説明

一体型電力変換装置及びそれに用いられるDCDCコンバータ装置

【課題】複数の電力変換装置を一体化した一体型電力変換装置及びそれに用いられるDCDCコンバータ装置の小型化を図ることである。
【解決手段】本発明に係る一体型電力変換装置は、第1電力変換装置と第2電力変換装置を接続した一体型電力変換装置であって、前記第1電力変換装置は、電力を変換する第1パワー半導体モジュールと、冷却冷媒が流れる流路を形成する流路形成部と、前記第1パワー半導体モジュールと前記流路形成体を収納する第1ケースと、前記流路と繋がる入口配管と、前記流路と繋がる出口配管と、を備え、前記第2電力変換装置は、電力を変換する第2パワー半導体モジュールと、前記第2パワー半導体モジュールを収納する第2ケースと、前記流路形成体は、前記流路と繋がる開口部を有し、前記第2ケースは、当該第2ケースの一部が前記開口部を塞ぐように、前記流路形成体または前記第1ケースに固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電力変換装置を一体化した一体型電力変換装置及びそれに用いられるDCDCコンバータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やプラグインハイブリッド車は、高電圧蓄電池と低電圧蓄電池を搭載している。高電圧蓄電池は、車両駆動用のモータを駆動するためのインバータ装置に電力を供給する。低電圧蓄電池は、車両のライトやラジオなどの補機を作動させる。このような車両は、高電圧蓄電池から低電圧蓄電池への電力変換または低電圧蓄電池から高電圧蓄電池への電力変換を行うDCDCコンバータ装置を搭載している。
【0003】
このような車両においては、車両全体の容積に対する室内の割合をできるだけ大きくし、居住性を良くすることが望まれている。このため、インバータ装置やDCDCコンバータ装置は、車室外のとりわけエンジンルームの、できるだけ小さなスペースに搭載されることが望まれている。例えば、以下の特許文献1では、インバータ装置とDC/DCコンバータ装置との冷却水路を接続するホースに電食が生じないように、インバータ装置とDC/DCコンバータ装置とを一体型とする構造が提案されている。
【0004】
エンジンルーム内の温度環境は高温域であるため、インバータ装置やDCDCコンバータ装置の制御機能低下や構造部品の劣化を早めることが考えられる。このためインバータ装置やDCDCコンバータ装置の冷却機構としては、一般に水に混合物で構成する冷媒によりこれらの装置を冷却しており、この冷却方法含む冷却機構として、冷却効率が高く省スペース性を良くすることが重要になっている。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1においては、インバータ装置およびDCDCコンバータ装置のそれぞれに対して冷却パイプを含む冷却機構が必要なため、冷却経路が複雑化し、車載スペースが増大するという問題があった。また、ホースの材質に制約があり、かつ、ホースの抵抗値を管理する必要があるという問題も生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−119275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、複数の電力変換装置を一体化した一体型電力変換装置及びそれに用いられるDCDCコンバータ装置の小型化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る一体型電力変換装置は、第1電力変換装置と第2電力変換装置を接続した一体型電力変換装置であって、前記第1電力変換装置は、電力を変換する第1パワー半導体モジュールと、冷却冷媒が流れる流路を形成する流路形成部と、前記第1パワー半導体モジュールと前記流路形成体を収納する第1ケースと、前記流路と繋がる入口配管と、前記流路と繋がる出口配管と、を備え、前記第2電力変換装置は、電力を変換する第2パワー半導体モジュールと、前記第2パワー半導体モジュールを収納する第2ケースと、前記流路形成体は、前記流路と繋がる開口部を有し、前記第2ケースは、当該第2ケースの一部が前記開口部を塞ぐように、前記流路形成体または前記第1ケースに固定される。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本発明に係るDCDCコンバータ装置は、高電圧電源に接続される高電圧側スイッチング素子と、低電圧電源に接続される低電圧側半導体素子と、トランス回路と、前記高電圧側スイッチング素子と前記低電圧側半導体素子と前記トランス回路を収納するケースと、を備え、前記ケースは、他の電子機器に設けられた流路の一部を形成するためのカバーと一体に形成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によりは、複数の電力変換装置を一体化した一体型電力変換装置及びそれに用いられるDCDCコンバータ装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一体型電力変換装置の外観を示す図である斜視図である。
【図2】一体型電力変換装置の外観を示す図である斜視図である。
【図3】インバータ装置200の構成を説明する回路ブロック図である。
【図4】インバータ装置200の分解斜視図である。
【図5】(a)は、本実施形態のパワー半導体モジュール300aの斜視図である。(b)は、本実施形態のパワー半導体モジュール300aを断面Dで切断して方向Eから見たときの断面図である。
【図6】理解を助けるために、図5に示す状態からネジ309および第二封止樹脂351を取り除いたパワー半導体モジュール300aを示す図である。(a)は斜視図であり、(b)は図5(b)と同様に断面Dで切断して方向Eから見たときの断面図である。また、(c)はフィン305が加圧されて湾曲部304Aが変形される前の断面図を示している。
【図7】図6に示す状態からさらにモジュールケース304を取り除いたパワー半導体モジュール300aを示す図である。(a)は斜視図であり、(b)は図5(b),図6(b)と同様に断面Dで切断して方向Eから見たときの断面図である。
【図8】図7に示す状態からさらに第一封止樹脂348および配線絶縁部608を取り除いたパワー半導体モジュール300aの斜視図である。
【図9】モジュール一次封止体302の組立工程を説明するための図である。
【図10】インバータ装置200のケース10の底面側から見た分解斜視図である。
【図11】DCDCコンバータ装置100の回路構成を示す図である。
【図12】DCDCコンバータ装置100の分解斜視図である。
【図13】DCDCコンバータ装置100とインバータ装置200とを一体化した電力変換装置の断面図である。
【図14】DCDCコンバータ装置100のケース内の部品配置を模式的に示した図である。
【図15】他の実施例に係るDCDCコンバータ装置100のケース111の斜視図である。
【図16】他の実施例に係るDCDCコンバータ装置100のケース111の斜視図である。
【図17】図15の断面Bの矢印方向から見た断面図である。
