説明

一体化された監視機構を有するベルト

本発明は、撚り合わされた合成繊維撚り糸を備え、力を受けるために長手方向に構成された少なくとも2本の繊維ストランド41を含むベルト43に関する。ストランド41は、ベルト43の長手方向に沿って互いにある距離を置いて配置され、かつベルトコーティング45内に埋め込まれる。ストランド41のうちの少なくとも一つは、ストランド41の合成繊維撚り糸と共に撚り合わされ、繊維束41の中心の外側に配置される導電性のインジケータ撚り糸44を含む。インジケータ撚り糸44は、ストランド41の個別の合成繊維撚り糸の破断伸びεult,Tragより小さい破断伸びεult,Indを有し、その完全性を電気的に監視するために接触させられ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間隔を置いて伸び、またベルトケーシング内に埋め込まれた、数本の合成繊維ストランドを有するベルトに関する。この種類のベルトは、エレベータ設備における支持手段または駆動手段としての使用に特に適している。
【背景技術】
【0002】
走行ケーブルは、運搬技術において、特にエレベータ、クレーン構造、および採鉱において重要な、強く荷重される機械的要素である。例えばエレベータ構造において使用されるような駆動ケーブルの荷重は、特に重層的である。
【0003】
従来のエレベータ設備の場合、エレベータ昇降路内でガイドされるケージのケージフレームと釣合い重りは、数本の鋼の撚りケーブルを介して互いに連結される。ケージと釣合い重りとを上昇および下降させるために、これらのケーブルは、駆動モータによって駆動される駆動プーリの上を走行する。駆動モーメントは、摩擦連結下で、ループ角に亘って駆動プーリに接触するそれぞれのケーブル部分に課せられる。この場合、ケーブルは、引っ張り応力、曲げ応力、圧縮応力、およびねじり応力を受ける。状況によっては、発生する応力は、ケーブルの状態にマイナスの影響を及ぼす。鋼の撚りケーブルの通常丸い断面のために、このケーブルは、プーリの周りを走行する際にねじれることがあり、それによって曲がる際にもっとも多様な方向に荷重される。
【0004】
強度に対する要求は別として、エレベータ設備の場合には、エネルギーの理由から、可能な最小質量の要件も存在する。例えば強く配向された分子連鎖を有する芳香族ポリアミド、特にアラミドの高強度合成繊維ケーブルは、鋼ケーブルよりも良くこれらの要件を満たす。
【0005】
アラミド繊維で作られたケーブルは、通常の鋼ケーブルと比較して、同じ断面積と同じ荷重保持容量に関して比ケーブル重量のほんの1/4から1/5を有するだけである。しかしながら鋼と対比してアラミド繊維は、分子連鎖の整列のゆえに、長手方向の荷重保持容量に対して実質的に、より低い横断方向強度を有する。
【0006】
更にアラミド繊維で作られたこれらのケーブルは、ケーブルの疲労または破断に至る可能性がある捩じり現象および曲げ荷重を受ける。
【0007】
最も多様なケーブルは別として、工業的に使用されるベルトも存在する。ベルトは主として、自動車工業によって例えばVベルトとして、あるいは機械工業によって使用される。荷重の程度によってこの種のベルトは、鋼で強化される。この場合、これらのベルトは、通常、エンドレスベルトである。エンドレスベルトの監視は、比較的高価であって、費用の理由から自動車部門では使用に至らない。したがって自動車産業は、ベルトが破損の危険を冒す前にベルトが交換されることを保証するために、使用されるベルトに運用寿命限度を与えるという方針に従ってきた。このような運用寿命限度は、必要な調査がここで行われ得るという理由で大きなバッチ回数の場合と、交換が簡単であるベルトの場合にだけ適している。
【0008】
コグドベルトが使用されるエレベータ設備は、例えば本発明と同じ出願人の「支持手段および/または駆動手段として、特にVリブドベルトを備えるベルト状の伝動手段を有するエレベータ(Lift with belt−like transmission means, particularly with a V−ribbed belt, as support means and/or drive means)」と題する特許出願に既に記載されている。コグドベルトは、例えば駆動プーリと同期して巡回する機械的に確動的で滑りのない伝動手段である。コグドベルトの歯の荷重保持容量と係合に配される歯の数は、荷重運搬容量を決定する。
