一体型緩衝体鼻枕を有する患者界面材
本発明の患者界面材(10)は、気体を送出する一対の鼻枕(28)を備える。鼻枕(28)は、患者界面材の内部空洞を第1の室(24)と、第2の室(26)とに分割する隔壁(22)から突出し、患者の顔面上に動作可能に患者界面材を取付けるとき、第1の室(24)は、患者の鼻を収容しかつ鼻枕(28)が患者の鼻内に突出し、第2の室(26)は、第2の室(26)を通じて鼻枕(28)に気体を送出しかつ鼻枕(28)からの気体を排出する接続部(30)を有する。
【発明の詳細な説明】
【優先権主張】
【0001】
本願は、2005年10月24日に特許出願された米国仮特許出願第60/729,516号に基づく米国特許法第119条(e)項の規定による優先権を主張すると共に、参照することにより前記仮特許出願の内容を本願の一部とする。
【技術分野】
【0002】
本発明は、患者の気道内に気体流を供給する圧力支援システムに使用される患者界面材、特に、一体化された緩衝体と、一体化された鼻枕とを有する支持装置を備える患者界面材に関する。
【背景技術】
【0003】
例えば、非侵襲的又は外科的に患者の食道内気管に挿入せずに、患者の気道内に呼吸気体流を供給することが必要又は望ましい数多くの状況が存在する。例えば、公知の非侵襲性換気法として知られる技術を使用して、患者に換気を行うことは、公知である。また、患者の呼吸周期により変化する2段階圧又は患者の監視状態により変化する自動滴定圧等の可変気道圧又は持続気道陽圧(CPAP)を供給することも知られる。通常の圧力支援治療を施して、睡眠時無呼吸症候群、特に閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)、チェーンストークス呼吸症又は鬱血性心不全等の医学的な障害を治療している。
【0004】
非侵襲性の換気圧力支援治療では、鼻用マスク、鼻/口用マスク又はフルフェースマスク(全面型面体)の患者界面材を患者の顔面上に通常取付けなければならない。患者界面材を通じて人工呼吸器又は圧力支援システムを患者の気管に気体接続すると、気体流発生装置又は気体圧発生装置から呼吸用気体流が患者の気道に送出される。
【0005】
通常長期間患者界面材を着用するので、様々な課題を考慮しなければならない。例えば、持続気道陽圧を供給して閉塞性睡眠時無呼吸症を治療するとき、睡眠時間中、患者は一晩中常に患者界面材を着用しなければならない。この状況では、可能な限り快適に患者界面材を着用できなければ、患者が界面材装置の着用を拒否して、所定の圧力支援治療目的を達成できない課題がある。また、患者界面材の不快な着用感を患者が感ぜずに、十分に密着する密封構造を患者の顔面に形成することが重要である。マスクの周辺付近での気体の過度漏洩を防止して、患者の顔面にマスクを取付けると、患者の顔面に過度の力でマスクが押圧されて、患者が頻繁に不快感を感じる難点もある。
【0006】
患者界面材は、通常外郭に取付けられる筐体殻及び緩衝体(密封体又は密封部材ともいう)を有する。患者の顔面に配置される緩衝体は、患者の皮膚表面に接触して、患者の顔面との界面を密封する。患者界面材は、患者の頭部に捲回されるヘッドギア組立体により同一箇所に保持される。患者界面材及びヘッドギアは、共に患者界面組立体を形成する。ヘッドギア組立体は、患者界面材から延伸する可撓性で可調性の帯紐を通常備え、帯紐により患者に患者界面材が取付けられる。
【0007】
前記患者界面材に加え、患者の鼻孔内を密封する鼻枕を備える患者界面材も公知である。図1に明示する鼻枕は、管状の気体送出装置に連結され、頭頂部に取付けられる半剛性又は剛性のあるヘッドギア102が気体送出装置に装着される。詳述すると、図1に示す従来の鼻枕104は、外郭106により支持され、外郭106は、回転環(スイベル)108に接続され、回転環108は、頭上管110に接続され、頭上管110は、気体供給源112に接続される。患者の頭頂部に取付けられるヘッドギア102は、鼻枕を通過する患者の呼吸気体を適切に搬送可能にヘッドギア組立体を適正な位置に固定する。図1の頭上管の代わりに、患者の顔面又は耳に可撓性管を捲回する他の代替装置(図示せず)もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の鼻枕は、良好に機能しているが、更に改善することが望ましい。例えば、現在の鼻枕では、鼻孔と鼻枕との間に適切な密封構造を形成して患者の顔面上に鼻枕を確実に配置するため、鼻枕により患者の鼻孔内を圧迫することが多い。また、確実に患者界面材を保持しかつ配置するため、かなり大きくかつ嵩張るヘッドギア組立体を使用する必要のある場合が多い。図1に明示するように、鼻枕は、フック形状で上方に延伸する。このフック形状は、上方に強制的に患者の鼻を吊り上げて、患者に不快感を与える傾向がある。第2に、患者の顔面に対する接触度を最小化する点に本患者界面材の長所があるが、小領域に集中する吊上げ力を生ずる点は、本患者界面材の欠点でもある。更に、患者界面材を確実に配置して適切な密封構造を形成するには、ヘッドギア組立体に多数の調整部分を設ける必要があろう。また、必要な安定性を欠く鼻枕では、究極的に患者と鼻枕との間の密封性が犠牲となる。
【0009】
従って、鼻枕を有する患者界面材を新規に改善する必要がある。
【0010】
従って、本発明は、前記従来技術での複数の欠陥のうち、1又は2以上の欠陥を解決することを目的とする。外縁を有する部材と、この部材に一体に形成される隔壁とを備える単一の一体構造体として成形され、患者が使用する患者界面材を有する本発明の一実施の形態により、この目的が達成される。患者界面材の内部空洞は、隔壁により患者の鼻を収容する第1の室と、第2の室とに分割される。隔壁と一体に形成される一対の鼻枕は、隔壁から第1の室に向って突出し、患者の顔面上に動作可能に患者界面材を取付けるとき、一対の鼻枕は、患者の鼻孔内に完全に又は部分的に挿入される。前記部材は、第2の室に流体接続及び一体形成される接続部を備え、1対の鼻枕を通じて患者に気体を送出しかつ患者からの気体を排出する。
【0011】
本発明の他の実施の形態では、内部空洞を形成する一体型で単一体の患者界面材と、患者の鼻を収容する第1の室と第2の室とに内部空洞を分割する分割手段とを備える。患者界面材は、分割手段から第1の室に向って突出する突出手段を備え、突出手段は、患者の少なくとも1つの鼻孔に気体を送出しかつ鼻孔からの気体を排出する。最後に、患者界面材は、第2の室に流体接続される接続手段を備え、接続手段は、第2の室と送出手段とを通じて患者に気体を送出しかつ患者からの気体を排出する。