【図18】図15の断面Cの矢印方向から見た断面図である。
【図19】図16の断面Dの矢印方向から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
【0013】
図1,図2は、一体型電力変換装置の外観を示す図である斜視図である。本実施形態に係る一体型電力変換装置は、DCDCコンバータ装置100とインバータ装置200とを一体化したものであり、図1,図2ではDCDCコンバータ装置100とインバータ装置200とを分離した状態で示した。DCDCコンバータ装置100は、複数のボルト113a及び113bによりインバータ装置200のケース底面側に固定されている。ボルト113aはインバータ装置200側からDCDCコンバータ装置100に対して固定されるボルトであり、ボルト113bはDCDCコンバータ装置100からインバータ装置200側に対して固定されるボルトである。
【0014】
本実施形態に係る一体型電力変換装置は主に電気自動車等に適用され、インバータ装置200は車載の高電圧蓄電池からの電力により走行用モータを駆動する。車両にはライトやラジオなどの補機を作動させるための低電圧蓄電池が搭載されており、DCDCコンバータ装置100は、高電圧蓄電池から低電圧蓄電池への電力変換または低電圧蓄電池から高電圧蓄電池への電力変換を行う。なお、電気自動車以外の電力変換装置に、電気自動車用の電力変換装置と同様なニーズがあれば、本実施形態に係る一体型電力変換装置を適用することもできる。
【0015】
図2に示されるように、冷媒流路19を形成する流路形成体19sが、インバータ装置200のケース10内に収納されている。冷媒は入口配管13から流路内に流入し、出口配管14から流出する。流路形成体19sは、冷媒流路19と繋がる開口部404を有する。DCDCコンバータ装置100のケース111は、このケース111の一部が開口部404を塞ぐように、インバータ装置200のケース10に固定される。なおケース111は、ケース111からの冷媒流路19への熱伝達を促進するために、流路形成体19s側に固定されていてもよい。DCDCコンバータ装置100のケース111は、後述する底面部111b及び凹部111dを形成する。
【0016】
本実施形態に係る一体型電力変換装置は、冷媒流路19が入口配管13及び出口配管14を有しており、発熱量がDCDCコンバータ装置100よりも大きいインバータ装置200を冷却することを重視する構成となっている。本実施形態の構成により、インバータ装置200側の冷却性能を大幅に低減することなく、DCDCコンバータ装置100について冷却性能を向上させることできる。
【0017】
図3はインバータ装置200の構成を説明する回路ブロック図である。なお、図3では半導体素子として絶縁ゲート型バイポーラトランジスタを使用しており、以下略してIGBTと記す。上アームとして動作するIGBT328及びダイオード156と、下アームとして動作するIGBT330及びダイオード166とで、上下アームの直列回路150が構成される。インバータ回路140は、この直列回路150を、出力しようとする交流電力のU相、V相、W相の3相に対応して備えている。
【0018】
これらの3相は、この実施の形態では走行用モータに対応するモータジェネレータMG1の電機子巻線の3相の各相巻線に対応している。3相のそれぞれの上下アームの直列回路150は、直列回路の中点部分である中間電極169から交流電流を出力する。この中間電極169は、交流端子159及び交流端子188を通して、モータジェネレータMG1への交流電力線である交流バスバー802と接続される。
【0019】
上アームのIGBT328のコレクタ電極153は、正極端子157を介してコンデンサモジュール500の正極側のコンデンサ端子506に電気的に接続されている。また、下アームのIGBT330のエミッタ電極は、負極端子158を介してコンデンサモジュール500の負極側のコンデンサ端子504に電気的に接続されている。
【0020】
上述のように、制御回路172は上位の制御装置からコネクタ21を介して制御指令を受け、これに基づいてインバータ回路140を構成する各相の直列回路150の上アームあるいは下アームを構成するIGBT328やIGBT330を制御するための制御信号である制御パルスを発生し、ドライバ回路174に供給する。
【0021】
ドライバ回路174は、上記制御パルスに基づき、各相の直列回路150の上アームあるいは下アームを構成するIGBT328やIGBT330を制御するための駆動パルスを各相のIGBT328やIGBT330に供給する。IGBT328やIGBT330は、ドライバ回路174からの駆動パルスに基づき、導通あるいは遮断動作を行い、バッテリ136から供給された直流電力を三相交流電力に変換し、この変換された電力はモータジェネレータMG1に供給される。
【0022】
IGBT328は、コレクタ電極153と、信号用エミッタ電極155と、ゲート電極154を備えている。また、IGBT330は、コレクタ電極163と、信号用のエミッタ電極165と、ゲート電極164を備えている。ダイオード156が、コレクタ電極153とエミッタ電極155との間に電気的に接続されている。また、ダイオード166が、コレクタ電極163とエミッタ電極165との間に電気的に接続されている。
【0023】
スイッチング用パワー半導体素子としては金属酸化物半導体型電界効果トランジスタ(以下略してMOSFETと記す)を用いてもよい、この場合はダイオード156やダイオード166は不要となる。スイッチング用パワー半導体素子としては、IGBTは直流電圧が比較的高い場合に適していて、MOSFETは直流電圧が比較的低い場合に適している。
【0024】
コンデンサモジュール500は、正極側のコンデンサ端子506と負極側のコンデンサ端子504と正極側の電源端子509と負極側の電源端子508とを備えている。バッテリ136からの高電圧の直流電力は、直流コネクタ138を介して、正極側の電源端子509や負極側の電源端子508に供給され、コンデンサモジュール500の正極側のコンデンサ端子506および負極側のコンデンサ端子504から、インバータ回路140へ供給される。
【0025】
一方、交流電力からインバータ回路140によって変換された直流電力は、正極側のコンデンサ端子506や負極側のコンデンサ端子504からコンデンサモジュール500に供給され、正極側の電源端子509や負極側の電源端子508から直流コネクタ138を介してバッテリ136に供給され、バッテリ136に蓄積される。
【0026】
制御回路172は、IGBT328及びIGBT330のスイッチングタイミングを演算処理するためのマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と記述する)を備えている。マイコンへの入力情報としては、モータジェネレータMG1に対して要求される目標トルク値、直列回路150からモータジェネレータMG1に供給される電流値、及びモータジェネレータMG1の回転子の磁極位置がある。
【0027】