【0009】
完全に十分で特に信頼できる支持手段または駆動手段として使用可能なベルトを作り出すために、ベルトの疲労現象と、特に破断の始まりの危険とが、認識可能であることが保証されなくてはならない可能性がある。
【0010】
例えば自動車産業によって規定されているような運用寿命制限は、エレベータ用の支持ベルトまたは駆動手段として使用される筈のベルトの場合には、より適当でない。
【0011】
鋼ケーブルの場合に十分であることが判明している光学的監視といった他の監視手段は、ベルトのストランドが、ベルトケーシング内に埋め込まれていて目に見えないので、ベルトの場合には使用できない。更にX線監視または超音波監視といった監視方法は、ベルトがエレベータシステムで使用されるときには不経済である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、ベルトの状態が監視できるベルトを提供するという目的を追求する。特に、監視手段を有し、中でもエレベータ設備用の支持手段または駆動手段として使用可能であるベルトを提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によればこの目的は、特許請求項1に示された特徴を有するベルトによって達成される。従属請求項は、請求項1の特徴によって規定された本発明の適切で有利な発展および/または実施形態を含む。
【0014】
本発明は、図面に示された実施形態の例に基づいて下記に詳細に説明される。
【0015】
同様の構造要素または同様の仕方で機能する構造要素は、これらが細部に対して同じ仕方で実現されなくても、全ての図で同じ参照符号を与えられている。これらの図は、縮尺的に実際どおりではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1によれば、昇降路1内でガイドされるケージは、本発明による支持ベルト3(サポートベルト)で吊り下げられ、この支持ベルト3は、好ましくはアラミド繊維の繊維束を含み、かつ駆動モータ4に連結された駆動プーリ5の上を走行する。支持ベルト3が一端で固定されているベルト端連結部6は、ケージ2に配置される。支持ベルト3のそれぞれの他端は、昇降路1内で同様にガイドされる釣合い重り7に同様の仕方で固定される。図示の構成は、例えば2:1サスペンションを有する場合のように、他の複数のプーリ上で偏向される必要なしに、ベルトが単一の駆動プーリ5の周りを走行するだけなので、本発明による支持ベルト3が単に一方向に湾曲するということによって区別される、いわゆる1:1サスペンションである。
【0017】
合成材料ストランドを有する支持ベルトの比較的軽い重量は、エレベータ設備の場合には、通常の補正ベルトを部分的または完全に不要とすることができるという利点をもたらす。
【0018】
しかしながらある幾つかの状況では、軽い合成材料ストランドを有するベルトの使用にもかかわらず、補正ベルトが設けられることもあり得る。それからこのような補正ベルトは、その第1の端部によって同様の仕方でケージ2の下端に連結され、そこから補正ベルトは、例えば昇降路の床10に配置された偏向ローラを経由して釣合い重り7に至る。
【0019】
ベルトが使用されるシステムの安全度を増加させるために、監視システムが設けられるべきである。調査は、ベルトケーシングの監視は、信頼できる結果を伝えないことを示している。ベルトに長手方向の強度を与え得るストランドの破断または疲労は、おそらく、ベルトケーシングだけの監視の場合には、気づかれないまま、ベルトの突然の破損に至る可能性がある。
【0020】
