説明

一体型弾性クリップを用いた電力用半導体固定装置

【課題】一体型弾性クリップを用いた電力用半導体固定装置を提供する。
【解決手段】一体型弾性クリップを用いた電力用半導体固定装置は、電力用半導体100、電力用半導体100の上方に位置し、当該電力用半導体100をヒートシンクに固定して半導体フルブリッジモジュールを形成するハウジング200、及びハウジング200の上方に位置し、電子回路が設けられるプリント基板を含み、電力用半導体100は、上方に突設されて上部のプリント基板に通電可能に接続されるブリッジ110を含み、ブリッジ110は、ハウジング200に形成された貫通孔230を介して電力用半導体100とプリント基板とを通電可能に接続する、電力用半導体100をヒートシンクに固定する装置であって、ハウジング200の下面に一体に装着されて下方に位置する電力用半導体100を付勢することによりヒートシンクに接触固定する弾性クリップ300を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車のコア構成であるインバータ及びチャージャの電力用半導体をブスバーなどと一体に製作する場合に電力用半導体をヒートシンクに一体に固定するための固定装置に関し、特に、U字状のクリップをプラスチックモジュールのハウジング部に一体にモールド装着することでクリップの弾性を利用してダイオードやモスフェットなどの電力用半導体を固定する、一体型弾性クリップを用いた電力用半導体固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、電力用半導体モジュールは、直流又は交流の電圧、電流をシステムの要求に応じた形態と大きさに変換する電力変換のコア半導体素子として活用される。電力用半導体モジュールは、インバータ、無停電電源供給装置、溶接機、エレベータなどの産業用応用分野及び自動車分野に主に適用される。
【0003】
このような電力用半導体のそれぞれに固定されて使用される放熱板の問題を解決するために、トランジスタやモスフェットなどの電力用半導体をヒートシンクに固定する際に、ヒートシンクにボルト挿入孔を形成して直接固定するか、又は電力用半導体の長さに応じて切断したアルミニウムバーで電力用半導体を覆ってヒートシンクに形成されたボルト挿入孔に締結ボルトを挿入して固定しているが、ヒートシンクにボルト挿入孔を形成しなければならないという問題があった。
【0004】
このような従来の電力用半導体の場合、プリント基板(PCB)に半田付けで取り付け、冷却のためにヒートシンクにボルト締めする方式を採用する。このような方式で取り付ける際には、作業性のために、プリント基板(PCB)の縁部に半導体を配置したり、内部に配置する場合はプリント基板(PCB)に孔を追加して組立性を確保する。
【0005】
従来技術による電力用半導体固定構造について図5を参照して説明すると次のとおりである。図5にはプリント基板(PCB)の縁部に半導体が配置される構成を示す。電力用半導体100は、ヒートシンク18の半導体設置部19上に接触して設置され、ブリッジ110はプリント基板20の一側に半田付けで接続される。また、プリント基板20は、ヒートシンク18のPCB固定溝24に嵌められて固定される。別体のクリップ型固定具10は、図5に示すように、電力用半導体100に対応する位置にヒートシンク18の特定の構造に応じて押圧結合されるようにする。
【0006】
また、図6に示すように、電力用半導体がハウジングを介して電子回路に接続されるようにするブリッジモジュールを採用した場合も、ハウジング下部の電力用半導体100は別体の固定クリップ60により外部から固定しなければならない。この場合、電力用半導体100を固定するために、半導体固定片130に形成された固定孔133を介して締結ボルトを螺合し、スチール製のクリップである固定クリップ60の押圧片65により弾性固定する。また、別体の固定クリップ60を固定するために、クリップ固定孔67から螺入される締結ボルトをさらに用いる。
【0007】
ここで、半導体容量が小さい場合はプラスチック製の締結ボルトを用いるが、これは耐熱性の面で脆弱であるという欠点があった。また、固定クリップ60が電力用半導体100を完全に覆う形状を有するため、ドライバなどの工具を入れるための孔をさらに必要とし、回路設計に制約を受けることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図5及び図6に示す従来技術においては、半導体の固定のための締結ボルトを螺合するために、プリント基板(PCB)の縁部に半導体を配置したり、それが不可能な場合、ドライバなどの工具を入れるための孔を必要とするため、位置的な制約によりプリント基板(PCB)のパターン設計の自由度が低下する。それだけでなく、クリップの固定のための締結ボルトをさらに必要とし、部品点数が増加する。