目標トルク値は、不図示の上位の制御装置から出力された指令信号に基づくものである。電流値は、電流センサ180による検出信号に基づいて検出されたものである。磁極位置は、モータジェネレータMG1に設けられたレゾルバなどの回転磁極センサ(不図示)から出力された検出信号に基づいて検出されたものである。本実施形態では、電流センサ180は3相の電流値を検出する場合を例に挙げているが、2相分の電流値を検出するようにし、演算により3相分の電流を求めても良い。
【0028】
制御回路172内のマイコンは、目標トルク値に基づいてモータジェネレータMG1のd軸,q軸の電流指令値を演算し、この演算されたd軸,q軸の電流指令値と、検出されたd軸,q軸の電流値との差分に基づいてd軸,q軸の電圧指令値を演算し、この演算されたd軸,q軸の電圧指令値を、検出された磁極位置に基づいてU相、V相、W相の電圧指令値に変換する。そして、マイコンは、U相、V相、W相の電圧指令値に基づく基本波(正弦波)と搬送波(三角波)との比較に基づいてパルス状の変調波を生成し、この生成された変調波をPWM(パルス幅変調)信号としてドライバ回路174に出力する。
【0029】
ドライバ回路174は、下アームを駆動する場合、PWM信号を増幅したドライブ信号を、対応する下アームのIGBT330のゲート電極に出力する。また、ドライバ回路174は、上アームを駆動する場合、PWM信号の基準電位のレベルを上アームの基準電位のレベルにシフトしてからPWM信号を増幅し、これをドライブ信号として、対応する上アームのIGBT328のゲート電極にそれぞれ出力する。
【0030】
また、制御回路172内のマイコンは、異常検知(過電流、過電圧、過温度など)を行い、直列回路150を保護している。このため、制御回路172にはセンシング情報が入力されている。例えば、各アームの信号用のエミッタ電極155及び信号用のエミッタ電極165からは各IGBT328とIGBT330のエミッタ電極に流れる電流の情報が、対応する駆動部(IC)に入力されている。これにより、各駆動部(IC)は過電流検知を行い、過電流が検知された場合には対応するIGBT328,IGBT330のスイッチング動作を停止させ、対応するIGBT328,IGBT330を過電流から保護する。
【0031】
直列回路150に設けられた温度センサ(不図示)からは直列回路150の温度の情報がマイコンに入力されている。また、マイコンには直列回路150の直流正極側の電圧の情報が入力されている。マイコンは、それらの情報に基づいて過温度検知及び過電圧検知を行い、過温度或いは過電圧が検知された場合には全てのIGBT328,IGBT330のスイッチング動作を停止させる。
【0032】
上位の制御装置からコネクタ21を介して受けた制御信号と、直流コネクタ138を介して受けた直流電圧は、インターフェースケーブル102を経由し、インバータ装置200の開口部201を通してまた開口部101を通してDCDCコンバータ装置100に配信される。
【0033】
図4は、インバータ装置200の分解斜視図である。流路形成体19sは、流路形成部12a,12b,12cを含んで構成される。流路形成部12a,12b,12cは、ケース10内の底部側に、コの字形状に配置される。なお、流路形成部12cは流路形成部12aと平行に対向配置されている。
【0034】
互いに平行となっている流路形成部12a,12cには、パワー半導体モジュール300a〜300cを冷媒流路内に装着するための開口部400が複数形成されている。図4に示す例では、図示左側の設けられた流路形成部12aには、パワー半導体モジュール300a,300bが装着される2つの開口部400が形成されている。一方、図では見えないが、反対側に平行に設けられた流路形成部12cにはパワー半導体モジュール300cが装着される開口部400が1つ形成されている。これらの開口部400は、流路形成部12a〜12cにパワー半導体モジュール300a〜300cを固定することによって塞がれる。
【0035】
流路形成体12が形成する一方の第1流路部19aと他方の第3流路部19cの間には、コンデンサモジュール500を収納するための収納空間405が形成され、コンデンサモジュール500は、収納空間405に収納される。これにより、冷媒流路19内に流れる冷媒によってコンデンサモジュール500が冷やされる。コンデンサモジュール500は、流路形成部12a〜12cに囲まれるように配置されるため、効率良く冷却されることができる。
【0036】
またコンデンサモジュール500の外側面に沿って流路が形成されているので、流路やコンデンサモジュール500やパワー半導体モジュール300との配置が整然と整い、全体がより小型となる。
【0037】
コンデンサモジュール500の上方には、後述するバスバーアッセンブリ800が配置される。
【0038】
流路形成体19sとケース10とは一体にアルミ材の鋳造で作ることにより、冷媒流路19は冷却効果に加え機械的強度を強くする効果がある。またアルミ鋳造で作ることで流路形成体19sとケース10とが一体構造となり、インバータ装置200全体の熱伝導が良くなり冷却効率が向上する。
【0039】
ドライバ回路基板22は、バスバーアッセンブリ800の上方に配置される。またドライバ回路基板22と制御回路基板20の間には金属ベース板11が配置される。
【0040】
金属ベース板11は、ケース10に固定される。当該金属ベース板11は、ドライバ回路基板22及び制御回路基板20に搭載される回路群の電磁シールドの機能を奏すると共にドライバ回路基板22と制御回路基板20とが発生する熱を逃がし、冷却する作用を有している。当該金属ベース板11が、高いノイズ抑制機能を有する点は後述する。
【0041】
蓋8は、金属ベース板11に固定されて、制御回路基板20を外部からの電磁ノイズから保護する。
【0042】
本実施形態に係るケース10は、流路形成体12が収納された部分は略直方体の形状を為しているが、ケース10の一側面側から突出収納部10gが形成されている。当該突出収納部10gには、DCDCコンバータ装置100から延ばされる端子や、抵抗器450が収納される。ここで抵抗器450は、コンデンサモジュール500のコンデンサ素子に蓄えられた電荷を放電するための抵抗素子である。このようにバッテリ136とコンデンサモジュール500との間の電気回路部品を突出収納部10gに集約しているため、配線の複雑化を抑制することができ、装置全体の小型化に寄与することができる。
【0043】
図5ないし図9を用いてインバータ回路140に使用されるパワー半導体モジュール300a〜300cの詳細構成を説明する。上記パワー半導体モジュール300a〜300cはいずれも同じ構造であり、代表してパワー半導体モジュール300aの構造を説明する。尚、図5乃至図9において信号端子325Uは、図3に開示したゲート電極154および信号用エミッタ電極155に対応し、信号端子325Lは、図3に開示したゲート電極164およびエミッタ電極165に対応する。また直流正極端子315Bは、図3に開示した正極端子157と同一のものであり、直流負極端子319Bは、図3に開示した負極端子158と同一のものである。また交流端子320Bは、図3に開示した交流端子159と同じものである。
【0044】