したがってストランドの直接監視が、より適切であると思われる。しかしながら駆動プーリの周りを走行中のベルトに発生する曲げ伸びが比較的小さいことは、このような直接監視にとって問題である。後者は、エレベータ設備における典型的な用途に関して、例えば同じ用途に適する丸い断面を有する、対応する支持ケーブルの厚さと比較して、ベルト厚さに関して比較的小さな値が選択されるということに起因する。純粋に形状的理由によって、ベルト内に伸びるストランドは、駆動プーリの周りを走行するときの荷重下で、同じ荷重を有する対応して構成されたケーブル内のストランドより実質的に少ない程度の曲げ伸びを受ける。ストランドから形成されたケーブルと比較して、ストランドによって強化されたベルトの更なる特徴は、ベルトまたはケーブルの内部構造からの結果として生じる。ベルト内のストランドは、ベルトケーシング内で互いに隔離されて伸びており、したがって互いに接触しないが、これに対してケーブル内のストランドは、通常、複数の隣接するストランドが互いに接触するような仕方で撚り合わされている。ケーブルの荷重下で、特に隣接ストランドの接触点でジャム(故障)が発生することがあり、これは、接触点におけるストランドの特に高い曲げ伸びに繋がる。ジャムの対応する事例は、ベルトの対応する荷重下で、ベルト内に互いに隔離して配置されたストランドに関しては発生しない。ケーブルに関して特徴的な条件と比較して、ベルトの監視は、適当に敏感で正確でなくてはならない。ベルトの監視のための解決方法は、以前から知られていない。
【0021】
エレベータ設備での使用のための本発明によるベルト13は、図2Aから図2Cに示されている。ベルト13は、互いに撚り合わされ、長手方向の力を受容するように構成された合成繊維糸を有する、少なくとも二つのストランド12を含んでいる。ストランド12は、互いに平行に伸び、かつ互いに間隔Xを置いて配置されている。ストランド12は、共通のベルトケーシング15内に埋め込まれている。ストランド12のうちの少なくとも一つは、導電性インジケータ糸14を含んでおり、この導電性インジケータ糸14は、ストランド12の合成繊維糸と共に撚り合わされ、かつ例えばカーボン、炭化タングステンといった硬い金属、ホウ素、または導電性プラスチックなどの導電性材料の繊維(フィラメント)を含む。インジケータ糸14は、図2Cに見られるように、ストランド12の中心から外側に配置される。インジケータ糸14が、ストランド12の合成繊維糸より早く破断するか、ストランド12の合成繊維糸より早く疲労現象を示すことが保証され得るように、インジケータ糸14の破断伸び(εult,Ind)は、ストランド12の個別の合成繊維糸の破断伸び(εult,Trag)より小さくなければならない。破断伸びεult,Indと破断伸びεult,Tragは、材料的な量である。更にインジケータ糸14は、インジケータ糸14の完全性の電気的監視を可能にするために、電気的に接触可能でなければならない。
【0022】
更にベルト13の信頼できる監視を可能にするために観測されなくてはならない条件が存在する。
【0023】
ストランド21内のインジケータ糸24の位置は、インジケータ糸24のフィラメントが、ストランド21の合成繊維糸より早く、疲労または破断するように選択されることが重要である。極端な場合には、インジケータ糸24は、ストランド21の外周に存在し、特に図3Aにハッチングで示すように、ちょうど最大曲げ荷重に曝されるベルト23の側面に存在する。このようにしてインジケータ糸24は、常に、少なくともストランド21の合成繊維糸の最大曲げ荷重とちょうど同じくらいの大きさの曲げ荷重を受けることが保証される。合成繊維糸は、白い円周を有する円として図3Aに模式的に示されている。図3Aによる構成の場合には、インジケータ糸24の破断伸びεult,Indが、ストランド21の個別の合成繊維糸の破断伸びεult,Tragより小さいように予め決定すれば十分である。ストランド21は、ベルトケーシング25内に埋め込まれる。
【0024】
図3Bには、本発明による更なるベルト33が示されている。そこではインジケータ糸34は、図3Bにハッチングで示すように、最大曲げ荷重に曝されるベルト33の側面の方向に存在する、ストランド中心から見た側のストランド31の内部に存在する。このような構成では、5本のハッチングされた合成繊維ストランドは、インジケータ糸24が受ける曲げ荷重より大きいか同じである曲げ荷重を受ける。ストランド31は、ベルトケーシング35内に埋め込まれる。このような構成の場合に、ストランド31の合成繊維糸の一つが疲労するか破断する前に、インジケータ糸34が疲労現象を示すか破断することが保証されるように、下記の条件が満たされるべきである。すなわち、インジケータ糸34の破断伸びεult,Indは、ストランド31の個別の合成繊維糸の破断伸びεult,Tragより係数Aだけ小さくなくてはならない。ただし係数Aは、特に、ストランド31内のインジケータ糸34の位置に応じる。下記の条件は、典型的にはAに関して、0.2<A<0.9、好ましくは0.3<A<0.85が適用される。