【0009】
また、前述したように、小型半導体の場合、電力用半導体の固定のための締結ボルトとしてプラスチック製の締結ボルトを使用するため、半導体の発熱により締結ボルトの変形やそれによる固定力の弱化、喪失が生じる恐れがある。
【0010】
本発明は、このような従来技術の問題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、弾性クリップをプラスチックモジュールのハウジング部の下面に一体に装着し、クリップの弾性を利用してダイオードやモスフェットなどの半導体を固定することにより、組立性を向上させると共にプリント基板のパターン設計の制約を減らす、一体型弾性クリップを用いた電力用半導体固定装置を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、固定クリップを固定する別体の締結ボルトなどの部品点数を削減し、プラスチック製の締結ボルトを使用しないことから半導体の発熱による締結ボルトの変形や固定力の弱化、喪失などの恐れを解消することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成を有する実施形態により実現される。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、電力用半導体をヒートシンクに固定する装置において、電気自動車のインバータやチャージャなどに使用される電力用半導体と、上部にインバータやチャージャなどの電子回路が設けられ、貫通孔を介して下方に位置する前記電力用半導体のブリッジを上方に位置するプリント基板に接続し、前記電力用半導体と共にヒートシンクに固定されるハウジングと、前記ハウジングの下面に一体に装着されて下方に位置する前記電力用半導体を付勢することにより前記ヒートシンクに接触固定する弾性クリップとを含む。
【0014】
本発明の他の実施形態によれば、前記弾性クリップは、平坦面及び下方に凹んだ凹部を有する鉄板で形成され、前記平坦面が前記ハウジングに一体にモールドされて結合される。また、前記凹部は、前記鉄板の幅方向に延びたU字状の凹部である押圧片を形成し、前記平坦面は、前記ハウジングに接触して一体にモールドされるモールド部を形成する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、前述した課題解決手段及び後述する構成、結合、作動関係により次のような効果を奏することができる。
【0016】
本発明は、半導体の固定のための別体の締結ボルトを必要とせず、弾性クリップをプラスチックモジュールのハウジング部の下面に一体に装着し、クリップの弾性を利用してダイオードやモスフェットなどの半導体を固定することにより、組立性を向上させると共にプリント基板のパターン設計の制約を減らすことができる。
【0017】
また、本発明は、固定クリップを固定する別体の締結ボルトなどの部品点数を削減することができるので、経済性を向上させることができる。
【0018】
さらに、本発明は、プラスチック製の締結ボルトを使用しないことから半導体の発熱による締結ボルトの変形や固定力の弱化、喪失などの恐れを解消し、組立性を向上させ、半導体の設計位置の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明によるブリッジモジュールにおける電力用半導体の固定を示す図である。
【図2】本発明による弾性クリップが電力用半導体を固定する動作を示す図である。
【図3】本発明によるハウジングと弾性クリップのモールド結合関係を示す図である。
【図4】本発明による弾性クリップが下部の電力用半導体を押圧して固定する動作を示す図である。
【図5】従来技術による電力用半導体をヒートシンクに固定する装置を示す図である。
【図6】従来技術によるブリッジモジュールにおける電力用半導体の固定を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明による一体型弾性クリップを用いた電力用半導体固定装置の好ましい実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
なお、本明細書及び特許請求の範囲で使用された用語や表現は、通常の意味や辞書的な意味に限定されてはならず、発明者は自らの発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義できるという原則に基づいて本発明の技術的思想に応じた意味と概念で解釈されるべきである。
【0022】
よって、本明細書に記載された実施形態と図面に開示された構成は本発明の最も好ましい実施形態にすぎず、本発明の技術的思想の全てを代弁しているわけではないので、本出願時点でこれらを代替する様々な均等物や変形例があり得ることを理解すべきである。
