説明

一体型ミキサー要素を備える弁装置

【課題】半径方向温度分布の均一性を高めるように発熱体から流体通路内の液体への熱伝達を改善する。
【解決手段】流体通路を介して供給される液体媒体を吐出する弁装置20であって、前記弁装置は、流体流路の壁を加熱する発熱体28を備え、少なくとも1つの混合要素29は、流体通路に挿入され、且つ、液体媒体が流体通路を流れているときに液体媒体に半径方向流れ成分を導入するように構成されている弁装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体通路を介して供給される液体媒体を吐出する弁装置であって、流体通路の壁を加熱する発熱体を備える弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の製造プロセスでは、多くの場合、工作物又は製品に最小量の媒体を付着させる必要がある。このような媒体は、機械学の分野における油、グリース、又は接着剤、医学又は薬学分野における洗浄又は殺菌手段、電子産業における塗料、フラックス、コーティング剤等を含み得るが、食品技術における食用色素又は食品内容物も含み得る。
【0003】
計量技術では、最小量の媒体の吐出に関して2つの異なる手法が提案されていた。一方では、いわゆる噴射弁を用いて、滴状又は流れ状の媒体を工作物に塗布する。この場合、所望の媒体量が弁頭の出口又はノズルを通して工作物に発射されるように、高圧が用いられる。他方では、計量針を備える計量弁が知られているが、この場合、媒体が噴射法によって発射されるのではなく針の先端から単に押し出されるだけであるので、比較的低い圧力が用いられる。この場合、針の先端は、針から流れ出る媒体が工作物に直接塗布されるように、工作物のすぐ近くに近付けられる。
【0004】
しかしながら、弁の供給管を通って流れる、一液型エポキシ樹脂、シリコーン、及び他の接着剤、さらにいくつかのグリース及び油等の高粘度流体は、通常、管の壁に付着する厚い表面領域を示す。これらの表面領域では、管の中央よりも流速がはるかに遅い。管の壁の近くでは、流速がほぼゼロでさえあり得る。
【0005】
したがって、例えば吐出弁の管状流体通路では、吐出すべき流体は、流体通路直径の中心で最高の流速を有し、流体層が粘着している流体通路の壁(複数可)でほぼゼロの速度を有する。この作用は、いくつかの欠点につながる。第1に、適切な吐出条件を得るために低い又は安定した流体粘度が望まれる場合、熱エネルギーを液体に入れなければならない。これは、金属管及びそれに粘着している流体の付着境界層を調整された温度に加熱するように、流体通路の近くに配置される電気発熱体によって行うことができる。しかしながら、この表面領域における液体部分が流れないか又は非常に低速で流れるため、その温度の影響を受ける時間が非常に長い。これは、熱硬化性接着剤又は可使時間(混合されてからバケット内に貯蔵された接着剤の有効寿命)が限られている予め混合した二液型接着剤の粘度を増加させ得る。第2に、弁の流体通路の壁における粘着表面層は、流体通路の中心を流れている流体の断熱材として働く。流体の流速を高くすると(例えば、高い吐出又は噴射周波数では)、発熱体が流体通路の中心を通過する材料を十分に速く加熱することができないため、この断熱材が吐出流体の温度不均一性を引き起こし得る。第3に、発光ダイオード(LED)の封入用の蛍光体充填材を含むシリコーン等の、分散固体粒子を含有する流体は、流体通路の表面領域における流体の滞留時間が長いことに起因して、充填材の沈降を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半径方向温度分布の均一性を高めるように発熱体から流体通路内の液体への熱伝達を改善することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1に記載の特徴によって達成される。
【0008】
したがって、提案される混合要素は、弁の流体通路内の流体の半径方向混合を改善するように半径方向流れ成分を導入する。これにより、非常に高い粘度の流体でも均一な半径方向温度分布を得ることができる。さらに、混合により、流体通路の壁に非常に薄い表面領域だけを残して流体通路のあらゆる領域へ流体が移動することができる。全流体が加熱された壁と接触するため、熱伝達の改善が得られることで、流体内の温度差があまりなく高い処理量が得られる。さらに、流体通路の断面を小さくすることができ、流体速度を高めることができ、且つ半径方向混合効果が分散の安定を助けるため、混合要素は、粒子の沈降を防止するのに役立つ。粒子分散の改善の達成は、安定した吐出結果を得るのに重要である。流体通路の断面は、必ずしも円形である必要はないことに留意されたい。これは、上述の半径方向流れ成分が横方向すなわち横断方向の流れ成分と理解される、任意の非円形の形状を有することができる。
【0009】
例示的な実施態様によれば、混合要素は、液体媒体の流動流に対する所定の障害物を有する少なくとも1つの不動の静的ミキサー要素を備え得る。より具体的な例として、静的ミキサー要素は、少なくとも1つの螺旋要素を有する少なくとも1つのスパイラルミキサーを含み得る。
