説明

一体型カートリッジ

サンプルの処理および分析を目的とした一体型カートリッジが開示される。一体型カートリッジは、サンプル入口およびサンプル出口を有するサンプル調製チャンバー、およびハウジングおよびハウジングの内部の抽出フィルターを収容する交換可能なサンプル精製ユニットを受容するよう適合化されたサンプル精製チャンバーを収容する。抽出フィルターは目的の分子と特異的に結合する。サンプル精製チャンバーは、サンプル調製チャンバーのサンプル出口と流動的に連絡するサンプル入口を有する。マイクロアレイベースサンプル分析(MBSA)システムも開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本明細書は、その全文を参照文献として本明細書に援用する2009年9月21日出願の米国仮特許出願第61/272,397号の優先権を主張する。
【0002】
本技術分野はバイオテクノロジーであり、かつ、より具体的には、生体分子の分析を目的とした方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
サンプル調製およびサンプル分析機能を共に有する分析機器を有することは望ましい。軽量かつ小型でありかつ低コストで製造することのできる分析機器を有することも好ましい。しかし、微量流動上の困難がそのような分析機器の開発を妨げていた。これらの困難は、部分的に、小スケールにおける流体力学が原因となっている。たとえば、Hagen−Poiseuilleの式によると、微量流動導管の直径が減少するにつれて導管の直径上の圧力損失はその4乗増加する。複雑な微量流動形状寸法を採用する場合、これらの大きな圧力損失は、特に系内の気泡により、予測が非常に困難な流動パターンをもたらすことがある。空気の熱膨張は液状物の5倍以上であり、さらなる困難をもたらす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
サンプルの処理および分析を目的とした一体型カートリッジが開示される。一体型カートリッジは、サンプル入口およびサンプル出口を有するサンプル調製チャンバー、およびハウジングおよびハウジングの内部の抽出フィルターを収容する交換可能なサンプル精製ユニットを受容するよう適合化されたサンプル精製チャンバーを収容する。抽出フィルターは目的分子と特異的に結合する。サンプル精製チャンバーは、サンプル調製チャンバーのサンプル出口と流動的に連絡するサンプル入口を有する。
【0005】
マイクロアレイベースサンプル分析(MBSA)システムも開示される。MBSAシステムは、反応チャンバーおよびマイクロアレイを有する脱着式の交換可能なサンプル分析ユニットを受容するよう構成された脱着式カートリッジを受容するよう適合化されたカートリッジホルダー、液状物の流動を制御する流動制御システム、およびマイクロアレイの画像をキャプチャーするよう設計された光学サブシステムを含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
発明を実施するための形態は、以下の図面を参照する:
【図1A】一体型カートリッジの実施形態を示す模式図である。
【図1B】一体型カートリッジの実施形態を示す模式図である。
【図2】細胞溶解手段を伴う一体型カートリッジを示す模式図である。
【図3】図3A〜Cはデュアルファンクション一体型カートリッジのタンパク質精製コンポーネントの相異なる実施形態を示す模式図である。
【図4】マイクロアレイベースサンプル分析システム(MBSA)のブロック図である。
【図5】一体型カートリッジに接続されたポンプおよび選択バルブ(SV)を示す流動サブシステムの模式図である。
【図6】図6Aはサーモサイクラー嚢を伴わない流動マニホールド内に存在する一体型カートリッジを示す模式図である。図6Bはサーモサイクラー嚢を伴う流動マニホールド内に存在する一体型カートリッジを示す模式図である。
【図7】一体型カートリッジにおけるオンボード微量流動カートリッジバルブの位置を示す模式図である。
【図8】オンボード微量流動カートリッジバルブの実施形態を示す模式図である。
【図9】フローセル内のチャンバー配置の実施形態を示す模式図である。
【図10】部位RS1800407における眼色SNPについて得られたPCR/APEXアレルシグナル比率の結果を示す図である。PCRは、嚢状サーモサイクラー内に位置するAkonniフローセル、MJサーモサイクラー内に配置された0.2mL PCR管、および嚢状サーモサイクラー内に位置するCepheid管において実施した。APEXをオフラインで1時間実施した。結果より、3つのPCR法全てについて同様のAPEXシグナルが示された。
【図11A】レーザー光源による光学サブシステムの実施形態を示す模式図である。
【図11B】同軸照明を用いて図11Aに記載の光学サブシステムで撮影した300μmピッチのCy3アレイの典型的画像を示す。
【図12A】レーザー光源による光学サブシステムの他の実施形態を示す模式図である。
【図12B】図12Aの光学サブシステムにより撮影した11×18 Cy3アレイの典型的画像を示す。
【図13−1】図13Aは高輝度LEDによる光学サブシステムの実施形態を示す模式図である。図13Bは蛍光およびFII撮像を目的とした光学縦列を示す模式図である。
【図13−2】図13Cは蛍光およびFII撮像を目的とした他の光学縦列を示す模式図である。図13Dは図13Bおよび13Cにおいて用いた平行光源を示す。
【図14】図14AはゲルアレイのFII画像を示す。図14Bは図14Aにおけるアレイエレメントの正規化ピクセル強度プロフィールを示す図である。
【図15−1】ImageJソフトウェアで利用可能な相異なる方法によって処理したゲルアレイ画像を示す複合画像である。パネルA、処理前の画像;パネルB、ImageJ処理:Process=>Find Edges;パネルC、ImageJ処理:Process=>Filters=>Median,R=5;パネルD、ImageJ処理:Process=>Filters=>Mean、R=5;
【図15−2】パネルE、ImageJ処理:Image=>Adjust Threshold;パネルF、ImageJ処理:Process=>Filters=>Maximum....R=2;パネルG、ImageJ処理:Process=>Binary=>Find Maxima;パネルH、確認されたスポットの中心および検出されたスポットの境界をそれぞれ示す画像の重ね合わせ。
【図16】スポット形状の評価を示す複合図である。パネルA:蛍光撮像モードで撮影した画像;パネルB:平行ビームによる傾斜照明を用いて撮影した同アレイのFII画像;パネルC:ImageJにおいてProcess=>Find Edgesを用いた画像処理;パネルD:ImageJにおいてProcess=>Filters=>Median、R=2;Image=>Adjust thresholdを用いた画像処理。
【図17A】図15のパネルAにおけるゲルスポットについての形態の評価を示すグラフである。
【図17B】図15のパネルAにおけるゲルスポットについての形態の評価を示すグラフである。
【図18】図18AはプロトタイプMBSAシステムおよびAuroraイメージャーによるS.pyogenesの検出を示す写真である。図18BはプロトタイプMBSAシステムおよびAkonniイメージャーによるS.pyogenesの検出を示す写真である。
【図19】図19AはプロトタイプMBSAシステムおよび図11Aに示す撮像手法によるB.anthracisの検出を示す写真である。図19Bは図19Aに用いられるマイクロアレイのアレイマップである。
【図20】ビーズミキサーを有する一体型カートリッジを用いて抽出したS.pyogenes DNAのPCRの結果を示す図である。ミキサー1およびミキサー2:ビーズミキサーを有する一体型カートリッジを用いて2つの独立した実験において抽出したS.pyogenes DNA。ボルテックス:標準的なボルテキシング法を用いて抽出したS.pyogenes DNA。NTC:陰性対照。
【図21A】6重PCR生成物についてのマイクロアレイの結果を示す。左上パネルは、矢印が多重PCRにおいて生成された6つのPCR産物を示すマイクロアレイ画像である。右上パネルはマイクロアレイマップである。下のパネルは、異なる3つのアニーリング温度の下で生成されたPCR産物のプローブ番号/プライマー識別子/蛍光シグナル強度を示す。
【図21B】カートリッジ精製した血液DNAのリアルタイムPCR分析を示す図である。
【図22】PIDポンプおよびヒーター制御のサーモサイクリングプロフィールを示す。線Aは高温ゾーンの温度を示し、線Bは低温ゾーンを示し、線Cは嚢に挟まれた熱電対の温度を示し、かつ線Dは嚢に流入する直前の作業液状物の温度を示す。
【図23】デュアルファンクション一体型カートリッジの実施形態を示す図である。
【図24】完全なMBSAシステムの実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本記述は、本発明の文面による記述の一部と見なすべき付属の図面と関連付けて読まれることを意図している。図面は必ずしも縮尺を定める必要がなく、かつ明確性および簡略性を図るために本発明の一定の特徴が縮尺において誇張されるかまたは幾分模式的な形態で示されることもある。記述において、「前方」、「後方」、「上へ」、「下へ」、「最上部」、「底部」などの相対的な用語およびその派生語は、そのときに記述されるかまたは議論されている図面において示される方向を指すと解釈すべきである。これらの相対的な用語は記載の簡便性を目的としており、かつ通常は具体的な方向を要求することを意図していない。「連結される」および「着接される」などの接続、着接などに関連する用語は、特に説明的に記述されない限り、構造物が互いに直接的または介在構造を介して間接的に固定または着接される関係、および両者が可動性または剛直性の着接または関係を指す。
【0008】
本発明を実施するための形態を記述する際には、明確性を目的として具体的な用語を用いる。しかし、本発明はそのように選択される具体的な用語に限定されることを意図していない。各具体的要素が、同様の目的を遂行するために同様の様式で作動する全ての技術的等価物を含むことを理解すべきである。
【0009】
サンプルの処理および分析を目的とした一体型カートリッジが開示される。一体型カートリッジはサンプル調製チャンバー、サンプル精製チャンバーおよび脱着式サンプル分析ユニットを含む。サンプル調製チャンバーは、サンプル入口およびサンプル出口を有し、かつサンプル精製チャンバーと流動的に連絡する。サンプル精製チャンバーは、目的分子と特異的に結合する抽出フィルターを含む。脱着式サンプル分析ユニットは、マイクロアレイを含むサンプル分析チャンバーを少なくとも1つ含む。
【0010】
図1Aは一体型カートリッジの1つの実施形態を示す。一体型カートリッジは、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドなどの生体分子の抽出、および同カートリッジの内におけるその後の生体分子分析を可能とする。この実施形態においては、一体型カートリッジ100はカートリッジ本体1およびサンプル分析ユニット2を含む。カートリッジ本体1はサンプル調製チャンバー10、サンプル調製チャンバー10と流動的に連絡するサンプル精製チャンバー20、サンプル精製チャンバー20と流動的に連絡するサンプル溶離チャンバー30、サンプル精製チャンバー20と流動的に連絡する廃液チャンバー40、サンプル分析ユニット2がカートリッジ本体1と接続される時にサンプル分析ユニットと流動的に連絡する生成物廃棄チャンバー50、チャンバーを互いに接続する流動導管60、および一体型カートリッジ100がカートリッジベース(示さず)に接続されることを可能とする流動インターフェース70を含む。1つの実施形態においては、サンプル分析ユニット2はカートリッジ本体1の一部分である。他の実施形態においては、サンプル分析ユニット2はカートリッジ本体1から脱着可能である。図1Bは、各チャンバーにおける流動物の流動を制御するオンボードバルブ80を有する同カートリッジ100を示す模式図である。