【0012】
更に、別の実施の形態では、本発明は、患者が使用する患者界面材に関連する。患者界面材は、気体を送出する一対の突出部を備える。一対の突出部は、隔壁から延伸し、隔壁は、第1の室と、第2の室とに患者界面材を分割し、第1の室は、患者の顔面上に動作可能に患者界面材を取付けるとき、患者の鼻を収容すると共に、一対の突出部が第1の室内に延伸し、第2の室は、第2の室を通じて一対の突出部に気体を送出しかつ突出部からの気体を排出する接続部(ポート)を有する。
【0013】
参照符号により各図の対応する部分を示す添付図面に関する以下の説明、特許請求の範囲及び本明細書の全構成部分により、本発明の前記目的及び他の目的、特徴及び特性、構造の関連要素の動作法及び機能、部品の組み合わせ並びに製造経済性は、明らかとなろう。しかしながら、図面は、図示及び説明の目的に過ぎず、発明の範囲を制限しないものであることは、明確に理解できよう。別途明記しない限り、明細書及び特許請求の範囲に使用する用語「1つ(a)」、「1つ(an)」及び「その(the)」の単数形は、複数の対象を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、各部材に対応する各参照符号を添付の図面に記載する。
【0015】
図2〜図4に示すように、本発明は、部材11を備える患者界面材10に関連し、部材11は、外殻12と、緩衝体13とを備え、緩衝体13は、患者界面材10の内部空洞18に連絡する開口部16を包囲する外縁部14を有する。緩衝体13は、フランジ20を備え、図示の実施の形態では、フランジ20は、内部空洞18から外側にラッパ状に広がり、内部空洞18の追加空間を形成する。
【0016】
図2〜図4に続き、図5に示すように、内部空洞18を第1の室24と、第2の室26とに分割する隔壁22が患者界面材10に設けられ、第1の室24は、患者の鼻を収容する。患者界面材10は、更に一対の鼻枕28を有し、一対の鼻枕28は、隔壁22に一体に形成されかつ第1の室24に向って突出し、図6に示す患者の顔面Aに動作可能に患者界面材10を取付けると、患者の鼻孔内に鼻枕28が全部又は部分的に挿入される。
【0017】
患者界面材10は、第2の室26に流体接続される一体形成口(接続部)30を有し、一体形成口30及び鼻枕28を通じて患者に気体を送出しかつ患者からの気体を排出する。公知のあらゆる適切な呼吸用気体を患者に供給する気体に使用できる。気体供給源32と気体送出管34とを通じて、患者に気体を供給できる。
【0018】
全前図と共に図7に示すように、各鼻枕28と隔壁22との間に形成される伸縮部(蛇腹部)36が患者界面材10に設けられる。各伸縮部36の伸縮により、各鼻枕28は、隔壁22に対し移動可能に接続される。図7に示すように、伸縮部36は、湾曲する隔膜である。しかしながら、本発明の範囲から逸脱しない種々の他の形態の伸縮部36を使用することができる。各伸縮部36により、対応する鼻枕28を移動させて、患者の鼻孔内又は鼻腔内に鼻枕28を容易に整合させかつ挿入できる。各鼻枕28の頂点に孔40を有する楕円状半球部38を各鼻枕28に設けることが望ましい。しかしながら、この構成により本発明を限定解釈すべきではない。本発明の範囲から逸脱せずに、その他種々の幾何学的構成を使用することができる。
【0019】
図5と図7に明示するように、隔壁22は、接続部30の上部位置から開口部16の底面周辺の位置に下方に傾斜する。気体流路の専用通路を形成する孔40を鼻枕28の頂点に設ける場合を除き、第1の室24と第2の室26との間の隔壁22によりほぼ緊密な気密封止構造を形成することが望ましい。
【0020】
開口部16に隣接する隔壁22は、伸縮部36と鼻枕28を移動可能又は変形可能な位置に支持する楕円形の一対の端部42を有するので、患者の顔面A上に動作可能に患者界面材10を取付けるとき、楕円形の鼻孔内に細長い半球状の鼻枕28を挿入することができる。例えば、図5に明示するように、各端部42の高さは、最大でも開口部16に隣接させると共に、開口部16からの距離を増加させながら、高さを減少することができる。
【0021】
付加的又は別法として、図9に明示するように、必要に応じて、外殻部12の側部に近い各端部42の高さを、患者界面材10の縦軸44に近い端部42の高さより高くしてもよい。患者の顔面A上に患者界面材10を動作可能に取付けるとき、前記高低差により縦軸44に対して内側に各鼻枕28が傾斜するので、ほぼ楕円形を有する患者の両鼻孔内に鼻枕28の楕円状半球部38を容易に挿入することができる。
【0022】
患者の顔面A上に患者界面材10を動作可能に取付けるとき、患者の楕円形状を有する両鼻孔に対する所望の位置に各伸縮部36と各鼻枕28を容易に配置できるが、この点が各楕円型端部42の利点となることは、当業者に良好に理解されよう。しかしながら、隔壁22、楕円型端部42及び伸縮部36の1つの機能を多くの適切で好適な方法で実現できるのであるから、隔壁22、単数又は複数の楕円型端部42及び一方又は両方の伸縮部36に関する前記記載により、本発明を限定解釈すべきではない。例えば、各端部42を省略し、省略した端部42の位置決め機能を代用するように各鼻枕28の下部を修正し、例えば、省略した端部42の形に各鼻枕28の下部を下方に延伸させることができる。このように鼻枕28を変更すれば、変更した鼻枕28の下方に延伸する下部と隔壁22との間に対応する伸縮部36を接続することができる。
【0023】
全前図と図8及び図9から明らかなように、患者界面材10の縦軸44に対し、各鼻枕28の縦軸46は、角度48で配置される。各鼻枕28が外側に傾斜する角度48と、各鼻枕28を回動させる端部42と、患者の両鼻孔に嵌合される各鼻枕28の楕円状半球部38と、伸縮部36の伸縮運動との組み合わせにより、患者の顔面A上に患者界面材10を動作可能に取付けるとき、患者の鼻孔内に各鼻枕28がぴったりと嵌合し、この場合に、液密に嵌合することが望ましい。患者の顔面A上に患者界面材10を動作可能に取付けるとき、患者の各鼻孔内に対応する鼻枕28を各伸縮部36により押圧(付勢)することが望ましい。しかしながら、これは、本発明を限定するものと解釈すべきではない。
