説明

一体化された繊維複合部品の製造方法

本発明に係る方法は、内部に、複数のアンダーカット補剛要素(107)を有する、複雑な一体化された(単体の)繊維複合構成要素を、除去可能なコア(11−13、26−29、56、75)を用いて製造することを可能にする。連結要素が必要なくなるため、従来の、別個の部品からの組立て(ディファレンシャル工法)の場合のような、連結に必要なリベット及びリベットフランジ等が不要となり、軽量化の可能性が高くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部スキンで囲まれた複数の補剛部材からなる一体化された繊維複合構成要素、特に空気力学的表面の製造方法に関する。
【0002】
本発明は、また、前記方法において必要な複数のコアを同時に且つ柔軟に製造するためのコアモールドに関する。
【背景技術】
【0003】
現代の航空機製造において、例えば、炭素繊維強化された、熱硬化性又は熱可塑性ポリマーからなる繊維複合構成要素の使用により、伝統的なアルミニウム材料は次第に廃れつつある。今日では、ランディングフラップや全ラダー部のような複雑な構造構成要素でさえ、しばしば、概ねこのような繊維複合材料、特に炭素繊維強化エポキシ樹脂のようなCFRP材料から形成される。
【0004】
このような構造構成要素は、その物理的寸法及び/又は複雑な幾何学的形状のために、通常、いわゆるディファレンシャル工法を用いて製造され、前記構造構成要素は、最終の組立段階において、通常はより簡単な幾何学的形状を有する、前もって製造した複数の別個の構成要素から組み立てられる。
【0005】
これに関連して、航空機のランディングフラップを例として挙げるが、ランディングフラップでは、スキンシェルを支持するために、互いに間隔をあけて平行に延びる複数の縦桁に複数の横リブが取り付けられている。前記横リブの外側の輪郭及び前記スキンシェルの形状は、最終的に当該スキンシェルの表面形状により定義され、これによりランディングフラップの空気力学的挙動が定義される。また、構造体に付加的な荷重を印加することを避けるために、すべての構成要素を応力なく組み立てることも可能でなければならない。
【0006】
ディファレンシャル工法の欠点は、とりわけ、付加的な組立て段階において、完成した構成要素を形成するために個々の部品を組み立てる必要があるということである。さらに、一般的に、構成要素をつなぎ合わせる過程でオーバーラップ又はフランジが必要であり、これらは必ず付加的な重量を伴う。
【0007】
個々の部品を接続するためにリベット接合を優先的に用いることにより、別の欠点が生じる。繊維複合構成要素は金属材料に比べて支圧強度がかなり低いため、設けられる各リベット穴により、当該穴の領域における材料厚さを増すことで相殺しなくてはならない静的な欠点が生じる。そもそもこのようなリベット接合を繊維複合構成要素に用いるためには、例えば、リベット接合が機能しなくなった場合には別のリベット接合を行うことにより確実に修復できるように、シェル構造体においても材料厚さを増し、フランジ領域を拡大する必要がある。これら制約のすべてが、複合構成要素は、最大想定機械的荷重を見込んで設計されたのではなく、最低限の製造条件又は安全関連の修理要件に関して設計されていることを意味しており、これは重量を不必要に増加させる傾向がある。
【0008】
一般的な法則として、接着材により個々の構成要素をつなぎ合わせることができ、これにより、少なくとも支圧強度が低下するという問題は排除される。しかしながら、依然として、必要な表面処理、疲労安全性及び衝撃荷重に耐える能力(いわゆる耐衝撃性)に関連して、航空機の、強い圧力がかかる構成要素における、いわゆる「構造上の凝着」についての重大な問題があり、この問題が、安全性の理由から、現在はまだ、この解決法を少なくとも民間航空部門では用いることができないということを引き起こしている。
【0009】
ディファレンシャル工法に代わる実行可能な代替法は、一体工法であり、これにより、複雑な形状を有する繊維複合構成要素が1つの構成要素として製造され、上述の、複雑な全体構造を形成するために複数の別個の構成要素を接合することによる欠点はもはや当てはまらない。
【0010】
このような一体化された構成要素、例えば、完全なランディングフラップ、ブレーキフラップ、補助翼、フラップトラックフェアリング、スラット、エンジンマウント、ウィングレット、翼、尾部、ラダー、扉、カバー、被覆、支持材等を製造する際、密封された外部スキン内に必要な補剛を施すために多くの場合必要であるアンダーカット構造体が重大な問題となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、複数のアンダーカット補剛部材を備えた複雑な、一体化された繊維複合構成要素の簡単な製造方法であって、様々な繊維複合構成要素の構成条件に対して柔軟でもあり、広く自動化・産業化された製造過程に組み込むことができる製造方法の説明である。さらに、本発明の他の目的は、前記方法で必要なコアを製造するための、構成要件の変化に対して柔軟なコアモールドの提供である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、まず、以下の工程を有する請求項1記載の方法により達成される:
a)コアモールド内で、複数の除去可能なコアであって、実質的には繊維複合構成要素の内面形状を表すコアを製造すること、
b)補剛部材を形成するために前記コアに強化繊維からなるプリフォームを貼り付け、全体構造を形成するように前記コアを配置すること、
c)外部スキンを形成するためウェブ状半製品で前記コアを被覆すること、
d)前記全体構造を密閉成形型内に組み入れ、前記全体構造に硬化可能なプラスチック材料を含浸すること、
e)圧力及び/又は温度を加えることにより硬化し、完成した繊維複合構成要素を形成すること、及び
f)前記コアを除去すること。
【0013】
本方法の第1の工程a)では、本方法の実施に必要なすべてのコアが製造される。前記コアを鋳造するために、少なくとも1つの上モールド部及び1つの下モールド部を有する、独立した密閉コアモールドが用いられる。セルを形成するための、少なくとも部分的に交差する複数の仕切りが前記コアモールド内に配置される。前記仕切りが交差領域を形成するように位置決めされるように、前記仕切りはそれぞれ、その長さ全体に渡って、仕切り板の中間あたりまで延びる縦方向のスリットを有する。これにより、前記仕切りはどちらの側からも互いに差し込むことができる。前記交差領域において、前記縦方向のスリットは、向かい合って交差する仕切り板に嵌められる。このようにして前記コアモールド内に形成される各セルは、製造されるコア用の密閉鋳造チャンバであり、下部モールド部及び/又は上部モールド部の少なくとも1つの穴を用いてコア材料で満たすことができる。場合によっては、前記コアの、高速で、さらに重要なことには、無気泡の鋳造を促進するために通気孔を設けてもよい。
【0014】
前記コアモールドの両部が、製造される繊維複合構成要素、例えばランディングフラップ、の「内側」の表面形状の像を定義する。ランディングフラップを製造する場合、前記セル間の仕切りは、例えば、桁板及びリブ板の形態であってもよい。前記桁板及びリブ板は、後の繊維複合構成要素において(縦)桁及び(横)リブの形態で見られる、場合によってはアンダーカットを有する補剛部材のプレースホルダである。