【0025】
しかしながらこのような構成は、インジケータ糸が、常に「上面」(9時と15時との間の位置)に向けられ、かつベルトの長手方向に直線的に平行に伸びるように、ベルトケーシング内にストランドが埋め込まれることが保証されなければならないので、製造上コスト高になる。しかしながら試験は、特にストランドの個別合成繊維糸は、所望の長手方向の荷重保持容量をベルトに与えるために撚り合わされるので、これが妥当なコストでは実現できないことを示している。
【0026】
本発明によれば、ベルトの信頼できる監視を可能にするために達成されなくてはならない下記の条件が定式化できる。
【0027】
1.インジケータ糸の材料とストランドの合成繊維糸の材料は、インジケータ糸の破断伸びεult,Indが、ストランドの個別合成繊維糸の破断伸びεult,Tragより小さくなるように、選択されなくてはならない。
【0028】
2.製造技術に関連した理由から、インジケータ糸は、ストランドの合成繊維糸と共に撚り合わされなくてはならず、したがって、インジケータ糸は、周囲の合成繊維糸と親密な関係を形成し、かつ周囲の合成繊維ストランドの曲げ荷重に匹敵する曲げ荷重を絶えず受ける。こうしてインジケータ糸は、ベルトの長手方向に沿って螺旋状に伸びる。もしインジケータ糸が、繊維束の外周に存在しなければ、下記の追加条件が適用される。
【0029】
3.インジケータ糸がストランドのより内部に存在するほど、インジケータ糸の破断伸びεult,Indはより小さくなければならない。
【0030】
考慮とシミュレーションとの最適化は、ベルトまたは糸の破断伸びの考慮によって、信頼できる監視を保証できるために、好ましくは下記の条件、
【数1】

が満たされるべきであることを示している。
【0031】
ここではインジケータ糸の半径RInd(図2Cで定義されるストランドの中心点から測定される)における伸びに関して、
【数2】

が適用される。
【0032】
ここでは最大合成繊維糸の半径RTrag(図2Cで定義されるストランドの中心点から測定される)における伸びに関して、
【数3】

が適用される。
【0033】
ここでは、以下の様である。
εult,Ind:インジケータ糸の、またはインジケータ糸の繊維の破断伸び
εult,Trag:合成繊維糸の、または合成繊維の破断伸び
D:駆動プーリ直径
d:ベルト厚さ(ストランドがベルト厚さの半分の位置に存在する場合)
Ind:ストランドの中心点から測定されたインジケータ糸の径方向の間隔(図2C参照)
Trag:ストランドの中心点から測定された最も外の合成繊維糸の径方向の間隔(図2C参照)
【0034】
上記の不等式によれば、インジケータ糸に関する破断伸びεult,Indは、ベルトの荷重の場合のインジケータ糸のフィラメントが、対応するストランドのインジケータ糸を取り囲む合成繊維糸より早く破断するように、ストランドの内部のインジケータ糸の位置(RIndによって特徴付けられる)に応じて、どのように選択されなければならないかが決定され得る。不等式内の係数0.88は、インジケータ糸の作用が、合成繊維糸の破断作用に関する結論を十分な確かさを以って可能にするように決定される、経験値である。しかしながら上記の不等式は、インジケータ糸が、ストランドの中心に配置されないときにだけ妥当性を持ち、その結果としてインジケータ糸の破断作用に関しては曲げ伸びの影響が支配的になる。もしインジケータ糸が、ストランドの中心に、またはストランドの中心付近に配置されれば、インジケータ糸の破断作用は、引っ張り荷重によって決定されるよりベルトの曲げ伸びによって決定される程度が小さくなる。引っ張り荷重の場合、ベルトの荷重の際のインジケータ糸に関しては、引っ張りだけによって荷重される真っ直ぐなベルト内の、または引っ張りだけによって荷重される真っ直ぐなケーブル内の糸の荷重に対応する条件が存在する。この境界事例では、インジケータ糸の十分な感度は、不等式、
【数4】

が満たされるときに与えられる。境界値0.88は、合成繊維糸の損傷に対して信頼できる結論を可能にするように経験的に決定される。
【0035】