図5(a)は、本実施形態のパワー半導体モジュール300aの斜視図である。図5(b)は、本実施形態のパワー半導体モジュール300aを断面Dで切断して方向Eから見たときの断面図である。
【0045】
図6は、理解を助けるために、図5に示す状態からネジ309および第二封止樹脂351を取り除いたパワー半導体モジュール300aを示す図である。図6(a)は斜視図であり、図6(b)は図5(b)と同様に断面Dで切断して方向Eから見たときの断面図である。また、図6(c)はフィン305が加圧されて湾曲部304Aが変形される前の断面図を示している。
【0046】
図7は、図6に示す状態からさらにモジュールケース304を取り除いたパワー半導体モジュール300aを示す図である。図7(a)は斜視図であり、図7(b)は図5(b),図6(b)と同様に断面Dで切断して方向Eから見たときの断面図である。
【0047】
図8は、図7に示す状態からさらに第一封止樹脂348および配線絶縁部608を取り除いたパワー半導体モジュール300aの斜視図である。
【0048】
図9は、モジュール一次封止体302の組立工程を説明するための図である。
上下アームの直列回路150を構成するパワー半導体素子(IGBT328,IGBT330,ダイオード156,ダイオード166)が、図7および図8に示す如く、導体板315や導体板318によって、あるいは導体板320や導体板319によって、両面から挟んで固着される。導体板315等は、その放熱面が露出した状態で第一封止樹脂348によって封止され、当該放熱面に絶縁シート333が熱圧着される。第一封止樹脂348は図7に示すように、多面体形状(ここでは略直方体形状)を有している。
【0049】
第一封止樹脂348により封止されたモジュール一次封止体302は、モジュールケース304の中に挿入して絶縁シート333を挟んで、CAN型冷却器であるモジュールケース304の内面に熱圧着される。ここで、CAN型冷却器とは、一面に挿入口306と他面に底を有する筒形状をした冷却器である。モジュールケース304の内部に残存する空隙には、第二封止樹脂351が充填される。
【0050】
モジュールケース304は、電気伝導性を有する部材、例えばアルミ合金材料(Al,AlSi,AlSiC,Al−C等)で構成され、かつ、つなぎ目の無い状態で一体に成形される。モジュールケース304は、挿入口306以外に開口を設けない構造であり、挿入口306は、フランジ304Bによって、その外周を囲まれている。また、図5(a)に示されるように、他の面より広い面を有する第1放熱面307A及び第2放熱面307Bがそれぞれ対向した状態で配置され、これらの放熱面に対向するようにして、各パワー半導体素子(IGBT328,IGBT330,ダイオード156,ダイオード166)が配置されている。当該対向する第1放熱面307Aと第2放熱面307Bと繋ぐ3つの面は、当該第1放熱面307A及び第2放熱面307Bより狭い幅で密閉された面を構成し、残りの一辺の面に挿入口306が形成される。モジュールケース304の形状は、正確な直方体である必要が無く、角が図5(a)に示す如く曲面を成していても良い。
【0051】
このような形状の金属製のケースを用いることで、モジュールケース304を水や油などの冷媒が流れる冷媒流路19内に挿入しても、冷媒に対するシールをフランジ304Bにて確保できるため、冷却媒体がモジュールケース304の内部に侵入するのを簡易な構成で防ぐことができる。また、対向した第1放熱面307Aと第2放熱面307Bに、フィン305がそれぞれ均一に形成される。さらに、第1放熱面307A及び第2放熱面307Bの外周には、厚みが極端に薄くなっている湾曲部304Aが形成されている。湾曲部304Aは、フィン305を加圧することで簡単に変形する程度まで厚みを極端に薄くしてあるため、モジュール一次封止体302が挿入された後の生産性が向上する。
【0052】
上述のように導体板315等を絶縁シート333を介してモジュールケース304の内壁に熱圧着することにより、導体板315等とモジュールケース304の内壁の間の空隙を少なくすることができ、パワー半導体素子の発生熱を効率良くフィン305へ伝達できる。さらに絶縁シート333にある程度の厚みと柔軟性を持たせることにより、熱応力の発生を絶縁シート333で吸収することができ、温度変化の激しい車両用の電力変換装置に使用するのに良好となる。
【0053】
モジュールケース304の外には、コンデンサモジュール500と電気的に接続するための金属製の直流正極配線315Aおよび直流負極配線319Aが設けられており、その先端部に直流正極端子315B(157)と直流負極端子319B(158)がそれぞれ形成されている。また、モータジェネレータMG1あるいはMG2に交流電力を供給するための金属製の交流配線320Aが設けられており、その先端に交流端子320B(159)が形成されている。本実施形態では、図8に示す如く、直流正極配線315Aは導体板315と接続され、直流負極配線319Aは導体板319と接続され、交流配線320Aは導体板320と接続される。
【0054】
モジュールケース304の外にはさらに、ドライバ回路174と電気的に接続するための金属製の信号配線324Uおよび324Lが設けられており、その先端部に信号端子325U(154,155)と信号端子325L(164,165)がそれぞれ形成されている。本実施形態では、図8に示す如く、信号配線324UはIGBT328と接続され、信号配線324LはIGBT328と接続される。
【0055】
直流正極配線315A,直流負極配線319A,交流配線320A,信号配線324Uおよび信号配線324Lは、樹脂材料で成形された配線絶縁部608によって相互に絶縁された状態で、補助モールド体600として一体に成型される。配線絶縁部608は、各配線を支持するための支持部材としても作用し、これに用いる樹脂材料は、絶縁性を有する熱硬化性樹脂かあるいは熱可塑性樹脂が適している。これにより、直流正極配線315A,直流負極配線319A,交流配線320A,信号配線324Uおよび信号配線324Lの間の絶縁性を確保でき、高密度配線が可能となる。
【0056】
補助モールド体600は、モジュール一次封止体302と接続部370において金属接合された後に、配線絶縁部608に設けられたネジ穴を貫通するネジ309によってモジュールケース304に固定される。接続部370におけるモジュール一次封止体302と補助モールド体600との金属接合には、たとえばTIG溶接などを用いることができる。
【0057】
直流正極配線315Aと直流負極配線319Aは、配線絶縁部608を間に挟んで対向した状態で互いに積層され、略平行に延びる形状を成している。こうした配置および形状とすることで、パワー半導体素子のスイッチング動作時に瞬間的に流れる電流が、対向してかつ逆方向に流れる。これにより、電流が作る磁界が互いに相殺する作用をなし、この作用により低インダクタンス化が可能となる。なお、交流配線320Aや信号端子325U,325Lも、直流正極配線315A及び直流負極配線319Aと同様の方向に向かって延びている。
【0058】