【0015】
コアを製造するために、前記桁板及びリブ板は、前記下モールド部に挿入されることが好ましく、前記下モールド部はこの挿入のための溝を備えており、また、前記上モールド部を用いて構造全体が密閉される。その後、前記密閉されたコアモールド内に、各モールド部の穴からコア材料が入れられて硬化される。
【0016】
融点の低い材料、例えば、蝋、金属合金又は類似物を前記コア材料として用いてもよい。或いは、最初に凝固し、その後、水、希釈剤又は類似物等の適当な溶媒により完全に溶解され、処理の最終工程で前記コアモールドから洗い落とされる物質を前記コア材料に用いることもできる。用いるコア材料に関係なく、前記コア材料は、後の含浸処理(「RTM処理」)のために、少なくとも8バールの十分な圧縮強度を有していなければならない。鋳造物は後で外部スキンに形成される穴を用いて除去されるが、これらの穴から前記コアの溶解に用いられる溶媒を加え、前記コア材料をこの穴から流出させる。航空機製造用の工業用エポキシ樹脂システムは、現在、通常、依然として、融解可能なコアの使用が必要とされないような高い硬化温度(≒180℃)を有する。すべてのコアを備えたマトリックス状の全体構造(いわゆる「コア」複合形態)は、後に製造される繊維複合構成要素の所望の内面形状を表している。繊維複合構成要素の構造上の変更、例えば桁及び/又はリブの材料厚さの変更は、複雑な、最終の含浸処理に用いられる(RTM)成形型の変更を行う必要がなく、関連する仕切りの交換により素早く且つ容易に行うことができる。最後に、前記コアモールドは、例えばアルミニウム合金等の非常に容易に加工できる材料から形成されることが好ましい。
【0017】
第2の工程b)では、強化繊維からなるプリフォーム(いわゆる、結合剤を備えたドライプリフォーム)が、特に桁、リブ及び外部スキンの繊維強化材を形成するために、前記コアの全面に貼り付けられる。必要であれば、複数のプリフォームを重ねることができる。その後、前記コアは、前記繊維強化構成要素の所望の形状を形成するように互いに対して位置決めされる。ランディングフラップを製造する場合、前記コアは、まず、当該ランディングフラップの長手方向の広がりの方向に位置決めされ、その後、当該ランディングフラップの横方向に順次取り付けられる。前記プリフォームは、すでに結合剤を有しているため、ある程度の形状安定性を有する。
【0018】
第3の工程c)では、互いに対して位置決め及び方向決めされている前記コアに、外部スキンを形成するために、強化繊維からなるウェブ状半製品が供給されるが、これは密封されることが好ましい。前記半製品は、高度に被覆可能な/弾性のある布であり、理想的には、前記コアにより定められる、通常は2次元の曲面形状に、皺なくフィットする布であることが好ましい。前記繊維プリフォーム及び前記ウェブ状半製品は、ともに炭素繊維からなることが好ましい。一般的な法則として、強化繊維としての使用にふさわしいあらゆる繊維、例えばガラス繊維、セラミック繊維、天然繊維(麻)等、を用いることができる。
【0019】
前記プリフォーム及び前記ウェブ状半製品は、例えば、熱可塑性の合成材料を用いたその後の「結合剤」を用いて、例えば、これを粉末状で散布することにより適所に固定されてもよい。或いは、適切な熱可塑性の結合剤を予め前記プリフォーム又はストリップ状の半製品に組み入れて、熱を加えるだけで前記プリフォーム又は前記半製品を前記コアに固定できるようにしてもよい。望ましくない空洞、特に前記コアに沿って並ぶプリフォーム間の空洞を埋めるために、一般的に、前記コア間に、付加的なガセット及び/又は別個の強化繊維ストランド(粗糸)又は複数の強化布の層を挿入する必要がある。
【0020】
第4の工程d)では、上述のように形成された全体構造が、少なくとも2部構成の、好ましくは金属製の成形型であって、その内面形状は、当該型の両部により定義され、製造される繊維複合構成要素の所望の表面形状を正確に表している成形型に挿入される。前記少なくとも2部構成の成形型を密閉した後、前記全体構造に、既知の樹脂含浸方法(RTM法=樹脂注入成形法)で、場合によっては超大気圧下にある硬化可能なプラスチック材料、特に硬化可能なエポキシ樹脂を浸透又は含浸させる。前記金属製の成形型は、高張力で耐熱性のあるスチールから非常に精密に製造されるRTM成形型である。前記RTM成形型に同時に低圧を加えることにより、含浸処理又は注入処理の速度が増し、空気の混入や空洞の形成といったリスクに対処する。前記RTM成形型は直接及び/又は間接的に加熱される。間接的に加熱する場合は、前記RTM成形型全体をオーブン内に配置し、一方、直接加熱する場合には、加熱手段が直接成形型内に組み込まれる。これらの加熱手段は、電気加熱部材、又は温度制御することができる液体、特に油が通過する穴から構成してもよい。
【0021】
第5の工程e)では、完成した繊維複合構成要素が、圧力及び/又は温度を用いて硬化され、最終の第6の工程f)では、前記コアが、最終的に、加熱及び/又は溶媒を加えることにより前記繊維複合構成要素から除去される。これを行うために、一般的に、密封された外部スキンに小さい穴を設け、溶解された又は液化したコア材料を流出させる必要がある。或いは、前記横リブの角領域にある開口部をこれに用いることができ、この開口部は完成した構成要素内の結露水の排水に役立つ。
【0022】
本発明に係る方法により、このように、可溶性の(融解可能な)又は実質的に除去可能なコアの2次元のマトリックス配置を用いることにより、複雑な、内部にアンダーカット補剛構造を有する一体化された繊維複合構成要素が、簡単な方法で製造される。
【0023】
本方法における有利な改良形態により、前記コアに、鋳造及び硬化後に不浸透性の被覆を設けることが提供される。これにより、最終の含浸処理において、制御されずに、プラスチック材料が前記コアの方に押しやられ、結果として、硬化して前記コアを除去した後に、所定のものではない内面を有する繊維複合構成要素(「鋳造ツリー」)となることが回避される。この被覆は、完成した構成要素から除去/取り外しができるように非付着性を有していてもよい。
【0024】
前記補剛部材は、特に、前記外部スキン内の一体化されたリブ及び桁として設計されることも提供される。しかしながら、大まかに言えば、本方法は、例えば、伝統的に航空機の翼、水平安定板、ラダー部及びランディングフラップに用いられているような、伝統的な、外部スキンを供えた桁−リブ構造に限定されない。前記コアモールド内で、状況に応じて前記仕切りを位置決め及び構成することにより、ほとんどあらゆる形態の、内部が補剛され、且つ密封された外部スキンを有する中空の構造体を、繊維複合構成要素として製造することができるようになる。さらに、前記仕切り、ランディングフラップの場合は桁板及びリブ板として設計される仕切りは、前記交差領域において90°で交差する必要はない。原則として、直線以外の形状であればどんな角度でもよく、例えば、前記仕切りは、コアモールド内で湾曲した経路に沿っていてもよい。さらに、例として示す翼の断面形状からは逸れるが、広範囲内で可変である二重曲面を有し、一体的に密封される表面形状を有する繊維複合構成要素を製造するために、前記仕切りはどのような高さ輪郭を有していてもよい。
