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一塩基多型に基づく免疫疾患または閉塞性肺疾患の検査方法
説明

一塩基多型に基づく免疫疾患または閉塞性肺疾患の検査方法

【課題】気管支喘息等の免疫疾患または閉塞性肺疾患を検査する方法を提供する。
【解決手段】第4染色体長腕31領域(4q31領域)、第5染色体長腕22領域(5q22領域)、第6染色体短腕21領域(6p21領域)、第10染色体短腕14領域(10p14領域)、または第12染色体長腕13領域(12q13領域)に存在する一塩基多型を分析し、該分析結果に基づいて免疫疾患または閉塞性肺疾患の発症リスクおよび/または発症の有無を検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は気管支喘息等の免疫疾患または閉塞性肺疾患の発症リスクや発症の有無を判定するための検査方法及び該検査方法に用いられる試薬に関する。
【背景技術】
【0002】
気管支喘息は、喘鳴、咳、息切れなどを伴う慢性の可逆的気道閉塞を臨床的特徴とする炎症性疾患であり、免疫疾患の1つであると考えられている。気管支喘息は近年増加の一途をたどっており、現在、日本人成人の約3%および小児の約6%が気管支喘息に罹患しているといわれている。気管支喘息は、遺伝要因と環境要因の総合的な寄与により発症する多因子疾患であると考えられているが、現在もその発症および進展のメカニズムには不明な点が多い。
【0003】
近年、ゲノムワイド関連解析(GWAS)によって、気管支喘息と関連する遺伝子や一塩基多型(SNPs)を同定する試みがなされている(非特許文献1〜7)。例えば、ヨーロッパ人集団やアフリカに起源を有する集団を被検者として気管支喘息に関するGWASが行われており(非特許文献2〜6)、また、最近行われたヨーロッパ人集団を被検者とする大規模なコンソーシアムベースのGWASにおいては、気管支喘息と強く関連する10ヶ所の領域が報告されている(非特許文献7)。他の人種の集団を被検者としてGWASを行うことにより、気管支喘息の遺伝的バックグラウンドに関するさらなる知見が得られるものと期待される。
【0004】
第5染色体長腕22領域(5q22領域)に存在するTSLP遺伝子は、Th2免疫応答に関与する遺伝子である。TSLP遺伝子の転写開始点の5.7kb上流に存在するrs1837253は、カナダ人集団を被検者とする候補遺伝子解析により、気管支喘息と気道過敏性との関連が報告されている(非特許文献8)。また、TSLP遺伝子座の多型に基づく気管支喘息等の免疫疾患の検査法が知られている(特許文献1)。しかしながら、ゲノムワイド水準でTSLP遺伝子座と気管支喘息とが関連するかは知られていない。
【0005】
第6染色体短腕21領域(6p21領域)の主要組織適合遺伝子複合体領域(MHC region、HLA遺伝子座ともいう)は、MHC抗原をコードする領域であり、免疫応答に関与する。MHC class IIのHLA-DQ領域は、白人集団を被検者とする研究により、気管支喘息および気道過敏性との関連が報告されている(非特許文献7、9)。しかしながら、HLA-DQ領域以外のMHC領域と気管支喘息との関連は報告されておらず、また、アジア人集団におけるMHC領域と気管支喘息との関連は報告されていない。
【0006】
また、第4染色体長腕31領域(4q31領域)、第10染色体短腕14領域(10p14領域)、第12染色体長腕13領域(12q13領域)と気管支喘息との関連は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−109915
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Kabesch, M. Chest 137, 909-915 (2010).
【非特許文献2】Moffatt, M.F. et al. Nature 448, 470-473 (2007).
【非特許文献3】Himes, B.E. et al. Am. J. Hum. Genet. 84, 581-593 (2009).
【非特許文献4】Sleiman PM, et al. N. Engl. J. Med. 362, 36-44 (2010).
【非特許文献5】Li X, et al. J. Allergy Clin. Immunol. 125, 328-335 (2010).
【非特許文献6】Mathias, R.A. et al. J. Allergy Clin. Immunol. 125, 336-346 (2010).
【非特許文献7】Moffatt, M.F. et al. N. Engl. J. Med. 363, 1211-1221 (2010).
【非特許文献8】He JQ. et al. J. Allergy Clin. Immunol. 124, 222-229 (2009).