【0024】
全前図と共に図10〜図12に示すように、患者界面材10の他の実施の形態では、周辺端部14が第1の室内に対面するように、フランジ20は、内部空洞の第1の室24内に向って内側に丸まり又は湾曲する。本実施の形態は、第1の室24から外側にフランジ20が湾曲する図2〜図9の患者界面材10の実施の形態とは対照的である。第1の室24から外側にラッパ状に広がって湾曲する図2〜図9のフランジ20とは異なり、図10〜図12に示すフランジ20は、第1の室24内に内側に湾曲するが、図10〜図12に示す患者界面材10の実施の形態は、図2〜図9に示す患者界面材10の実施の形態に類似する。従って、図10〜図12に示す患者界面材10の実施の形態の更なる詳細な説明を省略して、不必要な冗長説明を回避する。
【0025】
図示の通り、本発明は、患者が使用する一体型又は単一の患者界面材に関する。射出成形、回転成形、ブロー成形等の単一構造体を形成するあらゆる適切な成形法により患者界面材を形成できる。製造工程の完了時に、弾性のある適切な生体親和性材料により患者界面材を形成することが望ましい。前記患者界面材10の各実施の形態によるフランジ20及び/又は鼻枕28が、患者快適性を目的として、単一構造の他の部分より柔らかい弾性を有し、使用時に、患者の顔及び/又は鼻孔に対して適切な気密密封(流体密封)構造を容易に形成できることが望ましい。しかしながら、患者の両鼻孔及び/又は顔面に対して鼻枕28及び/又はフランジ20が気密密封構造を形成しても、患者界面材10のいずれかの実施の形態の使用に単一又は2つの気密密封構造を必要としないことも企図できる以上、気密密封構造に本発明を限定して解釈すべきではない。
【0026】
あらゆる適切な方法で、患者の顔面A上に前記記載の患者界面材10を動作可能に取付けることができる。動作可能に患者の顔面A上に患者界面材10を取付ける適切な手段の一例は、バーネットら名義の米国特許第6651663号に開示されるが、参照によりこの米国特許を本願の明細書の一部とする。前記米国特許は、患者界面材に組み合わせられる環状部材を開示し、患者界面材に設けられる多数の切欠部は、ヘッドギアを環状部材に固定するヘッドギア装着部として機能する。上記米国特許に示される環状部材の実施の形態では、ヘッドギア装着部に3つの切欠部が設けられる。しかしながら、ヘッドギア装着部の数は、2又は4等のあらゆる所望数でよいから、本発明の限定事項として解釈すべきではない。患者の顔面A上に患者界面材10を動作可能に取付ける他の手段を図22A〜図22Cに示すが、これらは、ホら名義の米国特許公開第2005/0076913号の明細書に開示され、この米国特許公開公報の内容を参照により、本願の明細書の一部とする。患者の顔面A上に動作可能に患者界面材10を取付ける種々の手段は、当業者に周知であるが、簡便のため、患者の顔面A上に動作可能に患者界面材10を取付ける他のあらゆる手段のみならず、ヘッドギアHにより前記手段を図6に図示する。
【0027】
本発明の新規な特徴は、患者の鼻周辺に密着する緩衝体(緩衝部材)13と、患者の鼻孔内に密着する鼻枕28との両構成を患者界面材に設ける点にある。この新規な形態により、患者と患者界面材10との間に密封構造を形成する機能に対して、患者界面材を安定して装着する機能とを分離することができる。ほぼ円錐形に形成される緩衝体は、所定の位置にマスクを固定しかつ安定させる機能がある。患者の顔面Aに向って接続部30を通る軸方向に外力が作用するとき、外力の大部分は、鼻枕28よりもフランジ20に加えられる。患者の鼻孔周囲の領域は、特に繊細であることが周知である。従来の鼻枕の構造では、この繊細な領域に過剰な押圧力を集中させることが多い。これとは異なり、本発明では、患者の鼻の周囲に前記押圧力を分散させて、不快感を軽減することができる。鼻枕を使用する従来の患者界面材では、多数の複雑な構造をヘッドギア組立体に設けて、患者の顔面上に適切に鼻枕を配置しなければならなかった。本発明は、複雑な構成を要しない。鼻枕28は、患者に気体を送出するのに十分な密封構造を患者とマスクとの間に維持する機能に優れる。事実、他の実施の形態では、蒸気を排出する複数の通気孔を第1の室24に設けて、患者が経験する快適性を増進することが望ましいことを本発明者は、企図する。第2の室26と鼻枕28とに密封構造を維持でき、前記他の実施の形態を達成できる。
【0028】
本発明の更なる他の実施の形態では、単一構造で形成される患者界面材の部品を逸失する可能性を最小化することができる。例えば、隔壁に一体に鼻枕を形成することが好ましい。別法として、鼻枕を隔壁から分離して形成しかつマスクに接着し又は他の方法で接合することもできる。これにより、患者の特定形状の鼻孔に適合する大きさと形状の鼻枕を患者が選択することができ、適切な鼻枕と交換しなければ、過度の摩擦が生ずるであろう。いずれの実施の形態でも、鼻枕28を通じて患者に送出する前に、患者に供給される気体は、第2の室26で混合される。この混合過程により、同一圧力で同一の気体を確実に患者の両鼻孔に送出することができる。
【0029】
また更に、本発明では、患者の鼻孔内に適正に嵌合する楕円状半球部(鼻枕)が患者界面材10に設けられる。解剖学的にほぼ正確な構造で構成される楕円状半球部は、患者にとって極めて快適である。また、楕円状半球部は、患者の鼻孔長さに沿って大きな密封構造を形成すると共に、気流を妨害する干渉作用を最小化する。更に、伸縮部又は湾曲隔膜36上に鼻枕を形成できる。この特徴により、各患者の特定の鼻孔構造に鼻枕28を円滑に適合させて、患者の快適性と、気密密封構造の整合性を向上することができる。
【0030】
本発明の更に別の特徴は、内側でなく、外側にフランジ20が湾曲する実施の形態も採用できる点である。どの形態でも適切な支持体になるが、外側にフランジ20を湾曲させる構造により、鼻枕28に対して追加の間隙を患者に与えられるので、特に有利である。
【0031】
現在最も実用的かつ好適と思われる実施の形態を図示して詳記したが、前記記載は単に説明の便宜に過ぎず、本発明を開示した実施の形態に限定されず、本発明は、特許請求の範囲内に該当すると共に、特許請求の範囲と同趣旨の変更態様並びに同等の装置を包含すること企図する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】動作可能に患者に取付けられる従来の鼻枕と流体供給装置を示す斜視図