【0011】
サンプル調製チャンバー10はチャンバーの上部にサンプル入口11およびチャンバーの下部にサンプル出口12を有する。図1Aおよび1Bに示す実施形態においては、サンプル入口11はサンプル調製チャンバー10の最上部に位置し、かつサンプル出口12はサンプル調製チャンバー10の底部に位置する。1つの実施形態においては、サンプル入口11はドームバルブである。ポンプと接続する時、サンプル出口12は空気入口の役割も果たす。サンプル調製チャンバーの内部におけるサンプル混合は、サンプル出口12より空気または不活性ガス(例:窒素)などの気体をポンプによりサンプル調製チャンバー10に流すことによって達成してもよい。気体はチャンバー10の底部から最上部まで移動し、かつ処理中のサンプルを混合する気泡を形成する。
【0012】
他の実施形態においては、サンプル調製チャンバー10でサンプル/試薬混合物を均一に加熱する手段を提供するために気体を加熱する。
【0013】
サンプル精製チャンバー20は1つの分析物と特異的に結合する抽出フィルター21を含む。分析物の例はポリヌクレオチド、ポリペプチド、脂質および多糖類を含むが、これに限定されない。1つの実施形態においては、抽出フィルターはDNAと特異的に結合するシリカ抽出フィルターである。他の実施形態においては、抽出フィルターはタンパク質と特異的に結合する多孔質材料である。1つの実施形態においては、抽出フィルター21は、カートリッジ本体1より容易に脱着しかつ新たなサンプル精製ユニット22に置換することのできる置換可能なサンプル精製ユニット22の内部に位置する。サンプル精製ユニット22は入口および出口を有するハウジング、および分析物と特異的に結合する抽出フィルター21を含む。1つの実施形態においては、サンプル精製ユニット22は、ピペットチップの形態にある。好ましい実施形態においては、ピペットチップはサンプル精製チャンバー20の領域内に嵌合するよう寸法取りされる。他の好ましい実施形態においては、抽出フィルター21は、いずれもがその全文を本明細書に参照文献として援用する米国特許出願番号第11/933,113号および第12/213,942号に記載されたガラスフリットである。
【0014】
溶離チャンバー30は、カートリッジ本体に着接される時に、サンプル精製チャンバー20およびサンプル分析ユニット2の両者に接続される。一定の実施形態においては、溶離チャンバー30は一体型カートリッジより排除され、かつサンプル精製チャンバー20はサンプル分析ユニット2に直接接続される。
【0015】
一体型カートリッジ100は、図1Aおよび1Bに示すように直立位置で作動するよう設計される。サンプル調製チャンバーおよびサンプル精製チャンバーは気泡が最上部まで上昇することを可能とするために十分な直径を有するよう設計される。
【0016】
サンプル分析ユニット2は、サンプル分析を目的としたチャンバーを1つまたはそれ以上含んでもよい。1つの実施形態においては、サンプル分析ユニット2は分析物の分析を目的としたマイクロアレイ4を含むマイクロアレイチャンバー3を含む。マイクロアレイ4は任意の種類のマイクロアレイとすることができる。1つの実施形態においては、マイクロアレイ4はDNAアレイである。他の実施形態においては、マイクロアレイ4はタンパク質またはペプチドアレイである。他の実施形態においては、マイクロアレイは、その全文を参照文献として本明細書に援用する米国特許第5,741,700号、第5,770,721号、第5,981,734号および第6,656,725号および米国特許出願番号第10/068,474号、第11/425,667号および第60/793,176号に記載されるゲルエレメントアレイである。さらに他の実施形態においては、マイクロアレイ4は抗体アレイである。
【0017】
1つの実施形態においては、マイクロアレイチャンバー3はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)またはアレイ化プライマー伸長(APEX)などの増幅反応のための反応チャンバーの役割も果たす。
【0018】
他の実施形態においては、サンプル分析ユニット2は増幅チャンバー5をさらに含む。1つの実施形態においては、増幅チャンバー5は、繰り返し加熱および冷却して増幅チャンバー5の内部でDNA標的を増幅することのできるPCRチャンバーである。
【0019】
サンプル分析ユニット2および/またはカートリッジ本体1は、サーモサイクリングに耐えることができ、かつエタノールなどの溶媒に影響されない材料より作製される。カートリッジ本体は機械切削または射出成形することができる。
【0020】
1つの実施形態においては、マイクロアレイチャンバー3および/または増幅チャンバー5は親水性内面を有する。好ましい実施形態においては、マイクロアレイチャンバー3および/または増幅チャンバー5は、その全文を本明細書に参照文献として援用する米国特許出願番号第12/149,865号に記載の親水性フローセルである。
【0021】
作動中、カートリッジ100は流動ドッキングステーションに挿入される。1つの実施形態においては、流動ドッキングステーションは、カートリッジ上でルアー作動バルブを作動させるルアーテーパー突起を介してカートリッジ100と掛合する。細胞懸濁液などのサンプルを、サンプル入口11を経て一体型カートリッジ100のサンプル調製チャンバー10に装填する。サンプル調製チャンバー10に細胞溶解バッファーを添加し、さらにサンプル調製チャンバー10の底部から最上部まで移動する気泡によってサンプルと混合する。気泡はエアーポンプからの調節気流によって制御する。この空気は、高温でのインキュベーションを必要とするプロトコルのために加熱してもよい。次に、混合サンプルを、目的の分析物と特異的に結合する抽出フィルター21を収容するサンプル精製チャンバー20に導入する。サンプルは抽出フィルター21を通過し、目的の分析物が抽出フィルター21と結合することを可能とする。一定の実施形態においては、サンプルを抽出フィルター21の前後に多数回循環させて分析物の結合効率を向上させる。次に、未結合サンプルを、オンボードカートリッジピンバルブ80および流動導管60を経て廃液チャンバー40に誘導する。廃液をカートリッジに残すと次のサンプルによる汚染が防止される。
【0022】
抽出フィルター21を洗浄バッファーで1回またはそれ以上洗う。使用した洗浄バッファーを、オンボードカートリッジバルブ80および流動導管60を経て廃液チャンバー40に誘導する。1つの実施形態においては、洗浄バッファーはエタノールベースの洗浄バッファーでありかつ抽出フィルター21を通して5回循環させる。次に、溶離バッファーを、抽出フィルター21を経てサンプル精製チャンバー20に導入する。溶離した分析物を溶離チャンバー30に誘導し、溶離物中の気泡を除去する。次に、溶離した分析物は、サンプル分析ユニット内で次のサンプル分析に用いる。また溶離した分析物の一部を他の種類の分析のために取出してもよい。1つの実施形態においては、溶離したDNAサンプルを増幅チャンバー5に誘導してPCR増幅する。増幅チャンバー5における温度変化は、たとえば、その全文が本明細書に参照文献として援用される、米国特許出願番号第11/843,843号および第12/232,669号に記載されるところの、2つの温度の流体を増幅チャンバー5と密着する柔軟性嚢内で往復させることにより達成される。オンボードカートリッジバルブ80は、温度制御レザバーの間で切替えを行って迅速な温度変化を提供する。増幅生成物は、マイクロアレイチャンバー内に誘導されてマイクロアレイにハイブリダイズされる。
【0023】
(細胞溶解ビーズを有する一体型カートリッジ)
一定の実施形態においては、サンプル調製チャンバー10は細胞サンプルを溶解するためのサンプル溶解手段をさらに含む。図2に示す実施形態においては、サンプル調製チャンバー10は多数の細胞溶解ビーズ13および磁石15を有する磁気撹拌子14を収容する。無傷の細胞の懸濁液をサンプル調製チャンバー10に加え、さらにサンプル調製チャンバー10に回転磁場を適用し、細胞を溶解するのに十分な回転速度で磁気撹拌子14を回転させる。
【0024】
本明細書で用いるところの用語「細胞」は真核細胞、原核細胞およびその構成要素または断片を指す。用語「細胞」は寄生虫、細菌、細菌芽胞、真菌、ウイルス粒子、さらには多細胞生物、組織およびその断片などの細胞凝集物を含む。用語「細胞懸濁液」は、細胞が液状培地中に懸濁されることを特徴とする細胞および液状培地の混合物を指す。好ましくは、細胞は磁気撹拌子の動きを妨害するほど濃すぎないかまたは粘稠すぎない濃度で懸濁される。
【0025】
一定の実施形態においては、真核細胞または原核細胞は1×10〜1×10細胞/mLの濃度範囲で懸濁される。他の実施形態においては、真核細胞または原核細胞は1×10〜1×10細胞/mLの濃度範囲で懸濁される。他の実施形態においては、ウイルス粒子は1×10〜1×1013細胞/mLの濃度範囲で懸濁される。さらに他の実施形態においては、ウイルス粒子は1×10〜1×1011細胞/mLの濃度範囲で懸濁される。
【0026】
液状培地は等張、低張または高張とすることができる。一部の実施形態においては、液状培地は水性である。一定の実施形態においては、液状培地はバッファーおよび/または少なくとも1つの塩または塩の組合せを含有する。一部の実施形態においては、液状培地のpHの範囲は約5〜約8、約6〜8、または約6.5〜約8.5である。所望のpHを達成するために多様なpHバッファーを用いてよい。適切なバッファーはTris、MES、Bis−Tris、ADA、ACES、PIPES、MOPSO、Bis−Trisプロパン、BES、MOPS、TES、HEPES、DIPSO、MOBS、TAPSO、HEPPSO、POPSO、TEA、HEPPS、Tricine、Gly−Gly、Bicine、およびリン酸バッファー(例:とりわけリン酸ナトリウムまたはリン酸ナトリウムカリウムなど)を含むが、これに限定されない。液状培地は約10mM〜約100mMのバッファー、約25mM〜約75mMのバッファー、またはとりわけ約40mM〜約60mMのバッファーを含んでもよい。液状培地に用いるバッファーの種類および量は用途毎に変化させることができる。一部の実施形態においては、液状培地は、約50mMのTrisバッファーを用いて達成することのできる約7.4のpHを有する。一部の実施形態においては、液状培地は水である。
【0027】
細胞溶解ビーズは、溶解する細胞の硬度を上回る硬度を有するあらゆる粒子状またはビーズ状材料とすることができる。細胞溶解ビーズはプラスチック、ガラス、セラミックス、または非磁性金属ビーズなどの他の任意の非磁性材料より作製してよい。1つの実施形態においては、細胞溶解ビーズは1つの軸について回転対称である(例:球状、円形、広楕円形、楕円形、卵形、および水滴形粒子など)。他の実施形態においては、細胞溶解ビーズは多面体形状を有する。他の実施形態においては、細胞溶解ビーズは不規則な形状の粒子である。さらに他の実施形態においては、細胞溶解ビーズは突起を有する粒子である。
【0028】
1つの実施形態においては、細胞溶解ビーズは10〜1,000μmの範囲の直径を有する。他の実施形態においては、細胞溶解ビーズは20〜400μmの範囲の直径を有する。さらに他の実施形態においては、細胞溶解ビーズは50〜200μmの範囲の直径を有する。