【非特許文献9】Moffatt MF. et al. Eur. J. Hum. Genet. 9, 341-346 (2001).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、気管支喘息等の免疫疾患または閉塞性肺疾患の発症リスクや発症の有無を正確に検査する方法、及び該方法に用いられる検査試薬を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題の解決のために鋭意検討した結果、第4染色体長腕31領域(4q31領域)、第5染色体長腕22領域(5q22領域)、第6染色体短腕21領域(6p21領域)、第10染色体短腕14領域(10p14領域)、または第12染色体長腕13領域(12q13領域)に存在する一塩基多型(SNP)が気管支喘息と関連することを同定した。そして、これらの多型を調べることにより気管支喘息等の免疫疾患または閉塞性肺疾患の発症リスクや発症の推定を正確に実施できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]
以下の(1)〜(5)のいずれかの領域に存在する一塩基多型を分析し、該分析結果に基づいて免疫疾患または閉塞性肺疾患を検査することを特徴とする、免疫疾患または閉塞性肺疾患の発症リスクおよび/または発症の有無の判定方法。
(1)第4染色体長腕31領域
(2)第12染色体長腕13領域
(3)第10染色体短腕14領域
(4)第5染色体長腕22領域
(5)第6染色体短腕21領域
[2]
前記免疫疾患または閉塞性肺疾患が、気管支喘息である、[1]に記載の方法。
[3]
前記一塩基多型が、配列番号1〜24から選ばれる塩基配列の塩基番号61番目の塩基に相当する塩基、または該塩基と連鎖不平衡の関係にある塩基における一塩基多型である、[1]または[2]に記載の方法。
[4]
下記(1)または(2)の配列を有する免疫疾患または閉塞性肺疾患検査用プローブ。(1)配列番号1〜24から選ばれる塩基配列において、塩基番号61番目の塩基を含む10塩基以上の配列、又はその相補配列。
(2)配列番号1〜24から選ばれる塩基配列の塩基番号61番目の塩基に相当する塩基と連鎖不平衡の関係にある塩基を含む10塩基以上の配列、又はその相補配列。
[5]
下記(1)または(2)の領域を増幅することのできる免疫疾患または閉塞性肺疾患検査用プライマー。
(1)配列番号1〜24から選ばれる塩基配列において、塩基番号61番目の塩基を含む領域。
(2)配列番号1〜24から選ばれる塩基配列の塩基番号61番目の塩基に相当する塩基と連鎖不平衡の関係にある塩基を含む領域。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、これまで予測が困難であった気管支喘息等の免疫疾患または閉塞性肺疾患の発症リスク(罹患リスク)を正確かつ簡便に予測することができる。また、気管支喘息等の免疫疾患または閉塞性肺疾患の発症を正確かつ簡便に判定することができる。したがって、本発明は気管支喘息等の免疫疾患または閉塞性肺疾患の予防や早期治療に貢献するものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】GWASの結果に基づく6p21領域の関連解析の結果と連鎖不平衡マップを示す図。
【図2】GWASの結果に基づく5q22領域の関連解析の結果と連鎖不平衡マップを示す図。
【図3】GWASの結果に基づく10p14領域の関連解析の結果と連鎖不平衡マップを示す図。
【図4】GWASの結果に基づく12q13領域の関連解析の結果と連鎖不平衡マップを示す図。
【図5】GWASの結果に基づく4q31領域の関連解析の結果と連鎖不平衡マップを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<1>本発明の方法
本発明の方法は、ヒトの第4染色体長腕31領域(4q31領域)、第5染色体長腕22領域(5q22領域)、第6染色体短腕21領域(6p21領域)、第10染色体短腕14領域(10p14領域)、または第12染色体長腕13領域(12q13領域)に存在するSNPを分析し、該分析結果に基づいて免疫疾患または閉塞性肺疾患を検査することを特徴とする、免疫疾患または閉塞性肺疾患の発症リスクおよび/または発症の有無の判定方法である。すなわち、本発明において、「検査」とは免疫疾患または閉塞性肺疾患の発症リスクの検査及び免疫疾患または閉塞性肺疾患の発症の有無の検査を含む。本発明の方法においては、SNPの分析結果を、免疫疾患または閉塞性肺疾患の発症リスクおよび/または発症の有無と関連付ける。
【0015】
免疫疾患としては、特に限定されないが、例えば、気道アレルギー疾患やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患が好ましく、気道アレルギー疾患がより好ましい。気道アレルギー疾患としては、例えば、気管支喘息が好ましい。閉塞性肺疾患としては、特に限定されないが、例えば、COPD(慢性閉塞性肺疾患、Chronic obstructive pulmonary disease)、気管支喘息、慢性気管支炎、肺気腫、びまん性汎細気管支炎などが好ましく、気管支喘息がより好ましい。気管支喘息には成人気管支喘息、小児気管支喘息、アトピー性気管支喘息などが含まれるが、成人気管支喘息が好ましい。
【0016】
4q31領域に存在する具体的なSNPとしては、ヒトrs7686660およびrs3805236を挙げることができる。ここで、rs番号はNational Center for Biotechnology InformationのdbSNPデータベース(http//www.ncbi.nlm.nih.gov/projects/SNP/)の登録番号を示す。これらSNPsは、4q31領域のUSP38遺伝子およびGAB1遺伝子が含まれる連鎖不平衡ブロックに位置する。よって、特に、当該連鎖不平衡ブロックに存在するSNPを解析することによって免疫疾患または閉塞性肺疾患を検査することができる。USP38遺伝子としては、具体的には、GenBank Accession No. NC_000004.11の144106070〜144143141の領域が挙げられる。GAB1遺伝子としては、具体的には、GenBank Accession No. NC_000004.11の144257983〜144395718の領域が挙げられる。
【0017】
rs7686660はGenBank Accession No. NT_016354.18の68551306番目の塩基におけるチミ
ン(T)/グアニン(G)の多型を意味し、この塩基がTである場合は免疫疾患または閉塞性肺疾患の可能性または発症リスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、TT>TG>GGの順で免疫疾患または閉塞性肺疾患の可能性または発症リスクが高い。
【0018】