【図2】本発明による患者界面材を示す開口部から見た斜視図
【図3】図2に示す患者界面材の外観斜視図
【図4】図2に示す患者界面材の平面図
【図5】図4の5−5線に沿う断面図
【図6】患者の顔面上に動作可能に図2の患者界面材を取付けた状態を示す概略図
【図7】図4の6−6線に沿う断面図
【図8】図2に示す患者界面材の側面図
【図9】図8の9−9線に沿う断面図
【図10】本発明の他の実施の形態による患者界面材の斜視図
【図11】図9に示す患者界面材の開口部から見た正面図
【図12】図11の12−12線に沿う断面図
【符号の説明】
【0033】
(10)・・患者界面材、 (12)・・部材、 (13)・・緩衝体、 (16)・・開口部、 (20)・・フランジ、 (22)・・隔壁、分割手段、 (24)・・第1の室、 (26)・・第2の室、 (28)・・鼻枕、突出手段、 (30)・・接続部、送出手段、 (36)・・付勢手段、 (38)・・半球状構造体
【優先権主張】
【0001】
本願は、2005年10月24日に特許出願された米国仮特許出願第60/729,516号に基づく米国特許法第119条(e)項の規定による優先権を主張すると共に、参照することにより前記仮特許出願の内容を本願の一部とする。
【技術分野】
【0002】
本発明は、患者の気道内に気体流を供給する圧力支援システムに使用される患者界面材、特に、一体化された緩衝体と、一体化された鼻枕とを有する支持装置を備える患者界面材に関する。
【背景技術】
【0003】
例えば、非侵襲的又は外科的に患者の食道内気管に挿入せずに、患者の気道内に呼吸気体流を供給することが必要又は望ましい数多くの状況が存在する。例えば、公知の非侵襲性換気法として知られる技術を使用して、患者に換気を行うことは、公知である。また、患者の呼吸周期により変化する2段階圧又は患者の監視状態により変化する自動滴定圧等の可変気道圧又は持続気道陽圧(CPAP)を供給することも知られる。通常の圧力支援治療を施して、睡眠時無呼吸症候群、特に閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)、チェーンストークス呼吸症又は鬱血性心不全等の医学的な障害を治療している。
【0004】
非侵襲性の換気圧力支援治療では、鼻用マスク、鼻/口用マスク又はフルフェースマスク(全面型面体)の患者界面材を患者の顔面上に通常取付けなければならない。患者界面材を通じて人工呼吸器又は圧力支援システムを患者の気管に気体接続すると、気体流発生装置又は気体圧発生装置から呼吸用気体流が患者の気道に送出される。
【0005】
通常長期間患者界面材を着用するので、様々な課題を考慮しなければならない。例えば、持続気道陽圧を供給して閉塞性睡眠時無呼吸症を治療するとき、睡眠時間中、患者は一晩中常に患者界面材を着用しなければならない。この状況では、可能な限り快適に患者界面材を着用できなければ、患者が界面材装置の着用を拒否して、所定の圧力支援治療目的を達成できない課題がある。また、患者界面材の不快な着用感を患者が感ぜずに、十分に密着する密封構造を患者の顔面に形成することが重要である。マスクの周辺付近での気体の過度漏洩を防止して、患者の顔面にマスクを取付けると、患者の顔面に過度の力でマスクが押圧されて、患者が頻繁に不快感を感じる難点もある。
【0006】
患者界面材は、通常外郭に取付けられる筐体殻及び緩衝体(密封体又は密封部材ともいう)を有する。患者の顔面に配置される緩衝体は、患者の皮膚表面に接触して、患者の顔面との界面を密封する。患者界面材は、患者の頭部に捲回されるヘッドギア組立体により同一箇所に保持される。患者界面材及びヘッドギアは、共に患者界面組立体を形成する。ヘッドギア組立体は、患者界面材から延伸する可撓性で可調性の帯紐を通常備え、帯紐により患者に患者界面材が取付けられる。
【0007】
前記患者界面材に加え、患者の鼻孔内を密封する鼻枕を備える患者界面材も公知である。図1に明示する鼻枕は、管状の気体送出装置に連結され、頭頂部に取付けられる半剛性又は剛性のあるヘッドギア102が気体送出装置に装着される。詳述すると、図1に示す従来の鼻枕104は、外郭106により支持され、外郭106は、回転環(スイベル)108に接続され、回転環108は、頭上管110に接続され、頭上管110は、気体供給源112に接続される。患者の頭頂部に取付けられるヘッドギア102は、鼻枕を通過する患者の呼吸気体を適切に搬送可能にヘッドギア組立体を適正な位置に固定する。図1の頭上管の代わりに、患者の顔面又は耳に可撓性管を捲回する他の代替装置(図示せず)もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の鼻枕は、良好に機能しているが、更に改善することが望ましい。例えば、現在の鼻枕では、鼻孔と鼻枕との間に適切な密封構造を形成して患者の顔面上に鼻枕を確実に配置するため、鼻枕により患者の鼻孔内を圧迫することが多い。また、確実に患者界面材を保持しかつ配置するため、かなり大きくかつ嵩張るヘッドギア組立体を使用する必要のある場合が多い。図1に明示するように、鼻枕は、フック形状で上方に延伸する。このフック形状は、上方に強制的に患者の鼻を吊り上げて、患者に不快感を与える傾向がある。第2に、患者の顔面に対する接触度を最小化する点に本患者界面材の長所があるが、小領域に集中する吊上げ力を生ずる点は、本患者界面材の欠点でもある。更に、患者界面材を確実に配置して適切な密封構造を形成するには、ヘッドギア組立体に多数の調整部分を設ける必要があろう。また、必要な安定性を欠く鼻枕では、究極的に患者と鼻枕との間の密封性が犠牲となる。
【0009】
従って、鼻枕を有する患者界面材を新規に改善する必要がある。
【0010】
従って、本発明は、前記従来技術での複数の欠陥のうち、1又は2以上の欠陥を解決することを目的とする。外縁を有する部材と、この部材に一体に形成される隔壁とを備える単一の一体構造体として成形され、患者が使用する患者界面材を有する本発明の一実施の形態により、この目的が達成される。患者界面材の内部空洞は、隔壁により患者の鼻を収容する第1の室と、第2の室とに分割される。隔壁と一体に形成される一対の鼻枕は、隔壁から第1の室に向って突出し、患者の顔面上に動作可能に患者界面材を取付けるとき、一対の鼻枕は、患者の鼻孔内に完全に又は部分的に挿入される。前記部材は、第2の室に流体接続及び一体形成される接続部を備え、1対の鼻枕を通じて患者に気体を送出しかつ患者からの気体を排出する。