本発明によれば、例えばアラミドの合成繊維糸が使用可能である。アラミドは、高い逆曲げ疲労強度と高い比破断伸びεult,Tragを有している。ベルトのストランドは、相反する回転方向を有することができる。
【0036】
例えば炭素繊維は、アラミドより脆弱(すなわち小さな破断伸びεult,Ind)であって、また導電性があり、更に経済的に製造可能であるので、インジケータ糸用のフィラメントとして特に適していることが分かっている。
【0037】
ベルトケーシングは、合成材料を含む。下記の合成材料、すなわちゴム、ネオプレンゴム、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、またはポリアミドは、ベルトケーシングとして特に適している。本発明によればベルトケーシングは、ダンベル形、円筒形、楕円形、凹面形、矩形、または楔形の断面形状を有することができる。
【0038】
図4には、本発明の更なる形式の実施形態が、模式的断面として示されている。ベルト43は、全部で4本の平行に伸びるストランド41を含む。各ストランド41は、数本の合成繊維糸とそれぞれのインジケータ糸44とを含んでおり、これらは互いに撚り合わされている。インジケータ糸44は、ベルト43の長手方向に沿って各ストランド41内で螺旋状に伸びている。図示の例では、左から右へ考慮されたインジケータ糸44は、ほぼ12時と1時と9時と4時の位置に存在する。もし同じベルト43が異なる位置で切断されたとすれば、インジケータ糸44の位置に関する図は、異なる結果となるであろう。
【0039】
本発明は、補強用の合成繊維ストランドを有する全てのベルトで使用可能である。例は、平ベルト、ポリVベルト、Vリブドベルト53(例えば図5に示すような)、または(台形)コグドベルト63(例えば図6に示すような)である。
【0040】
図5に示す本発明によるVリブドベルト53は、ベルトケーシング55内に埋め込まれた整数本の平行に伸びるストランド51を有している。
【0041】
図6に示す本発明による台形コグドベルト63は、ベルトケーシング65内に埋め込まれた整数本の平行に伸びるストランド61を有している。
【0042】
本発明によれば、合成繊維ストランドは、数本のインジケータ糸を有することができる。更なる形式の実施形態では、ベルトは数本の平行なストランドを有する。第1のストランドは、第1の破断伸びεult,Ind1を有する第1のインジケータ糸を含む。第2のストランドは、第2の破断伸びεult,Ind2を有する第2のインジケータ糸を含む。もし次の条件εult,Ind2>εult,Ind1が当てはまれば、第1の炭素繊維はより敏感なので、この第1の炭素繊維が最初に応答する。エレベータ設備によっては、この場合、予め決められた反応が初期設定され得る。例えばサービスコールが配置でき、エレベータ運転が制限できる。もし第2の炭素繊維が障害になれば、例えばエレベータ運転は完全に停止され得る。
【0043】
更に数本のストランドは、各々、同じ破断伸びεult,Indを有するインジケータ糸を含むことができ、故障したストランドの数の増加は、適当な反応のためのトリガ基準として機能する。
【0044】
本発明によれば、炭素繊維の特性が変化したかどうか、あるいは炭素繊維が中断されたかどうかの測定によって、確認するインジケータ回路が使用可能である。この場合例えば、2本の繊維束の炭素繊維は、ベルトの一端で互いに導電的に接続できる。ベルトの他端で例えば、変化を認識可能にするために抵抗測定が行われ得る。インジケータ回路は、一つ以上のコンパレータと、一つ以上のアナログ・ディジタル変換器とを含むことができ、例えば通常ディジタル構成になっているエレベータ制御への接続を生成する。
【0045】
本発明は、ベルトに荷重保持強度を与える繊維束の疲労と破断との、信頼できる適時の認識を初めて可能にする。この種のベルトは、適時に交換できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明による支持ベルトを介して釣合い重りに連結されたケージを有するエレベータ設備の模式図である。
【図2A】本発明による支持ベルトの一区間を有する駆動プーリの側面図である。
【図2B】本発明による支持ベルトの断面図である。
【図2C】本発明による支持ベルトの断面の拡大詳細図である。