rs3805236はGenBank Accession No. NT_016354.18の68905884番目の塩基におけるアデニン(A)/グアニン(G)の多型を意味し、この塩基がGである場合は免疫疾患または閉塞性肺疾患の可能性または発症リスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、GG>GA>AAの順で免疫疾患または閉塞性肺疾患の可能性または発症リスクが高い。
【0019】
5q22領域に存在する具体的なSNPとしては、ヒトrs1837253を挙げることができる。このSNPは、5q22領域のTSLP遺伝子およびWDR36遺伝子が含まれる連鎖不平衡ブロックに位置する。よって、特に、当該連鎖不平衡ブロックに存在するSNPを解析することによって免疫疾患または閉塞性肺疾患を検査することができる。TSLP遺伝子としては、具体的には、GenBank Accession No. NC_000005.9の110407390〜110413722の領域が挙げられる。WDR36遺伝子としては、具体的には、GenBank Accession No. NC_000005.9の110427870〜110466200の領域が挙げられる。また、特に、TSLP遺伝子はこの領域における気管支喘息関連遺伝子である可能性が高い。
【0020】
rs1837253はGenBank Accession No. NT_034772.5の12816885番目の塩基におけるチミン(T)/シトシン(C)の多型を意味し、この塩基がCである場合は免疫疾患または閉塞性肺疾患の可能性または発症リスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、CC>CT>TTの順で免疫疾患または閉塞性肺疾患の可能性または発症リスクが高い。
【0021】
6p21領域に存在する具体的なSNPとしては、ヒトrs204995、rs204993、rs404860、rs443198、s3130299、rs412657、rs570963、rs10484560、rs3129943、rs3117098、rs10947262、rs3806156、rs3129890、rs7775228、rs6457617、rs2858308、rs9275698、rs9500927を挙げることができる。これらSNPsは、6p21領域の主要組織適合遺伝子複合体領域(MHC region)に位置する。よって、特に、MHC領域に存在するSNPを解析することによって免疫疾患または閉塞性肺疾患を検査することができる。
【0022】
rs204995は、GenBank Accession No. NT_007592.14の23012535番目の塩基におけるアデニン(A)/グアニン(G)の多型を意味し、この塩基がAである場合は免疫疾患または閉塞性肺疾患の可能性または発症リスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、AA>AG>GGの順で免疫疾患または閉塞性肺疾患の可能性または発症リスクが高い。
【0023】
rs204993は、GenBank Accession No. NT_007592.14の23013831番目の塩基におけるアデニン(A)/グアニン(G)の多型を意味し、この塩基がAである場合は免疫疾患または閉塞性肺疾患の可能性または発症リスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、AA>AG>GGの順で免疫疾患または閉塞性肺疾患の可能性または発症リスクが高い。
【0024】
rs404860は、GenBank Accession No. NT_007592.14の23042595番目の塩基におけるアデニン(A)/グアニン(G)の多型を意味し、この塩基がAである場合は免疫疾患または閉塞性肺疾患の可能性または発症リスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、AA>AG>GGの順で免疫疾患または閉塞性肺疾患の可能性または発症リスクが高い。
【0025】
rs443198は、GenBank Accession No. NT_007592.14の23048656番目の塩基におけるアデニン(A)/グアニン(G)の多型を意味し、この塩基がAである場合は免疫疾患または閉塞性肺疾患の可能性または発症リスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、AA>AG>GGの順で免疫疾患または閉塞性肺疾患の可能性または発症リスクが高い。
【0026】
rs3130299は、GenBank Accession No. NT_007592.14の23061787番目の塩基におけるアデニン(A)/グアニン(G)の多型を意味し、この塩基がGである場合は免疫疾患または閉塞性肺疾患の可能性または発症リスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、GG>GA>AAの順で免疫疾患または閉塞性肺疾患の可能性または発症リスクが高い。
【0027】
rs412657は、GenBank Accession No. NT_007592.14の23069335番目の塩基におけるアデニン(A)/シトシン(C)の多型を意味し、この塩基がAである場合は免疫疾患または閉塞性肺疾患の可能性または発症リスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、AA>AC>CCの順で免疫疾患または閉塞性肺疾患の可能性または発症リスクが高い。
【0028】
rs570963は、GenBank Accession No. NT_007592.14の23147844番目の塩基におけるアデニン(A)/グアニン(G)の多型を意味し、この塩基がAである場合は免疫疾患または閉塞性肺疾患の可能性または発症リスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、AA>AG>GGの順で免疫疾患または閉塞性肺疾患の可能性または発症リスクが高い。
【0029】
rs10484560は、GenBank Accession No. NT_007592.14の23156387番目の塩基におけるチミン(T)/シトシン(C)の多型を意味し、この塩基がTである場合は免疫疾患または閉塞性肺疾患の可能性または発症リスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、TT>TC>CCの順で免疫疾患または閉塞性肺疾患の可能性または発症リスクが高い。
【0030】
rs3129943は、GenBank Accession No. NT_007592.14の23196945番目の塩基におけるチミン(T)/シトシン(C)の多型を意味し、この塩基がTである場合は免疫疾患または閉塞性肺疾患の可能性または発症リスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、TT>TC>CCの順で免疫疾患または閉塞性肺疾患の可能性または発症リスクが高い。