【0029】
磁気撹拌子はあらゆる形状のものとすることができ、かつ容器に適合する寸法を有する。換言すれば、磁気撹拌子は容器内に留置しかつ容器内で回転または攪拌するために十分小さくなければならない。所与の容器に対して適切なサイズの磁気撹拌子を選択することは当業者の知識の範囲内である。磁気撹拌子は棒状、円柱状、桿状、十字型、V字型、三角形、長方形または円盤形状撹拌子とすることができる。1つの実施形態においては、磁気撹拌子は長方形の形状を有する。他の実施形態においては、磁気撹拌子は二又音叉型を有する。さらに他の実施形態においては、磁気撹拌子はV字型を有する。一部の実施形態においては、磁気撹拌子はプラスチック、ガラスまたはポーセリンなどの化学的に不活性な材料によりコーティングされる。
【0030】
1つの実施形態においては、細胞溶解ビーズ13および/または磁気撹拌子14をサンプル調製チャンバー10内に事前包装する。他の実施形態においては、細胞溶解ビーズ13および/または磁気撹拌子14を、容易にサンプル調製チャンバー10内に留置しかつ細胞溶解後に廃棄することのできる脱着式サンプル溶解ユニット内に事前包装する。さらに他の実施形態においては、細胞溶解ビーズ13および/または磁気撹拌子14は、細胞懸濁液と共にサンプル調製チャンバー10内に加えられる。細胞溶解ビーズ13、磁気撹拌子14および細胞懸濁液は、任意の順序でサンプル調製チャンバー10に留置してよい。1つの実施形態においては、始めに細胞懸濁液、さらにその後細胞溶解ビーズまたは磁気撹拌子のいずれかをサンプル調製チャンバー10内に装填する。他の実施形態においては、始めに硬質ビーズおよび/または磁気撹拌子、その後に細胞懸濁液をサンプル調製チャンバー10内に留置する。
【0031】
次に、カートリッジを磁気攪拌器のごく近傍に載置する。容器内の細胞を溶解するために十分な回転速度で磁気撹拌子により細胞懸濁液を攪拌する。最適な攪拌速度および時間は溶解する細胞、ウイルスまたは組織に基づいて経験的に決定することができる。適切な回転速度は用途に依存し、かつ当業者が決定することができる。一般的に言って、細胞を溶解するために十分な回転速度は、細胞の種類、細胞懸濁液の濃度、磁気撹拌子のサイズおよび形状、硬質ビーズの量、サイズ、形状および硬度、ならびに容器のサイズ、形状および内面の粗さなどの因子によって決定される。一部の実施形態においては、試験管またはエッペンドルフチューブの形態の容器を標準的な実験用磁気攪拌プレート上のラックに載置し、さらに最高速度設定で攪拌する。
【0032】
一定の実施形態においては、特定の種類の細胞の溶解は、攪拌ステップ前に細胞懸濁液に添加剤を加えることにより促進することができる。添加剤の例は酵素、洗剤、界面活性剤、および塩基および酸などの他の薬品を含む。アルカリ性条件(例:10mM NaOHなど)によって一定の種類の細胞に対する溶解効率が高まりうることが確認されている。しかし、添加剤はサンプル分析過程の下流の反応を妨害してはならないことに留意すべきである。細胞懸濁液は、攪拌中に加熱して溶解効率を向上させてもよい。
【0033】
ビーズ/磁気攪拌器溶解法およびシステムの1つの実施形態は、その全文が本明細書に参照文献として援用される米国仮特許出願第61/272,396号に記載されている。
【0034】
ビーズ/磁気攪拌器法の他、サンプル調製チャンバー10内の細胞はビーズビーティング、ボルテキシング、超音波処理および化学的溶解などの他の方法によって溶解してもよい。
【0035】
微量流動機器に共通して付随する問題を回避するために、一体型カートリッジは以下の特徴を1つまたはそれ以上含むことがある(1)一体型カートリッジ内の微量流動導管は、逆圧を低下させるために十分大きく(直径0.2〜1mm、好ましくは0.5mm)、かつ0.1mmを下回る微量流動形状寸法を作製する際には高度に有用となりうる、再現性のある射出成形された形体を可能とする。(2)微量流動導管の内面は、微量流動導管内部の気泡トラッピングを低下させるために、親水性フィルムによって完全に被覆されるか、部分的に被覆されるか、またはコーティングされる。(3)一体型カートリッジ内の反応チャンバー(すなわちサンプル調製チャンバー、サンプル精製チャンバーおよびサンプル溶離チャンバー)は、水と比較した空気の密度の差によってチャンバーの最上部まで気泡を確実に上昇させるために、直立型タワー形状に設計される。またタワー設計は、タワーの底部からサンプルに空気を流入させることによるタワー内でのサンプル混合も可能とする。液状物は底部から最上部まで上昇する気泡によって激しく混合される。(5)一体型カートリッジの抽出フィルターは、逆圧を低下させるために大きな空隙率を有する。(6)一体型カートリッジにおけるオンボードカートリッジバルブは流路を遮断し、かつ液状物が望ましくない経路に流れることを防止する。(7)カートリッジは、液状物がディスポーザブルカートリッジの精密ポンプおよび選択バルブによって制御されるよう設計される。小さな気泡が試薬の比率の大きなばらつきを引き起こすことを防止するため、液状物の計量は10μLを上回る体積で実施する。
【0036】
親水性被覆またはコーティングに用いることのできる親水性材料の例は、ポリ(N−ビニルラクタム)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリアクリルアミド、セルロース誘導体、メチルセルロース、ポリ酸無水物、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、アルキルフェノールエトキシレート、ポリオールモノエステル複合体、オレイン酸ポリオキシエチレンエステル、オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンエステル、およびソルビタン脂肪酸エステルなどの親水性ポリマー;無機酸化物、金、ゼオライト、およびダイヤモンド状炭素などの無機親水性材料;およびTriton X−100、Tween、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウリル硫酸アンモニウム、アルキル硫酸塩、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)、アルキルベンゼンスルホン酸塩、石けん、脂肪酸塩、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、別名ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、アルキルメチルアンモニウム塩、セチルピリジニウムクロリド(CPC)、ポリエトキシ化獣脂アミン(POEA)、塩化ベンザルコニウム(BAC)、塩化ベンゼトニウム(BZT)、ドデシルベタイン、ドデシルジメチルアミンオキシド、コカミドプロピルベタイン、ココヤシ両性グリシネートアルキルポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド)とポリ(プロピレンオキシド)のコポリマー(商品名PoloxamersまたはPoloxamines)、アルキルポリグルコシド、脂肪アルコール、コカミドMEA、コカミドDEA、コカミドTEAなどの界面活性剤を含むが、これに限定されない。界面活性剤は、ポリウレタンおよびエポキシドなどの反応ポリマーと混合して親水性コーティングとなることができる。
【0037】
(簡易型一体型カートリッジ)
サンプルの処理を目的とした簡易型カートリッジも開示される。カートリッジは、入口および出口を有するサンプル調製チャンバー、ならびに入口および出口を有するサンプル精製チャンバーを含む。サンプル調製チャンバーは、その中に排置された磁気撹拌子および多数の細胞溶解ビーズを含む。サンプル精製チャンバーは抽出フィルターを収容し、かつサンプル調製チャンバーと流動的に連絡する。
【0038】
1つの実施形態においては、サンプル調製チャンバー内に容易に挿入またはこれより取出することのできる容器内に、磁気撹拌子および多数の細胞溶解ビーズを事前包装し、かつサンプル精製チャンバー内に容易に挿入またはこれより取出することのできる容器内に抽出フィルターを事前包装する。
【0039】
(デュアルファンクション一体型カートリッジ)
タンパク質精製能力および核酸精製能力を共に有するデュアルファンクションカートリッジも開示される。簡単に述べると、デュアルファンクションカートリッジは核酸精製モジュールおよびタンパク質精製モジュールを収容する。各モジュールはサンプル精製チャンバーおよびサンプル溶離チャンバーを収容する。1つの実施形態においては、モジュールは単一のサンプル調製チャンバーおよび/または単一の廃液チャンバーを共有する。他の実施形態においては、モジュールは単一のサンプル調製チャンバーを共有するが、各モジュールは専用の廃液チャンバーを収容する。さらに他の実施形態においては、各モジュールは専用のサンプル調製チャンバーおよび廃液チャンバーを有する。適切なカートリッジベース設定は、核酸およびタンパク質の同時精製または核酸およびタンパク質の連続精製を可能とするよう構築することができる。
【0040】
1つの実施形態においては、サンプルは連続的な様式で処理される。図3Aに示すように、サンプルにはまず核酸精製の処理を行う。核酸廃液チャンバー内の核酸を除去されたサンプルを第2の精製チャンバーに吸引して(例:TruTip)タンパク質精製を実施し、次に第2の廃液チャンバーに送液する。試薬は、milliGATポンプなどの二方向ポンプで駆動する。タンパク質洗浄バッファーをバッファーレザバー(示さず)より第2の精製チャンバーに直接添加してもよい。
【0041】
他の実施形態においては、一体型カートリッジは第2の精製チャンバー上のカートリッジバルブがシリンジ型ポンプの役割をとして働くよう変更される。図3Bに示すように、単一の廃液チャンバーのみが必要とされる。具体的には、第2の精製チャンバー上のカートリッジバルブと接続するレザバーポケットを有するようカートリッジを変更し(図3Bに「シリンジポンプ」として示す)、核酸廃液チャンバー内の液状物が、「シリンジポンプ」が「抜取」状態である間は(シリンジの外筒を充填するのと同様に)レザバーポケットを充填し、かつ「シリンジポンプ」が「送液」状態である間は第2の精製チャンバーに流入することができるようにする。レザバーポケットのサイズは、一体型カートリッジのサイズおよび機能に応じて変化させてよい。一定の実施形態においては、レザバーは0.01〜10mL、0.2〜5mL、0.5〜3mL、または1〜5mLの容積を有する。レザバーの形状および正確な位置は、一体型カートリッジの全体的な設計に基づいて調節してよい。核酸廃液チャンバーと第2の精製チャンバーの間にチェックバルブを設置し、液状物の一方向への流動を確保する。第2の精製チャンバーにおける洗浄ステップは、カートリッジバルブを閉じ、核酸廃液チャンバーのベント(示さず)を開き、さらにバッファーレザバーから「シリンジポンプ」を経て第2の精製チャンバー内にタンパク質洗浄バッファーを連続的に流入させることにより達成することができる。
【0042】
さらに他の実施形態においては、第2の精製チャンバーは、溶液を第2の精製チャンバー内のフリットを通過させて連続的に再循環させるギアポンプと着接される(図3C)。ギアポンプは二方向的に操作することができ、かつ核酸廃液チャンバーと第2の精製チャンバーの間のチェックバルブが不要である。タンパク質洗浄ステップは、カートリッジバルブを閉じ、核酸廃液チャンバーのベントを開き、さらにバッファーレザバーからギアポンプを経て第2の精製チャンバー内にタンパク質洗浄バッファーを連続的に流入させることにより達成してもよい。
【0043】
(マイクロアレイベースサンプル分析(MBSA)システム)