【0011】
本発明の他の実施の形態では、内部空洞を形成する一体型で単一体の患者界面材と、患者の鼻を収容する第1の室と第2の室とに内部空洞を分割する分割手段とを備える。患者界面材は、分割手段から第1の室に向って突出する突出手段を備え、突出手段は、患者の少なくとも1つの鼻孔に気体を送出しかつ鼻孔からの気体を排出する。最後に、患者界面材は、第2の室に流体接続される接続手段を備え、接続手段は、第2の室と送出手段とを通じて患者に気体を送出しかつ患者からの気体を排出する。
【0012】
更に、別の実施の形態では、本発明は、患者が使用する患者界面材に関連する。患者界面材は、気体を送出する一対の突出部を備える。一対の突出部は、隔壁から延伸し、隔壁は、第1の室と、第2の室とに患者界面材を分割し、第1の室は、患者の顔面上に動作可能に患者界面材を取付けるとき、患者の鼻を収容すると共に、一対の突出部が第1の室内に延伸し、第2の室は、第2の室を通じて一対の突出部に気体を送出しかつ突出部からの気体を排出する接続部(ポート)を有する。
【0013】
参照符号により各図の対応する部分を示す添付図面に関する以下の説明、特許請求の範囲及び本明細書の全構成部分により、本発明の前記目的及び他の目的、特徴及び特性、構造の関連要素の動作法及び機能、部品の組み合わせ並びに製造経済性は、明らかとなろう。しかしながら、図面は、図示及び説明の目的に過ぎず、発明の範囲を制限しないものであることは、明確に理解できよう。別途明記しない限り、明細書及び特許請求の範囲に使用する用語「1つ(a)」、「1つ(an)」及び「その(the)」の単数形は、複数の対象を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、各部材に対応する各参照符号を添付の図面に記載する。
【0015】
図2〜図4に示すように、本発明は、部材11を備える患者界面材10に関連し、部材11は、外殻12と、緩衝体13とを備え、緩衝体13は、患者界面材10の内部空洞18に連絡する開口部16を包囲する外縁部14を有する。緩衝体13は、フランジ20を備え、図示の実施の形態では、フランジ20は、内部空洞18から外側にラッパ状に広がり、内部空洞18の追加空間を形成する。
【0016】
図2〜図4に続き、図5に示すように、内部空洞18を第1の室24と、第2の室26とに分割する隔壁22が患者界面材10に設けられ、第1の室24は、患者の鼻を収容する。患者界面材10は、更に一対の鼻枕28を有し、一対の鼻枕28は、隔壁22に一体に形成されかつ第1の室24に向って突出し、図6に示す患者の顔面Aに動作可能に患者界面材10を取付けると、患者の鼻孔内に鼻枕28が全部又は部分的に挿入される。
【0017】
患者界面材10は、第2の室26に流体接続される一体形成口(接続部)30を有し、一体形成口30及び鼻枕28を通じて患者に気体を送出しかつ患者からの気体を排出する。公知のあらゆる適切な呼吸用気体を患者に供給する気体に使用できる。気体供給源32と気体送出管34とを通じて、患者に気体を供給できる。
【0018】
全前図と共に図7に示すように、各鼻枕28と隔壁22との間に形成される伸縮部(蛇腹部)36が患者界面材10に設けられる。各伸縮部36の伸縮により、各鼻枕28は、隔壁22に対し移動可能に接続される。図7に示すように、伸縮部36は、湾曲する隔膜である。しかしながら、本発明の範囲から逸脱しない種々の他の形態の伸縮部36を使用することができる。各伸縮部36により、対応する鼻枕28を移動させて、患者の鼻孔内又は鼻腔内に鼻枕28を容易に整合させかつ挿入できる。各鼻枕28の頂点に孔40を有する楕円状半球部38を各鼻枕28に設けることが望ましい。しかしながら、この構成により本発明を限定解釈すべきではない。本発明の範囲から逸脱せずに、その他種々の幾何学的構成を使用することができる。
【0019】
図5と図7に明示するように、隔壁22は、接続部30の上部位置から開口部16の底面周辺の位置に下方に傾斜する。気体流路の専用通路を形成する孔40を鼻枕28の頂点に設ける場合を除き、第1の室24と第2の室26との間の隔壁22によりほぼ緊密な気密封止構造を形成することが望ましい。
【0020】
開口部16に隣接する隔壁22は、伸縮部36と鼻枕28を移動可能又は変形可能な位置に支持する楕円形の一対の端部42を有するので、患者の顔面A上に動作可能に患者界面材10を取付けるとき、楕円形の鼻孔内に細長い半球状の鼻枕28を挿入することができる。例えば、図5に明示するように、各端部42の高さは、最大でも開口部16に隣接させると共に、開口部16からの距離を増加させながら、高さを減少することができる。
【0021】
付加的又は別法として、図9に明示するように、必要に応じて、外殻部12の側部に近い各端部42の高さを、患者界面材10の縦軸44に近い端部42の高さより高くしてもよい。患者の顔面A上に患者界面材10を動作可能に取付けるとき、前記高低差により縦軸44に対して内側に各鼻枕28が傾斜するので、ほぼ楕円形を有する患者の両鼻孔内に鼻枕28の楕円状半球部38を容易に挿入することができる。
【0022】
患者の顔面A上に患者界面材10を動作可能に取付けるとき、患者の楕円形状を有する両鼻孔に対する所望の位置に各伸縮部36と各鼻枕28を容易に配置できるが、この点が各楕円型端部42の利点となることは、当業者に良好に理解されよう。しかしながら、隔壁22、楕円型端部42及び伸縮部36の1つの機能を多くの適切で好適な方法で実現できるのであるから、隔壁22、単数又は複数の楕円型端部42及び一方又は両方の伸縮部36に関する前記記載により、本発明を限定解釈すべきではない。例えば、各端部42を省略し、省略した端部42の位置決め機能を代用するように各鼻枕28の下部を修正し、例えば、省略した端部42の形に各鼻枕28の下部を下方に延伸させることができる。このように鼻枕28を変更すれば、変更した鼻枕28の下方に延伸する下部と隔壁22との間に対応する伸縮部36を接続することができる。
【0023】