【0031】
rs3117098は、GenBank Accession No. NT_007592.14の23216763番目の塩基におけるアデニン(A)/グアニン(G)の多型を意味し、この塩基がGである場合は免疫疾患または閉塞性肺疾患の可能性または発症リスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、GG>GA>AAの順で免疫疾患または閉塞性肺疾患の可能性または発症リスクが高い。
【0032】
rs10947262は、GenBank Accession No. NT_007592.14の23231562番目の塩基におけるチミン(T)/シトシン(C)の多型を意味し、この塩基がCである場合は免疫疾患または閉塞性肺疾患の可能性または発症リスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、CC>CT>TTの順で免疫疾患または閉塞性肺疾患の可能性または発症リスクが高い。
【0033】
rs3806156は、GenBank Accession No. NT_007592.14の23231948番目の塩基におけるチミン(T)/グアニン(G)の多型を意味し、この塩基がGである場合は免疫疾患または
閉塞性肺疾患の可能性または発症リスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、GG>GT>TTの順で免疫疾患または閉塞性肺疾患の可能性または発症リスクが高い。
【0034】
rs3129890は、GenBank Accession No. NT_007592.14の23272523番目の塩基におけるチミン(T)/シトシン(C)の多型を意味し、この塩基がTである場合は免疫疾患または閉塞性肺疾患の可能性または発症リスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、TT>TC>CCの順で免疫疾患または閉塞性肺疾患の可能性または発症リスクが高い。
【0035】
rs7775228は、GenBank Accession No. NT_007592.14の23516329番目の塩基におけるアデニン(A)/グアニン(G)の多型を意味し、この塩基がAである場合は免疫疾患または閉塞性肺疾患の可能性または発症リスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、AA>AG>GGの順で免疫疾患または閉塞性肺疾患の可能性または発症リスクが高い。
【0036】
rs6457617は、GenBank Accession No. NT_007592.14の23522101番目の塩基におけるアデニン(A)/グアニン(G)の多型を意味し、この塩基がAである場合は免疫疾患または閉塞性肺疾患の可能性または発症リスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、AA>AG>GGの順で免疫疾患または閉塞性肺疾患の可能性または発症リスクが高い。
【0037】
rs2858308は、GenBank Accession No. NT_007592.14の23528250番目の塩基におけるチミン(T)/グアニン(G)の多型を意味し、この塩基がGである場合は免疫疾患または閉塞性肺疾患の可能性または発症リスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、GG>GT>TTの順で免疫疾患または閉塞性肺疾患の可能性または発症リスクが高い。
【0038】
rs9275698は、GenBank Accession No. NT_007592.14の23546223番目の塩基におけるチミン(T)/シトシン(C)の多型を意味し、この塩基がTである場合は免疫疾患または閉塞性肺疾患の可能性または発症リスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、TT>TC>CCの順で免疫疾患または閉塞性肺疾患の可能性または発症リスクが高い。
【0039】
rs9500927は、GenBank Accession No. NT_007592.14の23819611番目の塩基におけるチミン(T)/シトシン(C)の多型を意味し、この塩基がTである場合は免疫疾患または閉塞性肺疾患の可能性または発症リスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、TT>TC>CCの順で免疫疾患または閉塞性肺疾患の可能性または発症リスクが高い。
【0040】
10p14領域に存在する具体的なSNPとしては、ヒトrs10508372を挙げることができる。rs10508372はGenBank Accession No. NT_077569.2の3334914番目の塩基におけるチミン(T)/シトシン(C)の多型を意味し、この塩基がCである場合は免疫疾患または閉塞性肺疾患の可能性または発症リスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、CC>CT>TTの順で免疫疾患または閉塞性肺疾患の可能性または発症リスクが高い。
【0041】
12q13領域に存在する具体的なSNPとしては、ヒトrs2069408およびrs1701704を挙げることができる。これらSNPsは、12q13領域のIKZF4遺伝子(Eos遺伝子)等が含まれる連鎖不平衡ブロックに位置する。よって、特に、当該連鎖不平衡ブロックに存在するSNPを解析することによって免疫疾患または閉塞性肺疾患を検査することができる。IKZF
4遺伝子(Eos遺伝子)としては、具体的には、GenBank Accession No. NC_000012.11の56414689〜56432219の領域が挙げられる。
【0042】
rs2069408はGenBank Accession No. NT_029419.11の18507627番目の塩基におけるチミン(T)/シトシン(C)の多型を意味し、この塩基がCである場合は免疫疾患または閉塞性肺疾患の可能性または発症リスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、CC>CT>TTの順で免疫疾患または閉塞性肺疾患の可能性または発症リスクが高い。
【0043】
rs1701704はGenBank Accession No. NT_029419.11の18555793番目の塩基におけるチミン(T)/グアニン(G)の多型を意味し、この塩基がGである場合は免疫疾患または閉塞性肺疾患の可能性または発症リスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、GG>GT>TTの順で免疫疾患または閉塞性肺疾患の可能性または発症リスクが高い。
【0044】