モジュール一次封止体302と補助モールド体600が金属接合により接続されている接続部370は、第二封止樹脂351によりモジュールケース304内で封止される。これにより、接続部370とモジュールケース304との間で必要な絶縁距離を安定的に確保することができるため、封止しない場合と比較してパワー半導体モジュール300aの小型化が実現できる。
【0059】
図8に示されるように、接続部370の補助モジュール600側には、補助モジュール側直流正極接続端子315C,補助モジュール側直流負極接続端子319C,補助モジュール側交流接続端子320C,補助モジュール側信号接続端子326Uおよび補助モジュール側信号接続端子326Lが一列に並べて配置される。一方、接続部370のモジュール一次封止体302側には、多面体形状を有する第一封止樹脂348の一つの面に沿って、素子側直流正極接続端子315D,素子側直流負極接続端子319D,素子側交流接続端子320D,素子側信号接続端子327Uおよび素子側信号接続端子327Lが一列に並べて配置される。こうして接続部370において各端子が一列に並ぶような構造とすることで、トランスファーモールドによるモジュール一次封止体302の製造が容易となる。
【0060】
ここで、モジュール一次封止体302の第一封止樹脂348から外側に延出している部分をその種類ごとに一つの端子として見た時の各端子の位置関係について述べる。以下の説明では、直流正極配線315A(直流正極端子315Bと補助モジュール側直流正極接続端子315Cを含む)および素子側直流正極接続端子315Dにより構成される端子を正極側端子と称し、直流負極配線319A(直流負極端子319Bと補助モジュール側直流負極接続端子319Cを含む)および素子側直流負極接続端子315Dにより構成される端子を負極側端子と称し、交流配線320A(交流端子320Bと補助モジュール側交流接続端子320Cを含む)および素子側交流接続端子320Dにより構成される端子を出力端子と称し、信号配線324U(信号端子325Uと補助モジュール側信号接続端子326Uを含む)および素子側信号接続端子327Uにより構成される端子を上アーム用信号端子と称し、信号配線324L(信号端子325Lと補助モジュール側信号接続端子326Lを含む)および素子側信号接続端子327Lにより構成される端子を下アーム用信号端子と称する。
【0061】
上記の各端子は、いずれも第一封止樹脂348および第二封止樹脂351から接続部370を通して突出しており、その第一封止樹脂348からの各突出部分(素子側直流正極接続端子315D,素子側直流負極接続端子319D,素子側交流接続端子320D,素子側信号接続端子327Uおよび素子側信号接続端子327L)は、上記のように多面体形状を有する第一封止樹脂348の一つの面に沿って一列に並べられている。また、正極側端子と負極側端子は、第二封止樹脂351から積層状態で突出しており、モジュールケース304の外に延出している。このような構成としたことで、第一封止樹脂348でパワー半導体素子を封止してモジュール一次封止体302を製造する時の型締めの際に、パワー半導体素子と当該端子との接続部分への過大な応力や金型の隙間が生じるのを防ぐことができる。また、積層された正極側端子と負極側端子の各々を流れる反対方向の電流により、互いに打ち消しあう方向の磁束が発生されるため、低インダクタンス化を図ることができる。
【0062】
補助モジュール600側において、補助モジュール側直流正極接続端子315C,補助モジュール側直流負極接続端子319Cは、直流正極端子315B,直流負極端子319Bとは反対側の直流正極配線315A,直流負極配線319Aの先端部にそれぞれ形成されている。また、補助モジュール側交流接続端子320Cは、交流配線320Aにおいて交流端子320Bとは反対側の先端部に形成されている。補助モジュール側信号接続端子326U,326Lは、信号配線324U,324Lにおいて信号端子325U,325Lとは反対側の先端部にそれぞれ形成されている。
【0063】
一方、モジュール一次封止体302側において、素子側直流正極接続端子315D,素子側直流負極接続端子319D,素子側交流接続端子320Dは、導体板315,319,320にそれぞれ形成されている。また、素子側信号接続端子327U,327Lは、ボンディングワイヤ371によりIGBT328,IGBT330とそれぞれ接続されている。
【0064】
図9に示すように、直流正極側の導体板315および交流出力側の導体板320と、素子側信号接続端子327Uおよび327Lとは、共通のタイバー372に繋がれた状態で、これらが略同一平面状の配置となるように一体的に加工される。導体板315には、上アーム側のIGBT328のコレクタ電極と上アーム側のダイオード156のカソード電極が固着される。導体板320には、下アーム側のIGBT330のコレクタ電極と下アーム側のダイオード166のカソード電極が固着される。IGBT328,330およびダイオード155,166の上には、導体板318と導体板319が略同一平面状に配置される。導体板318には、上アーム側のIGBT328のエミッタ電極と上アーム側のダイオード156のアノード電極が固着される。導体板319には、下アーム側のIGBT330のエミッタ電極と下アーム側のダイオード166のアノード電極が固着される。各パワー半導体素子は、各導体板に設けられた素子固着部322に、金属接合材160を介してそれぞれ固着される。金属接合材160は、例えばはんだ材や銀シート及び微細金属粒子を含んだ低温焼結接合材、等である。
【0065】
各パワー半導体素子は板状の扁平構造であり、当該パワー半導体素子の各電極は表裏面に形成されている。図9に示されるように、パワー半導体素子の各電極は、導体板315と導体板318、または導体板320と導体板319によって挟まれる。つまり、導体板315と導体板318は、IGBT328及びダイオード156を介して略平行に対向した積層配置となる。同様に、導体板320と導体板319は、IGBT330及びダイオード166を介して略平行に対向した積層配置となる。また、導体板320と導体板318は中間電極329を介して接続されている。この接続により上アーム回路と下アーム回路が電気的に接続され、上下アーム直列回路が形成される。上述したように、導体板315と導体板318の間にIGBT328及びダイオード156を挟み込むと共に、導体板320と導体板319の間にIGBT330及びダイオード166を挟み込み、導体板320と導体板318を中間電極329を介して接続する。その後、IGBT328の制御電極328Aと素子側信号接続端子327Uとをボンディングワイヤ371により接続すると共に、IGBT330の制御電極330Aと素子側信号接続端子327Lとをボンディングワイヤ371により接続する。
【0066】
図10は、インバータ装置200のケース10の底面側から見た分解斜視図である。ケース10は、4つの側壁10a,10b,10c,10dを備える直方体形状を有している。コの字形状の冷媒流路19は、直線状の3つの流路部(第1流路部19a,第2流路部19b,第3流路部19c)から構成される。開口部404もコの字形状をしており、この開口部404はDCDCコンバータ装置100のケース111によって塞がれる。ケース111とケース10の間には、シール部材409が設けられ冷媒流路の気密性を保っている。