全前図と図8及び図9から明らかなように、患者界面材10の縦軸44に対し、各鼻枕28の縦軸46は、角度48で配置される。各鼻枕28が外側に傾斜する角度48と、各鼻枕28を回動させる端部42と、患者の両鼻孔に嵌合される各鼻枕28の楕円状半球部38と、伸縮部36の伸縮運動との組み合わせにより、患者の顔面A上に患者界面材10を動作可能に取付けるとき、患者の鼻孔内に各鼻枕28がぴったりと嵌合し、この場合に、液密に嵌合することが望ましい。患者の顔面A上に患者界面材10を動作可能に取付けるとき、患者の各鼻孔内に対応する鼻枕28を各伸縮部36により押圧(付勢)することが望ましい。しかしながら、これは、本発明を限定するものと解釈すべきではない。
【0024】
全前図と共に図10〜図12に示すように、患者界面材10の他の実施の形態では、周辺端部14が第1の室内に対面するように、フランジ20は、内部空洞の第1の室24内に向って内側に丸まり又は湾曲する。本実施の形態は、第1の室24から外側にフランジ20が湾曲する図2〜図9の患者界面材10の実施の形態とは対照的である。第1の室24から外側にラッパ状に広がって湾曲する図2〜図9のフランジ20とは異なり、図10〜図12に示すフランジ20は、第1の室24内に内側に湾曲するが、図10〜図12に示す患者界面材10の実施の形態は、図2〜図9に示す患者界面材10の実施の形態に類似する。従って、図10〜図12に示す患者界面材10の実施の形態の更なる詳細な説明を省略して、不必要な冗長説明を回避する。
【0025】
図示の通り、本発明は、患者が使用する一体型又は単一の患者界面材に関する。射出成形、回転成形、ブロー成形等の単一構造体を形成するあらゆる適切な成形法により患者界面材を形成できる。製造工程の完了時に、弾性のある適切な生体親和性材料により患者界面材を形成することが望ましい。前記患者界面材10の各実施の形態によるフランジ20及び/又は鼻枕28が、患者快適性を目的として、単一構造の他の部分より柔らかい弾性を有し、使用時に、患者の顔及び/又は鼻孔に対して適切な気密密封(流体密封)構造を容易に形成できることが望ましい。しかしながら、患者の両鼻孔及び/又は顔面に対して鼻枕28及び/又はフランジ20が気密密封構造を形成しても、患者界面材10のいずれかの実施の形態の使用に単一又は2つの気密密封構造を必要としないことも企図できる以上、気密密封構造に本発明を限定して解釈すべきではない。
【0026】
あらゆる適切な方法で、患者の顔面A上に前記記載の患者界面材10を動作可能に取付けることができる。動作可能に患者の顔面A上に患者界面材10を取付ける適切な手段の一例は、バーネットら名義の米国特許第6651663号に開示されるが、参照によりこの米国特許を本願の明細書の一部とする。前記米国特許は、患者界面材に組み合わせられる環状部材を開示し、患者界面材に設けられる多数の切欠部は、ヘッドギアを環状部材に固定するヘッドギア装着部として機能する。上記米国特許に示される環状部材の実施の形態では、ヘッドギア装着部に3つの切欠部が設けられる。しかしながら、ヘッドギア装着部の数は、2又は4等のあらゆる所望数でよいから、本発明の限定事項として解釈すべきではない。患者の顔面A上に患者界面材10を動作可能に取付ける他の手段を図22A〜図22Cに示すが、これらは、ホら名義の米国特許公開第2005/0076913号の明細書に開示され、この米国特許公開公報の内容を参照により、本願の明細書の一部とする。患者の顔面A上に動作可能に患者界面材10を取付ける種々の手段は、当業者に周知であるが、簡便のため、患者の顔面A上に動作可能に患者界面材10を取付ける他のあらゆる手段のみならず、ヘッドギアHにより前記手段を図6に図示する。
【0027】
本発明の新規な特徴は、患者の鼻周辺に密着する緩衝体(緩衝部材)13と、患者の鼻孔内に密着する鼻枕28との両構成を患者界面材に設ける点にある。この新規な形態により、患者と患者界面材10との間に密封構造を形成する機能に対して、患者界面材を安定して装着する機能とを分離することができる。ほぼ円錐形に形成される緩衝体は、所定の位置にマスクを固定しかつ安定させる機能がある。患者の顔面Aに向って接続部30を通る軸方向に外力が作用するとき、外力の大部分は、鼻枕28よりもフランジ20に加えられる。患者の鼻孔周囲の領域は、特に繊細であることが周知である。従来の鼻枕の構造では、この繊細な領域に過剰な押圧力を集中させることが多い。これとは異なり、本発明では、患者の鼻の周囲に前記押圧力を分散させて、不快感を軽減することができる。鼻枕を使用する従来の患者界面材では、多数の複雑な構造をヘッドギア組立体に設けて、患者の顔面上に適切に鼻枕を配置しなければならなかった。本発明は、複雑な構成を要しない。鼻枕28は、患者に気体を送出するのに十分な密封構造を患者とマスクとの間に維持する機能に優れる。事実、他の実施の形態では、蒸気を排出する複数の通気孔を第1の室24に設けて、患者が経験する快適性を増進することが望ましいことを本発明者は、企図する。第2の室26と鼻枕28とに密封構造を維持でき、前記他の実施の形態を達成できる。
【0028】
本発明の更なる他の実施の形態では、単一構造で形成される患者界面材の部品を逸失する可能性を最小化することができる。例えば、隔壁に一体に鼻枕を形成することが好ましい。別法として、鼻枕を隔壁から分離して形成しかつマスクに接着し又は他の方法で接合することもできる。これにより、患者の特定形状の鼻孔に適合する大きさと形状の鼻枕を患者が選択することができ、適切な鼻枕と交換しなければ、過度の摩擦が生ずるであろう。いずれの実施の形態でも、鼻枕28を通じて患者に送出する前に、患者に供給される気体は、第2の室26で混合される。この混合過程により、同一圧力で同一の気体を確実に患者の両鼻孔に送出することができる。
【0029】
また更に、本発明では、患者の鼻孔内に適正に嵌合する楕円状半球部(鼻枕)が患者界面材10に設けられる。解剖学的にほぼ正確な構造で構成される楕円状半球部は、患者にとって極めて快適である。また、楕円状半球部は、患者の鼻孔長さに沿って大きな密封構造を形成すると共に、気流を妨害する干渉作用を最小化する。更に、伸縮部又は湾曲隔膜36上に鼻枕を形成できる。この特徴により、各患者の特定の鼻孔構造に鼻枕28を円滑に適合させて、患者の快適性と、気密密封構造の整合性を向上することができる。
【0030】
本発明の更に別の特徴は、内側でなく、外側にフランジ20が湾曲する実施の形態も採用できる点である。どの形態でも適切な支持体になるが、外側にフランジ20を湾曲させる構造により、鼻枕28に対して追加の間隙を患者に与えられるので、特に有利である。
【0031】