なお、上記24個のSNPについて、SNP塩基及びその前後60bpの領域を含む合計121bpの長さの配列を、配列番号1〜24に示した。61番目の塩基が多型を有する。また、上記24個のSNPの詳細については、後述の表2にも示す。
【0045】
本発明においては、上記塩基に相当する塩基を解析する。「上記塩基に相当する塩基」とは、上記領域における該当塩基を意味する。すなわち、「上記塩基に相当する塩基を解析する」ことには、仮に人種の違いなどによって上記配列がSNP以外の位置で若干変化したとしても、上記領域における該当塩基を解析することが含まれる。
【0046】
また、本発明において解析する塩基は上記のものに限定されず、上記の塩基と連鎖不平衡にある塩基の多型を分析してもよい。ここで「上記の塩基と連鎖不平衡にある塩基」とは、上記の塩基とr2>0.5、好ましくはr2>0.8、さらに好ましくはr2>0.9の関係を満たす塩基をいう。r2は連鎖不平衡係数である。また上記の塩基と連鎖不平衡にある塩基は、例えば、HapMapデータベース(http://www.hapmap.org/index.html.ja)等を用いて同定することができる。もしくは、複数人(通常は20−40人程度)から採取したDNAをシークエンサーにて配列解析し、連鎖不平衡にあるSNPを探索することにより同定することもできる。上記の塩基と連鎖不平衡にある塩基は、遺伝子型を考慮して解析した場合は、リスクアレルのホモ接合体 > リスクアレルと非リスクアレルのへテロ接合体 > 非リスクアレルのホモ接合体の順で免疫疾患または閉塞性肺疾患の可能性または発症リスクが高い。
【0047】
上記SNPの塩基の種類を調べ、得られた結果を上記のような基準に基づいて免疫疾患または閉塞性肺疾患と関連付けることにより、免疫疾患または閉塞性肺疾患を検査することができる。上記SNPは単独で解析されてもよいし、上記SNPの少なくとも1つを含む複数のSNPsをまとめて解析(ハプロタイプ解析)してもよい。例えば、上記SNPの複数をまとめて解析してもよいし、上記SNPの少なくとも1つと、免疫疾患または閉塞性肺疾患と関連する既知のSNPs(非特許文献1〜9)や当該既知のSNPsと連鎖不平衡にあるSNPsとを組み合わせて解析してもよい。具体的には、例えば、rs7686660、rs1837253、rs404860、rs10508372、およびrs1701704からなる群から選択される少なくとも2つ以上のSNPsを組み合わせて解析してもよい。免疫疾患または閉塞性肺疾患と関連する複数のSNPsをまとめて解析すれば、免疫疾患または閉塞性肺疾患の検査の精度が向上する。なお、いずれのSNPも、二本鎖DNAのどちらの鎖を解析してもよい。例えば、MHC領域の遺伝子やTSLP遺伝子の配列はセンス鎖を解析してもよいし、アンチセンス鎖を解析してもよい。
【0048】
SNPの解析に用いる試料としては、染色体DNAを含む試料であれば特に制限されないが、例えば、血液、尿等の体液サンプル、口腔粘膜などの細胞、毛髪等の体毛などが挙げられる。SNPの解析にはこれらの試料を直接使用することもできるが、これらの試料から染色体DNAを常法により単離し、これを用いて解析することが好ましい。
【0049】
SNPの解析は、通常の遺伝子多型解析方法によって行うことができる。例えば、シークエンス解析、PCR、ハイブリダイゼーション、インベーダー法などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
シークエンス解析は通常の方法により行うことができる。具体的には、多型を示す塩基の5’側 数十塩基の位置に設定したプライマーを使用してシークエンス反応を行い、その解析結果から、該当する位置がどの種類の塩基であるかを決定することができる。なお、シークエンス反応の前に、あらかじめSNP部位を含む断片をPCRなどによって増幅しておくことが好ましい。
【0051】
また、SNPの解析は、PCRによる増幅の有無を調べることによって行うことができる。例えば、多型を示す塩基を含む領域に対応する配列を有し、かつ、3’末端が各多型に対応するプライマーをそれぞれ用意する。それぞれのプライマーを使用してPCRを行い、増幅産物の有無によってどのタイプの多型であるかを決定することができる。また、LAMP法(特許第3313358号明細書)、NASBA法(Nucleic Acid Sequence-Based Amplification;特許2843586号明細書)、ICAN法(特開2002−233379号公報)などによって増幅の有無を調べることもできる。その他、単鎖増幅法を用いてもよい。
【0052】
また、SNP部位を含むDNA断片を増幅し、増幅産物の電気泳動における移動度の違いによってどのタイプの多型であるかを決定することもできる。このような方法としては、例えば、PCR−SSCP(single-strand conformation polymorphism)法(Genomics. 1992 Jan 1; 12(1): 139-146.)が挙げられる。具体的には、まず、目的のSNPを含むDNAを増幅し、増幅したDNAを一本鎖DNAに解離させる。次いで、解離させた一本鎖DNAを非変性ゲル上で分離し、分離した一本鎖DNAのゲル上での移動度の違いによってどのタイプの多型であるかを決定することができる。
【0053】
さらに、多型を示す塩基が制限酵素認識配列に含まれる場合は、制限酵素による切断の有無によって解析することもできる(RFLP法)。この場合、まず、DNA試料を制限酵素により切断する。次いで、DNA断片を分離し、検出されたDNA断片の大きさによってどのタイプの多型であるかを決定することができる。
【0054】
また、ハイブリダイゼーションの有無を調べることによって多型の種類を解析することも可能である。すなわち、各塩基に対応するプローブを用意し、いずれのプローブにハイブリダイズするかを調べることによってSNPがいずれの塩基であるかを調べることもできる。
【0055】
このようにしてSNPがいずれの塩基であるかを決定することで、免疫疾患または閉塞性肺疾患を検査するためのデータを得ることができる。
【0056】
<2>本発明の検査用試薬
本発明はまた、気管支喘息等の免疫疾患または閉塞性肺疾患を検査するためのプライマーやプローブなどの検査試薬を提供する。このようなプローブとしては、上記SNP部位を含み、ハイブリダイズの有無によってSNP部位の塩基の種類を判定できるプローブが挙げられる。具体的には、配列番号1〜24から選ばれる塩基配列の61番目の塩基を含
む配列、又はその相補配列を有する10塩基以上の長さのプローブや、当該塩基と連鎖不平衡の関係にある塩基を含む配列、又はその相補配列を有する10塩基以上の長さのプローブが挙げられる。なお、「当該塩基と連鎖不平衡の関係にある塩基」及びその前後の領域の塩基配列は、例えば、National Center for Biotechnology InformationのdbSNPデータベース(http//www.ncbi.nlm.nih.gov/projects/SNP/)から取得できる。プローブの長さは好ましくは、15〜35塩基であり、より好ましくは20〜35塩基である。
