説明

一体型ターボ分子ポンプ

【課題】コントロールユニット内への塵等の侵入を防止しつつ、送風ファンによって電子部品を効果的に冷却することができる一体型ターボ分子ポンプの提供。
【解決手段】ポンプユニット20はモータ6のモータステータが設けられたポンプベース4を有し、コントロールユニット30は、モータステータが設けられたポンプベース4との間に隙間領域Sを形成するようにポンプベース4の底面に固定されたケース(ベース板32およびケーシング33)を有している。電子部品304が実装された基板301,302は、隙間領域Sに対面するケース壁部であるベース板32の内周面に固定されている。そして、ファン34により隙間領域Sに冷却風を送風することで、電子部品で発生した熱は隙間領域に面したベース板32の部分から効果的にケース外に放熱される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプユニットにコントロールユニットが一体に固定されている一体型ターボ分子ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置などに用いられる真空ポンプとしては、回転翼が形成されたロータをモータで回転駆動し、回転翼を固定翼に対して高速回転させることにより気体を排気するターボ分子ポンプが知られている。そのようなターボ分子ポンプにおいて、ポンプ本体と制御装置とを一体とし、冷却水によりポンプ本体と制御装置とを冷却するターボ分子ポンプが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、特許文献2に記載のターボ分子ポンプでは、一体化されたポンプ本体と制御装置とをファンにより冷却する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−173293号公報
【特許文献2】特開平10−131887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、イオン注入装置のような高電圧を使用する半導体製造装置においては、水漏れ等のおそれがあり、安全性の面で特許文献1に記載のような冷却水を用いる真空ポンプは好ましくない。
【0006】
一方、特許文献2に記載のターボ分子ポンプでは、ポンプ本体下部に電子制御ユニットが配置されるハウジングが固定され、ハウジングに取り付けられたファンにより電子制御ユニットおよびポンプ本体の下部を冷却する構成となっている。しかしながら、ポンプ周囲環境から空気を装置内に取り入れる構造であるため、周囲環境の塵等がハウジング内に入り込み易く、電子制御ユニットの故障を招くおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、回転翼が形成されたロータをモータにより回転して真空排気を行うポンプユニットと、ポンプユニットに固定されて該ポンプユニットを駆動制御するコントロールユニットと、を備えた電源一体型ターボ分子ポンプにおいて、ポンプユニットはモータステータが設けられたポンプベースを有し、コントロールユニットは、ポンプベースとの間に隙間領域を形成するように該ポンプベースの底面に固定されたケースと、ケースに収納されるとともに、隙間領域に対面するケース壁部の内周面に固定される電子部品と、を有し、隙間領域に冷却風を送風する送風ファンを備えたことを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載の一体型ターボ分子ポンプにおいて、隙間領域に対面するケース壁部の隙間領域側の面に、放熱器を設けたものである。
請求項3の発明は、請求項2に記載の一体型ターボ分子ポンプにおいて、放熱器は、ケース壁部の隙間領域側の面に形成された複数の放熱フィンを有するものである。
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の一体型ターボ分子ポンプにおいて、隙間領域に加えて、ポンプベースに向けて冷却風を送風するようにしたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コントロールユニット内への塵等の侵入を防止しつつ、送風ファンによって電子部品を効果的に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施の形態の一体型ターボ分子ポンプの概略構成を示す図である。
【図2】電子部品を樹脂305でモールドした場合のコントロールユニット30を示す図である。
【図3】本実施の形態の変形例を示す図である。
【図4】凹状のベース部材38を用いた場合のコントロールユニット30を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。図1は本実施の形態の一体型ターボ分子ポンプの概略構成を示す図である。ターボ分子ポンプ1は磁気軸受式のターボ分子ポンプであり、図1に示すようにポンプユニット20とコントロールユニット30とがボルト固定されている。
【0011】
先ず、ポンプユニット20について説明する。ロータ2が取り付けられたシャフト3は、ポンプベース4に設けられた電磁石51,52によって非接触支持されている。シャフト3の浮上位置は、ポンプベース4に設けられたラジアル変位センサ71およびアキシャル変位センサ72によって検出される。ラジアル磁気軸受を構成する電磁石51と、アキシャル磁気軸受を構成する電磁石52と、変位センサ71,72とで5軸制御型磁気軸受が構成される。なお、磁気軸受が作動していない状態では、シャフト3はメカニカルベアリング27,28によって支持される。
【0012】