【0067】
符号10eで示す部分は、コンデンサモジュール500を収納する収納空間405(図4参照)の底部を形成する。
【0068】
冷媒は、矢印417で示すように入口配管13に流入し、ケース10の長手方向の辺に沿って形成された第1流路部19a内を矢印418の方向に流れる。さらに、冷媒は、ケース10の短手方向の辺に沿って形成された第2流路部19b内を、矢印421の方向に流れる。この第2流路部19bは折り返し流路を形成する。さらに、冷媒は、ケース10の長手方向の辺に沿って形成された流路形成部12の第3流路部19cを流れる。第3流路部19cは、コンデンサモジュール500を挟んで第1流路部19aと平行に設けられている。冷媒は、矢印423で示すように出口配管14から流出される。
【0069】
第1流路部19a,第2流路部19b,第3流路部19cは、いずれも幅方向より深さ方向が大きく形成される。
【0070】
次に、DCDCコンバータ装置100について説明する。図11は、DCDCコンバータ装置100の回路構成を示す図である。図11に示すように、本実施形態のDCDCコンバータ装置100では、降圧及び昇圧を行う双方向DCDC対応としている。そのために、降圧回路(HV回路)、昇圧回路(LV回路)は、ダイオード整流ではなく同期整流構成としている。また、HV/LV変換で高出力とするために、スイッチング素子に大電流部品を採用し、かつ、平滑コイルの大型化を図っている。
【0071】
具体的には、HV/LV側共に、リカバリーダイオードを持つMOSFETを利用したHブリッジ型・同期整流スイッチング回路構成(H1〜H4)とした。スイッチング制御にあっては、LC直列共振回路(Cr,Lr)を用いて高スイッチング周波数(100kHz)でゼロクロススイッチングさせ、変換効率を向上させて熱損失を低減するようにした。加えて、アクティブクランプ回路を設けて、降圧動作時の循環電流による損失を低減させ、ならびに、スイッチング時のサージ電圧発生を抑制してスイッチング素子の耐圧を低減させることで、回路部品の低耐圧化を図ることで装置を小型化している。
【0072】
さらに、LV側の高出力を確保するために、全波整流型の倍電流(カレントダブラー)方式とした。なお、高出力化にあたり、複数のスイッチング素子を並列同時作動させることで高出力を確保している。図11の例では、SWA1〜SWA4,SWB1〜SWB4のように4素子並列とした。また、スイッチング回路および平滑リアクトルの小型リアクトル(L1,L2)を、対称性を持たせるように2回路並列配置とすることで高出力化している。このように、小型リアクトルを2回路配置とすることで、大型リアクトル1台を配置させる場合に比べて、DCDCコンバータ装置全体の小型化が可能となる。
【0073】
図11の回路構成図の下部に、降圧回路および昇圧回路用の駆動回路および動作検出回路、インバータ装置経由で上位の制御装置との通信機能を担う制御回路部を示す。上位の制御装置との通信をインバータ装置経由とすることにより、インバータ装置とDCDCコンバータ装置を一体化した構成、インバータ装置単体の構成の各場合でも、上位の制御装置との通信インターフェースは共通化が可能となる。
【0074】
図12,図13および図14は、DCDCコンバータ装置100における部品配置を説明する図である。図12はDCDCコンバータ装置100の分解斜視図である。図13は、DCDCコンバータ装置100とインバータ装置200とを一体化した電力変換装置の断面図である。図14は、DCDCコンバータ装置100のケース内の部品配置を模式的に示した図である。
【0075】
図12に示すように、DCDCコンバータ装置100の回路部品は、金属製(例えば、アルミダイカスト製)のケース111内に収納されている。ケース111の開口部にはケースカバー112がボルト固定される。ケース111内の底面部分には、主トランス33,インダクタ素子34,スイッチング素子H1〜H4が搭載されたパワー半導体モジュール35,スイッチング素子36が搭載されている昇圧回路基板32,コンデンサ38等が載置されている。主な発熱部品は、主トランス33,インダクタ素子34,パワー半導体モジュール35およびスイッチング素子36である。
【0076】
なお、図11の回路図との対応を記載すると、主トランス33はトランスTrに、インダクタ素子34はカレントダブラーのリアクトルL1,L2に、スイッチング素子36はスイッチング素子SWA1〜SWA4,SWB1〜SWB4にそれぞれ対応している。昇圧回路基板32には、図11のスイッチング素子S1,S2等も搭載されている。
【0077】
スイッチング素子H1〜H4の端子39はケース111の開口部側へと延在しており、パワー半導体モジュール35の上方に配置された降圧回路基板31と接続されている。降圧回路基板31はケース111の底面から上方に突出した複数の支持部材上に固定される。パワー半導体モジュール35においては、スイッチング素子H1〜H4は、パターンが形成された金属基板上に実装されており、金属基板の裏面側はケース底面に密着するように固定されている。スイッチング素子36が実装される昇圧回路基板32も同様の金属基板で構成されている。図12では、昇圧回路基板32はコンデンサ38等の陰に隠れて見えないので、破線で示している。
【0078】
制御回路基板30には、昇圧回路や降圧回路に設けられたスイッチング素子を制御する制御回路が実装されている制御回路基板30は金属製のベース板37上に固定されている。ベース板37はケース111の底面部から上方に突出した複数の支持部111aに固定されている。これにより、制御回路基板30は、ケース底面部に配置された発熱部品(主トランス33,インダクタ素子34やパワー半導体モジュール35など)の上方に、ベース板37を介して配置されることになる。
【0079】
図13および図14を参照して、DCDCコンバータ装置100に設けられた部品の配置について説明する。図13は、図10の断面Aの矢印方向から見た断面図である。前述したように、インバータ装置200のケース10内には、側壁10a,10b,10cに沿って流路形成部12a〜12cが設けられている。図13に示される断面図には、流路形成部12a及び12cのみ示されている。
【0080】
側壁10aに沿った流路形成部12aには第1流路部19aが形成され、側壁10bに沿った流路形成部12bには第2流路部19bが形成され、側壁10cに沿った流路形成部12cには第3流路部19cが形成されている。第1流路部19aにはパワー半導体モジュール300aが挿入され、第3流路部19cにはパワー半導体モジュール300cが挿入されている。
【0081】
DCDCコンバータ装置100のケース111には、このケース111の底面の外周面に凹部111dが形成されている。図1に示すように、ケース111の凹部111dは、ケース10の底部外周面に設けられた第1流路部19a,第2流路部19b,第3流路部19cに対向している。
【0082】