【0057】
また、プライマーとしては、上記SNP部位を増幅するためのPCRに用いることのできるプライマー、又は上記SNP部位を配列解析(シークエンシング)するために用いることのできるプライマーが挙げられる。具体的には、配列番号1〜24から選ばれる塩基配列の61番目の塩基を含む領域を増幅したりシークエンシングしたりすることのできるプライマーや、当該塩基と連鎖不平衡の関係にある塩基を含む領域を増幅したりシークエンシングしたりすることのできるプライマーが挙げられる。このようなプライマーの長さは10〜50塩基が好ましく、15〜35塩基がより好ましく、20〜35塩基がさらに好ましい。
【0058】
上記SNP部位をシークエンシングするためのプライマーとしては、上記塩基の5’側領域、好ましくは30〜100塩基上流の配列を有するプライマーや、上記塩基の3’側領域、好ましくは30〜100塩基下流の領域に相補的な配列を有するプライマーが例示される。PCRによる増幅の有無で多型を判定するために用いるプライマーとしては、上記塩基を含む配列を有し、上記塩基を3’側に含むプライマーや、上記塩基を含む配列の相補配列を有し、上記塩基の相補塩基を3’側に含むプライマーなどが例示される。
【0059】
なお、本発明の検査用試薬はこれらのプライマーやプローブに加えて、PCR用のポリメラーゼやバッファー、ハイブリダイゼーション用試薬などを含むものであってもよい。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0061】
(1)気管支喘息と関連するSNPsの同定
気管支喘息感受性を決定する遺伝的変異を同定するために、日本人被検者を用いてゲノムワイド関連解析(GWAS)を行った。GWASとは、疾患等の表現型に関わる遺伝的変異を探索する遺伝統計学的手法である。例えば、ヒトゲノム全体を網羅するような数十万〜100万ヶ所のSNPsを用いて、ある疾患の患者(ケース)とその疾患にかかっていない被験者(コントロール)との間で、多型の頻度に差があるかどうかを統計的に検定することで、疾患と関連する遺伝的変異を見出すことができる。
【0062】
<被検者>
本実施例に用いた被検者の特徴を表1に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
GWASに用いた気管支喘息の被検者(ケース(case))1,532名は、複数の病院で募集した。再現試験(replication study)に用いた気管支喘息の被検者5,639名は、東京大学医科学研究所のBioBank Japan (BBJ) (Nakamura, Y. The BioBank Japan Project. Clin Adv Hematol Oncol 5, 696-7 (2007))に登録された気管支喘息の患者から採用した。気管支喘息の被検者は、いずれも日本人であり、米国胸部疾患協会(American Thoracic Society;ATS)の基準に基づき医師により気管支喘息と診断された。
【0065】
GWASに用いた対照被検者(コントロール(control))3,304名は、BBJに登録された2,403名の患者、および大阪御堂筋ロータリークラブで募集した901名の健康なボランティアからなる。再現試験に用いた対照被検者24,608名は、BBJに登録された患者から採用した。なお、対照被検者として用いたBBJに登録された患者とは、気管支喘息、アレルギー性鼻炎(allergic rhinitis)、アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis)、肺線維症(lung fibrosis)、慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease)以外の疾患の患者である。対照被検者は、いずれも日本人である。
【0066】
本研究は東京大学医科学研究所および理化学研究所横浜研究所の倫理委員会によって承認され、全ての参加者からインフォームドコンセントを得た。
【0067】
<GWAS>
気管支喘息の被検者1,532名の遺伝子型を、Illumina HumanHap610-Quad Genotyping BeadChip(Illumina社(USA))を用いて解析した。対照被検者3,304名の遺伝子型を、Illumina HumanHap550 Genotyping BeadChip(Illumina社(USA))を用いて解析した。クオリティコントロールとして、主成分分析(PCA)により外れ値(outlier)であると判定された1名の被検者を除外し、さらに、マイナーアレル頻度(MAFs)が0.01未満のSNPs、コール率(call rate)が0.99未満のSNPs、Hardy-Weinberg平衡
検定でのP値がカットオフ値未満(コントロールでP<10-6)のSNPsを除外した。クオリティコントロールを通過した合計458,847個のSNPsについて、コクラン・アーミテージ傾向検定(Cochran-Armitage trend test)により気管支喘息との関連を評価した。なお、genomic inflation factor(GC)は1.07であり、サンプルサイズで補正したλ1000は1.03であり、集団の偏りによる偽陽性の関連が得られる可能性は低いと考えられた。
【0068】
GWASの結果、6p21のMHC class III領域に存在するrs8192565に気管支喘息との最も強い関連が認められた。また、その他、NOTCH4遺伝子座とC6orf10遺伝子座の2つのSNPsが、ゲノムワイドな有意性(genome-wide significance)の閾値として設定されたP<5.0×10-8を満たし、気管支喘息との有意な関連を示した。
【0069】
さらに、ここで得られた日本人のGWASの結果を用いて、気管支喘息と関連することが既に報告されている領域について再現性の確認を行なった。例えば、最近行なわれたヨーロッパのコンソーシアムによる大規模メタ解析では、喘息とゲノムワイドレベルの強い関連をしめす領域が10カ所報告されている(非特許文献7)。日本人のGWASでは、10カ所の内、6p21のrs1063355 (P = 0.0010)、15q22のrs11071559 (P = 0.0036)、15q22のrs744910 (P = 0.0095)の3ヶ所で気管支喘息との関連が再現された。
【0070】
<再現試験>
成人気管支喘息に関連するゲノム領域をさらに同定するため、GWASで解析した被検者とは独立の被検者を用いて、計102個のSNPsについて再現試験(replication study)を行った。当該102個のSNPsは、GWASのコクラン・アーミテージ傾向検定でP<1×10-4を満たしたSNPsの内、当該102個のSNPsのいずれかとr2>0.9で連鎖不平衡の関係にある31個のSNPsを除いたものである。気管支喘息の被検者5,639名の遺伝子型は、TaqMan assay(Applied Biosystems)またはmultiplex-PCR invader assay(Third Wave Technologies)により解析した。対照被検者24,608名の遺伝子型は、Illumina HumanHap610-Quad Genotyping BeadChip(Illumina社(USA))を用いて解析した。