シャフト3の下端には円形のロータディスク41が設けられており、このロータディスク41を上下に挟むように電磁石52が設けられている。そして、電磁石52によりロータディスク41を吸引することによりシャフト3がアキシャル方向に浮上する。ロータディスク41はナット部材42によりシャフト3の下端部に固定されている。ポンプベース4の底面には裏蓋43がボルト固定されている。裏蓋43とポンプベース4との隙間はOリングにより密封されている。裏蓋43にはコントロールユニット30のコネクタ37bと接続されるコネクタ37aが設けられている。
【0013】
ロータ2には、回転軸方向に複数段の回転翼8が形成されている。上下に並んだ回転翼8の間には固定翼9がそれぞれ配設されている。これらの回転翼8と固定翼9とにより、ポンプユニット20のタービン翼段が構成される。各固定翼9は、スペーサ10によって上下に挟持されるように保持されている。スペーサ10は、固定翼9を保持する機能とともに、固定翼9間のギャップを所定間隔に維持する機能を有している。
【0014】
さらに、固定翼9の後段(図示下方)にはドラッグポンプ段を構成するネジステータ11が設けられており、ネジステータ11の内周面とロータ2の円筒部12との間にはギャップが形成されている。ロータ2と、スペーサ10によって保持された固定翼9とは、吸気口13aが形成されたポンプケーシング13内に納められている。ロータ2が取り付けられたシャフト3を電磁石51,52により非接触支持しつつモータ6により回転駆動すると、吸気口13a側のガスは背圧側に排気され、背圧側に排気されたガスは排気口26に接続された補助ポンプにより排出される。
【0015】
ポンプユニット20を構成するポンプベース4の下部には、コントロールユニット30が複数のボルト40により固定されている。ポンプユニット20を駆動制御するコントロールユニット30には、主制御部、磁気軸受駆動制御部、モータ駆動制御部等を構成する電子部品が設けられており、それらの電子部品は筐体内に収納されている。コントロールユニット30の筐体は、モータ6のステータが設けられているポンプベース4の底面に固定されるベース板32と、そのベース板32の下側の面に取り付けられたケーシング33とで構成されている。図1に示す例では、筐体は、塵等が外部から入り込めない程度の密閉構造となっている。ベース板32およびケーシング33には、アルミ材等の熱伝導性に優れた材料を用いるのが好ましい。
【0016】
ポンプユニット20とコントロールユニット30との電気的な接続は、ポンプユニット側のコネクタ37aとコントロールユニット側のコネクタ37bとを接続することによって行われる。コネクタ37a,37bの周囲は、円筒状のカバー35によって囲まれている。ベース板32はヒートシンクとしても機能するものであり、ベース板32の内周面(図示下面)には比較的に発熱量の大きな電子部品(例えば、パワーMOSFET等)304が実装された基板301が固定されている。また、別の基板303は支柱302によりベース板32に固定されている。この基板303にも電子部品が実装されている。基板303の電子部品から発生した熱は、支柱302を介してベース板32に伝達される。ここでは、回路基板を2層構造としたが3層以上としても良く、発熱量の大きい電子部品ほどベース板32に近い位置に実装するのが好ましい。
【0017】
ベース板32は、スペーサ31を介してポンプベース4に固定されている。その結果、ベース板32とポンプベース4の底面との間には、冷却風の流通路として機能する隙間領域Sが形成されている。ポンプユニット20の側方であって、隙間領域Sの側方には、ファン34が設けられている。図1に示す例では、ファン34はベース板32の側面に固定されている。破線で示すように、ファン34によって形成された図示左方向の冷却風は、ポンプベース4に吹き付けられるとともに、隙間領域Sを反対側へと通り抜ける。その結果、ポンプベース4が冷却されるとともに、隙間領域Sを通り抜ける冷却風によってベース板32が冷却される。
【0018】
図1に示す構成では、ファン34の冷却風は主にポンプベース4および隙間領域Sに吹き付けられるが、ファン34の取り付け位置を下方にずらすことで、ポンプベース4、隙間領域Sおよびケーシング33に冷却風が吹き付けられるようにしても良い。
【0019】
上述のように、本実施の形態では、ポンプユニット20にコントロールユニット30が一体に固定された電源一体型のターボ分子ポンプ1であって、ポンプユニット20はモータ6のモータステータが設けられたポンプベース4を有し、コントロールユニット30は、モータステータが設けられたポンプベース4との間に隙間領域Sを形成するようにポンプベース4の底面に固定されたケース(ベース板32およびケーシング33)を有している。電子部品304が実装された基板301,302は、隙間領域Sに対面するケース壁部であるベース板32の内周面に固定されている。そして、ファン34により隙間領域Sに冷却風を送風することで、電子部品で発生した熱は隙間領域Sに面したベース板32の部分から効果的にケース外に放熱される。
【0020】
このように、冷却風がベース板32とポンプベース4との間の隙間領域Sに送風される構造であって、冷却風を電子部品が収納されたケース内に取り込む構造でないため、冷却風によって塵等がケース内に入り込むのを防止することができる。なお、図1に示したコネクタ37a,37bの部分はカバー35によって囲まれており、この部分からケース内に冷却風が入り込むことはない。
【0021】