マイクロアレイベースサンプル分析(MBSA)システムも開示される。図4に示すように、MBSAシステム200の実施形態はカートリッジホルダー210、流動制御サブシステム220、光学サブシステム230、制御ソフトウェア240および、任意選択で、サーモサイクラー250を含む。
【0044】
カートリッジホルダー210は、流動マニホールド212を経て一体型カートリッジ100に接続されるよう設計される。またカートリッジホルダー210は、一体型カートリッジの多様なコンポーネントとMBSAシステムのサブシステムの間の相互作用を促進する位置に、一体型カットリッジ100を維持する。たとえば、適切に着接されたカートリッジは、カートリッジのPCRチャンバー5をサーモサイクラー250の加熱エレメント間に配置し、かつ光学サブシステムによるマイクロアレイ4の光学的インタロゲーションを可能とする。
【0045】
流動制御サブシステム220はMBSAシステム200内の流動を制御する。サブシステムは複数の流動物容器、ポンプ、バルブおよび配管を含む。流動制御サブシステム220は、流動マニホールド212を経て一体型カートリッジ100に直接接続される。
【0046】
光学サブシステム230は、サンプルのハイブリダイゼーション後にサンプル分析ユニット2のマイクロアレイ4の画像をキャプチャーするよう設計される。一定の実施形態においては、光学サブシステムはマイクロアレイ上の低レベル蛍光検出を目的として特別に設計される。1つの実施形態においては、光学サブシステムは、厳密に焦点を合わせたレーザービームにより物質表面をインタロゲートするプロセスにおいて、ピクセル毎にマイクロアレイ画像を取得する共焦点または準共焦点レーザースキャナーを用いる。レーザースキャナーは、空間的に均一な感度、広いダイナミックレンジ、および焦点外の迷光の効率的な除去という利点を提供する。しかし、レーザースキャナーは非常に損傷しやすくかつ高価な機器である。
【0047】
他の実施形態においては、光学サブシステムは、全てのマイクロアレイエレメント(フィーチャー)を同時に照明し、さらにCCDカメラなどのマルチエレメント光検出器が、全て同時に、または後でスティッチングする数個の連続した部分フレームのいずれかによってマイクロアレイ画像を取得する、フラッドイルミネーションによる撮像機器を用いる。レーザースキャナーと比較して、CCDベースの撮像機器は設計がより単純でかつコストが低い。CCDベースの撮像機器は、中程度の複雑さのマイクロアレイ(すなわち数百またはそれ以下のアレイエレメントを有する)に依拠する費用に敏感な用途におけるスタンドアローンおよびビルトインリーダーの両者にとって魅力的な選択肢である。市販の機器は、典型的には冷却CCDカメラを使用し、かつ励起スキームの低効率のバランスをある程度取る上で有用な集光能力の高い高価な特注設計対物レンズを用いる。
【0048】
他の実施形態においては、光学サブシステムは非冷却CCDカメラを用いる撮像機器を含む。非冷却カメラは典型的には冷却モデルと比較して著しく高い暗電流を有するものの、光学サブシステムは、(1)励起強度を高めるか、または(2)高い集光効率を有する対物レンズを用いるか、または(3)上記の2つの手法を組み合わせることにより、数秒を超える露出を用いることなく必要とされる感度を提供することも可能であろう。光源は、ハロゲン化金属または水銀球などのような従来の光源、レーザーベースシステム、または高輝度LEDとすることができる。
【0049】
他の実施形態においては、光学サブシステムはマイクロアレイリーダー操作の補足的撮像モードとして蛍光非依存的撮像(FII)モードを有する。FIIモードにより、アレイエレメントをその蛍光レベルにかかわらずに撮像することができる。
【0050】
実践的なFIIの実装は、マイクロアレイスキャナーおよびフラッド照明を用いるイメージャーのいずれにおいても困難である。撮像するマイクロアレイが主流の平板型アレイである場合は、マイクロアレイ基板上に固定された生体分子プローブの層が薄すぎ、スライド表面のプロービングに用いる光線の強度に著しい変化が起こらないので、問題は特に困難である。
【0051】
1つの実施形態においては、本発明は不透明(黒色)プラスチック基板上にプリントされたゲルアレイの撮像を目的とした反射光の暗視野照明を用いる。他の実施形態においては、本発明は透明(ガラス)スライド上にプリントされたゲルアレイの撮像を目的とした透過光の傾斜照明を用いる。いずれの場合も、FIIに用いられる光源はリーダーの発光フィルターの透過バンド内で発光する任意の光源とすることが可能である。
【0052】
制御ソフトウェア240は、流動制御サブシステム220、光学サブシステム230、サーモサイクラー250および任意の追加的サブシステムを含めた、MBSAシステムの全てのコンポーネントを制御するよう設計される。制御ソフトウェア240は、MBSAシステムに接続されかつMBSAシステムにユーザーインターフェースを提供する任意のコンピュータにインストールしてよい。1つの実施形態においては、MBSAシステムはプロセッサ、メモリ、およびユーザーインターフェースを含むコントローラを含む。
【0053】
サーモサイクラー250は、一体型カートリッジ100のPCRチャンバー5に加熱および冷却を提供するよう設計される。1つの実施形態においては、サーモサイクラー250は、そのいずれもが本明細書に参照文献として援用される米国特許出願番号第11/843,843号および第12/232,669号に記載の嚢状サーモサイクラーである。
【0054】
他の実施形態においては、MBSAシステムはマイクロアレイチャンバー3用の恒温加熱システムをさらに含む。1つの実施形態においては、恒温加熱システムは空気加熱ユニット、および加熱された空気をノズルを経てマイクロアレイチャンバーの後面に送風する送風器を含む。温度制御は、ノズルまたはマイクロアレイチャンバー近傍の熱電対によって達成される。
【0055】
他の実施形態においては、マイクロアレイチャンバーを反対側から光学システムによって撮像できるよう、マイクロアレイチャンバーは片側の嚢によって加熱される。この実施形態によって、他の文献に報告されているように(Khodakov et al.,BioTechniques,(2008)44:241−248)、アレイ内のゲルエレメントのリアルタイムPCRモニタリングが可能となるであろう。
【0056】
他の実施形態においては、MBSAシステムは細胞溶解サブシステムをさらに含む。1つの実施形態においては、細胞溶解サブシステムは回転する磁場を生成する磁気攪拌器を含む。他の実施形態においては、細胞溶解サブシステムは一体型カートリッジに対して超音波処理または振動を生成し、細胞溶解を促進する。
【実施例1】
【0057】
(マイクロアレイベースサンプル分析(MBSA)システムのコンポーネント)
(A.流動サブシステム)
流動サブシステムは3種類の機能的コンポーネント:二方向微量流動ポンプ、選択バルブ、およびカートリッジ「ピン」バルブよりなる。図5は、一体型カートリッジに接続されたポンプおよび選択バルブを示す流動サブシステムの模式図である。流動配置は、Global FIAより入手可能である二方向ポンプおよび選択バルブの組合せを用いる。図5に示すように、流動サブシステムは流動マニホールド90を介して一体型カートリッジと接続され、かつ一体型カートリッジ100の外部の貯蔵容器に様々な試薬を保持する。
【0058】
図6Aは流動マニホールド90の1つの実施形態を示す。この実施形態においては、マニホールド90は2つの流動フィッティング91が各カートリッジポート72に接続することを可能とする。マニホールドはルアーテーパーを伴う突起を8つ有する。これらの突起は流動フィッティングからカートリッジポートまでの流路を提供する流動導管を有する。この実施形態においては、流動マニホールド90は、一体型カートリッジ100が流動マニホールド90上に存在する時に、一体型カートリッジ100のサンプル分析ユニット2の増幅チャンバー5が2つのサーモサイクラー嚢92の間に配置されるよう、米国特許出願番号第11/843,843号および第12/232,669号に記載されるサーモサイクラー嚢などの、一対のサーモサイクラー嚢を支持するように構成されたホルダー96を含む。図6Bは、流動マニホールド90を一体型カートリッジ100およびサーモサイクラー嚢92と共に示す模式図である。
【0059】
一体型カートリッジ100内の液状物の流れはオンボードカートリッジバルブ80によっても制御される。図7は、一体型カートリッジ100の1つの実施形態におけるオンボード微量流動カートリッジバルブ80の位置を示す。図8はバルブ80の1つの実施形態を示す。この実施形態においては、バルブ80は機械切削したプラスチック本体82、バネ84、内部Oリング86および外部Oリング88より作製され、所定の位置に螺合される。機械切削された部品は、コストを削減するために射出成形することもできる。他の実施形態においては、バルブはカートリッジ上での迅速かつ一定した挿入を目的としたバルブ位置合わせ取付具(示さず)をさらに含む。バルブは、所定の位置に螺合する代わりに、レーザー溶接、加熱頭付け、超音波溶接またはスナップ契合によってカートリッジ上に固定することができる。
【0060】
オンボードバルブ80はねじを回してバルブシャフトを押し込みまたは押し出すことによって手動開閉してもよい。代替的に、支援電子機器およびソフトウェアを有する自動リニアアクチュエーターパネルを実装し、必要とされるプロトコルに基づいてオンボードカートリッジバルブを電子的に制御してもよい。
【0061】
1つの実施形態においては、流動サブシステムは:一方はサンプル調整用でありもう一方はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)および/またはAPEX用である2基の二方向ポンプを含む。これらのポンプは担体溶液および選択バルブの中心に接続する。ポンプは、それらに付随する2種類の支持コイル:「レーストラック」効果による混合を提供する円形コイルおよびレーストラック効果を被る流線を交互に切り替えるスイッチバックコイルを有する。
【0062】
この実施形態において、流動サブシステムは、融通性を提供しかつサンプル調製物をPCR/APEX流動から分離する3基の10ポート選択バルブを含む。選択バルブのうち1基は、Akonni TruTipを埋め込んだカートリッジにサンプル調製試薬を分注する働きをし、他の1基はカートリッジにPCRおよびAPEXペレット再水和バッファーを分注し、かつ3基目はカートリッジ上のレザバーに対してベントするかまたは陽圧を適用する手段となる。選択バルブ毎のポートの個数を増加させることは、ハードウェアの複雑さを増すことなく器具毎のカートリッジ数を増加させる1つの様式である。
【0063】
カートリッジピンバルブは:(1)単一試薬供給ラインがカートリッジ上で複数のレザバーとして機能することを可能とする、および(2)通常であれば空気のコンプライアンスによって望ましくない経路に向かう液状物の動きを制御するという2つの目的に役立つ。微小リニアアクチュエーターは35N未満の力でカートリッジピンバルブを開閉する。
【0064】
小型のホルダーは、アクチュエーターをピンバルブのシャフトと同軸に剛直的に配置するよう設計および実装される。ホルダーの設計によって、アクチュエーターをピンバルブシャフトの軸に沿って回転させ、複数のアクチュエーターを所定の位置に密集させることが可能となる。この設計が必要であるのは、アクチュエーターの本体が軸から突出して準楕円形のプロフィールを呈しているからである(すなわちアクチュエーターは軸対称でない)。アクチュエーターはI−Beamに固定されて器具に剛直的に固定される。アクチュエーターのアームは第2のI−Beamの穴を貫通し、カートリッジの支持を提供する。この第2のI−Beamは、そこにスタンドオフを固定することを可能とするねじ穴の線形パターンを有する。スタンドオフは、カートリッジを貫通するボルトを受容するねじ穴も有する。ボルトは、カートリッジをx、yおよびzディメンションについて固定された位置に保つ。1つの実施形態においては、ピンバルブはねじによって固定される。他の実施形態においては、単一のアクチュエーターによって複数のピンバルブが始動する。
