者の特定の必要性に基づいて、互いに組み合わせられ得ることによって、外科手術処置の最適な結果を得る。当業者は、本明細書に添付の請求項の範囲および精神内に他の改変を想定する。
【符号の説明】
【0040】
10 外科手術装置
105 組織路
106 組織開口部
110 近位部分
120 遠位部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下にある体腔にアクセスする組織路内に位置決めされる外科手術装置であって、
該外科手術装置は、
少なくとも1つの長手方向ポートを含む係留部材であって、該長手方向ポートは、物体の受け取りのための通路を規定する、係留部材と、
該係留部材に取り付けられている可撓性スリーブと
を含み、該可撓性スリーブは、シースに取り付けられているリング部材を含み、該リング部材は、巻かれるように適合されており、該シースが該リング部材の周りに巻かれ得ることによって、該可撓性スリーブを第一の長さから第二の長さに移行させる、外科手術装置。
【請求項2】
前記外科手術装置は、異なる厚さの組織路に対応する調節可能な挿入長さを規定する、請求項1に記載の外科手術装置。
【請求項3】
前記可撓性スリーブは、概ね円筒形形状のシースを含む、請求項1に記載の外科手術装置。
【請求項4】
前記可撓性スリーブは、調節可能な長さを規定する、請求項3に記載の外科手術装置。
【請求項5】
前記リング部材は、非円形断面形状を有しており、該非円形断面形状は、前記シースを巻かれた位置に維持し、該シースが展開されるのを妨げる助けをする、請求項4に記載の外科手術装置。
【請求項6】
前記シースは、前記可撓性スリーブの第一の長さに対応する展開された状態と該可撓性スリーブの第二の長さに対応する巻かれた状態とを規定し、該第一の長さは、該第二の長さとは異なる、請求項3に記載の外科手術装置。
【請求項7】
前記可撓性スリーブは、接着剤、縫合糸またはオーバーモールド処理によって、前記係留部材に取り付けられている、請求項1に記載の外科手術装置。
【請求項8】
前記係留部材は、前記組織路の内側への配置のために適合されている、請求項1に記載の外科手術装置。
【請求項9】
前記リング部材は、前記組織路の外側への配置のために適合されている、請求項5に記載の外科手術装置。
【請求項10】
長手方向軸を規定する外科手術装置であって、該外科手術装置は、下にある体腔にアクセスする織路内に位置決めされ、
該外科手術装置は、
近位端部、遠位端部を規定し、少なくとも1つの長手方向ポートを含む係留部材であって、該少なくとも1つの長手方向ポートは、該近位端部と遠位端部との間を延在する通路を規定し、該通路は、物体の受け取りのために構成されている、係留部材と、
該係留部材の近位端部から該長手方向軸に沿って延在するシースであって、該シースは、該シースの端部に取り付けられている巻き取り可能なリングを有している、シースと
を含む、外科手術装置。
【請求項11】
前記シースは、該シースを前記長手方向軸に沿って巻き取るように構成されている、請求項10に記載の外科手術装置。
【請求項12】
前記外科手術装置は、調節可能な長さを規定する、請求項10に記載の外科手術装置。
【請求項13】
前記シースは、前記外科手術装置の第一の長さに対応する展開された状態と該外科手術装置の第二の長さに対応する巻かれた状態とを規定し、該第一の長さは、該第二の長さとは異なる、請求項12に記載の外科手術装置。
【請求項14】
前記リング部材は、前記シースが前記巻かれた状態から前記展開された状態に移行するのを妨げるために、非円形断面形状を有している、請求項13に記載の外科手術装置。
【請求項15】
前記リング部材は、ホールを規定し、該ホールは、該ホールを通して縫合糸を受け取る、請求項14に記載の外科手術装置。
【請求項16】
前記外科手術装置は、前記シースを前記巻かれた状態に固定するために、縫合糸をさらに含む、請求項13に記載の外科手術装置。
【請求項17】
前記シースは、概ね円筒形構成を規定する、請求項10に記載の外科手術装置。
【請求項18】
前記外科手術装置は、砂時計構成を示す、請求項10に記載の外科手術装置。
【請求項19】
前記係留部材は、スポンジまたはゴム様の材料から作られている、請求項10に記載の外科手術装置。
【請求項20】
前記シースは、接着剤、縫合糸またはオーバーモールド処理によって、前記係留部材に取り付けられている、請求項10に記載の外科手術装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−200608(P2012−200608A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−67377(P2012−67377)
【出願日】平成24年3月23日(2012.3.23)
【出願人】(501289751)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (320)
【Fターム(参考)】