現在最も実用的かつ好適と思われる実施の形態を図示して詳記したが、前記記載は単に説明の便宜に過ぎず、本発明を開示した実施の形態に限定されず、本発明は、特許請求の範囲内に該当すると共に、特許請求の範囲と同趣旨の変更態様並びに同等の装置を包含すること企図する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】動作可能に患者に取付けられる従来の鼻枕と流体供給装置を示す斜視図
【図2】本発明による患者界面材を示す開口部から見た斜視図
【図3】図2に示す患者界面材の外観斜視図
【図4】図2に示す患者界面材の平面図
【図5】図4の5−5線に沿う断面図
【図6】患者の顔面上に動作可能に図2の患者界面材を取付けた状態を示す概略図
【図7】図4の6−6線に沿う断面図
【図8】図2に示す患者界面材の側面図
【図9】図8の9−9線に沿う断面図
【図10】本発明の他の実施の形態による患者界面材の斜視図
【図11】図9に示す患者界面材の開口部から見た正面図
【図12】図11の12−12線に沿う断面図
【符号の説明】
【0033】
(10)・・患者界面材、 (12)・・部材、 (13)・・緩衝体、 (16)・・開口部、 (20)・・フランジ、 (22)・・隔壁、分割手段、 (24)・・第1の室、 (26)・・第2の室、 (28)・・鼻枕、突出手段、 (30)・・接続部、送出手段、 (36)・・付勢手段、 (38)・・半球状構造体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空洞を形成する部材(12)と、
患者の鼻を収容する第1の室(24)と第2の室(26)とに部材(12)の内部空洞を分割して部材(12)に一体に形成される隔壁(22)と、
隔壁(22)に一体に形成されかつ隔壁(22)から第1の室(24)内に突出する一対の鼻枕(28)と、
部材(12)に一体に形成されて第2の室(26)に流体接続される接続部(30)とを備え、
患者の顔面上に動作可能に患者界面材(10)を装着するとき、鼻枕(28)は、少なくとも部分的に患者の鼻孔内に挿入され、
接続部(30)は、鼻枕(28)を通じて患者に気体を送出しかつ患者からの気体を排出することを特徴とする患者界面材(10)。
【請求項2】
各鼻枕(28)と隔壁(22)とに一体に形成されかつ隔壁(22)に対して移動可能に各鼻枕(28)を接続する手段を有する請求項1に記載の患者界面材(10)。
【請求項3】
移動可能に各鼻枕(28)を接続する各手段は、患者の顔面上に動作可能に患者界面材(10)を取付けるとき、患者の一方の鼻孔内に対応する鼻枕(28)を付勢する請求項2に記載の患者界面材(10)。
【請求項4】
各鼻枕(28)は、頂部に孔(40)を有する請求項1に記載の患者界面材(10)。
【請求項5】
各鼻枕(28)は、半球状構造体(38)である請求項4に記載の患者界面材(10)。
【請求項6】
第1の室(24)から外側に離間して拡張するフランジ(20)を有する緩衝体(13)を部材(12)に設けた請求項1に記載の患者界面材(10)。
【請求項7】
第1の室(24)内に向って内側に湾曲するフランジ(20)を有する緩衝体(13)を部材(12)に設けた請求項1に記載の患者界面材(10)。
【請求項8】
内部空洞を形成する部材(12)と、
患者の鼻を収容する第1の室(24)と第2の室(26)とに内部空洞を分割する分割手段(22)と、
分割手段から第1の室(24)内に突出して、患者の少なくとも1つの鼻孔に患者に気体を送出しかつ鼻孔からの気体を排出する突出手段(28)と、
第2の室に流体接続される送出手段(40)とを備え、
送出手段は、第2の室(26)と送出手段とを通じて、患者に気体を送出しかつ患者からの気体を排出することを特徴とする患者界面材(10)。
【請求項9】
患者の顔面上に動作可能に患者界面材(10)を取付けて、第1の室(24)内に患者の鼻を配置するとき、患者の少なくとも1つの鼻孔に向って送出手段(40)を押圧する付勢手段(36)を備える請求項8に記載の患者界面材(10)。
【請求項10】
付勢手段(36)は、患者の少なくとも1つの鼻孔に対し送出手段(40)を付勢して緊密に流体接続させる請求項9に記載の患者界面材(10)。
【請求項11】
送出手段(40)は、患者の少なくとも1つの鼻孔に流体密封構造体を形成する請求項8に記載の患者界面材(10)。
【請求項12】
患者の顔面上に動作可能に患者界面材(10)を取付けて、患者の鼻を第1の室(24)に収容するとき、患者の単数又は複数の鼻孔周辺で患者の顔面に接触する緩衝体(13)を部材(12)の少なくとも一部に設けた請求項8に記載の患者界面材(10)。
【請求項13】
患者の顔面上に動作可能に患者界面材(10)を取付けるとき、緩衝体(13)の少なくとも一部は、患者の顔面と接触して、流体密封構造を形成する請求項12に記載の患者界面材(10)。
【請求項14】
第1の室(24)から外側に拡張するフランジ(20)を有する緩衝体(13)を部材(12)に設けた請求項12に記載の患者界面材(10)。
【請求項15】
第1の室(24)内に向って内側に湾曲するフランジ(20)を有する緩衝体(13)を部材(12)に設けた請求項12に記載の患者界面材(10)。
【請求項16】
第1の室(24)内に延伸する一対の半球状構造体を送出手段(40)に設け、気体を通過させる孔(40)を各半球状構造体(38)の頂部に設けた請求項8に記載の患者界面材(10)。
【請求項17】
各半球状型構造体(38)を楕円形に形成した請求項16に記載の患者界面材(10)。
【請求項18】
患者の顔面の少なくとも一部に接触して、患者界面材(10)を支持するフランジ(20)を有する部材(12)と、
部材(12)から延伸して患者の鼻孔領域の少なくとも一部に接触する少なくとも1つの鼻枕(28)と、
鼻枕(28)に流体接続可能に部材(12)に一体に形成されて、患者に気体を供給する接続部(30)とを備えることを特徴とする患者界面材(10)。
【請求項19】
鼻枕(28)は、患者の鼻孔に隣接する請求項18に記載の患者界面材(10)。
【請求項20】
鼻枕(28)の少なくとも一部は、患者の鼻孔内に延伸する請求項18に記載の患者界面材(10)。
【請求項21】
外側に拡張するフランジ(20)を有する緩衝体(13)を部材(12)に設けた請求項18に記載の患者界面材(10)。
【請求項22】