【0065】
(B.嚢状サーモサイクラーサブシステム)
嚢状サーモサイクラーサブシステムは、そのいずれもが本明細書に参照文献として援用される米国特許出願番号第11/843,843号および第12/232,669号に記載される。
【0066】
1つの実施形態においては、嚢状サーモサイクラーサブシステムは2基のポンプ、3基の3方向バルブ、3基のヒーター(変性フローループ用2基およびアニーリング/伸長フローループ用1基)、気泡トラップおよび再充填として働く2基のレザバー、1基のラジエーター、および互いに向かい合う2個の柔軟性嚢を有する1基の嚢状アセンブリよりなる。この実施形態においては、ポンプは流量の範囲が0.15〜2.00L/分であり、かつ82℃以下で作動する隔膜ポンプである。ポンプの温度をヒーターから保護するため、PVCフィッティングを用いてヒーターをポンプより断熱する。
【0067】
このシステムによる時間勾配は、加熱および冷却のいずれについても約10℃/秒である。この嚢状サーモサイクラーの反復の予備的性能評価を目的として、嚢状サーモサイクラーの嚢状アセンブリの嚢の間に挿入したCepheid Smart Cycler管(扁平反応管)、およびMJ Researchサーモサイクラーに挿入した標準的な0.2mL PCR管内でPCR反応を実施した。いずれのサーモサイクラーも同等レベルの産物を作製した。図9は脱着式サンプル分析ユニット2の1つの実施形態を示す。この実施形態においては、脱着式サンプル分析ユニット2は、マイクロアレイ23、入口ポート24および出口ポート25を有するアレイチャンバー22、ならびに入口ポート27および出口ポート28を伴うPCRチャンバー26を有するフローセルである。図6Bに示すように、フローセルを一体型カートリッジの片側に着接するので、PCRチャンバーは一体型カートリッジの側から流動マニホールドに着接したサーモサイクラーの嚢状加熱ユニットに達する。図10は、チューブベースフォーマットおよび嚢状サーモサイクラー上のCepheid Smart Cyclerチューブのいずれにおいても同等の識別を示す、嚢状サーモサイクラーを用いたフローセルPCRおよびこれに続くAPEXを示す。
【0068】
1つの実施形態においては、MSTAシステムは室温ハイブリダイゼーションを目的として設計される。他の実施形態においては、MSTAシステムはアレイチャンバーを加熱するための恒温加熱システムを含む。恒温制御は、気流チューブのノズルに熱電対を有するアレイチャンバーの後面に加熱した空気を送風することにより達成される。一定の実施形態においては、恒温加熱システムは20℃〜65℃、20℃〜75℃、20℃〜85℃または20℃〜95℃の範囲でアレイチャンバーの温度を維持することができる。
【0069】
(C.光学サブシステム)
図11Aは、光学サブシステムの1つの実施形態を示す模式図である。低コスト光学サブシステムは、比較的複雑度の低いアレイ(アレイエレメント数<50)を読み取ることを目的として開発される。リーダーのこのサブシステムにおいて用いられるCCDカメラは、解像度659×493ピクセルかつピクセルサイズ7.4×7.4μmの1/3”光学フォーマットの微小非冷却カメラ(例:ProsilicaモデルEC650)である。
【0070】
対物およびカメラレンズは、たとえばEdmund Optics part #NT47−732などの、いずれも同一のF/1.5の単一素子非球面レンズである。レンズは、有効焦点距離37.5mmを有する。画像システムの倍率が1と等しいため、物体平面のピクセルサイズはCCDセンサーのピクセルサイズと同じである(7.4μm)。
【0071】
有効視野(FOV)は直径約2mmであり、これはアレイピッチが300μmであるとの推定の下で最大50スポットを含むアレイを撮像するために十分である。FOVを制限する因子は、この過度に単純な光学設定に対して比較的高いと予測される像面湾曲である。
【0072】
光学設計の(1.5と低いf数によって確保される高い集光効率を有する対物レンズ以外の)他の特徴的性質は、15mW緑色(532nm)DPSSレーザーを用いた共軸照明スキーム、およびビーム送達のみならずビーム成形およびスペックルの抑制にも用いられるマルチモード光ファイバーである。
【0073】
ファイバーのマルチモード性により、ファイバー入力面におけるレーザービームのガウス型強度分布は、ファイバー出力においてはシルクハット型分布に変換される。コリメーティングレンズおよびビーム焦点レンズが共に作用し、ファイバー末端面の画像を対物レンズの物体平面に投射する。その結果、物体平面における強度分布はファイバー出力におけるものと同様である一方、照射スポットのサイズはファイバーコアの直径および2レンズ投射システムの拡大係数によって決定される。
【0074】
スペックルの抑制は、ファイバーに着接された微小振動モーターの支援によって達成される(図11A参照)。ファイバーを振動させることにより、異なるファイバーモード間の位相変異が迅速に変調され、スペックルパターンにおいて高周波数強度振動に変換される。後者は、100msと短い露出であっても画像を撮像するプロセスにおいて有効に平準化される。
【0075】
1つの実施形態においては、低コスト光学サブシステムはマイクロアレイをスキャンしかつ画像をスティッチングしてマイクロアレイの全体像を作製する。他の実施形態においては、リニアモーションシステムを用いて複数のカートリッジ上のアレイを連続的にスキャンする。
【0076】
図11Bは、共軸照明を用いて図11Aに記載の光学サブシステムで撮影した300μmピッチのCy3アレイの典型的画像を示す。
【0077】
図12Aは他の光学サブシステムの図である。この光学サブシステムのバージョンは、多くの診断的アッセイに十分である、フィーチャーの個数が200以下のアレイを撮像することを目的として開発された。視野の拡大は高度の異常補正を行う対物レンズを必要とする。よりfナンバーの高いレンズの使用も必要となる。上記の要件を満たす対物レンズの一例は、作動距離39mmかつ開口数0.234のLeicaの無限遠補正Planapo 2xレンズである。光学サブシステムの撮像光路における対物レンズおよびカメラレンズは、単純性のみを目的として単一素子レンズとして示すことに留意されたい。実際には、これらのレンズはいずれも無限共役比で作動する高度補正マルチ素子レンズであり、かつ互いに焦点距離が等しい。従って、レンズ系全体の拡大係数は1である。
【0078】
他の実施形態においては、ビーム焦点レンズの焦点距離を延長して物体表面における照明スポットを約8mmまで拡大した。そのように大きなスポット直径では、ビームの傾斜角によって生じる照明の非均一性の発生率は5%を上回らないことが、経験的に認められている。図12Bは、傾斜照明スキーム(図12A)を用いた光学サブシステムにより撮影した11x18 Cy3アレイの典型的画像を示す。上述のように、アレイピッチは300μmであり、かつアレイスポットの特性直径は約120μmである。
【0079】
図13Aは光学サブシステムの他の実施形態を示す。この実施形態においては、傾斜照明設計におけるレーザーは高輝度発光ダイオード(LED)に置き換えられる。示されるLED照明装置は、投射システム用のKoehler照明スキーム(その全文を本明細書に参照文献として援用するA.V.Arecchi,T.Messadi,and R.J.Koshel, Field Guide to Illumination, SPIE Press Book,Vol.FG11,2007年8月31日、ISBN:9780819467683)を実装し、かつ集光レンズとコンデンサーレンズの間に配置されたクリーンアップフィルターおよび励起光を傾斜角のある物体表面に誘導するビーム指向鏡を含む。フィルターは、DNA標識に用いた色素の発光スペクトルと重複するLED光のスペクトル成分を排除すること意図している(例:Cy3)。図13Aに示す実施形態は好ましいものであるものの、鏡を用いるビーム送達系は本発明の範囲および趣旨から離れることなく変更しうることは、当業者にとって明らかである。特に、液状光線ガイドまたはファイバー光学バンドルを光学縦列に導入し、遠隔光源からのビーム送達を促進することも可能である。
【0080】
他の実施形態においては、光学サブシステムはFII用の微小低出力LEDを含む。図13Bは、蛍光撮像も透過光の傾斜照明を用いたFIIも可能な光学縦列の実施形態を示す。図13Cは、蛍光撮像も反射光の暗視野照明を用いたFIIも可能な光学縦列の実施形態を示す。図13Cの光学縦列は、スライドホルダー(すなわち物質表面)の後ろに必要とされる空間がより少ない。図13Dは、平行光源の1つの例示的技術的実装を示す。用いられる発光器は、ピーク発光波長591nmの低輝度黄色LEDである。
【0081】
図14Aは、LED光源の平行ビームによる傾斜照明を用いて記録したAkkoni MRSAアッセイスライドの画像の1例を示す。図14Bは、図14Aにおけるアレイエレメントの正規化ピクセル強度プロフィールを示す。典型的には平行光源による傾斜照明を用いて最高コントラストの画像が得られたものの、傾斜照明を目的とした他の光学配置も可能である。そのようなスキームの一般的な要件は、異なる方位角間の非対称的照明強度分布である。FIIアレイ画像は、ImageJソフトウェア(http://rsbweb.nih.gov/ij/)の画像処理ツールなどの比較的単純な画像処理ツールを用いて、グリッド作製およびスポット形態分析を目的として処理することができる。図15は、ImageJソフトウェアで利用可能な互いに異なる方法によって処理したゲルアレイ画像を示す複合画像である。図16は、ImageJソフトウェアを用いたスポット形態の評価を示す複合図である。
【0082】
図17Aおよび17Bは、図15のパネルAにおけるゲルスポットについての形態の評価を示すグラフである。この試験において、平行ビームによる傾斜照明を用いたFII撮像により、アレイスポットの中心の検出、および相当な形態異常のある損傷スポットの特定のいずれも可能となった。データより、形態分析の感度を最高とするために、スポットは複合パラメータによって特徴付けする必要があることが示唆される。たとえば、スポット面積および最も適合する楕円のパラメータなど;
【0083】
しかし、アレイ画像QCはFII撮像モードのみに依拠することができず:FII画像において無害と思われるかもしれない一部の画像特性が、実際にはスポット蛍光強度測定に対して相当な干渉源となることもある(例:図16のパネルAおよびDで矢印表示された粒子)。
【実施例2】
【0084】
(一体型カートリッジおよびマイクロアレイベースサンプル分析システムによる試験サンプル中の細菌の検出)
MBSAシステムのための作業の順序は以下の通りである。ユーザーは一体型カートリッジにサンプルを導入する。次にシステムが以下の自動化ステップを実施する:サンプルを調製し、Bladder Thermocycler(商標)を用いてPCRを実施し、PCR産物をハイブリダイゼーションおよび/またはAPEX反応混合物と混合し、混合物をマイクロアレイチャンバーに移し、マイクロアレイとのハイブリダイゼーションを実施し、さらにマイクロアレイ画像を検出する。
【0085】