主トランス33は、第1流路部19aと対向するケース111内周面に固定されている。一方、スイッチング素子36と搭載する昇圧回路基板32やコンデンサ38は、第3流路部19cと対向するケース111内周面に固定されている。
【0083】
ベース板37はケース111に形成された支持部111a上にボルト固定されている。制御回路基板30はベース板37の上面に形成された凸部37a上にボルト等により固定されている。ケース111の開口部にはケースカバー112が取り付けられ、ケース111は密閉されている。
【0084】
ケース111の凹部111dは、インバータ装置200のケース10の冷媒流路19の壁の一部を形成する。このため、ケース111は、第1流路部19a,第2流路部19b及び第3流路部19cを流れる冷媒によって直接的に冷却されている。
【0085】
また、ケース111の底面部に、DCDCコンバータ装置100の構成部品のうち発熱量が大きい部品を固定することにより、効果的に冷却が行われる。また、ベース板37は金属で形成されているので、制御回路基板30で発生した熱は支持部111aおよびケース111を介してケース10へと伝達される。また、ベース板37は、ケース111の底面部に設けられた発熱部品からの輻射熱の遮蔽部材として機能するとともに、銅材等を用いることでスイッチング素子からのスイッチング放射ノイズを遮蔽するシールドとしても機能する。
【0086】
インバータ装置200のケース10は開口部201を有し、DCDCコンバータ装置100のケース111はケース10との対向面に開口部101を有する。接合部材103は、開口部101及び開口部201に嵌め合わせられる。接合部材103とケース10との間と、接合部材103とケース111との間には、シール部材104が設けられ、外部との気密性を保っている。
【0087】
またパワー導線701は、例えば降圧回路部31等のスイッチング素子の駆動電圧を生成する駆動回路部に対して駆動電力を伝達する。通信導線702は、駆動回路部を駆動するための信号を伝達する。本実施形態では、パワー導線701や通信導線702のようなインバータ装置200とDCDCコンバータ装置100とのインターフェースの機能を担うケーブルをインターフェースケーブルと定義する。
【0088】
このインターフェースケーブルは、接合部材103に形成された貫通孔を通ってインバータ装置200とDCDCコンバータ装置100とを接続する。また別の言い方をすると、インターフェースケーブルは、開口部201及び開口部101を通ってインバータ装置200とDCDCコンバータ装置100とを接続する。本実施形態においては、開口部201及び開口部101が形成された面は、ケース10とケース111が対向しかつ、インターフェースケーブルが金属製のケース10とケース111に覆われるように、形成される。これにより、ケース10とケース111が電磁シールドを強化され、開口部201及び開口部101から放射される電磁ノイズを低減することができる。
【0089】
またケース111は、第1流路部19a,第2流路部19b及び第3流路部19cと対向する部分に凹部111dがそれぞれ形成されている。これにより、凹部111dが形成された部分が薄くなり、DCDCコンバータ装置100側の冷却を促進することができる。
【0090】
図14の平面図は、ケース111の底面部111bに設けられた発熱部品の配置を示したものであり、ケースカバー112を外した状態を示す。破線はインバータ装置200のケース10に設けられた第1流路部19a,第2流路部19b及び第3流路部19cの配置を示している。
【0091】
主トランス33および2つのインダクタ素子34は、第1流路部19aと対向するケース底面部に配置されている。また、降圧回路を構成するパワー半導体モジュール35および降圧回路基板31は、主に第2流路部19bと対向する底面部111bに配置されている。昇圧回路を構成するスイッチング素子36および昇圧回路基板32は、第3流路部19cと対向する底面部111bに配置されている。このように、比較的発熱量の大きな部品を第1流路部19a,第2流路部19b及び第3流路部19cと対向する位置に配置して、冷却効率を高めるようにしている。
【0092】
特に、パワー半導体モジュール35が第2流路部19bと対向するようにケース111の底面に配置した場合、パワー半導体モジュール35内のMOSFETの温度上昇を抑えることができ、DCDCコンバータ装置100の性能を発揮しやすくなる。
【0093】
また、主トランス33が第1流路部19aと対向するようにケース111の底面に配置した場合、主トランス33の巻線の温度上昇を抑えることができ、DCDCコンバータ装置100の性能を発揮しやすくなる。
【0094】
なお、本実施形態と同様の作用及び効果を発揮するために、インバータ装置200のケース10の開口部404を塞ぐカバーを設け、そのカバーの熱伝導が良好となるようにDCDCコンバータ装置100のケース111と一体に構成されていてもよい。
【0095】
図15ないし図19は、DCDCコンバータ装置100のケース111の他の実施例を示す図である。
【0096】
図15は、他の実施例に係るDCDCコンバータ装置100のケース111の斜視図である。本実施例は、DCDCコンバータ装置100のケース111は、凹部111eが形成されている。図17は、図15の断面Bの矢印方向から見た断面図である。図18は、図15の断面Cの矢印方向から見た断面図である。
【0097】
本実施形態に係る凹部111dは、前述の実施例と同様に第1流路部19a,第2流路部19b及び第3流路部19cと対向する位置に配置される。凹部111eは、凹部111dとは異なる部分に形成され、凹部111dに挟まれる位置に配置される。凹部111eは、インバータ装置200のケース10の底部10eと対向する。この凹部111eと底部10eとにより形成される空間は、第1流路部19a,第2流路部19b及び第3流路部19cと繋がっている。これにより、第1流路部19a,第2流路部19b及び第3流路部19cに流れる冷媒が、凹部111eと底部10eとにより形成される空間に流れることになる。したがって、流路部から遠い位置に配置されている底部10eの中央部の冷却性能を向上させることができる。本実施形態においては、底面10eの中央部に位置しているコンデンサモジュール500や昇圧回路基板32の冷却条件を改善することができる。また、昇圧回路基板32上のスイッチング素子36の温度を低減することもできる。また、ケース111の軽量化を図ることができる。
【0098】
また図17に示されるように、前述の実施形態にて説示した接合部材103が不要となるように、DCDCコンバータ装置100の開口部101にインバータ装置200に向けて突出する突起部105が設けられ、かつ、シール部材104がインバータ装置200の外部との気密性を保っている。
【0099】
図16は、他の実施例に係るDCDCコンバータ装置100のケース111の斜視図である。DCDCコンバータ装置100のケース111は、凹部111e及び凸部111fが形成されている。図19は、図16の断面Dの矢印方向から見た断面図である。
【0100】