【0025】
本方法は、特に、現在、桁−リブ構造を有し、従来の単品製造で製造される繊維複合構造構成要素が主に用いられている旅客航空産業用の、自動化された、繊維複合構成要素の大量工業生産を意図するものである。
【0026】
本発明に係る方法のさらなる発展形態によれば、前記ウェブ状半製品を貼り付ける前に、ストリンガプリフォームが、少なくとも1つのコアの少なくとも1つの長手方向凹部、特に溝に嵌挿され、その後、後で挿入される少なくとも1つの支持部材によって支持されることが提供される。
【0027】
これにより、例えば、前記桁及びリブの形態の補剛部材に加え、繊維複合構成要素を囲む外部スキンの一体的な部分として、例えば、ハットストリンガ又はΩストリンガの形態の長手方向の補剛部材を形成することが可能となる。膨張性のあるプラスチック製ホース(管状フィルム)を支持部材として用いることが好ましく、これらは、完成した複合構成要素内に残っていても、必要であれば側面から取り除いてもよい。或いは、溶解可能な又は融解可能なコアを支持部材として用いることもでき、これらは、アンダーカットを有する残留コアに用いることもできる。
【0028】
本発明の目的は、請求項14に挙げた特徴を備えたコアモールドによっても達成される。
【0029】
前記コアモールドは、外部スキンの内面形状を定義するために、上モールド部と下モールド部との間に封入される複数のセルを有しており、これらのセルは、互いに間隔をあけて配置され、少なくとも一部は交差している複数の仕切り、特にリブ板及び桁板から形成され、また、各セルは、コア材料供給用の少なくとも1つの穴を有しており、これにより、前記方法の実施に必要なすべてのコアを同時に製造することが可能となる。
【0030】
さらに、前記仕切り及び前記少なくとも2部構成のコアモールドは、加工が容易である金属合金、例えばアルミニウム合金からなることが好ましい。これにより、繊維複合構成要素の構造上の変更は、ある領域において仕切り材料を除去すること及び/又は仕切りを交換することにより行うことができる。例えば、静的な考慮要件により、完成した繊維複合構成要素における補剛部材の材料厚さが変更される場合、関連する仕切りを、必要な材料厚さを有する別の仕切りと交換すればよい。
【0031】
前記方法及びコアモールドの他の有利な実施形態は残りの請求項で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】コア製造用のコアモールドの等角図。
【図2】プリフォーム及び半製品を備えた3つの整列したコアの断面図。
【図3】ランディングフラップの完全な強化繊維の配置の全体構造の断面図。
【図4】手前の桁プリフォームとウェブ状半製品との間の接続領域を、RTM処理に用いる成形型とともに示す図3の部分図。
【図5】ストリンガプリフォームの領域を示す図3の他の部分図。
【図6】(横)リブの一体的な部分として設計された荷重印加点の領域を示す図3のVI−VI線に沿った断面図。
【図7】コア用の位置決め手段を備えたコアモールドの変形例。
【図8】図7の拡大部分図。
【図9】外部スキンを形成するためのウェブ状半製品の貼り付けの概略図。
【図10】半加工品及びこの半加工品から形成されるコーナープリフォームの図。
【図11】半加工品及びこの半加工品から形成されるリブプリフォームの図。
【図12】内部にアンダーカット補剛部材を備えた、本発明に従って製造される一体化された繊維複合構成要素の例であるランディングフラップの等角図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図中では、同じ構造部材は、各場合において同じ参照番号を有する。以下、本方法、及び本方法の実施に用いる装置、特にすべてのコアを製造するためのコアモールドを並行して説明する。
【0034】
図1は、航空機のランディングフラップの例を用いて、本方法を実施するためのコアの製造に用いられるモールドの等角図を示す。
【0035】
コアモールド1は、下モールド部2及び上モールド部3からなる。個々に符号を付していないが、複数の仕切りが成形型内に配置されており、前記仕切りは、この例においては、ランディングフラップの製造するための、桁板及びその横方向に延びるリブ板として設計されている。前記桁板及びリブ板のうち、1つの前方の桁板4及び1つの前方のリブ板5のみが参照番号を有する。前記リブ板5の断面形状は、この領域におけるランディングフラップの断面形状に沿っている。前記桁板4は、前記下モールド部2及び/又は上モールド部3の、参照番号を有していないスリットに差し込まれ、これによりガイドされている。図示した実施例では、前記リブ板5は合計3つのスリットを有しており、そのうち前方のスリットのみが参照番号6を有するが、これらのスリットはそれぞれ、リブ板5の上縁からその略中間まで延びている。前記桁板4も3つのスリット又は縦方向の凹部を有しており、そのうち前方のスリット7のみが参照番号を有する。前記リブ板5のスリット6と異なり、前記桁板4のスリット7は、それぞれ、桁板4の底部からその略中間まで延びている。上述したスリット構造により、前記桁板4を前記リブ板5に矢印方向に(互い違いに)差し込むことができ、図示しない交差領域及び複数のセルが形成される。参照番号8を有する1つのセルが、同様に形成される他のセルを代表するものである。図1の合計8つのセルが、コアの製造に用いられる実際の鋳造型を表す。前記モールド部2の下側には、セル8の領域に、他のセルも同様に、小さい穴9があり、これを通じて適切な液状のコア材料を供給することができる。或いは、前記穴を、前記上モールド部3に設けることもできる。付加的な通気孔9aを設けてもよい。合計8つのコアを同時に製造するために前記コア材料を注入する前に、前記仕切りが差し込まれ/組み立てられ、前記2つのモールド部2、3が密閉されて、前記コアモールド1が形成される。
【0036】
前記溶解可能なアンダーカットされコア用のコア材料は、マトリックス材料の硬化温度より高い融点を有する融解可能な材料、又は、後から、例えば、水、化学溶媒又は類似物等の適当な溶媒で再度溶解することができ、後の構成要素から洗い流すことができる硬化可能な物質である。溶解処理は、物理的手段で行っても科学的手段で行ってもよい。エポキシ樹脂を用いる場合、一般的に、可溶性のコアの使用が好まれるが、その理由は、硬化温度が最大200℃と高く、コアの融解に必要な温度がエポキシ樹脂マトリックスに損傷を与えるかもしれないからである。しかしながら、溶解可能なコアを融解する場合、熱硬化性のプラスチック材料を用いることができ、これらは低い温度で硬化されるため有利である。後から外部スキンに形成される穴及び/又は横リブの角領域に形成される開口部が前記コアの除去に用いられ、これらは、後に結露水の排水口として使用される。用いるコア材料に応じて、特にエポキシ樹脂システムにおいて、繊維複合構成要素を完成させるための樹脂含浸処理で用いられるプラスチック材料が浸透するのを防止するために、前記コアに剥離フィルム又は被覆を設ける、即ち、前記コアをカバーすることが必要な場合もある。
【0037】