【0071】
再現試験の結果、102個のSNPsの内、5つの領域に存在する計24個のSNPsが、ボンフェローニ補正後の有意性の閾値であるP<4.9×10-4(=0.05/102)を満たし、気管支喘息との有意な関連を示した(表2の「replication」欄)。これら24個のSNPsの詳細を表2に示す。
【0072】
さらに、これら24個のSNPsについて、Mantel-Haenszel法を用いてGWASと再現試験の統合解析(combined analysis)を行った結果、24個全てがゲノムワイドな有意性(genome-wide significance)の閾値として設定されたP<5.0×10-8を満たし、気管支喘息との有意な関連を示した(表2の「combined」欄)。なお、統合解析の結果、各領域で気管支喘息との最も強い関連が認められたSNPsは以下のとおりである。
4q31 (rs7686660、P = 1.87 × 10-12、OR = 1.16)
5q22 (rs1837253、P = 1.24 × 10-16、OR = 1.17)
6p21 (rs404860、P = 4.07 × 10-23、OR = 1.21)
10p14 (rs10508372、P = 1.79 × 10-15、OR = 1.16)
12q13 (rs1701704、P = 2.33 × 10-13、OR = 1.19)
【0073】
【表2】

Risk;リスクアレル(Risk Allele)
RAF;リスクアレル頻度(Risk Allele Frequency)
a:GWASおよび再現試験(replication study)のP値は、コクラン・アーミテージ傾向検定により算出した。
b:GWASのP値は、λ値で補正したPGCを示す。
c:OR;オッズ比(Odds Ratio)およびCI;信頼区間(Confidence Interval)は、非リスクアレルを対照として算出した。
d:統合解析(combined analysis)の結果は、Mantel-Haenszel法により算出した。
【0074】
これら5つの領域の内、5q22のTSLP遺伝子の転写開始点の5.7kb上流に存在するrs1837253は、カナダ人集団を被検者とする候補遺伝子解析により気管支喘息と気道過敏性との関連が報告されているが(非特許文献8)、ゲノムワイド水準でTSLP遺伝子座と気管支喘息とが関連するかは知られていなかった。また、6p21のMHC領域(HLA遺伝子座)に位置するMHC class IIのHLA-DQ領域は、白人集団を被検者とする研究により気管支喘息および気道過敏性との関連が報告されている(非特許文献7、9)が、HLA-DQ領域以外のMHC領域と気管支喘息との関連は報告されていなかった。これら2つの領域はいずれも、アジア人集団における気管支喘息との関連は報告されておらず、これらの領域のSNPsが日本人等のアジア人集団における気管支喘息等の免疫疾患または閉塞性肺疾患の検査に有用であることは本実施例により初めて見出されたものである。また、4q31、10p14、12q13の3領域については、最近行なわれたヨーロッパのコンソーシアムによる大規模メタ解析(非特許文献7)でも気管支喘息との関連は報告されておらず、本実施例において初めて気管支喘息との関連が見出された。なお、当該ヨーロッパの大規模メタ解析に用いられた気管支喘息の被検者はその65.4%が小児期発症喘息の被検者であったのに対し、本実施例では小児期発症喘息の被検者は19.6%に過ぎず、成人喘息の被検者が中心であった。気管支喘息は多様性が高い疾患であり、年齢に特徴的な病態も認められることから、本実施例で解析した集団とヨーロッパの大規模メタ解析で用いられた集団とでは喘息の形質が異なる可能性がある。
【0075】
統合解析で気管支喘息との有意な関連を示した24個のSNPsの内、18ヶ所のSNPsは6p21の主要組織適合遺伝子複合体領域(MHC region、HLA遺伝子座ともいう)に位置している。その内、最も強い関連はMHC class III領域のrs404860(統合解析でP = 4.07 × 10-23、OR = 1.21)で認められた。GWASのデータに基づく6p21領域の関連解析の結果と連鎖不平衡マップを図1に示す。
【0076】
最近行なわれたヨーロッパのコンソーシアムによる大規模メタ解析では、MHC class IIのHLA-DQ領域に位置するrs9273349と気管支喘息との関連が報告されており、当該SNPは、小児期発症(childhood-onset)よりも成人発症(later-onset)に強く影響するとされている(非特許文献7)。そこで、rs9273349と、本実施例のGWASで気管支喘息との最も強い関連を示したrs8192565(統合解析ではP<5.0×10-8を満たさなかったため表2には記載せず)との関係を、GWASのデータを用いたロジスティック回帰分析により検討した。なお、本実施例のGWASにはrs9273349のデータが含まれていないため、代わりに、HapMap JPTおよびCEUデータベースでrs9273349とr2=1で完全連鎖するrs1063355のデータを用いた。その結果、rs1063355で補正しても、MHC class III領域のSNPsは気管支喘息と強く関連することが明らかとなった。すなわち、本実施例において見出されたMHC class III領域と気管支喘息との関連は、既に報告されていたHLA-DQ領域と気管支喘息との関連とは独立であると考えられる。
【0077】
また、6p21のAGER遺伝子座に存在するrs2070600は、1秒率(FEV1/FVC)に関連する事が報告されている。1秒率とは呼吸機能の指標の1つであり、1秒率の低下は気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患等の閉塞性肺疾患の特徴である。本実施例においてrs2070600は気管
支喘息との関連を示さなかったが、統合解析で気管支喘息との最も強い関連を示したrs404860はrs2070600の近傍(32.9 kb下流)に位置し、これらSNPsは弱い連鎖不平衡を示す(r2 = 0.115、D' = 0.805)。このことから気管支喘息と呼吸機能低下とで共通の遺伝要因が存在する可能性も考えられる。
【0078】
さらに、MHC領域以外の4つの関連領域において、気管支喘息と関連する遺伝子を同定するため、GWASのデータを用いて関連の強さのマッピングを行なった。マッピングには、日本人のHapMap phase II+III(release 27)の情報をもとに、マイナーアレル頻度(minor allele frequency;MAF)≧0.05でr2<0.8のSNPsをタグSNPs(tagSNPs)として選出して用いた。各領域の関連解析の結果と連鎖不平衡マップを図2〜5に示す。