【0023】
以下、本発明の構成及び好ましい実施形態について図1〜図4を参照して詳細に説明する。
【0024】
本発明による一体型弾性クリップを用いた電力用半導体固定装置は、電力用半導体をヒートシンクに固定する装置であって、電気自動車のインバータやチャージャなどに使用される電力用半導体100と、上部にインバータやチャージャなどの電子回路が設けられ、貫通孔230を介して下方に位置する電力用半導体100のブリッジ110を上方に位置するプリント基板に接続し、電力用半導体100と共にヒートシンクに固定されるハウジング200と、ハウジング200の下面に一体に装着されて下方に位置する電力用半導体100を付勢することにより前記ヒートシンクに接触固定する弾性クリップ300とを含む。
【0025】
このように構成された本発明においては、図1に示すように、ハウジング200の下方に電力用半導体100が位置し、その下方にヒートシンク(図示せず)が位置する。また、電力用半導体100のブリッジ110は、ハウジング200の内部に備えられたブリッジ貫通孔230からハウジング200の上部に突出する。ブリッジ110は、上方に位置するインバータやチャージャなどに含まれるプリント基板(図示せず)に電力用半導体100を接続させる。
【0026】
このようにしてフルブリッジモジュール(Full Bridge Module)をヒートシンクに接続する方式は、通常のインバータ及びチャージャの接続方式から採用されるものであるので、以下その詳細な説明は省略する。
【0027】
本発明による弾性クリップを用いた電力用半導体固定方式は、PFC(Power Factor Corrector)モジュールやフルブリッジモジュールなどのモールドパッケージに適用することができる。
【0028】
図1に示すように、本発明による電力用半導体固定装置を用いた固定方式は、ハウジング200下部の電力用半導体100が下方に位置するヒートシンク(図示せず)に接触した状態で固定されるようにする。よって、電力用半導体100は、前記ヒートシンクに固定できるように一側に突出した固定具130を含み、当該固定具130の固定孔133を介して下部のヒートシンクに一体に固定されるようにしてもよい。
【0029】
また、電力用半導体100を上方から押圧して固定するハウジング200は、下部のヒートシンクに固定するためのハウジング固定孔210を含む。
【0030】
図1及び図2に示すように、本発明によれば、ハウジング200の下部には、電力用半導体100を付勢してヒートシンクに固定する弾性クリップ300が備えられる。当該弾性クリップ300は、ハウジング200と電力用半導体100との間に位置するように、ハウジング200の下面に一体に装着される。
【0031】
このようにハウジング200の下面に一体に装着された弾性クリップ300が存在するため、図6の従来技術のように電力用半導体100を別体の固定クリップにより外部から固定する必要がない。つまり、電力用半導体100の固定具130を遮蔽しないため作業空間を十分に確保することができ、半導体の位置調整を容易に行えるため作業性を向上させることができる。
【0032】
図2はハウジング200の下面に形成された弾性クリップ300が下部の電力用半導体100を付勢して固定する動作を示す図である。また、図3は弾性クリップ300の形状及びハウジング200の下面との結合関係を示す図である。
【0033】
図2及び図3に示すように、ハウジング200の下面には、平坦面及び凹部を有する鉄板(又はプラスチックパネル)で形成された弾性クリップ300が一体に結合される。
【0034】
図3に示すように、弾性クリップ300において、前記鉄板又はプラスチックパネルの幅方向に沿って下方に凹んだ凹部は押圧片330となり、前記鉄板の平坦面はハウジング200の下面に一体に結合されるモールド部350となる。
【0035】
弾性クリップ300の押圧片330は、前記鉄板の幅方向に延びて下方に凹んだU字状の凹部であって、複数箇所に設けられてもよいが、特に下部に固定される電力用半導体に対応する箇所に形成されてもよい。また、弾性クリップ300のモールド部350は、ハウジング200に接触して一体にモールドされてもよく、接着剤によりハウジング200に一体に結合されてもよい。
【0036】
ここで、弾性クリップ300は、前述した形状に限定されるものではなく、幅方向に沿って波状の凹凸部を有する鉄板(又はプラスチックパネル)で形成されてもよく、様々な変形が可能である。この場合、上方に突出した凸部は、モールド部350を形成し、ハウジング200に接触して一体にモールドされてもよく、接着剤によりハウジング200に一体に結合されてもよい。また、下方に凹んだ凹部は、下部の電力用半導体100を付勢して固定する押圧片330を形成する。