前記下モールド部2は、若干台形状の断面形状を有する3つの縦ウェブも有しており、これらのウェブの中央のウェブが参照番号10を有する。前記桁板4に平行に延びるウェブ10により、前記コアの下側に長手方向凹部、特に台形状の溝が形成され、これは、後に、特にハットストリンガの形状の長手方向の補剛部材の製造に用いられる。
【0038】
前記コアモールド1は、前記仕切りも含めて、例えばアルミニウム合金又は類似物等の容易に加工できる材料からなることが好ましい。これは、例えば、桁の材料厚さの増減といった後の繊維複合構成要素の構造上の変更を、関連する桁板の交換又は関連する桁板からの材料の除去により素早く行うことができることを意味する。特に、高張力スチール製の型が用いられる、非常に複雑で加工の難しい、後の樹脂含浸処理(RTM処理)用の型の変更が必要なくなり、その理由は、外側の成形型のみが高張力スチール(高温クロムニッケル合金)から形成され、その形状はそれより前の段階で固定されるからである。第1の工程a)は、上述した装置において、必要なすべてのコアを同時に製造することにより完了する。
【0039】
図2は、後の繊維複合構成要素の強化繊維の配置の全体構造の細部を表す、複数のプリフォーム及びウェブ状半製品の層を2層備えたコアの上部断面の非常に概略的な図である。
【0040】
第2の工程b)において、複数の様々なプリフォームが前記コア上に配置される。その後、前記コアを纏めて全体構造を形成し、この全体構造は、実質的に、製造される繊維複合構成要素の内面形状を表す(図1参照)。コア12、13は、中央のコア11の両側でこれに隣接する。この中央のコア11を例として用いて薄片構造を説明する。まず、事前に製造したコーナープリフォーム14が前記コア11上に配置される。
【0041】
前記コーナープリフォーム14等のプリフォームは、例えば、多軸の繊維織布(いわゆる「NCF」=非捲縮繊維)又はテキスタイルからなる平らな半加工品、特に炭素繊維からなるウェブ状の半製品であって、どのような外側輪郭でもよく、この半加工品は、可能であれば、3次元の構造を形成するために、ある領域において少なくとも1回折られている且つ/又はひだをつけられている。一般的な原則として、プリフォームは、折ったり、ひだをつけたり、切断したりして、幾何学的形状としてはどのような形状にも形成することができる。最後に、各プリフォームは、適当な方向、特に力の流れ及び荷重を考慮した方向に延びる強化繊維で製造される。例えば、前記プリフォームは、±45°の角度の強化繊維及び0°/90°位置の強化繊維からなるテキスタイル及び/又は布(「多軸布」)で製造される。
【0042】
その後、スキンプリフォーム15が配置される。その後、桁プリフォーム又はリブプリフォーム16、17が、前記コア11の両側面18、19に必要な数だけ貼り付けられ、それぞれ補剛部材を製造する。必要であれば、前記コア間に任意の中間プリフォーム20を設けることもできる。必須の態様は、前記コーナープリフォーム14と前記スキンプリフォーム15が、縁21、22の領域において重なり合うように位置決めされることである。同じことが、前記スキンプリフォーム15上の前記桁プリフォーム及びリブプリフォーム16、17の配置にも適用される。これらのプリフォームが互いに蟻継ぎされている又は重なり合っているということは、当該プリフォームは後の繊維複合構成要素内で機械的手段により一緒に保持されることを意味する。
【0043】
後の繊維複合構成要素における望ましくない増厚を避けるために、全コアの周囲の縁21、22には、複数の平らな、相互に段階的な窪み(符号は付さず)があり、これらの正確な深さは、それぞれ、重ねて貼り付けられるプリフォームの材料厚さと一致する。これにより、完成した構成要素の繊維含有量は、±4%の範囲で約60%という、公差の小さい繊維含有量となる。重なる層の数に応じて、対応する数の階段状のオフセットされた段が設けられる。前記プリフォームは、少なくともいくつかの部分で、少なくとも一側にタブ(フランジ)を有しており、このタブは、前記コア11の前記縁21、22のうちの一方に沿って折り返される、即ち、前記コア11の側面18、19のうちの一方上に配置される。この場合、前記タブは前記コア11の前記窪み内に配置されており、上面の平らな仕上がりを提供している。前記窪みは、複数のタブを重ねて配置しなければならないといった万一の場合も対応できるように、複数の段階に階段状に設計されていてもよい(特に図4参照)。或いは、前記タブを裂けるように設計することもでき、これにより前記タブは、前記コアの湾曲した縁に沿うことができる。前記プリフォームは、すべての側に、同様に設計されたタブを有することが好ましい。前記コア11乃至13は、その後、後の繊維複合構成要素の内側の輪郭と一致するように、マトリックスの形態で互いに対して配置される、即ち、プリフォームを設けられた前記コア11乃至13は、元々は、鋳造処理後、前記コアモールドから取り外された時の構造である全体構造23を形成するために、再度配置される(図1参照)。前記コア11乃至13の上部領域のみを図2に示すが、上述した手順と同じ手順が、前記コア11乃至13の下部領域におけるプリフォームの配置にも用いられる。
【0044】
前記プリフォームは、プライ、テキスタイルで製造されるか、又は、別の複数の炭素繊維又は炭素繊維粗糸で製造されることが好ましい。後の複合構成要素の強化繊維の配置を形成する前記全体構造23を完成させるために、前記コア12と13の間の領域にガセット24も差し込まれる。
【0045】
最後に第3の工程c)では、前記コアの全体構造23が、後の、繊維複合構成要素の外部スキンの強化材を製造するために、少なくとも1層のウェブ状半製品25で被覆される。
【0046】
前記ウェブ状半製品25は、炭素繊維からなる高度に被覆可能なテキスタイル又はプライであって、前記コア11乃至13の、一般的には二重の曲面形状に、皺なく沿うことがきるテキスタイル又はプライであることが好ましい。上述した、前記プリフォーム又は前記ウェブ状半製品25を貼り付けるための一連の手順は、すべてのコアに適用される。さらに、必要であれば、空洞を埋めるために、炭素繊維粗糸から形成される別個の炭素繊維ガセット24を前記全体構造23に差し込むことが必要な場合もある。前記半製品25は、その上部が、陰影線で示しているが符号を付していないRTM成形型の上部分に沿う。
【0047】
前記コア11乃至13上での前記プリフォーム及び前記ウェブ状半製品25の位置を固定するために、例えば、熱可塑性の結合剤を適用すると都合が良い場合もある。或いは、製造者によりすでに熱可塑性の結合剤が備え付けられた(「接着剤付」)プリフォーム又はウェブ状半製品を用いることもでき、そうすれば、製品を加熱するだけで当該製品を適所に固定できる。
【0048】
図3は、ドライ強化繊維の配置の全体構造の概略断面図を示しており、一方、図4は、桁プリフォームと、外部スキンを形成するウェブ状半製品との間の領域の拡大部分図を示している。以下、図3及び図4を同時に参照する。
【0049】