【図3A】本発明による更なる支持ベルトの断面の拡大詳細図である。
【図3B】本発明による更なる支持ベルトの断面の拡大詳細図である。
【図4】本発明による更なる支持ベルトの断面の拡大詳細図である。
【図5】本発明によるVリブドベルトの断面図である。
【図6】本発明によるコグドベルトの斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも二つのストランド(12、21、31、41、51、61)を有するベルト(3、13、23、33、43、53、63)であって、前記少なくとも二つのストランドが、互いに撚り合わされた合成繊維糸を含んでおり、かつ長手方向(16)の力の受容のために構成され、糸(12、21、31、41、51、61)が、ベルト(3、13、23、33、43、53、63)の長手方向(66)に沿って互いに間隔(X)を置いて配置され、かつベルトケーシング(15、25、35、45、55、65)内に埋め込まれており、ストランド(12、21、31、41、51、61)のうちの少なくとも一つが、ストランド(12、21、31、41、51、61)の合成繊維糸と共に撚り合わされた導電性インジケータ糸(14、24、34、44)を含んでおり、インジケータ糸(14、24、34、44)が、
ストランド(12、21、31、41、51、61)の個別の合成繊維糸の破断伸び(εult,Trag)より小さい破断伸び(εult,Ind)を有しており、
インジケータ糸(14、24、34、44)の完全性の電気的監視を可能にするように電気的に接触させられ得ることを特徴とする、ベルト(3、13、23、33、43、53、63)。
【請求項2】
インジケータ糸(14、24、34、44)が、ストランド(12、21、31、41、51、61)の合成繊維糸よりも脆弱であって、ストランド(12、21、31、41、51、61)の合成繊維糸よりも弾力性に乏しいことを特徴とする、請求項1に記載のベルト(3、13、23、33、43、53、63)。
【請求項3】
荷重下でのインジケータ糸(14、24、34、44)の最大有効伸びが、ストランド(12、21、31、41、51、61)の個別の合成繊維糸の破断伸び(εult,Trag)より小さいことを特徴とする、請求項1または2に記載のベルト(3、13、23、33、43、53、63)。
【請求項4】
ベルト(3、13、23、33、43、53、63)が、100mmより小さい、好ましくは50mmより小さい半径を有するプーリ(11)の周りを少なくとも部分的に走行する目的のために構成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のベルト(3、13、23、33、43、53、63)。
【請求項5】
インジケータ糸(14、24、34、44)が、ベルトの一端または両端に固定され得る接触手段によって電気的に接触させられ得ることを特徴とする、請求項1、2、または3に記載のベルト(3、13、23、33、43、53、63)。
【請求項6】
ベルト(3、13、23、33、43、53、63)が、平ベルト、ポリVベルト、Vリブドベルト、または(台形)コグドベルトであることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のベルト(3、13、23、33、43、53、63)。
【請求項7】
ベルト(3、13、23、33、43、53、63)が、支持手段または駆動手段としてエレベータ設備内での使用のために構成されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のベルト(3、13、23、33、43、53、63)。
【請求項8】