内側に湾曲するフランジ(20)を有する緩衝体(13)を部材(12)に設けた請求項18に記載の患者界面材(10)。
【請求項1】
内部空洞を形成する部材(12)と、
患者の鼻を収容する第1の室(24)と第2の室(26)とに部材(12)の内部空洞を分割して部材(12)に一体に形成される隔壁(22)と、
隔壁(22)に一体に形成されかつ隔壁(22)から第1の室(24)内に突出する一対の鼻枕(28)と、
部材(12)に一体に形成されて第2の室(26)に流体接続される接続部(30)とを備え、
患者の顔面上に動作可能に患者界面材(10)を装着するとき、鼻枕(28)は、少なくとも部分的に患者の鼻孔内に挿入され、
接続部(30)は、鼻枕(28)を通じて患者に気体を送出しかつ患者からの気体を排出することを特徴とする患者界面材(10)。
【請求項2】
各鼻枕(28)と隔壁(22)とに一体に形成されかつ隔壁(22)に対して移動可能に各鼻枕(28)を接続する手段を有する請求項1に記載の患者界面材(10)。
【請求項3】
移動可能に各鼻枕(28)を接続する各手段は、患者の顔面上に動作可能に患者界面材(10)を取付けるとき、患者の一方の鼻孔内に対応する鼻枕(28)を付勢する請求項2に記載の患者界面材(10)。
【請求項4】
各鼻枕(28)は、頂部に孔(40)を有する請求項1に記載の患者界面材(10)。
【請求項5】
各鼻枕(28)は、半球状構造体(38)である請求項4に記載の患者界面材(10)。
【請求項6】
第1の室(24)から外側に離間して拡張するフランジ(20)を有する緩衝体(13)を部材(12)に設けた請求項1に記載の患者界面材(10)。
【請求項7】
第1の室(24)内に向って内側に湾曲するフランジ(20)を有する緩衝体(13)を部材(12)に設けた請求項1に記載の患者界面材(10)。
【請求項8】
内部空洞を形成する部材(12)と、
患者の鼻を収容する第1の室(24)と第2の室(26)とに内部空洞を分割する分割手段(22)と、
分割手段から第1の室(24)内に突出して、患者の少なくとも1つの鼻孔に患者に気体を送出しかつ鼻孔からの気体を排出する突出手段(28)と、
第2の室に流体接続される送出手段(40)とを備え、
送出手段は、第2の室(26)と送出手段とを通じて、患者に気体を送出しかつ患者からの気体を排出することを特徴とする患者界面材(10)。
【請求項9】
患者の顔面上に動作可能に患者界面材(10)を取付けて、第1の室(24)内に患者の鼻を配置するとき、患者の少なくとも1つの鼻孔に向って送出手段(40)を押圧する付勢手段(36)を備える請求項8に記載の患者界面材(10)。
【請求項10】
付勢手段(36)は、患者の少なくとも1つの鼻孔に対し送出手段(40)を付勢して緊密に流体接続させる請求項9に記載の患者界面材(10)。
【請求項11】
送出手段(40)は、患者の少なくとも1つの鼻孔に流体密封構造体を形成する請求項8に記載の患者界面材(10)。
【請求項12】
患者の顔面上に動作可能に患者界面材(10)を取付けて、患者の鼻を第1の室(24)に収容するとき、患者の単数又は複数の鼻孔周辺で患者の顔面に接触する緩衝体(13)を部材(12)の少なくとも一部に設けた請求項8に記載の患者界面材(10)。
【請求項13】
患者の顔面上に動作可能に患者界面材(10)を取付けるとき、緩衝体(13)の少なくとも一部は、患者の顔面と接触して、流体密封構造を形成する請求項12に記載の患者界面材(10)。
【請求項14】
第1の室(24)から外側に拡張するフランジ(20)を有する緩衝体(13)を部材(12)に設けた請求項12に記載の患者界面材(10)。
【請求項15】
第1の室(24)内に向って内側に湾曲するフランジ(20)を有する緩衝体(13)を部材(12)に設けた請求項12に記載の患者界面材(10)。
【請求項16】
第1の室(24)内に延伸する一対の半球状構造体を送出手段(40)に設け、気体を通過させる孔(40)を各半球状構造体(38)の頂部に設けた請求項8に記載の患者界面材(10)。
【請求項17】
各半球状型構造体(38)を楕円形に形成した請求項16に記載の患者界面材(10)。
【請求項18】
患者の顔面の少なくとも一部に接触して、患者界面材(10)を支持するフランジ(20)を有する部材(12)と、
部材(12)から延伸して患者の鼻孔領域の少なくとも一部に接触する少なくとも1つの鼻枕(28)と、
鼻枕(28)に流体接続可能に部材(12)に一体に形成されて、患者に気体を供給する接続部(30)とを備えることを特徴とする患者界面材(10)。
【請求項19】
鼻枕(28)は、患者の鼻孔に隣接する請求項18に記載の患者界面材(10)。
【請求項20】
鼻枕(28)の少なくとも一部は、患者の鼻孔内に延伸する請求項18に記載の患者界面材(10)。
【請求項21】
外側に拡張するフランジ(20)を有する緩衝体(13)を部材(12)に設けた請求項18に記載の患者界面材(10)。
【請求項22】
内側に湾曲するフランジ(20)を有する緩衝体(13)を部材(12)に設けた請求項18に記載の患者界面材(10)。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2009−512536(P2009−512536A)
【公表日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537859(P2008−537859)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【国際出願番号】PCT/US2006/041385
【国際公開番号】WO2007/050557
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(505338497)アールアイシー・インベストメンツ・エルエルシー (81)
【公表日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【国際出願番号】PCT/US2006/041385
【国際公開番号】WO2007/050557
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(505338497)アールアイシー・インベストメンツ・エルエルシー (81)
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