とりわけ、ドライ(強化繊維)全体構造23は、4つのコア26乃至29を含み、こららは、3つの桁プリフォーム30乃至32で分割されており、後の外部スキンを形成するためのウェブ状半製品33で囲まれている。さらに、対応して予め形成される6つのストリンガプリフォームが、そのうちの1つのストリンガプリフォーム34にのみ参照番号を付すが、前記コア27乃至29に設けられており、後の繊維複合構成要素における一体化された長手方向の補剛プロファイル、特にストリンガ、Ωストリンガ又はハットストリンガを形成するのに用いられる。
【0050】
この全体構造23は、含浸処理又はRTM処理のために、工程d)において、密閉成形型35に挿入される。前記成形型35は、高張力の、耐熱スチール合金からなる。複合構成要素の外面形状は、前記成形型35のみによって決定される。前記全体構造23に、硬化可能なプラスチック材料、特にエポキシ樹脂システム又は類似物を完全に含浸した後、前記構造は、工程e)において完全に硬化されて完成した繊維複合構成要素が提供される。前記RTM型は、必要に応じて、直接加熱により加熱することも間接加熱により加熱することもできる。前記コア26乃至29は、最終処理工程f)において、融解又は洗い流すことにより除去又は溶解される。2つのリブ及び桁により定義される各セルの穴がこれに用いられ、これらの穴は、材料テストの実施及びメンテナンス作業及び点検作業のために、後から外部スキンに形成されるものであり、後に排水に用いてもよい。
【0051】
必要であれば、完成した、一体化された複合構成要素の、空気混入、層間剥離、異物、厚さのばらつき等についての信頼性試験を実施することができる。
【0052】
図4は、強化繊維の配置の全体構造23における、前方の桁26が外部スキン33に接続する領域における薄片構造の詳細を示す。コーナープリフォーム36、37が、両コア26及び27に沿って並んでいる。スキンプリフォーム38、39は、前記コーナープリフォーム36、37に重なるように配置されている。さらに、中間プリフォーム42により分けられる2つの桁プリフォーム40、41が配置されている。また、略三角形の断面形状を有する(強化繊維)ガセット43が、十分に平らな表面を達成するために、前記コア26と27の間に延びている。またさらに、その後、2層のウェブ状半製品44が、全体構造23の上部の仕上げを形成する。前記プリフォームの縁領域において層状に重ねることにより、非常に密接した接合となり、その結果、非常に強い繊維複合構成要素となる。
【0053】
図5は、図3の別の部分図を示しており、特にΩストリンガ又はハットストリンガの形態で長手方向に補剛するためのストリンガプリフォームの配置を詳細に図示している。
【0054】
図5に示す実施形態において、ハットストリンガ34が、入れ子になっており、それぞれ台形状の断面形状を有する2つのストリンガプリフォーム45、46から形成されている。外側のストリンガプリフォーム45は、その両側にタブ47、48を有しており、これらのタブは、平らな上部の仕上げを確実にするために、前記コア27の階段状の窪み49、50内に配置されている。前記タブ47、48は、互いに反対の方向に方向付けられ、外側を向いている。内側のプリフォーム46は、互いに向かい合う2つのタブ51、52を有する。前記2つのストリンガプリフォーム45、46は前記コア27の長手方向窪み53に挿入され、この長手方向窪み53は、図示した実施形態では、台形状の断面形状を有する溝の形態である。最終の含浸処理において前記ストリンガプリフォーム45、46を支持するために、中空の支持部材54があり、これは、例えば、部分的に弾性があり、膨張可能な管状フィルムから形成されていてもよく、また、含浸及び硬化処理の後に再び長手方向の補剛プロファイルか34から除去される。この構造は、その上面で2層のウェブ状半製品44(テキスタイル)により密封される。前記支持部材は、或いは、コア11乃至13と同じ除去可能な(融解可能な又は可溶性の)材料から形成されていてもよい。
【0055】
図6は、図3のVI−VI線に沿った断面図であり、本方法に係る、後の複合構成要素における荷重印加点の包含を図示している。
【0056】
前記コア27と、図3においては投影面の関係で前記コア27の裏側に位置して隣接するコア56との間の領域における荷重印加点55は、少なくとも1つのドライプリフォームで形成される(横)リブ57の一体的な部分として設計されている。
【0057】
前記コア27は、コーナープリフォーム58、スキンプリフォーム59及び3つのリブプリフォーム60を含む。第2のコア56におけるプリフォームの配置は、前記コア27におけるプリフォームの配置の鏡像である。ドライプリフォームを用いた「通常の」桁/リブの製造とは異なり、前記荷重印加点55を形成する際には、合計5つの付加的な荷重印加プリフォーム61が、前記リブプリフォーム60間に配置されて設けられ、これにより、繊維複合構成要素の全体構造の広い表面領域全体における最適な力の伝達を確実にする。前記荷重印加プリフォーム61は、その下端に、図示しない凹部62を有しており、この凹部は、後の複合構成要素における連結アイを形成するための円筒状のコア63又はボルトを受けるように意図されたものである。
【0058】
或いは、前記荷重印加プリフォーム61の下端は、単に前記コア63の周囲に配置するだけでもよい。前記コア63は、他のコア11乃至13と同じ除去可能な又は可溶性の材料から形成されていてもよい。前記コア63も2部構成の型64内に保持され、この型64は、同様に、前記成形型35内の、これに対応する形状のキャビティ65内に配置される。前記型64を2つに分割することにより、当該型からの除去が保証される。前記荷重印加プリフォーム61が後の外部スキンを貫通するように、凹部67又は縁部を強化した進入部、特にスリットが、前記ウェブ状半製品66の両方の層に導入される。或いは、前記アイは、後から、含浸及び硬化の完了直後に前記荷重印加プリフォーム61に穴あけ加工を行うことにより形成することもできる。この場合、前記円筒状のコア63、2部構成の型64及び前記成形型35のキャビティ65は不要となる。
【0059】
図7は、特に、製造後のコアの精密な方向付けを容易にするための、図1に示したコアモールドの他の実施形態の概略的な説明図である。
【0060】
コアモールド68は、とりわけ、後の繊維複合構成要素における桁及びリブのスペースホルダ(仕切り)としての3つの桁板69乃至71及び3つのリブ板72乃至74からなる。前記桁板69乃至71及び前記リブ板72乃至74によりそれぞれ定義されるセルにおいて、上述したような硬化可能なコア材料で満たすことにより、合計8つのコアが製造され、これらのうちの1つのコア75のみが参照番号を有する。明瞭にするため、前記コアモールド68における付加的な構成要素は図示しない(特に図1参照)。
【0061】
図1に係るコアモールド1の実施形態と異なり、前記コアモールド68には複数の位置決め補助材が設けられており、これらの位置決め手段のうちの2つが、参照番号76、77で示されており、その他すべての位置決め手段を代表するものである。前記位置決め手段76、77は、前記鋳造処理において包含するだけであり、堅化/硬化後に前記コアから除去される。前記位置決め手段76、77は、前記コアからの除去をより容易にするために、テフロン(登録商標)コートされたワイヤ又はチューブから形成されることが好ましい。
【0062】