インジケータ糸(14、24、34、44)が、ストランド(12、21、31、41、51、61)の中心から外側に配置されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のベルト(3、13、23、33、43、53、63)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも二つのストランド(12、21、31、41、51、61)を有するベルト(3、13、23、33、43、53、63)であって、前記少なくとも二つのストランドが、互いに撚り合わされた合成繊維糸を含んでおり、かつ長手方向(16)の力の受容のために構成され、ストランド(12、21、31、41、51、61)が、ベルト(3、13、23、33、43、53、63)の長手方向(66)に沿って互いに平行に、互いに間隔(X)を置いて配置され、ベルトケーシング(15、25、35、45、55、65)内に埋め込まれており、ストランド(12、21、31、41、51、61)のうちの少なくとも一つが、ストランド(12、21、31、41、51、61)の合成繊維糸と共に撚り合わされた導電性インジケータ糸(14、24、34、44)を含んでおり、インジケータ糸(14、24、34、44)が、
ストランド(12、21、31、41、51、61)の個別の合成繊維糸の破断伸び(εult,Trag)より小さい破断伸び(εult,Ind)を有しており、
インジケータ糸(14、24、34、44)の完全性の電気的監視を可能にするように電気的に接触させられ得ることを特徴とする、ベルト(3、13、23、33、43、53、63)。
【請求項2】
インジケータ糸(14、24、34、44)が、ストランド(12、21、31、41、51、61)の合成繊維糸よりも脆弱であって、ストランド(12、21、31、41、51、61)の合成繊維糸よりも弾力性に乏しいことを特徴とする、請求項1に記載のベルト(3、13、23、33、43、53、63)。
【請求項3】
荷重下でのインジケータ糸(14、24、34、44)の最大有効伸びが、ストランド(12、21、31、41、51、61)の個別の合成繊維糸の破断伸び(εult,Trag)より小さいことを特徴とする、請求項1または2に記載のベルト(3、13、23、33、43、53、63)。
【請求項4】
ベルト(3、13、23、33、43、53、63)が、100mmより小さい、好ましくは50mmより小さい半径を有するプーリ(11)の周りを少なくとも部分的に走行する目的のために構成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のベルト(3、13、23、33、43、53、63)。
【請求項5】
インジケータ糸(14、24、34、44)が、ベルトの一端または両端に固定され得る接触手段によって電気的に接触させられ得ることを特徴とする、請求項1、2、または3に記載のベルト(3、13、23、33、43、53、63)。
【請求項6】
ベルト(3、13、23、33、43、53、63)が、平ベルト、ポリVベルト、Vリブドベルト、または(台形)コグドベルトであることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のベルト(3、13、23、33、43、53、63)。
【請求項7】
ベルト(3、13、23、33、43、53、63)が、支持手段または駆動手段としてエレベータ設備内での使用のために構成されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のベルト(3、13、23、33、43、53、63)。
【請求項8】
インジケータ糸(14、24、34、44)が、ストランド(12、21、31、41、51、61)の中心から外側に配置されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のベルト(3、13、23、33、43、53、63)。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−508004(P2006−508004A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−544581(P2004−544581)
【出願日】平成15年10月10日(2003.10.10)
【国際出願番号】PCT/IB2003/004482
【国際公開番号】WO2004/035913
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(390040729)インベンテイオ・アクテイエンゲゼルシヤフト (166)
【氏名又は名称原語表記】INVENTIO AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】