【0010】
さらに、流体通路は、金属管によって画定され得る。この金属管は、この場合、その近くに配置されている発熱体によって加熱することができる。
【0011】
液体媒体は、例えば、接着剤、グリース、又は油であり得る。当然ながら、本発明は、他のタイプの流体にも適用することができる。
【0012】
吐出弁は、少なくとも1つのノズルを制御する圧電駆動装置を備え得る。
【0013】
次に、本発明を、添付図面を参照して一実施形態に基づいてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態による吐出弁の側断面図を示す。
【図2】第1の実施形態で使用可能な混合要素の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、第1の実施形態を、図1の側断面図に示すような圧電駆動型の吐出弁20に基づいて説明する。
【0016】
吐出弁20は、圧電駆動装置22を備える。圧電駆動装置22は、プラグ10及び接続ケーブルを介して電気信号が供給されるピエゾスタックで構成されているとよい。圧電駆動装置22の移動は、印加される電気信号によって制御することができ、この移動がロッド26に伝わることで、ロッド26は、図1の垂直方向に上下される。抵抗性セラミック製であり得る封止球23が、ロッド26の下端に固定されている。封止球23が持ち上がると、吐出すべき液体媒体が、ノズル板27のノズルを通して吐出弁20から流れ出ることができる。
【0017】
吐出すべき媒体は、入口25を介して供給することができ、入口25は、混合要素29が挿入されている流体通路に通じている。流体通路は、同じくプラグ10及び接続ケーブルを通して電力を供給され得る発熱体28によって加熱することができる。
【0018】
図1に示すように、混合要素29は、静的ミキサー要素を有するロッド又は管として配置されて、通常は発熱体28の近くで吐出弁20の流体通路に組み込まれ得る。混合要素29の静的ミキサー要素は、吐出弁20の流体通路を流れる材料の半径方向混合を行わせるように構成される。これにより、非常に高い粘度の流体が吐出材料として用いられる場合であっても、より均一な半径方向温度分布を得るために、層流境界層の厚さの低減が可能になる。
【0019】
さらに、混合要素29の静的ミキサー要素は、流体を、流体通路の表面領域から流体通路の中心へ向けて押し流し、且つその逆も行うように構成され得る。したがって、流体は、流体通路の壁に非常に薄い表面領域だけを残して流体通路のあらゆる領域とおる栓流として移動している。これにより、吐出すべき流体の全部分が、流体通路の加熱された壁と接触させられ、熱伝達の改善により、流体内の温度差があまりなく高い処理量を得ることができる。
【0020】
さらに、混合要素29の静的ミキサー要素は、粒子の沈降を防止するのに役立つ。これは、流体通路の断面を小さくすることによって達成される。流体速度が高くなり、半径方向混合効果が分散の安定を助ける。これは、安定した吐出結果を得るのに、例えば分光放射照度の均一性に(すなわち、蛍光体コンバータを含有する接着剤をLEDに流し込むときに)重要である、粒子分散の改善につながる。
【0021】
混合要素29によって達成される熱伝達の改善により、低いヒータ温度で吐出弁20のより高い処理量が得られる。さらに、熱硬化性接着剤の早期硬化によって吐出弁20の詰まりが生じる危険性が最小になり、吐出弁での固体粒子(例えば、充填材)を含有する流体の沈降が低減される。
【0022】
以下で、図1の吐出弁20で用いられ得る混合要素構造体のいくつかの例をより詳細に説明する。なお、混合要素29は、液体通路に挿入される付加的な管を備えていてもよく、又は液体通路に直接挿入されるミキサー要素のみから成っていてもよい。
【0023】
混合要素29のために用いられ得る固定すなわち静的ミキサーは、液体、特に高粘度材料を混合し、且つ異なる相に接触して熱伝達及び物質移動を促進する役割を果たす。これらは、吐出弁20の液体通路等の管、導管、又は容器内に組み込むことができる流れ調整挿入体である。混合要素29又はそのミキサー要素は、それ自体は動かないが、処理される材料の圧力差又は運動エネルギー及び位置エネルギーを用いて、所定の流れパターン及び/又は無作為運動を生じさせることで、移動中の材料のさまざまな部分の速度差、ひいては相対変位を引き起こす。流体において、混合要素29の静的ミキサー要素は、流体すなわち吐出材料の種々の部分の分割、移動、剪断、回転、加速、減速、及び/又は再結合を行わせるように働く。したがって、静的ミキサー要素は、機械撹拌器等の必要をなくすため、直接的な原動力、駆動モータ、及び電気接続(複数可)を必要としないという点で有益である。液体通路内の材料の流れは、重力によって、圧力差によって、又は既存の位置エネルギー又は運動エネルギーの利用によって誘発され得る。したがって、空間要件が小さいことで、混合要素29の小型設計が可能になる。さらに、例えば流体通路の管の一部の単純な交換によって、又は流体通路内に挿入体を固定することによって、装着が容易且つ迅速である。
【0024】