【0037】
図4は本発明による弾性クリップ300の押圧片330が電力用半導体100を上方から付勢して固定する作用を示す立面図である。ここで、ハウジング200を固定孔210を介してヒートシンクに固定し、かつ下方に加わる圧力Pが作用する際に弾性クリップ300の押圧片330が電力用半導体100をヒートシンクに接触させて固定するため、別途の電力用半導体固定装置を採用することなく、フルブリッジモジュールをパッケージ形態で設計することができる。
【0038】
すなわち、フルブリッジモジュールをヒートシンクに取り付ける際に、電力用半導体100がヒートシンクに密着して電力用半導体100の上方に位置する弾性クリップ300が電力用半導体100を付勢するように設計される。従って、半導体の固定のための別体の締結ボルトなどの締結手段をさらに含むことなく、電力用半導体100をヒートシンクに密着させて取り付けることにより、締結ボルトなどの部品点数を削減して材料費を低減することができ、組立性が向上する。さらに、プラスチック製の締結ボルトを使用した場合は半導体の発熱により変形が生じて固定力を喪失することがあるが、これを解消することができる。
【0039】
また、半導体の位置の自由度を高めることにより、位置的制約を克服し、プリント基板のパターン設計の自由度を高めることができる。
【0040】
前述した実施形態は本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という)が本発明による一体型弾性クリップを用いた電力用半導体固定装置を容易に実施できるようにする好ましい実施形態にすぎず、前述した実施形態及び添付図面に限定されるものではないので、これらにより本発明の権利範囲が限定されるものではない。よって、本発明の技術的思想から逸脱しない限り様々な置換、変形及び変更が可能であることは当業者にとって明らかであり、当業者により置換、変形及び変更される場合も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0041】
100 電力用半導体
110 ブリッジ
200 ハウジング
230 貫通孔
300 弾性クリップ
330 押圧片
350 モールド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力用半導体、前記電力用半導体の上方に位置し、当該電力用半導体をヒートシンクに固定して半導体フルブリッジモジュールを形成するハウジング、及び前記ハウジングの上方に位置し、電子回路が設けられるプリント基板を含み、
前記電力用半導体は、上方に突設されて上部の前記プリント基板に通電可能に接続されるブリッジを含み、
前記ブリッジは、前記ハウジングに形成された貫通孔を介して前記電力用半導体と前記プリント基板とを通電可能に接続する、電力用半導体をヒートシンクに固定する装置であって、
前記ハウジングの下面に一体に装着されて下方に位置する前記電力用半導体を付勢することにより前記ヒートシンクに接触固定する弾性クリップを含むことを特徴とする一体型弾性クリップを用いた電力用半導体固定装置。
【請求項2】
前記弾性クリップは、前記ハウジングの下面に一体にモールドされて設けられることを特徴とする請求項1に記載の一体型弾性クリップを用いた電力用半導体固定装置。
【請求項3】
前記弾性クリップは、平坦面及び下方に凹んだ凹部を有する鉄板で形成され、前記平坦面が前記ハウジングに一体にモールドされて結合されることを特徴とする請求項1に記載の一体型弾性クリップを用いた電力用半導体固定装置。
【請求項4】
前記凹部は、前記鉄板の幅方向に延びたU字状の凹部である押圧片を形成し、
前記平坦面は、前記ハウジングに接触して一体にモールドされるモールド部を形成することを特徴とする請求項3に記載の一体型弾性クリップを用いた電力用半導体固定装置。
【請求項5】
前記押圧片は、前記ハウジングの下方に位置する電力用半導体に対応する箇所に複数形成されることを特徴とする請求項4に記載の一体型弾性クリップを用いた電力用半導体固定装置。
【請求項6】
前記弾性クリップは、前記ハウジングの下面でクリップの弾性力を利用して下方に位置する前記電力用半導体を付勢して固定することを特徴とする請求項4に記載の一体型弾性クリップを用いた電力用半導体固定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−80910(P2013−80910A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−194819(P2012−194819)
【出願日】平成24年9月5日(2012.9.5)
【出願人】(593121379)エルエス産電株式会社 (221)
【氏名又は名称原語表記】LSIS CO., LTD
【Fターム(参考)】