前記位置決め手段76、77は、前記リブ板72、73の穴(図示せず)を貫通しており、前記桁板69乃至71の縁の上部輪郭及び下部輪郭から数ミリメートルという短い距離を保ちながら、これらに略沿っている。しかしながら、前記桁板69乃至71の縁は湾曲しており、且つ前記位置決め手段76、77は直線であるために、この距離は一定でない。前記位置決め手段76、77は、所定の経路を確実にするために、テンション手段(図示せず)により機械的に張力を付加されてもよい。
【0063】
前記位置決め手段の目的は以下の通りである:鋳造されたコアが処理工程a)において硬化された後、前記位置決め手段76、77が前記コアから除去される。その後、すべてのコアに沿って、図2乃至図6の説明(方法工程b)において説明したようにプリフォームが並べられる。その後、前記コアは、互いに隣り合って位置決めされて(最初は、桁プリフォームと平行な)列を形成し、前記位置決め手段を再度挿入することで互いに対して精密に配置され、ともに保持される。その後、全体構造が完成するまで、リブ方向に追加されるコアが纏められて完全な列を形成し、次の列が続く。すべての列が配置・整列されると、工程c)において、外部スキンを強化するためのウェブ状半製品ですべてのコアが等しく被覆され、これにより、一体化された繊維複合構成要素の製造に必要な完全な強化繊維の配置の全体構造が形成される。前記桁プリフォーム、リブプリフォームの材料厚さ及び前記巻き付けたウェブ状半製品の層の数は、特に、工程d)において、前記全体構造を、前記RTM処理用の少なくとも2部構成の成形型に、ゆがむことなく、できるだけ精度よく嵌挿できるように算出しなければならない。場合によっては、公差補正のために、任意の強化繊維の層を前記全体構造に追加しなくてはならない。前記位置決め手段も、前記コアが前記RTM型内部で移動するのを防止し、繊維複合構成要素の、高く、再現可能なレベルの寸法精度を確実にする。最後の2つの工程e)及びf)は、単に、前記RTM処理後の繊維複合構成要素の硬化、及び、その後の前記コアの、中空の複合構成要素からの除去を伴う。
【0064】
図8は、前記コア75とさらに3つの、隣接する、符号を付していないコアとの間の交差領域78を示している。前記プリフォーム間の、コアの空間的広がりを点模様で示す。前記交差領域78には、2つの連続する桁プリフォーム79、80及び4つのリブプリフォーム83乃至86も配置される。場合によっては、前記桁の材料厚さを増すために、平面の垂直ブレードが前記連続する桁プリフォーム79、80間に挿入されてもよい。構成要素の全長にわたって延びる単一の桁プリフォーム79及び80は、後の一体化された繊維複合構成要素の潜在強度にとって非常に重要である。一方、前記リブプリフォーム83乃至86はさらに分割されている、即ち、2つの隣接する桁間にのみ延びている。前記プリフォーム79乃至86の上部タブ(図示せず)は、各場合において、同じく符号を付していないコアの縁方向に折り返される。四分円弧状の板87、88が、交差領域78の領域において前記位置決め手段76、77に嵌められ、これらは、後の複合構成要素における四分円弧状の排水口を形成するのに用いられる。前記板87、88は、前記コアと同じ除去可能な材料で製造されることが好ましい。図8の実施形態によれば、この板は、排水口を形成するために他のすべての交差領域に設けられる。前記4つのリブプリフォーム83乃至86は、この排水口形成のためにカットアウトを有しており、その形状は前記板87、88の幾何学的形状に略一致する。前記四分円弧状の排水口の結果として、排水手段の形成のために後の繊維複合構成要素の外部スキンに穴あけ加工を行わずに済み、これは、静的及び空気力学的観点の両方から有利であり、また、製造過程を簡略化することができる。しかしながら、桁には排水口がないため、構造内に含まれる結露水は、前記桁に沿っては流れるしかできない。
【0065】
前記セルの角領域に配置される前記板87、88の代替物として、リブ板72乃至74(図7参照)に、対応して配置される凹部又は窪みを設けることができ、この凹部又は窪みは、例えば、四分円弧状であってもよく、さらに、とりわけ前記(縦)桁に沿ったランディングフラップからの結露水の排水を保証するために、コア鋳造工程においてコア材料で満たされ、後の複合構成要素における対応する排水口を形成する。
【0066】
図9は、プリフォームを備えて位置決めされたコア上にウェブ状半製品を配置する工程c)における手順の概略的な説明図である。
【0067】
ウェブ状半製品89、特に、被覆可能な炭素繊維布が、使用される装置、この場合には、2つのリール90、91に供給される。前記2つのリール90、91の、下向き矢印の方向の下方への移動により、前記ウェブ状半製品89が、前記リール90、91から均等に引き出され、準備された構造92上に配置され、所望のサイズに切断される。皺のない貼り付けを補助するために、前記各リール90、91は、前記下方への移動の間に前記準備された構造92に接近し、垂直方向に再度位置決めされることが好ましい。
【0068】
必要であれば、前記準備された構造92上の前記ウェブ状半製品89の材料厚さを増し、これにより後の外部スキンの厚さを増すために、前記処理を少なくとも1回繰り返すことができる。前記半製品89を、しっかりと、さらに重要なことには、皺のないように前記構造92に押し付けるために、図示しない付加的な加圧ローラを設けもよく、また、適切な場合には、同時に、加熱及び/又は結合剤の添加により、前記ウェブ状半製品89をこの端部位置で固定してもよい。前記ウェブ状半製品89が前記構造92に貼付けられた後、前記構造92は、繊維複合構成要素を製造するための完全な強化繊維の配置の完成した全体構造93を表す。
【0069】
図10及び図11は、前記コアに沿って並べられる、即ち、最終的には内側の補剛構造を形成する2つの事前に製造されたプリフォームの考えられる構造を示す概略的な説明図である。両プリフォームは、平面状の半加工品から切断して折ることにより形成されたものである。使用する半加工品は、例えば、炭素繊維からなる多軸繊維織布又は被覆可能なテキスタイルから製造されてもよい。図10及び図11における破線は折線を表し、太線は切り取り線を表し、点線は前記半加工品の最初の輪郭又は等角図において隠れている縁を表す。より明確にするために、カットアウト領域に陰影をつける。
【0070】
図10の左部分は、その右側に図示したコーナープリフォーム94の製造に用いられる半加工品の概略例を示す。前記コーナープリフォーム94は、繊維複合構成要素におけるセルの縁を強化、及び、オーバーラップを形成することにより、外部スキンと桁プリフォーム又はリブプリフォームとの間の機械的接続を形成するために用いられる。前記コーナープリフォーム94は、前記太線に沿って(半加工品の正方形部分を)カットし、略90°折ることにより形成される4つのタブ95乃至98を有しており、これらのタブは、コアの縁の周りに延びる階段状の窪みに挿入される(特に図3参照)。
【0071】
図11の左部分は、例として、リブプリフォーム99用の半加工品を示しており、この半加工品から、後の複合構成要素における一体化されたリブの形成に必要なリブプリフォーム99が、実線に沿って(内側に丸い角部を有する概ね正方形の角部を)カットし、タブ100乃至103を折ることにより形成される。周囲の輪郭は、図11の概略的な説明図では、簡略化するために矩形で示すが、実際の実施形態では、繊維複合構成要素の外部スキンの内面形状に沿う。