【0079】
13個のタグSNPsを用いた5q22領域の詳細なマッピングの結果、TSLPとWDR36の2つの遺伝子を含む約88 kbの連鎖不平衡ブロックが気管支喘息の関連領域として同定され、最も強い関連はrs1837253で認められた(図2)。TSLP遺伝子は、気道ウイルス感染、複数のプロテアーゼ活性を持つアレルゲン、炎症性サイトカイン、およびタバコにより気道上皮細胞において強く誘導される遺伝子であり、環境要因の感知や、環境要因の暴露後のTh2細胞応答の誘導において重要な役割を果たしている。よって、TSLP遺伝子は、この領域における気管支喘息関連遺伝子である可能性が高い。
【0080】
22個のタグSNPsを用いた10p14領域の詳細なマッピングの結果、rs10508372が存在する約112 kbの連鎖不平衡ブロックが気管支喘息の関連領域として同定された(図3)。この領域はいわゆる遺伝子砂漠と呼ばれる既知の遺伝子が存在しない領域であるが、1 Mb上流にはTh2細胞の分化における主要な調節因子をコードするGATA3遺伝子が存在する。エンハンサーはゲノム上Mb単位で離れた遺伝子の発現を調節することも可能であり、この気管支喘息の関連領域上に存在する遺伝子多型がGATA3遺伝子発現をシスとして調節する活性があるのか等、詳細な検討が待たれる。
【0081】
12個のタグSNPsを用いた12q13領域の詳細なマッピングの結果、rs1701704が存在する約201 kbの連鎖不平衡ブロックが気管支喘息の関連領域として同定された(図4)。rs1701704は、これまでにI型糖尿病や円形脱毛症との関連が報告されている。この連鎖不平衡ブロックには13個の遺伝子が含まれており、rs1701704はIKZF4遺伝子(Eos遺伝子)の2 kb上流に位置していた。IKZF4遺伝子は、FoxP3依存性遺伝子サイレンシング(FoxP3-dependent gene silencing)の共調節因子として調節性T細胞の分化に関与することが知られている。調節性T細胞は肺のホメオスタシスを保ち、本来は無害である吸入抗原に対する有害な免疫応答を抑制する機能がある。
【0082】
11個のタグSNPsを用いた4q31領域の詳細なマッピングの結果、rs1397527が存在する約497 kbの連鎖不平衡ブロックが気管支喘息の関連領域として同定された(図5)。この連鎖不平衡ブロックには、USP38とGAB1の2つの遺伝子が含まれている。USP38遺伝子は機能未知のubiquitin specific peptidase 38をコードする。GAB1遺伝子はscaffolding adopter proteinをコードし、IL-3、IL-6、IFN-α、およびIFN-γ等のサイトカイン受容体、並びにB細胞およびT細胞受容体を介して活性化されるシグナル伝達経路において重要な役割を果たす。
【0083】
さらに、本実施例で同定された5つの気管支喘息の関連領域について、日本人以外の人種においても気管支喘息との関連が認められるか検討した。499名のヒスパニック系でない白人集団からなる成人喘息の被検者、およびIllumina's iControl databaseから取得した639名の対照被検者を用いて、5つの領域の5SNPs(統合解析の結果、各領域で気管支喘息との最も強い関連が認められたrs7686660、rs1837253、rs404860、rs10508372、
rs1701704)について関連解析を行った。結果、5q22に存在するrs1837253で気管支喘息との有意な関連が認められた(P = 0.023)。このことから、ゲノム上のTSLPを含む領域に日本人と白人との共通の成人喘息の遺伝要因が存在する可能性が示唆される。
【産業上の利用可能性】
【0084】
以上の通り、日本人集団において、ゲノムワイド水準を満たして気管支喘息と関連する5ヶ所の領域が見出された。これらの領域に存在するSNPsは気管支喘息等の免疫疾患または閉塞性肺疾患の検査に有用であり、気管支喘息等の免疫疾患または閉塞性肺疾患の予防および/または治療に貢献するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(1)〜(5)のいずれかの領域に存在する一塩基多型を分析し、該分析結果に基づいて免疫疾患または閉塞性肺疾患を検査することを特徴とする、免疫疾患または閉塞性肺疾患の発症リスクおよび/または発症の有無の判定方法。
(1)第4染色体長腕31領域
(2)第12染色体長腕13領域
(3)第10染色体短腕14領域
(4)第5染色体長腕22領域
(5)第6染色体短腕21領域
【請求項2】
前記免疫疾患または閉塞性肺疾患が、気管支喘息である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記一塩基多型が、配列番号1〜24から選ばれる塩基配列の塩基番号61番目の塩基に相当する塩基、または該塩基と連鎖不平衡の関係にある塩基における一塩基多型である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
下記(1)または(2)の配列を有する免疫疾患または閉塞性肺疾患検査用プローブ。(1)配列番号1〜24から選ばれる塩基配列において、塩基番号61番目の塩基を含む10塩基以上の配列、又はその相補配列。
(2)配列番号1〜24から選ばれる塩基配列の塩基番号61番目の塩基に相当する塩基と連鎖不平衡の関係にある塩基を含む10塩基以上の配列、又はその相補配列。
【請求項5】
下記(1)または(2)の領域を増幅することのできる免疫疾患または閉塞性肺疾患検査用プライマー。
(1)配列番号1〜24から選ばれる塩基配列において、塩基番号61番目の塩基を含む領域。
(2)配列番号1〜24から選ばれる塩基配列の塩基番号61番目の塩基に相当する塩基と連鎖不平衡の関係にある塩基を含む領域。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−17398(P2013−17398A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151111(P2011−151111)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度 文部科学省、科学技術試験研究「個人の遺伝情報に応じた医療の実現プロジェクト」産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【出願人】(508067851)一般社団法人徳洲会 (12)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【出願人】(504177284)国立大学法人滋賀医科大学 (41)
【Fターム(参考)】