凹部111eは前述の実施例と同様の構成及び機能である。凸部111fは、前述の実施例において説示した第2流路部19bに向かって突出する。これにより、第2流路部19bを流れる冷却冷媒が凹部111e側に迂回して流れることを促進する。なお、この凸部111fの高さが高いほど、凹部111e側に流れる迂回流量が増える。そのため、凹部111eによって冷却される電子部品に応じて、この凸部111fの高さを設定することができる。
【0101】
なお、以上の説明はあくまでも一例であり、発明を解釈する際、上記実施の形態の記載事項と特許請求の範囲の記載事項の対応関係に何ら限定も拘束もされない。例えば、上述した実施の形態では、PHEVあるいはEV等の車両に搭載される電力変換装置を例に説明したが、本発明はこれらに限らず建設機械等の車両に用いられる電力変換装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0102】
10,111 ケース
10a〜10d 側壁
10f 側面
19 冷媒流路
19a 第1流路部
19b 第2流路部
19c 第3流路部
20,30 制御回路基板
33 主トランス
34 インダクタ素子
35 パワー半導体モジュール
36 スイッチング素子
37 ベース板
100 DCDCコンバータ装置
101,201 開口部
103 接合部材
104,409 シール部材
111a 支持部
111b 底面部
111d,111e 凹部
111f 凸部
200 インバータ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電力変換装置と第2電力変換装置を接続した一体型電力変換装置であって、
前記第1電力変換装置は、電力を変換する第1パワー半導体モジュールと、冷却冷媒が流れる流路を形成する流路形成部と、前記第1パワー半導体モジュールと前記流路形成体を収納する第1ケースと、前記流路と繋がる入口配管と、前記流路と繋がる出口配管と、を備え、
前記第2電力変換装置は、電力を変換する第2パワー半導体モジュールと、前記第2パワー半導体モジュールを収納する第2ケースと、
前記流路形成体は、前記流路と繋がる開口部を有し、
前記第2ケースは、当該第2ケースの一部が前記開口部を塞ぐように、前記流路形成体または前記第1ケースに固定される一体型電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載された一体型電力変換装置であって、
前記開口部を塞ぐ前記第2ケースの一部は、前記流路と対向する部分に凹部を形成する一体型電力変換装置。
【請求項3】
請求項1に記載された一体型電力変換装置であって、
前記開口部を塞ぐ前記第2ケースの一部は、前記流路と対向する部分とは異なる部分に凹部を形成し、
前記凹部は前記流路と繋がる一体型電力変換装置。
【請求項4】
請求項3に記載された一体型電力変換装置であって、
前記開口部を塞ぐ前記第2ケースの一部は、前記流路内に向かって突出する凸部を有し、
前記凸部は、前記流路内に流れる前記冷却冷媒を前記第2ケースの前記凹部に迂回させる一体型電力変換装置。
【請求項5】
請求項1ないし4に記載されたいずれかの一体型電力変換装置であって、
前記第2パワー半導体モジュールは、前記流路と対向するように前記第2ケースの底面に配置される一体型電力変換装置。
【請求項6】
請求項1ないし5に記載されたいずれかの一体型電力変換装置であって、
前記第1電力変換装置は、車両駆動用モータを駆動する交流電流を出力し、
前記第2電力変換装置は、前記第2パワー半導体モジュールに収納されかつ高電圧電源に接続される高電圧側スイッチング素子と、低電圧電源に接続される低電圧側半導体素子と、トランス回路と、を有するDCDCコンバータであり、
前記トランス回路は、前記流路と対向するように前記第2ケースの底面に配置される一体型電力変換装置。
【請求項7】
請求項6に記載された一体型電力変換装置であって、
前記流路形成体は、第1流路と、前記第1流路と平行に形成された第2流路と、を有し、
前記トランス回路は、前記第1流路と対向するように前記第2ケースの底面に配置され、
前記第2パワー半導体モジュールは、前記第2流路と対向するように前記第2ケースの底面に配置される一体型電力変換装置。
【請求項8】
請求項7に記載された一体型電力変換装置であって、
前記流路形成体は、前記第1流路と前記第2流路を接続する第3流路を有し、
前記低電圧側半導体素子は、前記第3流路と対向するように前記第2ケースの底面に配置される一体型電力変換装置。
【請求項9】
請求項6又は7に記載されたいずれかの一体型電力変換装置であって、
前記第1電力変換装置は、前記第1パワー半導体モジュールに供給される直流電流を平滑化するコンデンサを有し、
前記コンデンサは、前記第1流路と前記第2流路の間に挟まれる一体型電力変換装置。
【請求項10】
請求項1に記載された一体型電力変換装置であって、
前記第1電力変換装置は、車両駆動用モータを駆動する交流電流を出力し、
前記第2電力変換装置は、前記第2パワー半導体モジュールに収納されかつ高電圧電源に接続される高電圧側スイッチング素子と、低電圧電源に接続される低電圧側半導体素子と、トランス回路と、前記高電圧側スイッチング素子と前記低電圧側半導体素子を駆動する駆動回路部と、前記駆動回路部の駆動電力を伝達するパワー導線と、前記駆動回路部を駆動するための信号を伝達する通信導線と、を有するDCDCコンバータであり、
前記第1ケースは、第1開口部を有し、
前記第2ケースは、前記第1ケースとの対向面に第2開口部を有し、
前記第2開口部は、前記第1開口部と対向するように設けられ、
前記パワー導線及び前記通信導線は、前記第1開口部及び前記第2開口部を貫通し、前記駆動回路部の駆動電力及び駆動信号を前記第1電力変換装置側から取得する一体型電力変換装置。
【請求項11】
請求項10に記載された一体型電力変換装置であって、
前記第2ケースは、前記第1開口部に嵌め合わされる凸部を有する一体型電力変換装置。
【請求項12】
請求項1ないし11に記載されたいずれかの一体型電力変換装置であって、
前記開口部を塞ぐ前記第2ケースの一部は、前記第1ケースに固定されるカバーであり、
前記カバーは、前記第2ケースに一体に形成される一体型電力変換装置。
【請求項13】
高電圧電源に接続される高電圧側スイッチング素子と、
低電圧電源に接続される低電圧側半導体素子と、
トランス回路と、
前記高電圧側スイッチング素子と前記低電圧側半導体素子と前記トランス回路を収納するケースと、を備え、
前記ケースは、他の電子機器に設けられた流路の一部を形成するためのカバーと一体に形成されるDCDCコンバータ装置。
【請求項14】
請求項13に記載されたDCDCコンバータ装置であって、
前記第2パワー半導体モジュールは、前記流路と対向するように前記ケースの底面に配置されるDCDCコンバータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−99053(P2013−99053A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238159(P2011−238159)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】