【0072】
図11に示すリブフォーム99を用いることにより、複合構成要素の各リブの角領域に略四分円弧状の排水口を形成することが可能であり、この排水口は、とりわけ、複合構成要素の排水に用いることができる。前記リブフォーム99のこれらのカットアウトされた角領域は、同じ幾何学的形状を有する板により、コア鋳造工程中はふさがらないように保持される(特に図7及び図8参照)。
【0073】
桁プリフォームの幾何学的形状(図示せず)は、−中央の凹部がない点、及び長手方向の(水平方向の)広がりがかなり大きくなる点を除いて−図10に示すコーナープリフォーム94の形状と一致している。
【0074】
最後に、図12は、完成した、内部に複数のアンダーカット補剛部材を複数備えた一体化された繊維複合構成要素を下から見た図を示す。
【0075】
本方法に従って製造される繊維複合構成要素104は、図示の実施形態ではランディングフラップ105に関するが、外部スキン106の一体的な部分として形成される、複数の内部アンダーカット補剛部材107を有する。前記補剛部材107は、例として、(縦)桁108乃至110及び、この桁108乃至110に対して略90°の角度で延びる(横)リブ111乃至113として設計されている。交差領域で「交差」する前記桁108乃至110とリブ111乃至113は、8つの実質的には密閉されたセルを有する内部補剛構造を形成しており、例として、前記セルの1つに、残りの全セルを代表して参照番号114が付される。下側115の領域において、前記外部スキン106に、各セルの略中央に、穴が形成され、これらの穴の1つに参照番号116を付す。前記穴は、前記セルの排水に用いられ、また、点検又はメンテナンス用の穴としても用いられる。前記(横)リブに四半円弧状の凹部が形成される場合には、少なくとも浸透した水の排水目的では、前記穴はなくてもよいが、点検作業及びメンテナンス作業にとっては依然として有益な場合もある。
【0076】
前記繊維複合構成要素104は、前記下側領域115に、例えばアイ118の形態で、前記リブ112の一体的な部分として形成される荷重印加点117も有する。
【0077】
前記リブ111乃至113の角領域は、それぞれ、複数の四分円弧状の開口部を有しており、開口部又は凹部のひとつが、他のすべての開口部又は凹部の代表として参照番号119を有する。前記開口部は、前記RTM処理の終了後に前記コアを洗浄するために用いられ、また完成した繊維複合構成要素104においては、当該構成要素の内部に生じるあらゆる結露水を排水するための排水口として用いられる。四分円弧状の型と異なり、前記凹部119は、考えられるどのような幾何学的形状であってもよい。
【0078】
前記繊維複合構成要素104は、炭素繊維強化エポキシ樹脂を用いて製造されることが好ましい。構造上の強度及び/又は衝撃強度についての要件が低い一体化された繊維複合構成要素の場合、代わりに、ポリエステル樹脂やフェノール樹脂といった他の熱硬化性のプラスチック材料を用いてもよい。応用として、熱可塑性のポリマーの機械特性が熱硬化性のプラスチック材料と比較して適切と思われるような例外的な状況においては、これを用いてもよい。
【0079】
本発明に係る方法を用いて製造される前記繊維複合構成要素104又はランディングフラップ105は、完全に一体的に構成する方法により、優れた強度特性を有し且つ軽量である。さらに、前記構成要素は、工業スケールに基づく実質的に完全自動化された方法で、高度な寸法精度及び良好な幾何学的寸法の再現性を有して、また、組立費用をかなり削減して製造することができる。
【0080】
シールや金属製ブシュ等の、後の段階で追加される装置構成要素のみが、依然として手動で嵌める必要がある。雷からの繊維複合構成要素の適切な保護を確実にするために必ず必要である雷保護布及び/又はワイヤは、前記RTM処理の終了前に、銅線布、銅線、又は導電性の穴あき金属シート又は類似物を組み込むことにより、前記外部スキン層内に形成される。
【0081】
製造される繊維複合構成要素が、例えば、ラダー部、水平安定材又は完全な航空機翼である場合、さらに、必要な電気システム、ニューマティックシステム及び油圧システムも組み立てなくてはならない。
【符号の説明】
【0082】
1 コアモールド
2 下モールド部
3 上モールド部
4 桁板
5 リブ板
6 スリット(リブ板)
7 スリット(桁板)
8 セル(コア鋳造型)
9 穴(コア材料の供給又は換気用)
9a 排水穴
10 ウェブ
11 コア
12 コア
13 コア
14 コーナープリフォーム
15 スキンプリフォーム
16 桁プリフォーム(リブプリフォーム)
17 桁プリフォーム(リブプリフォーム)
18 側面(コア)
19 側面(コア)
20 中間プリフォーム
21 縁
22 縁
23 全体構造(強化繊維配置複合構成要素)
24 ガセット
25 ウェブ状半製品(被覆可能なテキスタイル、外部スキン)
26 コア
27 コア
28 コア
29 コア
30 桁プリフォーム
31 桁プリフォーム
32 桁プリフォーム
33 ウェブ状半製品(外部スキン)
34 ストリンガプリフォーム(長手方向補剛プロファイル)
35 成形型
36 コーナープリフォーム
37 コーナープリフォーム
38 スキンプリフォーム
39 スキンプリフォーム
40 桁プリフォーム
41 桁プリフォーム
42I 中間プリフォーム
43 ガセット
44 ウェブ状半製品(外部スキン)
45 ストリンガプリフォーム(外側)
46 ストリンガプリフォーム(内側)
47 タブ
48 タブ
49 窪み(コア)
50 窪み(コア)
51 タブ
52 タブ
53 長手方向窪み(コア)
54 支持部材
55 荷重印加点
56 コア(除去可能)
57 (横)リブ
58 コーナープリフォーム
59 スキンプリフォーム(コーナープリフォームと外部スキンとの接続)
60 リブプリフォーム
61 荷重印加プリフォーム
62 凹部(荷重印加プリフォーム)
63 円筒状のコア(アイ)
64 2部構成の型
65 キャビティ(成形型)
66 ウェブ状半製品(外部スキン)
67 凹部(ウェブ状半製品)
68 コアモールド(変形例)
69 桁板
70 桁板
71 桁板
72 リブ板
73 リブ板
74 リブ板
75 コア
76 位置決め補助材(テフロン(登録商標)コートされたワイヤ)
77 位置決め補助材(テフロン(登録商標)コートされたワイヤ)
78 交差領域
79 桁プリフォーム
80 桁プリフォーム
83 リブプリフォーム
84 リブプリフォーム
85 リブプリフォーム
86 リブプリフォーム
87 板
88 板
89 ウェブ状半製品(外部スキン層)
90 リール
91 リール
92 構造(プリフォームを備えたコア)
93 全体構造(プリフォーム及び外部スキン層を備えたコア)
94 コーナープリフォーム
95 タブ
96 タブ
97 タブ
98 タブ
99 リブプリフォーム
100 タブ
101 タブ
102 タブ
103 タブ
104 繊維複合構成要素
105 ランディングフラップ
106 外部スキン(繊維複合構成要素)
107 補剛部材
108 桁
109 桁
110 桁
111 リブ