1つの実施形態においては、カートリッジ上でサンプルを調製するためのステップの順序は:サンプルをサンプルタワーに導入し、結合バッファーをサンプルタワーに導入し、空気を用いて混合し、サンプル混合物をTruTipタワーに移し、タワー間で交互に切換え、廃液タワーに送液し、洗浄バッファーをTruTipタワーに導入し、タワー間で交互に切換え、廃液タワーに送液し、溶離バッファーを導入し、さらに溶離タワーに送液する。
【0086】
PCR用のステップの順序は:PCR混合物を溶離タワーに加えるかまたは凍結乾燥試薬ペレットを溶離バッファーで再溶解した後サンプル処理し、フローセル上のPCRチャンバーに送液し、全てのカートリッジピンバルブを閉じ、さらにサーモサイクリングを開始する。
【0087】
APEX用のステップの順序は:PCRチャンバーをAPEXバッファーでフラッシングしさらにAPEXレザバーに加え、十分に混合し、アレイチャンバーにAPEX試薬を加え、65℃でインキュベートし、洗浄し、撮像する。
【0088】
1つの実験においては、2分間ボルテキシングすることによりオフラインで溶解させた10cfu/mL Streptococcus pyogenes 500μLを、一体型カートリッジのサンプルチャンバーに導入した。カートリッジを、カートリッジアダプター、サンプル調製および処理用流動制御サブシステム、PCR増幅用温度制御サブシステム、光学サブシステム、ならびに画像取得用データ取得ボードおよびPCを含むプロトタイプMBSAシステムに接続した。
【0089】
以下の手順は分析システムによって制御される。サンプル混合チャンバーに結合バッファーを添加し、チャンバーの底部からチャンバーの最上部まで移動する気泡によってサンプルと混合した。気泡は計器ポンプからの調節気流によって制御した。次に、混合サンプルを、DNAと特異的に結合するシリカ抽出フィルターを含むサンプル精製チャンバーに導入し、さらにマトリクスを通過して前後に5回循環させ、結合効率を高めた。次に、オンボードカートリッジバルブにより未結合材料をカートリッジの廃液チャンバーに誘導した。廃液をカートリッジに残すことで、次のサンプルによる汚染が防止される。続いて、洗浄バッファーをTruTipタワーとサンプル精製タワーの間で交互に切換え、その後廃液チャンバーに誘導した。次に、溶離体積120μLを分析システムからTruTipタワーを経てカートリッジに導入し、次に気泡を除去する溶離チャンバーに誘導した。
【0090】
溶離したDNAより10uL分取を取出し、Roche 480リアルタイムPCR Light Cycler上で処理した。溶離チャンバーより第2の溶離DNA分取も取出し、代表的なフローセル内で「オフライン」で増幅した。次に、PCRマスターミックスを溶離チャンバーに導入した。溶離チャンバーの底部から気泡を発生させることによって、溶離したサンプルを混合した。次に、カートリッジが流動ドッキングステーションに挿入される時サーモサイクラーの2個の適合型嚢の間に配置される一体型カートリッジに着接したフローセルのPCRチャンバーに、オンボードバルブを経て、混合サンプルを誘導した。適合型嚢の使用による製造上の利点は、適合型嚢は膨張してカートリッジフローセルと密着するので、設計を変更することなく幅広い範囲のフローセルの厚さおよび位置の多様性に順応することができることである。Bladder Thermocycler(商標)法を用いて2つの温度の液体を嚢を経て往復させることにより、40サイクルの2温度PCRを実施した。この方法は、加熱された液状物をPCRチャンバーと密着する柔軟性膜(「嚢」)に流入させることに基づいている。バルブを温度制御レザバーの間で切換え、迅速な温度変化を提供する。このサーモサイクリング手法の結果、加熱および冷却をPeltiersに依拠する従来のスライドサーモサイクラーよりも約4倍早いPCRプロトコルがもたらされる。
【0091】
増幅後、PCR生成物をオンボードカートリッジバルブを経てフローセルのマイクロアレイチャンバーに自動的に移し、マイクロアレイチャンバー内のマイクロアレイに室温で1時間ハイブリダイズした。次に、マイクロアレイをAurora PortArray 5000イメージャーで読み取った。図18Aは、Aurora Port Array 5000より撮像したハイブリダイズマイクロアレイの画像を示す。陽性シグナルをボックスで示す。
【0092】
溶離DNAの第2の分取は、一体型カートリッジを着接したフローセルと同一のフローセルにおいて「オフライン」で増幅した。簡潔に述べると、DNAサンプルをフローセルのPCRチャンバーに手動装填し、上記の方法で増幅した。次に、増幅産物をマイクロアレイチャンバーに手動装填し、マイクロアレイチャンバーにおいて室温で1時間マイクロアレイにハイブリダイズした。次に、ゲルエレメントアレイおよびフローセルアセンブリ用に特に設計したAkonniイメージャーでマイクロアレイを読み取った。図18Bは、Akonniイメージャーより撮像したハイブリダイズマイクロアレイの画像を示す。陽性シグナルをボックスで示す。
【0093】
他の実験においては、Bacillus anthracisサンプル(10cfu/mL水)500μLを処理し、上述の手順を用いて分析した。図19Aは、試験サンプル中のBacillus anthracis検出陽性を示すマイクロアレイの画像を示す。図19Bは、図19Aに用いられるマイクロアレイのアレイマップである。
【0094】
他の実験においては、サンプル調製チャンバー内に磁気ビーズミキサーを有する一体型カートリッジを用いて、Streptococcus pyogenesサンプル(10cfu/mL水)500μLを処理した。ガラスビーズをチャンバーに加え、ビーズミキサーを振盪してチャンバー内の細菌を溶解した。図20は、ミキサーで抽出したDNAのPCR結果を示す。サンプル体積が50/50の比率となるようビーズを混合し、さらに1.5mLμ遠心管内で2分間ボルテキシングすることによりボルテキシング法を遂行した。
【実施例3】
【0095】
(一体型カートリッジおよびマイクロアレイベースサンプル分析システムによる単一ヌクレオチド多型の遺伝子型解析(SNP遺伝子型解析))
この実施例は、法医学用途に利用することも可能な身体外観マーカーのSNP遺伝子型解析用微量流動制御システムの実施可能性を証明する。実験環境では、サンプル調製、PCR増幅およびアレル特異的配列プライマー伸長(AS−APEX)用コンポーネントを組み合わせ、眼色マーカーを検出するための一体型システムを形成する。システムは、液状物操作サブシステム(例:ポンプ)、サーマルサイクリングサブシステム(例:Akonni Bladder Thermocycler)、光学器具(例:Akonni Reader)、ディスポーザブル一体型カートリッジ(すなわちAkonni TruTip、Akonni PCR/TruArrayフローセル、微量流動回路、および微量流動バルブ)およびカートリッジドッキングステーションを含む。
【0096】
表1に挙げられた6つのSNPを、実験用の試験モデルとして用いる。これらのSNPは、目の色の主な指標として文献に報告されている。
【0097】
(主な眼色決定因子として同定された6つのSNP)
【表1】

【0098】
SNP用の配列情報を編集し、またフォワードおよびリバースPCRプライマーを合成した。各アンプリコンに対して単回PCR反応を試験し、さらに最適化した。眼色アンプリコン用の標準的6重PCR反応を生成するための複数回フォーマットにおけるプライマーの体系的プールを達成した。この標準的6重PCR反応を低温(LowTemp)6重PCR反応に変換した。LowTemp PCRは、温度アニーリングの厳密性を補う薬品の使用を包含する。マスターミックスにホルムアミド(一般的なPCR添加剤)を加えることにより、変性温度を通常の95℃に替えて85℃に低下させた。この戦略によって、我々の一体型カートリッジ用のプラスチックおよびに接着剤にとってより多くの選択肢が可能となるため;製造コストが低下する。さらに、より低い温度によって嚢状サーモサイクラーコンポーネントおよび配管にとってより多くの材料選択肢が可能となる。1つの実施形態においては、PCRおよびAPEXに対して単一の酵素を用いる。
【0099】
図21Aは、LowTemp 6重PCRにおいて作製された各アンプリコンについてのマイクロアレイ画像およびゲルスポットシグナルの蛍光強度を示す。6つのアンプリコンが全て検出され、アンプリコンシグナル強度はアレイ上でポジティブコールの許容閾値を上回った。相対シグナル強度は産物間で異なるものの、シグナル強度は多重PCRにおけるプライマー濃度および/またはAPEXに用いるプライマーの長さを調節することによって精密に調節することができる。
【0100】
APEX法においては、プライマーは、末端の3’塩基がSNP部位にあるように、アレイ上の各ゲルエレメント内に単一のプライマーを固定するよう設計される。検出する各SNPに対して異なるプライマーを設計する。たとえば、あるSNP部位にAまたはCがあると思われる場合、それぞれに対して一方が3’Aを末端とし、もう一方が3’Cを末端とする別個のプライマーを設計する。プライマーの3’ヌクレオチドがターゲットと一致しない場合、ポリメラーゼによる伸長は阻害される。正しい標的および一致する3’塩基の存在下で、ポリメラーゼは蛍光標識ヌクレオチドを取り込んで最終シグナルを生成する。
【0101】
1つの実施形態においては、ゲノムDNAは一体型カートリッジを用いて血液サンプル50uLより精製された。このプロセスにおいて、全てのサンプルおよびサンプル廃棄物は、サンプルと接触する全ての試薬/バッファーと共に、カートリッジ内に保持された。使用済みの試薬/バッファーはカートリッジ廃液チャンバーに移動し、かつ貯蔵された。全てのプロセスはコンピュータ制御の下で実施された。カートリッジより手動取出した抽出、精製DNAサンプルのリアルタイムPCRの結果より、強い陽性PCRシグナルが証明された(図21B)。より重要なことに、この精製DNAは手動PCRおよびAPEXに対して成功裏に使用され、正しい遺伝子型を呼び出した(表2)。簡潔に述べると、(手動PCR(20ng DNA)/APEX遺伝子型決定に対して自動化一体型カートリッジで精製したDNAを用いた。アレイ上の各プライマーの蛍光強度を撮像し、シグナル強度生データを用いて各SNPに対するプライマー(アレル)シグナル比率値を生成した。呼び出した遺伝子型はゲノムDNA配列結果と一致した。
【0102】
(プライマー(アレル)シグナル比率値を用いた血液サンプルの遺伝子型決定)
【表2】

【実施例4】
【0103】
(ソフトウェア開発:DX3000自動タスク実行プログラム)
一体型分析システムの制御を目的として、DX3000自動タスク実行プログラムと称するソフトウェアプログラムが作成された。3つの主要なサブシステム(流動操作サブシステム、サーモサイクラーサブシステム、および光学サブシステム)の制御を目的として、National Instruments産業用コンピュータ(NI 3110)上のLabviewにおいてコードを書いた。NI 3110は、一方のコアがWindows用のタスクを実行し、かつもう一方のコアがReal−Timeオペレーティングシステム(OS)用のタスクを実行するデュアルコアプロセッサを有する。このアーキテクチャにより、ユーザーインターフェースの管理、連続通信および画像処理といった高レベルのWindowsタスク、ならびにヒーター、リニアアクチュエーター、サーモサイクラーポンプ、および時間が厳密に決められたイベントの制御といった低レベルの決定論的タスクを実行することが可能となる。Real−Time OSは、アナログ入力、アナログ出力、およびデジタルI/OモジュールをスキャンするEthercat I/Oモジュールと通信する。
【0104】