なお、上述した例では、ケース(ベース板32,ケーシング33)を密閉構造としたが、冷却風が侵入しにくい構造であれば必ずしも完全な密閉構造である必要はない。例えば、ケーシング33の底面に貫通穴が形成されていても良い。ファン34は隙間方向に送風するように取り付けられているため、冷却風が底面まで回り込むことはほとんど無く、冷却風による塵等の侵入を避けることができる。
【0022】
また、隙間領域Sに冷却風を送風するファン34はコントロールユニット30の外部に配置されるため、コントロールユニット内にファンを配置する従来の構成と比べて、寿命部品であるファン34の交換が容易となる。
【0023】
図1に示す例では、ファン34はポンプベース4の冷却も兼ねているので、コストアップを抑制することができる。
【0024】
なお、電子部品からベース板32への放熱性能を向上させるために、図2に示すように電子部品を高熱伝導性で電気絶縁性の樹脂305でモールドするようにしても良い。樹脂305によるモールドについては、ケーシング内のすべての電子部品が樹脂305でモールドされるようにしても良いし、一部の電子部品(例えば、基板301に搭載されている電子部品)が樹脂305でモールドされるようにしても良い。
【0025】
(変形例)
図3は本実施の形態の変形例を示す図である。図3(a)はコントロールユニット30をポンプベース4の底面側から見た平面図であり、図3(b)はコントロールユニット30の側面図である。変形例では、ベース板32の上面(隙間領域側の面)に複数の放熱フィン321が形成されている。隙間領域Sに入り込んだ冷却風は、隣接する放熱フィン321の間の隙間322を通過して図示左側に通り抜ける。
【0026】
このように、変形例においては、ベース板32の隙間領域側の面に放熱フィン321を形成したことにより、冷却風が通り抜ける放熱面の面積が大幅に増大する。その結果、ヒートシンクとしてのベース板32から冷却風への放熱効率が向上し、コントロールユニット30の冷却性能向上を図ることができる。
【0027】
なお、図3に示した例では、ベース板32に放熱フィン321を直接形成したが、放熱フィンが形成されたヒートシンクを放熱器としてベース板32の隙間領域側の面に取り付けるようにしても良い。この場合、ベース板32はヒートシンクとしての機能を必ずしも必要としないので、ケーシング33と同様の厚さとしても良い。もちろん、図1に示す例のように放熱フィンを形成しない場合であっても、ベース板32の厚さをケーシング33と同程度としても、放熱効果の向上を図ることはできる。放熱器としては、ヒートパイプ等を使用することもできる。
【0028】
以上の説明はあくまでも一例であり、発明を解釈する際、上記実施の形態の記載事項と特許請求の範囲の記載事項の対応関係に何ら限定も拘束もされない。例えば、上述した実施の形態では、プレート状のベース板32をポンプベース4に固定し、そのベース板32にケーシング33を取り付けて筐体としたが、図4に示すような構造であっても良い。図4に示す例では、ポンプベース40に固定されるベース部材38は、プレート状ではなく、下側に開口を有する凹状のケースである。そして、ベース部材38に電子部品を収納するように固定し、図示下側の開口にプレート39を取り付けることにより密閉状のケースとしている。
【0029】
また、上述した実施の形態では、磁気軸受式の一体型ターボ分子ポンプを例に説明したが、磁気軸受式でない一体型ターボ分子ポンプにも適用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1:ターボ分子ポンプ、2:ロータ、4:ポンプベース、6:モータ、8:回転翼、9:固定翼、20:ポンプユニット、30:コントロールユニット、32:ベース板、33:ケーシング、34:ファン、38:ベース部材、304:電子部品、321:放熱フィン、S:隙間領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転翼が形成されたロータをモータにより回転して真空排気を行うポンプユニットと、
前記ポンプユニットに固定されて該ポンプユニットを駆動制御するコントロールユニットと、を備えた電源一体型ターボ分子ポンプにおいて、
前記ポンプユニットはモータステータが設けられたポンプベースを有し、
前記コントロールユニットは、
前記ポンプベースとの間に隙間領域を形成するように該ポンプベースの底面に固定されたケースと、
前記ケースに収納されるとともに、前記隙間領域に対面するケース壁部の内周面に固定される電子部品と、を有し、
前記隙間領域に冷却風を送風する送風ファンを備えたことを特徴とする一体型ターボ分子ポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載の一体型ターボ分子ポンプにおいて、
前記隙間領域に対面するケース壁部の隙間領域側の面に、放熱器を設けたことを特徴とする一体型ターボ分子ポンプ。
【請求項3】
請求項2に記載の一体型ターボ分子ポンプにおいて、
前記放熱器は、前記ケース壁部の隙間領域側の面に形成された複数の放熱フィンを有することを特徴とする一体型ターボ分子ポンプ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の一体型ターボ分子ポンプにおいて、
前記送風ファンは、前記隙間領域に加えて、前記ポンプベースに向けて冷却風を送風することを特徴とする一体型ターボ分子ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−100760(P2013−100760A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244444(P2011−244444)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】