112 リブ
113 リブ
114 セル
115 下側(繊維複合構成要素)
116 穴(排水)
117 荷重印加点
118 アイ
119 窪み(排水口)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部スキン(106)で囲まれた複数の補剛部材(107)を備えた一体化された繊維複合構成要素(104)、特に、空気力学的表面を製造する方法であって、
a)コアモールド(1、68)内で、複数の除去可能なコア(11−13、26−29、56、75)であって、前記外部スキン(106)を形成する一体化された桁(108−110)及びリブ(111−113)を備えた前記繊維複合構成要素(104)の内面形状を実質的に形成するコア(11−13、26−29、56、75)を製造する工程と、
b)前記補剛部材(107)を形成するために強化繊維からなるプリフォームを前記コア(11−13、26−29、56、75)に貼り付け、全体構造(23、93)を形成するために前記コア(11−13、26−29、56、75)を配置する工程と、
c)前記外部スキン(106)を形成するために、前記コア(11−13、26−29、56、75)にウェブ状半製品(25、33、44、66、89)を被覆する工程と、
d)前記全体構造(23、93)を密閉成形型(35)に組み入れ、前記全体構造(23、93)に硬化可能なプラスチック材料を含浸させる工程と、
e)圧力及び/又は温度を加えることにより硬化し、前記完成した繊維複合構成要素(104)を形成する工程と、
f)前記コア(11−13、26−29、56、75)を除去する工程からなる方法。
【請求項2】
前記コア(11−13、26−29、56、75)に不浸透性の被覆を設けることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記コアは、可溶性の及び/又は融解可能なコア材料で満たし、その後前記コア材料を硬化させることにより、前記コアモールド(1、68)内で製造されることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記コア(11−13、26−29、56、75)を互いに対して整列させるために、位置決め手段(76、77)、特に非付着性の被覆ワイヤが、前記コア(11−13、26−29、56、75)に入れられ、その後除去されることを特徴とする請求項1乃至3記載のいずれかの方法。
【請求項5】
前記ウェブ状半製品(25、33、44、66、89)を貼り付ける前に、ストリンガプリフォーム(34、45、46)を、少なくとも1つのコア(11−13、26−29、56、75)の少なくとも1つの長手方向窪み(53)、特に溝に導入し、続いて挿入される少なくとも1つの支持部材(54)によって支持されることを特徴とする請求項1乃至4記載のいずれかの方法。
【請求項6】
一体化された荷重印加点(55、117)、特にアイ(118)を接続するために、2つのコア(11−13、26−29、56、75)間に、少なくとも1つの荷重印加プリフォーム(61)が導入され、前記少なくとも1つの荷重印加プリフォーム(61)は、前記ウェブ状半製品(25、33、44、66、89)の凹部(62)を貫通し、前記成形型(35)内に進入することを特徴とする請求項1乃至5記載のいずれかの方法。
【請求項7】
まず、角部を強化するために、コーナープリフォーム(14、36、37、58、94)が前記コア(11−13、26−29、56、75)上に配置され、その後、スキンプリフォーム(15、38、39、59)が貼り付けられ、リブプリフォーム(60、83−86)及び桁プリフォーム(16、17、30−32、40、41、79−82)がこれに続き、この後、隣接するコア(11−13、26−29、56、75)間にガセット(24、42)が挿入され、最後に前記コア(11−13、26−29、56、75)を前記ウェブ状半製品(25、33、44、66、89)で被覆することを特徴とする請求項1乃至6記載のいずれかの方法。
【請求項8】
少なくとも、前記リブプリフォーム(60、83−86)は、排水を目的とする開口部を形成するための凹部を有することを特徴とする請求項1乃至7記載のいずれかの方法。
【請求項9】
確実に精密に整列させるために、前記プリフォームを貼り付けた後、完成した前記コア(11−13、26−29、56、75)に位置決め手段(76、77)、特に非付着性の被覆ワイヤを通すことを特徴とする請求項1乃至8記載のいずれかの方法。
【請求項10】
前記プリフォームは結合剤を用いて適所に固定されること、及び/又は、前記プリフォームは、製造者により予め結合剤を設けられていることを特徴とする請求項1乃至9記載のいずれかの方法。
【請求項11】
前記プリフォーム及び前記ウェブ状半製品は、強化繊維、特に炭素繊維からなることを特徴とする請求項1乃至10記載のいずれかの方法。
【請求項12】
特に、請求項1乃至11記載のいずれかの方法を実施するためのコアモールド(1、68)であって、外部スキン(106)の内面形状を定義するために上モールド部と下モールド部(2、3)の間に包含される複数のセル(8)を有し、前記セル(8)は、互いに間隔をあけて配置される複数の仕切りであって、少なくとも部分的に交差し、位置決め手段を貫通させるための複数の穴を有するを仕切りを有しており、各セルは、コア材料を供給するための少なくとも1つの穴(9)を有することを特徴とするコアモールド(1、68)。
【請求項13】
前記位置決め手段(76、77)は、非付着性の被覆ワイヤの形態であることを特徴とする請求項12記載のコアモールド(1、68)。
【請求項14】
前記仕切りは、桁板(4、69−71)及びリブ板(5、72−74)の形態であることを特徴とする請求項12又は13記載のコアモールド(1、68)。
【請求項15】
前記モールド部(2、3)及び前記仕切りは、加工が容易な金属合金、特にアルミニウム合金からなることを特徴とする請求項12乃至14記載のいずれかのコアモールド(1、68)。
【請求項16】
前記桁板(4、69−71)及び前記リブ板(5、72−74)は、リブ板(5、72−74)と桁板(4、69−71)とを互いに差し込むことを可能にするためのスリット(6、7)を有することを特徴とする請求項12乃至15記載のいずれかのコアモールド(1、68)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2011−517635(P2011−517635A)
【公表日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−550109(P2010−550109)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際出願番号】PCT/EP2009/051603
【国際公開番号】WO2009/112321
【国際公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(509203120)エアバス オペラツィオンス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (67)
【Fターム(参考)】