3つの主要なサブシステムはそれぞれWindowsおよびReal−Time OSからのリソースを利用し、かつ2つのオペレーティングシステム間の通信を必要とする。Windows環境内では、ユーザーが作製した一連のタスクが管理され、かつ共有変数を介してReal−Time OSまたはWindows OSのいずれかにある適切なプロセスに伝達される。流動操作サブシステムに関連するタスクは:選択バルブの位置の変更、カートリッジバルブの開閉、および微量流動ポンプによる送液/吸上げを含む。サーモサイクラーサブシステムに関連するタスクは:サーモサイクラーの加温およびサーモサイクリングの開始を含む。さらに光学サブシステムに関連するタスクは:APEX加熱の開始および画像の取得を含む。シークエンスを保存してDX3000自動タスク実行プログラムにインポートすることができる。
【0105】
流動操作サブシステムに制御されると分類されるコンポーネントは:2基の二方向ポンプ、3基の選択バルブ、およびカートリッジバルブを開閉する8基のリニアアクチュエーターを含む。二方向ポンプおよび選択バルブはUSBシリアルポートによって制御される。シリアルコマンドは、Global FIAが開発したLabviewドライバを経てそれらに伝達される。ポンプ用の制御コマンドは方向、流速、体積およびアドレスであり、かつ選択バルブ用の制御コマンドは選択バルブポート番号およびアドレスを含む。これらのコマンドがWindows内のみで実行されるのに対し、リニアアクチュエーターは主としてReal−Timeオペレーティングシステムより制御される。Firgelli Technologies Inc.(カナダ、ビクトリア)より入手可能なリニアアクチュエーターは、各バルブにつき4基のMOSFETのHブリッジにより制御される。各アクチュエーターに対して2本のデジタルI/Oラインがアクチュエーターをトリガして前進、後退、または休止させる。アクチュエーターの休止時は電力を必要としない。アクチュエーターは、アクチュエーターアームの位置のフィードバックを提供する内部電位差計を含む。較正ルーチンを用いて、カートリッジバルブに対して閉じた、または開いた位置に対応するアクチュエーターアームの到達範囲を判定する。比較アルゴリズムを用いて、アームの所望の位置と実際の位置を比較する。適切な動作を実行して、既定の許容ウインドゥ内の所望の位置に到達させる。較正ルーチン後、各カートリッジバルブ、全カートリッジバルブ、または一部のカートリッジバルブの組合せを、シークエンサーにおける1つのタスクとして開閉することができる。
【0106】
サーモサイクラーサブシステムによって制御されると分類されるコンポーネントは:2基の隔膜ポンプ、3基の三方バルブ、3基のコイルヒーター(高熱ゾーン用2基および低温ゾーン用1基)、および微小ラジエーターに冷却を提供するファン1基を含む。Darlington BJTトランジスタは、DX3000自動タスク実行プログラムによって制御されるアナログ出力シグナルに比例した電流を隔膜ポンプに供給する。線形プロポーショナルリレーは、ヒーターおよびラジエーター用ACファンに電源を供給するACシグナルの振幅を制御する。アナログ電圧出力シグナルは、これらのリレーの出力を制御する。再循環流に曝露される3基のインラインサーミスタは、高温ゾーンおよび低温ゾーンヒーターの後かつ嚢の前に配置される。異なる2つの仮想プロセスにより、高温ゾーン流動ループおよび低温ゾーン流動ループの再循環温度が制御される。これらの仮想プロセスは、ループ内温度のPID制御を目的としたアルゴリズムを含む。ヒーターPIDは広範囲の温度制御に用いることができるが、反応が遅い。ポンプ流量PIDは温度制御の範囲が狭いが、反応が速い。従って、図22に示すように、安定したプラトーを有する高温ゾーンと低温ゾーンの間の迅速な切換えを達成するために両PIDループを用いる。ラジエーターファンの速度は典型的には40%出力に維持される。
【0107】
光学サブシステムによって制御されると分類されるコンポーネントは:LED、カメラ、ヒーターおよびエアーポンプを含む。LED、カメラ、およびエアーポンプは、ソリッドステートリレーによって電源投入および切断される。パルス幅調節アルゴリズムは、ソリッドステートリレーを用いてヒーターへのAC出力のデューティサイクルを制御する。エアーポンプの流量は一定流量に維持される。ヒーター内部の熱電対は、PID仮想インターフェースへのフィードバックを提供する。
【実施例5】
【0108】
(同一カートリッジにおけるタンパク質および核酸の精製)
一体型カートリッジは、タンパク質精製能力および核酸精製能力を共に含むよう変更することができる。図23は、デュアルファンクション一体型カートリッジ300の1つの実施形態を示す。簡潔に述べると、カートリッジ300はタンパク質精製モジュールおよび核酸精製モジュールを含む。タンパク質精製モジュールはタンパク質廃液タワーT1、タンパク質精製タワーT2、タンパク質溶離タワーT3、カートリッジピンバルブCV1、CV2、CV3およびCV4ならびにルアー作動バルブLV1、LV2、LV3およびLV4を含む。核酸精製モジュールは、核酸廃液タワーT4、サンプル調製タワーT5、核酸精製タワーT6、核酸溶離タワーT7、カートリッジピンバルブCV5、CV6、CV7、CV8およびCV9、ならびにルアー作動バルブLV5、LV6、LV7、LV8およびLV9を含む。
【0109】
1つの実施形態においては、核酸は以下の手順を経て精製される:
1)A.全てのCVを閉じる。
B.サンプル500μLをサンプル入口よりT5に入れる。
C.CV6およびCV7を開く。
D.細胞溶解液500μLをLV5よりT5に入れる(LV7を大気にベントしながら)。
2)混合用空気をLV5よりT5に入れる(LV7を大気にベントしながら)。
3)室温で5分間インキュベートする。
4)A.CV6を閉じ、CV8を開く(CV7は開いたままとし、CV8はタンパク質精製プロトコルの開始まで開いたままとする)。
B.LV7より空気を流す(LV8を大気にベントしながら)。
C.LV8より空気を流す(LV7を大気にベントしながら)。
ステップBとCを5回繰り返す。混合物はT5とT6の間で往復して流れ、T6で止まる。
5)A.CV7を閉じ、CV2を開く。
B.LV8より空気を流し(LV2を大気にベントしながら)、混合物1mLをT1に押し出す。
6)A.CV6を開き、CV2を閉じる。
B.洗浄液をLV5よりT6に入れる(LV8を大気にベントしながら)。
C.CV6を閉じ、CV7を開く。
D.LV8より空気を流す(LV7を大気にベントしながら)。
E.LV7より空気を流す(LV8を大気にベントしながら)。
ステップDとEを5回繰り返す。洗浄液はT5とT6の間で往復して流れ、T6で止まる。
E.CV7を閉じ、CV5を開く。
F.LV8より空気を流し(LV6を大気にベントしながら)、洗浄液をT4に押し出す。
7)A.CV6を開き、CV5を閉じる。
B.空気をLV5よりT6に入れる(LV8を大気にベントしながら)。
8)A.溶離液をLV5よりT6に入れる(LV8を大気にベントしながら)。
B.CV6を閉じ、CV9を開く。
C.LV8より空気を流す(LV9を大気にベントしながら)。
D.LV9より空気を流す(LV8を大気にベントしながら)。
ステップCとDを5回繰り返す。混合物はT6とT7の間で往復して流れ、T7で止まる。
【0110】
T1に貯留されたサンプル混合液1mL(ステップ5B参照)中のタンパク質を以下の手順を経て精製する。
9) A.CV1およびCV2を開き、その他のCVは全て閉じる。
B.タンパク質結合液をLV1よりT1に入れる(LV2を大気にベントしながら)。
10)混合用空気をLV1よりT1に入れる(LV2を大気にベントしながら)。
11)室温で2分間インキュベートする。
12)A.CV3を開き、CV1を閉じる(CV2は開いたままとし、CV3はプロトコルの終了まで開いたままとする)。
B.ポンプアームを後方に引き、接続導管を経て溶液250μLをT1からT2に引き出す(LV2およびLV3はベントしない)。
C.ポンプアームを前方に押し、接続導管を経て溶液250μLをT1からT2に押し出す(LV2およびLV3はベントしない)。
ステップBおよびCを10〜15回繰り返す。CV2の直上かつT1の直下に位置するカートリッジ上の一方向チェックバルブによって、溶液は一方向ループにのみ流れる。
D.CV5を開き、CV2を閉じる。
E.LV3より空気を流し(LV6を大気にベントしながら)、溶液をT4に押し出す。
註:この段階でタンパク質廃液チャンバー(T1)が満たされているので、核酸廃液チャンバー(T4)が用いられている。
E.CV1を開き、CV5を閉じる。
13)A.洗浄液をLV1よりT2に入れる(LV3を大気にベントしながら)。
B.CV5を開き、CV1を閉じる。
C.LV3より空気を流し(LV6を大気にベントしながら)、洗浄液をT4に押し出す。
D.CV1を開き、CV5を閉じる。
ステップA〜Dを5回繰り返す。洗浄液をT2に加えた後T4に流し込む。
14)空気をLV1よりT2に加える(LV3を大気にベントしながら)。
15)空気の流量を上げて残余の液体を吹き飛ばす。
16)A.溶離液をLV1よりT2に加える(LV3を大気にベントしながら)。
B.CV1を閉じ、CV4を開く。
C.LV3より空気を流す(LV4を大気にベントしながら)。
D.LV4より空気を流す(LV3を大気にベントしながら)。
ステップCとDを5回繰り返す。溶離液はT2とT3の間で往復して流れ、T3で止まる。
【0111】
1つの実施形態においては、サンプル溶解溶液は6Mイソチオシアン酸グアニジンである。他の実施形態においては、タンパク質結合溶液は0.1%トリフルオロ酢酸である。
【0112】
図24は、サンプル分析ユニット2(すなわちアレイチャンバーおよびPCRチャンバーを有するフローセル)を有する一体型カートリッジ510、流動制御サブシステム520、光学サブシステム530、嚢状サーモサイクラー550、および流動マニホールド560を含むプロトタイプMBSAシステム500を示す。この実施形態においては、流動制御サブシステム520は、デュアルファンクション一体型カートリッジにおいてタンパク質および核酸の平行処理が可能な設定を含む。設定は2基のポンプ521および523、ならびに3基の選択バルブ525、527および529を含む。一方のポンプおよび1基の選択バルブは核酸抽出用となり、他方のポンプおよびもう1基の選択バルブはタンパク質用となるであろう。第3の選択バルブはベントの開閉のために用いられる。そのような設定はタンパク質および核酸の同時平行処理を可能とするであろう。光学サブシステム530はCCDカメラ531、レンズアセンブリ533および照明アセンブリ535を含む。嚢状サーモサイクラーサブシステム550は2基のポンプ551および552、3基のヒーター553、554および555(変性フローループ用2基およびアニーリング/伸長フローループ用1基)、気泡トラップおよびアクセスの再充填の役割を果たす2基のレザバー556および557、ならびに互いに向かい合う2個の柔軟性嚢を有する1基の嚢状アセンブリ558を含む。
【0113】
本発明は、本発明の構造および操作の原理の理解を促進するための詳細を組み入れた具体的な実施形態の点から記述されている。本明細書における具体的な実施形態およびその詳細に対するそのような言及は、本明細書に添付の請求項の範囲を制限することを意図していない。本発明の趣旨および範囲を離れることなく例示のために選択された実施形態に変更を行ってもよいことは、当業者にとって明らかであろう。本明細書に引用された全ての参照文献は、その全文を本明細書に参照文献として援用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルの処理および分析を目的とした一体型カートリッジであって:
サンプル入口および出口を有するサンプル調製チャンバー;および
ハウジングおよび前記ハウジング内部の抽出フィルターを含む第1の交換可能なサンプル精製ユニットを受容するよう構成された第1のサンプル精製チャンバーであって、
前記抽出フィルターが第1の目的分子と特異的に結合することを特徴とし、かつ前記第1のサンプル精製チャンバーがサンプル調製チャンバーのサンプル出口と流動的に連絡するサンプル入口を有することを特徴とするサンプル精製チャンバーを含む前記一体型カートリッジ。
【請求項2】
請求項1に記載の一体型カートリッジであって、前記サンプル入口が前記サンプル調製チャンバーの上部に位置しかつ前記サンプル出口が前記サンプル調製チャンバーの下部に位置することを特徴とし、かつ前記サンプル出口がサンプル混合処理中に前記サンプル調製チャンバーに気体を送出するポンプに接続されることを特徴とする前記一体型カートリッジ。
【請求項3】
請求項1に記載の一体型カートリッジであって、前記第1のサンプル精製チャンバーと流動的に連絡する第1の溶離チャンバーをさらに含み、前記第1の溶離チャンバーが前記第1のサンプル精製チャンバー内の前記抽出フィルターから溶離した分子を捕集する前記一体型カートリッジ。
【請求項4】
請求項1に記載の一体型カートリッジであって、第1の廃液チャンバーをさらに含み、前記第1の廃液チャンバーが前記サンプル精製チャンバーと流動的に連絡する、前記一体型カートリッジ。
【請求項5】
請求項1に記載の一体型カートリッジであって、ハウジングおよび前記ハウジング内部の抽出フィルターを含む第2の交換可能なサンプル精製ユニットを受容するよう適合化された第2のサンプル精製チャンバーをさらに含み、前記抽出フィルターが第2の目的分子と特異的に結合し、前記第2のサンプル精製チャンバーが前記サンプル調製チャンバーと流動的に連絡する、前記一体型カートリッジ。
【請求項6】
請求項5に記載の一体型カートリッジであって:
前記第2のサンプル精製チャンバーのサンプル入口およびサンプルレザバーポケットと接続されるカートリッジバルブ;および
サンプル液の一方向流動を確保するチェックバルブであって、
第1のバルブ状態にある時、前記カートリッジバルブがサンプル液に前記カートリッジバルブを経て前記レザバーポケットを充填することを可能とすることを特徴とし、かつ第2のバルブ状態にある時、前記カートリッジバルブが前記レザバーポケット中の前記サンプル液に前記カートリッジバルブを経て前記第2のサンプル精製チャンバーに流入することを可能とすることを特徴とするチェックバルブをさらに含む、前記一体型カートリッジ。
【請求項7】
請求項5に記載の一体型カートリッジであって、前記第2のサンプル精製チャンバーのサンプル入口と接続される二方向ポンプをさらに含む前記一体型カートリッジ。
【請求項8】
請求項5に記載の一体型カートリッジであって、前記第1の目的分子が核酸分子でありかつ前記第2の目的分子がタンパク質分子であることを特徴とする前記一体型カートリッジ。
【請求項9】
請求項5に記載の一体型カートリッジであって:
前記第1のサンプル精製チャンバーと流動的に連絡する第1の溶離チャンバーであって、前記第1の溶離チャンバーが前記第1のサンプル精製チャンバー内の前記抽出フィルターから溶離した分子を捕集する前記第1の溶離チャンバー;および
前記第2のサンプル精製チャンバーと流動的に連絡する第2の溶離チャンバーであって、前記第2の溶離チャンバーが前記第2のサンプル精製チャンバー内の前記抽出フィルターから溶離した分子を捕集する前記第2の溶離チャンバーをさらに含む前記一体型カートリッジ。
【請求項10】
請求項9に記載の一体型カートリッジであって、第1の廃液チャンバーをさらに含む一体型カートリッジ。
【請求項11】
請求項10に記載の一体型カートリッジであって:
前記第2のサンプル精製チャンバーと流動的に連絡する第2の廃液チャンバーをさらに含む前記一体型カートリッジ。
【請求項12】
請求項1に記載の一体型カートリッジであって、前記サンプル調製チャンバーが磁気撹拌子および多数の細胞溶解ビーズを収容することを特徴とする前記一体型カートリッジ。
【請求項13】
請求項1に記載の一体型カートリッジであって、前記サンプル調製チャンバーの前記サンプル出口と接続される第1のバルブおよび前記サンプル精製チャンバーの前記サンプル入口と接続される第2のバルブをさらに含む前記一体型カートリッジ。
【請求項14】
請求項1に記載の一体型カートリッジであって、着脱式、交換可能なサンプル分析ユニットが1基のマイクロアレイを含むサンプル分析チャンバーを少なくとも1基含むことを特徴とする、前記着脱式、交換可能なサンプル分析ユニットをさらに含む前記一体型カートリッジ。
【請求項15】
請求項14に記載の一体型カートリッジであって、前記着脱式、交換可能なサンプル分析ユニットが増幅チャンバー内で増幅反応を実施するよう構成された前記チャンバーをさらに含む、前記一体型カートリッジ。
【請求項16】
請求項1に記載の一体型カートリッジであって、前記カートリッジ内部の液状物の動きを制御する1基またはそれ以上のピンバルブをさらに含む前記一体型カートリッジ。
【請求項17】
請求項16に記載の一体型カートリッジであって、前記の1基またはそれ以上のピンバルブが1基またはそれ以上のリニアアクチュエーターによって制御されること特徴とする前記一体型カートリッジ。
【請求項18】
請求項16に記載の一体型カートリッジであって、1個またはそれ以上のルアーテーパー突起を有する1基のカートリッジベースとの契合を可能とする1つまたはそれ以上のルアー作動バルブをさらに含む前記一体型カートリッジ。
【請求項19】
請求項1に記載の一体型カートリッジであって、前記サンプル調製チャンバーおよび前記サンプル精製チャンバーが前記サンプル調製チャンバーおよび前記サンプル精製チャンバーの最上部に気泡が上昇することを確保する直立型タワー形状に設計されることを特徴とする一体型カートリッジ。
【請求項20】
請求項1に記載の一体型カートリッジであって、前記一体型カートリッジの内部の流動物の動きを促進する微量流動導管をさらに含み、前記微小導管の内面が前記微量流動導管の内部で気泡のトラッピングを軽減する親水性フィルムにより完全にまたは部分的に被覆されるかまたはコーティングされることを特徴とする前記一体型カートリッジ。
【請求項21】
請求項20に記載の一体型カートリッジであって、前記微量流動導管が逆圧を軽減するために十分大きな直径を有しかつ再現可能な射出成形形体を可能とすることを特徴とする前記一体型カートリッジ。
【請求項22】
マイクロアレイベースサンプル分析(MBSA)システムであって:
交換可能なカートリッジが反応チャンバーおよびマイクロアレイを収容する着脱式、交換可能なサンプル分析ユニットを受容するよう構成されることを特徴とする前記の交換可能なカートリッジを受容するよう適合化されたカートリッジホルダー;
流動物の流動を制御する流動制御サブシステム;および
マイクロアレイの画像をキャプチャーするよう構成された光学サブシステムを含む前記MBSAシステム。
【請求項23】
請求項22に記載のMBSAシステムであって:
反応処理中に前記反応チャンバーにおいて温度を制御するよう構成されたサーモサイクリングシステムをさらに含む前記MBSAシステム。
【請求項24】
請求項23に記載のMBSAシステムであって、前記サーモサイクリングシステムが互いに向かい合う2個の柔軟性嚢を含む嚢状サーモサイクラーを含むことを特徴とする前記MBSAシステム。
【請求項25】
請求項22に記載のMBSAシステムであって、前記光学サブシステムがレーザー光源を含むことを特徴とする前記MBSAシステム。
【請求項26】
請求項22に記載のMBSAシステムであって、前記光学サブシステムが高輝度LED光源を含むことを特徴とする前記MBSAシステム。
【請求項27】
請求項22に記載のMBSAシステムであって、前記光学サブシステムが蛍光撮像および蛍光非依存的撮像ができることを特徴とする前記MBSAシステム。
【請求項28】
請求項27に記載のMBSAシステムであって、前記光学サブシステムが蛍光撮像のための第1の光源および蛍光非依存的撮像のための第2の光源を含むことを特徴とする前記MBSAシステム。
【請求項29】
請求項28に記載のMBSAシステムであって、前記第2の光源が発光ダイオード(LED)であることを特徴とするMBSAシステム。
【請求項30】
請求項29に記載のMBSAシステムであって、前記LEDが反射光の暗視野照明を目的として構成されることを特徴とするMBSAシステム。
【請求項31】
請求項29に記載のMBSAシステムであって、前記LEDが透過光の傾斜照明を目的として構成されることを特徴とするMBSAシステム。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図12A】
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【図13−1】
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【図13−2】
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【図17A】
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【図17B】
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【図19】
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【図20】
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【図21B】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図11B】
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【図12B】
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【図14】
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【図15−1】
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【図15−2】
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【図16】
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【図18】
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【図21A】
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【公表番号】特表2013−505442(P2013−505442A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529753(P2012−529753)
【出願日】平成22年9月20日(2010.9.20)
【国際出願番号】PCT/US2010/002568
【国際公開番号】WO2011/034620
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
【出願人】(510048369)アコーニ バイオシステムズ (8)
【氏名又は名称原語表記】AKONNI BIOSYSTEMS
【Fターム(参考)】