静的ミキサー要素は、多種多様な材料からできているいくつかの異なるタイプ、形状、及び幾何学的形状で利用可能である。したがって、混合要素29は、プロセス要件及びプロセス材料の特徴に容易に合わせることができる。物理的特性、例えば、流動挙動、粒径、機械的強度、磨耗効果、例えば食品産業及び製薬産業の安全規定を、混合要素29のミキサー要素の適切な設計によって考慮に入れることができる。
【0025】
複数の異なるタイプの静的ミキサー要素が利用可能である。以下で、図2を参照して2つの適当なタイプのそのようなミキサー要素を説明する。
【0026】
図2は、流れ方向に対して垂直に左右方向に交互に180度捩れている複数の螺旋要素294を収容する、加熱要素29又は流体通路の長い円筒パイプから成るスパイラルミキサーを示している。隣接する要素は、半径方向に90度ずらして設けられる。したがって、所与の要素の出口縁と次の要素の入口縁とは、互いに対して垂直である。滑らかな螺旋表面が、流路のスパイラル形態の捩れによって誘発される2次頂点により、材料の流れをパイプ壁に向けてから中心に戻す。付加的な速度反転及び分流が、隣接する要素間の管断面に沿った材料の剪断から生じる。流れの系統的な分割及び別の形でのそれらの再結合が、混合効果を高める。流体又は多相流において、優れた半径方向混合に加えて、比較的短い滞留時間が確保される。螺旋要素294の滑らかで緩やかに曲がっている表面により、スパイラルミキサーに沿った圧力損失が非常に少ない一方で、連続的且つ完全な混合が行われると共に半径方向の温度、速度、及び組成の勾配がなくなる。
【0027】
上記のスパイラルミキサーの変更形態として、個々の螺旋要素を管軸に対して傾斜させて、それらの長さに沿ってテーパ状にすることができる。これにより、ミキサー要素と管壁との間の隙間がわずかに漸増することでこれらの間に角部すなわち接触点がなくなるという利益が得られる。したがって、デッドゾーンがなく、堆積も閉塞も生じ得ない。他方では、ミキサー要素の2つの側における流路の断面は、その長さに沿って変わり続ける。壁における接線流及び2つの側の間の圧力差に起因して、隣接する流路間で強力な直交流が生じる。これらの特徴により、混合効率が向上し、適当な断面乱流によって圧力損失が少なくなり、半径方向及び接線方向の速度場がより均一になる。管球の近くで速度が高く乱流が大きくなるほど、熱伝達係数が大きくなり表面がきれいになる。この自浄作用に加えて、角部がないことで異なる材料ごとの清掃が容易になる。したがって、こうして改良されたスパイラルミキサーでは、ミキサーの単位長さ当たりでより高い混合効率が得られ、閉塞の危険性が低減する。
【0028】
上記のミキサータイプを、図1の実施形態の混合要素29において用いることにより、吐出弁20の流体通路内の吐出材料の半径方向混合を行うことができる。もちろん、特定の用途のタイプ及びサイズに応じて、例えば低圧損(LDP)又はSMXミキサー等の他の静的ミキサータイプも用いられる場合がある。
【0029】
したがって、本発明は、図1の特定の実施形態に制限されず、吐出すべき材料のための加熱流体通路または流路を有する任意の弁装置で用いることができることに留意されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体通路を介して供給される液体媒体を吐出する弁装置(20)であって、
前記弁装置(20)は、前記流体通路の壁を加熱する発熱体(28)を備え、
前記流体通路に挿入され、且つ、前記液体媒体が前記流体通路を流れているときに前記液体媒体に半径方向流れ成分を導入するように構成されている少なくとも1つの混合要素(29)を有することを特徴とする弁装置。
【請求項2】
前記混合要素(29)は、前記液体媒体の流動流に対する所定の障害物を有する不動の静的ミキサー要素(294)を備える請求項1に記載の弁装置。
【請求項3】
前記静的ミキサー要素は、少なくとも1つの螺旋要素(294)を含む少なくとも1つのスパイラルミキサーを含む請求項2又は3に記載の弁装置。
【請求項4】
前記流体通路は、金属管によって画定されている請求項1乃至3のいずれか1項に記載の弁装置。
【請求項5】
前記液体媒体は、接着剤、グリース、又は油である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の弁装置。
【請求項6】
前記弁装置(20)は、前記弁装置(20)の少なくとも1つのノズルを制御する圧電駆動装置(22)を備える請求項1乃至5のいずれか1項に記載の弁装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−276199(P2010−276199A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−116268(P2010−116268)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(391019120)ノードソン コーポレーション (150)
【氏名又は名称原語表記】NORDSON CORPORATION
【Fターム(参考)】